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特許7017563PPARアゴニスト化合物の結晶性および塩形態
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  • 特許-PPARアゴニスト化合物の結晶性および塩形態 図1
  • 特許-PPARアゴニスト化合物の結晶性および塩形態 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】PPARアゴニスト化合物の結晶性および塩形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/64 20060101AFI20220201BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
C07D233/64 CSP
A61K31/4164
A61P21/00
A61P1/00
A61P1/16
A61P1/18
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/08
A61P3/10
A61P7/00
A61P7/02
A61P9/00
A61P9/04
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P9/12
A61P11/00
A61P11/06
A61P13/00
A61P13/12
A61P17/00
A61P17/06
A61P19/00
A61P19/02
A61P21/04
A61P25/00
A61P25/00 101
A61P25/08
A61P25/28
A61P27/02
A61P29/00
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P1/04
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019518286
(86)(22)【出願日】2017-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017055403
(87)【国際公開番号】W WO2018067860
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】62/404,474
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518119984
【氏名又は名称】ミトブリッジ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ラグ,バーラト
(72)【発明者】
【氏名】トルザスカ,スコット
【審査官】東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534355(JP,A)
【文献】特表2019-533660(JP,A)
【文献】特表2019-511527(JP,A)
【文献】国際公開第2016/057658(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I):
【化1】
の化合物のヘミ硫酸塩
【請求項2】
度7.3±0.2°、14.7±0.2°、19.1±0.2°および22.3±0.2°の2θ度で表されるピークを有するX線粉末回折パターンにより特性付けられる、請求項1に記載のヘミ硫酸塩の結晶
【請求項3】
さらに角度8.3±0.2°、15.8±0.2°、16.5±0.2°、19.7±0.2°または25.8±0.2°の1以上の2θ度で表されるピークを有するX線粉末回折パターンにより特性付けられる、請求項2に記載のヘミ硫酸塩の結晶
【請求項4】
度6.7±0.2°、13.5±0.2°、17.4±0.2°および18.1±0.2°の2θ度で表されるピークを有するX線粉末回折パターンにより特性付けられる、請求項1に記載のヘミ硫酸塩の結晶
【請求項5】
らに角度14.5±0.2°、16.1±0.2°、22.4±0.2°、23.2±0.2°または23.4±0.2°の1以上の2θ度で表されるピークを有するX線粉末回折パターンにより特性付けられる化合物、請求項4に記載のヘミ硫酸塩の結晶
【請求項6】
X線粉末回折パターンが、Cu Kアルファ(1.5406オングストローム)放射を用いて得られる、請求項2~5のいずれか一項に記載のヘミ硫酸塩の結晶。
【請求項7】
以下に示されるX線粉末回折パターンを有する、請求項2、3及び6のいずれか一項に記載のヘミ硫酸塩の結晶:
【請求項8】
以下に示されるX線粉末回折パターンを有する、請求項4~6のいずれか一項に記載のヘミ硫酸塩の結晶:
【請求項9】
該ヘミ硫酸塩の90%より大きい割合が、請求項2~のいずれか一項に記載のヘミ硫酸塩の結晶として存在する、請求項1に記載のヘミ硫酸塩
【請求項10】
(II):
【化2】
の化合物のメグルミン塩、または式(II)の化合物のメグルミン塩の水和物
【請求項11】
該水和物が一水和物ある、請求項10に記載のメグルミン塩の水和物
【請求項12】
該メグルミン塩非水和である、請求項10に記載のメグルミン塩
【請求項13】
請求項1~のいずれか一項に記載のヘミ硫酸塩、または請求項10~12のいずれか一項に記載のメグルミン塩若しくはメグルミン塩の水和物、ならびに薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項14】
対象におけるPPARδ関連疾患または病気を処置するための請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
該PPARδ関連疾患が、筋構造障害、神経細胞活性化障害、筋疲労障害、筋量障害、ミトコンドリア性疾患、ベータ酸化疾患、代謝疾患、癌、血管疾患、眼血管疾患、筋性眼疾患または腎疾患である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
該筋構造障害が、ベスレムミオパチー、中心コア疾患、先天性線維タイプ不均等症、遠位型筋ジストロフィー(MD)、デュシェンヌおよびベッカー型MD、エメリ・ドレフュス型MD、顔面肩甲上腕型MD、ヒアリン体ミオパチー、肢帯型MD、筋ナトリウムチャンネル障害、筋緊張性軟骨ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィー、筋細管ミオパチー、ネマリン小体疾患、眼咽頭MDまたは腹圧性尿失禁から選択され;
該神経細胞活性化障害が、筋萎縮性側索硬化症、シャルコー・マリー・トゥース病、ギラン・バレー症候群、ランバート・イートン症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、神経病変、末梢性ニューロパチー、脊髄性筋萎縮症、遅発性尺骨神経麻痺または毒性神経筋障害から選択され;
該筋疲労障害が、慢性疲労症候群、糖尿病(I型またはII型)、糖原貯蔵症、線維筋痛症、フリードライヒ運動失調症、間欠性跛行、脂質蓄積ミオパチー、MELAS、ムコ多糖症、ポンペ病または甲状腺中毒性ミオパチーから選択され;該筋量障害が、悪液質、軟骨変性、脳性麻痺、コンパートメント症候群、重症ミオパチー、封入体筋炎、筋萎縮症(非活動性萎縮)、サルコペニア、ステロイドミオパチーまたは全身性紅斑性狼瘡であり;
該ミトコンドリア性疾患が、アルパース病、性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、カーンズ・セイヤー症候群(KSS)、レーベル遺伝性視神経症(LHON)、MELAS-ミトコンドリア筋症、脳筋症、乳酸アシドーシスおよび脳卒中様発作、オクローヌス性てんかんおよび赤色ぼろ線維MERRF疾患、経原性筋衰弱(NARP)、運動失調、ならびに網膜色素変性症またはピアソン症候群から選択され;
該ベータ酸化疾患が、全身性カルニチントランスポーター、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)II欠損症、極長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(LCHADまたはVLCAD)欠損症、三機能酵素欠損症、中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(MCAD)欠損症、短鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(SCAD)欠損症またはβ酸化のリボフラビン応答性障害(RR-MADD)から選択され;
該代謝疾患が、高脂血症、脂質異常症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、HDL低コレステロール血症、LDL低コレステロール血症および/またはHLD非コレステロール血症、VLDL高タンパク血症、異常リポタンパク血症、アポリポプロテインA-I低タンパク血症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化の疾患、心血管系の疾患、脳血管疾患、末梢循環疾患、メタボリックシンドローム、X症候群、肥満、糖尿病(I型またはII型)、高血糖症、インスリン耐性、耐糖能障害、高インスリン症、糖尿病性合併症、心不全、心筋梗塞、心筋症、高血圧、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、血栓、アルツハイマー病、神経変性疾患、脱髄性疾患、多発性硬化症、副腎白質萎縮症、皮膚炎、乾癬、ざ瘡、皮膚老化、睫毛乱生症、炎症、関節炎、喘息、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病または膵炎から選択され;
該癌が、結腸、大腸、皮膚、乳房、前立腺、卵巣または肺の癌であり;
該血管疾患が、抹消血管不全、抹消血管疾患、間欠性跛行症、抹消血管疾患(PVD)、抹消動脈疾患(PAD)、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)または末梢閉塞性動脈疾患から選択され;
該眼血管疾患が、加齢黄斑変性(AMD)、シュタルガルト病、高血圧性網膜症、糖尿病性網膜症、網膜症、黄斑変性、網膜出血または緑内障から選択され;
該筋性眼疾患が、斜視、進行性外眼筋麻痺、内斜視、外斜視、屈折および遠近調整機能の障害、遠視、近視、乱視、不同視、老眼、遠近調整機能の障害または内眼筋麻痺から選択され;そして
該腎疾患が、糸球体腎炎、糸球体硬化症、ネフローゼ症候群、高血圧性腎硬化症、急性腎炎、反復性血尿、持続性血尿、慢性腎炎、急速進行性腎炎、急性腎臓損傷、慢性腎不全、糖尿病性腎症またはバーター症候群から選択される、
請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
PPARδ関連疾患が、デュシェンヌ型筋ジストロフィーである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
PPARδ関連疾患が、急性腎臓損傷である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
PPARδ関連疾患が、慢性疲労症候群である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項20】
