IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カワサキモータース株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-自動二輪車 図1
  • 特許-自動二輪車 図2
  • 特許-自動二輪車 図3
  • 特許-自動二輪車 図4
  • 特許-自動二輪車 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】自動二輪車
(51)【国際特許分類】
   B62J 45/42 20200101AFI20220202BHJP
   B62J 45/41 20200101ALI20220202BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20220202BHJP
   B62J 6/022 20200101ALI20220202BHJP
   B62J 6/04 20200101ALI20220202BHJP
   B62J 17/04 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
B62J45/42
B62J45/41
G01S7/03 240
G01S7/03 246
B62J6/022
B62J6/04
B62J17/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017173673
(22)【出願日】2017-09-11
(65)【公開番号】P2019048554
(43)【公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀幸
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-039487(JP,A)
【文献】特開2016-075569(JP,A)
【文献】特開2016-075570(JP,A)
【文献】特開2012-254771(JP,A)
【文献】特開2016-068747(JP,A)
【文献】特開2017-091138(JP,A)
【文献】特開2013-071675(JP,A)
【文献】特開2009-204592(JP,A)
【文献】特開2016-068606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0176591(US,A1)
【文献】米国特許第09153133(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 6/02
B62J 6/026
B62J 6/04
B62J 17/00
B62J 23/00
B62J 45/40
B62J 45/41
B62J 45/42
B62J 99/00
G01S 7/03
B60R 21/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を遮蔽する材質の部分を含む前照灯と、
電磁波を遮蔽する材質の部分を含む尾灯と、
周囲を探知するための電磁波である送信波を送受信箇所から前方へ送信するとともに、当該送信波が対象物で反射した反射波を前記送受信箇所で受信する前方レーダ装置と、
電磁波を透過する材質のフロントカウルと、
左右一対で配置されるフロントフォークと、
を備え、
前記前方レーダ装置の前記送受信箇所は、少なくとも前記送信波を送信する範囲において前記フロントカウルで覆われており、
正面視において、前記前方レーダ装置は、左右一対の前記フロントフォークの間であって、かつ、前記前照灯の正面投影領域の外側に配置されており、
前記前方レーダ装置の上下方向の位置は、ウインドシールドの下端部を車体フレームに支持させるためのシールドステーと重なり、
前記前方レーダ装置は、左右一対の前記シールドステーに左右方向で挟まれるように配置されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
請求項1に記載の自動二輪車であって、
前記前方レーダ装置は自動二輪車の左右方向の中央に配置されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動二輪車であって、
前記前照灯は、左側に配置される左側前照部と、右側に配置される右側前照部と、で構成されており、
正面視において、前記前照灯の上部は、上方に近づくに連れて、前記左側前照部と前記右側前照部の間隔が大きくなるように構成されており、前記左側前照部と前記右側前照部との間又はその上方に前記前方レーダ装置の前記送受信箇所が配置されることを特徴とする自動二輪車。
【請求項4】
