(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】ロータ構造、永久磁石補助型同期リラクタンスモータ及び電気自動車
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20220201BHJP
【FI】
H02K1/276
(21)【出願番号】P 2020544759
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(86)【国際出願番号】 CN2018119793
(87)【国際公開番号】W WO2019174317
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-08-25
(31)【優先権主張番号】201810218942.5
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512306405
【氏名又は名称】グリー エレクトリック アプライアンシーズ インク オブ ズーハイ
【氏名又は名称原語表記】GREE ELECTRIC APPLIANCES, INC. OF ZHUHAI
【住所又は居所原語表記】Qianshan Jinji West Road,Zhuhai, Guangdong, 519070, P.R. CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡 余生
(72)【発明者】
【氏名】童 童
(72)【発明者】
【氏名】盧 素華
(72)【発明者】
【氏名】肖 勇
(72)【発明者】
【氏名】陳 彬
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-518580(JP,A)
【文献】国際公開第2006/047519(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第107659101(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102790502(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0273047(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石鋼溝群が設けられたロータ本体(10)を含み、
前記磁石鋼溝群は、
外層磁石鋼溝(11)と、
前記外層磁石鋼溝(11)と隣接して設けられ、前記外層磁石鋼溝(11)との間に透磁路が形成された内層磁石鋼溝(12)と、
前記外層磁石鋼溝(11)に対して折り曲げて、第一端が前記外層磁石鋼溝(11)と連通し、第二端が前記ロータ本体(10)の外縁へ伸びながら徐々に前記ロータ本体(10)の直軸から離れるように設けられる第一折り曲げ溝(113)と、
前記内層磁石鋼溝(12)に対して折り曲げて、第一端が前記内層磁石鋼溝(12)と連通しながら前記第一折り曲げ溝(113)と隣接して設けられ、第二端が前記ロータ本体(10)の外縁へ伸びながら徐々に前記直軸から離れるように設けられる第三折り曲げ溝(124)と、
を含
み、
前記外層磁石鋼溝(11)は第一外層磁石鋼溝セグメント(111)と第二外層磁石鋼溝セグメント(112)とを含み、
前記第一外層磁石鋼溝セグメント(111)は第一端が前記ロータ本体(10)の軸穴(13)へ伸び、第二端が前記ロータ本体(10)の外縁へ伸びながら徐々に前記直軸から離れるように設けられ、前記第一折り曲げ溝(113)は前記第一外層磁石鋼溝セグメント(111)の第二端と連通し、前記第一折り曲げ溝(113)の第二端と前記ロータ本体(10)の外縁との間に第一磁気シールドブリッジ(51)が形成され、
第二外層磁石鋼溝セグメント(112)は第一端が前記軸穴(13)へ伸び、第二端が前記ロータ本体(10)の外縁へ伸びながら徐々に前記直軸から離れるように設けられ、前記第一外層磁石鋼溝セグメント(111)と前記第二外層磁石鋼溝セグメント(112)は前記直軸に関して対称的に設けられ、前記第三折り曲げ溝(124)の第一端が前記第二外層磁石鋼溝セグメント(112)の第二端と連通し、前記第三折り曲げ溝(124)の第二端と前記ロータ本体(10)の外縁との間に第二磁気シールドブリッジ(52)が形成され、