PPARδ関連疾患または病気が、アルパース病、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、カーンズ・セイヤー症候群(KSS)、レーベル遺伝性視神経症(LHON)、MELAS-ミトコンドリア筋症、脳筋症、乳酸アシドーシスおよび脳卒中様発作、ミオクローヌス性てんかんおよび赤色ぼろ線維疾患(MERRF)、神経原性筋衰弱、運動失調、ならびに網膜色素変性症(NARP)またはピアソン症候群である、請求項14に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2016年10月5日に出願された米国仮出願第62/404,474号の利益を主張する。前記の出願の教示全体が、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、薬物物質および薬物製品開発における使用のためのPPARδを活性化することができる化合物の固体形態ならびに関連する組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体デルタ(PPARδ)は、ミトコンドリア生合成を制御することができる核内受容体である。本明細書に参照により援用されるPCT/2014/033088において示されているように、PPARδの活性の調節は、ミトコンドリア機能不全に関連する疾患、発達遅延および症状、例えばアルパース病、MERRF-ミオクローヌス性てんかんおよび赤色ぼろ線維疾患、ピアソン症候群等の処置に有用である。PPARδ活性の調節は、他の病気、例えば筋疾患、脱髄性疾患、血管疾患および代謝疾患の処置において有効である。実際、PPARδは、ミトコンドリア性疾患、筋関連疾患および障害、ならびに他の関連する病気を処置および予防するのを助けるために用いられる化合物に関する重要な生物学的標的である。
【0004】
式(I)の化合物Aおよび式(II)の化合物Bは、PPARδアゴニストである。結晶性であり、他の点で大規模製造を受け入れられる物理特性を有するこれらの化合物の塩形態に関する必要性が、存在する。これらの薬物候補が安定であり、患者に有効に送達される医薬配合物に関する必要性も、存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】PCT/2014/033088
【発明の概要】
【0006】
本明細書で提供されるのは、特に、PPARδ活性を増大させるために有用である化合物Aおよび化合物Bの塩類ならびにそのような化合物を含む組成物である。
一態様において、本明細書においてヘミ硫酸塩の形態の式(I):
【0007】
【化1】
【0008】
の化合物Aが、提供される。一態様において、化合物Aのヘミ硫酸塩は、結晶性である。従って、一態様において、化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩は、実質的に図1または図2に従うX線粉末回折パターンにより特性付けられる。
【0009】
別の態様において、本明細書においてメグルミン塩の形態またはメグルミン塩の水和形態の式(II):
【0010】
【化2】
【0011】
の化合物Bが、提供される。
化合物Aおよび化合物Bの塩類の医薬組成物も、本明細書で開示される。特定の態様は、薬学的に許容可能なキャリヤーまたは賦形剤および開示される化合物の1種類以上を含む。本発明の医薬組成物は、例えば対象におけるPPARδ関連疾患または病気を処置するための療法において用いられることができる。
【0012】
別の態様は、対象に療法上有効量の開示される化合物の1種類もしくは両方またはその化合物(単数または複数)を含む医薬組成物を投与することにより対象においてPPARδ関連疾患または病気を処置することを含む。
【0013】
本明細書において、開示される化合物の1種類以上または開示される化合物の1種類もしくは両方を含む医薬組成物の、PPARδ関連疾患または病気の処置のための医薬品の調製のための使用も、提供される。
【0014】
本明細書で提供される別の態様において、開示される化合物または開示される化合物の1種類もしくは両方を含む医薬組成物は、PPARδ関連疾患または病気の処置における使用のためのものである。
[本発明1001]
ヘミ硫酸塩の形態の式(I):
[化1]
の化合物。
[本発明1002]
結晶性形態の本発明1001の化合物。
[本発明1003]
実質的に図1または図2に従うX線粉末回折パターンにより特性付けられる、本発明1002の化合物。
[本発明1004]
本発明1002の化合物であって、角度7.3±0.2°、14.7±0.2°、19.1±0.2°および22.3±0.2°の2θ度で表されるピークを有するX線粉末回折パターンにより特性付けられる化合物。
[本発明1005]
本発明1004の化合物であって、角度8.3±0.2°、15.8±0.2°、16.5±0.2°、19.7±0.2°または25.8±0.2°の1以上の2θ度で表されるピークを有するX線粉末回折パターンにより特性付けられる化合物。
[本発明1006]
本発明1002の化合物であって、角度6.7±0.2°、13.5±0.2°、17.4±0.2°および18.1±0.2°の2θ度で表されるピークを有するX線粉末回折パターンにより特性付けられる化合物。
[本発明1007]
本発明1006の化合物であって、さらに角度14.5±0.2°、16.1±0.2°、22.4±0.2°、23.2±0.2°または23.4±0.2°の1以上の2θ度で表されるピークを有するX線粉末回折パターンにより特性付けられる化合物。
[本発明1008]
本発明1003~1007のいずれかの化合物であって、該X線粉末回折パターンが、Cu Kアルファ(1.5406オングストローム)放射を用いて収集される化合物。
[本発明1009]
本発明1002~1007のいずれかの化合物であって、該化合物の90%より大きい割合が結晶性形態である化合物。
[本発明1010]
メグルミン塩またはメグルミン塩の水和物の形態の式(II):
[化2]
の化合物。
[本発明1011]
本発明1010の化合物であって、該化合物が一水和物の形態である化合物。
[本発明1012]
本発明1010の化合物であって、該化合物が非水和である化合物。
[本発明1013]
本発明1001~1012の化合物のいずれか1種類および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
[本発明1014]
対象におけるPPARδ関連疾患または病気を処置する方法であって、それを必要とする対象に療法上有効量の1種類以上の本発明1001~1012のいずれかの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩、または本発明1013の医薬組成物を投与することを含む方法。
[本発明1015]
本発明1014の方法であって、該PPARδ関連疾患が、筋構造障害、神経細胞活性化障害、筋疲労障害、筋量障害、ミトコンドリア性疾患、ベータ酸化疾患、代謝疾患、癌、血管疾患、眼血管疾患、筋性眼疾患または腎疾患である方法。
[本発明1016]
本発明1015の方法であって:
該筋構造障害が、ベスレムミオパチー、中心コア疾患、先天性線維タイプ不均等症、遠位型筋ジストロフィー(MD)、デュシェンヌおよびベッカー型MD、エメリ・ドレフュス型MD、顔面肩甲上腕型MD、ヒアリン体ミオパチー、肢帯型MD、筋ナトリウムチャンネル障害、筋緊張性軟骨ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィー、筋細管ミオパチー、ネマリン小体疾患、眼咽頭MDまたは腹圧性尿失禁から選択され;
該神経細胞活性化障害が、筋萎縮性側索硬化症、シャルコー・マリー・トゥース病、ギラン・バレー症候群、ランバート・イートン症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、神経病変、末梢性ニューロパチー、脊髄性筋萎縮症、遅発性尺骨神経麻痺または毒性神経筋障害から選択され;
該筋疲労障害が、慢性疲労症候群、糖尿病(I型またはII型)、糖原貯蔵症、線維筋痛症、フリードライヒ運動失調症、間欠性跛行、脂質蓄積ミオパチー、MELAS、ムコ多糖症、ポンペ病または甲状腺中毒性ミオパチーから選択され;該筋量障害が、悪液質、軟骨変性、脳性麻痺、コンパートメント症候群、重症ミオパチー、封入体筋炎、筋萎縮症(非活動性萎縮)、サルコペニア、ステロイドミオパチーまたは全身性紅斑性狼瘡であり;
該ミトコンドリア性疾患が、アルパース病、CPEO-慢性進行性外眼筋麻痺、カーンズ・セイヤー症候群(KSS)、レーベル遺伝性視神経症(LHON)、MELAS-ミトコンドリア筋症、脳筋症、乳酸アシドーシスおよび脳卒中様発作、MERRF-ミオクローヌス性てんかんおよび赤色ぼろ線維疾患、NARP-神経原性筋衰弱、運動失調、ならびに網膜色素変性症またはピアソン症候群から選択され;
該ベータ酸化疾患が、全身性カルニチントランスポーター、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)II欠損症、極長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(LCHADまたはVLCAD)欠損症、三機能酵素欠損症、中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(MCAD)欠損症、短鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(SCAD)欠損症またはβ酸化のリボフラビン応答性障害(RR-MADD)から選択され;
該代謝疾患が、高脂血症、脂質異常症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、HDL低コレステロール血症、LDL低コレステロール血症および/またはHLD非コレステロール血症、VLDL高タンパク血症、異常リポタンパク血症、アポリポプロテインA-I低タンパク血症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化の疾患、心血管系の疾患、脳血管疾患、末梢循環疾患、メタボリックシンドローム、X症候群、肥満、糖尿病(I型またはII型)、高血糖症、インスリン耐性、耐糖能障害、高インスリン症、糖尿病性合併症、心不全、心筋梗塞、心筋症、高血圧、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、血栓、アルツハイマー病、神経変性疾患、脱髄性疾患、多発性硬化症、副腎白質萎縮症、皮膚炎、乾癬、ざ瘡、皮膚老化、睫毛乱生症、炎症、関節炎、喘息、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病または膵炎から選択され;
該癌が、結腸、大腸、皮膚、乳房、前立腺、卵巣または肺の癌であり;
該血管疾患が、抹消血管不全、抹消血管疾患、間欠性跛行症、抹消血管疾患(PVD)、抹消動脈疾患(PAD)、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)または末梢閉塞性動脈疾患から選択され;
該眼血管疾患が、加齢黄斑変性(AMD)、シュタルガルト病、高血圧性網膜症、糖尿病性網膜症、網膜症、黄斑変性、網膜出血または緑内障から選択され;
該筋性眼疾患が、斜視、進行性外眼筋麻痺、内斜視、外斜視、屈折および遠近調整機能の障害、遠視、近視、乱視、不同視、老眼、遠近調整機能の障害または内眼筋麻痺から選択され;そして
該腎疾患が、糸球体腎炎、糸球体硬化症、ネフローゼ症候群、高血圧性腎硬化症、急性腎炎、反復性血尿、持続性血尿、慢性腎炎、急速進行性腎炎、急性腎臓損傷、慢性腎不全、糖尿病性腎症またはバーター症候群から選択される方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、化合物Aヘミ硫酸塩形態1のX線粉末回折パターンを示している。