請求項3に記載の自動二輪車であって、
平面視において、前記前照灯は、後方に近づくに連れて、前記左側前照部と前記右側前照部の間隔が大きくなるように構成されており、前記左側前照部と前記右側前照部との間に前記前方レーダ装置が配置されることを特徴とする自動二輪車。
【請求項5】
請求項から4までの何れか一項に記載の自動二輪車であって、
側面視において、前記前方レーダ装置の前記送受信箇所が前記前照灯と重ならないことを特徴とする自動二輪車。
【請求項6】
請求項から5までの何れか一項に記載の自動二輪車であって、
少なくとも車速を表示するメータ装置を備え、
側面視において、前記前方レーダ装置の前記送受信箇所は、前記メータ装置よりも前方に配置されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の自動二輪車であって、
後方に前記送信波を送信する後方レーダ装置を備え、
背面視において、前記後方レーダ装置が前記尾灯の背面投影領域の外側に配置され、
背面視において、前記尾灯の下方に前記後方レーダ装置の前記送受信箇所が配置されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項8】
請求項7に記載の自動二輪車であって、
前記尾灯の下方に設けられるリアフラップを備え、
前記尾灯と前記リアフラップとの間に前記後方レーダ装置の前記送受信箇所が配置されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の自動二輪車であって、
前記尾灯が設けられるリアフレームカバーを備え、
前記後方レーダ装置が前記リアフレームカバーの内部に配置されていることを特徴とする自動二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、レーダ装置を備える自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、フロントフェンダの近傍にレーダ装置が配置される構成の自動二輪車を開示する。このレーダ装置は、前方の障害物までの距離、及び、障害物が存在する方向を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-110683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のレーダ装置は、外部に露出されるように配置されている。従って、レーダ装置に水及び泥等が掛かる可能性がある。また、レーダ装置の電磁波の送信範囲によっては、電磁波の一部が前輪のホイール等によって遮られる可能性がある。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、レーダ装置の電磁波の送受信範囲が十分に確保され、レーダ装置に水及び泥等が掛かりにくい構成の自動二輪車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成の自動二輪車が提供される。即ち、この自動二輪車は、前照灯と、尾灯と、前方と、電磁波を透過する材質のフロントカウルと、左右一対で配置されるフロントフォークと、を備える。前記前照灯は、電磁波を遮蔽する材質の部分を含む。前記尾灯は、電磁波を遮蔽する材質の部分を含む。前記前方レーダ装置は、周囲を探知するための電磁波である送信波を送受信箇所から前方へ送信するとともに、当該送信波が対象物で反射した反射波を前記送受信箇所で受信する。前記前方レーダ装置の前記送受信箇所は、少なくとも前記送信波を送信する範囲において前記フロントカウルで覆われている。正面視において、前記前方レーダ装置は、左右一対の前記フロントフォークの間であって、かつ、前記前照灯の正面投影領域の外側に配置される。前記前方レーダ装置の上下方向の位置は、ウインドシールドの下端部を車体フレームに取り付けるためのシールドステーと重なる。前記前方レーダ装置は、左右一対の前記シールドステーに左右方向で挟まれるように配置されている。
【0008】
これにより、レーダ装置が電磁波を透過する材質の部材で覆われることで、レーダ装置の機能を低下させずにレーダ装置を水及び泥等から保護できる。また、前照灯及び尾灯の電磁波を遮蔽する材質の部分によって、レーダ装置の送信波が影響を受けることを防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レーダ装置の電磁波の送受信範囲が十分に確保され、レーダ装置に水及び泥等が掛かりにくい構成の自動二輪車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車の側面図。
図2】自動二輪車の正面図。
図3】自動二輪車の平面図。
