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特許7017570加圧式ディスペンスシステム用のプラスチックボトル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】加圧式ディスペンスシステム用のプラスチックボトル
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20220201BHJP
   B65D 83/14 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
B65D1/02 210
B65D1/02 230
B65D83/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019528802
(86)(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 US2017063827
(87)【国際公開番号】W WO2018102482
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-10-13
(31)【優先権主張番号】15/367,678
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500106743
【氏名又は名称】エス.シー. ジョンソン アンド サン、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100140327
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 千秋
(72)【発明者】
【氏名】ウォラック、 クリストファー ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ステンマーク、 ニルス
(72)【発明者】
【氏名】ハリス、 キンバリー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】プレイター、 ロドニー エル.
(72)【発明者】
【氏名】マクグラス、 ダニエル エス.
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-535676(JP,A)
【文献】特開平02-106317(JP,A)
【文献】特開平04-173538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 83/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧下で製品を収容するためのプラスチックボトルであって、
(a)前記ボトルの底端部にある丸みを帯びた基底部であって、前記ボトルの外側に向かって凸状である前記丸みを帯びた基底部と、
(b)前記ボトルの軸を中心に前記基底部から前記ボトルの頂端部に向かって延びる本体部と、
(c)前記ボトルの頂端部にある縁部とを含み、
前記縁部は前記ボトルの軸を中心に延び、
前記縁部は、前記縁部の外面から外側へ延びる第1のリングと、前記縁部の外面から外側へ延びかつ前記第1のリングの下に配置された第2のリングとを含み、
前記縁部はさらに内面を含み、前記内面は(i)前記ボトルの軸に実質的に垂直に延びる第1部分、及び(ii)前記第1部分の下で前記ボトルの軸に向かって内側かつ下方に傾斜した第2部分を含み、前記第2部分は前記第2のリングに対応する位置から前記第2のリングの下方の位置まで延び、
前記プラスチックボトルは、前記製品をエアゾールとして放出できるように構成される、
プラスチックボトル。
【請求項2】
前記内面は前記第2部分の下方に第3部分を含み、前記第3部分は前記ボトルの軸から外側に傾斜している、請求項1に記載のプラスチックボトル。
【請求項3】
前記第3部分の少なくとも一部分の傾斜が、約0.35mm/mmである、請求項2に記載のプラスチックボトル。
【請求項4】
前記第3部分の少なくとも一部分が、前記ボトルの軸に沿った長さに対する重量の比が約0.25g/mmである、請求項2に記載のプラスチックボトル。
【請求項5】