図2図2は、化合物Aヘミ硫酸塩形態2のX線粉末回折パターンを示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ベータ(PPAR-β)として、またはNR1C2(核内受容体サブファミリー1、グループC、メンバー2)としても知られているペルオキシソーム増殖因子活性化受容体デルタ(PPAR-δ)は、遺伝子の発現を制御する転写因子として機能する核内受容体タンパク質を指す。PPARδ(OMIM 600409)配列は、例えばGenBank(登録商標)配列データベースから公的に入手可能である(例えば受入番号NP_001165289.1(ヒト、タンパク質)、NP_035275(マウス、タンパク質)、NM_001171818(ヒト、核酸)およびNM_011145(マウス、核酸)。
【0017】
PPARδのリガンド、例えば化合物Aおよび化合物Bは、損傷、例えば骨格筋に対する損傷後に筋芽細胞の増殖を促進することができる。従って、本明細書に参照により援用されるPCT/2014/033088において示されているように、PPARδの活性の調節は、ミトコンドリア機能不全に関連する疾患、発達遅延および症状、例えばアルパース病、MERRF-ミオクローヌス性てんかんおよび赤色ぼろ線維疾患、ピアソン症候群等の処置に有用である。PPARδ活性の調節は、他の病気、例えば筋疾患、脱髄性疾患、血管疾患および代謝疾患の処置において有効である。実際、PPARδは、ミトコンドリア性疾患、筋関連疾患および障害、ならびに他の関連する病気を処置および予防するのを助けるために用いられる化合物に関する重要な生物学的標的である。
【0018】
本明細書において、句“PPARδアゴニスト”は、PPARδの活性を増大させる物質に関する。物質は、それらのPPARδアゴニスト活性に関して、その物質をPPARδを発現している細胞と接触させ、それらのPPARδとの結合を検出し、次いでPPARδの活性化の指標の役目を果たす信号を検出することにより試験されることができる。実施例1aは、化合物Aおよび化合物BがPPARδを活性化することを示すアッセイを提供する。
【0019】
本発明の化合物
本明細書において、(R)-3-メチル-6-(2-((5-メチル-2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェノキシ)ヘキサン酸、すなわち式(I):
【0020】
【化3】
【0021】
の化合物Aのヘミ硫酸塩が、提供される。
ある態様において、化合物Aのヘミ硫酸塩は、結晶性である。
本明細書において、化合物Aのヘミ硫酸塩、特に化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩を作製する方法も、提供される。例えば、アセトニトリルまたは2-プロパノール中での化合物Aおよび硫酸の間の反応による形成の際、化合物のヘミ硫酸塩は、結晶化により反応混合物から単離されることができる(例えば実施例3を参照)。従って、一態様において、本明細書において、化合物Aのヘミ硫酸塩を作製する方法が、提供され、その方法は、化合物Aを溶媒中で硫酸と反応させて化合物Aのヘミ硫酸塩を形成する工程を含む。特定の態様において、溶媒は、アセトニトリルを含む。あるいは、溶媒は、2-プロパノールを含む。化合物Aの合成は、実施例2aにおいて記載される。
【0022】
本明細書において、(R)-3-メチル-6-(2-((5-メチル-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェノキシ)ヘキサン酸のメグルミン塩、すなわち式(II)
【0023】
【化4】
【0024】
の化合物Bも、提供される。
化合物Bは、メグルミン塩の水和物として提供されることもできる。特定の態様において、化合物Bのメグルミン塩は、一水和物形態で提供され、すなわち、化合物Bのメグルミン塩は、水と1対1のモル比で複合体形成している。他の態様において、化合物Bのメグルミン塩は、非水和形態で提供される。用語“非水和形態”は、化合物と複合体形成している水が実質的にないこと(例えば化合物と比較して0.05当量未満、好ましくは0.01当量未満の水)を意味する。
【0025】
化合物Bのメグルミン塩を作製する方法も、提供される。例えば、溶媒、例えば2-プロパノールまたはアセトニトリル中での化合物Bおよびメグルミンの間の反応による形成の際、化合物Bのメグルミン塩が、反応混合物から単離されることができる(例えば実施例11参照)。
【0026】
化合物Bのメグルミン塩の水和物を作製する方法も、提供される。例えば、水性溶媒混合物、例えばテトラヒドロフランおよび水中での化合物Bおよびメグルミンの間の反応による形成の際、化合物Bのメグルミン塩の水和物が、反応混合物から単離されることができる(例えば実施例12参照)。
【0027】
化合物Bの合成は、実施例2bにおいて記載される。
化合物Aのヘミ硫酸塩の多形形態
化合物Aのヘミ硫酸塩は、少なくとも2種類の多形形態、すなわち化合物Aヘミ硫酸塩形態1および化合物Aヘミ硫酸塩形態2の1つで存在することができる。化合物Aヘミ硫酸塩形態1は、許容可能な結晶化度および融点(実施例6);安定性および吸湿性(実施例10);ならびに可溶性および形態制御(実施例7)を有する。実施例10において示されるように、化合物Aヘミ硫酸塩形態1は、化合物Aヘミ硫酸塩形態2よりも熱力学的に安定であることが、決定された。
【0028】
化合物Aヘミ硫酸塩形態1は、実質的に図1に従うX線粉末回折パターンにより特性付けられる。特に、化合物Aヘミ硫酸塩形態1は、表3において列挙されているような2θ度(degrees-2-theta)(±0.2)で表される1個以上の特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンにより特性付けられる(実施例6)。
【0029】
一態様において、化合物Aヘミ硫酸塩形態1は、角度7.3±0.2°、14.7±0.2°、19.1±0.2°および22.3±0.2°における2θ度で表されるピークを有することにおいて表される特徴的なピークを含む第1X線粉末回折パターンにより特性付けられる。一態様において、この第1X線粉末回折パターンは、さらに角度8.3±0.2°、15.8±0.2°、16.5±0.2°、19.7±0.2°または25.8±0.2°の1以上の2θ度で表されるピークを有することにおいて表される特徴的なピークを含む。特定の態様において、この第1X線粉末回折パターンは、角度7.3±0.2°、8.3±0.2°、14.7±0.2°、15.8±0.2°、16.5±0.2°,19.1±0.2°、19.7±0.2°、22.3±0.2°および25.8±0.2°の2θ度で表されるピークを有することにおいて表される特徴的なピークを含む。
【0030】
この第1X線粉末回折パターンは、さらに角度13.0±0.2°、17.3±0.2°、23.8±0.2°、24.5±0.2°、24.9±0.2°、26.3±0.2°または27.8±0.2°の1以上の2θ度で表されるピークを有するX線粉末回折パターンも含むことができる。特定の態様において、この第1X線粉末回折パターンは、角度7.3±0.2°、8.3±0.2°、13.0±0.2°、14.7±0.2°、15.8±0.2°、16.5±0.2°、17.3±0.2°、19.1±0.2°、19.7±0.2°、22.3±0.2°、23.8±0.2°、24.5±0.2°、24.9±0.2°、25.8±0.2°、26.3±0.2°および27.8±0.2°の2θ度で表されるピークを有することにおいて表される特徴的なピークを含む。
【0031】
特定の態様において、この第1X線粉末回折パターンは、角度7.3±0.2°、8.3±0.2°、13.0±0.2°、14.7±0.2°、15.8±0.2°、16.5±0.2°、17.3±0.2°、19.2±0.2°、19.7±0.2°、20.7±0.2°、22.3±0.2°、23.8±0.2°、24.5±0.2°、24.9±0.2°、25.8±0.2°、26.3±0.2°、27.8±0.2°、28.5±0.2°、29.6±0.2°および33.7±0.2°の2θ度で表されるピークを含む。
【0032】
化合物Aヘミ硫酸塩形態2は、実質的に図2に従うX線粉末回折パターンにより特性付けられる。特に、化合物Aヘミ硫酸塩形態2は、表5において列挙されているような2θ度(±0.2)で表される1個以上の特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンにより特性付けられる(実施例8)。
【0033】
一態様において、化合物Aヘミ硫酸塩形態2は、角度6.7±0.2°、13.5±0.2°、17.4±0.2°および18.1±0.2°における2θ度で表されるピークを有することにおいて表される特徴的なピークを含む第2X線粉末回折パターンにより特性付けられることができる。一態様において、この第2X線粉末回折パターンは、さらに角度14.5±0.2°、16.±0.2°、22.4±0.2°、23.2または23.4±0.2°の1以上の2θ度で表されるピークを有することにおいて表される特徴的なピークを含む。特定の態様において、この第2X線粉末回折パターンは、角度6.7±0.2°、13.5±0.2°、14.5±0.2°、16.±0.2°、17.4±0.2°、18.1±0.2°、22.4±0.2°、23.2および23.4±0.2°の2θ度で表されるピークを有することにおいて表される特徴的なピークを含む。
【0034】
この第2X線粉末回折パターンは、さらに角度10.1±0.2°、11.1±0.2°、14.2±0.2°、14.8±0.2°、16.9±0.2°、19.0±0.2°、25.0±0.2°、26.8±0.2°または27.4±0.2°の1以上の2θ度で表されるピークを有するX線粉末回折パターンも含むことができる。特定の態様において、この第2X線粉末回折パターンは、角度6.7±0.2°、10.1±0.2°、11.1±0.2°、13.5±0.2°、14.2±0.2°、14.5±0.2°、14.8±0.2°、16.±0.2°、16.9±0.2°、17.4±0.2°、18.1±0.2°、19.0±0.2°、22.4±0.2°、23.2、23.4±0.2°、25.0±0.2°、26.8±0.2°および27.4±0.2°の2θ度で表されるピークを有することにおいて表される特徴的なピークを含む。
【0035】
特定の態様において、第2X線粉末回折パターンは、角度6.7±0.2°、10.1±0.2°、11.1±0.2°、13.5±0.2°、14.2±0.2°、14.5±0.2°、14.8±0.2°、16.1±0.2°、16.9±0.2°、17.4±0.2°、18.1±0.2°、19.0±0.2°、19.9±0.2°、22.4±0.2°、23.2±0.2°、23.4±0.2°、25.0±0.2°、26.8±0.2°、27.4±0.2°および29.4±0.2°の2θ度で表されるピークを含む。
【0036】
一態様において、化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩は、実質的に不純物を含まない。別の態様において、化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩は、10重量%未満の総不純物を含む。別の態様において、本明細書において、5重量%未満の総不純物を含む化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩が、提供される。別の態様において、化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩は、1重量%未満の総不純物を含む。さらに別の態様において、化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩は、0.1重量%未満の総不純物を含む。