図4】自動二輪車の前部の拡大側面図。
図5】自動二輪車の後部の拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、自動二輪車1が前進する方向を前として、前後左右の方向を定義する(即ち、自動二輪車1に乗車した運転者から見た方向で左右方向を定義する)。また、鉛直方向上側及び下側を上側及び下側と定義する。また、位置関係、大きさ、又は形状等を説明する用語は、その用語の意味が完全に成立している状態だけでなく、その用語の意味が略成立している状態も含むものとする。また、AがBに取り付けられていると称したときにおいて、AがBに直接取り付けられている構成だけでなく、他の取付部材等を介してAがBに取り付けられている構成も含むものとする。
【0012】
初めに、自動二輪車1の概要について、図1から図3を参照して説明する。図1は、自動二輪車1の側面図である。図2は、自動二輪車1の正面図(前面視で見た図)である。図3は、自動二輪車の平面図である。図1に示すように、自動二輪車1は、エンジン40と、前輪22と、後輪25と、を備える。これらの部材は、車体フレーム10によって支持されている。車体フレーム10は金属製であるため、電磁波を遮蔽する性質を有している。車体フレーム10は、ヘッドパイプフレーム11と、メインフレーム12と、リアフレーム13と、リアステー14と、を含んで構成されている。
【0013】
なお、本明細書では、「電磁波を遮蔽する材質」等と記載した場合に、電磁波を完全に遮蔽する材質だけでなく、電磁波を用いた処理(周囲の探知処理)に悪影響が出る程度に電磁波を遮蔽する材質も含む。同様に、「電磁波を透過する材質」等と記載した場合に、電磁波を完全に透過する材質だけでなく、電磁波を用いた処理(周囲の探知処理)に殆ど影響がない程度に電磁波を遮蔽する材質も含む。
【0014】
ヘッドパイプフレーム11には、図略のステアリングシャフトを挿入するためのシャフト挿入孔が形成されている。ヘッドパイプフレーム11の上部及び下部には、それぞれ図略のアッパーブラケット及びロアブラケットが取り付けられている。アッパーブラケット及びロアブラケットには、左右一対で配置されるフロントフォーク21を挿入するためのフォーク挿入孔がそれぞれ形成されている。この構成により、アッパーブラケット及びロアブラケットは、フロントフォーク21を支持している。フロントフォーク21の下部には前輪22が回転可能に取り付けられている。また、前輪22の上部には、フロントフェンダ23が配置されている。
【0015】
ヘッドパイプフレーム11には、メインフレーム12が接続されている。メインフレーム12は、左右一対で配置されており、ヘッドパイプフレーム11の後部から後ろ斜め下方に延びた後に下方に延びるように構成されている。なお、メインフレーム12の前部と後部とが異なる部材から構成されていても良い。メインフレーム12の中途部には、左右一対のリアフレーム13及びリアステー14がそれぞれ取り付けられている。リアフレーム13は、リアステー14よりも上方に配置されている。リアフレーム13及びリアステー14は、メインフレーム12から後ろ斜め上方に延びるように配置されている。
【0016】
メインフレーム12の後部には、スイングアーム24が取り付けられている。スイングアーム24の前端は、図略のリアサスペンションによって弾性的に支持されている。スイングアーム24は、図1に示すように後方に延びるように配置されている。スイングアーム24の後部には、後輪25が回転可能に取り付けられている。エンジン40で発生した動力は、図略のドライブチェーンを介して後輪25に伝達される。また、後輪25の上部(後輪25の近傍)には、リアフェンダ26が配置されている。リアフェンダ26は、スイングアーム24と同様にリアサスペンションによって弾性的に支持されており、スイングアーム24及び後輪25が揺動した場合は、これらと一体的に揺動する。
【0017】
後輪25の上方には、更に、リアフレームカバー27と、リアフラップ28と、が配置されている。リアフレームカバー27及びリアフラップ28は、車体フレーム10(リアフレーム13、リアステー14)に支持されており、スイングアーム24及び後輪25が揺動した場合であっても、これらと一体的には揺動しない。リアフレームカバー27及びリアフラップ28は樹脂製であるため、電磁波を透過する性質を有している。
【0018】
リアフレームカバー27は、リアフレーム13及びリアステー14(特にこれらの後部)の周囲を覆う。リアフレームカバー27は、後述のリアシート44の下方に配置されている。リアフラップ28は、リアフレームカバー27の下部から後ろ斜め下方に延びる(後輪25の外周面に沿うように延びる)部材である。リアフラップ28には、例えば、後方から照射された光を反射するリフクレクタ及びナンバープレート等が取り付けられる。