前記ボトルは、前記縁部の外面から延びるリングをさらに含み、
前記内面の第2部分は、前記リングに隣接する位置から始まる、請求項1に記載のプラスチックボトル。
【請求項6】
前記ボトルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)製である、請求項1に記載のプラスチックボトル。
【請求項7】
加圧下で製品を収容するためのプラスチックボトルであって、
(a)前記ボトルの頂端部にある縁部であって、前記ボトルの軸を中心に延びる縁部と、
(b)前記ボトルの軸を中心に前記縁部から前記ボトルの底端部に向かって延びる本体部と、
(c)前記ボトルの底端部に丸みを帯びた基底部とを含み、
前記丸みを帯びた基底部は前記ボトルの外側に向かって凸状であり、前記基底部は前記ボトルの軸を含む位置で最も厚く、
前記基底部が前記ボトルの軸に対応する位置と、前記ボトルの本体部に隣接する位置との間で3つの部分に分割される場合、前記3つの部分は、前記軸と前記軸から30度に対応する位置との間にある第1部分と、前記第1部分と前記軸から60度に対応する位置との間にある第2部分と、前記第2部分と前記ボトルの本体に隣接する位置との間にある第3部分とを含み、記第1部分は前記基底部の全重量の約20%であり、前記第2部分は前記基底部の全重量の約45%であり、前記第3部分は前記基底部の全重量の約35%であり、
前記プラスチックボトルは、前記製品をエアゾールとして放出できるように構成される、
プラスチックボトル。
【請求項8】
前記第1部分は前記基底部の全外面積の約10%に対応し、前記第2部分は前記基底部の全外面積の約30%に対応し、前記第3部分は前記基底部の全外面積の約60%に対応する、請求項に記載のプラスチックボトル。
【請求項9】
(i)容量8.720kN、(ii)質量2.551kg、(iii)直径12.7mm、(iv)速度4.40m/s、及び(v)1.453kNまでの作動範囲を有する打撃体を用いた、ASTM D3763に準じて実行された落下ダーツ試験において、前記基底部は少なくとも約450Nの破断時のピーク力を有する、請求項に記載のプラスチックボトル。
【請求項10】
前記基底部の破断時のピーク力が、約450Nから約700Nの間である、請求項に記載のプラスチックボトル。
【請求項11】
前記ボトルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)製である、請求項に記載のプラスチックボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にプラスチックボトルを含む加圧式ディスペンスシステム(pressurized dispensing system)に関する。このようなシステムは、例えばエアゾールスプレーを放出するために使用することができる。より具体的には、本発明は、加圧下で製品を収容するためのプラスチックボトルを含むディスペンスシステムに関し、ボトルが、破裂、落下時の分裂、及び応力亀裂などの望ましくない特性を排除又は減少させる独特の構成を有する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール製品を放出するために使用されるシステムのような加圧式ディスペンスシステムは、一般にシステムから放出される前に加圧下で製品を収容するための金属(例えば、スチール又はアルミニウム)容器を含む。このようなシステムで放出される製品の例には、空気清浄剤、布地清涼剤、昆虫忌避剤、塗料、ボディスプレー、ヘアスプレー、靴又は履物スプレー製品、ホイップクリーム及びプロセスチーズが含まれる。最近、プラスチックボトルは、いくつかの潜在的利点を有するため、加圧式ディスペンスシステムにおける金属容器の代替物としてプラスチックボトルを使用することへの関心が高まっている。例えば、プラスチックボトルは、金属容器よりも製造が容易で安価であり、プラスチックボトルは、金属容器よりも多様な興味深い形状に製造することができる。別の例として、プラスチックボトルは、一般に金属容器よりもリサイクルが容易である。
【0003】