【0037】
特定の態様において、化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩のX線粉末回折パターンは、Cu Kアルファ(1.5406オングストローム)放射を用いて収集される。
別の態様において、本明細書において、化合物Aの非晶質ヘミ硫酸塩を実質的に含まない化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩が、提供される。本明細書で用いられる際、用語“化合物Aの非晶質ヘミ硫酸塩を実質的に含まない”は、化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩が有意な量の化合物Aの非晶質ヘミ硫酸塩を含有しないことを意味する。特定の態様において、化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩の少なくとも約90重量%は、化合物Aの非晶質ヘミ硫酸塩を含まない。他の態様において、化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩の少なくとも約95重量%は、化合物Aの非晶質ヘミ硫酸塩を含まない。さらに他の態様において、化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩の少なくとも約99重量%は、化合物Aの非晶質ヘミ硫酸塩を含まない。さらに他の態様において、化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩の少なくとも約99.9重量%は、化合物Aの非晶質ヘミ硫酸塩を含まない。
【0038】
別の態様において、本明細書において、化合物Aのヘミ硫酸塩の他の結晶性形態を実質的に含まない化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩が、提供される。本明細書で用いられる際、用語“化合物Aのヘミ硫酸塩の他の結晶性形態を実質的に含まない”は、結晶性の化合物Aが有意な量の化合物Aのヘミ硫酸塩の他の結晶性形態を含有しないことを意味する。特定の態様において、化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩の少なくとも約90重量%は、他の結晶性形態を含まない。
【0039】
他の態様において、化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩の少なくとも約95重量%は、他の結晶性形態を含まない。さらに他の態様において、化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩の少なくとも約99重量%は、他の結晶性形態を含まない。さらに他の態様において、化合物Aの結晶性ヘミ硫酸塩の少なくとも約99.9重量%は、他の結晶性形態を含まない。
【0040】
処置の方法
対象におけるPPARδ関連疾患または病気を処置する方法が、開示される。その方法は、対象に療法上有効量の1種類以上の本明細書で提供される化合物または組成物を投与することを含むことができる。
【0041】
一態様において、PPARδ関連疾患は、ミトコンドリア性疾患である。ミトコンドリア性疾患の例は、アルパース病、CPEO-慢性進行性外眼筋麻痺、カーンズ・セイヤー症候群(KSS)、レーベル遺伝性視神経症(LHON)、MELAS-ミトコンドリア筋症、脳筋症、乳酸アシドーシスおよび脳卒中様発作、MERRF-ミオクローヌス性てんかんおよび赤色ぼろ線維疾患、NARP-神経原性筋衰弱、運動失調、ならびに網膜色素変性症、ならびにピアソン症候群を含むが、それらに限定されない。
【0042】
他の態様において、PPARδ関連疾患は、血管疾患(例えば心血管疾患または血流障害もしくは不十分な血流を示す組織における血管新生の増大から利益を得るであろうあらゆる疾患)である。他の態様において、PPARδ関連疾患は、筋疾患、例えば筋ジストロフィーである。筋ジストロフィーの例は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、筋緊張性筋ジストロフィー、眼咽頭筋ジストロフィー、遠位型筋ジストロフィーおよびエメリ・ドレフュス型筋ジストロフィーを含むが、それらに限定されない。
【0043】
ある態様において、PPARδ関連疾患または病気は、脱髄性疾患、例えば多発性硬化症、シャルコー・マリー・トゥース病、ペリツェウス・メルツバッヘル病、脳脊髄炎、視神経脊髄炎、副腎白質ジストロフィーまたはギラン・バレー症候群(Guillian-Barre syndrome)である。
【0044】
他の態様において、PPARδ関連疾患は、代謝性疾患である。代謝性疾患の例は、肥満、高トリグリセリド血症、高脂血症、低アルファリポ蛋白血症、高コレステロール血症、脂質異常症、X症候群およびII型糖尿病を含むが、それらに限定されない。
【0045】
さらに他の態様において、PPARδ関連疾患は、筋構造障害である。筋構造障害の例は、ベスレムミオパチー、中心コア疾患、先天性線維タイプ不均等症、遠位型筋ジストロフィー(MD)、デュシェンヌおよびベッカー型MD、エメリ・ドレフュス型MD、顔面肩甲上腕型MD、ヒアリン体ミオパチー、肢帯型MD、筋ナトリウムチャンネル障害、筋緊張性軟骨ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィー、筋細管ミオパチー、ネマリン小体疾患、眼咽頭MDおよび腹圧性尿失禁を含むが、それらに限定されない。
【0046】
さらに他の態様において、PPARδ関連疾患は、神経細胞活性化障害である。神経細胞活性化障害の例は、筋萎縮性側索硬化症、シャルコー・マリー・トゥース病、ギラン・バレー症候群、ランバート・イートン症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、神経病変、末梢性ニューロパチー、脊髄性筋萎縮症、遅発性尺骨神経麻痺および毒性神経筋障害を含むが、それらに限定されない。
【0047】
他の態様において、PPARδ関連疾患は、筋疲労障害である。筋疲労障害の例は、慢性疲労症候群、糖尿病(I型またはII型)、糖原貯蔵症、線維筋痛症、フリードライヒ運動失調症、間欠性跛行、脂質蓄積ミオパチー、MELAS、ムコ多糖症、ポンペ病および甲状腺中毒性ミオパチーを含むが、それらに限定されない。
【0048】
ある態様において、PPARδ関連疾患は、筋量障害である。筋量障害の例は、悪液質、軟骨変性、脳性麻痺、コンパートメント症候群、重症ミオパチー、封入体筋炎、筋萎縮症(非活動性萎縮)、サルコペニア、ステロイドミオパチーおよび全身性紅斑性狼瘡を含むが、それらに限定されない。
【0049】
他の態様において、PPARδ関連疾患は、ベータ酸化疾患である。ベータ酸化疾患の例は、全身性カルニチントランスポーター、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)II欠損症、極長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(LCHADまたはVLCAD)欠損症、三機能酵素欠損症、中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(MCAD)欠損症、短鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(SCAD)欠損症およびベータ酸化のリボフラビン応答性障害(RR-MADD)を含むが、それらに限定されない。
【0050】
ある態様において、PPARδ関連疾患は、血管疾患である。血管疾患の例は、抹消血管不全、抹消血管疾患、間欠性跛行症、抹消血管疾患(PVD)、抹消動脈疾患(PAD)、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)および末梢閉塞性動脈疾患を含むが、それらに限定されない。
【0051】
他の態様において、PPARδ関連疾患は、眼血管疾患である。眼血管疾患の例は、加齢黄斑変性(AMD)、シュタルガルト病、高血圧性網膜症、糖尿病性網膜症、網膜症、黄斑変性、網膜出血および緑内障を含むが、それらに限定されない。
【0052】
さらに他の態様において、PPARδ関連疾患は、筋性眼疾患である。筋性眼疾患の例は、斜視(寄り目/遊走眼(wandering eye)/白目眼麻痺(walleye ophthalmoparesis))、進行性外眼筋麻痺、内斜視、外斜視、屈折および遠近調整機能の障害、遠視、近視、乱視、不同視、老眼、遠近調整機能の障害または内眼筋麻痺を含むが、それらに限定されない。
【0053】
さらに他の態様において、PPARδ関連疾患は、代謝疾患である。代謝障害の例は、高脂血症、脂質異常症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、HDL低コレステロール血症、LDL低コレステロール血症および/またはHLD非コレステロール血症、VLDL高タンパク血症、異常リポタンパク血症、アポリポプロテインA-I低タンパク血症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化の疾患、心血管系の疾患、脳血管疾患、末梢循環疾患、メタボリックシンドローム、X症候群、肥満、糖尿病(I型またはII型)、高血糖症、インスリン耐性、耐糖能障害、高インスリン症、糖尿病性合併症、心不全、心筋梗塞、心筋症、高血圧、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、血栓、アルツハイマー病、神経変性疾患、脱髄性疾患、多発性硬化症、副腎白質萎縮症、皮膚炎、乾癬、ざ瘡、皮膚老化、睫毛乱生症、炎症、関節炎、喘息、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病および膵炎を含むが、それらに限定されない。
【0054】
さらに他の態様において、PPARδ関連疾患は、癌である。癌の例は、結腸、大腸、皮膚、乳房、前立腺、卵巣および/または肺の癌を含むが、それらに限定されない。
他の態様において、PPARδ関連疾患は、腎疾患である。腎疾患の例は、糸球体腎炎、糸球体硬化症、ネフローゼ症候群、高血圧性腎硬化症、急性腎炎、反復性血尿、持続性血尿、慢性腎炎、急速進行性腎炎、急性腎臓損傷(急性腎不全としても知られている)、慢性腎不全、糖尿病性腎症またはバーター症候群を含むが、それらに限定されない。本明細書に参照により援用されるPCT/US2014/033088は、PPARδの遺伝的および薬理学的活性化が急性熱損傷マウスモデルにおいて筋再生を促進することを実証している。従って、骨格筋の再生効率を高めるための療法標的としてのPPARδの使用も、提供される。
【0055】
医薬組成物およびその投与
対象に“療法上有効量”を提供するために投与される化合物の正確な量は、投与方式、疾患のタイプおよび重症度に、ならびに対象の特徴、例えば健康全般、年齢、性別、体重および薬物への耐性に依存するであろう。当業者は、これらの要因および他の要因に応じて適切な投与量を決定することができるであろう。用語“療法上有効量”は、対象に投与された際に、結果的に例えば対象において処置されている病気の症状を対照と比較して阻害、抑制または低減する臨床結果を含む有益な結果または所望の結果をもたらす量を意味する。例えば、有効量療法上は、例えば1日あたり0.1mg~約50gであることができる。
