(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】モサプリドとラベプラゾールを含有する有核錠複合製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4439 20060101AFI20220201BHJP
A61K 31/5375 20060101ALI20220201BHJP
A61K 9/24 20060101ALI20220201BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220201BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20220201BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220201BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20220201BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61K31/5375
A61K9/24
A61K47/38
A61K9/28
A61P1/04
A61P1/14
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020552648
(86)(22)【出願日】2018-11-26
(86)【国際出願番号】 KR2018014610
(87)【国際公開番号】W WO2019117502
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-06-10
(31)【優先権主張番号】10-2017-0172473
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520210077
【氏名又は名称】コリア ユナイテッド ファーム.インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】キム、ビュン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヒ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ヨウン ウーン
(72)【発明者】
【氏名】キム、スン ヨブ
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/209061(WO,A1)
【文献】特表2016-512235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 9/00
A61K 47/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベプラゾールまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含んでいる内核;及び
モサプリドまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含んでいる外層部;
から成る有核錠複合製剤であって、
前記内核の表面の全ての面は前記外層部で囲まれており、
前記外層部は、
有効成分、充填剤、崩壊剤および添加剤を含んでいる速放層と、
有効成分、充填剤、崩壊剤、放出調節剤および添加剤を含んでいる徐放層との
上下の二重層構造からな
り、
前記外層部の徐放層と速放層の重量比が1:1.5~1:2.5であり、
前記外層部の速放層に囲まれた前記内核の表面積が、
前記外層部の徐放層に囲まれた前記内核の表面積より更に大きいことを特徴とする、モサプリド及びラベプラゾール含有の経口投与有核錠複合製剤。
【請求項2】
前記放出調節剤は、
粘度が75,000~140,000mPa.sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース及び
粘度が3,000~5,600mPa.sであるヒドロキシプロピルメチルセルロースを混合して用い、
前記放出調節剤の総重量に対して、
前記粘度が75,000~140,000mPa.sであるヒドロキシプロピルメチルセルロースは60~70重量%、
前記粘度が3,000~5,600mPa.sであるヒドロキシプロピルメチルセルロースは30~40重量%を含む、請求項1に記載のモサプリド及びラベプラゾール含有の経口投与有核錠複合製剤。
