(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】改善されたリングポート相互作用と流動領域のための連続曲率を有するポート縁部形状
(51)【国際特許分類】
F02F 1/00 20060101AFI20220201BHJP
F02B 25/08 20060101ALI20220201BHJP
F02B 75/28 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
F02F1/00 Q
F02B25/08
F02B75/28 A
(21)【出願番号】P 2019507225
(86)(22)【出願日】2017-07-25
(86)【国際出願番号】 US2017043758
(87)【国際公開番号】W WO2018031231
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-06-18
(32)【優先日】2016-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506405644
【氏名又は名称】アカーテース パワー,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キャラハン,ブライアン,ジェイ.
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-169198(JP,A)
【文献】特開2014-098346(JP,A)
【文献】特開2003-020919(JP,A)
【文献】特開平10-266860(JP,A)
【文献】特表2014-521866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00-1/42
F02B 25/00-25/28,75/00-75/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向ピストン式燃焼機関(20)のシリンダ(22、80)内のポート(24、26、86)用のポート開口縁部形状(50、350)であって、前記シリンダ(22、80)はボア面(28、82)と側壁(27、84)とを含み、前記ポート(24、26、86)は、前記シリンダの端部付近にポート開口部の少なくとも1つの略円周方向のアレイを含み、各々のポート開口部は、前記ボアから前記側壁(27、84)を通って延在し、前記ボア面(28、82)に前記ポート開口縁部形状を有し、前記ポート開口縁部形状(50、350)は、
前記シリンダ(22、80)の中央部に向けられた上縁部(53、353)と、
前記シリンダ(22、80)の端部に向けられた下縁部(54、354)と、
前記上縁部(53、353)と下端部(54、354)を結ぶ第1および第2の側縁部(55、355)と、
前記上縁部(53、353)に沿って配置された頂点(359)であって
、最小曲率半径を含む頂点(359)とによって特徴づけられ、
前記ポート開口縁部形状(50、350)は曲率連続性を含
み、
前記ポート開口縁部形状(50、350)は、スプラインによって画定され、
前記スプラインは、
予め定められた最大ポート開口部高さ(H、612)と、
予め定められたポート開口部の全幅(W、611)と、
前記スプラインに沿った任意の点に対する最小曲率半径と、
前記スプラインに沿った曲率連続性と、に従って画定され、
前記スプラインに沿ったすべての点における前記最小曲率半径は、前記頂点の前記最小曲率半径以上であり、前記ポート開口縁部形状(50、350)が、ただ1つの頂点(359)を有し、かつ、前記上縁部(53、353)に沿ったゼロでない傾斜を有するように前記スプラインが制限されている、ポート開口縁部形状(50、350)。
【請求項2】
対向ピストン式燃焼機関(20)のシリンダ(22、80)内のポートであって、前記シリンダ(22、80)はボア面(28、82)と側壁(27、84)とを含み、前記ポート(24、26、86)は、前記シリンダ(22、80)の端部付近にポート開口部の少なくとも1つの略円周方向のアレイを含み、各々のポート開口部は、前記ボアから前記側壁(27、84)を通って延在し、前記ボア面(28、82)に請求項
1に記載のポート開口縁部形状(50、350)を有する、ポート。
【請求項3】
対向ピストン式燃焼機関(20)のシリンダ(22、80)であって、前記シリンダ(22、80)は、側壁(27、84)と、ボア面(28、82)と、前記シリンダ(22、80)の端部付近にポート開口部の少なくとも1つの略円周方向のアレイを含むポート(24、26、86)とを含み、各々のポート開口部は、前記ボアから前記側壁(27、84))を通って延在し、請求項1
に記載のポート開口縁部形状(50、350)を有し、前記ポート開口縁部形状(50、350)は前記ボア面(28、82)にある、シリンダ(22、80)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権]
本出願は、2016年8月9日に出願された米国特許出願第15/232,183号、および2016年9月27日に出願された米国特許出願第15/277,930号に対する優先権を主張する。