【0056】
用語“投与する”、“投与すること”、“投与”等は、本明細書で用いられる際、組成物の生物学的作用の所望の部位への送達を可能にするために用いられることができる方法を指す。これらの方法は、関節内(関節中)、静脈内、筋内、腫瘍内、皮内、腹腔内、皮下、経口、局所、髄腔内、吸入、経皮、直腸等を含むが、それらに限定されない。経口および静脈内投与は、例えば処置されている病気が急性腎臓損傷である場合に一般的に用いられる。本明細書で記載される薬剤および方法と共に用いられることができる投与技法は、例えばGoodman and Gilman, The Pharmacological Basis of Therapeutics, 最新版; Pergamon;およびRemington’s, Pharmaceutical Sciences (最新版), Mack Publishing Co.(ペンシルバニア州イーストン)において見付けられる。
【0057】
化合物Aおよび/または化合物Bならびに典型的には少なくとも1種類の追加の物質、例えば賦形剤、本開示の療法薬以外の既知の療法薬、およびそれらの組み合わせを含む医薬組成物が、開示される。
【0058】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路と適合可能であるように配合される。一態様において、組成物は、ルーチン的な手順に従って、ヒトへの静脈内、皮下、筋内、経口、鼻内または局所投与に適合した医薬組成物として配合される。
【0059】
静脈内配合物による療法剤の投与は、医薬産業において周知である。静脈内配合物は、薬学的に許容可能な溶媒または溶液、例えば滅菌水、正常生理食塩水、乳酸加リンゲル液または他の塩溶液、例えばリンゲル液中で溶解された薬学的に有効な薬剤を含む。
【0060】
例えば、その配合物は、有効成分(単数または複数)の全体的な安定性を促進するはずであり、配合物の製造も、費用対効果が高いはずである。これらの要因の全てが、最終的に静脈内配合物の全体的な成功および有用性を決定する。
【0061】
経口配合物は、典型的には例えば錠剤または丸薬の形態の圧縮された製剤として調製される。錠剤は、例えば約5~10%の有効成分(例えば化合物AまたはBの塩);約80%の増量剤、崩壊剤、潤滑剤、滑剤および結合剤;ならびに10%の錠剤の胃または腸中での容易な崩壊、脱凝集および溶解を確実にする化合物を含有することができる。丸薬は、味を隠すために糖、ワニスまたは蝋剤でコートされていることができる。
【実施例
【0062】
実施例1
PPARδ活性スクリーニング
細胞培養およびトランスフェクション:CV-1細胞を、DMEM+10%活性炭処理済みFCS中で増殖させた。細胞を、トランスフェクション時に50~80%のコンフルエンスを与えるようにトランスフェクションの前日に384ウェルプレート中にまいた。0.64マイクログラムのpCMX-PPARDelta LBD、0.1マイクログラムのpCMX.beta.Gal、0.08マイクログラムのpGLMH2004レポーターおよび0.02マイクログラムのpCMX空ベクターを含有する合計0.8gのDNAを、ウェルごとにFuGeneトランスフェクション試薬を製造業者の説明書(Roche)に従って用いてトランスフェクションした。細胞に48時間タンパク質を発現させた後、化合物を添加した。
【0063】
プラスミド:ヒトPPARδを、PPARδ LBDをPCR増幅するために用いた。増幅されたPPARδイソ型のcDNAリガンド結合ドメイン(LBD)は、(PPARδのアミノ酸128~C末端)であり、それを、断片をベクターpCMX GAL(Sadowski et al. (1992), Gene 118, 137)中にフレームが合うようにサブクローニングすることにより酵母転写因子GAL4のDNA結合ドメイン(DBD)に融合させ、プラスミドpCMX-PPARDelta LBDを生成した。結果として生じる融合を、配列決定により検証した。pCMXMH2004ルシフェラーゼレポーターは、多コピーのGAL4 DNA応答要素を最小真核生物プロモーターの下に含有している(Hollenberg and Evans, 1988)。pCMXβGalが、生成された。
【0064】
化合物:全ての化合物を、DMSO中で溶解させて細胞への添加の際に1:1000希釈した。化合物を、0.001~100μMの範囲の濃度で4通りで試験した。細胞を化合物で24時間処理した後、ルシフェラーゼアッセイを行った。それぞれの化合物は、少なくとも2回の別々の実験において試験された。
【0065】
ルシフェラーゼアッセイ:試験化合物を含む培地を吸引し、PBSで洗浄した。次いで、1mMのMg++およびCa++を含む50μLのPBSをそれぞれのウェルに添加した。ルシフェラーゼアッセイを、LucLiteキットを製造業者の説明書(Packard Instruments)に従って用いて実施した。発光を、Perkin Elmer Envisionリーダー上で計数することにより定量化した。3-ガラクトシダーゼ活性を測定するため、それぞれのトランスフェクション溶解物からの25μlの上清を、新しい384マイクロプレートに移した。ベータガラクトシダーゼアッセイを、マイクロウェルプレート中でPromegaからのキットを用いて実施し、Perkin Elmer Envisionリーダー中で読み取った。ベータガラクトシダーゼのデータを、ルシフェラーゼのデータを標準化する(トランスフェクション効率、細胞増殖等)ために用いた。
【0066】
統計的方法:化合物の活性を、未処理の試料と比較した誘導倍率として計算する。それぞれの化合物に関して、有効性(最大活性)は、PPARδアゴニストであるGW501516と比較した相対活性として与えられる。EC50は、最大の観察される活性の50%を与える濃度である。EC50値は、GraphPad PRISM(GraphPad Software、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて非線形回帰により計算された。
【0067】
【表1】
【0068】
本発明の化合物は、PPARδの良好なアゴニスト活性、PPARδの良好な選択性、良好な薬理学的作用、良好なPKプロフィールおよび/または低い毒性(CYP阻害およびhERG阻害を含む)を示す。
【0069】
実施例2
化合物AおよびBの合成的調製
略語
Me メチル
Et エチル
nPr n-プロピル
iPr イソプロピル
cPr シクロプロピル
nBu n-ブチル
iBu イソブチル
tBu tert-ブチル
Boc tert-ブチルオキシカルボニル
Ac アセチル
Ph フェニル
Tf トリフルオロメタンスルホニル
Ts 4-メチルフェニルスルホニル
DIAD ジイソプロピル アゾジカルボキシレート
EDCI 3-(3-ジメチルアミノプロピル)-1-エチルカルボジイミド
HOBt 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
HATU 1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシド ヘキサフルオロホスフェート
HBTU N,N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウム ヘキサフルオロホスフェート
NBS N-ブロモスクシンイミド
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
mCPBA m-クロロペルオキシ安息香酸
Togni試薬 3,3-ジメチル-1-(トリフルオロメチル)-1,2-ベンゾヨードキソール
DCM ジクロロメタン
DME ジメトキシエタン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMF.DMA N,N-ジメチルホルムアミド ジメチルアセタール
DMSO ジメチルスルホキシド
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
MW マイクロ波照射
aq 水性
M mol/Lで表された濃度
RT 室温
TLC 薄層クロマトグラフィー
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
MPLC 中圧液体クロマトグラフィー
LCMS 液体クロマトグラフィー-質量分析
ESI+ エレクトロスプレーイオン化ポジティブモード
ESI- エレクトロスプレーイオン化ネガティブモード
H NMR (DMSO-d) DMSO-d中でのH NMRにおけるピークのδ(ppm)
s 一重線(スペクトル)
d 二重線(スペクトル)
t 三重線(スペクトル)
q 四重線(スペクトル)
dd 二重の二重線(スペクトル)
br 広い線(スペクトル)
m 多重線(スペクトル)
実施例2a:(R)-3-メチル-6-(2-((5-メチル-2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェノキシ)ヘキサン酸(化合物A)の合成
【0070】
【化5】
【0071】
スキーム:
【0072】
【化6】
【0073】
エチル (R)-6-ブロモ-3-メチルヘキサノエートの合成:
【0074】
【化7】
【0075】
1Lの丸底フラスコ中で、エチル (R)-6-ヒドロキシ-3-メチルヘキサノエート(65.0g、373.56mmol)のDCM(650mL)中における溶液を、室温においてPBr(101.0g、373.56mmol)で処理した。反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応が完了したら(TLCによりモニターした)、反応混合物を水(500mL)で希釈し、ジエチルエーテル(3×500mL)で抽出した。有機性抽出物を分離し、無水NaSOで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去すると、表題化合物(57.12g)が得られた。
【0076】
工程1:N-(プロパ-2-イン-1-イル)-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミドの合成:
【0077】
【化8】
【0078】
500mLの丸底フラスコ中で、4-(トリフルオロメチル)安息香酸(10g、52.63mmol)およびプロパ-2-イン-1-アミン(3.47g、63.15mmol)のDMF(200mL)中における撹拌溶液を、室温において窒素雰囲気下でEDCI.HCl(20.09g、105.2mmol)、HOBt(14.2g、105.2mmol)およびEtN(14.6mL、105.2mmol)で順次処理した。反応混合物を室温において窒素雰囲気下で12時間撹拌した。反応が完了したら(TLCによりモニターした)、反応混合物を氷冷水で希釈し、固体が沈殿した。その固体を濾過し、減圧下で乾燥させると、表題化合物(8.42g、70.5%)が得られた。
【0079】
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 7.90 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.71 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.47 (brs, 1H), 4.28-4.62 (m, 2H), 3.12 (t, J = 2.4 Hz, 1H)。LCMS (ESI+, m/z): 228.2 (M+H)+
【0080】
