(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】人検知システムおよび人検知方法
(51)【国際特許分類】
G01V 8/20 20060101AFI20220202BHJP
G01J 1/42 20060101ALI20220202BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
G01V8/20 Q
G01J1/42 B
G01J1/42 J
G01J1/02 H
G01J1/02 S
(21)【出願番号】P 2018048290
(22)【出願日】2018-03-15
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(73)【特許権者】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【氏名又は名称】中村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100106622
【氏名又は名称】和久田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100138357
【氏名又は名称】矢澤 広伸
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 浩巳
(72)【発明者】
【氏名】横田 雄史
(72)【発明者】
【氏名】百田 真史
(72)【発明者】
【氏名】射場本 忠彦
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-093103(JP,A)
【文献】特開2016-170109(JP,A)
【文献】特開2010-256045(JP,A)
【文献】特開2009-169717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G01J 1/00-1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知領域内の対象体の放射する赤外線量を熱電効果を用いて検知する1以上の赤外線センサと、
前記検知領域内の照度を検知する照度センサと、
前記1以上の赤外線センサおよび前記照度センサと接続する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記1以上の赤外線センサの検知領域内の照度を取得すると共に、前記1以上の赤外線センサの中で、前記取得した照度が所定の閾値を超えた検知領域に対応付けされた赤外線センサによる前記対象体の検知を無効化する無効化手段、
を備えることを特徴とする人検知システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記1以上の赤外線センサの中で、前記対象体の検知が有効な赤外線センサの検知領域から、前記無効化された検知領域に隣接する第1隣接検知領域を特定する特定手段と、
前記第1隣接検知領域内で検知された前記対象体の数量、および、前記第1隣接検知領域内の前記対象体の分布の少なくとも一方を含む検知情報を所定の周期で取得すると共に、前記第1隣接検知領域から取得した前記検知情報を時刻情報に対応付けて蓄積する蓄積手段と、
前記蓄積された前記検知情報の時系列から前記無効化された検知領域に対する前記対象体の出入りを推定する推定手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の人検知システム。
【請求項3】
前記検知情報は、前記検知領域を均等分割した複数の分割領域毎の前記対象体の有無を含み、
前記特定手段は、前記第1隣接検知領域内の前記無効化された検知領域との間の境界に接する分割領域を特定し、
前記推定手段は、前記検知情報の時系列の中で前記特定された分割領域中の前記対象体の有無の変化から、前記無効化された検知領域に対する前記対象体の出入りを推定する、ことを特徴とする請求項2に記載の人検知システム。
【請求項4】
前記推定手段は、前記蓄積された前記検知情報の時系列から、前記第1隣接検知領域内で一定期間に亘り前記対象体が検知されない非検知領域を特定すると共に、前記蓄積された前記検知情報の時系列の中で前記特定された非検知領域を除外した前記第1隣接検知領域中の前記対象体の有無の変化から、前記無効化された検知領域に対する前記対象体の出入りを推定する、ことを特徴とする請求項2に記載の人検知システム。
【請求項5】
前記推定手段は、前記検知領域内の壁、扉、家具、通路、設備の少なくとも一つの位置情報を含む建築空間情報に基づいて前記非検知領域を特定する、ことを特徴とする請求項4に記載の人検知システム。
【請求項6】
前記特定手段は、前記1以上の赤外線センサの設置位置と前記1以上の赤外線センサの非設置領域とを含むマップ情報に基づいて、前記1以上の赤外線センサの検知領域から前記非設置領域に隣接する第2隣接検知領域を特定し、
前記推定手段は、蓄積された前記検知情報の時系列の中で前記特定された第2隣接検知領域中の前記対象体の有無の変化から前記非設置領域に対する前記対象体の出入りを推定する、ことを特徴とする請求項2に記載の人検知システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記推定手段によって前記無効化された検知領域に対する前記対象体の出入りが推定
されたときには、前記無効化された検知領域内の前記対象体が推定されたものであることを示す情報を付加して出力する出力手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項2から5の何れか一項に記載の人検知システム。