前記第二外層磁石鋼溝セグメント(112)に対して折り曲げる前記磁石鋼溝群は第二折り曲げ溝(114)をさらに含み、
前記第二折り曲げ溝(114)の第一端が前記第二外層磁石鋼溝セグメント(112)の第二端と連通し、前記第一折り曲げ溝(113)の第二端が前記ロータ本体(10)の外縁へ伸びながら徐々に前記直軸から離れるように設けられ、前記第一折り曲げ溝(113)の長さ方向の幾何学的中心線と前記第二折り曲げ溝(114)の長さ方向の幾何学的中心線との延長線により夾角が出来、前記第一折り曲げ溝(113)と前記第二折り曲げ溝(114)は前記直軸に関して対称的に設けられ、
前記第一折り曲げ溝(113)の前記直軸に近い側の側壁の延長線が前記ロータ本体(10)の外縁と交わる点と、前記第二折り曲げ溝(114)の前記直軸に近い側壁の延長線が前記ロータ本体(10)の外縁と交わる点との間の連結線は弧度A1を有し、A1>0.63×360°/pであり、ただし、pは極数であることを特徴とするロータ構造。
【請求項2】
前記第一折り曲げ溝(113)の第二端と前記第三折り曲げ溝(124)の第二端との間の最小距離がWr1であり、前記第三折り曲げ溝(124)の第一端から前記第一折り曲げ溝(113)の側壁までの最小距離がWr2であり、ただし、Wr2/Wr1>0.8であることを特徴とする、請求項1に記載のロータ構造。
【請求項3】
前記第一磁気シールドブリッジ(51)は弧度A3を有し、前記第二磁気シールドブリッジ(52)は弧度A2を有し、0.18×360°/p>A2+A3>0.13×360°/pであり、ただし、pは極数であることを特徴とする、請求項
1に記載のロータ構造。
【請求項4】
前記内層磁石鋼溝(12)は順に設けられた第一内層磁石鋼溝セグメント(121)と第二内層磁石鋼溝セグメント(122)と第三内層磁石鋼溝セグメント(123)とを含み、前記第一内層磁石鋼溝セグメント(121)、前記第二内層磁石鋼溝セグメント(122)及び前記第三内層磁石鋼溝セグメント(123)は、開口が前記ロータ本体(10)の外縁に向かうU字状構造が形成されるように順に連通していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のロータ構造。
【請求項5】
前記ロータ構造は内層磁石鋼(30)をさらに含み、
前記内層磁石鋼(30)は、
前記第一内層磁石鋼溝セグメント(121)内に設けられた第一磁石鋼(31)と、
前記第二内層磁石鋼溝セグメント(122)内に設けられた第二磁石鋼(32)と、
前記第三内層磁石鋼溝セグメント(123)内に設けられた第三磁石鋼(33)と、
を含み、
前記第一磁石鋼(31)及び/又は前記第三磁石鋼(33)の長さはL1であり、前記第二磁石鋼(32)の前記ロータ本体(10)の外縁に向かう両端側壁の連結線の長さはL2であり、ただし、L2/L1>0.7であることを特徴とする、請求項
4に記載のロータ構造。
【請求項6】
前記第一磁石鋼(31)、前記第二磁石鋼(32)及び前記第三磁石鋼(33)は間隔をあけて設けられ、且つ前記第二磁石鋼(32)は平板状のものであり、あるいは、前記第一磁石鋼(31)、前記第二磁石鋼(32)及び前記第三磁石鋼(33)は一体に設けられ、且つ前記第二磁石鋼(32)はU字状のものであることを特徴とする、請求項
5に記載のロータ構造。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載のロータ構造を備えることを特徴とする永久磁石補助型同期リラクタンスモータ。
【請求項8】
ステータ(40)をさらに含み、
前記ステータ(40)の内周面にステータティース(41)が設けられ、前記ロータ本体(10)は前記ステータ(40)に対して回転可能に前記ステータ(40)内に設けられ、前記ステータ(40)の内径はDi1であり、前記ロータ本体(10)の外径はDi2であり、ただし、0.6<Di2/Di1<0.8であることを特徴とする、請求項
7に記載の永久磁石補助型同期リラクタンスモータ。
【請求項9】
前記ロータ本体(10)と前記ステータ(40)との間に閉磁力線が形成され、前記ステータ(40)に形成される磁力線の長さはS1であり、前記ロータ本体(10)の前記透磁路に形成される磁力線の長さはS2であり、ただし、1.1S1<S2<1.3S1であることを特徴とする、請求項
8に記載の永久磁石補助型同期リラクタンスモータ。
【請求項10】
請求項1~
