(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】腫瘍関連樹状細胞の調製およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0784 20100101AFI20220202BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220202BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20220202BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C12N5/0784 ZNA
A61P35/04
A61K35/15
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2018544885
(86)(22)【出願日】2017-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2017054042
(87)【国際公開番号】W WO2017144522
(87)【国際公開日】2017-08-31
【審査請求日】2020-01-21
(32)【優先日】2016-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511084980
【氏名又は名称】ヴェーイーベー ヴェーゼットウェー
【氏名又は名称原語表記】VIB VZW
【住所又は居所原語表記】Rijvisschestraat 120,B-9052 Gent BE
(73)【特許権者】
【識別番号】596099561
【氏名又は名称】ブレイエ・ユニバージテイト・ブリュッセル
【氏名又は名称原語表記】VRIJE UNIVERSITEIT BRUSSEL
(73)【特許権者】
【識別番号】500454769
【氏名又は名称】ウニフェルジテイト・ヘント
【氏名又は名称原語表記】Universiteit Gent
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100165892
【氏名又は名称】坂田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】ヨー・ファン・ヒンデラフテル
(72)【発明者】
【氏名】ダムヤ・ラウイ
(72)【発明者】
【氏名】イリ・ケイルセ
(72)【発明者】
【氏名】マルタン・ギリアム
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/112749(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00 - 5/28
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に単球由来樹状細胞(Mo-DC)を含まな
い腫瘍関連樹状細胞(TADC)サブセットであって
、少なくともCD16
-CD11c
+HLA-DR
+BDCA2
-CD14
-CD64
loの細胞表面表現型の特徴を有する
、TADCサブセット。
【請求項2】
1%未満のMo-Dcを含む、請求項1に記載のTADCサブセット。
【請求項3】
TADCサブセットが、さらにBDCA1
-BDCA3
+CD11b
-を特徴とする、請求項1または2に記載のTADCサブセット。
【請求項4】
TADCサブセットが、さらにBDCA1
+BDCA3
-CD11b
+を特徴とする、請求項1または2に記載のTADCサブセット。
【請求項5】
腫瘍転移を処置するための、請求項1~4のいずれか一項に記載のTADCサブセットを含む、医薬組成物。
【請求項6】
請求項3に記載のTADCサブセットを含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項4に記載のTADCサブセットを含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
腫瘍転移を処置するための医薬組成物を製造するための、請求項1~4のいずれか一項に記載のTADCサブセットの使用。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載のTADCサブセットの製造方法であって、哺乳動物の切除した腫瘍、または切除した腫瘍流入領域リンパ節からTADCを調製すること、および、前記TADCを精製し、前記TADCサブセットを得ることを含む、方法。
【請求項10】
精製が、浮遊密度遠心分離、磁気活性化セルソーティングまたは蛍光活性化セルソーティングの1つ以上を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
異なるTADCサブセットが、別々に、または、同一の濃縮手順で濃縮される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
別々に濃縮された異なるTADCサブセットが混合される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
TADCサブセットが1%未満のMo-Dcを含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、腫瘍転移の処置における、腫瘍関連樹状細胞(TADC)の調製およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
樹状細胞(DC)は、免疫応答を調整する上で重要な役割を果たす、全ての組織に存在する特殊な抗原提示細胞(APC)である(Steinman and Banchereau, 2007)。種々の定常状態の組織、および炎症を起こした組織から単離されたDCは、発生的に異なるDCサブセットからなる異種集団を表すことが示されており(Guilliams et al., 2010; Helft et al., 2010; Plantinga et al., 2013)、cDC1(CD8α+様、またはCD103+通常型DC)、cDC2(CD11b+様cDC)、形質細胞様DC(pDC)および、いわゆる単球由来DC(Mo-DC)(Guilliams et al., 2014; Guilliams et al., 2010; Heath and Carbone, 2009) を含む。cDCは、Flt3L依存的に骨髄由来のpre-cDC前駆細胞から生じ(Onai et al., 2007)、恒常的条件下でGM-CSFRシグナル伝達によって維持され(Greter et al., 2012)、BATF3、ID2およびIRF8、またはRELBおよびIRF4の制御下で、それぞれcDC1およびcDC2に分化する。Mo-DCは、CCR2依存的に骨髄を出るLy6Chi単球から分化し(Greter et al., 2012; Serbina et al., 2008)、インビボでの分化にGM-CSFRシグナル伝達を必要としないことが報告されている(Greter et al., 2012; Serbina et al., 2008)。重要なことに、異なる細胞起源のDCは、差次的機能的特殊化を示すことが示されている。cDC1は細胞傷害性T細胞(CTL)応答の誘導に特化しているが、cDC2はTh17またはTh2応答の誘導において優れていることが示されている(Gao et al., 2013; Persson et al., 2013; Plantinga et al., 2013; Schlitzer et al., 2013)。Mo-DCの遊走能が議論されているが、Mo-DCは炎症を起こした組織ではエフェクターT細胞を再活性化することが提唱されている(Plantinga et al., 2013)。腫瘍関連DC(TADC)に起因する様々な機能が、実際に異なるDCサブセットによって行われているかどうかは不明であるが、腫瘍におけるcDC1の存在の最近の報告(Broz et al., 2014)は、腫瘍組織には、他の組織と同様に、異なる発生起源、および、場合によっては差次的機能的特殊化を有するDCが存在し得ることを強調している。事実、異なる機能を有する腫瘍関連マクロファージ(TAM)の亜集団が同定されている(Laoui et al., 2014; Movahedi et al., 2010)。
【0003】
腫瘍における成熟DCの存在は、いくつかの腫瘍タイプにおける陽性の予後と関連している(Fridman et al., 2011; Goc et al., 2014)。DCベースの免疫療法は、腫瘍を処置するために、DCの能力、および免疫系の特異性を利用しようと試みている。本プロセスにおいて重要なステップは、腫瘍特異的抗原を提示する成熟DCを提供することである。DCベースの免疫療法における現在の標準的アプローチは、腫瘍関連抗原(TAA)が負荷され、サイトカインによって活性化された、エクスビボで培養されたDCの使用である。それにもかかわらず、抗原負荷のプロセスは常に有効ではなく、特定の腫瘍に存在するTAAの最新の知識を必要とし、エクスビボの細胞培養は労働集約的である。さらに、単離および細胞培養手順は、精製されたDCの有用性を妨害し得る免疫原性を有する可能性のある外来抗原を含む、ヒツジ赤血球および/またはウシ胎児血清のいずれかを用いることがある。培養培地でのエクスビボでの成熟後のDCの表現型分析では、必要な細胞表面マーカーが実証されているが、機能的には、DCは宿主への移動後に有効に免疫応答を駆動できないことがある。実際、エクスビボで生成された成熟DCに対する臨床的応答は中程度である。これは、寛容誘導につながり得る、腫瘍側での有効な炎症の欠如によって部分的に説明されるであろう。当該有効性の欠如は、DC(主にMo-DC)の間違った選択と、これらのDCのリンパ節への遊走が失敗したことによることが証明されている。腫瘍部位でのDCとT細胞との相互作用を規定するもの、および、免疫寛容原性モードから応答性モードへと相互作用を推進させるものについての我々の理解は、以前として非常に乏しい。要するに、先行技術では、成熟DCの生成のためにはサイトカインの存在下での複雑な細胞培養方法が必要であると教示しているが、これらのDCに対する臨床的応答はむしろ不十分である。上述の制限がなく、有効な抗腫瘍免疫応答を誘導するDCまたはDC組成物が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Steinman and Banchereau, 2007
【文献】Guilliams et al., 2010
【文献】Helft et al., 2010
【文献】Plantinga et al., 2013
【文献】Guilliams et al. 2014
【文献】Heath and Carbone, 2009
【文献】Onai et al., 2007
【文献】Greter et al., 2012
【文献】Serbina et al., 2008
【文献】Gao et al., 2013
【文献】Persson et al., 2013
【文献】Schlitzer et al., 2013
【文献】Broz et al., 2014
【文献】Laoui et al., 2014
【文献】Movahedi et al., 2010
【文献】Fridman et al., 2011
【文献】Goc et al., 2014
【発明の概要】
【0005】
我々は、腫瘍組織由来のTADCを特徴付け、精製し、利用した。驚くべきことに、我々は、腫瘍組織由来のTADCが、抗腫瘍性の免疫応答を誘導し得ることを見出した。これは、現在利用可能なDCベースの免疫療法戦略よりも有利である。なぜなら、TADCは、TAA(未だ規定されていないTAAを含む)を天然に提示しており、エクスビボで培養する必要もないためである。さらに、我々のデータは驚くべきことに、異なる個体発生のTADC集団が、異なる治療効果を誘発することを示している。
【0006】
本発明の1つの局面は、本質的にMo-DCを含まない、pre-cDC起源の単離されたTADCサブセットであって、哺乳動物の切除した腫瘍、または切除した腫瘍流入領域リンパ節から得られる、哺乳動物の腫瘍転移の処置における使用のための、TADCサブセットを提供することである。
【0007】
ある実施形態において、本発明は、1%未満のMo-DCを含むTADCサブセットを想定する。
【0008】