【請求項3】
前記外層部の速放層には4~6mg、徐放層には9~12mgの有効成分を含む、請求項1に記載のモサプリド及びラベプラゾール含有の経口投与有核錠複合製剤。
【請求項4】
前記外層部の徐放層は、徐放層の総重量を基準として、モサプリドシトロ酸塩を12~16重量%、
前記放出調節剤を20~40重量%含む、請求項1に記載のモサプリド及びラベプラゾール含有の経口投与有核錠複合製剤。
【請求項5】
前記内核の総重量は30~70mgである、請求項1に記載のモサプリド及びラベプラゾール含有の経口投与有核錠複合製剤。
【請求項6】
前記内核は腸溶コーティング基剤でコーティングされており、
前記内核の総重量は40~60mgである、請求項1に記載のモサプリド及びラベプラゾール含有の経口投与有核錠複合製剤。
【請求項7】
前記有核錠複合製剤の総重量は250~350mgであることを特徴とする、請求項1に記載のモサプリド及びラベプラゾール含有の経口投与有核錠複合製剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載の経口投与有核錠複合製剤を製造する方法であって、
ラベプラゾールまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含んでいる内核を製造する段階と、
有効成分として、モサプリドまたはその薬学的に許容可能な塩、充填剤、崩壊剤および添加剤を含んでいる速放層顆粒及び
有効成分として、モサプリドまたはその薬学的に許容可能な塩、充填剤、崩壊剤、放出調節剤および添加剤を含んでいる徐放層顆粒を製造する段階と、
前記速放層顆粒を打錠機のパンチダイに注入する段階と、
前記速放層顆粒が注入されたパンチダイに前記内核を投入する段階と、
前記内核が投入されたパンチダイに予圧(pre-pressure)を加える段階と、
前記予圧が加えられたパンチダイに前記徐放層顆粒を注入する段階と、
前記徐放層顆粒を注入したパンチダイに本圧(main-pressure)を加えながら打錠する
段階と
を含
み、
前記予圧は0.5~2kgf/cm
2
であり、
前記本圧は3~20kgf/cm
2
である、
モサプリド及びラベプラゾール含有の経口投与有核錠複合製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017.12.14付の韓国特許出願の第10-2017-0172473号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、有効成分としてラベプラゾールを含有する内核と、有効成分としてモサプリドを含有し、徐放層と速放層の二層構造からなる外層部とで構成された有核錠剤形の複合製剤を提供する。
【背景技術】
【0003】
モサプリド(Mosapride)は選択的なセロトニン5-ヒドロキシトリプタミン(hydroxytryptamine)4(以下、「5-HT4」と称する。)受容体効能剤として、腸筋神経叢に存在するセロトニン5-HT4受容体のみを選択的に促進して神経末端でアセチルコリン(acetylcholine)の遊離を促進させ、このアセチルコリンが消化管平滑筋を収縮させて消化管運動が促進され、糖尿病性禍分泌性胃病症(Diabetic gastropathy)、消化不良(dydpepsia)、胃炎(gastritis)、逆流性食道炎(gastroesphageal reflux disease)の治療に優れた効能を示す薬剤である。モサプリドは非選択的5-HT4受容体アゴニストであるシサプリドで現れたQT間隔延長に起因する不整脈及び心因性急死の恐れがなく、ドーパミン-2(D-2)受容体の拮抗作用がなくて、中枢神経系(Central Nervous System、CNS)副作用(椎体外路症状)、高プロラクチン血症(乳汁分泌、女性化乳房)などの副作用がない安全な薬物である。
【0004】
一方、ラベプラゾール(rabeprazole)はベンゾイミダゾール(benzimidazole)誘導体で、胃酸分泌を抑制する薬物として、胃の粘膜の壁細胞(parietal cell)の酸分泌表面でH+/K+ATPaseを阻害して胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ抑制剤(proton pump inhibitor、PPI)として知られている。また、基礎酸分泌及び刺激による酸分泌の阻害を誘発し、胃、十二指腸潰瘍などの治療剤として注目されている。