6のいずれかに記載のロータ構造を備えることを特徴とする電気自動車。
【請求項11】
0.68<Di2/Di1<0.75であることを特徴とする、請求項
8に記載の永久磁石補助型同期リラクタンスモータ。
【請求項12】
0.68<Di2/Di1<0.8であることを特徴とする、請求項
8に記載の永久磁石補助型同期リラクタンスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ装置の技術分野に関し、具体的には、ロータ構造、永久磁石補助型同期リラクタンスモータ及び電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の新エネルギ自動車は希土類永久磁石モータを採用することが一般的であり、そのモータは力率が高いため、対応するコントローラの容量をより小さいものとすることができるが、多量の希土類資源が消費されて高価になるという欠点があった。そのため、永久磁石の素材としてフェライトを採用する永久磁石リラクタンスモータが注目されて来ている。現在、このようなモータは家庭用電気器具等の小型製品において実用化されることが多く、トルク密度が適度で高くなく、磁気回路飽和が顕著ではないという特性がある。新エネルギ自動車へ応用しようとする場合、コンパクトな構造とすることが要求されている一方、設計においては、そのトルク密度が一般的な永久磁石モータに比べて2倍以上となっている。このため、飽和も非常に顕著となり、ひいては力率が大きく低下し、特に永久磁石リラクタンスモータへ応用する場合、モータ効率が低下してしまった。
【0003】
従来技術では、適当な値の内外径比を採用することで高い突極比を達成することによって、モータの効率を高めた。突極比の向上は力率の改善にある程度寄与するが、磁気回路が飽和した場合、q軸インダクタンスが急速に低下する一方、高い突極比も所望のレベルから逸脱して急速に低下したため、所望の設計は磁気回路飽和が顕著になった場合では効果がなくなってしまった。
【0004】
従来技術では、磁石鋼底部の直径とロータの外径との比を工夫することによって、ロータを占める磁石鋼の体積を制限する場合もある。それにより、リラクタンストルクを最大限利用可能にしていた。しかし、実際に検討したところ、ロータの底部から軸穴までの距離が小さければ小さいほどよいものではないことが発見された。これは、軸心に近いほど、磁気回路となる経路も長くなり、磁気回路が十分に飽和した場合、インダクタンスの減衰もより速くなるから、力率の向上に悪影響を与えてしまうためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術によるモータは効率が低いという問題を解決するために、ロータ構造、永久磁石補助型同期リラクタンスモータ及び電気自動車を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、磁石鋼溝群が設けられたロータ本体を含み、磁石鋼溝群は、外層磁石鋼溝と、外層磁石鋼溝と隣接して設けられ、外層磁石鋼溝との間に透磁路が形成された内層磁石鋼溝と、第一端が外層磁石鋼溝と連通し、第二端がロータ本体の外縁へ伸びながら徐々にロータ本体の直軸から離れるように設けられる第一折り曲げ溝と、第一端が内層磁石鋼溝と連通しながら第一折り曲げ溝と隣接して設けられ、第二端がロータ本体の外縁へ伸びながら徐々に直軸から離れるように設けられる第三折り曲げ溝と、を含むロータ構造を提供する。
【0007】
さらには、第一折り曲げ溝の第二端と第三折り曲げ溝の第二端との間の最小距離がWr1であり、第三折り曲げ溝の第一端から第一折り曲げ溝の側壁までの最小距離がWr2であり、ただし、Wr2/Wr1>0.8である。
【0008】
さらには、外層磁石鋼溝は第一外層磁石鋼溝セグメントと第二外層磁石鋼溝セグメントとを含み、第一外層磁石鋼溝セグメントは第一端がロータ本体の軸穴へ伸び、第二端がロータ本体の外縁へ伸びながら徐々に直軸から離れるように設けられ、第一折り曲げ溝は第一外層磁石鋼溝セグメントの第二端と連通し、第一折り曲げ溝の第二端とロータ本体の外縁との間に第一磁気シールドブリッジが形成され、また、第二外層磁石鋼溝セグメントは第一端が軸穴へ伸び、第二端がロータ本体の外縁へ伸びながら徐々に直軸から離れるように設けられ、第一外層磁石鋼溝セグメントと第二外層磁石鋼溝セグメントは直軸に関して対称的に設けられ、第三折り曲げ溝の第二端とロータ本体の外縁との間に第二磁気シールドブリッジが形成される。