【0019】
図1に示すように、前輪22の上方であって、自動二輪車1の前部には、前照灯31が配置されている。前照灯31は金属部品を複数、任意の場所に含むため、電磁波を遮蔽する性質を有している。図2に示すように、前照灯31は、ケース部31aと、左側前照部31bと、右側前照部31cと、を備えている。このように、前照灯31は、光照射部が左右に分離された構成であるため、左側前照部31bと右側前照部31cとの間に光を照射しない領域が存在している。
【0020】
ケース部31aは、図略の取付ブラケット(取付部)を介して車体フレーム10に支持されている。ケース部31aには、左側前照部31bと右側前照部31cとが取り付けられている。
【0021】
左側前照部31bと右側前照部31cは、正面視(図2)及び平面視(図3)において、自動二輪車1の中央を通る線を対称線として、左右対称である。また、正面視において、左側前照部31b及び右側前照部31cの上部(上辺)は、上方に近づくに連れて左右方向外側に近づくように(即ち、両者の間隔が大きくなるように)構成されている。また、左側前照部31b及び右側前照部31cの左右方向の外側の端部(端辺)は、上方に近づくに連れて左右方向外側に近づくように傾斜している。また、それに合わせて、ケース部31aも、左右方向の中央が下側に凹んだ形状となっている。また、平面視において、左側前照部31b及び右側前照部31cは、後方に近づくに連れて左右方向外側に近づくように(即ち、両者の間隔が大きくなるように)構成されている。
【0022】
また、左側前照部31b及び右側前照部31cは、それぞれ、図略の発光体と、リフレクタ311と、カバー312と、を備えている。発光体は、白熱電球、ハロゲン電球、HID(High-Intensity Discharge)ランプ、LED(Light Emitting Diode)等であり、電力を使用して光を発する装置である。リフレクタ311は、様々な角度で配置された複数の反射板から構成されており、発光体が発した光を反射することで、所定方向及び所定範囲に光を照射する。カバー312は自動二輪車1の表面に配置されており、発光体及びリフレクタ311を保護する。カバー312は光を透過する透明の部材(レンズ)である。リフレクタ311によって反射された光は、カバー312を透過して前方へ向かう。
【0023】
前照灯31の後部の上方には、ウインドシールド32が配置されている。ウインドシールド32は、走行風の導風を行うことで、走行風を運転者に当たりにくくする。従って、ウインドシールド32は、下端部(基端部)から後ろ斜め上方に延びるように配置されている。ウインドシールド32の下端部には、シールドステー33が固定されている。シールドステー33は、前照灯31と同様の取付ブラケットと、を介して車体フレーム10に支持されている。
【0024】
ウインドシールド32の後方には、車速、エンジン回転速度、及び警告情報等を表示可能なメータ装置34が配置されている。メータ装置34の更に後方には、ステアリングハンドル35が配置されている。運転者がステアリングハンドル35を回動させることで、フロントフォーク21が回動するため、自動二輪車1を旋回させることができる。
【0025】
ステアリングハンドル35の後方であって、エンジン40の上方には、エンジン40に供給するための燃料が貯留される燃料タンク41が配置されている。燃料タンク41の後方には、運転者が着座するためのフロントシート42が配置されている。フロントシート42の下方には、フロントシート42に着座した運転者が足を載せるためのステップ43が配置されている。運転者は、フロントシート42に着座し、燃料タンク41及びその下方を足で挟み、ステップ43に足を載せることで、体を安定させるとともに重心を左右に移動させて操舵の一部を行う。
【0026】
フロントシート42の後方には、同乗者が着座するためのリアシート44が配置されている。リアシート44は、上述のリアフレームカバー27の上部に配置されている。また、リアフレームカバー27の後部には、尾灯46が配置されている。尾灯46は金属部品を複数、任意の場所に含むため、電磁波を遮蔽する性質を有している。
【0027】
自動二輪車1は、図1等に示すように、フロントカウル51と、サイドカウル52と、を備える。フロントカウル51は、主に車体前部、具体的には前照灯31の周囲及びウインドシールド32の基端部等を覆う部分に配置されている。サイドカウル52は、主に車体側面、具体的には、図1等に示すように、ステアリングハンドル35の下方及び燃料タンク41の下方等の部分に配置されている。本実施形態のフロントカウル51及びサイドカウル52は樹脂製であるため、電磁波を透過する性質を有している。
