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  • 特許-冷却液組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】冷却液組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/10 20060101AFI20220201BHJP
   C09K 5/20 20060101ALI20220201BHJP
   H01M 10/613 20140101ALN20220201BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALN20220201BHJP
【FI】
C09K5/10 F
C09K5/20
H01M10/613
H01M10/6567
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020136631
(22)【出願日】2020-08-13
【審査請求日】2021-10-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591125289
【氏名又は名称】日本ケミカル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草野 雄也
(72)【発明者】
【氏名】渡部 雅王
(72)【発明者】
【氏名】中村 大貴
(72)【発明者】
【氏名】大坪 巧
(72)【発明者】
【氏名】吉井 揚一郎
(72)【発明者】
【氏名】高木 伸和
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 悠
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-221663(JP,A)
【文献】特開平8-311670(JP,A)
【文献】特表2000-504782(JP,A)
【文献】特表2018-537551(JP,A)
【文献】特表2006-503959(JP,A)
【文献】特表2004-517209(JP,A)
【文献】特開平10-30086(JP,A)
【文献】米国特許第6228283(US,B1)
【文献】米国特許第6203719(US,B1)
【文献】米国特許第4389371(US,A)
【文献】中国特許出願公開第108913106(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107629765(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105255455(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/00-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分:
a)アルコール;
b)水;
c1)トリアゾール類;
c2)イミダゾール類;
d)リン酸イオン;及び
e)メタケイ酸塩
を含む、冷却液組成物。
【請求項2】
トリアゾール類の含有量に対するイミダゾール類の含有量の比(c2/c1)が0.1未満である、請求項1に記載の冷却液組成物。
【請求項3】
pHが5.5~9.0である、請求項1又は2に記載の冷却液組成物。
【請求項4】
バッテリーを含む冷却回路用である、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却液組成物。
【請求項5】
導電率が25℃において200μS/cm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の冷却液組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の冷却液組成物を得るための濃縮冷却液組成物であって、水を用いて希釈して用いられる、濃縮冷却液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却液組成物に関し、特にバッテリーを有する自動車用冷却液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、エンジン等を冷却するために冷却液が用いられているが、バッテリーを有する自動車においてもバッテリー等を冷却するために冷却液が用いられている。バッテリーを冷却するために用いられる冷却液には種々の特性が求められ、例えば、低導電性及び高防食性であることが求められる。しかし、防食性向上のために用いられる防錆剤は、一般に冷却液の導電率を上昇させるため、冷却液において低導電性及び高防食性を両立することは難しかった。また、冷却液においてアルミニウムの防食性が不足すると、アルミニウム腐食により水素が発生し、リザーブタンク内での水素濃度の上昇や液面低下を招く恐れがある。
【0003】
冷却液組成物としては、種々の成分を含むものが知られている。例えば、特許文献1及び2には、トリアゾールやイミダゾール等のアゾール類を含む冷却液組成物が開示されている。また、特許文献3には、リン酸又はそのアルカリ金属塩を含む冷却液組成物が開示されている。また、特許文献4には、水素発生システムにおいて、リン酸を添加することで水素生成を停止することができることが開示されている。