【0009】
さらには、磁石鋼溝群は第二折り曲げ溝をさらに含み、第二折り曲げ溝の第一端が第二外層磁石鋼溝セグメントの第二端と連通し、第二折り曲げ溝の第二端がロータ本体の外縁へ伸びながら徐々に直軸から離れるように設けられ、第一折り曲げ溝の長さ方向の幾何学的中心線と第二折り曲げ溝の長さ方向の幾何学的中心線との延長線により夾角が出来、そして、第一折り曲げ溝と第二折り曲げ溝は直軸に関して対称的に設けられる。
【0010】
さらには、第一折り曲げ溝の直軸に近い側の側壁の延長線がロータ本体の外縁と交わる点と、第二折り曲げ溝の直軸に近い側壁の延長線がロータ本体の外縁と交わる点との間の連結線は弧度A1を有し、A1>0.63×360°/pであり、ただし、pは極数である。
【0011】
さらには、第一磁気シールドブリッジは弧度A3を有し、第二磁気シールドブリッジは弧度A2を有し、0.18×360°/p>A2+A3>0.13×360°/pであり、ただし、pは極数である。
【0012】
さらには、内層磁石鋼溝は順に設けられた第一内層磁石鋼溝セグメントと第二内層磁石鋼溝セグメントと第三内層磁石鋼溝セグメントとを含み、第一内層磁石鋼溝セグメント、第二内層磁石鋼溝セグメント及び第三内層磁石鋼溝セグメントは、開口がロータ本体の外縁に向かうU字状構造が形成されるように順に連通している。
【0013】
さらには、ロータ構造は内層磁石鋼をさらに含み、内層磁石鋼は、第一内層磁石鋼溝セグメント内に設けられた第一磁石鋼と、第二内層磁石鋼溝セグメント内に設けられた第二磁石鋼と、第三内層磁石鋼溝セグメント内に設けられた第三磁石鋼とを含み、第一磁石鋼及び/又は第三磁石鋼の長さはL1であり、第二磁石鋼のロータ本体の外縁に向かう両端側壁の連結線の長さはL2であり、ただし、L2/L1>0.7である。
【0014】
さらには、第一磁石鋼、第二磁石鋼及び第三磁石鋼は間隔をあけて設けられ、且つ第二磁石鋼は平板状のものであり、あるいは、第一磁石鋼、第二磁石鋼及び第三磁石鋼は一体に設けられ、且つ第二磁石鋼はU字状のものである。
【0015】
本発明の他の態様によれば、上記したロータ構造を備えるモータを提供する。
【0016】
さらには、永久磁石補助型同期リラクタンスモータはステータをさらに含み、ステータの内周面にステータティースが設けられ、ロータ本体はステータに対して回転可能にステータ内に設けられ、ステータの内径はDi1であり、ロータ本体の外径はDi2であり、ただし、0.6<Di2/Di1<0.8である。
【0017】
さらには、ロータ本体とステータとの間に閉磁力線が形成され、ステータに形成される磁力線の長さはS1であり、ロータ本体の透磁路に形成される磁力線の長さはS2であり、ただし、1.1S1<S2<1.3S1である。
【0018】
本発明の他の態様によれば、上記したロータ構造を備える電気自動車を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の解決手段によれば、それぞれ外層磁石鋼溝と内層磁石鋼溝に対してそれらと連通する第一折り曲げ溝と第三折り曲げ溝が設けられ、そして、第一折り曲げ溝と第三折り曲げ溝はロータ本体の径方向に外へ向かう方向に沿って徐々にこの磁石鋼溝群の直軸から離れるように設けられている。第一折り曲げ溝と第三折り曲げ溝との間の透磁距離は効果的に向上し、ロータ本体の性能は高まり、このロータ構造を有するモータの効率は向上している。
【0020】
本願の一部となる明細書の図面は本発明に対するさらなる理解のためのものであり、本発明の例示的な実施例及びその説明は本発明を解釈するためのもので、本発明を不当に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明によるロータ構造の第一実施例の構造模式図である。
【
図2】本発明によるロータ構造の第二実施例の構造模式図である。
【
図3】本発明によるロータ構造の第三実施例の構造模式図である。
【
図4】本発明によるロータ構造の第四実施例の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
矛盾しない限り、本願の実施例及びその特徴は互いに組み合わせることができることは了解されたい。以下、図面を参照し実施例に合わせて本発明を詳細に説明する。
【0023】