【0028】
図1から図3に示すように、前照灯31の近傍であって、フロントカウル51に覆われる部分には、前方レーダ装置61が配置されている。また、図1に示すように、尾灯46の近傍であって、リアフレームカバー27に覆われている部分には、後方レーダ装置62が配置されている。前方レーダ装置61及び後方レーダ装置62は、送信波(電磁波)を照射するとともに、当該送信波が対象物で反射した反射波(電磁波)を受信する。前方レーダ装置61は、前方に送信波を送信する。詳細には、前方レーダ装置61は、図3に示すように左右方向への広がりを有するとともに、図4に示すように上下方向への広がりを有する送信波を前方に送信する。後方レーダ装置62は、後方に送信波を送信する。後方レーダ装置62が送信する送信波は、前方レーダ装置61と同様に、左右方向及び上下方向への広がりを有している。
【0029】
前方レーダ装置61及び後方レーダ装置62は、受信した反射波に関する情報を解析する演算部をそれぞれ有している。演算部は、送信波を送信してから反射波を受信するまでの時間に基づいて対象物までの距離を算出する。演算部は、反射波を受信した方向に基づいて対象物の方向を算出する。演算部は、以上のようにして自動二輪車1の前方及び後方に存在する対象物の位置を算出する。また、対象物までの距離の変化に基づいて、自動二輪車1に対する対象物の相対速度を算出することもできる。前方レーダ装置61及び後方レーダ装置62は、算出した対象物の位置をメータ装置34及びエンジン制御ユニット等へ送信する。なお、反射波の解析は、前方レーダ装置61及び後方レーダ装置62ではなく、メータ装置34及びエンジン制御ユニット等の演算装置が行っても良い。
【0030】
メータ装置34は、前方レーダ装置61及び後方レーダ装置62によって探知された周囲の対象物に関する表示を行う。例えば、前方又は後方の対象物までの距離が所定以下になった場合、メータ装置34にその旨の警告を行うことができる。また、前方の対象物までの距離が所定以下になった場合、警告を行うことに加えて又は代えて、ブレーキを作動させて車速を低下させる制御をエンジン制御ユニットに行わせることもできる。また、左右方向外側かつ後方の対象物の情報(対象物の有無及びその速度)をメータ装置34に表示することで、車線変更時の安全確認を補助することもできる。
【0031】
ここで、自動二輪車1には、様々な位置に金属部品が使用されている。しかし、前方レーダ装置61及び後方レーダ装置62が送信する送信波及び受信する反射波は、金属等の電磁波を遮蔽する部材を通過することができない(あるいは、振幅が極端に低下する)。特に、本実施形態では、左右方向及び上下方向への広がりを有する送信波を送信するため、送信波が遮蔽され易いため、前方レーダ装置61及び後方レーダ装置62を適切な位置に配置する必要がある。以下、前方レーダ装置61及び後方レーダ装置62の配置及びそれらの周囲の構成について更に図4及び図5を参照して詳細に説明する。
【0032】
前方レーダ装置61は、送信波の送信と反射波の受信を行う送受信箇所が前面に設けられている。具体的には、図4に示すように、前方レーダ装置61の前面のうち上部を除いた部分が、送受信箇所である。図1に示すように、前方レーダ装置61の前後方向の位置は、前照灯31の前端よりも後方であって、前輪22の車軸(即ち、フロントフォークの下端)よりも後方であって、シールドステー33及び前照灯31と重なり、ウインドシールド32の中央部よりも前方であって、メータ装置34よりも前方である。
【0033】
上述したように、前方レーダ装置61の前方には金属部品を配置することが好ましくないため、前方レーダ装置61はできる限り前方に配置することが好ましい。しかし、本実施形態のフロントカウル51の上面は、図4に示すように、前方に近づくに連れて下方に近づくように傾斜しているため、フロントカウル51の前端の近傍は、部品を配置するスペースが小さい。更に、フロントカウル51の前端の近傍には金属部品を含む前照灯31が配置されているため、フロントカウル51の前端の近傍には、前方レーダ装置61を配置することが困難である。
【0034】
従って、上述のように、前端から少し後方の部分に前方レーダ装置61が配置されている。また、フロントカウル51が前方突出形状(詳細には、前方に近づくに従って上下方向及び左右方向の大きさが小さくなる形状)である。従って、メータ装置34からフロントカウル51の前端までの間にはスペースが存在するので、このスペースを活用して前方レーダ装置61を配置できる。特に、本実施形態ではメータ装置34の前方には、前照灯31及びメータ装置34に接続されるハーネスが配置されているため、前方レーダ装置61に接続されるハーネスを、これらのハーネスとまとめて配置し易くなる。なお、前方レーダ装置61に接続されるハーネスは、下部に接続されていても良いし、上部に接続されていても良いし、後部に接続されていても良い。