【請求項8】
検知領域内の対象体の放射する赤外線量を熱電効果を用いて検知する1以上の赤外線センサと、前記検知領域内の照度を検知する照度センサと、前記1以上の赤外線センサおよび前記照度センサと接続する制御装置とを有する人検知システムにおいて、
前記制御装置が、
前記1以上の赤外線センサの検知領域内の照度を取得すると共に、前記1以上の赤外線センサの中で、前記取得した照度が所定の閾値を超えた検知領域に対応付けされた赤外線センサによる前記対象体の検知を無効化する無効化ステップ、
を実行することを特徴とする人検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーモパイルセンサを用いた人検知システムおよび人検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体等の対象物から放射される赤外線を検知する非接触型の赤外線センサが知られている。このような赤外線センサとして、例えば、焦電型の赤外線センサやサーモパイル(Thermopile;熱電堆)型の赤外線センサ(以下、「サーモパイルセンサ」とも称す)が例示される。前者は、例えば、強誘電体やセラミック等で構成された焦電体(焦電素子)に生じる焦電効果(Pyroelectric effect)を用いて対象物から放射された赤外線
量の変化を検知するセンサである。また、後者は、2種類の金属接点間の温度差に応じた熱起電力が発生するゼーベック効果(Seebeck effect)を用いて対象物から放射された赤外線量を検知するセンサである。
【0003】
焦電型赤外線センサは、対象物からの赤外線量が変化する現象を検知すること、例えば、検知対象領域内への人体等の入出を検知することは可能である。一方、検知対象領域内で人体等が静止した状況では検知した赤外線量が一定状態から変化しないために人体等の検知が困難になる。しかし、サーモパイルセンサにおいては、人体等から放射される赤外線量を直接的に電気エネルギー(熱起電力)として検知できるため、赤外線量が一定状態から変化しない静止状態の人体等の検出が可能になる。
【0004】
サーモパイルセンサを用いることで、検知対象領域内に存在する上記対象物の温度計測、上記対象物の在/不在や偏り(分布)を把握することが可能になる。例えば、1以上のサーモパイルセンサを組合せて人検知システムを構成し、該人検知システムと空調設備や照明設備とを組合せることで、オフィスや家屋等の室内における人体等の在/不在や室内位置、位置分布に応じた空調制御、照明制御が可能になる。また、1以上のサーモパイルセンサで検知された上記対象物の時間的な位置変化(動的推移)を把握することで、例えば、プライバシー保護が求められるエリアにおける人体等の見守りや監視が可能になる。
【0005】
なお、本明細書で説明する技術に関連する技術が記載されている先行技術文献としては、以下の特許文献が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、サーモパイル型赤外線センサは、対象物から放射された赤外線量を電気エネルギーとして検知する。このため、例えば、オフィスや家屋等の室内に設けられたサーモパイル型赤外線センサの検知対象領域内の対象物(例えば、床面、壁面、机等)が日射等によって温度上昇した場合には、温度上昇した対象物を人体として誤検知する可能性がある。
【0008】
人検知システムを構成する際において、上記誤検知の防止のため、例えば、室内の窓側等の日射が射し込む範囲をサーモパイルセンサの設置個所から除外したり、日射が射し込む範囲に設けられたサーモパイルセンサの検知機能を予め無効に固定する等の対策が行われていた。
【0009】
しかしながら、上記対策ではサーモパイルセンサの日射による誤検知の防止が可能であっても、室内に存在する人体等を検知する人検知システムの検知精度の向上には至らない。人検知システムの検知精度の向上のためには、室内に日射が射し込む範囲が存在してもサーモパイルセンサを用いて人体等の検知が可能であることが好ましい。
【0010】
本発明は、上記の課題を考慮してなされたものであり、サーモパイルセンサを用いた人検知システムの精度向上を可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、人検知システムによって例示される。すなわち、人検知システムは、検知領域内の対象体の放射する赤外線量を熱電効果を用いて検知する1以上の赤外線センサと、前記検知領域内の照度を検知する照度センサと、前記1以上の赤外線センサおよび前記照度センサと接続する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記1以上の赤外線センサの検知領域内の照度を取得すると共に、前記1以上の赤外線センサの中で、前記取得した照度が所定の閾値を超えた検知領域に対応付けされた赤外線センサによる前記対象体の検知を無効化する無効化手段、を備えることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、室内に日射が射し込む範囲が存在しても照度センサを介して検出された照度データの照度変化に応じて、赤外線センサによる検知領域内の人体検知の有効化・無効化が設定できる。室内に日射が射し込む範囲が存在しても赤外線センサを用いて人体等の検知が可能になる。
【0013】