プラスチックボトルを備えるシステムを含む加圧式エアゾールディスペンスシステムは、商品として販売されるためには、例えば米国運輸省及びヨーロッパエアゾール連盟(FEA)の安全規制などのエアゾール規制要件を満たさなければならない。そのような規制は、システムが特定の圧力で破裂しないこと、システムが特定の落下試験で衝撃を受けても破損しないこと、及びシステムが破裂したときに材料の破片が生成されないことを要求する。他の規制は、システムが特定の温度に加熱されたときに、例えばシステムの上端部のバルブが吹き飛ばされるような特定の条件下でシステムが変形しないように、容器/ボトルの材料が安全な方式で変形することを要求する。
【0004】
安全規制を満たすことに加えて、商業的に成功するためには、加圧式ディスペンスシステムが他の方式においても機能的である必要がある。例えば、システムは、水平面で直立することができる必要がある。また、高圧ディスペンスシステムで使用されるプラスチックボトルは、応力ひび割れ及び亀裂に対する耐性がなければならず、このような視覚的欠陥は、ボトルが破損しているとユーザが考える可能性がある。応力ひび割れ及び亀裂はまた、ボトルからの製品の漏れにつながり得る。
【0005】
加圧式ディスペンスシステムの一部として使用するための規制上及び機能上の要件を満たすプラスチックボトルを製造するためのいくつかの技術が当該分野で開発されている。このような技術の例には、熱を使用してボトルの特定領域のプラスチックを結晶化する技術がある。このような結晶化されたプラスチックボトルは、そのボトルに使用されている製品の特定の種類に応じて、いくつかの欠陥に対して耐性があり得る。しかし、同時に結晶化を誘導することは、耐衝撃性の低下、応力亀裂の増加、及び他の点では透明なプラスチックボトルの変色を引き起こすなど、いくつかの問題を誘発し得る。要約すると、加圧式ディスペンスシステムにおいてボトルを使用するために必要かつ望ましい特性の組み合わせを有するプラスチックボトルを達成することは困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様によれば、本発明は、加圧下で製品を収容するためのプラスチックボトルを提供する。プラスチックボトルは、ボトルの底端部に丸みを帯びた基底部、ボトルの軸を中心に基底部からボトルの頂端部に向かって延びる本体部、及びボトルの頂端部にある縁部(finish)を含む。前記縁部は、ボトルの軸を中心に延びる。縁部は内面を含み、内面は(i)ボトルの頂端部に隣接する第1部分であって、ボトルの軸に実質的に垂直に延びる第1部分、及び(ii)ボトルの軸に向かって内側に傾斜した第2部分を有する。
【0007】
他の態様によれば、本発明は、加圧下で製品を収容するためのプラスチックボトルを提供する。プラスチックボトルは、ボトルの底端部に丸みを帯びた基底部を含み、基底部は、ボトルの軸に隣接する位置で最も厚く、ボトルの軸から基底部に沿って1mm当たり約3.8mmの割合で減少する厚さを有する。ボトルはまた、ボトルの軸を中心に基底部からボトルの頂端部に向かって延びる本体部、及びボトルの頂端部にある縁部を含む。前記縁部は、ボトルの軸を中心に延びる。
【0008】
また他の態様によれば、本発明は、加圧下で製品を収容するためのプラスチックボトルを提供する。プラスチックボトルは、ボトルの頂端部にある縁部を含み、縁部はボトルの軸を中心に延びている。ボトルの本体部は、ボトルの軸を中心に縁部からボトルの底端部に向かって延びている。丸みを帯びた基底部は、ボトルの底端部に設けられ、基底部はボトルの軸に隣接する位置で最も厚い。基底部がボトルの軸に対応する位置とボトルの本体部に隣接する位置との間で3つの等しい区画に分割される場合、ボトルの軸に隣接する第1部分は、基底部の全重量の約20%であり、第1部分に隣接する第2部分は、基底部の全重量の約45%であり、ボトルの本体部に隣接する第3部分は、基底部の全重量の約35%である。
【0009】
また他の態様によれば、本発明は、加圧下で製品を収容するためのプラスチックボトルを提供する。プラスチックボトルは、ボトルの底端部に丸みを帯びた基底部を含み、基底部は、ボトルの軸に隣接する位置で最も厚く、ボトルの軸から基底部に沿って1mm当たり約3.8mmの割合で減少する厚さを有する。プラスチックボトルはまた、ボトルの軸を中心に基底部からボトルの頂端部に向かって延びる本体部を含む。プラスチックボトルは、ボトルの頂端部にある縁部を含む。前記縁部はボトルの軸を中心に延びる。縁部は、ボトルの頂端部に隣接する第1部分を有する内面を含み、第1部分はボトルの軸に実質的に垂直に延びる。縁部はまた、ボトルの軸に向かって内側に傾斜した第2部分を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態によるボトルの側面図である。