ある実施形態において、本発明は、少なくともCD16-CD11c+HLA-DR+BDCA2-CD14-の特徴的な細胞表面表現型を有するTADCサブセットを想定する。上述のTADCサブセットはさらに、BDCA1-BDCA3+CD11b-を特徴とすることができる。
【0009】
ある実施形態において、本発明は、少なくともCD16-CD11c+HLA-DR+BDCA2-CD14-の特徴的な細胞表面表現型を有するTADCサブセットを想定する。上述のTADCサブセットはさらに、BDCA1+BDCA3-CD11b+を特徴とすることができる。
【0010】
(a)哺乳動物の切除した腫瘍、または切除した腫瘍流入領域リンパ節からTADCを単離するステップ、および(b)Mo-DCを本質的に含まない集団を得るために効果的な方法で、TADCサブセットを濃縮するステップを含むプロセスによって調製された、上述のTADCサブセットもまた、想定される。ある特定の実施形態において、濃縮は、浮遊密度遠心分離、磁気活性化セルソーティング(MACS)、および蛍光活性化セルソーティング(FACS)の1つ以上を含む。
【0011】
本発明はまた、腫瘍転移の処置における使用のための、上述のTADCサブセットのいずれかに関する。
【0012】
別の局面によると、本発明はまた、腫瘍転移の処置における使用のための、上述のTADCサブセットを含む医薬組成物に関する。
【0013】
上述のTADCサブセットまたは上述の医薬組成物の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において腫瘍転移を処置する方法もまた、想定される。
【0014】
本発明の目的は、以下の説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、様々なTADC亜集団の起源を示している。(A)12日目の3LL-R腫瘍は、(1)CD64
negCD24
posCD11b
locDC1、(2)CD64
negCD24
negCD11b
posLy6C
locDC2、および(3)CD64
posCD24
intCD11b
posLy6C
hiMo-DCに細分された。各サブセットについて、前方散乱対側方散乱のプロットを示す。結果は、n≧4の4つの独立した実験を代表するものである。(B)Pre-cDC(B220
-CD11c
+Sirpα
int)および単球前駆体(CD11b
+Ly6G
-Ly6C
+MHC-II
-)を、CD45.2
+骨髄から選別して、CellTraceで標識した。4×10
5個のpre-cDCまたは1×10
6個の単球のいずれかを、CD45.1 3LL-R腫瘍を有するレシピエントマウスに、静脈内(IV)に養子移入した。3日後に、腫瘍を処理して、移入した細胞をそれらのCD45.1
-CD45.2
+CellTrace
+表現型に基づいてゲーティングした。結果は、n=2~4の2つの独立した実験を代表するものである。(C)3LL-R腫瘍を、WT、CCR2-KO、Flt3L-KOおよびGM-CSFR KOマウスにおいて、12日間成長させた。腫瘍全体の単一細胞懸濁液における各TADC亜集団の割合を決定した。結果は、n=6の2つの独立した実験を代表するものである。二元配置分散分析による統計解析。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;****、p<0.0001。(D)12日目の3LL-R腫瘍の単一細胞懸濁液を、示したマーカーで染色し、TADCサブセットについてヒストグラムの重ね書きを示す。黒線=示したマーカーの発現;網掛けのヒストグラム(shaded histogram)=アイソタイプコントロール。ΔMFI±SEMを示しており、これは(MFI SIINFEKL-MFIコントロール)を表している。結果は、n≧4の2つの独立した実験を代表するものである。一元配置分散分析による統計解析。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;****、p<0.0001。
【0016】
【
図2】
図2は、異なるTADCサブセットによる、いくつかの腫瘍タイプの浸潤を示す。(A)同様の体積の腫瘍を有する、20日目の皮下の(sc)LLC-OVA肺癌、12日目のsc3LL-R肺癌、6日目の3LL-6を同所性注射した肺癌、35日目のsc3LL-S肺癌、17日目のscMC38結腸癌、28日目のMC38を同所性注射した結腸癌、20日目のB16-OVAscメラノーマ、20日目のT241sc線維肉腫および16週目の自然発生的に成長したMMTV-PyMT乳房癌腫の単一細胞懸濁液において、TADCをdoublets
neglive(AQUA
neg)Ly6G
negCD3
negCD19
negCD11c
posMHC-II
pos細胞としてゲーティングした。(B)同様の体積の示した腫瘍について、TADC集団全体における各TADC亜集団の割合を決定した。(C)同様の体積の示した腫瘍について、CD11b
+Ly6G
-集団全体における各TAMサブセットの割合を決定した。(A~C)グラフは、平均±SEMを示している。結果は、n=3~10の独立した2つの実験を代表するものである。(D-E)TADC全体(D、左図)、TADCサブセット(D、右図)およびTAMサブセット(E)の量を、7日目、11日目、および15日目の3LL-R腫瘍の単一細胞懸濁液で評価した。(F-G)TADC全体(F、左図)、TADCサブセット(F、中央図)およびTAMサブセット(G)の割合を、25日目、30日目、37日目、42日目の3LL-S腫瘍の単一細胞懸濁系で評価した。(D-G)グラフは、平均±SEMを示している。結果は、n≧の独立した3つの実験を代表するものである。一元配置分散分析による統計解析。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;****、p<0.0001。
【0017】
【
図3】
図3は、異なるTADCサブセットの存在が、ヒト腫瘍において再現され得ることを示している。(A)ヒト非小細胞肺癌(NSCLC)腫瘍生検標本を、CD45
+CD3
-CD19
-CD56
-BDCA2
-生細胞について予めゲーティングし、CD16
-CD11c
highHLA-DR
+細胞を、「cDC1」(BDCA1
-IRF8
+CD14
-CD11b
low)、「cDC2」(BDCA1
+IRF8
-CD14
-CD11b
+)および「Mo-DC」(BDCA1
+IRF8
-CD14
+CD11b
high)に細分した。(B-C)TADCの全体の割合(3つのサブセットの合計)(B)およびTADC集団全体における各TADCサブセットの割合(C)を、(NSCLC)および結腸直腸(CRC)腫瘍について決定した。全ての実験について、グラフは平均±SEMを示す。腫瘍タイプ当たり、n=4の患者。
【0018】
【
図4】
図4は、異なるTADCサブセットにおける抗原取り込み、処理および提示の違いを示す。(A-B)インビトロ食作用アッセイ。(A)12日目の3LL-R腫瘍の単一細胞懸濁液を、ラテックスビーズなし(コントロール)で、または、ラテックスビーズありで、4℃もしくは37℃で40分間培養した。(B)TADC全体のゲートにおける、または、Latex
+TADCゲートにおける、異なるTADCサブセットの割合が示されている。4つの腫瘍のn=3のプール。一元配置分散分析による解析。**、p<0.01。(C)インビボ食作用アッセイ。12日目の3LLーR腫瘍を有するマウスに、屠殺の2時間前に、ラテックスビーズを静脈内注射した。TADC全体のゲートにおける、または、Latex
+TADCゲートにおける、異なるTADCサブセットの割合が示されている。4つの腫瘍のn=3のプール。一元配置分散分析による解析。*、<0.05;***、<0.001。(D)DQ-OVA処理。12日目の3LL-R腫瘍サブセットに、0℃または37℃で15分間、DQ-OVAを貪食させて、処理させた。続いて、遊離のDQ-OVAを培養培地から除去し、取り込んだDQ-OVAを処理するために細胞にさらに15、30、60または90分を与えた。DQ-OVAの処理は、蛍光ペプチドの形成をもたらし、ゲーティングしたサブセットについての蛍光強度の平均±SEMをグラフに示す。4つの腫瘍のn=3のプール。二元配置分散分析による解析。****、p<0.0001。(E)LLC-OVAにおける異なるTADCサブセットによる交差提示を、MHC-Iに関連するOVA由来ペプチドSIINFEKLについて染色することによって評価した。黒線=LLC-OVA腫瘍におけるTADCのSIINFEKL発現;網掛けのヒストグラム=LLC腫瘍におけるTADCのSIINFEKL発現(コントロール)。ΔMFIを示しており、これは(MFI SIINFEKL-MFIコントロール)を表している。結果はn=4の2つの独立した実験を代表するものである。
【0019】
【
図5】
図5は、TADCサブセットの異なるT細胞増殖能を示す。(A)12日目の3LL-R腫瘍の単一細胞懸濁液を、示したマーカーについて染色し、ヒストグラムの重ね書きを示す。黒線=示したマーカーの発現;網掛けのヒストグラム=アイソタイプコントロール。結果は、n≧4の独立した2つの実験を代表するものである。(B-C)ナイーブC57Bl/6マウス由来の、脾臓のCD11c
hiMHC-II
hiB220
-Ly6C
-cDCと比較した、3LL-R腫瘍由来のTADCサブセットの抗原提示活性。選別したTADCまたは脾臓のcDCを、精製した同種のBALB/cCD4
+T細胞(B)またはCD8
+T細胞(C)の存在下で、5日間培養し、応答性T細胞の増殖を
3H-チミジン取り込み(cpm)により測定した。結果は、10~12個の腫瘍のn=3のプールの、独立した2つの実験を代表するものである。一元配置分散分析による統計解析。p<0.001;****、p<0.0001。(D-E)選別したTADCサブセットを、OT-I(D)またはOT-II(E)T細胞と、DC/T細胞の割合が1/10で、3日間共培養した。ヒストグラムは、T細胞増殖を示すCFSE希釈度を表す。黒線=TADCなしの非刺激T細胞;網掛けのヒストグラム=TADC存在下のT細胞。結果は、10~12個の腫瘍のn=1のプールの、独立した3つの実験を代表するものである。(F)TADCサブセットとOT-IIT細胞(DC/OT-II=1/10)の共培養物の上清を、IFN-γおよびIL-4の存在について、ルミネックスにより試験した。n≧4。(G)CD11b
+様TADCまたはMo-DCと、DC/OT-IIが1/5の割合で、3日間共培養したOT-IIT細胞の細胞内染色を、Th誘導転写因子RORγtについて実施した。アイソタイプコントロールおよび転写因子の染色を示している。結果は、8~12個の腫瘍のn=1のプールの、独立した3つの実験を代表するものである。一元配置分散分析による解析。**、p<0.01。(F)(H?)TADCサブセットとOT-IIT細胞との共培養物(DC/OT-II=1/10)の上清を、IL-17の存在についてルミネックスにより試験した。n≧4。一元配置分散分析による解析。**、p<0.01。(I)cDC2と、DC/OT-IIが1/5の割合で、3日間共培養したOT-IIT細胞の細胞内染色を、Th誘導転写因子T-bet、GATA3およびFOXP3について実施した。アイソタイプコントロールおよび転写因子の染色を示している。(J)48時間培養したTADCサブセットの上清を、IL-6およびIL-1βについてルミネックスで試験した。n≧4。一元配置分散分析による統計解析。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;****、p<0.0001。
【0020】
【
図6】
図6は、Mo-DCの免疫抑制性TIP-DC表現型を示す。(A)12日目の3LL-R腫瘍の単一細胞懸濁液で、iNOSおよびTNF-αの細胞内染色を実施した。n=4。(B)48時間培養したTADCサブセットの上清を、TNF-αの存在についてルミネックスで試験した。n≧5。一元配置分散分析による解析。*、p<0.05;**,p<0.01。(C)12日目の3LL-R腫瘍の単一細胞懸濁液で、ミトコンドリアスーパーオキシドアニオンの染色を実施した。n=4。(D)48時間培養したTADCサブセットの上清を、CCL2、CCL4およびCXCL1の存在について、ルミネックスで試験した。n≧4。一元配置分散分析による解析。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;****、p<0.0001。(E)48時間培養したTADCサブセットの上清を、IL-10およびIL-12の存在についてルミネックスで試験した。グラフはIL-10/IL-12の割合を示す。n≧4。一元配置分散分析による解析。*、p<0.05;**、p<0.01。(F)選別したMo-DCを、OT-IT細胞と、3日間、DC/OT-Iの割合が1/2で共培養した。ヒストグラムは、T細胞増殖を示すCFSE希釈度を表す。比較した条件は、iNOS阻害薬(LNMMA)またはα-IFN-γの有無での、非刺激T細胞(No TADC)および、Mo-DC存在下のT細胞である。n=2。