また、本発明においては、前記制御装置は、前記1以上の赤外線センサの中で、前記対象体の検知が有効な赤外線センサの検知領域から、前記無効化された検知領域に隣接する第1隣接検知領域を特定する特定手段と、前記第1隣接検知領域内で検知された前記対象体の数量、および、前記第1隣接検知領域内の前記対象体の分布の少なくとも一方を含む検知情報を所定の周期で取得すると共に、前記第1隣接検知領域から取得した前記検知情報を時刻情報に対応付けて蓄積する蓄積手段と、前記蓄積された前記検知情報の時系列から前記無効化された検知領域に対する前記対象体の出入りを推定する推定手段と、をさらに備えるようにしてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、無効化した検知領域に隣接する他の赤外線センサの検知領域内で検知された人体検知情報に基づいて、該無効化した検知領域への人体等の出入りが推定できる。室内に日射が射し込む範囲が存在する場合であっても、隣接する他の赤外線センサの検知領域内で検知された人体検知情報に基づく人検知精度の向上が可能になる。
【0015】
また、本発明においては、前記検知情報は、前記検知領域を均等分割した複数の分割領域毎の前記対象体の有無を含み、前記特定手段は、前記第1隣接検知領域内の前記無効化された検知領域との間の境界に接する分割領域を特定し、前記推定手段は、前記検知情報の時系列の中で前記特定された分割領域中の前記対象体の有無の変化から、前記無効化された検知領域に対する前記対象体の出入りを推定するようにしてもよい。かかる構成によれば、無効化した検知領域との間の境界に接する分割領域で検知された人体検知情報に基づく人検知精度の向上が可能になる。
【0016】
また、本発明においては、前記推定手段は、前記蓄積された前記検知情報の時系列から、前記第1隣接検知領域内で一定期間に亘り前記対象体が検知されない非検知領域を特定すると共に、前記蓄積された前記検知情報の時系列の中で前記特定された非検知領域を除外した前記第1隣接検知領域中の前記対象体の有無の変化から、前記無効化された検知領域に対する前記対象体の出入りを推定するようにしてもよい。かかる構成によれば、無効
化した検知領域への人体等の出入りの推定精度を高めると共に推定に係る処理負担を軽減できる。
【0017】
また、本発明においては、前記推定手段は、前記検知領域内の壁、扉、家具、通路、設備の少なくとも一つの位置情報を含む建築空間情報に基づいて前記非検知領域を特定するようにしてもよい。かかる構成によれば、無効化した検知領域への人体等の出入りの推定精製度をさらに高め、処理負担を軽減できる。
【0018】
また、本発明においては、前記特定手段は、前記1以上の赤外線センサの設置位置と前記1以上の赤外線センサの非設置領域とを含むマップ情報に基づいて、前記1以上の赤外線センサの検知領域から前記非設置領域に隣接する第2隣接検知領域を特定し、前記推定手段は、蓄積された前記検知情報の時系列の中で前記特定された第2隣接検知領域中の前記対象体の有無の変化から前記非設置領域に対する前記対象体の出入りを推定するようにしてもよい。かかる構成によれば、非設置領域に隣接する他の赤外線センサの検知領域内で検知された人体検知情報に基づいて、非設置領域への人体等の出入りが推定できる。
【0019】
また、本発明においては、前記制御装置は、前記推定手段によって前記無効化された検知領域に対する前記対象体の出入りが推定されたときには、前記無効化された検知領域内の前記対象体が推定されたものであることを示す情報を付加して出力する出力手段と、をさらに備えるようにしてもよい。かかる構成によれば、無効化された検知領域、あるいは、赤外線センサの非設置領域の人体検知情報が推定状態であることを識別できる。
【0020】
また、本発明は、検知領域内の対象体の放射する赤外線量を熱電効果を用いて検知する1以上の赤外線センサと、前記検知領域内の照度を検知する照度センサと、前記1以上の赤外線センサおよび前記照度センサと接続する制御装置とを有する人検知システムにおいて、前記1以上の赤外線センサの検知領域内の照度を取得すると共に、前記1以上の赤外線センサの中で、前記取得した照度が所定の閾値を超えた検知領域に対応付けされた赤外線センサによる前記対象体の検知を無効化する無効化ステップを実行することを特徴とする人検知方法であってもよい。
【0021】
なお、本発明は、上記手段や処理の少なくとも一部を含む人検知システム、あるいは、照明制御等の制御システムとして特定することができる。上記処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、サーモパイルセンサを用いた人検知システムの精度向上を可能とする技術が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態に係るサーモパイルセンサのブロック構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係るサーモパイルセンサの円筒状の筐体に収納された形態を床面側から視た斜視図である。
【
図3】実施形態に係るサーモパイルセンサの人体等の検知範囲を説明する図である。
【
図4】実施形態に係るサーモパイルセンサの検知温度特性の一例を示す図である。
【
図5】検知範囲の細分化された分割領域を説明する図である。
【
図6】実施形態に係る人検知システムの構成の一例を示す図である。
【
図7】日射が射し込む範囲が存在する室内での人体検知処理を説明する図である。
【
図8】デイジーチェーン接続によるマルチドロップ構成の一例を示す図である。
【
図9】人検知システムにおける通信手順を説明する図である。
【
図10】16分割時のサーモパイルセンサのレスポンス応答の一例を示す図である。
【
図11】人体等の検知について分割領域毎に許可/不許可とする形態を説明する図である。
【