図2図1に示す2-2線に沿ったボトルの断面図である。
図3図2に示すボトルの断面の頂端部の詳細図である。
図4図2に示すボトルの断面の下端部の詳細図である。
図5図1に示すボトルを製造するためのプリフォームの断面図である。
図6】本発明の一実施形態による加圧式ディスペンスシステムの側面図である。
図7図5 に示す7-7線に沿ったディスペンスシステムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、一般にプラスチックボトルを含む加圧式ディスペンスシステムに関する。より具体的には、本発明は、加圧下で製品を収容するためのプラスチックボトルを含むディスペンスシステムに関し、ボトルが、破裂、落下時の分裂、及び応力亀裂などの望ましくない特性を排除又は減少させる独特の構成を有する。
【0012】
以下の説明では、エアゾールディスペンスシステムに使用されるプラスチックボトルの特定の状況において本発明の特徴を説明する。しかしながら、当業者は、本発明がエアゾール製品との使用に限定されないことを容易に理解できるはずである。むしろ、本明細書に記載されたプラスチックボトルを含む加圧式ディスペンスシステムは、エアゾール以外の製品と共に代替的に使用することができる。例えば、本明細書に記載のディスペンスシステムは、シェービングクリーム又は石けんなどの泡製品を放出するために使用されてもよく、又はソーダ、ホイップクリーム、又はプロセスチーズなどのような食品を放出するのに使用されてもよい。
【0013】
図1は、本発明の実施形態による加圧式ディスペンスシステムに使用するためのボトル100を示す。明確にするために、この図は、ボトル100を含む完全なディスペンスシステムの部分になり得る構成要素の一部を含まない。例えば、スプレー機構は、図1のボトル100の頂部に示されておらず、ボトル100は、その底部にボトル100の直立を可能にする構造(例えば、ベースカップ)を含まない。ボトル100を使用するディスペンスシステムのより完全な説明は、以下に記載される。
【0014】
この実施形態におけるボトル100は、プラスチック材料から作られる。従って、ボトル100は、例えば、当技術分野において周知の射出成形、圧縮成形、及び/又はブロー成形技術を用いて形成されてもよい。射出成型及びブロー成形の工程では、プラスチックプリフォーム(preform)は、まず射出成形を使用して形成される。その後、プラスチックプリフォームは加熱されてボトル100の最終形状に延伸ブロー成形される。このようなプラスチックのいくつかの例には、分岐型(branched)又は線状PET、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)及び他のポリエステルなどのポリオレフィン(PO)、及びそれらの混合物(ブレンド)を含む。図1に示されるボトル100の形状、サイズ、及び割合は、単なる例示であることに留意されたい。実際に、ボトル100を形成するためにプラスチックを使用する利点の1つは、プラスチックが多種多様な形状及びサイズに成形され得る点である。
【0015】
ボトル100は、上端部102、基底部106、及び上端部102と基底部106との間に側壁105を有する本体部104を含む。この実施形態では、ボトル100の本体部104は、円形であり、軸線Aを中心に延びる。上端部102は、ボトル100の開口部112を囲む圧着リング110を有する縁部(finish)108を含む。バルブ(図示せず)は、圧着リング110に圧着してバルブをボトル100にしっかり取り付けることができる。それにより、ボトル100に収容されている製品は、バルブを介して放出されることができる。縁部108はまた、圧着リング110の下に配置された移送リング114を含む。ボトル100を製造する工程中に、ボトル100のプリフォームは、加工ステーションの間でプリフォームを移送するために移送リング114で把持されてもよい。
【0016】