【0002】
[関連出願]
本出願は、現在は米国特許第9,482,153号となっている2011年1月26日に出願された米国特許出願第12/931,199号「対向ピストンエンジン内のポート付きシリンダのボア/ピストン界面におけるオイル保持」、現在は米国特許第8,851,029号となっている2012年2月2日に出願された米国特許出願第13/385,127号「トップリング逆転領域での固体潤滑を有する対向ピストンシリンダボア構造物」、現在は米国特許第9,068,498号となっている2013年2月1日に出願された米国特許出願第13/757,220号「2ストロークサイクルエンジンにおけるリングクリッピングの低減」に関する主題を含む。
【0003】
本明細書に記載の方法および装置の分野は、2サイクルエンジンのためのポート構造に関する。特に、この分野はエンジンシリンダライナ内のポート開口部を含む。
【背景技術】
【0004】
2ストロークサイクルエンジンは、クランクシャフトの単一の完全な回転とクランクシャフトに接続されたピストンの2つのストロークとでパワーサイクルを完了する内燃機関である。2ストロークサイクルエンジンの一例は、一対のピストンがシリンダのボア内に対向して配置されている対向ピストンエンジンである。ピストンは、反対方向に往復運動するようにボア内でクラウンとクラウンとの間に配置されている。シリンダは、シリンダのそれぞれの端部の近くに配置されるように長手方向に間隔を置いて配置された入口ポートおよび排気ポートを有する。対向するピストンがポートを制御し、それらが下死点(BDC)位置に移動するときにポートを開き、それらが上死点(TDC)位置に向かって移動するときにポートを閉じる。一方のポートは、燃焼生成物をボアの外へ通過させ、他方のポートは、給気をボア内に入れる役割を果たし、これらはそれぞれ「排気」ポートおよび「吸気」ポートと呼ばれる。
【0005】
各ポートは、シリンダの側壁を貫通する円周方向に間隔を置いて配置された開口部の1つ以上のアレイを含む。いくつかの説明では、開口部自体をポートと呼ぶ。しかしながら、この説明において、「ポート」とは、シリンダの端部近くの円形領域を指し、そこには、シリンダの内外へのガスの通過を可能にするためにポート開口部の集合体が形成されている。ポート開口部は、ポートを横切るピストンリングの通過を支持するブリッジ(「バー」と呼ばれることもある)によって分離されている。
【0006】
ピストンにはクラウンに取り付けられた1つ以上のリングが備わっている。各ピストンのスカート、ランド、およびリングは、ピストンが制御するポートへのガス流の出入りを防ぐシールを形成する。ボア内で拘束状態にあるリングの任意の接線方向の張力は、半径方向外向きの力を生じさせる。燃焼熱による熱変形はこの力を増大させる。この半径方向の力は、リングがポートを横切るときにリングをポート開口部内へとボアの半径方向外向きの方向に偏向させる。リングがボア内に(すなわち、ボアの半径方向内向きに)戻る必要がある場合、これはポートが閉じるとき、またポートが完全に開くときにも起こり、リングはボアの半径方向内側に案内されなければならない。
【0007】
ボア面のポート開口縁部の幾何学的形状が適切に設計されていない場合、リングがボアの半径方向内側に移動するのを許容される距離、したがってその間の時間が短すぎる可能性がある。半径方向に移動するためのこの短縮された期間は、リングの内向き加速度を増大させ、したがって接触力および応力を増大させる可能性がある。この動きは「リングクリッピング」(または「ポートクリッピング」または「ポート固着」)と呼ばれ、望ましくない。リングクリッピングは、ボアと、ボアと接触する外側リング表面との間に作用する潤滑剤膜が貫通され、リングおよびボア面の凹凸が接触し始める過負荷状態を引き起こす。これは過度の摩耗を引き起こし、摩擦を増大させ、それは局所的な加熱と高温を招く。これらの高温は、リングとシリンダの金属を弱める可能性がある。ピストンリングとエンジンシリンダの弱化した金属は、リングクリッピング中に高い接触応力にさらされると塑性変形する可能性がある。リングとシリンダがこのように塑性変形すると、幾何学的形状が乱れ、表面の質感が粗くなり、より多くの凹凸が現れる。金属が十分に活性であれば、ピストンリングとシリンダ側壁との間で融着が起こり得る。塑性変形した部品の融着は、引き裂かれ、塗抹され、折り畳まれ、そして積み重ねられたリングおよび/またはシリンダ材料によって証明されるように、スカッフィングをもたらす可能性がある。最大接触応力は、ポート開口部に出入りするリングの加速度を制限することによって低減する。加速度は、時間の経過とともにリングの半径方向の動きを広げることによって減少する。
【発明の概要】
【0008】
2ストローク対向ピストンエンジン用のシリンダにおいて、リング-ポート相互作用を改善しかつ流動面積(すなわち、ポート面積、または給気および/または排気ガスが通過して流れ得る面積)を最大にするポート開口縁部形状を有するポート開口部が提供される。ポート開口縁部形状は、最大ポート開口部高さおよび画定されたポート開口部全幅に沿ってまたはその中にあるスプライン(又はスプライン曲線)によって定めることができる。スプラインが定義するポート開口縁部形状はまた、スプラインに沿った各点に対して最小の曲率半径、ならびにスプラインに沿った曲率の連続性を有することができる。