【0021】
【
図7】
図7は、腫瘍関連cDCサブセットの、腫瘍流入領域リンパ節への遊走と、CD8
+およびCD4
+T細胞の差次的な活性化を示す。(A)12日目の3LL-R腫瘍の単一細胞懸濁液を、CCR7について染色し、ヒストグラムの重ね書きを示す。黒線=CCR7の発現;網掛けのヒストグラム=アイソタイプコントロール。n=3。(B)Ovaの発現を、11日目および22日目のLLC-Ova腫瘍を有するマウスの、LLC-Ova癌細胞、および腫瘍、および腫瘍流入領域リンパ節(腋窩または鼠径部)において、qRT-PCRを用いて評価した。発現を、S12ハウスキーピング遺伝子に基づいて正規化した。n=3。(C-D)腫瘍流入領域リンパ節から選別した示した量のDCサブセットを、10
5個の精製したCD8
+OT-IT細胞(C)またはCD4
+OT-IIT細胞(D)と、3日間共培養した。ヒストグラムは、T細胞増殖を示すCFSE希釈度を表す。黒線=TADCなしの非刺激T細胞;網掛けのヒストグラム=TADC存在下のT細胞。結果は、n=10~12個の腫瘍の1つのプールの、3つの独立した実験を代表するものである。(E)選別した腫瘍流入リンパ節cDC2サブセットと3日間共培養したOT-IIT細胞の細胞内染色を、Th誘導転写因子RORγtについて実施した。アイソタイプコントロールおよび転写因子の染色を示している。n=10個のプール。
【0022】
【
図8】
図8は、cDC2ワクチン投与が、LLC-腫瘍を有するマウスにおいてcDC1ワクチン投与よりも有益であり、CD4
+T細胞をTh17表現型に再度極性化させることを示す。(A)ワクチン投与プロトコールの略図。(B-C)LLC-OVATADCサブセットによるワクチン投与後のLLC-Ova腫瘍の成長曲線(B)および腫瘍重量(C)。(D-J)(A)で示したプロトコールに続く、LLC-OVATADCサブセットによるワクチン投与後の、LLC-Ova腫瘍における、CD8
+T細胞(D)、Ova特異的CD8
+T細胞(E)、CD4
+T細胞(F)、RORγt
+CD4
+T細胞(G)、FOXP3
+CD4
+T細胞(H)、Tbet
+CD4
+T細胞(I)、Gata3
+CD4
+T細胞(J)の割合。全ての実験について、結果はn=4~15個の腫瘍の、独立した2つの実験を代表するものである。一元配置分散分析による統計解析。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;****、p<0.0001。
【0023】
【
図9】
図9は、cDC2ワクチン投与がMDSC浸潤物を減少させ、TAMを腫瘍促進性(protumoral)のM2様からM1様の表現型に再プログラムすることを示す。(A-B)
図8Aで示したプロトコールに続く、LC-OVATADCサブセットによるワクチン投与後の、LLC-Ova腫瘍における、Mo-MDSC(A)およびG-MDSC(B)の割合。結果は、n=4~15個の腫瘍の、独立した2つの実験を代表するものである。一元配置分散分析による統計解析。*、p<0.05。(C)CD11b
+Ly6C
hiLy6G
-Mo-MDSCおよびCD11b
+Ly6C
intLy6G
+G-MDSCを、12日目の3LL-R腫瘍単一細胞懸濁液から選別し、OVA刺激されたOT-I脾細胞に異なる比率で42時間添加して、T細胞の増殖を
3H-チミジン取り込み(cpm)により測定した。結果は、n=6個の腫瘍の1つのプールの、独立した3つの実験を代表するものである。(D-E)
図8Aで示したプロトコールに続く、LC-OVATADCサブセットによるワクチン投与後の、LLC-Ova腫瘍における、CD11b
+Ly6G
+Ly6C
-TAMの割合(D)およびM2様MHC-II
lowTAM/M1様MHC-II
highTAMの割合(E)。結果は、n=4~12個の腫瘍の、独立した2つの実験を代表するものである。一元配置分散分析による統計解析。***、p<0.001。(F)CD11b
+Ly6G
-単一細胞についてゲーティングした、cDC2またはHBSSをワクチン接種したマウスのLLC-Ova腫瘍の代表的なプロット。(G)cDC2またはHBSSをワクチン接種したLLC-OVA腫瘍を有するマウスの、選別したMHC-II
lowおよびMHC-II
highTAMサブセットにおいて、示したM1およびM2関連遺伝子の発現を、qRT-PCRを用いて評価した。発現を、S12ハウスキーピング遺伝子に基づいて正規化した。n=6個の腫瘍の1つのプール。一元配置分散分析による統計解析。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;****、p<0.0001。
【0024】
【
図10】
図10はB16メラノーマ腫瘍を有するマウスにおいて、cDC1ワクチン投与がcDC2ワクチン投与よりもより有効であることを示す。(A-B)
図8Aで示したプロトコールに続く、LLC-OVATADCサブセットによるワクチン投与後の、B16-Ova腫瘍の成長曲線(A)およびB16-Ova腫瘍におけるCD8
+T細胞の割合(B)。n=4~6個の腫瘍。一元配置分散分析による統計解析。**、p<0.01;***、p<0.001;****、p<0.0001。
【0025】
【
図11】
図11は、FACS選別したcDC1およびcDC2サブセットの純度を示す。代表的なプロットおよびゲーティング戦略を、(i)12日目のLLC-OVA腫瘍のCD11c
+磁気選別後の腫瘍全体について(すなわち選別前)、およびワクチン投与実験に用いられた(ii)cDC1および(iii)cDC2集団のFACS純度について、示している。
【0026】
【
図12】
図12は、腫瘍転移におけるTADCサブセットの治療効果を評価するためのマウスモデルを示している。LLC-OVA細胞を、足蹠に(10
5個の細胞を)、または、皮下に(3x10
6個の細胞を)注射する。腫瘍は約800mm
2のサイズまで成長させ、その後、下肢切断(a)または皮下腫瘍除去(b)のいずれかによって、切除する。TADCサブセットを、切除した腫瘍から単離し、さらにFACSで濃縮して、同じ哺乳動物に注射する。腫瘍転移における治療効果は、肺の重量、および、転移性肺小結節の重量およびサイズを、顕微鏡法により測定することによって評価する。
【0027】
【
図13】
図13は、LLC-腫瘍を有するマウスにおいて、B16-OVA由来cDC2ワクチン投与は、B16-OVA由来cDC1ワクチン投与よりも有益であるが、B16-OVA腫瘍を有するマウスにおいて、B16-OVA由来cDC1およびcDC2ワクチン投与の両方が、保護を与えることを示す。(A)ワクチン投与プロトコールの略図。(B-C)B16-OVATADCサブセットによるワクチン投与後のLLC-OVA腫瘍の成長曲線(B)および腫瘍重量(C)。(D-E)B16-OVATADCサブセットによるワクチン投与後のB16-OVA腫瘍の成長曲線(D)および腫瘍重量(E)。n=5~7個の腫瘍。一元配置分散分析による統計解析。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;****、p<0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
本発明は、特定の実施形態に関して、およびいくつかの図面を参照して説明されるが、本発明はそれらに限定されず、請求項によってのみ限定される。特許請求の範囲内のいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。図面において、いくつかの要素の大きさは、説明のために誇張されており、縮尺通りに描かれていない場合がある。用語「含む」が本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、他の要素またはステップを排除するものではない。単数名詞を参照するときに不定冠詞または定冠詞、例えば「a」、「an」または「the」が使用される場合は、他に何か特に明記されていない限り、その名詞の複数形を含む。
【0029】
明細書および特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、同様の要素を区別するために使用され、必ずしも経時的または経年的な順序を説明するために使用されるのではない。そのように使用された用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載された本発明の実施形態は、本明細書に記載または例示された以外の順序で実施することができることを理解されたい。
【0030】
本発明に含まれる細胞表面マーカーは、ヒト細胞表面マーカーまたは機能的に等価な任意のオルソガスな細胞表面マーカーを指してよい。従って、細胞表面マーカーはまた、限定されるものではないが、例えばマウス細胞表面マーカーを指してよい。
【0031】
以下の用語または定義は、単に本発明の理解を助けるためにのみ提供される。本明細書において特に規定されていない限り、本明細書中で使用される全ての用語は、本発明の技術分野の当業者にとっての意味と同じ意味を有する。実施者は特に、当業界の定義および用語については、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Press, Plainsview, New York (1989); およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (Supplement 47), John Wiley & Sons, New York (1999)を参照されたい。本明細書で提供される定義は、当業者によって理解されるよりも狭い範囲を有すると解釈されるべきではない。
【0032】
「樹状細胞」または「DC」は、典型的にはMHCクラスII細胞表面抗原HLA-DR(ヒト白血球抗原DR)および共刺激分子を発現し、顆粒球、NK細胞、Bリンパ球およびTリンパ球に特異的なマーカーの発現がない(または低い発現を有する)APCである。DCは、インビトロおよびインビボで抗原特異的な一次Tリンパ球応答を開始させることができ、末梢血白血球、脾細胞、B細胞および単球と比較して強い混合白血球反応(MLR)を指示する。一般に、DCは食作用またはピノサイトーシスによって抗原を取り込み、分解し、その表面に抗原の断片を提示し、サイトカインを分泌する。
【0033】
「腫瘍関連樹状細胞」または「TADC」は、腫瘍微小環境に由来するDCである。
【0034】
本明細書で使用される「通常型DC前駆細胞」または「pre-cDC」は、骨髄に由来し、DC系統に関与する造血前駆細胞であり、ここで、pre-cDCは、単球および単球由来DCとは異なり、また、pre-cDCは、さらに通常型DCに分化する能力を有する、部分的に分化した細胞である。
【0035】
「通常型DC」または「cDC」は、pre-cDCに由来する、完全に分化したDCである。cDCは、少なくともCD16-CD11c+HLA-DR+BDCA2-およびCD14-の細胞表面表現型により特徴付けられる。
【0036】
「単球由来樹状細胞」または「Mo-DC」は、末梢血単球に由来し、少なくともHLD-DR、CD11c、BDCA1、CD11bおよびCD14の発現により特徴付けられる細胞である。
【0037】
本明細書で使用される「本質的に単球由来樹状細胞(Mo-DC)を含まない」TADCサブセットは、不純物であるMo-DCを不可避なレベル含み得るが、それ以上は含まない、本質的に純粋なTADCサブセットである。このことは、TADCサブセットが本質的に純粋であり、1%未満のMo-DCを含むことを意味する。例えば、「本質的にMo-DCを含まない」は、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%以下のMo-DCを意味することができる。これは、0%のMo-DCを意味することもでき、検出可能量のMo-DCを含まないことを指す。
【0038】
本明細書で使用される「単離された」という用語は、天然の環境から取り出されたことを意味する。「単離された」は、絶対的な単離を必要としない;むしろ、相対的な用語として意図されている。従って、例えば、単離された細胞サブセットは、組織内の天然の環境における細胞サブセットよりも純粋である細胞サブセットである。