線B-Bは、概略的に縁部108と本体部104とを区別する位置で示されている。ボトル100を製造する射出及び延伸ブロー成形の工程において、線B-Bはまた、射出成形の工程で形成されるがブロー成形の工程で再成形されていない部分(即ち、縁部108)から、ブロー成形の工程で引き伸ばされるボトル100の部分(即ち、本体部104及び基底部106)を区別する。ブロー成形の工程において、ボトル100がどのように引き伸ばされるかについてのさらなる詳細な説明は、ボトル100を製造するために使用されたプリフォームの説明と共に以下に説明される。
【0017】
特に、本発明の実施形態では、ボトル100は、ボトル100が形成される延伸ブロー成形の工程中にヒートセットを使用することによって意図的に結晶化度(crystallinity)が誘因されないように製造される。例えば、射出成形及び延伸ブロー成形を含むボトル100を製造する工程では、ボトル領域の結晶化度を意図的に高めるために実行される加熱などのステップはなく、ボトル100内の任意の結晶化度は、単に射出成形及び延伸ブロー成形の結果である。このように、ボトル100のプラスチック内の結晶化度は、特にブロー成形の工程で伸張しないボトル100の縁部領域108で低く保たれる。本発明の特定の例示的な実施形態では、縁部領域は、縁部領域108で約10%未満の結晶化度、本体部104で約25%未満の結晶化度、及び基底部106で約15%未満の結晶化度を有する。本明細書で使用されるように、結晶化度は、以下のようにASTM規格D1505に従って次のように決定される。
(数式1)
結晶化度%=[(ds-da)/(dc-da)]×100
ここで、dsはサンプル密度(g/cm)、daは結晶化度0%の非晶質膜の密度(PETの場合、daは1.333g/cm)であり、dcは単位セルパラメータ(PETの場合dc=1.455g/cm)から算出された結晶の密度である。
【0018】
図3は、ボトル100の頂端部の断面図である。図3から分かるように、ボトル100の内面の第1部分202Aは開口部112から下方に延びている。この第1部分202Aは、移送リング114に概ね隣接する位置まで軸線Aに実質的に平行である。その位置で、縁部108の領域の内面の第2部分202Bは、ボトル100の軸線Aに向かって内側に傾斜しており、第2部分202Bは移送リング114の下へ続いている。第2部分202Bの後に、内面は軸線A-Aから外側に傾斜した第3部分202Cを有する。第3部分202Cは、本体部104に対応するボトルの部分内に線B-Bより下にある内面の第4部分202Dに続いている。その後、第4部分202Dは、図3の線C-Cで示されるボトル100上の位置に続く。第4部分202Dでは、ボトル100の厚さは、線C-Cに対応する点で以下の程度まで減少し、ボトル100は、基底部106に到達するまで本体部104の側壁105を介して実質的に一定の厚さを有する。軸線A-Aから移送リング114の上下のボトルの外面の部分204A及び204Bまでの直径は、ほぼ同じであることに留意されたい。このように、内面部分202B、202C、及び202Dを含む縁部102の部分は、内面部分202Aがネックの縁部102全体を通して軸A-Aと平行して連続する構成に比べてさらに厚い。即ち、ボトル100は、標準的なボトル形状と比較して、Mと表示された部分に追加的な材料を含む。
【0019】
本発明者らは、ボトル100の部分Mにある追加の材料が驚くべきことに様々な方式でボトルの性能を向上させるを見出した。上述したように、縁部に追加の材料を含む構成を有するボトルは、ボトルが加圧されたときの膨張に対する耐性が増加し、また部分Mに追加の材料を含まないボトルに比べて応力亀裂が著しく少なかった。ボトル100内の部分Mの位置決めに対応して、概ね縁部108の外側部分にさらなる追加の材料がまた設けられるようにボトルが構成されたとき、ボトルの応力亀裂に対する耐性に大きな改善が見られなかったことも注目に値する。縁部108の外側部分に設けられた追加の材料を含むプラスチックボトルの例は、米国特許第7,303,087 B2号公報に見ることができる。その特許は、プラスチックボトルのネック及びショルダ領域に補強を提供することによって変形を低減するように設計されたボトルが記載されており、この補強はボトルの外側に向かう方向に壁の厚さを増すことによって達成される。本発明は、ボトルの外側部分上に追加の材料を提供する代わりに、ボトルの内側部分に追加の材料が効果的に設けられる点が異なり、即ち、上述したように、縁部102の領域及び本体部104の部分でボトル100の内面の一部が内側に傾斜している。