【0035】
前方レーダ装置61の左右方向の位置は、自動二輪車1の左右方向の中央である。言い換えれば、図2等に示すように、左右一対で配置されるフロントフォーク21の間、左側前照部31bと右側前照部31cの間、ケース部31aの左右方向の中央、左右一対で配置されるシールドステー33の間に、前方レーダ装置61が配置されている。前方レーダ装置61を左右方向の中央に配置することで、左右の両側を均等に探知することができる。
【0036】
前方レーダ装置61の上下方向の位置は、図1等に示すように、前輪22及びフロントフェンダ23よりも上方であって、前照灯31と重なり(詳細にはリフレクタ311及びカバー312よりは上方であるが、ケース部31aと重なる)、シールドステー33と重なり、燃料タンク41と重なり、メータ装置34より下方である。前方レーダ装置61の上下方向の位置は前照灯31(ケース部31a)と重なるが、前方レーダ装置61はケース部31aの左右方向中央が下方に凹んだ部分に配置されているため、正面視において、前方レーダ装置61と前照灯31は重ならない。また、前方レーダ装置61は、左右一対のシールドステー33に挟まれるように配置されているため、前方レーダ装置61とシールドステー33の位置を近づけることができる。従って、共通の取付ブラケットにシールドステー33及び前方レーダ装置61を取り付け易くなる。また、左右一対のシールドステー33で囲まれる空間を有効に活用できる。
【0037】
また、上述のように前照灯31は、平面視(図3)において、後方に近づくに連れて左側前照部31bと右側前照部31cの間隔が大きくなるように構成されている。前方レーダ装置61は、平面視において左側前照部31bと右側前照部31cの間に配置されている。上述のように、前方レーダ装置61は、左側前照部31bと右側前照部31cの上方に配置されているため、左側前照部31b及び右側前照部31cに覆われていないが、例えば、この左側前照部31bと右側前照部31cで囲まれる領域に前方レーダ装置61のハーネスを通過させたり、前方レーダ装置61を取り付ける為の取付ブラケットを位置させたり、前方レーダ装置61のうち送受信箇所以外の箇所を位置させることもできる。
【0038】
このように、前方レーダ装置61は、金属部品を含む前照灯31を避けた位置に配置されている。従って、正面視(前面視)において、前照灯31を正面側に投影した領域(以下、前照灯31の正面投影領域)から外れた位置に、前方レーダ装置61が配置されている。なお、本実施形態では、前方レーダ装置61の全体が、前照灯31の正面投影領域から外れた位置に配置されているが、前方レーダ装置61のうち電磁波を送受信する送受信箇所が前照灯31の正面投影領域から外れていれば良い。また、本実施形態で送信する送信波は、上下方向及び左右方向に広がりを有するが、その何れの範囲に送信する送信波も前照灯31に当たらないように前方レーダ装置61が配置されている(対象物の探知に使用しない微弱な電磁波を除く)。これにより、前方レーダ装置61が送受信する電磁波が前照灯31によって遮蔽されない。
【0039】
また、前方レーダ装置61は、フロントカウル51の内部に配置されている。詳細には、前方レーダ装置61の左右方向外側がフロントカウル51に覆われており(言い換えれば、側面視でフロントカウル51と前方レーダ装置61が重なり)、前方レーダ装置61の前方向がフロントカウル51に覆われている(言い換えれば正面視でフロントカウル51と前方レーダ装置61が重なる)。従って、前方レーダ装置61の送信波の送信範囲の全てがフロントカウル51に覆われている。また、上述のようにフロントカウル51は電磁波を透過する材質で構成されており、また塗料等にも金属粉が含まれていない。従って、フロントカウル51を介して電磁波の送受信を行うことができる。
【0040】
また、前方レーダ装置61がフロントカウル51に覆われていることで、水及び泥等から前方レーダ装置61を保護することができる。また、前方レーダ装置61がフロントカウル51で覆われていることで、盗難等からも前方レーダ装置61を保護できる。更に、自動二輪車1の外観をシンプルにすることができる。
【0041】
また、図5に示すように、後方レーダ装置62の上下方向の位置が尾灯46の下方であって、リアフレーム13と重なる位置であり、リアフェンダ26及びリアフラップ28よりも上方である。なお、前後方向において、後方レーダ装置62よりも後方に尾灯46が配置されているが、後方レーダ装置62が尾灯46の下方に位置するため、背面視において尾灯46を背面側に投影した領域(尾灯46の背面投影領域)は後方レーダ装置62と重ならない。従って、後方レーダ装置62が送信する送信波は尾灯46によって遮蔽されない(対象物の探知に使用しない微弱な電磁波を除く)。これにより、後方レーダ装置62が送受信する電磁波が前照灯31によって遮蔽されない。