ここで使用される用語は具体的な実施形態を説明するものに過ぎず、本願による例示的な実施形態を制限することは意図していないことに注意されたい。例えば、ここで使用される用語は、別途明らかに示していない限り、単数の形は複数の形を含むことをも意図しており、また、本明細書において「包含」及び/又は「含む」という用語を使用する場合、特徴やステップ、操作、デバイス、組立体及び/又はそれらの組合せが存在することを表していることは理解されたい。
【0024】
本願の明細書と特許請求の範囲及び図面中の「第一」、「第二」等の用語は類似する対象を区別するためのものであり、特定の順序や手順を述べるのに用いる必要がないことは了解されたい。このように使用される用語は、ここで述べられる本願の実施形態を例えばここで図示又は述べられるもの以外の順序で実施可能にするために、適宜取り交わされてもよいことは理解されたい。また、「含む」と「有する」という用語及びそれらのあらゆる変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図しており、例えば、一連のステップやユニットを含む過程、方法、システム、製品又は設備についてそれらのステップやユニットを明らかに書き並べる必要がなく、明らかに書き並べられなかったもの又はこれらの過程、方法、製品又は設備に固有の他のステップやユニットを含んでもよい。
【0025】
説明の便宜上、ここでは空間的相対関係を表す用語である「……の上に」、「……の上方に」、「……の上面に」、「の上の」等を使用でき、例えば図に示される一つのデバイスや特徴と他のデバイスや特徴との空間的位置関係を説明するために用いる。空間的相対関係を表す用語は、デバイスの図に示される方位以外の使用や操作における異なる方位を含むものを意図していることは理解されたい。例えば、図面中のデバイスは上下逆さまにされた場合、「他のデバイスや構造の上方に」又は「他のデバイスや構造の上に」と述べられたデバイスはこれから「他のデバイスや構造の下方に」又は「他のデバイスや構造の下に」と述べられるようになる。従って、例示的な用語である「……の上方に」は「……の上方に」と「……の下方に」の二つの方位を含んでもよい。このデバイスについては他の異なる方式で観察方向を決め(90度回転させ、又は他の方位にさせ)てもよく、そしてここで使用される空間的相対関係について該当する解釈を行う。
【0026】
以下、図面を参照しながら本願による例示的な実施形態をより詳細に説明する。ただし、これらの例示的な実施形態は複数種の異なる形式で実施されてもよく、ここで述べられる実施形態のみに限られるものとして解釈されるべきではない。これらの実施形態は、本願の開示を徹底的且つ完整なものにしながら、これらの例示的な実施形態の思想を十分に当業者に伝えるために提供されるものであることを理解されたく、図面においては、鮮明なものにするため、層や領域の厚さを大きくした可能性があり、そして、同一の符号で同一のデバイスを表しているため、それらについての説明は割愛した。
【0027】
図1から
図4に合わせて、本発明の実施例によれば、ロータ構造を提供する。
【0028】
図1に示されるように、このロータ構造はロータ本体10を含む。ロータ本体10に磁石鋼溝群が設けられている。磁石鋼溝群は外層磁石鋼溝11と、内層磁石鋼溝12と、第一折り曲げ溝113と、第三折り曲げ溝124とを含む。外層磁石鋼溝11と内層磁石鋼溝12は隣接して設けられ、外層磁石鋼溝11と内層磁石鋼溝12との間に透磁路が形成される。第一折り曲げ溝113は第一端が外層磁石鋼溝11と連通し、第二端がロータ本体10の外縁へ伸びながら徐々にロータ本体10の直軸であるd軸(
図4参照)から離れるように設けられる。第三折り曲げ溝124の第一端が内層磁石鋼溝12と連通しながら第一折り曲げ溝113と隣接して設けられる。第三折り曲げ溝124の第二端がロータ本体10の外縁へ伸びながら徐々に直軸から離れるように設けられる。
【0029】
本実施例では、それぞれ外層磁石鋼溝と内層磁石鋼溝に対してそれらと連通する第一折り曲げ溝と第三折り曲げ溝が設けられ、そして、第一折り曲げ溝と第三折り曲げ溝はロータ本体の径方向に外へ向かう方向に沿って徐々にこの磁石鋼溝群の直軸から離れるように設けられている。第一折り曲げ溝と第三折り曲げ溝との間の透磁距離は効果的に向上し、ロータ本体の性能は高まり、このロータ構造を有する永久磁石補助型同期リラクタンスモータ(以下、モータと略記)の効率は向上している。
【0030】