図12】実施形態に係る検知処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】実施形態に係る検知処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、一実施形態に係る人検知システムについて説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本人検知システムは実施形態の構成には限定されない。
【0025】
<1.サーモパイルセンサ>
まず、本実施形態に係る人検知システムを構成するサーモパイルセンサについて説明する。
(ブロック構成)
図1は、サーモパイルセンサ2のブロック構成の一例を示す図である。サーモパイルセンサ2は、検知対象領域内に存在する人体等の対象物から放射される赤外線を検知する非接触型の赤外線センサである。サーモパイルセンサ2は、
図1に例示のように、MCU(Micro Control Unit)2eと接続するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)非接触温度センサ2aと、照度センサ2bとを含む。また、サーモパイルセンサ2は、MCU2eと接続する電源IF(Interface)2fと、通信IF2gと、入出力IF2hと、
表示LED(2c、2d)とを含む。
【0026】
MEMS非接触温度センサ2aは、MEMSデバイスであるサーモパイル素子(熱電対列)が複数に配列された赤外線アレイセンサである。サーモパイル素子は、2種類の金属(例えば、ビスマスとアンチモン)接点間の温度差に応じた熱起電力を通じて、対象物から放射される赤外線量に応じた温度を計測する。
【0027】
例えば、MEMS非接触温度センサ2aは、図示しない光学系(レンズ)を介して、検知対象領域内の対象物から放射される赤外線を集光すると共に、集光した赤外線をサーモパイル素子の温接点(hot junction)が集中して接触された感熱部分に吸収させる。MEMS非接触温度センサ2aは、センサ内部の温度の変動し難い箇所に接触させたサーモパイル素子の冷接点(cold junction)と上記温接点との間の温度差に応じた熱起電力を介
して対象物の温度を計測する。MEMS非接触温度センサ2aで計測された温度はMCU2eに出力される。
【0028】
照度センサ2bは、フォトダイオードやフォトトランジスタ等の光検知デバイスである。照度センサ2bは、MEMS非接触温度センサ2aの検知対象領域の照度を検知し、検知した照度をMCU2eに出力する。
【0029】
表示LED(2c、2d)は、サーモパイルセンサ2の動作状態を示すLEDである。表示LED2cは、例えば、サーモパイルセンサ2が通電状態になり、通信IF2gを介して他の機器との間で通信可能状態の場合に点灯(例えば、緑色点灯)する。表示LED2cは、サーモパイルセンサ2が上記状態を満たす場合には常時点灯される。また、表示LED2dは、例えば、サーモパイルセンサ2の検知対象領域内において、人体等を検知した場合に点灯(例えば、黄色点灯)し、人体等が検知されない場合に消灯する。
【0030】
MCU2eは、サーモパイルセンサ2全体の制御を行う制御ユニットである。MCU2eには、図示しないMPU(Microprocessor)等のプロセッサ、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等が含まれる。MCU2eの
プロセッサは、ROM等に記憶されたプログラムや各種データを読み出して実行することで周辺機器の制御を行い、所定の目的に合致したサーモパイルセンサ2の機能を提供する。
【0031】
電源IF2fは、サーモパイルセンサ2を駆動するための電源インターフェースである。電源IF2fは、例えば、図示しない接続端子を介して供給されたDC電力からサーモパイルセンサ2を構成する各種デバイス用のDC電力を生成し、生成されたDC電力を各種デバイスに供給する。
【0032】
通信IF2gは、サーモパイルセンサ2と接続する他の機器(他のサーモパイルセンサ2を含む)との通信インターフェースである。サーモパイルセンサ2が使用可能な通信規格として、RS-485規格のシリアル通信が例示される。入出力IF2hは、サーモパイルセンサ2の有する設定スイッチや出力端子等との入出力インターフェースである。
【0033】
サーモパイルセンサ2は、
図1に示す構成が円筒状の筐体に収納され、オフィスや家屋等の室内の天井に設置される。
図2に、円筒状の筐体に収納された形態のサーモパイルセンサ2を床面側から視た斜視図を例示する。
【0034】
図2に示すように、サーモパイルセンサ2の床面に対向する筐体面には、MEMS非接触温度センサ2a、照度センサ2b、表示LED2c、2d用の開口孔が設けられる。MEMS非接触温度センサ2a用の開口孔は、上記筐体面の粗中央部に設けられる。また、照度センサ2b、表示LED2c、2dの開口孔は、上記筐体面の粗中央部から相対的に離れた位置に、直線状に整列して設けられる。
【0035】
MEMS非接触温度センサ2aは、上記筐体面に設けられた開口孔を介して、検知対象領域内に存在する人体等の対象物から放射される赤外線を検知する。同様にして、照度センサ2bは、上記筐体面に設けられた開口孔を介して検知対象領域の照度を検知する。また、表示LED2c、2dは、上記筐体面に設けられた開口孔を介してサーモパイルセンサ2の動作状態を提示する。
【0036】
なお、サーモパイルセンサ2の円筒状の筐体の側面には、直径方向に一対の取付バネ2iが設けられる。サーモパイルセンサ2の筐体は、例えば、天井を構成する天井パネル等に設けられた取付孔に対し、上記開口孔が設けられた筐体面を床面と対向するように埋め込まれて設置される。直径方向に設けられた取付バネ2iは、円筒状の筐体が埋め込まれた取付孔の壁面を付勢し、天井パネル等に取付けられたサーモパイルセンサ2の筐体を固定する。
【0037】
(検知対象領域)