工程2:1-(2-メトキシベンジル)-5-メチル-2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-イミダゾールの合成:
【0081】
【化9】
【0082】
500mLの再密封可能な反応チューブ中で、N-(プロパ-2-イン-1-イル)-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(13.3g、58.59mmol)および2-メトキシベンジルアミン(12.0g、87.84mmol)のトルエン(150mL)中における溶液を室温において窒素雰囲気下でZn(OTf)(6.67g、17.5mmol)で処理した。反応混合物を110℃で12時間加熱した。反応が完了したら(TLCによりモニターした)、反応混合物を水で希釈し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機性抽出物を合わせて飽和NaHCO、ブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥させた。溶液を減圧下で濃縮し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離、ヘキサン類中25%EtOAc)により精製すると、表題化合物(17.3g、85.3%)が得られた。
【0083】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.59-7.54 (m, 4H), 7.30-7.23 (m, 1H), 7.00 (s, 1H), 6.91-6.86 (m, 2H), 6.57 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 5.11 (s, 2H), 3.84 (s, 3H), 2.11 (s, 3H). LCMS (ESI+, m/z): 347.3 (M+H)+
【0084】
工程3:2-((5-メチル-2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェノールの合成:
【0085】
【化10】
【0086】
500mLの丸底フラスコ中で、1-(2-メトキシベンジル)-5-メチル-2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-イミダゾール(17.3g、49.94mmol)のDCM(150mL)中における溶液を、0℃においてBBr(1.0M、90.0mL)で1滴ずつ処理した。反応混合物を室温で4時間撹拌した。反応が完了したら(TLCによりモニターした)、反応混合物を水性NaHCOで塩基性化し(pH約9)、EtOAc(3×500mL)で抽出した。有機性抽出物を合わせて無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮すると、表題化合物(19.2g、粗製)が得られた。
【0087】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 9.99 (s, 1H), 7.88 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.77 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.33 (s, 1H), 7.14-7.10 (m, 1H), 6.83 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.74-6.70 (m, 1H), 6.55 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 5.21 (s, 2H), 2.16 (s, 3H). LCMS (ESI+, m/z): 333.3 (M+H)+
【0088】
工程4:エチル (R)-3-メチル-6-(2-((5-メチル-2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェノキシ)ヘキサノエートの合成:
【0089】
【化11】
【0090】
250mLの丸底フラスコ中で、2-((5-メチル-2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェノール(4.0g、12.0mmol)のDMF(100mL)中における撹拌溶液を、室温において窒素雰囲気下でKOBu(4.03g、36.1mmol)およびエチル (R)-6-ブロモ-3-メチルヘキサノエート(8.52g、36.10mmol)で処理した。結果として得られた反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応が完了したら(TLCによりモニターした)、反応混合物を氷冷水で停止し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機性抽出物を合わせてブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(勾配溶離、ヘキサン類中15~30% EtOAc)により精製すると、表題化合物(3.31g、56.3%)が得られた。LCMS (ESI+, m/z): 489.3 (M+H)+
【0091】
工程5:(R)-3-メチル-6-(2-((5-メチル-2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェノキシ)ヘキサン酸 (化合物A)の合成:
【0092】
【化12】
【0093】
250mLの丸底フラスコ中で、エチル (R)-3-メチル-6-(2-((5-メチル-2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェノキシ)ヘキサノエート(3.3g、6.75mmol)のTHF(30mL)、エタノール(10mL)および水(10mL)中における撹拌溶液を、室温において水酸化リチウム一水和物(1.42g、33.8mmol)で処理した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応が完了したら(TLCによりモニターした)、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた残留物をEtOAcで洗浄し、冷水で希釈し、1N HClで酸性化した(pH約5)。得られた固体を濾過し、減圧下で乾燥させると、表題化合物(1.12g、36.0%)が得られた。
【0094】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 12.00 (brs, 1H), 7.71 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.62 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.26-7.21 (m, 1H), 7.01 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.93 (s, 1H), 6.86-6.83 (m, 1H), 6.38 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 5.16 (s, 2H), 3.98 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.19-2.14 (m, 1H), 2.08 (s, 3H), 1.99-1.93 (m, 1H), 1.84-1.76 (m, 1H), 1.67-1.65 (m, 2H), 1.45-1.42 (m, 1H), 1.28-1.18 (m, 1H), 0.83 (d, J = 6.4 Hz, 3H). 19F NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ -56.4。LCMS (ESI+, m/z): 460.8 (M+H)+。HPLC: 98.89 % (210 nm)。
【0095】
実施例2b:(R)-3-メチル-6-(2-((5-メチル-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェノキシ)ヘキサン酸(化合物B)の合成。
【0096】
【化13】
【0097】
スキーム:
【0098】
【化14】
【0099】
工程1:N-(プロパ-2-イン-1-イル)-6-(トリフルオロメチル)ニコチンアミドの合成:
【0100】
【化15】
【0101】
100mLの丸底フラスコ中で、6-(トリフルオロメチル)ニコチン酸(3g、15.70mmol)およびプロパ-2-イン-1-アミン(1.05g、18.84mmol)のDMF(50mL)中における撹拌溶液を、室温において窒素雰囲気下でHATU(7.2g、18.84mmol)およびEtN(3.1mL、23.55mmol)で処理した。結果として得られた反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応が完了したら(TLCによりモニターした)、反応混合物を冷水で希釈し、沈殿した固体を濾過し、水で洗浄し、減圧下で乾燥させると、表題化合物(2.6g、72.6%)が得られた。
【0102】
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 9.08 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 8.32 (dd, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 7.78 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.62 (brs, 1H), 4.30-4.28 (m, 2H), 2.33 (t, J = 2.4 Hz, 1H)。
LCMS (ESI+, m/z): 229.2 (M+H)+
【0103】
工程2:5-(1-(2-メトキシベンジル)-5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-(トリフルオロメチル)ピリジンの合成:
【0104】
【化16】
【0105】
50mLの再密封可能なチューブ中で、N-(プロパ-2-イン-1-イル)-6-(トリフルオロメチル)ニコチンアミド(1.0g、4.38mmol)および2-メトキシフェニルベンジルアミン(2-methoxyphenybenzyl amine)(1.2g、8.77mmol)のトルエン(10mL)中における溶液を、室温において窒素雰囲気下でZn(OTf)(0.16g、0.43mmol)で処理した。反応混合物を120℃で12時間加熱した。反応が完了したら(TLCによりモニターした)、反応混合物を水で希釈し、EtOAc(3×20mL)で抽出した。有機性抽出物を飽和NaHCO、ブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥させた。溶液を減圧下で濃縮し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離、ヘキサン類中25% EtOAc)により精製すると、表題化合物が得られた(0.8g、52.6%)。