具体的には、第一折り曲げ溝113の第二端と第三折り曲げ溝124の第二端との間の最小距離がWr1であり、第三折り曲げ溝124の第一端から第一折り曲げ溝113の側壁までの最小距離がWr2であり、Wr2/Wr1>0.8である。このようにすれば、透磁路の入り口での飽和を効果的に緩和することができる。
【0031】
そのうち、外層磁石鋼溝11は第一外層磁石鋼溝セグメント111と第二外層磁石鋼溝セグメント112とを含む。第一外層磁石鋼溝セグメント111の第一端がロータ本体10の軸穴13へ伸びる。第一外層磁石鋼溝セグメント111の第二端がロータ本体10の外縁へ伸びながら徐々に直軸から離れるように設けられる。第一折り曲げ溝113は第一外層磁石鋼溝セグメント111の第二端と連通している。第一折り曲げ溝113の第二端とロータ本体10の外縁との間に第一磁気シールドブリッジ51が形成される。第二外層磁石鋼溝セグメント112の第一端が軸穴13へ伸びる。第二外層磁石鋼溝セグメント112の第二端がロータ本体10の外縁へ伸びながら徐々に直軸から離れるように設けられる。第一外層磁石鋼溝セグメント111と第二外層磁石鋼溝セグメント112は直軸に関して対称的に設けられる。第三折り曲げ溝124の第二端とロータ本体10の外縁との間に第二磁気シールドブリッジ52が形成される。
【0032】
磁石鋼溝群は第二折り曲げ溝114をさらに含む。第二折り曲げ溝114の第一端が第二外層磁石鋼溝セグメント112の第二端と連通している。第二折り曲げ溝114の第二端がロータ本体10の外縁へ伸びながら徐々に直軸から離れるように設けられる。第一折り曲げ溝113の長さ方向の幾何学的中心線と第二折り曲げ溝114の長さ方向の幾何学的中心線との延長線により夾角が出来る。そのうち、第一折り曲げ溝113と第二折り曲げ溝114は直軸に関して対称的に設けられる。このようにすれば、ロータ構造の透磁性能を効果的に向上させることができる。
【0033】
図3に示されるように、第一折り曲げ溝113の直軸に近い側の側壁の延長線がロータ本体10の外縁と交わる点と、第二折り曲げ溝114の直軸に近い側壁の延長線がロータ本体10の外縁と交わる点との間の連結線は弧度A1を有し、A1>0.63×360°/pであり、ただし、pは極数である。第一磁気シールドブリッジ51は弧度A3を有し、第二磁気シールドブリッジ52は弧度A2を有し、0.18×360°/p>A2+A3>0.13×360°/pであり、ただし、pは極数である。このようにすれば、突極比が低下することがなくなるとともに、ロータの外円にある透磁部分の面積が増えて永久磁石の鎖交磁束が多くなる。
【0034】
図4に示されるように、内層磁石鋼溝12は順に設けられた第一内層磁石鋼溝セグメント121と第二内層磁石鋼溝セグメント122と第三内層磁石鋼溝セグメント123とを含む。第一内層磁石鋼溝セグメント121、第二内層磁石鋼溝セグメント122及び第三内層磁石鋼溝セグメント123は、開口がロータ本体10の外縁に向かうU字状構造が形成されるように順に連通している。
【0035】
図1に示されるように、ロータ構造は内層磁石鋼30をさらに含む。内層磁石鋼30は第一磁石鋼31と第二磁石鋼32と第三磁石鋼33とを含む。第一磁石鋼31は第一内層磁石鋼溝セグメント121内に設けられる。第二磁石鋼32は第二内層磁石鋼溝セグメント122内に設けられる。第三磁石鋼33は第三内層磁石鋼溝セグメント123内に設けられる。そのうち、第一磁石鋼31及び/又は第三磁石鋼33の長さはL1であり、第二磁石鋼32のロータ本体10の外縁に向かう両端側壁の連結線の長さはL2であり、ただし、L2/L1>0.7である。このようにすれば、永久磁性体である磁石鋼の使用量を最適化させることができ、U字状構造が窪みすぎることは回避されている。そのうち、U字状構造の底部は直線状のものでもよく、弧状のものでもよい。
【0036】
図1と
図2に示されるように、第一磁石鋼31、第二磁石鋼32及び第三磁石鋼33は間隔をあけて設けられ、且つ第二磁石鋼32は平板状のものである。
図4に示されるように、第一磁石鋼31、第二磁石鋼32及び第三磁石鋼33は一体に設けられ、且つ第二磁石鋼32はU字状のものである。
【0037】
上記実施例におけるロータ構造はモータ装置の技術分野に適用することもでき、即ち、本発明の他の態様によれば、上記実施例におけるロータ構造を備えるモータを提供する。
【0038】