【0009】
関連する態様では、リング-ポート相互作用を改善しかつ流動面積を最大にするように成形されたポート開口部を有するシリンダが提供される。ポート開口部は、最大ポート開口部高さおよび画定されたポート開口部全幅に沿ってまたはその中にあるスプラインによって画定された縁部形状を有することができる。スプラインが定義するポート開口縁部形状はまた、スプラインに沿った各点に対して最小の曲率半径、ならびにスプラインに沿った曲率の連続性を有することができる。
【0010】
いくつかのさらなる一態様では、2ストローク対向ピストンエンジン用のシリンダのポート開口部を形成する方法は、最大ポート開口部高さおよび画定されたポート開口部全幅に沿ってまたはその中にあるスプラインを画定することと、そのスプラインに沿った各点に対して、最小曲率半径を画定することと、そのスプラインに沿った曲率の連続性を必要とすることとを含む。本方法はまた、スプラインによって画定されたポート開口縁部形状を有するポート開口部を有する少なくとも1つのポートを有するシリンダを有する対向ピストンエンジンのエンジン性能をモデル化することを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】2ストロークサイクル運転用に構成された対向ピストンエンジンのシリンダを通して取られた縦断面図である。
【
図1B】従来技術の例示的なポート開口部を有するポートを有する対向ピストンエンジン用のシリンダの一端部の側部断面図である。
【0012】
【
図2A】従来技術のポート開口縁部形状を示す。図は、シリンダの内側からボア面に向かってシリンダの半径方向に見たものである。
【
図2B】従来技術のポート開口縁部形状を示す。図は、シリンダの内側からボア面に向かってシリンダの半径方向に見たものである。
【
図2C】従来技術のポート開口縁部形状を示す。図は、シリンダの内側からボア面に向かってシリンダの半径方向に見たものである。
【
図2D】従来技術のポート開口縁部形状を示す。図は、シリンダの内側からボア面に向かってシリンダの半径方向に見たものである。
【
図2E】従来技術のポート開口縁部形状を示す。図は、シリンダの内側からボア面に向かってシリンダの半径方向に見たものである。
【
図2F】従来技術のポート開口縁部形状を示す。図は、シリンダの内側からボア面に向かってシリンダの半径方向に見たものである。
【0013】
【
図3】形状に沿った様々な点におけるポート開口縁部形状および形状の曲率の大きさを示す。
【0014】
【
図4】ポート開口縁部形状およびその形状に沿った様々な点の曲率半径の大きさを示す。
【0015】
【
図5】本明細書に記載のポート開口縁部形状を決定する方法の例示的な流れ図である。
【0016】
【
図6A】例示的なポート開口縁部形状を示しており、これらは両方とも同じ最大高さおよび全幅によって拘束されている。
【
図6B】例示的なポート開口縁部形状を示しており、これらは両方とも同じ最大高さおよび全幅によって拘束されている。
【0017】
【
図7A】代替の従来技術のポート開口縁部および例示的なピストンリングとのその相互作用を示す。
【
図7B】代替の従来技術のポート開口縁部および例示的なピストンリングとのその相互作用を示す。
【
図7C】代替の従来技術のポート開口縁部および例示的なピストンリングとのその相互作用を示す。
【
図7D】代替の従来技術のポート開口縁部および例示的なピストンリングとのその相互作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ピストンリングとポート開口部との間の最小限の接触力を可能にする、2ストローク対向ピストンエンジン用のシリンダライナ用の改良されたポート開口部が、本明細書に記載されている。改良されたポート開口部を設計するための方法、ならびに改良されたポート開口部を有する2ストローク対向ピストンエンジン用のシリンダライナを製造するための方法が提供される。
【0019】
図1Aにおいて、2ストロークサイクル運転用に構成された対向ピストンエンジンは、全体として符号20で示されている。エンジン20は、シリンダのそれぞれの端部近くのシリンダ側壁に形成された長手方向に間隔を置いて配置された排気ポート24および吸気ポート26を有するシリンダ22を含む。対向ピストンエンジンは、少なくとも1つのシリンダ22を含み、2つ、3つ、またはそれ以上のシリンダを含んでもよい。シリンダ22は、ブロック、フレーム、スパー、または他の任意の同等の構造内に支持されたシリンダライナまたはスリーブから構成されてもよい。シリンダは、表面28を有する円筒形のボアを画定する側壁27を有する。排気ポート24および吸気ポート26の開口部は、側壁のそれぞれの端部付近に形成され、ボア面28を貫通して開口している。一対のピストン34および36は、ボア面28上で反対方向に摺動するように配置されている。ピストンの各々は、シリンダのそれぞれの端部の外側に取り付けられた2つのクランクシャフト(図示せず)のうちのそれぞれの1つに接続ロッド38によって結合されている。エンジン20の一般的なアーキテクチャのより完全な説明については、共同所有の米国特許出願第2012/0285422号を参照のこと。ピストン34および36の各々は、ピストンのクラウン内の環状溝に装着された1つ以上のリング39を備える。