【0004】
しかし、従来の冷却液組成物においては、低導電性、高防食性及び低水素発生性の全てを満たすことについて改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-278855号公報
【文献】特表2006-510168号公報
【文献】特開2001-72967号公報
【文献】特開2011-79712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の通り、従来の冷却液組成物においては、低導電性、高防食性及び低水素発生性の全てを満たすことについて改善の余地があった。それ故、本発明は、低導電性、高防食性及び低水素発生性を有する冷却液組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、トリアゾール類、イミダゾール類及びリン酸イオンを組み合わせることにより、冷却液組成物が低導電性、高防食性及び低水素発生性の全てを有することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)下記成分:
a)アルコール;
b)水;
c1)トリアゾール類;
c2)イミダゾール類;
d)リン酸イオン;及び
e)メタケイ酸塩
を含む、冷却液組成物。
(2)トリアゾール類の含有量に対するイミダゾール類の含有量の比(c2/c1)が0.1未満である、前記(1)に記載の冷却液組成物。
(3)pHが5.5~9.0である、前記(1)又は(2)に記載の冷却液組成物。
(4)バッテリーを含む冷却回路用である、前記(1)~(3)のいずれかに記載の冷却液組成物。
(5)導電率が25℃において200μS/cm以下である、前記(1)~(4)のいずれかに記載の冷却液組成物。
(6)前記(1)~(5)のいずれかに記載の冷却液組成物を得るための濃縮冷却液組成物であって、水を用いて希釈して用いられる、濃縮冷却液組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、低導電性、高防食性及び低水素発生性を有する冷却液組成物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例における水素発生性試験に用いた装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明の冷却液組成物は、下記成分:a)アルコール;b)水;c1)トリアゾール類;c2)イミダゾール類;d)リン酸イオン;及びe)メタケイ酸塩を含む。本発明の冷却液組成物において、トリアゾール類、イミダゾール類及びリン酸イオンを組み合わせることにより、低導電性を維持しつつ、高い金属防食性及び低水素発生性を両立することができる。
【0013】
本発明の冷却液組成物において、アルコール(成分a))及び水(成分b))は基剤として用いられている。
【0014】
アルコールは、凝固点降下剤として機能し、不凍性を有する。アルコールとしては、例えば、一価アルコール、二価アルコール、三価アルコール及びグリコールモノアルキルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコール類を挙げることができる。
【0015】
一価アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールの中から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるものを挙げることができる。
【0016】
二価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ヘキシレングリコールの中から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるものを挙げることができる。
【0017】
三価アルコールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、5-メチル-1,2,4-ヘプタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオールの中から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるものを挙げることができる。
【0018】
グリコールモノアルキルエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルの中から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるものを挙げることができる。
【0019】
上記アルコール類の中でもエチレングリコール、プロピレングリコール及び1,3-プロパンジオールが、取り扱い性、価格、入手容易性の観点から好ましく、エチレングリコールがより好ましい。
【0020】
上記アルコール類の含有量は、不凍性を考慮し、基剤の質量に対して20質量%~80質量%であることが好ましく、30質量%~70質量%であることがより好ましく、40質量%~60質量%であることが特に好ましい。