【0005】
同様の薬効を有する前記二成分の複合剤は、併用投与の代替が可能であり、患者の服薬利便性が向上され、それぞれの単一制を併用して服用することよりも、経済的な側面で利点があるにもかかわらず、薬物間の相互作用による溶出パターンの変化または体内での副作用発生の恐れがある。
【0006】
一方、モサプリドとラベプラゾールの複合製剤に対しては、特許文献1で多様な剤形を提示している。しかし、ラベプラゾールを内核として含み、モサプリド徐放製剤を外層部として有する有核錠複合製剤として、生体利用率を向上させるための具体的でありながら且つ詳細な組成および剤形の形態については、未だに十分な研究がなされてないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第2016-0080449号
【文献】韓国登録特許第10-1612931号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ラベプラゾールとモサプリドの複合製剤に関する従来技術の欠点を克服し、生体利用率及び服薬利便性を改善するものであって、本発明による有核錠複合製剤は、1日に1回1錠の経口投与のみでも、ラベプラゾール単一錠を1回及びモサプリドの速放性単一錠を3回投与したものと同一の効果がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による有核錠複合製剤は、ラベプラゾール又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む内核;及びモサプリド又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む外層部;から成るものであって、前記内核の表面の全ての面は前記外層部で囲まれている。
【0010】
また、前記外層部は、有効成分、充填剤、崩壊剤および添加剤を含んでいる速放層と、有効成分、充填剤、崩壊剤、放出調節剤および添加剤を含んでいる徐放層との二重層の構造から成っている。
【0011】
本発明のラベプラゾールを有効成分として含有する内核およびモサプリド有効成分を含有する速放層と徐放層との二重層構造の外層部により、1日1回1錠の経口投与のみでも、通常のモサプリド単一錠を1日に3回、ラベプラゾール単一錠を1回投与したのと同一の効果が現れることになる。
【0012】
このとき、前記外層部の徐放層と速放層との重量比は1:1.5~1:2.5であることが好ましく、それにより、前記重量比に応じて外層部の各層に対する内核の相対的な位置が変わり得る。具体的に、内核の位置は外層部の速放層側へとより偏ることになる。これにより、本発明による優れた内核の有効成分の溶出効果が表れながらも、錠剤の安定性が維持される。
【0013】
前記したように、内核の位置が外層部の速放層側へとより偏ることによって、外層部の速放層に囲まれた内核の表面積が外層部の徐放層に囲まれた内核の表面積より、更に大きくなる。
【0014】
もし、徐放層に対する速放層の重量が前記範囲の未満である場合は、内核の迅速な分離溶出が行われず、溶出が遅れることになり得るし、前記範囲を超える場合には、打錠時に内核の安定性が落ちて溶出の途中に亀裂が発生しやすくなる。
【0015】
前記外層部の徐放層には放出調節剤として、粘度が75,000~140,000mPa.sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース及び粘度が3,000~5,600mPa.sであるヒドロキシプロピルメチルセルロースを混合して使用する。前記放出調節剤の総重量に対し、前記粘度が75,000~140,000mPa.sであるヒドロキシプロピルメチルセルロースは60~70重量%を、前記粘度が3,000~5,600mPa.sであるヒドロキシプロピルメチルセルロースは30~40重量%を含むことが望ましい。
【0016】
もし、放出調節剤の割合が前記範囲を外れる場合は、有効成分の溶出が過度に遅延されたり、早期に多く放出されたりして、十分な徐放効果が表れなくなる。
【0017】
前記外層部の速放層と徐放層は、それぞれ有効成分としてモサプリドシトロ酸塩を含んでいるが、速放層には4~6mg、徐放層には9~12mgが含まれることが望ましい。
【0018】
前記速放層の有効成分が4mg未満を含んだり、徐放層の有効成分が9mg未満を含んだりする場合には、初期に十分な有効成分の溶出が起こらず、1日3回投与することと同等の薬効が現れない。また、速放層の有効成分が6mgを超えて含まれたり、徐放層の有効成分が12mgを超えて含まれたりする場合は、血中濃度の過度な上昇で、嘔吐やめまい症などの副作用が現れ得る。