【0020】
掃気が始まった少し後のピストン34と36がそれぞれの位置に示されている。これに関して、ピストン36はそのBC位置(例えば下死点位置)からわずかに離れているので、吸気ポート26は給気のシリンダ内への輸送のためにその全開位置からちょうど閉じ始めている。ピストン34は、それが吸気ピストン36を導くのでそのBC位置からさらに離れており、従って排気ポート24もまた、ボアからの排気ガスの輸送のためにその全開位置からわずかに閉じられている。運動が続くにつれて、ピストン34は、ボアの内部でそのBC位置からそのTC位置(例えば上死点位置)に向かって移動し、排気ポート24を閉じる。ピストン36もBCから動き続け、TCに向かって動きながら吸気ポート26を閉じる。最後のポートが閉じてピストンが互いに接近し続けた後、給気がそれらの端面間で圧縮される。インジェクタ42を介してシリンダの側壁を通って噴射された燃料は、加圧された給気と混合し、点火し、膨張行程でピストン34および36をTCからBCに駆動する。
【0021】
図1Bは、対向ピストンエンジンの一部であるシリンダの接近図を提供している。
図1Bにおいて、符号80は2ストロークサイクル運転用に構成された対向ピストンエンジン用のポート型シリンダを示す。矢印TCおよびBCは、制御ピストンの上部中央位置および下部中央位置への方向を示す。シリンダ80は、ボア面82と側壁84とを含む。シリンダ80はまた、間隔を置いて配置された排気ポートおよび吸気ポートを含むが、排気ポート86のみが図示されている。各ポートは少なくとも1つの略円周方向のアレイのポート開口部を含み、各ポート開口部はボア面82から側壁84を通って延びる。例えば、排気ポート86はポート開口部のアレイを含み、その中で、ボア面82内のポート開口縁部形状50は、側縁部55で結合された対向する上縁部53および下縁部54によって画定される。上縁部53および下縁部54の各々は、側縁部55への丸みを帯びた移行部58、丸みを帯びたピーク59、および丸みを帯びたコーナー移行部から丸みを帯びたピークへと延びる傾斜ランプ部分60によって特徴づけられる。
【0022】
図1Bを参照すると、シリンダ側壁84は厚さを有するので、各々のポート開口縁部形状50は、側壁84を貫通して側壁の外面(図示せず)を通して開口する通路90を囲む。外面開口部は、ボア面82のポート開口縁部形状50と同じ形状を有する必要はない。実際、外側側壁面を通る開口部は一般的に、ボア面とは異なる形状をしている。その理由は、側壁の厚さが、良好なシリンダ内流れ構造のためにガス流を部分的に案内し、吸気ダクトおよび排気ダクトを通る流れの制限を最小にするように設計された通路形状を形成するために用いられるからである。通路90の特定の流動構造は、掃気および/または燃焼の最適化の両方に有用である。その結果、外側側壁面を貫通するポート開口部形状は、これらすべての要件を複雑に組み合わせたものになる。
【0023】
いくつかの実施態様では、機械加工上の理由から、通路がボア82からシリンダ側壁の外側表面に向かうときに、上縁部53および下縁部54によって境界を定められる通路90の水平通路面91は平坦に保たれる。通路の垂直面93は、上述したエンジン性能の理由から角度が付けられている。これは、他のすべての面がウィンドウの中心に向かって傾斜することを意味するとしても、加工に必要なのは4軸制御だけである。この設計では、ポート開口部形状50の縁部53、54、および55に有意な面取り(またはベベル)を設ける必要はない。一方、縁部53の面取りまたは丸みは、一般的に、ガスジェットの制約が少ないために、排気ポートの最初のポート開口中の排気流を助けるであろう。
【0024】
再び
図1Aを参照すると、1つ以上のピストンリング39の各々は、エンジンシリンダ22の長手方向軸に対して半径方向にリングを外側に付勢する張力を有するので、各々のリングの外側部分はシリンダボア28の表面に接触する。燃焼ガスによって引き起こされる他の力、各リング内の熱勾配、および/またはそれらがシリンダを通って移動するときのピストンおよびそのリングの速度に加えて、この張力は、各ピストンリング39とシリンダボア面28との間で接触圧力または接触応力を生じさせる。ポート開口縁部形状は、リングがポートを通過するときにピストンリング39とシリンダボア面28との間の接触圧力に影響を及ぼし得る1つの要因である。ピストンリングがポート開口部を通過するときにピストンリングが徐々に移行する、つまり拡大または縮小することを許容しないポート開口端部形状は、ピストンリング内で望ましくない動きを引き起こす可能性がある。すなわち、ピストンリング39がシリンダ22を通って長手方向に移動すると、それはまたボア面28に向かって半径方向に付勢される。開口部(例えば、ポート開口部)などのボア面28に変化があると、それに作用する力のためにピストンリング39が動く。この場合、ピストンリングは、リングが開口部を通過するときに、シリンダ側壁の開口部内に外向きに膨張する。