【0042】
また、後方レーダ装置62の上下方向の位置はリアフレーム13と重なるが、リアフレーム13の後方に後方レーダ装置62が配置されているため、後方レーダ装置62が送信する送信波がリアフレーム13によって遮蔽されることはない。また、上述のように、後方レーダ装置62が送信する送信波は上下方向に広がりを有する。本実施形態ではこの送信波はリアフラップ28と干渉しないが、仮に干渉する場合であってもリアフラップ28は電磁波を透過する材質で構成されているため、対象物の探知範囲小さくなることはない。
【0043】
このように、後方レーダ装置62は、金属部品を含む尾灯46及びリアフレーム13を避けた位置に配置されている。また、後方レーダ装置62は、リアフレームカバー27の内部に配置されている。詳細には、後方レーダ装置62の左右方向外側がリアフレームカバー27に覆われており(言い換えれば、側面視でリアフレームカバー27と後方レーダ装置62が重なり)、後方レーダ装置62の後方向がリアフレームカバー27に覆われている(言い換えれば背面視でリアフレームカバー27と後方レーダ装置62が重なる)。従って、後方レーダ装置62の送信波の送信範囲の全てがリアフレームカバー27に覆われている。また、上述のようにリアフレームカバー27は電磁波を透過する材質で構成されており、また塗料等にも金属粉が含まれていない。従って、リアフレームカバー27を介して電磁波の送受信を行うことができる。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態の自動二輪車1は、前照灯31と、尾灯46と、レーダ装置(前方レーダ装置61、後方レーダ装置62)と、を備える。前照灯31は、電磁波を遮蔽する材質の部分を含む。尾灯46は、電磁波を遮蔽する材質の部分を含む。レーダ装置は、周囲を探知するための電磁波である送信波を送受信箇所から送信するとともに、当該送信波が対象物で反射した反射波を送受信箇所で受信する。レーダ装置の送受信箇所は、少なくとも送信波を送信する範囲において、電磁波を透過する材質の部材で覆われている。レーダ装置が前後方向の中央よりも前方に配置される場合は、正面視において、レーダ装置が前照灯31の正面投影領域の外側に配置される。レーダ装置が前後方向の中央よりも後方に配置される場合は、背面視において、レーダ装置が尾灯46の背面投影領域の外側に配置される。
【0045】
これにより、レーダ装置が電磁波を透過する材質の部材で覆われることで、レーダ装置の機能を低下させずにレーダ装置を水及び泥等から保護できる。また、前照灯31及び尾灯46の電磁波を遮蔽する材質の部分によって、レーダ装置の送信波が影響を受けることを防止できる。
【0046】
また、本実施形態の自動二輪車1は、前方レーダ装置61と、フロントカウル51と、を備える。前方レーダ装置61は、前方に送信波を送信するレーダ装置である。フロントカウル51は、電磁波を透過する材質で構成されている。前方レーダ装置61は、フロントカウル51に覆われる。
【0047】
前方レーダ装置61がフロントカウル51に覆われることで、前方レーダ装置61を保護するためのケースを省略することで、部品点数の増加を防止できる。あるいは、前方レーダ装置61を保護するためのケースを簡易化することで、コストを低減できる。また、前方レーダ装置61が自動二輪車1の外観に影響を与えることを防止できる。
【0048】
また、本実施形態の自動二輪車1において、前照灯31は、左側に配置される左側前照部31bと、右側に配置される右側前照部31cと、で構成されている。正面視において、前照灯31の上部は、上方に近づくに連れて、左側前照部31bと右側前照部31cの間隔が大きくなるように構成されており、左側前照部31bと右側前照部31cとの間又はその上方に前方レーダ装置61の送受信箇所が配置される。
【0049】
これにより、正面視における左側前照部31bと右側前照部31cの間の空間を有効に活用して、送信波の送信範囲と前照灯31とが重ならないように、前方レーダ装置61を配置できる。
【0050】
また、本実施形態の自動二輪車1では、平面視において、前照灯31は、後方に近づくに連れて、左側前照部31bと右側前照部31cの間隔が大きくなるように構成されており、左側前照部31bと右側前照部31cとの間に前方レーダ装置61が配置される。
【0051】
これにより、前方レーダ装置61が比較的前方に配置されるので、前方レーダ装置61の前方に電磁波を遮蔽する材質の部材を配置しないレイアウトを容易に実現できる。