【0039】
本明細書で使用される「濃縮された」という用語は、細胞集団内での、ある細胞タイプまたは細胞サブセットの純度を増加させることを意味する。「濃縮された」は、絶対的な濃縮を必要としない。むしろ、相対的な用語として意図されている。従って、例えば、濃縮された細胞サブセットは、濃縮前の細胞サブセットの純度よりも純粋である細胞サブセットである。
【0040】
本明細書で使用される「BDCA3+」または「BDCA3陽性」という用語は、特徴的な細胞表面表現型を指し、細胞がBDCA3に特異的な抗体と免疫反応することを意味する。すなわち、蛍光標識した抗BDCA3抗体で染色した細胞のフローサイトメトリー解析の結果が、同じ手順を用いて、アイソタイプコントロール抗体で染色した同じ細胞と比較して、蛍光強度のシフトを示す。当該細胞は、細胞表面にBDCA3を発現していると言われる。同様に、「BDCA-」または「BDCA3陰性」という用語は、細胞がBDCA3に特異的な抗体と免疫反応しないことを意味する。すなわち、蛍光標識した抗BDCA3抗体で染色した細胞のフローサイトメトリー解析の結果が、同じ手順を用いて、アイソタイプコントロール抗体で染色した同じ細胞と比較して、検出可能な蛍光強度のシフトを示さない。当該細胞は、細胞表面にBDCA3を発現していないと言われる。BDCA1、BDCA2、CD11b、CD11c、CD14、CD16およびHLA-DRの表面発現についても同じことが当てはまる。「BDCA1+」細胞は、細胞表面にBDCA1を発現していると言われるが、「BDCA1-」細胞は、BDCA1細胞表面発現について陰性であると言われる。「BDCA2-」細胞は、BDCA2細胞表面発現について陰性であると言われる。「CD11b+」細胞は、細胞表面にCD11bを発現していると言われるが、「CD11b-」細胞は、CD11b細胞表面発現について陰性であると言われる。「CD11c+」細胞は、細胞表面にCD11cを発現していると言われる。「CD14-」細胞は、CD14細胞表面発現について陰性であると言われる。「CD16-」細胞は、CD16細胞表面発現について陰性であると言われ、「HLA-DR+」細胞は、細胞表面にHLA-DRを発現していると言われる。本発明において、細胞表面表現型は、表面細胞マーカーの有無を特徴としている。上述の表面細胞マーカーは、ヒトのマーカーを表している。とは言うものの、本発明には、上述のヒトのマーカーと機能的に等価なオルソロガスなマーカーもまた含まれる。
【0041】
本明細書で使用される「哺乳動物」は、哺乳類のクラスの任意のメンバーを指し、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えばチンパンジーおよび他の類人猿およびサル種;ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラマおよびウマなどの家畜;犬や猫などの飼育哺乳動物;マウス、ラット、およびモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物などが含まれるが、これらに限定されない。本用語は、特定の年齢または性別を示すものではない。従って、成体または新生児の対象、並びに胎児が、雄か雌かにかかわらず、本用語の範囲内に含まれることが意図されている。用語「患者」、「個体」、および「対象」は、本明細書において互換的に用いられ、ヒトを含む哺乳動物を包含している。
【0042】
本明細書で使用される「腫瘍」または「腫瘍組織」は、悪性か良性かにかからわらず、腫瘍性細胞成長(growth)および増殖(prolifilation)を有するすべての細胞、および腫瘍関連細胞を指す。腫瘍は、腫瘍環境に存在する異なる細胞タイプを含む、腫瘍組織全体を指す。腫瘍組織には、癌細胞が含まれるが、非形質転換宿主細胞、または、腫瘍関連間質細胞などの腫瘍関連細胞もまた含まれる。腫瘍関連細胞の例には、TADCおよび腫瘍関連マクロファージ(TAM)が含まれる。腫瘍は、限定されるものではないが固形腫瘍を含む、任意のタイプの癌であってよい。固形腫瘍は癌性腫瘍であってよく、限定されるものではないが、哺乳動物の前立腺、胃、肝臓、脾臓、膵臓、結腸、腎臓、胆嚢、卵巣、精巣、陰茎、直腸、肺、気管、乳房、心臓、脳、甲状腺、副甲状腺、下垂体、胸腺、筋肉、頭部,頸部、皮膚、網膜、ぶどう膜、結膜、唾液腺、副腎、咽頭、食道、汗腺および皮脂腺に生じる癌性腫瘍を含む。
【0043】
本明細書で使用される「切除した腫瘍」は、既に外科的に除去された腫瘍を指す。切除は、目に見える全ての癌組織の外科的除去を指してもよい。切除した腫瘍は、従って、手術後に、すなわち、腫瘍が手術で除去された後に得られる。腫瘍切除には、原発性腫瘍および二次性腫瘍の切除が含まれる。切除はまた、限定されるものではないが、生検などの方法による、腫瘍の一部の除去を指してもよい。部分的に切除した腫瘍は、従って、手術後に、すなわち、腫瘍の一部が生検で除去された後に得られる。
【0044】
本明細書で使用される「切除した腫瘍流入領域リンパ節」は、既に外科的に除去された腫瘍流入領域リンパ節を指す。外科的除去は、1つ以上の群のリンパ節のリンパ節切開(lymph node dissection)を意味するリンパ節郭清術を指すことができる。外科的除去はまた、生検を指すことができる。
【0045】
本明細書で使用される「転移」は、身体のある器官または部分に由来する癌細胞が、身体の別の部分に再配置し、増殖を続けるプロセスを指す。転移した細胞は、続いて、さらに転移する可能性のある腫瘍を形成し得る。したがって、転移は、元々発生していた身体の部分から身体の他の部分への癌の広がりを指す。
【0046】
本明細書で使用される「処置」および「処置すること」は、たとえ処置が部分的であっても、あるいは、最終的には失敗したとしても、目的が、処置目的の疾患(例えば、癌)または該疾患の症状を、抑制または緩徐化(軽減)することであるか、症状を改善することである、治療的処置(therapeutic treatment)、および予防的(prophylactic)または予防の(preventative)手段の両方を指す。処置を必要とする者には、既に疾患と診断されたもの、並びに、疾患に罹りやすい傾向がある者もしくは疾患に罹りやすい素因がある者、または疾患が予防されるべき者が含まれる。例えば、腫瘍(例えば、癌)処置において、治療薬は、腫瘍細胞の病態を直接減少させることができ、あるいは、他の治療薬による、または対象自身の免疫系による処置に、腫瘍細胞をより感受性にすることができる。
【0047】
本発明の第1の局面は、本質的にMo-DCを含まない、pre-cDC起源の、単離されたTADCサブセットであって、哺乳動物の切除した腫瘍、または切除した腫瘍流入領域リンパ節から得られる、哺乳動物の腫瘍転移の処置における使用のための、単離されたTADCサブセットに関する。従って、単離されたTADCサブセットの具体的な実施形態には、(a)pre-cDCからのTADCサブセットの誘導、(b)Mo-DCの実質的欠如および(c)腫瘍または腫瘍流入領域リンパ節の切除後の、腫瘍または腫瘍流入領域リンパ節からのTADCサブセットの回収が含まれる。本明細書で使用されるpre-cDC起源の単離されたTADCサブセットは、1つ以上のpre-cDC起源のTADCサブセットを意味し得る。好ましくは、該TADCサブセットは1つのTADCサブセットを含む。あるいは、該TADCサブセットは、Pre-cDC起源のいくつかのTADCサブセット、すなわち、TADCサブセットの混合物を含む。目的の腫瘍由来DCサブセットは、切除した腫瘍または切除した腫瘍流入領域リンパ節由来であってよいが、該組織からのTADCサブセットの単離は、腫瘍または腫瘍流入領域リンパ節の外科的切除後に行われる。好ましい実施形態において、目的のTADCには、哺乳動物起源の細胞が含まれ、より好ましくは、ヒト起源の細胞が含まれる。
【0048】
TADCサブセットは、例えば、標準的な単離技術によって単離され得る。いくつかの実施形態において、TADCサブセットは、腫瘍単一細胞懸濁液を調製することにより、切除した腫瘍、または、切除した腫瘍流入領域リンパ節から単離され得る。具体的な実施形態において、これらの腫瘍単一細胞懸濁液は、切除した腫瘍または切除した腫瘍流入領域リンパ節を小片に切断し、該小片をコラゲナーゼおよびDNaseを含む消化培地でインキュベートし、次いで密度勾配遠心分離によってデブリおよび死細胞を除去することによって得ることができる。TADCおよび/またはTADCサブセットを単離するための技術の非限定的例は、Laoui et al., 2014において見出すことができ、本文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
TADCサブセット、例えば、腫瘍単一細胞懸濁液由来のTADCサブセットは、例えば、MACSおよび/またはFACSにより濃縮されてよい。いくつかの実施形態において、TADCサブセットは、腫瘍由来DCサブセットが、細胞調製物中の総細胞含有量の、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%を示すように、濃縮される。本発明によれば、単離されたTADCサブセットは、本質的にMo-DCを含まない。上述のTADCサブセットは、いくつかのTADCサブセット、すなわち、TADCサブセットの混合物を含有し得る。いくつかの実施形態において、TADCサブセットの混合物は、腫瘍由来DCサブセットの混合物が、細胞調製物中の総細胞含有量の、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%を示すように、濃縮される。本発明によれば、単離されたTADCサブセットの混合物は、本質的にMo-DCを含まない。いくつかの実施形態において、異なるTADCサブセットは、別々に濃縮され、濃縮後に混合されてよい。代替の実施形態において、異なるTADCサブセットは、同一の濃縮手順で濃縮されてよい。
【0050】
特定の実施形態によれば、本明細書に上述したTADCサブセットには、1%以下のMo-DCが含まれ、すなわち、単離されたサブセットは、最大で1%のMo-DCを含有する。コンタミネーションのレベルは、通常、フローサイトメトリー解析により評価されるであろう。
【0051】
特定の実施形態によれば、上述の単離されたTADCサブセットは、MHCクラスII細胞表面抗原HLA-DR)および表面抗原CD11cが陽性であり、表面抗原CD16、BCDA2およびCD14が陰性である表現型を特徴とする。さらなる特定の実施形態において、該TADCサブセットは、表面抗原BDCA3(血液樹状細胞抗原3)が陽性であり、表面抗原BDCA1(血液樹状細胞抗原1)およびCD11bが陰性である表現型をさらに特徴とする。細胞表面表現型CD16-CD11c+HLA-DR+BDCA2-CD14-BDCA1-BDCA3+CD11b-を有する当該TADCサブセットは、本明細書において、さらに「cDC1」サブセットと呼ばれる。
【0052】
特定の実施形態によれば、上述の単離されたTADCサブセットは、MHCクラスII細胞表面抗原HLA-DRおよび表面抗原CD11cが陽性であり、表面抗原CD16、BCDA2およびCD14が陰性である表現型を特徴とし、表面抗原BDCA3が陰性であり、表面抗原BDCA1およびCD11bが陽性である表現型を特徴とする。細胞表面表現型CD16-CD11c+HLA-DR+BDCA2-CD14-BDCA1+BDCA3-CD11b+を有する当該TADCサブセットは、本明細書において、さらに「cDC2」サブセットと呼ばれる。BDCA3およびインターフェロン調節因子8(IRF8)は、cDC2サブセットに対してcDC1サブセットを規定するのに、同等に良好なマーカーであり、互換的に使用することができる。
【0053】
具体的な実施形態によれば、当該「cDC1」サブセットは、癌を有する哺乳動物において、転移を処置するために特に有用である。さらに特定の実施形態において、cDC1サブセットは、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に感受性である腫瘍を有する哺乳動物において、転移を処置するために用いられ得る。これらのCTL感受性腫瘍の非限定的な例には、メラノーマ、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸癌および尿管-消化器腫瘍(uro-digestive tumor)などのマイクロサテライト不安定性腫瘍が含まれる。