【0106】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.79 (s, 1H), 8.07 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.68 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.31 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 7.09 (s, 1H), 6.94-6.87 (m, 2H), 6.56 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 5.16 (s, 2H), 3.87 (s, 3H)。LCMS (ESI+, m/z): 348.3 (M+H)+
【0107】
工程3:2-((5-メチル-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェノールの合成:
【0108】
【化17】
【0109】
100mLの丸底フラスコ中で、5-(1-(2-メトキシベンジル)-5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-(トリフルオロメチル)ピリジン(0.8g、2.31mmol)のジクロロメタン(300mL)中における溶液を、0℃においてBBr(0.8mL、2.31mmol)で1滴ずつ処理した。反応混合物を室温で2時間処理した。反応が完了したら(TLCによりモニターした)、反応混合物を水性NaHCOで塩基性化し(pH約9)、EtOAcで抽出した。有機性抽出物を無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮すると、表題化合物が得られた(0.5g、65.1%)。
【0110】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 9.92 (s, 1H), 8.83 (s, 1H), 8.12 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.94 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.12 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 7.02 (s, 1H), 6.87 (d, J = 7.8 Hz 1H), 6.73 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 6.37 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 5.20 (s, 2H), 2.15 (s, 3H)。LCMS (ESI+, m/z): 334.3 (M+H)+
【0111】
工程4:エチル (R)-3-メチル-6-(2-((5-メチル-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェノキシ)ヘキサノエートの合成:
【0112】
【化18】
【0113】
50mLの丸底フラスコ中で、2-((5-メチル-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェノール(0.5g、1.50mmol)(その調製に関する手順は、参照により本明細書に援用される米国出願第62/061,483号において開示されている)のDMF(10mL)中における撹拌溶液を、室温において窒素雰囲気下でKCO(0.41g、3.00mmol)およびエチル (R)-6-ブロモ-3-メチルヘキサノエート(0.710g、3.00mmol)で処理した。結果として得られた反応混合物を、60℃で12時間加熱した。反応が完了したら(TLCによりモニターした)、反応混合物を氷冷水で停止し、酢酸エチル(75mL×3)で抽出した。有機性抽出物を合わせてブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(勾配溶離、ヘキサン類中15~30% EtOAc)により精製すると、表題化合物(0.45g、61.3%)が得られた。
【0114】
LCMS (ESI+, m/z): 491.0 (M+H)+
工程5:(R)-3-メチル-6-(2-((5-メチル-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェノキシ)ヘキサン酸(化合物B)の合成:
【0115】
【化19】
【0116】
250mLの丸底フラスコ中で、エチル (R)-3-メチル-6-(2-((5-メチル-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェノキシ)ヘキサノエート(0.45g、0.92mmol)のTHF(5mL)、エタノール(2.5mL)および水(2.5mL)中における撹拌溶液を、室温において水酸化リチウム一水和物(16.0g、74.33mmol)で処理した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応が完了したら(TLCによりモニターした)、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた残留物をEtOAcで洗浄し、冷水で希釈し、1N HClで酸性化した(pH約5)。固体を濾過し、減圧下で乾燥させると、表題化合物(0.166g、39.2%)が得られた。
【0117】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ11.96 (brs, 1H), 8.79 (s, 1H), 8.05 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.90 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.24 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.00 (s, 1H), 6.84 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.43 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 5.21 (s, 2H), 3.98 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.19-2.14 (m, 1H), 2.13 (s, 3H), 2.03-1.94 (m, 1H), 1.85-1.80 (m, 1H), 1.68-1.66 (m, 2H), 1.38-1.36 (m, 1H), 1.28-1.18 (m, 1H), 0.85 (d, J = 6.4 Hz, 3H)。19F NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ -66.46。LCMS (ESI+, m/z): 462.3 (M+H)+。HPLC: 95.11 % (210 nm)。
【0118】
実施例3
化合物A塩のスクリーニング
化合物Aの25mg/mLのストック溶液を、メタノール中で調製した。次いで、2mLの化合物Aのストック溶液を、4mLのアンバーガラスバイアル中に分配した。次いで、塩形成剤(Salt formers)(1当量)を表1において列挙されているようにバイアルに添加し、溶媒を窒素の流れの下での蒸発により除去した。一度蒸発が完了したら、表1において列挙されているスクリーニング溶媒をピペットで入れ、バイアルを密封し、試料を50℃の撹拌プレート上に置いて1時間に至るまで撹拌した。次いで、熱を遮断し、試料を撹拌しながら25℃まで放冷した。結果としてスラリーをもたらした実験は、撹拌された。結果として溶液をもたらした実験は、蒸発結晶化に変換された。
【0119】
実験から単離された固体は、それらが結晶性ならびに独特の固体状態の形態である(塩の形成が起きたことを示唆する)かどうかを決定するためにXRPDにより特性付けられた。
【0120】
化合物Aのナトリウム塩を作製するための試みにおいて、追加の実験を、疑わしい(suspected)ナトリウム塩を用いて実施した。アセトニトリルから単離された疑わしいナトリウム塩を、酢酸エチル中で25℃において6日間スラリー化した。固体をXRPDにより分析し、それは、化合物Aの遊離形態および出発時のアセトニトリルから単離された疑わしいナトリウム塩の物理的混合物を示した。新規の塩形態は、生成されなかった。
【0121】
【表2】
【0122】
実施例4
化合物Aの塩類の安定性
実施例3において調製された硫酸塩、リン酸塩、L-リジン塩およびトリス塩の安定性を試験した。おおよそ20mgのそれぞれの試料を、微量遠心分離チューブ中で1mLの水と組み合わせた。その試料を、温度制御された振盪器上で20℃において850rpmで一夜混合させた。その固体を、固体状態形態変化が起こったかどうかを決定するためにXRPDにより特性付けた。疑わしい硫酸塩ならびに出発物質に関して固体における変化は存在しなかった。しかし、疑わしいリン酸塩、L-リジン塩およびトリス塩は、水性環境において不均化して(disproportionate)出発物質に戻るようである。
【0123】
実施例5
化合物Aヘミ硫酸塩形態1の調製
50mLバイアル中で、883.2mgの化合物Aを35mLのメタノール中で溶解させた。次いで、HSO(1920μL、HO中1M、1当量)をピペットで入れた。溶媒をN下で蒸発させた。一度蒸発したら、2-プロパノール(18mL)をピペットで入れ、続いて撹拌棒を入れた。バイアルに蓋をして、50℃の撹拌プレート上に1時間置き、次いで温度を25℃まで下げ、そこでそれを1日撹拌した。1日後、固体を真空下で濾過し、風乾させた。
【0124】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 7.85 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.74 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.36 (s, 1H), 7.27 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.85 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.62 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 5.26 (s, 2H), 3.96 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.21-2.16 (m, 4H), 1.96 (dd, J = 8.0, 15.2 Hz, 1H), 1.83-1.80 (m, 1H), 1.67-1.59 (m, 2H), 1.35-1.31 (m, 1H), 1.28-1.18 (m, 1H), 0.85 (d, J = 6.4 Hz, 3H)。
【0125】
質量スペクトル(ESI) m/e 461.2。
元素分析:計算値: C 58.93%; H 5.54%; N 5.50%; S 3.15。実測値: C 58.30%; H 5.36%; N 5.42%; S 3.47。
【0126】
化合物Aヘミ硫酸塩形態1はまた、上記の方法と同じ方法に従ってアセトニトリル(18mL)を2-プロパノール(18mL)の代わりに溶媒として用いて得られた。
化合物Aヘミ硫酸塩形態1の元素分析は、それが2対1の比率の化合物A陽イオン対硫酸陰イオンを含有することを示している。
【0127】