ピストンリング39がポートを有するシリンダ22の一部から中実部に移行すると、リング39はそれに作用する様々な力に応答して、シリンダ22の中心に向かって半径方向内向きに移動する。リングがボアの半径方向内側に移動することを許容されるシリンダ内の長手方向距離が短い場合、シリンダのポートから中実部分への急激な移行に対応して、リングは、緩やかな移行よりも急速に内側に加速する。従って、急激な移行は接触力および応力を高め、「リングクリッピング」(または「ポートクリッピング」または「ポート固着」)を引き起こす。リングクリッピングは、シリンダ、リング、またはピストンにスカッフィングまたは材料の損傷を引き起こす可能性がある。ポート開口縁部に沿って急激な移行を伴ってポート領域を移動するピストンリングは、加加速度(jerk)を引き起こす可能性がある。ピストンリング内の加加速度は、エンジンシリンダ内のリングの位置制御の一般的な喪失を招く可能性がある。
【0025】
エンジンの効率を高め、そしてピストンリングの耐久性を高めるために、望ましくないリング運動、例えば、リングクリッピングおよび加加速度を減らすことが望ましい。2ストローク対向ピストンエンジンの各々の完全なサイクルの間に、ピストンリングはポートを越えて4つの移行をする。望ましくないリング運動を減少させる1つの方法は、ポート開口部に出入りするリングの突然の移行を減少または排除すると共にポート開口縁部に沿って滑らかな経路を提供する上縁部および下縁部構造をポート開口部に設けることである。これらの種類のポート開口縁部形状は以下に記載される。
【0026】
図2A~
図2Fは、ボア面内の従来技術のポート開口縁部形状を示す。各々の図において、図はシリンダの内部からシリンダの半径方向にボア面へと向かっている。最も簡単な従来技術のポート開口縁部形状は
図2Aに見られ、ここで、ポート開口縁部形状12は、側縁部15によって接合された上縁部13および下縁部14を含む。これに関して、上縁部13は制御ピストンのTC位置に最も近い縁部であり、下縁部14は制御ピストンのBC位置に最も近い縁部である。上縁部13および下縁部14は、シリンダ軸16に対して略垂直に向けられている。側縁部15は、軸に対して略長手方向に向けられている。一緒になって、縁部13、14、および15は四辺形の形状を画定する。所与のポート幅Wに対して、これは、開放面積とクランクシャフト回転角との最大積分値(「角度・面積の積」)を提供し、これは次いで、任意の所与のクランクシャフト速度に対する最大開放時間・面積の積をもたらす。ガス流を導くポート開口部の容量は時間・面積の積に正比例するので、これはエンジン効率または出力を最大にする。しかしながら、平坦な上縁部13および下縁部14はリングをポート開口部内へ瞬時に外方へ移動させ(そして次にボア内へ瞬時に内方へ)移動させ、その結果、両縁部でリングクリッピングが生じる。
【0027】
図2Bのように四辺形形状に丸角(corner rounds)18を加えることは、
図2Aの形状に対してわずかな改善しかもたらさない。リングが平坦な上縁部および下縁部に近づくにつれて、ポート開口部への移動は依然としてかなりのものとなり、
図2Aの直線四辺形形状と略同じ程度のクリッピングが生じる。
【0028】
他の従来技術のポート開口部形状は、
図2Cに示すように楕円形または弓形の上縁部13および下縁部14を備えている。これらは、楕円形によって、またはコーナーの2つの副弧に接続された縁部の中央に主弧を有する3つの円弧によって記述できる。どちらも長半径と短半径で完全に記述できる。しかしながら、その長半径がリング運動を制御する楕円形の上縁部または下縁部は、楕円形状全体にわたって特に長い距離にわたってリング運動を広げることはしない。ほとんどの楕円形にわたってリング運動は広がるが、最後の部分では、楕円形がその長半径に近づくにつれて、リング加速度が非常に大きくなり、それによって過度の摩耗を引き起こす。
【0029】
図2Dに示す他のポート開口部形状は、上縁部13および下縁部14のそれぞれに、ポート幅の半分に等しい半径を有する半円形の形状を提供するという極端になる。半円形は円滑なリング移行を提供し、それは摩耗を減少させるがポート開口部の面積も減少させ、それによって角度・面積の積を制限する。
【0030】
他の従来技術のポート開口縁部形状は、四辺形形状の角度・面積の積に近い角度・面積の積を同時に維持しながら、リングクリッピングによって引き起こされる摩耗およびスカッフィングを低減させることができる。リングの表面がポートの縁部を押すことによって引き起こされる最大接触応力を減少させることによって、アスペリティ接触(例えば、ボア内の鋭いまたは粗い領域とリングとの間の接触)が減少し、それによってスカッフィングおよび摩耗が回避され、エンジンの耐久性が向上する。同時に、ポート開口部形状は、四辺形形状の角度・面積の積に近い角度・面積の積を提供する必要がある。
【0031】