図3は、サーモパイルセンサ2の人体等の検知対象領域を説明する図である。
図3に示す検知対象領域(検知範囲)は、サーモパイルセンサ2をオフィスや家屋等の室内の天井に設置した場合の検知範囲例である。
図3において、矩形状の検知範囲4は、天井3に設置されたサーモパイルセンサ2の人体等を検知する検知対象領域を表す。
【0038】
サーモパイルセンサ2が設置される天井3の床面5からの高さが2.7mから3mの場合、矩形状の検知範囲4は、MEMS非接触温度センサ2a等の開口孔が設けられた筐体面から約2mの高さ位置に定義される。サーモパイルセンサ2の矩形状の検知範囲4は、例えば、MEMS非接触温度センサ2aの開口孔の直下を中心とした、約3.6m×3.6mの面積範囲になる。
【0039】
サーモパイルセンサ2は、矩形状の検知範囲4に存在する人体等の対象物から放射され
る赤外線に基づいて、人の在/不在を検知する。サーモパイルセンサ2は、例えば、検知する人体の周囲温度が16度から29度の範囲内において、人体の温度が周囲温度より相対的に4度以上高いことを条件として、検知範囲4に存在する人体を検知する。なお、サーモパイルセンサ2は、検知範囲4内を0.3m/sから1m/sの速度で移動する人体が検知可能である。
【0040】
また、サーモパイルセンサ2は、矩形状の検知範囲4に存在する人体等の対象物から放射される赤外線に基づいて対象物の温度を計測する。
図4に、サーモパイルセンサ2の検知温度特性の一例を示す。
【0041】
図4において、縦軸はMEMS非接触温度センサ2aを構成するサーモパイル素子の冷接点が接触されるセンサ内部の温度(参照温度(℃))を表し、横軸は計測される対象物の温度(対象物温度(℃))を表す。また、
図4のハッチングされた温度領域が、サーモパイルセンサ2で検出される対象物の温度範囲を表す。
【0042】
図4のハッチングされた温度領域に示すように、サーモパイルセンサ2は、5℃から50℃の温度範囲において、検知範囲4に存在する人体等の対象物温度を±3℃の精度で計測する。なお、サーモパイルセンサ2の温度計測に係る温度分解能(NETD:Noise Equivalent Temperature Difference(等価雑音温度差))は0.45℃である。
【0043】
なお、照度センサ2bは、サーモパイルセンサ2が取付けられたセンサ直下の床面5の照度を検知する。照度センサ2bは、例えば、センサ直下の床面5の照度を10ルクスから2000ルクスの検出範囲(検出精度:±5%FS)で検知する。また、照度センサ2bによって検知される照度は、検知範囲4内の平均値であってもよい。
【0044】
既に説明したように、サーモパイルセンサ2のMEMS非接触温度センサ2aは、1以上のサーモパイル素子(熱電対列)から構成される。MEMS非接触温度センサ2aを構成する1以上のサーモパイル素子は、それぞれに、上述した人体の温度、人の在/不在を検知することが可能である。
【0045】
但し、
図3に示すサーモパイルセンサ2の矩形状の検知範囲4は、MEMS非接触温度センサ2aを構成する1以上のサーモパイル素子数に対応した分割領域に細分化される。MEMS非接触温度センサ2aを構成する1以上のサーモパイル素子は、それぞれに対応する細分化された検知範囲4内の分割領域における人体の温度、人の在/不在を検知する。
【0046】
図5(1)、(2)は、検知範囲4の細分化された分割領域を説明する図である。
図5(1)は、サーモパイル素子を縦方向に2素子および横方向に2素子に配列した「2×2」素子形態における分割領域の説明図である。また、
図5(2)は、サーモパイル素子を縦方向に4素子および横方向に4素子に配列した「4×4」素子形態における分割領域の説明図である。なお、
図5(1)、(2)に示す形態は、分割領域毎に人体の温度、人の在/不在を検知する形態の一例である。
【0047】
図5(1)に示すように、「2×2」素子形態においては、
図3に示す検知範囲4は、サーモパイル素子数に対応して均等に4分割される。4分割された検知範囲4の各分割領域は、それぞれ約1.8m×1.8mの矩形状の面積範囲を有することになる。
【0048】
「2×2」素子形態において、左上に配列されたサーモパイル素子は番号「1」が付与された左上の分割領域に対応して人体等の検知を行い、右上に配列されたサーモパイル素子は番号「2」が付与された右上の分割領域に対応して人体等の検知を行う。同様にして
、左下に配列されたサーモパイル素子は番号「3」が付与された左下の分割領域に対応して人体等の検知を行い、右下に配列されたサーモパイル素子は番号「4」が付与された右下の分割領域に対応して人体等の検知を行う。
【0049】
図5(1)に示す「2×2」素子形態では、均等分割された検知範囲4の分割領域毎に人体の温度、人の在/不在が検知される。このため、
図5(1)に示す「2×2」素子形態では、サーモパイルセンサ2は、分割領域毎の人の在/不在に基づいて最大4人までの人数を検知できると共に、検知範囲4内に存在する人の分布を特定することが可能になる。
【0050】
サーモパイル素子を縦方向に4素子および横方向に4素子に配列した「4×4」素子形態においても、「2×2」の形態と同様である。すなわち、
図5(2)に示すように、
図3に示す検知範囲4は、サーモパイル素子数に対応して16分割される。そして、16分割された検知範囲4の各分割領域は、それぞれ約0.9m×0.9mの矩形状の面積範囲を有する。
【0051】
また、「4×4」素子形態においては、左上に配列されたサーモパイル素子では番号「1」が付与された左上の分割領域に対応して人体等の検知が行われ、右上に配列されたサーモパイル素子では番号「4」が付与された右上の分割領域に対応して人体等の検知が行われる。同様にして、左下に配列されたサーモパイル素子では番号「13」が付与された左下の分割領域に対応して人体等の検知が行われ、右下に配列されたサーモパイル素子は番号「14」が付与された右下の分割領域に対応して人体等の検知が行われる。