【0020】
本発明者らはまた、移送リング114の真下から通常の側壁105の厚さが始まる位置(図3の線C-Cで示される)までの長さに対する材料の重量の特定割合が結果的に優れた特性を有するボトル100をもたらすことを見出した。具体的には、本発明の一実施形態では、ボトル100は、移送リング144の真下から通常の側壁105の厚さが始まる位置までの距離に、長さ1ミリメートル(mm)当たり約0.25グラム(g)の材料を含む。このような長さに対する重量の割合を達成するために、ボトル100を構成する材料は、上述したように部分202B、202C、及び202Dが傾斜するように分布して提供してもよい。しかし、長さに対する重量の割合0.25g/mmを依然として達成しながら他の分布を使用することもできる。傾斜面を使用する場合、本発明のまた他の態様は、外面に対する部分202C及び202D内の内面の傾斜が約0.35mm/mmである。このような材料の分布により、ボトルは縁部108の領域において優れた応力亀裂を提供する。さらに、このような材料分布を有するボトルは、以下に論じるように、ボトルが特定の基本構成を備えている場合に相乗的な特性を有する。
【0021】
本発明の特定の例示的な実施形態では、ボトル100は、部分202Bの初めで約3.75mmの厚さに構成され、移送リング114の下約1mmで最大約2.85mmの厚に傾斜する。ボトル厚さは、圧着リングの約7mm下の位置で約0.80mmの厚さに減少する。そして、ボトルがそのような寸法を有してPETで製造されるとき、ボトルは、移送リングの真下から圧着リングの約7mm下の位置までの長さで約1.80gの材料が提供される。
【0022】
図4は、ボトル100の基底部106の断面図である。ボトル100の基底部面302は、概ね楕円形の形状を有する。本発明の開発において、丸い形状を有するボトルの構成は、ボトルが真っすぐに立てるように特に設計された基本形状よりもはるかに良好に機能することを見出した。例えば、試験ボトルに製品を満たして加熱すると、ボトルに足を提供するように構成された基底部の形状は、多くの場合外側に膨らんだ。また、自立型基底部を有するボトルは、落下試験で破損することが多く、成形された基底部は、衝撃を受けて破裂した。さらに、ボトルが加圧されると自立型基底部は基底部の周りに応力点が追加され、応力亀裂がしばしば広がった。丸みを帯びた基底部を使用した場合、これらの全ての問題は完全に除去されないものの大幅に軽減され、その例が図4に示される。丸みを帯びた基底部ボトルを直立させるために、例えば、ベースカップをボトル100の底端部(基底部)106に取り付けることもできる。ベースカップの詳細、及びベースカップがボトル100にどのように取り付けることができるかは、同一出願人による米国特許出願第15/166,337号に見出すことができ、これは、その全体が本明細書に参考として引用される。
【0023】
図4に示される断面において、基底部106は、軸線A-Aと基底部(本体部104の側壁105に隣接する)との間で、1、2、及び3で表示された3つの等しい区画に分割される。即ち、1と表示された部分は、軸線Aと軸線Aから30°の角度α1に対応する位置との間の基底部106の部分を含み、2と表示された部分は、1と表示された部分と軸線Aから60°の角度α2に対応する位置との間の基底部106の部分を含み、3と表示された部分は、2と表示された部分と軸線Aから90°の角度α3に対応する位置との間の基底部分を含む。ボトル100の基底部は、部分1で最も厚い、即ちボトルの軸線Aに最も近い基底部106の部分である。この部分から、基底部106の厚さは部分2及び部分3で徐々に減少する。本発明者らは、基底部106の厚さのこのような漸進的な減少は、落下試験での破損及び応力亀裂に対する耐性に関して、ボトル性能と密接に関連することを見出した。さらに、本発明者らは、基底部106の厚さが基底部106に沿って1mm当たり約3.8mmの割合で減少すると、落下試験における驚くほど高い破損耐性及び応力亀裂に対する驚くほど高い耐性が達成され得ることを見出した。