図2Eを参照すると、少なくとも排気ポート24のための他の従来技術の構造は、目的を満たし、本明細書に記載される利点を提供するポート開口部を含む。これに関連して、ボア面内のポート開口部の形状50は、側縁部55によって接合された上縁部53および下縁部54を含む。上縁部53および下縁部54は、シリンダの長手方向軸16に対して略横方向に向けられており、同様に構成されている。縁部53および54の各々は、丸みを帯びたコーナー、傾斜した斜面、および丸みを帯びたピークを含む。例えば、上縁部53を参照すると、丸みを帯びたコーナー58が上縁部53を側縁部55に接合する。丸みを帯びたピーク59は、丸みを帯びたコーナー58の間に配置され、制御ピストン(図示せず)のTC方向に開口部形状50の外側にオフセットされている。傾斜ランプ部60は、丸みを帯びたコーナー58から丸みを帯びたピーク59へと延びる。縁部53、54、および55は、略長方形の形状で示されているが、これは必須ではなく、他の略四辺形の形状を使用することができるが、上縁部53および下縁部54はそのような形のピストン運動の方向に対して略垂直に向けられることが好ましい。
【0032】
図2Fは、
図2Eのポート開口縁部形状50の上縁部の拡大図であり、形状の特定の特徴をより明確に示すために誇張された寸法となっている。上縁部では、丸みを帯びたコーナー58の半径Rは、製造上の考慮事項によって決まる最小値、典型的には切削工具とボア面との間の交差部の半径に設定することができ、丸みを帯びたピーク59の半径もまた、この最小値に設定できる。好ましくは、半径Rは、側縁部55に関して測定された幅Wの半分よりも実質的に小さい。シリンダの半径方向におけるリングの加速度を所望の摩耗限界に従って選択された最大値に等しくなるように制限するように、ランプ部分60の傾斜に対して角度θを設定することができる。これにより、ポートの角度・面積の積が最大になる。例えば、角度θの値は、6°<θ<10°の範囲内とすることができる。
【0033】
上述のように、ピストンリングがエンジンシリンダを通って長手方向(すなわち軸方向)に移動すると、リングはそれに作用する力に従って半径方向に移動する。ピストンリングがポートを通過すると、ポート開口縁部の幾何学的形状によって部分的に決まる速度および加速度で、ピストンリングはそれぞれ外側および内側に膨張および収縮する。従って、従来技術のポートの縁部構造で現在達成可能であるよりも少ない接触力でポート開口部を横切ってピストンリングを移行させるための対向ピストンエンジンを装備しながら、エンジンシリンダに出入りする最適な流体の流れのためにポート開口縁部形状を最適化することが望ましい。
【0034】
位置連続性、接線方向連続性、および曲率連続性を有するポート開口縁部形状は、エンジンシリンダの長手方向軸に対する半径方向のピストンリングの運動(例えば、速度、加速度、および加加速度)の制御を可能にする。ピストンリングがポートを通過するときのピストンリングの半径方向の動きを制御することで、シリンダのボアの表面を覆う保護潤滑膜を破壊する可能性がある接触力または応力を軽減または防止する。この制御は、ボア面とピストンリングの両方のスカッフィングおよび摩耗を軽減または回避し、したがってエンジンの耐久性を向上させる。
【0035】
位置、接線、曲率の連続性を有するポート開口縁部形状は通常滑らかな形状であり、すなわち、これらの形状は、極端に大きい曲率半径を有する部分に隣接する極端に小さい曲率半径を有する鋭いコーナーまたはセグメントを有さない。ピストンリングの好ましくない半径方向の運動のいくつかは、突然変化するかまたは突然終了するポート開口縁部形状をピストンリングが通過するときに発生する。
図3および
図4は、位置、接線、曲率の連続性を有するポート開口縁部形状の例である。これらの形状はまた、
図5に示され、以下に説明する方法に従って、ポートを通る最大の流体の流れに対して最適化されている。
【0036】
図5に示す方法では、流動面積が最適化されたポート開口縁部形状の設計は、510にあるように、各々のポート開口縁部形状に対して最大高さと全幅を定める(定義する)ことから始まる。各々のポート開口縁部形状の最大高さは、ポート開閉の所望のタイミング、ならびに所望の流体流量(例えば、給気流量、排気流量)などの要因に依存する。各々のポート開口部の全幅は、冷却チャネルを備えたポートブリッジの存在、シリンダ(およびしたがってポートブリッジ)を構成するのに使用される材料の強度、シリンダの外周、ならびに所望の流体の流れを含む複数の要因によって制約を受ける可能性がある。最大高さおよび全幅の値は、例えばユーザによってまたは設計パラメータによって事前に定める(定義する)ことができる。
【0037】
いくつかの実施態様では、ポート開口縁部形状は、エンジンシリンダの長手方向軸に対して傾斜(スキュー)した側面を有する。ポート開口縁部形状のスキューの程度は、ポート開口部の流動面積に影響する。
図6Aおよび
図6Bは、最大高さと全幅の制約が同じ2つのポートを示す。例えば、
図6Bは、所与の高さH612を有し、10度傾斜しているが、全幅FW611に制限されている第1のポート開口縁部形状610を示し、
図6Aに示される、同じ全幅FWに拘束されているが傾斜していない同じ所与の高さHの第2のポート開口部620より小さい流動面積を有する。流動面積のこの減少はポート開口縁部形状においては望ましくないかもしれないが、そのような構成は他の利点(例えば、摩耗エネルギーをそのようなポート開口部と接触するピストンリングの縁部に沿って円周方向に分配すること)を有することができる。