【0052】
図5(2)に示す「4×4」素子形態では、サーモパイルセンサ2は、約0.9m×0.9mの分割領域毎の人の在/不在に基づいて最大16人までの人数を検知できると共に、検知範囲4内に存在する人の分布を特定することが可能になる。「4×4」素子形態では、約3.6m×3.6mの検知範囲4内に存在する人の分布が、約0.9m×0.9mの面積範囲の精度で特定可能になる。
【0053】
<2.人検知システム>
次に、本実施形態に係る人検知システムについて説明する。
(システム構成)
図6は、本実施形態に係る人検知システム1の構成の一例を示す図である。
図6に示す人検知システム1は、工場や学校、企業のオフィス、家屋等の室内における人体等の在/不在や位置分布に応じて住環境を制御する制御システムと組合せられる形態の一例である。このような住環境を制御する制御システムとして、例えば、空調制御システム、照明制御システム等が例示される。但し、人検知システム1は、高齢者施設等に入居する人体等の見守りや監視を行う見守りシステムと組合せられるとしてもよい。人検知システム1が検知した人体等の在/不在や位置分布等の情報を用いて各種サービス等が提供される制御システムであればよい。また、人検知システム1は、上記制御システムの一部を構成するとしてもよい。
【0054】
図6に例示の人検知システム1は、1以上のサーモパイルセンサ2(2#1から2#N:Nは1以上の整数)と接続される制御装置10を含む。
図1から
図5を用いて説明したように、室内の天井に設けられたサーモパイルセンサ2は、MEMS非接触温度センサ2aの直下位置を中心として約3.6m×3.6mの面積範囲の検知範囲4を有する。人検知システム1は、1以上のサーモパイルセンサ2を備えることで、オフィス等の広範囲な室内における人体等の在/不在や位置分布、時間的な位置変化(動的推移)の検知を可能にする。
【0055】
図6において、制御装置10は、接続バス16によって相互に接続されたCPU(Central Processing Unit)11、主記憶装置12、補助記憶装置13、通信IF14、入出
力IF15を有する。主記憶装置12および補助記憶装置13は、制御装置10が読み取り可能な記録媒体である。制御装置10は、CPU11が補助記憶装置13に記憶されたプログラムを主記憶装置12の作業領域に実行可能に展開し、プログラムの実行を通じて周辺機器の制御を行うことで、所定の目的に合致した機能を提供する。
【0056】
CPU11は、制御装置10全体の制御を行う中央処理演算装置である。CPU11は、MPU(Microprocessor)、プロセッサとも呼ばれる。但し、CPU11は、単一のプロセッサに限定される訳ではなく、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、単一のソケットで接続される単一のCPU11がマルチコア構成であってもよい。CPU11は、補助記憶装置13に記憶されたプログラムに従って処理を行う。
【0057】
主記憶装置12は、CPU11がプログラムやデータをキャッシュしたり、作業領域を展開したりする記憶媒体である。主記憶装置12は、例えば、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。補助記憶装置13は、CPU11により実行されるプログラムや、動作の設定情報などを記憶する記憶媒体である。補助記憶装置13は、例えば、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等である。通信
IF14は、制御装置10に接続される有線、無線ネットワーク等とのインターフェースである。ネットワークには、サーモパイルセンサ2が使用可能なRS-485規格のシリアル通信が含まれる。入出力IF15は、制御装置10に接続する機器との間でデータの入出力を行うインターフェースである。なお、上記の構成要素はそれぞれ複数に設けられてもよいし、一部の構成要素を設けないようにしてもよい。
【0058】
制御装置10においては、通信IF14を介し、サーモパイルセンサ2で検知された検知範囲4内の人体等の在/不在、人数、人体等の温度が取得される。また、通信IF14を介し、サーモパイルセンサ2の照度センサ2bを介して検知されたセンサ直下の床面5の照度が取得される。同様にして、入出力IF15を介して、リモコンやポインティングデバイス、キーボード等の入力デバイスを介した操作入力が受け付けられる。また、入出力IF15を介して、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示デバイスへの表示データや情報が出力される。
【0059】
なお、制御装置10で実行される処理の内、少なくとも一部の処理がDSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によっ
て提供されてもよい。また、処理の少なくとも一部が、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、数値演算プロセッサ、ベクトルプロセッサ等の専用LSI(large scale integration)、その他のデジタル回路であってもよい。また、処理の少なくとも一部にアナログ回路を含むとしてもよい。
【0060】
(本実施形態の機能)