【0024】
また、本発明者らは、部分1~3に特定の相対的パラメータがあるとき、驚くほど優れた性能が得られることを見出した。特に、本発明の一実施形態では、部分1が基底部106の全外表面積の約10%、及び基底部106の重量の約20%を占め、部分2が基底部106の全外表面積の約30%、及び基底部106の重量の約45%を占めて、部分3は、全外表面積の約60%、及び基底部106の全重量の約35%を占める。これらのパラメータにより、基底部106は、他の構成と比較して落下試験での破損に対するかなりの耐性及び応力亀裂に対する耐性を有する。
【0025】
基底部106の他の態様は、ボトル100のような構成を有する異なるボトルにおける衝撃に耐え得る基底部の相対的な一貫性である。これに関し、基底部106が衝撃に耐えることができる最大の力は、任意の所与のボトルデザインによって異なり得る。これは、特定のボトル製造過程中に存在する正確な加工条件など、所与のボトルの実際の耐衝撃性に影響を及ぼし得る多くの要因によるものである。それにもかかわらず、特定のデザインを有するボトルが、例えば一般的に上述した規制を満たすために、破損することなく耐えることができなければならない最小の衝撃力が存在する。衝撃力に耐えるためのボトルの基底部の能力が特定のボトルデザインに対して大きく変化しない場合、ボトルデザインの信頼性に関する保証が得られるため、これもまた有益である。
【0026】
与えられたプラスチックボトルデザインにおいて、基底部に破損をもたらし得る衝撃力を決定する1つの方式は、荷重及び変位センサを用いた高速衝撃試験によるものである。このような試験は、例えばダーツの内側のロードセルが試験ボトルの基底部を破壊するのに必要な力とエネルギーを記録する落下ダーツ試験を用いて実行されてもよい。(本明細書に記載されるように)本発明によるボトルに対してこのような試験を実施し、その結果を異なるデザインを有する他のプラスチックボトルの試験と比較すると、基底部の破壊時に測定された最も小さい力でさえも、ボトルが加圧製品を収容するのに十分であるため、本発明によるボトル基底部の全てが衝撃に対する高い耐性を有することを見出した。本発明者らはまた、本発明によるボトル内の基底部が最小測定力と基底部を破壊した最大測定力との間の比較的狭い範囲を有することを見出した。具体的には、(i)容量8.720kN、(ii)質量2.551kg、(iii)直径12.7mm、(iv)速度4.40m/s、及び(v)1.453kNまでの作動範囲を有する打撃体(striker)を用いた、ASTM D3763に準ずる落下ダーツ試験において、本発明による構成を有するPETで製造されたボトルの基底部は、約450Nから約700Nの間の破断時のピーク力を有した。約450Nの最小力は、他の構成を有する他のプラスチックボトルで見られる最小力よりも大きかった。さらに、最小力と最大力との間の250Nの範囲は、他の構成を有する他のプラスチックボトルの範囲よりも狭かった。
【0027】
本発明者らは、本明細書に記載の縁部の構成及びボトルの基底部の構成は、異なる機能的要件(例えば、応力亀裂に対する耐性)を大きく上回ると共に、本明細書に記載の安全要件(例えば、破裂に強く、落下時の欠陥がない)を満たすボトルを相乗的な作用によってもたらすと考えられる。例えば、プラスチックボトルが本明細書に記載の構成及び特性を有する丸みを帯びた基底部を含まない場合、応力亀裂の増加などの悪影響がボトルの縁部に見られることを本発明者らは留意した。また別の例として、上述のように、縁部の外側部分に非常に多くの追加材料が付加された場合、ボトルの製造過程中にサイクル時間が増加し、それがボトルの基底部に悪影響を及ぼすことにも本発明者らは留意した。その結果、ボトルの優れた性能を達成するために、縁部と基底部の独創的な構成が共に機能する。
【0028】
図4は、ボトル100を形成するために使用することができるプリフォーム400の断面図である。当技術分野で周知のように、プリフォーム400は射出及びブロー成形の工程における中間生成物であり、プリフォーム400はブロー成形によって最終生成物を形成する射出成形製品である。プリフォーム400は、ボトル100の縁部102に対応する縁部分(finish portion)402、ボトル100の本体部に対応する本体部分404、及びボトル100の基底部106に対応する基底部分406を含む。上述したように、プリフォーム400の縁部分402は、ブロー成形の工程中に変化しない。従って、プリフォーム400の縁部分402は、ボトル100の縁部分102とほぼ同じの構成を有する。しかし、本体部分404及び基底部分406は、ボトル100の本体部分104及び基底部分106の最終形状に引き伸ばされる。