【0054】
具体的な実施形態によれば、当該「cDC2」サブセットは、癌を有する哺乳動物において、転移を処置するために特に有用である。さらなる特定の実施形態において、cDC2サブセットは、強い免疫抑制性の骨髄球系のコンパートメント(myeloid compartment)を有する腫瘍を有する哺乳動物において、転移を処置するために用いられ得る。強い免疫抑制性の骨髄球系のコンパートメントを有する腫瘍の非限定的な例は、乳癌腫である。
【0055】
具体的な一実施形態によれば、上述のTADCサブセットは、Mo-Dcをほとんど含まないTADC亜集団を獲得するために、(a)哺乳動物の既に切除した腫瘍または腫瘍流入領域リンパ節からTADCを調製すること、および(b)当該TADC調製物からTADCサブセットを精製することを含む手順により、得ることができる。特定の実施形態によれば、当該手順は浮遊密度遠心分離、免疫磁気選別および/または除去(depletion)並びに蛍光活性化セルソーティング(FACS)を用いることができる。これらの方法は、非限定的であり、組み合わせることができる。当業者に知られている様々な単離方法のいずれかを使用して、TADCサブセットの濃縮を達成することができ、その例は上記に提供されていることに留意されたい。
【0056】
本発明は、本明細書に記載されるTADCサブセット(「有効成分」とも呼ぶ)、および、医薬的に許容される担体または賦形剤を含む、腫瘍転移の処置における使用のための医薬組成物に関する。これらの組成物は、それを必要とする対象に投与することによって、所望の薬理学的効果を達成するのに、利用することができる。医薬的に許容される担体は、好ましくは、担体に起因する任意の副作用が有効成分の有益な効果を損なわないように、有効成分の有効量と一致する濃度で、対象にとって比較的毒性がなく無害である担体である。有効成分の医薬的に有効な量は、好ましくは、処置される特定の状態に結果をもたらすか、影響を及ぼす量である。通常、当該医薬組成物は、1つのTADCサブセットを含み得る。当該医薬組成物は、いくつかのTADCサブセット/TADCサブセットの混合物を含んでよい。
【0057】
本発明はまた、哺乳動物において腫瘍転移を処置する方法であって、同じ哺乳動物から得られた単離されたTADCサブセットであって、(a)pre-cDCに由来すること、(b)Mo-DCを含まないこと、および(c)既に切除した腫瘍または腫瘍流入領域リンパ節から単離されたことをさらに特徴とする、単離されたTADCサブセットの投与を含む方法を提供する。
【0058】
単離されたTADCサブセットまたは本発明のTADCサブセットを含む医薬組成物は、限定されるものではないが、メラノーマなどのがんの転移を処置するために使用することができる。特定の実施形態において、単離されたTADCサブセット「cDC1」またはTADCサブセット「cDC1」を含む医薬組成物は、限定されるものではないが、メラノーマ、NSCLC、結腸癌およびマイクロサテライト不安定腫瘍などの、CTL感受性腫瘍を処置するために使用することができる。
【0059】
他の実施形態において、単離されたTADCサブセット「cDC2」またはTADCサブセットを含む医薬組成物は、限定されるものではないが、乳癌腫などの、大量の免疫抑制性の骨髄系細胞の存在を特徴とする腫瘍を処置するために使用することができる。
【0060】
様々な実施形態において、単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物は、抗原に対する免疫応答(例えば、T細胞応答)を誘導するのに十分な量で投与される。本発明の他の実施形態は、上述の単離されたTADCサブセットまたは上述のTADCサブセットを含む医薬組成物を用いて、癌(例えば、メラノーマ、乳癌)を処置する方法を提供する。ある実施形態において、癌を処置する方法は、本明細書に記載される単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物を、哺乳動物に投与することを含む。ある実施形態において、癌を処置する方法は、本明細書に記載される単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物を、ヒト患者に投与することを含む。他の実施形態は、メラノーマ、NSCLC、結腸癌、マイクロサテライト不安定性腫瘍、または乳癌などの癌の転移を処置する方法を提供する。ある実施形態において、単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物は、自己DCを含み得る。本明細書に開示されるワクチン投与方法における使用に好適なDCは、当該細胞が見出される腫瘍組織から単離するか、または、得ることができる。
【0061】
単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物は、例えば、限定されるものではないが化学療法、免疫療法および/または放射線を含む、他の治療的処置と組み合わせて投与することができる。単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物は、皮内、動脈内、皮下、筋肉内、静脈内、リンパ内または結節内(intranodal)経路による注射によって投与することができる。他の実施形態において、本発明の単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物は、腫瘍に直接的に、もしくは、その近傍に投与されるか、または、切除した腫瘍の部位に直接的に、もしくは、その近傍に投与される。単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物は、有益な結果を与えるために、哺乳動物に1回以上投与することができる。単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物は、手術後に、すなわち、腫瘍の切除後に、投与することができる。当業者であれば、単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物を投与する適切なタイミングを決定することができるであろう。単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物の最初の、および/またはその後の投与のタイミングは、限定されるものではないが哺乳動物の健康、安定性(stability)、年齢、および体重を含む様々な要因に依存し得る。単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物は、例えば、限定されるものではないが週に1回、2週間に1回、3週間に1回、1ヵ月に1回などの、任意の適切な時間間隔で投与することができる。ある実施形態において、単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物は、無期限に投与することができる。ある実施形態において、単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物は、2週間の間隔で3回投与することができる。単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物は、調製して凍結し、後で使用することができ、あるいは、単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物は、調製して直ちに使用することができる。単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物の適切な投与量は、限定されるものではないが哺乳動物の健康、安定性、年齢、および体重を含む様々な要因に依存し得る。ある実施形態において、単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物は、約104個から約109個のTADCを含む。別の実施形態において、単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物は、約106個から約107個のTADCを含む。別の実施形態において、単離されたTADCサブセットまたはTADCサブセットを含む医薬組成物は、約107個のTADCを含む。
【0062】
さらなる局面によれば、pre-cDC起源であって、Mo-DCの存在に関して本質的に純粋なTADCサブセットを含み、当該TADCサブセットが切除した腫瘍または腫瘍流入領域リンパ節から手術後に得られたものである医薬組成物が提供される。哺乳動物における腫瘍転移の処置のために、該医薬組成物が提供されることが、本明細書において想定される。当該哺乳動物は、TADCサブセットが単離された哺乳動物と同一である。
【0063】
別の局面において、哺乳動物において腫瘍転移を処置する方法であって、TADCサブセットまたは当該TADCサブセットを含む医薬組成物を、当該哺乳動物に投与することを含む方法が提供され、ここで(a)TADCサブセットはpre-cDCに由来し、(b)TADCサブセットはMo-DCを含有せず、(c)TADCサブセットは切除した腫瘍または切除した腫瘍流入領域リンパ節から単離される。
【0064】
本発明による細胞および方法について、特定の実施形態、具体的な構成、ならびに材料および/または分子が本明細書において議論されているが、形態および詳細における種々の変更または改変が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく行えることは理解されるべきである。以下の実施例は、特定の実施形態をよりよく例示するために提供されるものであり、本出願を限定するものと見なされるべきではない。本出願は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0065】
実施例の材料および方法
【0066】
マウス、細胞株、および腫瘍モデル
雌Balb/c、CD45.2およびCD45.1 C57BL/6マウスは、Janvierから得た。ユビキチン-GFマウスは、Jacksonから購入した。Csf2rb-/-、Flt3l-/-、Ccr2-/-およびMMTV-PyMTマウスは、それぞれ、Melanie Greter (University of Zurich, Germany)、Bart Lambrecht (UGent, Belgium)、Frank Tacke (Aachen University, Germany)および Massimiliano Mazzone (KULeuven, Belgium)によって提供された。全ての手順は、Belgian Council for Laboratory Animal Scienceのガイドラインに従った。
【0067】
LLCは、ATCC細胞生物学コレクションから購入した。3LL-Rおよび3LL-S細胞は、以前に記載されたように(Remels and De Baetselier, 1987)、C57BL/6ルイス肺癌細胞から、研究所内で(in house)生成した。LLC-OVA、MC38、B16-OVAおよびT241細胞は、それぞれ、Dmitry Gabrilovich (The Wistar Institute, Philadelphia, USA)、Massimiliano Mazzone (VIB-KULeuven, Leuven, Belgium)、Karine Breckpot (Vrije Universiteit Brussel, Brussels, Belgium)およびLena Claesson-Welsh (University of Uppsala, Uppsala, Sweden)から親切なことに贈与された。
【0068】
LLC-OVA、3LL-Rおよび3LL-S細胞株を、10%(v/v)の熱失活したウシ胎児血清(FCS;Gibco)、300μg/mlのL-グルタミン(Gibco)、100単位/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン(Gibco)を添加したRoswell Park Memorial Institute-1640培地で維持し、マイコプラズマの存在を毎月試験した。MC38、B16-OVAおよびT241培養物については、RPMIをダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Sigma)に置き換えた。
【0069】