本実施形態に係る人検知システム1は、サーモパイルセンサ2の照度センサ2bを介して検出されたセンサ直下の床面5の照度データが所定の閾値を超えることを条件として、サーモパイルセンサ2の検知範囲4における人体検知を無効にする。照度データに基づく人体検知の無効化は、検知範囲4の面積範囲を単位として行われる。
【0061】
この結果、本実施形態に係る人検知システム1は、室内に日射が射し込む範囲が存在しても照度センサ2bを介して検出された照度データが所定の閾値以下の場合には、サーモパイルセンサ2による人体検知を有効にすることができる。例えば、雨天時や曇天時、夜間等の室内に日射が射し込まない状況下では、サーモパイルセンサ2を介した人体検知が
可能になる。
【0062】
ここで、照度データに対する所定の閾値は、予め実験的に求めることができる。例えば、人検知システム1を備える制御システムの施工者や管理者は、天井等に設置されたサーモパイルセンサ2を介し、日射等が射し込む室内範囲の照度データを取得する。上記管理者等は、例えば、週単位、月単位、季節単位等で変化する日射等が射し込む室内範囲の照度データを取得する。そして、上記管理者等は、例えば、取得した照度データに基づいて上記所定の閾値を決定するとすればよい。決定された上記所定の閾値は、例えば、制御装置10の補助記憶装置13等に格納される。なお、照度データに対する所定の閾値は、上記週単位、月単位、季節単位等で変化する日射等を反映し、日歴、月歴、季節等に応じて変更するとしてもよい。
【0063】
なお、照度データは、例えば、人検知システム1と組合せられる制御システム(例えば、照明制御システム)等が有する照度センサから取得するとしてもよい。少なくとも、サーモパイルセンサ2の検知範囲4や検知範囲4の一部を含む、室内の射が射し込む範囲の照度データが取得可能であればよい。制御装置10は、例えば、通信IF14を介して制御システム等が有する照度センサで検出された照度データを取得するとすればよい。なお、以下では、照度データはサーモパイルセンサ2の照度センサ2bで検出された照度データとして説明する。
【0064】
また、本実施形態に係る人検知システム1は、上記照度データに基づく検知範囲4の人体検知を無効化した場合には、無効化した検知範囲4に隣接する他のサーモパイルセンサ2の検知範囲内で検知された人体検知情報に基づいて、該無効化した検知範囲4への人体等の出入りを推定する。
【0065】
例えば、
図1から
図5を用いて説明したように、サーモパイルセンサ2で検知される人検知情報は、検知範囲4内の人体等の在/不在、人数、人体等の温度である。検知範囲4内の人体等の在/不在は、サーモパイル素子の配列に応じて等分割された分割領域毎に検知される。人検知システム1は、例えば、分割領域毎に検知された人体等の在/不在の時間的推移(動的変化)と、検知範囲4内でカウントされた人数の時間的変化を組合せることで隣接する検知範囲間の人体等の出入りを推定することが可能になる。
【0066】
人検知システム1は、無効化した検知範囲4に隣接する他のサーモパイルセンサ2の検知範囲内で検知された人体検知情報に基づいて、該無効化した検知範囲4への人体等の出入りを推定することで、人検知精度を向上させることが可能になる。本実施形態に係る人検知システム1では、室内に日射が射し込む範囲が存在する場合であっても、隣接する他のサーモパイルセンサ2の検知範囲内で検知された人体検知情報に基づく人検知精度の向上が可能になる。
【0067】
なお、上述した推定の際に、人検知システム1は、所定期間に継続して人体等が検知されていない検知範囲4、あるいは、検知範囲4内の分割領域を除外するとしてもよい。本実施形態に係る人検知システム1は、所定期間に継続して人体等が検知されていない検知範囲4、あるいは、検知範囲4内の分割領域を除外することで、無効化した検知範囲への出入りの推定精度を高めると共に推定に係る処理負担を軽減することが可能になる。
【0068】
本実施形態に係る人検知システム1によれば、サーモパイルセンサ2を用いた人検知システムの精度向上が可能になる。
【0069】
<3.処理例>
次に、
図7を参照し、本実施形態に係る人検知システム1の人体検知処理を説明する。
図7は、日射が射し込む範囲が存在する室内での人体検知処理を説明する図である。
図7の説明例においては、人検知システム1は、16台のサーモパイルセンサ2(2#1から2#16)を備える形態である。
図7に示す領域B1から領域B8、領域C1から領域C8は、それぞれ天井に設置されたサーモパイルセンサ2の検知範囲4を表す。
【0070】
例えば、領域B1はサーモパイルセンサ2#1の検知範囲4に対応し、領域B8はサーモパイルセンサ2#8の検知範囲4に対応する。また、領域C1はサーモパイルセンサ2#9の検知範囲4に対応し、領域C8はサーモパイルセンサ2#16の検知範囲4に対応する。
図7においてハッチングされた領域C1、C2、C3、C4、C5、C7は、窓等を介して日射が射し込まれた室内領域を表す。
【0071】
また、
図3から
図5を用いて説明したように、サーモパイルセンサ2の検知範囲4は、MEMS非接触温度センサ2aを構成する1以上のサーモパイル素子数に対応した分割領域に細分化可能である。
図7の説明例では、各サーモパイルセンサ2は「4×4」のサーモパイル素子形態で構成され、各検知範囲4はそれぞれのサーモパイル素子に対応付けられた検知領域、すなわち16分割された分割領域に細分化される。細分化された各分割領域においては、検知範囲4内に存在する人の分布が分割領域の面積範囲で特定することが可能になる。
【0072】
図7の領域B1に示す、分割領域U1からU16は、「4×4」の素子形態で16分割された検知範囲4の細分化領域を表す。
図7に示す領域B2から領域B8、領域C1から領域C8についても同様である。
【0073】
なお、