【0021】
水としては、例えばイオン交換水及び蒸留水を用いることができる。水の含有量は、基剤の質量に対して20質量%~80質量%であることが好ましく、30質量%~70質量%であることがより好ましく、40質量%~60質量%であることが特に好ましい。
【0022】
本発明の冷却液組成物は、トリアゾール類(成分c1))を含む。冷却液組成物がトリアゾール類を含むことにより、金属防食性(特にアルミニウム及び鋼の防食性)が向上し、水素発生性も低くなる。
【0023】
トリアゾール類としては、特に限定されずに、例えば芳香族トリアゾール又はアルキル置換芳香族トリアゾールを用いることができ、ベンゾトリアゾール及びトリルトリアゾールが好ましい。
【0024】
本発明の冷却液組成物において、トリアゾール類の含有量は、基剤を100質量%として、好ましくは0.05質量%~1.0質量%であり、より好ましくは0.05質量%~0.5質量%である。トリアゾール類の含有量がこの範囲内であると、低導電性を維持しつつ、アルミニウム及び鋼の高い防食性、並びに低い水素発生性が達成される。
【0025】
本発明の冷却液組成物は、イミダゾール類(成分c2))を含む。冷却液組成物がイミダゾール類を含むことにより、金属防食性(特に鋼の防食性)が向上する。
【0026】
イミダゾール類としては、特に限定されずに、例えばイミダゾール、アルキル又はアリール置換イミダゾール及び縮合したイミダゾールを用いることができ、イミダゾール、アルキル置換イミダゾール及びベンゾイミダゾールが好ましく、アルキル置換イミダゾールがより好ましく、1-メチルイミダゾールが特に好ましい。
【0027】
本発明の冷却液組成物において、イミダゾール類の含有量は、基剤を100質量%として、好ましくは0.0005質量%~0.09質量%であり、より好ましくは0.0005質量%~0.04質量%である。イミダゾール類の含有量がこの範囲内であると、十分に低い導電性及び鋼の高い防食性が達成される。
【0028】
本発明の冷却液組成物において、トリアゾール類の含有量に対するイミダゾール類の含有量の比(c2/c1)は、好ましくは0.1未満であり、より好ましくは0.01以上0.1未満であり、さらにより好ましくは0.04以上0.1未満であり、特に好ましくは0.06以上0.1未満であり、最も好ましくは0.08以上0.1未満である。c2/c1が0.1未満であると、高い金属防食性を維持しつつ、冷却液組成物の導電率が有意に低くなる。
【0029】
本発明の冷却液組成物は、リン酸イオン(成分d))を含む。冷却液組成物がリン酸イオンを含むことにより、アルミニウムからの水素の発生を抑制することができる。
【0030】
本発明の冷却液組成物は、リン酸イオンを生成する化合物として、特に限定されずに、例えばリン酸及びその塩を含む。リン酸イオンを生成する化合物は、好ましくはリン酸及びそのアルカリ金属塩であり、より好ましくはリン酸である。
【0031】
本発明の冷却液組成物において、リン酸イオンの含有量(Pとしての含有量)は、基剤を100質量%として、好ましくは0.0005質量%~0.01質量%であり、より好ましくは0.0005質量%~0.005質量%である。リン酸イオンの含有量がこの範囲内であると、低導電性及び高い金属防食性(特にアルミニウムの防食性)が達成される。
【0032】
本発明の冷却液組成物は、メタケイ酸塩(成分e))を含む。本発明の冷却液組成物において、メタケイ酸塩はpH調整剤として用いられている。pH調整剤としてメタケイ酸塩を用いることにより、通常使用される水酸化カリウム等を用いた場合と比較して冷却液組成物の導電率を低くすることができる。
【0033】
メタケイ酸塩としては、特に限定されずに、メタケイ酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩等が挙げられ、メタケイ酸のアルカリ金属塩が好ましく、メタケイ酸ナトリウムがより好ましい。
【0034】
本発明の冷却液組成物において、メタケイ酸塩の含有量(無水物としての含有量)は、冷却液組成物のpHを所定の範囲に調整することができる量であればよく、基剤を100質量%として通常0.0005質量%~0.05質量%である。
【0035】
本発明の冷却液組成物は、必要に応じて、前記の成分a)~e)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、1種以上のその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、特に限定されずに、例えば、金属防食剤(カルボン酸、硝酸塩、亜硝酸塩、チアゾール、モリブデン酸塩、ホウ酸塩)、染料、苦味剤及び消泡剤が挙げられる。本発明の冷却液組成物において、その他の添加剤及びその含有量は、冷却液組成物の導電率が200μS/cmを超えないように選択される。その他の添加剤の合計含有量は、冷却液組成物に対して、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下である。
【0036】