LLC、LLC-OVA、3LL-R、3LL-S肺癌腫細胞、MC38結腸癌腫細胞、B16-OVAメラノーマ細胞およびT241線維肉腫細胞(ficrosarcoma cell)を回収し、200μlのPBS中の3×106個の単一細胞懸濁液を、同系のC57Bl/6マウスの右側腹部に皮下注射した。雌のMMTV-PyMTマウスは、乳房腫瘍を自然発生的に発症する。
【0070】
エクスビボのTADCおよびT細胞培養物については、当該培地に、1mMの非必須アミノ酸(Invitrogen)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)および0.02mMの2-メルカプトエタノール(Invitrogen)を添加した。
【0071】
3LL-Rの胸腔内注射については、5×105個の3LL-R癌腫細胞を回収して、50μlのPBS中の25μgのマトリゲルで再懸濁した。細胞懸濁液を注射まで氷上で保管した。マウスを麻酔し、左側臥位に置いた。30ゲージの皮下針を備えた1mlのツベルクリン注射器を使用して、経皮的に接種細胞を胸郭右側面の、側方背側腋窩であって、肩甲骨の下縁の直下で、下位肋骨のおよそ1.5cm上部に注射した。針を、胸郭内に6mmを急速に進め、注射後すぐに針を外した。腫瘍注射後、マウスを右側臥位に回転させた。7日目に、マウスを屠殺して、肺組織および肺腫瘍を取り除いた。
【0072】
経肛門直腸癌注射(trans-anal rectal cancer injection)については、マウスを、ネンブタールの10倍希釈液で麻酔した。肛門外口を、先端の丸い鉗子で、穏やかに広げた。糞便が存在する場合は、軟性カテーテルを用いて、結腸を生理食塩水で洗い流した。MC38細胞を、29ゲージの注射器で、50μlPBS当たり2.5×105個の濃度で、遠位後部直腸(distal posterior rectum)の粘膜下に注射した。注射後、注射器を数秒間定位置に保持し、逆流を防いだ。4週間後に、マウスを屠殺して、腫瘍を注意深く取り除いた。
【0073】
腫瘍体積を、ノギス測定により決定して、公式:V=πx[d2xD]/6を用いて計算した。ここで、dは腫瘍の短径(minor tumor axis)であり、Dは腫瘍の長径(major tumor axis)である。
【0074】
肺癌および結腸直腸癌患者
pT2aN1M0(ステージIIA)有棘細胞癌およびcT1bN0M0(ステージIA)癌腫を有する2名の男性(年齢は68歳および67歳)、並びに、pT2aN0M0(ステージIB)腺癌およびpT2aN1M0(ステージIIA)有棘細胞癌を有する2名の女性(年齢は67歳および59歳)を含む、術前化学療法を受けていない4名の非小細胞肺癌(NSCLC)患者を登録した。登録した4名の結腸直腸癌患者は、化学療法を受けておらず、pT3N0腺癌を有する3名の男性(年齢は71歳および62歳)、ステージIのT2M0N0腺癌を有する1名の男性(年齢は79歳)、およびステージIVの腺癌を有する1名の女性(年齢は49歳)が含まれた。全てのプロトコールは、ガストハイスベルグ大学病院(ルーバン、ベルギー)の倫理委員会によって承認され、全ての対象は、研究への参加に先立ち、書面によるインフォームド・コンセントを提出した。
【0075】
腫瘍、リンパ節、骨髄および脾臓の調整、フローサイトメトリーおよび細胞選別
腫瘍を切除し、小片に切り、10U/mLのコラゲナーゼI、400U/mLのコラゲナーゼIV、および30U/mLのDNaseI(Worthington)により、37℃で30分間処理し、潰して濾過した。赤血球を、赤血球溶解バッファーを用いて除去し、密度勾配(Axis-Shield)を用いて、デブリおよび死細胞を除去した。
【0076】
腫瘍流入領域リンパ節(LN)を切断し、10U/mLのコラゲナーゼI、400U/mLのコラゲナーゼIV、および30U/mLのDNaseI(Worthington)により、37℃で45分間分離させ、濾過した。
【0077】
脾臓を200U/mLのコラゲナーゼIII(Worthington)で洗い流し、37℃で30分間放置した。その後脾臓を濾過して、赤血球を、赤血球溶解バッファーを用いて除去した。
【0078】
腫瘍、脾臓またはLNからDC亜集団を精製するために、CD11c+細胞をMACSで濃縮し(抗CD11cマイクロビーズ、Miltenyi)、BD FACSAriaII(BD Biosciences)を用いて選別した。
【0079】
骨髄(BM)白血球を、脛骨および大腿骨を洗浄することにより単離した。得られた細胞懸濁液を濾過し、赤血球を、赤血球溶解バッファーを用いて除去した。BM単球を精製するために、CD11b+細胞を、選別に先立ちMACSで濃縮した(抗CD11bマイクロビーズ、Miltenyi)。
【0080】
細胞表面染色のための市販の抗体を表1に列挙する。特異的結合を防ぐために、細胞をラット抗マウスCD16/CD32(クローン2.4G2、BD Biosciences)とプレインキュベートした。
【0081】
正規化されたΔ蛍光強度中央値(delta-Median Fluorescence Intensity)(ΔMFI)は、[(MFI染色)-(MFIアイソタイプ染色)]/(MFI染色)として計算した。FACSデータは、BD FACSCanto IIまたはLSRII(共に、BD Biosciences社)を用いて取得し、FlowJo(Tree Star,Inc.)を用いて解析した。TADCを精製するために、9~15個のプールした腫瘍から、BD FACSAria(商標) II(BD Biosciences)を用いて細胞を選別した。
【0082】
サイトカインおよびケモカイン産生の測定
サイトカインおよびケモカインの濃度を、Bio-Plex(Bio-Rad)によって、供給元のプロトコールに従い測定した。
【0083】
インビボおよびインビトロ食作用、DQ-OVA処理、混合白血球反応アッセイ、並びに、OT-IおよびOT-IIのT細胞活性化
インビトロでのラテックスの取り込みのために、新たに単離された腫瘍の単一細胞懸濁液を、1:5000に希釈したラテックス微粒子(Polysciences)の存在下で、4℃または37℃で40分間、96穴プレートで培養した。TADCによるラテックスの取り込みを、フローサイトメトリーにより評価した。インビボでのTADCによるラテックスの取り込みを測定するために、腫瘍を有するマウスに、PBS中に1:25に希釈した黄緑色のラテックス微粒子(Polysciences)250μlを、静脈内注射した。1~2時間後に、腫瘍単一細胞懸濁液を作製し、TADC亜集団によるラテックス取り込みを、フローサイトメトリーで評価した。
【0084】
TADC抗原処理を評価するために、10μg/mlのDQ-OVA(Molecular Probes)の存在下で、0℃または37℃で15分間インキュベートし、抗原取り込みを可能にした。完全に洗浄した後、細胞は0℃または37℃で、異なる時間間隔で、DQ-OVAを細胞内でさらに処理することができた。それぞれの時間間隔の後、細胞を表面標識し、各サブセットにおけるDQ-OVAの蛍光をフローサイトメトリーで測定した。
【0085】
OT-IおよびOT-II増殖アッセイのために、MACS選別したCD11c-CD8+OT-1およびCD11c-CD4+OT-2T細胞を、0.2μMのCFSE(Molecular Probes、Carlsbad、CA、USA)で、製造者の指示に従って染色した。精製したTADCを、105個のOT-IまたはOT-IIT細胞に添加し、ポジティブコントロールとして、1μg/mlの抗CD3および2μg/mlのCD28で刺激した。
【0086】
誘導型NOS(iNOS)を抑制するために、共培養物に、5μMのL-NMMA(NG-モノメチル-L-アルギニン、Alexis Biochemicals)を添加した。72時間のコインキュベーションの後、T細胞の増殖を、フローサイトメトリーを用いて、CFSE希釈により測定した。
【0087】
pre-cDCおよび単球の養子移入
骨髄Ly6Chi単球およびpre-cDCを、CellTrace(life technologies)で標識し、CD45.2マウスから選別した。106個のLy6Chi単球または4×105個のpre-cDCを、3LL-R腫瘍を有するCD45.1マウスに、静脈内注射した。72時間後に、CD45.2+ CellTrace+の子孫の運命を決定した。
【0088】
TADCワクチン投与実験
ワクチン投与実験のために、ナイーブC57Bl/6マウスに、LLC-OVAまたはB16-OVAの皮下接種の6週間前および3週間前に、特定のサブセットの104個のTADCを皮下注射した。TADCを、LLC-OVA腫瘍を有するマウスまたはB16-OVA腫瘍を有するマウスの10~12匹のプールから選別した。100μlのCFAに溶解した100μgのOVAタンパク質を皮下にワクチン接種したマウスを、ポジティブコントロールとして用いた。
【0089】
RNA抽出、cDNA調製、および定量的リアルタイムPCR
これらの実験を、以前に記載された通りに実施した(Movahedi et al., 2010)。RNAを、TRIzol(Invitrogen)を用いて抽出し、オリゴ(dT)およびSuperScript II RT(Invitrogen)で逆転写した。定量的リアルタイムPCRは、iQ SYBR Green Supermix(Bio-Rad)を用いてiCyclerで行った。プライマー配列は、補足の表2に列挙している。PCRサイクルは、94℃1分、55℃45秒、72℃1分からなる。遺伝子発現は、ハウスキーピング遺伝子としてリボソームタンパク質S12(Mrps12)を用いて正規化した。プライマーは表2に列挙している。
【0090】
統計
有意性は、スチューデントt検定またはANOVAと、その後のGraphPad Prism 6.0ソフトウェアを用いた事後検定(post test)によって決定した。p値<0.05を、統計的に有意であるとみなした。全てのグラフは、平均±SEMを示す。
【0091】
実施例1:異なる腫瘍関連樹状細胞亜集団は、様々な前駆体に由来する
固形腫瘍における異なる腫瘍関連DC(TADC)集団の相対的存在量を説明するために、我々は最初に骨髄系細胞が強く浸潤することが知られている3LL-Rルイス肺癌細胞モデル(Laoui et al.,2014)を採用した。これらの腫瘍は、CD3
negCD19
negLy6G
negCD11c
hiMHC-II
hiTADCのかなりの大きさの集団を含有する(
図1A)。以前の研究では、CD24、CD11b、Ly6CおよびCD64の差次的発現変動に基づき、異なるDC集団が特徴付けられた(Langlet et al.,2012)。当該アプローチを用いて、3つの別々のTADCサブセットが明確に識別できた(
図1A):y6C
loCD64
loCD24
+CD11b
lo通常型TADC(cDC1、ゲート1)、Ly6C
loCD64
loCD24
int-loCD11b
+通常型TADC(cDC2、ゲート2)およびLy6C
hiCD64
hiCD24
intCD11b
+単球由来TADC(Mo-DC、ゲート3)である。当該状況は、いくつかの非癌性組織で報告されている状況(Guilliams et al., 2010)と同様である。
【0092】
さらに、3LL-R腫瘍を有するマウスにおいて、pre-cDCおよび単球の養子移入により、TADCサブセットの起源を評価した。3LL-R腫瘍を有するCD45.1
+レシピエントマウスに、選別したCD45.2
+B220
-CD11c
+Sirpα
intCellTrace
+骨髄pre-cDC前駆細胞(Scott et al., 2015)を養子移入した場合、Ly6C
loCD64
loCD24
+CD11b
loおよびLy6C
loCD64
loCD24
int-loCD11b
+細胞のみを72時間後に腫瘍から回収することができた(
図1B)。重要なことに、移入されたpre-cDC前駆細胞は、当該期間中に、CD64
hiCD11b
+に分化しなかった。対照的に、移入されたCD45.2
+CD11b
+Ly6G
-Ly6C
+MHC-II
-eFluor450
+骨髄単球は、TADCゲート内で、CD64
hiCD11b
+細胞として、全て回収された。ほとんどの移入された単球は、3LL-R腫瘍において単球由来細胞の大部分を占めるMHC-II
lowおよびMHC-II
highTAMを生じたので、比較的少量のCD45.2
+Mo-DCが腫瘍から回収されたことに注意されたい(データ不掲載)。全体として、これらのデータは、Ly6C
loCD64
loCD24
+CD11b
lo、Ly6C
loCD64