上記実施例におけるロータ構造は自動車の分野に適用することもでき、即ち、本発明の他の態様によれば、上記実施例におけるロータ構造を備える電気自動車を提供する。
【0039】
本実施例では、それぞれ外層磁石鋼溝と内層磁石鋼溝に対してそれらと連通する第一折り曲げ溝と第二折り曲げ溝が設けられ、そして、第一折り曲げ溝と第二折り曲げ溝はロータ本体の径方向に外へ向かう方向に沿って徐々にこの磁石鋼溝群の直軸から離れるように設けられている。第一折り曲げ溝と第二折り曲げ溝との間の透磁距離は効果的に向上し、ロータ本体の性能は高まり、このロータ構造を有するモータの効率は向上している。
【0040】
また
図1と
図2を参照し、モータはステータ40をさらに備える。ステータ40の内周面にステータティース41が設けられている。ロータ本体10はステータ40に対して回転可能にステータ40内に設けられ、ステータ40の内径はDi1であり、ロータ本体10の外径はDi2であり、ただし、0.6<Di2/Di1<0.8である。ただし、D1はステータの外径である。このようにすれば、このモータの磁気回路飽和への耐性は効果的に改善され、モータ出力の向上及びモータの生産コストの低下は効果的に達成されている。もちろん、Di2/Di1は0.68~0.75の範囲において値を取ることが好ましい。
【0041】
図1に示されるように、ロータ本体10とステータ40との間に閉磁力線が形成される。ステータ40に形成される磁力線の長さはS1であり、ロータ本体10の透磁路に形成される磁力線の長さはS2であり、ただし、1.1S1<S2<1.3S1である。このようにすれば、モータが高負荷で運転している場合、ロータにおける深すぎる窪みによる力率の低下は効果的に回避されている。
【0042】
具体的には、ロータ本体は軸孔により回転可能にステータの内部に置かれ、ステータとロータとの間にエアギャップがある。ロータは複数の極を有し、極毎に複数の磁石鋼溝を含む磁石鋼溝群を一つ有し、複数の磁石鋼溝は径方向に配列され、透かしとなる中空溝であり、コアの軸方向に貫通している。磁石鋼は対応する磁石鋼溝内に配置される。組付けが完了した後、磁石鋼溝のロータの外円に近い箇所には満たされていない部分があることで、磁石鋼溝末端にある折り曲げ溝が形成され、エアギャップとの間には薄肉構造である磁気シールドブリッジがあり、構造の面から見ると、ロータシートは一体となって接続されるようになり、電磁の面から見ると、薄肉構造による磁気飽和で磁気回路はここを通過しなくなり、磁気シールドが達成される。
【0043】
モータのロータの外径を増やすと、エアギャップの全長を増やすことができ、即ち、ロータの外円周の面積を増やすと、それとともに鎖交磁束の値も増えるようになる。一方、二層の磁石鋼同士間の透磁路の幅を大きくすることができる。トルクの向上に役立つが、ステータの面積が低下したので、ステータの抵抗が大きくなることを招く。検討を行ったところ、新エネルギ自動車用の永久磁石リラクタンスモータにとっては、そのロータの外径Di2を大きく設計することが飽和耐性のために役立ち、高負荷時の力率の改善を図ることが発見された。好ましくは、0.68<Di2/Di1<0.8とすると、高負荷時の磁気回路飽和への耐性は良くなる。
【0044】
もちろん、外径が増えることにより、磁石鋼の使用量が向上する一方、銅の使用量は低減する。総合してコストを考えると、0.6<DI2/Di1<0.75とする場合、コストは良好に抑えられている。外径が小さくなり過ぎると、銅の使用によるコストの割合が高くなり、外径を増やすと、銅の使用量が顕著に低下してコストが改善される。外径が大きくなり過ぎると、コイルエンドの大きさは一定であるため、銅の使用をさらに抑えても改善は顕著にならず、磁石鋼の使用量は外径の増加に比例して増加し、コスト向上の原因となる。
【0045】
高負荷の場合、力率の低下は主に磁気回路飽和に起因したものであり、リラクタンスモータの構造には限界があるため、透磁路の体積について設計可能な余地が小さくなり、磁気回路飽和の要因となる。この問題に対して、磁力線の分布をも考慮すると、その二つの磁石鋼溝末端間の透磁路の設計は、第一折り曲げ溝113の第二端と第三折り曲げ溝124の第二端との間の最小距離Wr1と第三折り曲げ溝124の第一端から第一折り曲げ溝113の側壁までの最小距離Wr2がWr2/Wr1>0.8の関係にあるという特性があり、Wr1はロータがステータからの磁力線を受け付ける主な経路である。透磁路に沿って軸穴13へ進み続けると、磁界の作用により、その内部磁界は磁石鋼溝末端の近傍の透磁路部分によるものよりも遥かに小さくなる。磁石鋼溝末端は開口がさらに拡張するように設計されたものであるから、必ずWr1>Wr2となる。開口を拡張させすぎると、Wr2/Wr1が小さくなり過ぎ、この部分の磁気回路飽和は3T以上と高くなる可能性がある。トルク定数は低下し、力率も急速に低下していく。