【0052】
また、本実施形態の自動二輪車1において、側面視において、前方レーダ装置61の送受信箇所が前照灯31と重ならない。
【0053】
これにより、前方レーダ装置61が左右方向に広がる送信波を送信する構成であっても、送信波が前照灯31によって遮蔽されない。
【0054】
また、本実施形態の自動二輪車1は、少なくとも車速を表示するメータ装置34を備える。側面視において、前方レーダ装置61の送受信箇所は、メータ装置34よりも前方に配置されている。
【0055】
これにより、比較的スペースが確保し易い部分に前方レーダ装置61を配置することができる。
【0056】
また、本実施形態の自動二輪車1は、後方に送信波を送信するレーダ装置としての後方レーダ装置62を備える。背面視において、尾灯46の下方に後方レーダ装置62の送受信箇所が配置されている。
【0057】
これにより、比較的スペースが確保し易い部分に後方レーダ装置62の送受信箇所を配置できる。
【0058】
また、本実施形態の自動二輪車1は、尾灯46の下方に設けられるリアフラップ28を備える。尾灯46とリアフラップ28との間に後方レーダ装置62の送受信箇所が配置されている。
【0059】
これにより、後方レーダ装置62及び後方レーダ装置62を覆う部材を水や泥等から保護することができる。
【0060】
また、本実施形態の自動二輪車1は、尾灯46が設けられるリアフレームカバー27を備える。後方レーダ装置62がリアフレームカバー27の内部に配置されている。
【0061】
これにより、リアフレームカバー27は、例えばリアフラップ28等と比較して振動しにくいため、後方レーダ装置62の振動を防止できる。また、後方レーダ装置62をリアフレームカバー27の内部に配置することで、後方レーダ装置62を保護するためのケースを省略したり簡易化したりすることができる。
【0062】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0063】
<電磁波を遮蔽/透過する材質>上記実施形態では、前方レーダ装置61及び後方レーダ装置62は、送信波の送信範囲が樹脂(フロントカウル51及びリアフレームカバー27)で覆われているとともに、金属(前照灯31及び尾灯46)で覆われていない構成である。ただし、前方レーダ装置61及び後方レーダ装置62は、樹脂以外の電磁波を透過する材質に覆われていても良く、金属以外の電磁波を遮蔽する材質にも覆われていないことが好ましい。
【0064】
<前方レーダ装置61の配置>上記実施形態では、前方レーダ装置61は前照灯31の上方に配置されているが、前照灯31の下方に配置されていても良い。また、左側前照部31bと右側前照部31cの前部における間隔が大きい場合は、その間(即ち前照灯31と同じ高さに)前方レーダ装置61を配置しても良い。また、前方レーダ装置61がフロントカウル51ではなく、別の部材(例えば前方レーダ装置61を収容するための収容ケース)に覆われている構成であっても良い。
【0065】
<後方レーダ装置62の配置>上記実施形態では、後方レーダ装置62は、尾灯46と同じ部材であるリアフレームカバー27に取り付けられているが、別の箇所に取り付けられていても良い。例えば、後方レーダ装置62をリアフラップ28に取り付けても良い。また、リアフレームカバー27とリアフラップ28の間に収容ケースを取り付け、この収容ケースの内部に後方レーダ装置62を配置しても良い。この場合であっても、対振動性を考慮して、リアフラップ28側ではなく、リアフレームカバー27側に収容ケースを固定することが好ましい。
【0066】
<前方レーダ装置61及び後方レーダ装置62の特性>上記実施形態では、前方レーダ装置61及び後方レーダ装置62は、上下方向及び左右方向に広がりを有するが、前後方向に高い指向性を有する構成であっても良い。この場合、前方レーダ装置61は自動二輪車1の前方のみを探知し左前方及び右前方を探知対象としない。同様に、後方レーダ装置62は自動二輪車1の後方のみを探知し左後方及び右後方を探知対象としない。
【0067】
<本発明の適用対象>上記実施形態では、スポーツツアラータイプの自動二輪車に本発明を適用する例を説明したが、他の自動二輪車(オフロードタイプ、ネイキッドタイプ、クルーズタイプ、スポーツタイプ等)にも本発明を適用できる。従って、自動二輪車は、例えばウインドシールド32を備えていなくても良い。また、フロントカウル51及びサイドカウル52の有無又は形状が異なっていても良い。
【符号の説明】
【0068】
1 自動二輪車
10 車体フレーム
31 前照灯
46 尾灯
61 前方レーダ装置(レーダ装置)
62 後方レーダ装置(レーダ装置)
図1
図2
図3
図4
図5