本発明の冷却液組成物は、好ましくは、高導電性であるC~C16の脂肪族一塩基酸又はそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩若しくはアミン塩を含まない。C~C16の脂肪族一塩基酸としては、例えば、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸及びドデカン酸、並びにそれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、本発明の冷却液組成物は、オクタン酸及び2-エチルヘキサン酸、並びにそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩若しくはアミン塩を含まない。
【0037】
本発明の冷却液組成物の20℃におけるpHは、好ましくは5.5~9.0であり、より好ましくは6.0~8.0である。冷却液組成物のpHは、JIS K 2234 8.4 pH値に準拠して測定することができる。
【0038】
本発明の冷却液組成物は導電性が十分に低く、導電率が25℃において好ましくは200μS/cm以下であり、より好ましくは150μS/cm以下である。冷却液組成物の導電率は、横河電機社製パーソナルSCメータSC72、検出器SC72SN-11(純水用)を用いて測定することができる。
【0039】
本発明の冷却液組成物は金属防食性が十分に高く、例えば、アルミニウム、鋼及び黄銅の防食性はそれぞれ-0.15mg/cm以上である。冷却液組成物の防食性は、JIS K 2234 8.6 金属防食性に準拠し、試験液として冷却液組成物をそのまま用いて測定することができる。
【0040】
本発明において、冷却液組成物の製造方法は、本発明の効果が得られれば、特に限定されずに、通常の冷却液組成物の製造方法を用いることができる。例えば、前記の成分a)~d)、必要によりその他の添加剤を混合し、均一に撹拌し、メタケイ酸塩を用いて所定のpHに調整することで製造することができる。
【0041】
本発明は、前記の冷却液組成物を得るための濃縮冷却液組成物も含む。本発明の濃縮冷却液組成物は、前記の冷却液組成物の成分a)、c1)、c2)及びd)を含み、必要により水(成分b))、pH調整剤のメタケイ酸塩(成分e))及びその他の添加剤を含有する。本発明の濃縮冷却液組成物は、水を用いて、例えば1.1質量倍以上5質量倍以下に希釈して、成分a)~e)を含む本発明の冷却液組成物を得るために用いることができる。よって、本発明の濃縮冷却液組成物は、水(成分b))を含まないものであってもよく、また、水(成分b))を含むものであってもよい。なお、本発明の濃縮冷却液組成物が水を含む場合、その含有量は、冷却液組成物中の水の含有量より少ない。
【0042】
本発明の冷却液組成物は、一般に冷却液として用いることができ、低導電性及び高防食性を両立するため、好ましくはHEV、PHEV、EV、FCVの冷却液として、より好ましくはEV、FCVのバッテリーを含む冷却回路用の冷却液として用いられる。よって、好ましい実施形態において、本発明の冷却液組成物は、バッテリーを含む冷却回路用の冷却液組成物である。
【実施例
【0043】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0044】
実施例1
基剤としてエチレングリコール50.0質量%及びイオン交換水50.0質量%を用い、これにベンゾトリアゾール0.05質量%、1-メチルイミダゾール0.0045質量%及びリン酸0.0005質量%(Pとして)を添加し、得られた混合物のpHをメタケイ酸ナトリウムで7.0に調整して、実施例1の冷却液組成物を得た。
【0045】
実施例2
基剤としてエチレングリコール50.0質量%及びイオン交換水50.0質量%を用い、これにトリルトリアゾール1.0質量%、1-メチルイミダゾール0.09質量%及びリン酸0.01質量%(Pとして)を添加し、得られた混合物のpHをメタケイ酸ナトリウムで7.0に調整して、実施例2の冷却液組成物を得た。
【0046】
実施例3
基剤としてエチレングリコール50.0質量%及びイオン交換水50.0質量%を用い、これにトリルトリアゾール0.18質量%、1-メチルイミダゾール0.01質量%及びリン酸0.004質量%(Pとして)を添加し、得られた混合物のpHをメタケイ酸ナトリウムで7.0に調整して、実施例3の冷却液組成物を得た。
【0047】
実施例4
1-メチルイミダゾールの添加量を0.0005質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例4の冷却液組成物を得た。
【0048】
実施例5
ベンゾトリアゾールの添加量を0.1質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例5の冷却液組成物を得た。
【0049】
実施例6~8
1-メチルイミダゾールの添加量をそれぞれ0.01質量%、0.04質量%及び0.08質量%に変更し、pHを6.5に調整した以外は実施例2と同様にして、実施例6、7及び8の冷却液組成物を得た。
【0050】
実施例9及び10
リン酸の添加量をそれぞれ0.0005質量%及び0.005質量%に変更し、pHを6.5に調整した以外は実施例2と同様にして、実施例9及び10の冷却液組成物を得た。