【0019】
本発明による有核錠複合製剤の外層部徐放層は、徐放層の総重量を基準として、モサプリドシトロ酸塩は12~16重量%、前記放出調節剤は20~40重量%を含むが、前記放出調節剤が20重量%未満で含まれる場合は十分な徐放化が行われなく、40重量%を超える場合は有効成分の溶出が過度に遅延されて、薬理効果が低下される。
【0020】
本発明による有核錠複合製剤は、外層部が内核を包み隠す構造からなっているので、内核のサイズに応じて剤形の全体のサイズが変わる。したがって、患者の服薬利便性のために内核の総重量は70mg以下であることが好ましく、内核の打錠の安定性を維持するためには少なくとも内核の総重量が30mg以上であることが好ましく、内核の総重量が40mg~60mgである場合が更に好ましい。また、内核はラベプラゾールの生体利用率の向上のために腸溶コーティング基剤にコーティングされ得る。
【0021】
同様に内核と外層部を含む有核錠複合製剤の総重量は250mg以上であること錠剤の安定性のために好ましく、350mg以下であることが患者の服薬利便性のために好ましい。
【0022】
本発明の有核錠複合製剤は、下記の段階を含んで製造される。
ラベプラゾール又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む内核を製造する段階と、
有効成分として、モサプリド又はその薬学的に許容可能な塩、充填剤、崩壊剤および添加剤を含む速放層顆粒及び
有効成分として、モサプリド又はその薬学的に許容可能な塩、充填剤、崩壊剤、放出調節剤、および添加剤を含む徐放層顆粒を製造する段階と、
前記速放層顆粒を打錠機のパンチダイに注入する段階と、
前記速放層顆粒が注入されたパンチダイに前記内核を投入する段階と、
前記内核が投入されたパンチダイに予圧(pre-pressure)を加える段階と、
前記予圧が加えられたパンチダイに前記徐放層顆粒を注入する段階と、
前記徐放層顆粒を注入したパンチダイに本圧(main-pressure)を加えながら打錠する段階。
【0023】
前記段階のうち、特に、速放層顆粒の注入段階;内核の投入段階;予圧段階;徐放層顆粒の注入段階;本圧による打錠段階;は、前記の順番通りに行ったときに、内核の外層部に対する相対的な位置及び錠剤安定性が最も好ましく表れた。
【0024】
また、前記予圧は0.5~2kgf/cm2であることが好ましく、前記本圧は3~20kgf/cm2であるときが好ましく、8~15kgf/cm2であるときが最も好ましい。
【0025】
予圧が前記圧力に及ばない場合は内核の位置が不均一に表示される。また、本圧が3kgf/cm2の未満である場合は有核錠複合製剤の硬度が低下して崩壊され易く、20kgf/cm2を超える場合は過度な圧力によって亀裂が発生し得る。
【発明の効果】
【0026】
本発明による有核錠複合製剤は、1日1回1錠の経口投与のみでも、ラベプラゾール単一錠を1回及びモサプリド速放性単一錠を3回投与したのと同一の効果がある。
【0027】
また、本発明の有核錠複合製剤は、PPI成分を含有する内核をモサプリド成分を含有する二重層構造の外層部が囲んでいる構造であって、このような剤形は従来技術で提示されたことがなく、従来の有核錠製剤と比べて、錠剤のサイズが小さく、服薬利便性が高い。しかも、製剤の安定性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る有核錠錠剤の模式図を示したものである。
【
図2】本発明に基づいて製造した有核錠錠剤の外層部を垂直に切断した断面の写真を示したものである。
【
図3】本発明の外層部の組成を特定するために製造された実施例1~3及び比較例1~3の二層錠剤と対照群である従来のモサプリド二層錠剤に対して、pH4.0溶出液で測定したモサプリド有効成分の溶出率を図示したものである。
【
図4】各製造方式に係る有核錠複合製剤の模式図及び一実施例における内核分離の可否を撮影した写真である。
【
図5】pH4.0溶出液の環境で、本発明の実施例6(GSP5)の有核錠複合製剤と対照薬であるガスチインCR錠とのモサプリド溶出率を比較して図示したものである。
【
図6】水で、本発明の実施例6(GSP5)の有核錠複合製剤と対照薬であるガスチインCR錠とのモサプリド溶出率を比較して図示したものである。
【