loCD24
int-loCD11b
+およびCD64
hiCD11b
+細胞が、それぞれcDC1、cDC2およびMo-DCを表すことを示す。
【0093】
養子移入実験の裏付けとして、BMからの単球の放出が著しく減少しているCCR2欠損マウス(Serbina et al., 2008)で増殖した3LL-R腫瘍は、MoDCサブセットのほとんど完全な欠如を示した一方、cDC1およびcDC2は影響を受けなかった(
図1C)。それらのcDC個体発生と一致して、Flt3L-KOマウスおよびGM-CSFR-KOマウスの両方において、腫瘍関連cDC1およびcDC2の量は著しく減少し、これらの増殖因子の両方に依存することが示された(
図1C)。両方のKO株において腫瘍でcDC2が残存していることは、それらの生成および/または生存が腫瘍微小環境における(他の)造血増殖因子の同時作用に依存し得ることを示唆している(Kingston et al., 2009)。重要なことに、Mo-DCもまた、Flt3Lの欠損およびGM-CSFへの応答不可によって大きく影響された。このMo-DCの低下が、Mo-DCの分化/維持に対するFlt3Lおよび/またはGM-CSFの直接的な影響を反映しているのかどうか、またはこれらのKO腫瘍におけるcDCサブセットの損失がMo-DCの発生に影響を及ぼすかどうかは、現時点では明らかではない。
【0094】
予定運命地図の作成実験に続いて、様々なDC集団と関連することが報告されているマーカーについて、さらにTADCサブセットを特徴付けた。この点において、cDC1およびcDC2の発生におけるIRF8およびIRF4の必要性が、それぞれ確立されている(Tamura et al., 2005)。これらの転写因子の細胞内染色により、cDC2におけるIRF4の、およびcDC1におけるIRF8の発現がより高いことが確認された(
図1D)。興味深いことに、Mo-DCは、比較的高レベルのIRF4と、低レベルのIRF8を含有しているようであった。それらが単球起源であることと一致して、Mo-DCは、既に単球由来DCと関連づけられている(Plantinga et al., 2013)、高レベルのFcεRを発現した(
図1D)。さらに、Mo-DC集団はまた、マクロファージ関連マーカーであるMerTKを発現する唯一のサブセットでもあった(Gautier et al., 2012; Langlet et al., 2012)。CD103および交差提示関連マーカーXCR1は両方とも、cDC1サブセットに唯一発現するように見えるが、一方で、SIRPα発現は、Mo-DCおよびcDC2サブセットに限定されていた(
図1D)。最後に、DEC205は、Mo-DC>cDC1>cDC2にて、すべてのTADCサブセットに発現される(
図1D)。
【0095】
実施例2:異なる腫瘍関連樹状細胞亜集団が、複数の腫瘍タイプに存在する。
次に、種々の組織学的起源および異なる遺伝的バックグラウンドのいくつかの移植可能なマウス腫瘍モデル、並びに、自然発症のMMTV-PyMT乳癌腫モデルにおけるTADCサブセットの存在を評価した。皮下に増殖するLLC肺癌腫瘍、その急速進行性3LL-Rおよび緩徐進行性3LL-Sサブクローン(Remels and De Baetselier、1987)、MC38結腸癌、B16メラノーマおよびT241線維肉腫、ならびに肺実質に同所性に成長した(orthotopically growing)3LL-R腫瘍および直腸に同所性に成長したMC38(全てC57Bl/6のバックグラウンド)の単一細胞懸濁液は、小さいが、はっきりと識別可能なCD11c
hiMHC-II
hiTADC画分を含んでいた(
図2A)。TADCはまた、FVBバックグラウンドのMMTV-PyMT乳房腫瘍から回収された(
図2A)。
【0096】
同様のサイズの腫瘍のDC含有量を比較すると、cDC1は調査されたすべてのモデルで最も少ないサブセットであったが、cDC2は常に良好に表れていた(モデルにより、TADC全体の30.1%~75.7%の間)(
図2B)。最も大きな変動はMo-DCで見られ、3LL-RおよびT241腫瘍にはほとんど存在しないが、LLC、MMTV-PyMT、3LL-S、MC38およびB16腫瘍ではかなり大きな集団を形成し、後者の3つのモデルでは主要なTADC集団でさえあった。興味深いことに、同所性の腫瘍と比較して皮下に成長した3LL-RまたはMC38腫瘍のTADC含有量は極めて同等であり、このことは、周囲の組織ではなく腫瘍の微小環境がTADCの多様性(heterogeneity)を決定することを示唆している。特に、高Mo-DC含有量を有する腫瘍モデルはまた、それらのM2様MHC-II
low腫瘍関連マクロファージ(TAM)と比較して、比較的多くのM1様MHC-II
high腫瘍関連マクロファージ(高いMHC-II
high/MHC-II
lowの割合)を有し(
図2C)、このことは、これらの腫瘍の微小環境が、浸潤性単球のこれらのMHC-II
highマクロファージおよびDCへの分化に有利であることを示唆している(
図2C)。注目すべきことに、大きなMo-DC集団も含有するMC38腫瘍は、M1様とM2様の混合型の表現型を示す単一のTAM集団を含有する(
図2C)。Mo-DCの存在とMHC-II
highTAMの存在との相関は同じ腫瘍モデル内で維持され、それによって、腫瘍の成長の過程でのMHC-II
highTAMの出現不足(underrepresentation)と、MHC-II
lowTAMの漸進的蓄積が、Mo-DCの割合の減少と並行しており、3LL-Rモデルで例示されている(
図2Dおよび
図2E)。しかしながら、3LL-R浸潤性TADCの全体の割合は、腫瘍の成長中に増加する(
図2D)。対照的に、3LL-S腫瘍は、腫瘍の成長を通して、一定して、(TAMコンパートメントにおいては)MHC-II
highTAM、および(TADCコンパートメントにおいては)Mo-DCに支配されており、TADCの割合は変化しなかった(
図2Fおよび
図2G)。
【0097】
実施例3:異なる腫瘍関連樹状細胞亜集団の存在は、ヒト腫瘍において再現され得る。
先の知見をヒトの状況に転換させるために、肺癌および結腸直腸癌患者の新鮮な腫瘍生検標本で異なるTADC亜集団の存在を評価した。少量のCD16
-CD11c
+HLA-DR
+TADCをヒト腫瘍から回収した(
図3Aおよび
図3B)。重要なことに、このTADCコンパートメントは、マウスTADCサブセットと似た3つの異なるサブセットを包含していた。ヒトTADCは、BDCA2
-BDCA1
-IRF8
+CD14
-CD11b
lowcDC1集団およびBDCA2
-IRF8
-BDCA1
+TADC画分を含有し、この画分は、CD14とCD11bの差次的な発現を有する2つのサブセットから成っていた(
図3Aおよび
図3C)。既に示されているように(Segura et al., 2013)、これらはCD14
-CD11b
+cDC2集団およびマウスのMo-DCに類似したCD14
+CD11b
highDC集団からなる。注目すべきことに、BDCA2
+形質細胞様DCは回収できなかった。
【0098】
実施例4:Mo-DCは、固有の抗原取り込みおよび処理の能力が最も高い
強力な抗腫瘍免疫応答の誘導はいくつかの報告(Goc et al., 2014; Preynat-Seauve et al., 2006)においてDCに起因しているが、TADCは、腫瘍の免疫回避を可能にする抗原提示障害、T細胞刺激性障害および遊走能障害を有し、免疫寛容原性または免疫抑制性の細胞としても記載されている(Gabrilovich, 2004; Ma et al., 2013; Preynat-Seauve et al., 2006; Vesely et al., 2011)。したがって、異なるTADCサブセットが異なる機能を発揮すると仮定し得た。最初に、3つの異なるTADC集団による、抗原取り込み、処理、および提示能力を調べた。
【0099】
それらの固有の食作用能力を、蛍光ラテックスビーズを、37℃(食作用活性化)または4℃で3LL-R腫瘍単一細胞懸濁液に添加することにより、インビトロで試験した(
図4A)。全てのTADCサブセットは、37℃でラテックスビーズを取り込むことができた。しかしながら、TADC集団全体と比較した場合、ラテックス
+TADC集団内の細胞の割合はMo-DCサブセットでのみ増加し、当該集団が両方のcDC型よりも食作用が高かったことを示している(
図4B)。興味深いことに、腫瘍を除去する2時間前に、腫瘍を有するマウスに蛍光ラテックスビーズを静脈内注射することにより、インビボでの食作用アッセイを行った場合、Mo-DCは、ラテックス
+集団内で再び大きな比率を占め、インビボでの優れた食作用能力を裏付けた(
図4C)。
【0100】
次に、異なるTADCサブセットによる抗原処理の効率を評価した。ここでは、3LL-R腫瘍単細胞懸濁液をDQ-オボアルブミン(DQ-OVA)と共に15分間インキュベートし、抗原取り込みを可能にした。完全に洗浄した後、切断されたDQ-OVAの蛍光を読み取り値として用いて、異なる時間間隔で細胞内処理を評価した。0℃では、DQ-OVA処理は生じなかった(データ不掲載)。注目すべきことに、大部分のMo-DCが、DQ-OVAを迅速に処理したが(15分後に蛍光細胞の62.7±3.5%)、この初期の時点ではcDC1およびcDC2では処理が起こらなかった(
図4D)。cDC1と比較してcDC2の方がわずかに高い効率で、徐々にcDCはDQ-OVAを処理した(45分後に、それぞれ、7.8±4.6%に対して30.5±11.6%の蛍光細胞に達した)。まとめると、これらのデータは、抗原提示および処理に対するMo-DCの競争優位性を例示するものである。
【0101】
最後に、LLC-OVA腫瘍から新たに単離されたTADCサブセットを、H-2K
b/SIINFEKL複合体に特異的なmAbにより染色することにより、TADCがインビボでOVAを処理し、その免疫優性CTLエピトープ(SIINFEKL)を交差提示することができるかどうかを評価した。Mo-DCは、これらの複合体の最も高い発現を示し、腫瘍微小環境における優れた抗原取り込みおよび処理を示唆した(
図4E)。
【0102】
実施例5:両方のcDC集団がナイーブCD8
+およびCD4
+T細胞を活性化するが、cDC2のみがTh17CD4
+T細胞表現型を誘導する
次に、ナイーブT細胞を活性化するTADCサブセットの能力を評価した。この点に関して、CD80、CD86、PDL1およびPDL2などの活性化および抑制性のT細胞共刺激分子の発現は、すべてのTADC集団において非常に高かった(
図5A)。まず初めに、抗原取り込みおよび処理能力に無関係である、TADCサブセットの内因性抗原提示能力を、古典的混合白血球反応(MLR)で評価した。すべてのC57Bl/6TADCサブセットは、コントロールの脾臓CD11c
hiMHC-II
hiB220
-Ly6C
-cDC集団と少なくとも同程度にはナイーブBalb/cCD4
+およびCD8
+T細胞増殖を活性化することができた(
図5Bおよび
図5C)。興味深いことに、cDC2は、CD4
+およびCD8
+T細胞の両方に対して、最も高い内因性抗原提示能力を示した。
【0103】
本発明者らのアッセイにおいて、差次的なインビボでの抗原取り込みおよび処理能力の効果を組み込むために、TADCをLLC-OVA腫瘍から選別し、さらなるエクスビボでのAg負荷または刺激を伴わずに、CFSE標識TCRトランスジェニックCD8
+OT-1T細胞またはCD4
+OT-IIT細胞と直ちに共培養した。DC/OT-I比が1/10において、2つのcDCサブセットのみが効果的にCD8
+T細胞増殖を誘導することができ、その結果それらのインビボでの免疫賦活性の表現型を示し、cDC1はかなり強力であった(
図5D)。CD4
+T細胞の場合においても、cDCサブセットのみがDC/OT-II比が1/10においてT細胞増殖を誘導することができ、cDC2が最も効率的であった(
図5E)。特に、OT-II/TADC共培養物の上清中では、実験の期間内(刺激の3日以内)にIFN-γおよびIL-4(
図5F)はほとんど検出されず、並びにIL-13(データ不掲載)は全く検出されなかったが、これは、TADCサブセットによるTh1およびTh2誘導の欠如を示している。しかしながら、興味深いことに、cDC2は、OT-II細胞集団におけるRORγtのアップレギュレーション(T-bet、GATA3またはFoxP3ではない)および上清におけるIL-17の分泌によって示されるように、Th17集団の分化を誘導した(
図5G、
図5Hおよび