【0051】
比較例1
基剤としてエチレングリコール50.0質量%及びイオン交換水50.0質量%を用い、これにベンゾトリアゾール0.2質量%を添加して、比較例1の冷却液組成物を得た。
【0052】
比較例2
基剤としてエチレングリコール50.0質量%及びイオン交換水50.0質量%を用い、これにトリルトリアゾール0.2質量%を添加して、比較例2の冷却液組成物を得た。
【0053】
比較例3
基剤としてエチレングリコール50.0質量%及びイオン交換水50.0質量%を用い、これに1-メチルイミダゾール0.2質量%を添加して、比較例3の冷却液組成物を得た。
【0054】
比較例4
トリルトリアゾールを用いず、pHを7.2に調整した以外は実施例3と同様にして、比較例4の冷却液組成物を得た。
【0055】
比較例5
リン酸及びpH調整剤のメタケイ酸ナトリウムを用いない以外は実施例3と同様にして、比較例5の冷却液組成物を得た。
【0056】
比較例6
1-メチルイミダゾールを用いない以外は実施例3と同様にして、比較例6の冷却液組成物を得た。
【0057】
比較例7
基剤としてエチレングリコール50.0質量%及びイオン交換水50.0質量%を用い、これにリン酸0.0005質量%(Pとして)を添加し、得られた混合物のpHをメタケイ酸ナトリウムで7.2に調整して、比較例7の冷却液組成物を得た。
【0058】
比較例8
基剤としてエチレングリコール50.0質量%及びイオン交換水50.0質量%を用い、これにリン酸0.004質量%(Pとして)を添加し、得られた混合物のpHをメタケイ酸ナトリウムで7.0に調整して、比較例8の冷却液組成物を得た。
【0059】
比較例9
pH調整剤のメタケイ酸ナトリウムを水酸化カリウムに代えた以外は比較例8と同様にして、比較例9の冷却液組成物を得た。
【0060】
実施例1~10及び比較例1~9の冷却液組成物について、導電率、pH、金属防食性、及びアルミニウムからの水素発生性を以下の手法により評価した。
【0061】
<導電率>
導電率は、横河電機社製パーソナルSCメータSC72、検出器SC72SN-11(純水用)を用いて、25℃で測定した。
【0062】
<pH>
pHは、JIS K 2234 8.4 pH値に準拠して20℃で測定した。
【0063】
<防食性>
防食性は、JIS K 2234 8.6 金属防食性に準拠して測定した。ただし、金属はアルミニウム、鋼及び黄銅に限定し、試験液は、調整水を使用せずに各冷却液組成物をそのまま用いた。アルミニウム、鋼及び黄銅の防食性は、いずれも-0.15mg/cm以上を良好と評価した。
【0064】
<水素発生性>
図1に示す装置を用いて、気体発生量を目視で確認した。具体的には、図1に示す装置において、試験管内に各冷却液組成物を充填し、アルミニウムラジエータチューブ切り出し試験片を下部に配置して45℃で120時間静置し、冷却液組成物を充填した目盛付試験管においてアルミニウム試験片からの気体発生量を目視で確認した。なお、発生した気体は、ガスクロマトグラフ分析により水素と同定した。
【0065】
実施例1~10及び比較例1~9の冷却液組成物の組成及び評価結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示すように、トリアゾール類、イミダゾール類及びリン酸イオンを含む実施例1~10の冷却液組成物は、低導電率でありながら、高い金属防食性及び低い水素発生性を有していた。
【0068】
比較例1及び2より、基剤にトリアゾール類のみを添加した場合、鋼の防食性が低く、また、水素発生性試験において水素が発生した。比較例3より、基剤にイミダゾール類のみを添加した場合、アルミニウム及び鋼の防食性が低く、また、水素発生性試験において水素が発生した。比較例7及び8より、基剤にリン酸を添加し、メタケイ酸ナトリウムでpH調整した場合、鋼及び黄銅の防食性が低く、また、水素発生性試験において水素が発生した。比較例8、9の比較により、pH調整剤をメタケイ酸ナトリウムから水酸化カリウムに変更することにより、導電率が上昇することが示された。
【0069】
さらに、実施例3と比較例4の比較により、冷却液組成物がトリアゾール類を含むことにより、アルミニウム及び鋼の防食性が向上し、水素発生性試験において水素の発生が抑制されることが示された。また、実施例3と比較例5の比較により、冷却液組成物がリン酸イオンを含むことにより、水素発生性試験において水素の発生が抑制されることが示された。また、実施例3と比較例6の比較により、冷却液組成物がイミダゾール類を含むことにより、鋼の防食性が向上することが示された。
【0070】
実施例2、6~8より、トリアゾール類の含有量に対するイミダゾール類の含有量の比(c2/c1)が低い程、冷却液組成物の導電率が低下する傾向があり、c2/c1が0.1未満であると導電率が有意に低く、より好ましい。
【要約】
【課題】本発明は、低導電性、高防食性及び低水素発生性を有する冷却液組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、下記成分:a)アルコール;b)水;c1)トリアゾール類;c2)イミダゾール類;d)リン酸イオン;及びe)メタケイ酸塩を含む、冷却液組成物に関する。
【選択図】なし
図1