硫酸陰イオンの存在ならびにサルフェートの化学量論を、元素分析により確証し、それは、1分子の硫酸陰イオンに対する2分子の化合物Aを明らかにした。
その硫酸塩は、化合物Aヘミ硫酸塩形態1と名付けられた。この形態に対して、より安定な形態が同定され得るかどうかを理解するためおよび不均化のリスクを評価するために、熱力学的安定性形態スクリーニングならびに溶媒和物、水和物に関するスクリーニングを行った(実施例7)。化学的および物理的安定性データならびに吸湿性データも、化合物Aヘミ硫酸塩形態1に関して生成された(実施例11)。
【0128】
実施例6
化合物Aヘミ硫酸塩形態1の特性付け
XRPD(図1)、TGAおよびDSCからなる物理的特性付けを、化合物Aヘミ硫酸塩形態1に関して実施した。化合物Aヘミ硫酸塩形態1に関する図1からのXRPDデータの要約が、表3において提供されている。
【0129】
【表3】
【0130】
X線粉末回折データを、周囲条件下でRigaku Miniflex 600回折計上でCu Kアルファ(1.5406オングストローム)放射を用いて収集した。粉末パターンを、ゼロバックグラウンドホルダー上で0.1mmインデントを用いて40kVおよび15mAにおいて1分あたり2°で2~40°2θの走査速度で収集した。データをHigh Score Plusバージョン4.1を用いて分析した。
【0131】
実施例7
化合物Aヘミ硫酸塩のスクリーニング
熱力学的安定性形態スクリーニングを、熱力学的により安定な多形、溶媒和物および水和物に関してスクリーニングするためならびに不均化して出発物質に戻る傾向を調べるために、化合物Aヘミ硫酸塩形態1を用いて開始した。おおよそ90~110mgの化合物Aヘミ硫酸塩形態1を量り分け、4mLのアンバーガラスバイアル中に入れ、続いて0.8~1mLの溶媒および磁気撹拌棒を入れた。そのバイアルを密封し、次いで温度制御された撹拌プレート上に置き、500rpmで15日間撹拌した。溶媒および温度が、表4において列挙されている。固体のXRPD分析は、25℃におけるメタノール中での実験および25℃における水/メタノール中での実験から単離された固体を除いて固体状態形態における変化が起きなかったことを明らかにした。この新しい形態は、出発時の化合物Aの遊離形態および化合物Aヘミ硫酸塩形態1とは異なっていた。
【0132】
【表4】
【0133】
実施例8
化合物Aヘミ硫酸塩形態2の特性付け
実施例7においてメタノールスラリーおよび水/メタノールスラリーから単離された新規の固体状態形態に対して、追加の特性付けを行い、化合物Aのヘミ硫酸塩形態の新規の多形であることが分かった。この新規の形態は、化合物Aヘミ硫酸塩形態2と名付けられた。XRPD(図2)、TGAおよびDSCからなる物理的特性付けを、化合物Aヘミ硫酸塩形態2に関して窒素下での乾燥後に実施した。化合物Aヘミ硫酸塩形態2に関する図2からのXRPDデータの要約が、表5において提供されている。
【0134】
【表5】
【0135】
X線粉末回折データを、周囲条件下でRigaku Miniflex 600回折計上でCu Kアルファ(1.5406オングストローム)放射を用いて収集した。粉末パターンを、ゼロバックグラウンドホルダー上で0.1mmインデントを用いて40kVおよび15mAにおいて1分あたり2°で2~40°2θの走査速度で収集した。データをHigh Score Plusバージョン4.1を用いて分析した。
【0136】
溶液のHNMRおよび元素分析データも、遊離塩基および最初のヘミ硫酸塩形態1に対して比較した場合の化学変化に関してチェックするために生成された。データは、分子の変換は起こっていないことおよび化合物Aヘミ硫酸塩形態2が溶媒和物ではないことを示している。また、溶液のH NMRおよび元素分析データは、物質が2対1の比率の化合物A陽イオン対硫酸陰イオンを有するヘミ硫酸塩であることと一致していた。
【0137】
実施例9
化合物Aヘミ硫酸塩形態1および形態2の相対的熱力学的安定性
化合物Aヘミ硫酸塩形態1およびヘミ硫酸塩形態2の相対的熱力学的安定性が、それぞれの形態に関する熱分析データならびに競合スラリー実験の比較により決定された。化合物Aヘミ硫酸塩形態1に関するDSCデータは、この形態が185.7℃の溶融開始点および106.9ジュール/グラムの融解エンタルピーを有することを明らかにした。化合物Aヘミ硫酸塩形態2に関するDSCデータは、この形態が177.4℃の溶融開始点および98.9ジュール/グラムの融解エンタルピーを有することを明らかにした。融解熱の法則に従って、化合物Aヘミ硫酸塩形態1およびヘミ硫酸塩形態2は、化合物Aヘミ硫酸塩形態1が2種類の多形の内でより高い融点およびより高い融解エンタルピーを有することを考慮すると、単変的に(montropically)関連している。化合物Aヘミ硫酸塩形態1は、熱力学的により安定な形態である。
【0138】
競合スラリー実験を、化合物Aヘミ硫酸塩形態1および化合物Aヘミ硫酸塩形態2の相対的熱力学的安定性を確証するために実施した。両方の形態の混合物を、25℃において0.5mLのアセトン中で一週間一緒にスラリー化した。両方の形態は、スラリー中になお存在し、従って実験を4℃に移した。4℃において10日後、XRPD分析は、混合物が化合物Aヘミ硫酸塩形態1に変換されたことを示し、これは、化合物Aヘミ硫酸塩形態1が4℃において化合物Aヘミ硫酸塩形態2よりも安定であることを示している。
【0139】
化合物Aヘミ硫酸塩形態1および化合物Aヘミ硫酸塩形態2を、50℃において0.5mLのアセトニトリル中で一緒にスラリー化した。50℃で3日後、XRPD分析は、両方の形態がなおスラリー中に残っていることを示した。アセトニトリル中で50℃において10日後、XRPD分析は、混合物が化合物Aヘミ硫酸塩形態1に変換されたことを示し、これは、化合物Aヘミ硫酸塩形態1が50℃において化合物Aヘミ硫酸塩形態2よりも熱力学的に安定であることを示している。
【0140】
化合物Aヘミ硫酸塩形態1および化合物Aヘミ硫酸塩形態2を、25℃において0.5mLの酢酸エチル中で一緒にスラリー化した。2日後、両方の形態は、スラリー中になお存在し、従って実験を4℃に移した。4℃において8日後、XRPD分析は、形態の混合物中に固体が残っていることを示した。この実験は、混合物が4℃におけるアセトン中および50℃におけるアセトニトリル中で化合物Aヘミ硫酸塩形態1に変換されたことを考慮して、完全に単一の形態に変換される前に停止された。この実験は、化合物Aヘミ硫酸塩形態2から化合物Aヘミ硫酸塩形態1への変換が特定条件下では遅い可能性があることを実証している。
【0141】
熱分析データおよび競合スラリー実験データは、両方とも化合物Aヘミ硫酸塩形態1が化合物Aヘミ硫酸塩形態2よりも熱力学的に安定であることを実証している。メタノールは、化合物Aヘミ硫酸塩形態2が形成された際に常に溶媒系中に存在しており、それは、化合物Aヘミ硫酸塩形態2が、不安定であり決して観察されなかったメタノール溶媒和物の脱溶媒和により形成される可能性があることを示唆している。
【0142】
実施例10
化合物Aヘミ硫酸塩形態1の安定性および吸湿性
8週間の化学的および物理的安定性研究を、化合物Aヘミ硫酸塩形態1に関して実施した。材料を4℃、25℃/60%RH、40℃および40℃/75%RHにおいて8週間ならびに70℃および70℃/75%RHのストレスのかかる条件において2週間保管した。加えて、光安定性も、材料を2サイクルのICH条件に曝露した後測定した。分解および回収率を、HPLCにより測定した。HPLCの結果に関して、4℃で保管された標準に対して比較された固体のパーセント回収率および相対保持時間面積百分率を含む表6を参照。
【0143】
【表6】
【0144】
XRPDを、物理的安定性をチェックするために用いた。固体状態形態における変化は、全ての条件において観察されなかった。
動的蒸気吸着分析を、25℃において化合物Aヘミ硫酸塩形態1に対して実施した。おおよそ90%RHにおいて、その材料は可逆的におおよそ3.5重量%の水を捕捉する(picks up)。DVSが完了した後、収集された固体をXRPDによりチェックし、それは、その材料が化合物Aヘミ硫酸塩形態1のままであることを示した。
【0145】
実施例11
化合物Bのメグルミン塩の調製
2つの別々の方法を用いて、化合物Bのメグルミン塩を生成した。
【0146】
方法1
化合物B(102.7mg)を、4mLのガラスバイアル中でメグルミン(43.7mg)および2mLの2-プロパノールと組み合わせた。そのバイアルを蓋で密封し、内容物に対して25℃で20分間の超音波処理を施し、続いて50℃で60分間撹拌した。次いで、バイアルを新しい撹拌プレートに移し、バイアル中のスラリーを25℃で撹拌した。
【0147】
方法2
化合物B(102.2mg)を、4mLのガラスバイアル中でメグルミン(43.2mg)および2mLのアセトニトリルと組み合わせた。そのバイアルを蓋で密封し、内容物に対して25℃で20分間の超音波処理を施し、続いて50℃で60分間撹拌した。次いで、バイアルを新しい撹拌プレートに移し、バイアル中のスラリーを25℃で撹拌した。
【0148】
方法1および方法2の両方に関して、25℃で2日間の撹拌後、両方の試料を遠心分離し、上清を廃棄し、固体を風乾させた。
実施例12
化合物Bのメグルミン塩の水和物の調製
500mLの丸底フラスコ中で、化合物B(20g、43.33mmol)のTHF(100mL)および水(100mL)中における撹拌溶液を、0℃においてメグルミン(8.45g、43.33mmol)で処理した。結果として得られた反応混合物を、室温で6時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、得られた固体を減圧下で乾燥させると(3時間)、表題化合物が白色固体(28.5g、98.95%)として得られた。
【0149】
1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 8.75 (s, 1H), 8.02 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.82 (d, J = 8.0 Hz 1H), 7.26 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 7.03 (s, 1H), 6.99 (d, J = 8 Hz, 1H), 6.85 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.50 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 5.25 (s, 2H), 4.09-3.99 (m, 3H), 3.97-3.77 (m, 2H), 3.74-3.61 (m, 3H), 3.29-3.06 (m, 2H), 2.64 (s, 3H), 2.22 (s, 3H), 2.18-2.14 (m, 1H), 1.99 - 1.94 (m, 2H), 1.83 - 1.75 (m, 2H), 1.51 - 1.38 (m, 1H), 1.32-1.22 (m, 1H), 0.86 (d, J = 6.0 Hz, 3H)。
【0150】
19F NMR (400 MHz, CD3OD): δ -69.39。
元素分析:C31H43F3N4O8. H2Oに関する計算値: C, 55.18; H, 6.72; N, 8.30。実測値: C, 54.95; H, 6.89; N, 8.07。
【0151】
含水量(カール・フィッシャー): 2.33%。
化合物Bメグルミン塩の元素分析は、それが1対1対の比率の化合物A陽イオン対メグルミン陰イオン対水分子を含有することを示している。
図1
図2