【0038】
各々のポート開口縁部形状に対して最大高さと全幅が定められると、スプラインが生成され、515のように最大高さと全幅内で各々のポート開口縁部に対して輪郭を定めるスプラインが生成される。スプラインの生成は、スプラインに対して提案された形状の適合性を効率的に評価する1つ以上のアルゴリズムを実行する1つ以上のコンピュータを利用して優先的に行われる。ポート開口縁部形状の決定およびその結果としてのスプラインの生成は、ポート開口縁部形状の面積の四分円ごとにスプラインに沿った複数のノットの選択を含むことができる。スプラインに沿ったノットの位置を決定する際に、各々の可能なスプラインは、ノットの適合性に基づくスコア、およびノット間のスプラインに沿った点を基準(例えば、最大高さおよび全幅内、曲率半径の許容範囲内)に割り当てることができる。例えば、最大の高さと全幅の外側にある点にはペナルティが割り当てられる。従って、スプライン定義アルゴリズムは、高さと幅の制約内でノットの選択を促進する。曲率の制約もこの方法で考慮される。スプラインに沿った様々な位置におけるノット位置を含む複数の潜在的なスプラインをテストすることは、少なくとも最大高さ、全幅、スキュー、および最小曲率半径を入力パラメータとして受け入れるアルゴリズムを実行する1つ以上のコンピュータを用いて迅速に行うことができる。そのようなテストの性質は、それを非常に煩わしくして、そしてそれを手でさせる。
【0039】
ポート開口縁部形状では、頂点の位置または上縁部の最上点を決定することができ、その頂点の曲率半径の最小値を、520にあるように定めることができる。頂点の曲率半径の最小値は、ポート開口部を製造するために使用される工具および方法、ならびにシリンダ、特にポートの周囲に使用される材料などの要因によって影響を受ける可能性がある。ポート開口縁部形状の頂点の最小曲率半径が定められると、525にあるように、スプラインに沿ったすべての点での最小曲率半径が定めることができる。すべての点での最小曲率半径は、頂点の最小曲率半径以上でなければならない。つまり、頂点はポート開口縁部形状に沿った任意の点の最小曲率半径を有する必要がある。
【0040】
いくつかの実施態様では、ポート開口縁部形状は、開口部の上端部に1つのピークまたは頂点のみを含むように最適化することができる。代替的にまたは追加的に、ポート開口縁部形状の上端部が、上端部の大部分にわたって平坦または略平坦にならないように、ポート開口縁部形状を最適化することができる。例えば、ポート開口縁部形状は、その頂縁部が0の傾斜を有する接線(すなわち、水平接線)を有する1つの点のみを有するように最適化することができる。また、ポート開口縁部形状は、頂縁部のピークまたは頂点に隣接して頂縁部がゼロでない傾斜を有することができるように最適化され、それによって頂縁部を横切るピストンリングの半径方向速度の急激な変化を防止する。
図3および
図4は、開口部の上縁部に沿ってただ1つのピークおよびゼロでない傾斜を有するように最適化されたポート開口縁部形状を示す。
【0041】
シュバイツァー(Schweitzer、Paul,H.,2ストロークサイクルディーゼルエンジンのスカベンジング(Scavenging of Two-Stroke Cycle Diesel Engines)、The MacMillan Company、1949、pp.50―54)は、
図7Aおよび
図7Bに示される、2つのピーク730aおよび730bを有する「ゴシックアーチ」形状のポート700と、ピーク730aと730bとの間の鋭い下方突出部725を記載している。ピストンリングがポート700を通って移動するように示されている。図示されているリングの部分は、ピストンリングの自由端710、720を有する部分であり、これはポート開口縁部でシリンダに最も摩耗を生じさせる可能性がある。水平方向のセンタリングされたタイミングエッジからの突出部725を含むことによって、シュバイツァーは、ポート700内の端部710、720を有する自由リングの片持ち長さ705が半分になるであろうと主張する。これは、ポート700内への半径方向の突出(
図7Cおよび7Dのそれぞれ750a、750b)を制限し、クリッピングを制限するであろう。しかしながら、突出部はリングに対して接線方向の縁部を与え、高い半径方向の加速度を内方に向け、次いで高い接触圧力を強いる。シュバイツァーは、この効果を制限するためには、ポート開口縁部形状の半径方向のプロファイリング(例えば、ボア面に沿った半径方向の突出部の平滑化)が必要であることを認めている。外側から内側へ到達するのとは対照的に、シリンダの尾部からはるばる到達するためにツーリングが必要とされるので、シリンダの内側からの形状の半径方向のプロファイリングはいずれも困難かつ高価である。
【0042】
上記のように、
図7Cは、ポート開口部740と、ポート開口部に隣接して通過しているリングの片持ち部分705とを含むシリンダ壁の一部の断面図を示し、ピストンリング内のギャップは、第1の位置にあり、リングの左端710は、ゴシックアーチの鋭い下方突出部725がポート開口部に達する距離w/2にあり、理論的には、それがシリンダの中心から半径方向外向きに第1の突出量750aだけ延在しているところでピストンリングに出会うことによってポートクリッピングを制限する。