図7】pH6.8溶出液の環境で、本発明の実施例6(GSP5)の有核錠複合製剤と対照薬であるガスチインCR錠とのモサプリド溶出率を比較して図示したものである。
【
図8】pH1.2溶出液の環境で、本発明の実施例6(GSP5)の有核錠複合製剤と対照薬であるガスチインCR錠とのモサプリド溶出率を比較して図示したものである。
【
図9】pH6.8溶出液の環境で、本発明の実施例6(GSP5)の有核錠複合製剤と対照薬であるパリエット錠とのラベプラゾール溶出率を比較して図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係るモサプリド及びラベプラゾール含有の経口投与有核錠複合製剤の製造方法は、次の通りである。
製造方法は、下記のように大きく4段階に区分して製造されるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、段階1~3は独立した工程段階とで順番を変えて製造することができる。
段階1:核錠としてのプロトンポンプ抑制剤の部分(ラベプラゾールナトリウム)を製造する段階。
段階2:外層部の速放層として運動促進剤の部分(モサプリドシトロ酸塩二水和物)を製造する段階。
段階3:外層部の徐放層として運動促進剤の部分(モサプリドシトロ酸塩二水和物)を製造する段階。
段階4:段階1~3によって製造された核錠及び混合物を有して有核錠に打錠する段階。
以下、本発明に係るモサプリド及びラベプラゾール含有の経口投与有核錠複合製剤に対する製造方法のうち、一具体例について詳細に説明する。
【0030】
[段階1:内核としてのプロトンポンプ抑制剤の部分(ラベプラゾールナトリウム)を製造する段階]
内核(素錠)の総重量対比、ラベプラゾールナトリウム15~25重量%、D-マンニトール5~10重量%、酸化マグネシウム25~35重量%、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース3~7重量%を混合した後、適量のエタノールに連合及び顆粒化工程を行い、乾燥機にて50~70℃の温度でLOD2%以下になるように乾燥した後に錠粒する。その後、クロスポビドン2~5重量%と、適量の滑沢剤類を混合して打錠する。打錠して得た素錠にフィルムコーティング基剤で1次コーティングをし、腸溶コーティング基剤で2次コーティングをする。そして、フィルムコーティング基剤で最後の3次コーティングをして錠剤形態の内核(コーティング錠)を製造する。
【0031】
1次フィルムコーティングは、有効成分であるラベプラゾールナトリウムと腸溶コーティング基剤との相互作用の防止及び長期間の水分暴露の防止に目的がある。2次腸溶コーティングは、プロトンポンプ抑制剤であるラベプラゾールナトリウムは酸性条件において薬物が分解される等の安定性に問題があるので、耐酸性を有して腸で溶出され、薬物の効果を表せることに目的がある。3次フィルムコーティングは、有核錠の製造時に核錠に加わる打錠の圧力によって錠剤の破損及び亀裂を防止することに目的がある。
【0032】
[段階2:外層部の速放層として運動促進剤の部分(モサプリドシトロ酸塩二水和物)を製造する段階]
外層部の速放層の総重量対比でモサプリドシトロ酸塩2~5重量%を乳糖20~40重量%、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース10~20重量%、微結晶セルロース適量と混合した後、エタノールに溶解させたポビドンK-30の4~8重量%を結合液として加えて連合及び顆粒化工程を行い、流動層乾燥機で温度50~70℃、乾燥減量(LOD) 4%以下で乾燥して錠粒する。その後、適量の滑沢剤類を混合して速放層顆粒を製造する。
【0033】
[段階3:外層部の徐放層として運動促進剤の部分(モサプリドシトロ酸塩二水和物)を製造する段階]
外層部の徐放層の総重量対比、薬理学的な有効成分としてモサプリドシトロ酸塩を12~16重量%、乳糖を5~15重量%、粘度が75,000~140,000mPa.sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース及び粘度が3,000~5,600mPa.sであるヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む放出調節剤を20~40重量%、微結晶セルロース適量を混合する。ここに、適量のエタノールに溶解させたポビドン3~7重量%を結合液として加えて連合及び顆粒化した後、流動層乾燥機で温度50~70℃、乾燥減量(LOD)4%以下で乾燥して錠粒する。その後、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース15~20重量%と適量の滑沢剤類を混合して、徐放層顆粒を製造する。