図5I)。他の条件では、RORγt
+T細胞も、IL-17産生も認められなかった。Th17の誘導は、cDC2によるIL-1βおよびIL-6などのTh17誘導性サイトカインの固有の高い産生から生じ得る(
図5J)。しかしながら、Mo-DCはこれらのサイトカインをより高いレベルで分泌するが、Th17を誘導する能力が欠如していることに留意すべきであり、これは、DCの他の固有の性質がTh17生成にとって重要であることを示唆している。
【0104】
実施例6:Mo-DCは、免疫抑制性のTIP-DC表現型を提示する
腫瘍関連Mo-DCは、抗原取り込みおよび処理能力が高いにもかかわらず、ナイーブ抗原特異的T細胞の活性化において、一貫して効率が低かった。従って、本発明者らは、Mo-DCがT細胞刺激機能を消滅させる可能性のある特徴を提示しているのではないかと考えた。本発明者らは、Mo-DCが高レベルのTNF-αおよびiNOSを同時発現し、したがって炎症性TIP-DCと似た表現型を示すことに気付いた(
図6Aおよび
図6B)。さらに、Mo-DCは、すべてのTADC集団の中で、最も高いレベルの炎症性サイトカインIL-6およびIL-1β、単球および好中球を誘引するケモカインCCL2、CCL4およびCXCL1、並びに、ミトコンドリアスーパーオキシドアニオンなどの活性酸素種を産生した(
図5J、
図6Cおよび
図6D)。加えて、Mo-DCは最も高いIL-10/IL-12バランスを示し(
図6E)、これは免疫原性が低いDCの表現型と関連する特徴である。
【0105】
重要なことに、より高いiNOS発現は、NOのより高い産生をもたらし得、NOは潜在的なT細胞抑制分子であると報告されている(Bronte and Zanovello, 2005; Schouppe et al., 2013)。LLC-OVAから選別したMo-DCを、iNOS阻害薬L-NMMA存在下で、CFSE標識CD8
+OT-IT細胞と共培養した(
図6F)。T細胞増殖は、これらの条件下で有意に増強され、Mo-DCによる活性NO媒介性のT細胞抑制活性を実証した。iNOS発現を含むTIP-DCの表現型は、以前に、IFN-γに依存することが示されている(Bosschaerts et al., 2011)。Mo-DC/OT-1培養物へのブロッキング抗IFN-γ抗体の添加は、実際、iNOS阻害と同じ程度までT細胞増殖を増加させた。特に、抗-IFN-γおよびL-NMMAは、Mo-DC/OT-II共培養物に影響を与えなかった(データ不掲載)。したがって、Mo-DCはCD8
+T細胞の強力な活性化を妨げる免疫抑制性のTIP-DC表現型を示す。
【0106】
実施例7:腫瘍関連cDCサブセットは共に、腫瘍流入領域リンパ節に遊走し、CD8
+およびCD4
+T細胞を差次的に活性化させる
腫瘍関連cDCはT細胞刺激能力を有していたため、次に、これらの細胞が腫瘍流入領域リンパ節(tdLN)に遊走し、腫瘍抗原を提示できるか否かを検討した。DCのLNへの遊走の前提条件であるCCR7発現は、cDCサブセット上にのみ存在し、Mo-DC上には存在しなかった(
図7A)。
【0107】
腋窩および鼠径部のtdLN(動物の側腹部における皮下の腫瘍の流入領域LN)では、cDC1およびcDC2サブセットは遊走性DC集団内に存在するが、Mo-DCは存在せず(データ不掲載)、Mo-DCの非遊走性の特徴を確認した。遊走性および常在性DCは、既に報告されている通り、CD11cおよびMHC-II発現に基づいて区別される(Kissenpfennig et al., 2005; Ohl et al., 2004)。これらのcDCが腫瘍抗原を提示するかどうかを評価するために、それらをLLC-OVA腫瘍を有するマウスのtdLNから選別し、CFSE標識CD8
+OT-IT細胞またはCD4
+OT-IIT細胞と共培養した。重要なこととして、OVAmRNAの欠損によって示されるように、cDC選別時にtdLNにOVA
+癌細胞が存在しないように注意した(
図7B)。遊走性cDC1は、OT-I増殖を強く刺激したが、cDC2は刺激せず(
図7C)、このことは、SIINFEKLを負荷したcDC1が腫瘍からtdLNへ、インビボで遊走したことを示唆した。特に、常在性cDCサブセットは両方とも、ほとんどOT-IT細胞増殖を誘導できなかった(
図7C)。対照的に、遊走性cDC1およびcDC2は両方とも、OT-IIT細胞増殖を刺激することができた(
図7D)。予想外に、常在性cDC1およびcDC2もOT-II増強を誘導し(
図7D)、遊走性腫瘍関連cDCが効果的なOT-IIプライミングために抗原をLN-常在性cDC集団に移すことができることを示唆した。特に、腫瘍関連cDC2と同様に、tDLNの遊走性および常在性cDC2はまた、Foxp3、T-betまたはGATA3のアップレギュレートは観察できなかったが、OT-IIT細胞の一部においてRORγtを誘導した(
図7E)
【0108】
実施例8:cDC1およびcDC2は、ワクチン投与に用いられる場合に、両方とも有益な治療効果を有するが、異なる治療効果を有する
最後に、腫瘍由来DCサブセットが、癌において治療に関連する免疫記憶応答を誘発するのに使用できるかどうかを評価するために、
図8Aに示すワクチン投与実験を設定した。重要なことに、ワクチン投与実験に用いられた選別されたTADCサブセットは、サイトカインによりエクスビボで刺激されておらず、腫瘍抗原も負荷されていなかった。Mo-DCはLN遊走能を示さず、免疫抑制能を保持していたため(
図6F)、cDCサブセットの潜在的な治療効果に焦点を当てることとした。
【0109】
注目すべきことに、LLC-OVAでの負荷(challenge)の際に、cDC2をワクチン接種したマウスのみが、非ワクチン接種マウスと比較して、有意に低下した腫瘍成長速度および腫瘍重量を有した(
図8Bおよび8C)。これは、LLC-OVA腫瘍から選別したcDC2をマウスにワクチン接種した場合だけでなく、cDC2がB16-OVA腫瘍に由来する場合もそうであった(
図13Bおよび
図13C)。cDC1をワクチン接種したコホートにおいても、有意ではないが、同様の傾向が見られた(
図8Bおよび
図13B)。予想通り、OVAをワクチン接種したマウスにおける腫瘍の成長は著しく遅れた。ゆっくりとした腫瘍成長は、両方のワクチン接種したコホートの腫瘍におけるCD8
+T細胞の存在のわずかな増加と相関したが、その増加はOVAをワクチン接種したマウスで見られた有意に高いレベルに達しなかった(
図8D)。注目すべきことに、H2K
b/SIINFEKLデキストラマー染色を用いると、全CD8
+T細胞集団内の腫瘍抗原特異的CD8
+T細胞の割合は、OVAをワクチン接種したマウスで有意に増加し、cDCをワクチン接種したマウスでは傾向が見られたが、cDC2をワクチン接種したマウスでは見られなかった(
図8E)。これらのデータは、cDC1の優れたCTL刺激能力と一致し、cDC2ワクチン投与のより強い抗腫瘍効果が、腫瘍微小環境における他の変化によって媒介されることを示唆している。この点に関して、cDC1ではなくcDC2がインビトロおよびtdLNにおいてTh17細胞を刺激することが示された(
図5Gおよび
図7E)。これらのデータと一致して、RORγt
+CD4
+腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の割合は、CD4
+T細胞の全体的な割合を増加させることなく、cDC2をワクチン接種したマウス由来の腫瘍においてのみ有意に増加した(
図8Fおよび8E)。いずれの条件においても、ワクチン投与後のFoxP3
+Treg、T-bet
+Th1またはGATA3
+Th2CD4
+TILの量に変化は見られなかった(
図8H、
図8Iおよび
図8J)。
【0110】
LLCを含む複数の腫瘍モデルにおいて、腫瘍の成長は、TILのみならず、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)およびTAMなどの腫瘍関連骨髄系細胞の表現型によってもまた制御される。興味深いことに、CD11b
hiLy6C
hiMHC-II
negLy6G
neg単核球細胞およびCD11b
hiLy6C
intMHC-II
negLy6G
hi顆粒球細胞の存在は、ワクチン接種していないコホートおよびcDC1をワクチン接種したコホートと比較して、cDC2をワクチン接種したマウスの腫瘍において、有意に減少している(
図9Aおよび
図9B)。これらの細胞を単核球性および顆粒球性MDSCとして分類するT細胞抑制能力を、これらの細胞が有するかどうかを評価するために、それらを腫瘍単一細胞懸濁液からFACS選別し、OVA刺激されたOT-I脾細胞に異なる比率で添加した。
図9Cに示すように、これらの細胞はOT-I増殖を強力に抑制した。従って、cDC2ワクチン投与は、腫瘍におけるMDSCの存在を強力に減少させる。
【0111】
M2型のTAM(M2-oriented TAM)もまた、腫瘍の進行を促進する。全体的なCD11b
hiLy6C
loLy6G
negの数は、cDC2をワクチン接種したマウスにおいて、減少傾向を示すのみであった(
図9D)。重要なことに、TAMコンパートメント内において、cDC2ワクチン投与は、よりM1様のMHC-II
highTAM(すなわち、より低いMHC-II
low/MHC-II
highTAM比)へのシフトを引き起こした(
図9Eおよび
図9F)。その上、これらのMHC-II
highTAMは、M1関連遺伝子のさらなる発現のアップレギュレートによって証明されるように、ワクチン接種していない動物由来のものと比較してより顕著なM1表現型を有したが、M2関連遺伝子の大部分(Mmp9を除く)は有意に変化しなかった(
図9G)。特に、cDC2をワクチン接種したマウス由来の残りの少数のMHC-II
lowTAMもM1遺伝子発現プロファイルを変化させ、いくつかの遺伝子(Il1b、Ptgs2、Il12p40)はアップレギュレートされ、他の遺伝子(Tnf、Nos2)はダウンレギュレートされた。これらの細胞におけるM2遺伝子は、ほとんど変化しなかった。全体として、これらのデータは、cDC2をワクチン接種したマウス由来のLLC-OVA腫瘍の骨髄球系のコンパートメントは、強くM1型TAM(M1-oriented TAM)によって支配されていることを示している。
【0112】
最後に、TAMが非常に少ない数で存在し、主にM1様のMHC-II
highに偏向しているB16-OVA腫瘍モデルを調べた(
図2C)。当該モデルでは、抗腫瘍効果は、腫瘍浸潤骨髄系細胞の明白な干渉なしに、細胞傷害性T細胞によって直接媒介される可能性がより高い。実際、LLC-OVA腫瘍(
図10A)またはB16-OVA腫瘍(
図13Dおよび
図13E)から単離されたcDC1によるワクチン投与は、cDC2をワクチン投与と比較して、それぞれより良好または同等の防御をもたらし、このことは、LLC-OVA腫瘍から選別したcDC1の場合において、前者のCD8
+T細胞の有意に増強された浸潤と相関した(
図10B)。従って、腫瘍免疫におけるTAMまたはTILの役割に応じて、異なる腫瘍由来の通常型TADCサブセットが、オーダーメイドの(personalized)DC養子免疫療法を開発するために利用され得る。
【0113】
実施例9:ワクチン投与実験に使用するための、12日目のLLC-OVA腫瘍全体からのcDC1およびcDC2集団の選別に適用された、ゲーティング戦略。
実験手順に記載されているように、選別の前に、単一細胞懸濁液を調製し、CD11c
+細胞をMACS濃縮した。選別したcDC1およびcDC2は、TADCにおいて94%および98.5%という非常に高い純度を示し、わずかなMo-DC夾雑物しか含有しなかった(それぞれ0%および0.7%、
図11)。
【0114】
実施例10:腫瘍転移におけるTADCサブセットの治療効果。
10
5個のLLC-OVA細胞を足蹠に投与するか(a)、あるいは、3x10
6個のLLC-OVA細胞を皮下に投与し(b)、腫瘍サイズが約800mm
2になるまで成長させる。その後、原発性腫瘍を、下肢切断(a)または皮下腫瘍除去(b)のいずれかによって切除する。cDC1および/またはcDC2集団を、切除した腫瘍および/または切除した腫瘍流入領域リンパ節から単離し、続いて同一の個体に注射する。転移性肺小結節および肺重量を、顕微鏡法によって評価する(
図12)。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表2】
【0115】
参考文献
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