【0043】
図7Dは、ポート開口部740と、ポート開口部に隣接して通過しているリングの片持ち部分705とを含むシリンダ壁の一部の断面図を示し、ピストンリング内のギャップは、第2の位置にあり、リングの左端710は、ポート開口部の幅に等しい、または略そうである距離wに及ぶ。この図は、ピストンリングがシリンダの中心から外方に延びる例示的な第2の突出量750bを示している。この第2の突出量は、
図7Cに示す第1の突出量よりも大きい。
【0044】
図7Cおよび
図7Dは、ポート開口縁部形状をゴシックアーチ形にすると摩耗が最も軽減されるだろうというシュバイツァーの主張を支持している。しかしながら、上述したように、シュバイツァーはまた、この構成は、ゴシックアーチの突出部の内側部分がシリンダボア壁に沿って解放されたときに最適に機能することを認めている。いくつかの実施態様では、シリンダボア壁に鋭い縁部を丸めることは実用的ではない。あるいはまた、いくつかの実施態様では、付加加工、ホーニング、研磨、電気化学的プロセスなどを使用して、シリンダボア壁の鋭い縁を丸めることができる。シリンダボア壁の鋭利な縁部が和らげられていないまたは除去されていない実施態様では、ゴシックアーチは、ポート開口縁部形状にとって最良の構成ではないかもしれない。そのような実施態様では、本明細書で上述したように、上縁部に沿ってただ1つのピークを有するポート開口縁部形状は、ピストンリングおよびシリンダボア面内の摩耗および望ましくない動きを防ぐための最適構成であり得る。
【0045】
このアルゴリズムは、スプラインに沿った様々な点の曲率半径と共に、スプラインが指定されたパラメータ内にあるか、または指定されたパラメータに近くなることを保証する。ポート開口縁部形状が定められると、530にあるように、例えばコンピュータまたはプロトタイプエンジンを使用して、そのポート開口縁部形状を有するポートを通る流体の流れをモデル化することができる。モデルから流体の流れとエンジン性能の結果を受け取ると、535にあるように、スプラインとノットを再定義して、流体の流れまたはその他の性能パラメータを改善することができる。性能閾値に達するまで、繰り返しを継続することができる。性能閾値は事前に定めることができる。最適化されたポート開口縁部形状は、上記のエンジンなどの対向ピストンエンジン用のシリンダを構成するために使用することができる。
【0046】
図3は、望ましくないピストンリングの動きを最小限に抑えながら流体の流れを最適化するように設計された例示的なポート開口縁部形状350を示す。ポート開口縁部形状350の曲率395の大きさは、櫛状部を介してポート縁部に取り付けられたトレースとして示されている。ポート開口縁部形状350は、最大高さHと全幅Wとによって拘束されるように設計されている。ポート開口縁部形状350は、上縁部353、下縁部354、および側縁部355を有する点において、
図2A~
図2Fに示すポート開口縁部形状と類似している。
図2Eおよび
図2Fに示すポート開口縁部形状と同様、ポート開口縁部形状350は、頂縁部353に沿って頂点359またはピークを有する。ポート開口縁部形状350を定めるスプラインに沿ったノット394、ならびにトレース395で表されるようなスプラインに沿った曲率もまた
図3に見られる。このトレース395に沿って、ポート開口縁部形状の曲率が劇的に変化するが突然ではない点395a、395bがある。曲率が劇的に変化するこれらの領域は、側縁部355の中央395a付近および頂点359の周囲の領域395bと下端部354の中点付近の領域に位置する。
【0047】
図4は、ポート開口縁部形状350に沿った点の曲率半径を示すトレース396を有する、
図3に示す例示的ポート開口縁部形状350を示す。トレース396に沿って、曲率半径の大きさがポート開口縁部形状350の隣接部分と大きく異なる点396a、396bがある。これらの点は、各々の側縁部396bの中点の周りの領域および頂点396bの周りの領域を含む。上述のように、頂点359は、ポート開口縁部形状350の残りの形状よりもはるかに小さい曲率半径を有するように拘束される。これはトレース396内に見られる陥凹部396bに反映されている。
【0048】
本明細書に記載され図示された新規なツールおよび方法を提供する特許保護の範囲は、対向ピストン式燃焼機関のシリンダ内のポートのためのポート開口縁部形状の要素を適切に含む、それらからなる、またはそれらから本質的になることができる。さらに、本明細書に開示および図示された新規なツールおよび方法は、本明細書に具体的に開示されず、図面に示されず、および/または本願の実施形態に例示されない要素またはステップがなくても適切に実施することができる。さらに、現時点で好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく様々な変更を加えることができることを理解すべきである。
【0049】
従って、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。