【0034】
[段階4:段階1~3によって製造された核錠及び混合物を有して有核錠に打錠する段階]
前記の段階1~3で製造した核錠と速放層混合物及び徐放層混合物を有して、有核錠打錠機(PR-LT、(株)ピティケー(PTK)を用いて、モサプリド及びラベプラゾール含有の経口投与有核錠複合製剤を製造する。
まず、段階2の速放層混合物を打錠機のパンチダイに注入(Feeding)した後に、段階1のコーティングされた核錠を投入して0.5~2kgf/cm2の予圧(pre-pressure)を与える。その次、段階3の徐放層混合物を注入し、本圧(main-pressure)を3~20kgf/cm2、好ましくは8~15kgf/cm2の圧力を加えながら打錠する。
【0035】
本発明に係るモサプリド及びラベプラゾール含有の経口投与有核錠複合製剤は、前記有核錠の打錠方法のように、外層部の速放層混合物を先に注入し、予め製造された内核を投入した後に予圧を与える。その次、外層部の徐放層混合物を注入した後に本圧を与えて打錠するとの順番で製造することができる。
【0036】
本発明による有核錠複合製剤の総重量は250~350mgであり、患者の服薬順応度を向上させるために、350mgを超えないことが好ましく、重量が250mg未満である場合は製剤の安定性が低下し得るので、好ましくない。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の好適な実施方法について詳細に説明する。下記の実施例では、本発明に係る実施のための具体的な構成要素及び特定の因子らについて説明しているが、これは本発明に対する全般的な理解を助けるために提供するもので、本発明が実施例によって限定されるものではない。
【0038】
<実験1>外層部の設計及び最適組成の選定
ガスチインCR錠に適用された本出願人のモサプリド徐放化技術に基づいて、有核錠外層部の主な品質属性である溶出パターン及び特定時間での溶出範囲を大略的に予測して、研究方向を設定した。
【0039】
従来のモサプリド含有の徐放二層錠であるガスチインCR錠(特許文献2)の場合、pH4.0、pH1.2溶出液および水の条件で、1時間後には有効成分の総含量の25~45重量%が溶出され、8時間後は60~80%、24時間後は85%以上が溶出される特性を有する。
【0040】
本出願人は、これを基礎として有核錠剤型の特性および他の有効成分との相互作用および効果などを考慮して研究を重ね、市販許可の基準となるpH4.0溶出液を基準に、1時間後は35~45%、8時間後は70~80%の有効成分の溶出が安定的に現れ得る組成を導出した。
【0041】
継続的な研究と繰り返しの実験を通じて、溶出パターンに影響を与える原料物質の属性把握及び当該要因の範囲を選定することができ、範囲に応じた原料物質の溶出パターンに対する影響の程度及び関係を確立した。
最終的に、原料物質の属性と溶出パターンとの相関関係を分析して組成の最適化を行い、各成分間の相互関係を考えた外層部の実験組成(MS3~MS8)を導出して下記の表1に示した。
【0042】
【0043】
上記の表1に基づいて、実施例1~3及び比較例1~3(製剤番号MS3~MS8)の組成に応じた二層錠剤を製造して、pH4.0溶出液での溶出率を測定した。最適化した溶出率が示す組成を特定するために、対照群である従来のガスチインCR錠と比較して、その結果を下記の表2及び
図3に示した。
【0044】
【0045】
上記の表2及び
図3に示したように、比較例1~3の場合は、初期溶出の過多、溶出の長期遅延などの問題が現れ、実施例1~3の場合は好ましい溶出の様相を見せた。
特に、実施例3は対照薬の溶出様相と非常に類似しており、最も好ましい結果を示した。
【0046】
<実験2>内核の設計及び最適組成の選定
本発明によるモサプリド及びラベプラゾールを含有する有核錠複合製剤は、ラベプラゾールナトリウムを含有する腸溶コーティング錠剤である内核を、モサプリドシトロ酸塩二水和物を含有する外層部が囲んでいる構造となっている。したがって、内核錠剤の重量及びサイズが大きくなるほど、有核錠全体の重量及びサイズはそれに比例して大きくなり、患者の服用利便性を考えるとき、なるべく核錠を小さく製造することが好ましい。しかし、核錠の剤形があまりにも小さくなる場合は、打錠時に亀裂が発生したり、安定性が低下したりすることがあり得る。このような条件らを鑑みると、好ましい内核の総重量は30~70mg、さらに好ましくは40~60mgである。