【0029】
プリフォーム400の縁部分402は、移送リング414から下方に延びる厚肉材料部分MP1及びMP2を含む。厚肉材料部分MP1及びMP2は、上述したように、ボトル100の追加材料部分Mに対応する。厚肉材料部分MP1は、プリフォーム400の縁部分402にあり、従ってボトル100内の追加材料部分Mとほぼ同じ構成を有する。例えば、ボトル100の縁部102にある内面部分202Bがボトルの軸線Aに対して内側に傾斜するのと同様に、厚肉材料部分MP1の一部がプリフォーム400の軸線Aに対して内側に傾斜する。一方、厚肉材料部分MP2は、プリフォーム400の本体部分404内に位置し、従って、ボトル100を製造するためのブロー成形の工程中に厚肉材料部分MP2が引き伸ばされる。従って、厚肉材料部分MP2は、ボトル100の追加材料部分Mの対応する部分とは異なる構成を有する。
【0030】
特に、プリフォーム400は、丸みを帯びた基底部を有するボトルを形成するように構成されるため、プリフォーム400の基底部領域402には、段差がない。従って、プリフォーム400は、丸みを帯びていない基底部を有するボトルを形成するのに使用されるプリフォーム(例えば、ボトルを直立させるための足を有するボトル)に比べて材料の量が少ない。材料の量を減らすことにより、ボトルの製造におけるサイクル時間を比較的短くすることができる。そして、このサイクル時間の短縮により、ボトルの基底部に結晶化度が低下する。上述したように、結晶化度は耐衝撃性を低下させ、応力亀裂を増加させる。プリフォーム400の丸みを帯びた基底部は、ブロー成形の工程においてプリフォーム400を引き伸ばすのに使用されるブローロッド(blow rod)との相互作用が制限されているという点でさらに有利である。
【0031】
プラスチックボトル100を使用する高圧ディスペンスシステム500の一例が図6及び図7に示されている。システム500では、ボトル100の丸みを帯びた基底部106がベースカップ600に取り付けられている。ベースカップ600は、ボトル100が丸みを帯びた基底部106を有するにもかかわらず、システム400が平坦な表面上で直立することを可能にする。システム500の上端部には、バルブ504を含むスプレー機構502がある。ボトル100内に収容されている加圧製品は、スプレー機構502を介して放出される。図示されてはいないが、キャップがスプレー機構502を覆って設けられてもよい。当業者は、本明細書に記載のタイプの高圧ディスペンスシステムと共に使用することができる様々なバルブ、スプレー機構、及びキャップを認識するであろう。
【0032】
本発明の特定の例示的な実施形態において、システム500は、空気清浄組成物を放出するのに使用される。空気清浄組成物の配合物の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる同一出願人による米国特許出願第15/094,542に見出すことができる。
【0033】
本発明は、特定の具体的な実施形態として説明されているが、本開示に照らして、多くの追加の改変及び変形が当業者には明らかであろう。従って、本発明は、具体的に記載した以外の方法で実施することができることを理解されたい。従って、本発明の例示的な実施形態は、全ての点で例示的であって制限的でないとみなされるべきであり、本発明の範囲は、上記の説明ではなく、本出願及びその均等物によって支持される任意の請求項によって決定されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本明細書に記載される本発明は、加圧式ディスペンスシステムの商業的生産において使用され得る。そのような加圧式ディスペンスシステムは、例えば、エアゾール製品の市場において、広範な用途を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7