【0046】
ロータにおける窪みの設計によれば、内層アームとなる磁石鋼の永久磁性体の使用量が増え、永久磁石の鎖交磁束を増やして力率を改善できるが、窪みの増加に従って、以下の二つの問題が発生する。つまり、1)内層底部の磁石鋼の体積は圧縮されて、2)ロータの透磁路は長くなり、ロータ内部において消費された磁位は増え、また、ロータにおける透磁に関与する部分の増加により鉄損が向上していく。継続して磁石鋼を増やしても無駄である。検討したところ、以下の二つの条件で制約すれば窪みの深さを合理的に抑えられることが発見された。つまり、内層アームとなる磁石鋼の長さL1と内層底部となる磁石鋼の長さL2はL2/L1>0.7という関係にある場合、永久磁性体の使用量を最適化させることができる。また、ロータにおける磁力線が長くなりすぎると、ロータには不必要な磁位損失が発生し、このような損失は高負荷の場合さらに悪化する。ステータを通過する磁力線の長さS1とロータを通過する磁力線の長さS2は1.1S1<S2<1.3S1という関係にある場合、高負荷時のロータにおける深すぎる窪みによる力率の低下を回避できる。そのうち、S2の経路は極毎の二層の磁石鋼の間にある透磁路部分の中間経路であり、S1は透磁路の末端においてティース中部とヨーク中部とを通過する磁力線である。永久磁石トルク成分の増加によれば、力率の改善も図られ、永久磁石トルク成分を増やすために、d軸方向の透磁面積を大きくする一方、磁石鋼溝末端にある磁気シールドブリッジの長さの総和を一定の割合に制限することで、突極比の顕著な低下を招かないことを保証することもできれば、ロータの外円にある透磁部分の面積を大きくして永久磁石の鎖交磁束を増やすこともできる。そのうち、外層磁石鋼溝内に外層磁石鋼20が設けられ、内層磁石鋼溝の端部に第四折り曲げ溝125がさらに設けられ、第四折り曲げ溝125は同一の磁石鋼溝群中の第三折り曲げ溝124と対向して設けられている。
【0047】
ロータにおいて一体となるU字状のものが採用される場合、それらの間の透磁路の中間部分から接線方向の水平線を引いて、U字状をアームと底部とに分割することができる。この時、底部となる磁石鋼の長さL2及びアームとなる磁石鋼の長さL1は
図4に示されるとおりである。
【0048】
上記以外、本明細書において言われる「一実施例」、「他の実施例」、「実施例」等は、この実施例に合わせて説明される具体的な特徴や構造又は特性が、本願にてまとめて説明される少なくとも一つの実施例に含まれることをさらに了解されたい。明細書における複数の箇所において同様な説明をしても、必ずしも同一の実施例を言うものではない。さらには、いずれかの実施例に合わせて一つの具体的な特徴や構造又は特性を説明する場合、他の実施例に合わせてこのような特徴や構造又は特性を実現することも本発明の範囲に含まれることを主張している。
【0049】
上記では、各実施例のいずれについての説明にも偏りがあり、ある実施例において詳述されなかった部分は、他の実施例における関連説明を参照とすることができる。
【0050】
上記は単なる本発明の好ましい実施例であり、本発明を制限するためのものではなく、当業者にとっては、本発明について種々の変更や変形を行うことができる。本発明の精神と原則の範囲においてなされたあらゆる変更や等価取替や改良等は、本発明の保護範囲に含まれるはずである。
【符号の説明】
【0051】
10 ロータ本体
13 軸穴
11 外層磁石鋼溝
111 第一外層磁石鋼溝セグメント
112 第二外層磁石鋼溝セグメント
113 第一折り曲げ溝
114 第二折り曲げ溝
12 内層磁石鋼溝
121 第一内層磁石鋼溝セグメント
122 第二内層磁石鋼溝セグメント
123 第三内層磁石鋼溝セグメント
124 第三折り曲げ溝
125 第四折り曲げ溝
20 外層磁石鋼
30 内層磁石鋼
31 第一磁石鋼
32 第二磁石鋼
33 第三磁石鋼
40 ステータ
41 ステータティース
51 第一磁気シールドブリッジ
52 第二磁気シールドブリッジ