【0047】
前記した発明の趣旨に基づいて、重量を最小限に抑えながらも安定性を維持するラベプラゾールナトリウムを含有する腸溶コーティング錠剤の内核を設計し(製剤番号RB1~RB4)、具体的な組成を下記の表3に示した。
内核の製造には、直径4パイの円形パンチを用いた。
【0048】
【0049】
上記の表3の各組成に基づいて、胃液及び腸液の環境であるpH1.2及びpH6.8溶出液での溶出率を測定して下記の表4に示した。
【0050】
【0051】
上記の表4に示した如く、製造したラベプラゾールナトリウム内核のうちに実施例4(RB2)及び実施例5(RB4)が対照薬であるパリエット錠10mgと同等レベルの含量及び溶出率を示した。
【0052】
一方、錠剤の重量及びサイズがあまりにも小さいと、打錠圧力が高い時に、低い錠剤の厚さに因して、パンチの損傷が生じ得るし、コーティング工程ではコーティングパンの内部の打空部分にくっつく現象が発生され得るので、前記溶出率と打錠及びコーティング工程の容易性を共に考えるとき、実施例5(RB4)が最も好ましいことと表れた。
【0053】
<実験3>有核錠の製造及び外層部の各層の重量比に応じた最適組成の選定
本実験では、前記実験1及び実験2において、最も好ましい溶出を示した実施例3の外層部の組成及び実施例5の内核の組成を基にして、追加的な内核の分離容易性及び溶出の実験を行い、分離容易性および溶出実験の結果を元に、本発明による有核錠複合剤の好ましい最終組成を完成した。
【0054】
本発明の有核錠配合剤の外層部は、投与後に急速に崩壊される速放層と、12時間以上を徐々に崩壊され続く徐放層とで構成され、前記外層部は内核を囲んでいる構造から成っている。したがって、内核が外層部の速放層と徐放層のうち、どちらかに偏って位置するかによって、内核が外部環境にさらされる様相が変わるので、それによって内核の有効成分の溶出率及び内核の安定性が変わることになる。
【0055】
本出願人は、研究を重ねた末に、内核の安定性を確保しながらも、速い溶出および高い生体利用率を維持する効果を達成するためには、内核が速放層に偏ることが好ましいということを見出した。
【0056】
ところで、通常の有核錠製造工程上、内核は中央の近くに位置するように製造されるので、内核自体の位置を任意に中央からずれるように調整することは容易ではなく、内核を直接調整する工程を大量生産のための打錠装置に適用するのは、不適合である。
【0057】
そこで、本出願人は、再び研究を重ねて、内核ではない外層部の速放層と徐放層の厚さの比を調節して、外層部の各層に対する内核の相対的な位置を調整する方法を考え出した。具体的に、速放層と徐放層の賦形剤の含量を調整し、それに応じて相対的な厚さの比を調節することができ、賦形剤の量を調節して速放層の重量を徐放層に比べてより大きくする場合、
図1~
図2に示した如く、外層部に対する内核の相対的な位置を速放層に偏るように調整することができた。
【0058】
本出願人は、最も好ましい内核の溶出率及び安定性を示す内核の相対的な位置を導出するために、種々の剤形の形態を設定し、各剤形の形態を適用するために、製造方式を変えて打錠を行った。具体的な組成(GSP 1~GSP9)は、下記の表5(表5-1~5-3)に示した。また、直径8パイの円形パンチを用いて製造した。
【0059】
一方、下記の表5に記載された各製造方式は、次の通りである。
製造方式1:速放層顆粒を注入する段階;内核を投入する段階;測定可能な圧力未満の微細な予圧を加える段階;徐放層顆粒を投入する段階;8.5kgf/cm2の本圧を加える段階。
製造方式2:速放層顆粒を注入する段階;内核を投入する段階;1kgf/cm2の予圧を加える段階;徐放層顆粒を注入する段階;8.5kgf/cm2の本圧を加える段階。
製造方式3:製造された速放層顆粒の50重量%を注入する段階;内核を投入する段階;製造された速放層顆粒の残り50重量%を注入する段階;1kgf/cm2の予圧を加える段階;徐放層顆粒を注入する段階;8.5kgf/cm2の本圧を加える段階。
【0060】
【0061】
[内核の分離及び崩壊安定性の可否を観察]
上記表の組成及び製造方式による各実施例及び比較例について各20錠づつ製造して、溶出試験機及びpH1.2溶出試験液の条件で、パドルを毎分50rpmで回転させ、30分経過後に外層部のモサプリド速放層から核錠が分離された有核錠の個数と核錠の亀裂の可否を肉眼で確認し、その結果を下記の表6に示した。
【0062】
【0063】
[考察]
各製造方式に係る一製造例の模式図及び分離結果の写真を
図4に示した。製造方式1を適用して製造したGSP1~3は、30分経過後に核錠の分離崩壊が100%とならないので、ラベプラゾールナトリウム腸溶コーティング錠の目標とする溶出様相を示し難く、製造方式2を適用して製造したGSP4~6は、試験した実施組20個の何れも、核錠が外層部の速放層で分離崩壊が成された。製造方式3を適用して製造したGSP7~9は、試験した実施組20個の何れも、核錠が外層部の速放層で分離崩壊が成された。
【0064】
また、製造方式3を用いて製造したGSP7とGSP8、そして、外層部と比べて速放層の重量が少ないGSP1とGSP4では、有核錠の打錠時の圧力による核錠の亀裂が発生したと判断されるし、核錠の耐酸性が弱化するので不適合である。
【0065】
総合的に、製造方式2を用いて製造したGSP5(実施例6)が最も好ましい分離崩壊性及び内核安定性を有するものと表れた。
【0066】
<実験4>外層部と対照群のモサプリド有効成分の溶出比較実験
前記GSP5(実施例6)剤形に対して、モサプリドを含有する外層部の溶出様相が従来の徐放錠と同一に表れるか確認するため、溶出比較実験を行った。
【0067】
[モサプリド有効成分に対するインビトロ(In-vitro)溶出試験]
大韓民国薬典の溶出試験液の条件で、前記GSP5(実施例6)のモサプリド及びラベプラゾール含有の経口投与有核錠複合製剤に対して、時間の経過に伴うモサプリドシトロ酸塩有効成分の溶出率を測定して溶出様相を確認した。
【0068】
溶出試験に用いられた試験条件は次の通りである。
検体:GSP5(モサプリド及びラベプラゾール含有の経口投与有核錠複合剤)
溶出試験液:大韓民国薬典の溶出試験法のうち、pH1.2、pH4.0、pH6.8および水
溶出液量:900mL、試験温度:37±0.5℃
試験方法:大韓民国薬典の溶出試験第2法(パドル法)、毎分50回転
試料採取:試料採取の時間毎に10mLの溶出液を取り、0.45μmのフィルターで濾過して検液とし、溶出液を取った後には、新しい溶出液を同量補正。
分析機器:HPLC
【0069】
[試験の結果]
前記インビトロ(In-Vitro)溶出試験の結果を下記の表7~10及び
図5~8に示した。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
[考察]
上記の表7~10および
図5~8に示された如く、GSP5(実施例6)のモサプリドシトロ酸塩の有効成分の溶出率は対照薬であるガスチインCRと溶出様相が同じで、1日に1回の経口投与製剤として好適であることが分かる。
【0075】
<実験5>内核と対照群のラベプラゾール有効成分の溶出比較実験
前記GSP5(実施例6)剤形に対して、ラベプラゾールを含有する内核の溶出様相が従来のラベプラゾール腸溶コーティング錠と同じく表示されるのか確認するため、溶出比較実験を行った。
【0076】
[ラベプラゾールナトリウムの有効成分に対するインビトロ(In-vitro)溶出試験]
大韓民国薬典の溶出試験液pH6.8の条件で、前記GSP5のモサプリド及びラベプラゾール含有の経口投与有核錠複合製剤に対して、時間の経過に伴うラベプラゾールナトリウム有効成分の溶出率を測定して溶出様相を確認した。
【0077】
溶出試験に用いられた試験条件は次の通りである。
検体:GSP5(モサプリド及びラベプラゾール含有の経口投与有核錠複合剤)
溶出試験液:大韓民国薬典の溶出試験法のうちpH6.8
溶出液量:900mL、試験温度:37±0.5℃
試験方法:大韓民国薬典の溶出試験第2法(パドル法)、毎分50回転
試料採取:試料採取の時間毎に5mLの溶出液を取り、0.45μmのフィルターでろ過して検液とする。
分析機器:HPLC
【0078】
[試験の結果]
前記インビトロ(In-Vitro)溶出試験の結果を下記の表11と
図9に示した。
【0079】
【0080】
[考察]
上記の表11及び
図9に示すように、GSP5(実施例6)のラベプラゾールナトリウム有効成分は、有核錠剤形の内核に含有されているのに、対照薬であるパリエット錠と溶出様相が同一で、最適の生体利用率を有することが予想される。
【0081】
結果として、本発明による有核錠複合製剤は、最適の組成および剤形設計により、1日に1回1錠の服用のみでも内核と外核の有効成分が何れも優れた効果を示すことがわかり得る。