図7において、ハッチングされた分割領域、例えば、領域B2の分割領域U6およびU10は、サーモパイルセンサ2を介して人体等の存在が検知された領域を表す。領域B3の分割領域U16、領域B4の分割領域U13、領域B5の分割領域U7、領域B7の分割領域U13およびU14、領域B8の分割領域U6およびU10、領域C6の分割領域U1、領域C8の分割領域U5およびU13についても同様である。
【0074】
人検知システム1では、例えば、
図8に示す接続形態を用いて、制御装置10とサーモパイルセンサ2#1からサーモパイルセンサ2#16とが接続される。
図8は、デイジーチェーン接続によるマルチドロップ構成の一例である。
図8の接続形態において、太実線はRS-485等の通信接続を表し、実線は電源接続を表す。なお、
図8の接続形態では、制御装置10から各サーモパイルセンサ2に電源を供給する形態としているが、例えば、人検知システム1と組合せられる制御システム側から電源供給を行うとしてもよい。
【0075】
人検知システム1は、
図8に示す形態で接続された各サーモパイルセンサ2から照度データを取得し、該取得した照度データに基づいてサーモパイルセンサ2毎に、検知範囲4内の人体等の検知を無効化する。また、人検知システム1では、無効化されたサーモパイルセンサ2に隣接する他のサーモパイルセンサ2が特定されると共に、該特定された他のサーモパイルセンサ2の検知範囲4内の人検知情報に基づいて、無効化した検知範囲内への人等の出入り等が推定される。
【0076】
図8のデイジーチェーン接続によるマルチドロップ構成で通信接続された人検知システム1では、同一バス上に最大16台のサーモパイルセンサ2が接続される。人検知システム1では、例えば、制御装置10をマスタ機器とし、デイジーチェーン接続された各サーモパイルセンサ2をスレーブ機器として、マスタ-スレーブ方式による通信が行われる。なお、
図8の接続形態では、デイジーチェーン接続されたバス上の最終段のサーモパイルセンサ2#16においては、例えば、終端抵抗=120Ωを介して通信伝送路が終端される。通信伝送路の終端設定は、例えば、サーモパイルセンサ2#16の有する設定スイッ
チ等により設定される。
【0077】
図8の接続形態においては、同一バス上に接続された、各サーモパイルセンサ2に対して一意に識別するIDアドレスが割当てられる。各サーモパイルセンサ2では、例えば、それぞれの内部に有するDIPスイッチ(Dual In-line Package switch)等を介してI
Dアドレスが設定される。但し、人検知システム1の制御装置10が、同一バス上に接続された各サーモパイルセンサ2に対して一意に識別するIDアドレスを割当て、該割当てたIDアドレスを管理するとしてもよい。人検知システム1と組合せられる各種制御システムの規模に応じてIDアドレスが管理できる。
【0078】
図9は、人検知システム1における通信手順を説明する図である。
図9は、制御装置10をマスタ機器とし、デイジーチェーン接続された各サーモパイルセンサ2(2#1、2#2)をスレーブ機器としてIDアドレスを指定して通信を行う、マスタ-スレーブ方式の通信手順の一例である。このような通信手順として、例えば、Modicon社のModbus(登録商標) ProtocolのRTUモードに準拠した通信手順が例示される。なお、上記通信手順においては、IDアドレスを指定する通信以外に、マスタ機器が同一バス上に接続された1以上のサーモパイルセンサ2に対して一斉にデータ通信を行うブロードキャストが可能である。
【0079】
図9に示すように、人検知システム1では、バス上に接続された各スレーブ機器の起動完了(例えば、通電状態後の通信可能状態)を契機として、マスタ機器と各スレーブ機器との間の通信が可能になる。例えば、マスタ機器である制御装置10は、各スレーブ機器に対する電源供給、あるいは、人検知システム1と組合せられる制御システム側からの電源供給の通知を受け、所定期間(「起動待ちt1」)経過後に、スレーブ機器への通信を開始するとすればよい。なお、起動完了後のスレーブ機器であるサーモパイルセンサ2では、例えば、表示LED2cが緑色点灯される。
【0080】
人検知システム1では、例えば、バス上に接続された各スレーブ機器とマスタ機器との間で上記Modicon社のModbus(登録商標) ProtocolのRTUモードに準拠したシリアル通信が行われる。マスタ機器の制御装置10は、通信対象のスレーブ機器のIDアドレスを指定して各種コマンドを送信(t2、t4、t6)する。各スレーブ機器はバス上の通信データを監視し、該通信データが自スレーブ機器のIDアドレスを含む場合には、コマンドに対応したレスポンスを応答(t3、t5、t7)する。
図9に示すように、各スレーブ機器は、各種コマンドが含まれる通信データの受信後、所定の内部処理時間(最大200msec)経過後に、コマンドに対応したレスポンスをマスタ機器に送信する。なお、人検知システム1は、バス上に接続された各スレーブ機器の所定大きさの温度状態変化をイベントとして検知し、当該検知を契機としたマスタ/スレーブ間のデータ通信を採用するとしてもよい。人検知システム1では、通信負荷を軽減すると共に、各スレーブ機器で検知された状態変化を捉えることができる。
【0081】
なお、
図9に示すように、上記シリアル通信においては、バス上に複数のスレーブ機器が存在する場合には、一つのスレーブ機器から送信されたレスポンス応答の受信完了から、他のスレーブ機器へのコマンド送信を行うまでの待機期間として約30msの期間が要求される。
【0082】
例えば、制御装置10は、バス上のサーモパイルセンサ2#1のIDアドレスを指定し、照度センサ2bで検出された照度データを要求するコマンドを送信する(t2)。サーモパイルセンサ2#1は、自身のIDアドレスと共に照度センサ2bで検出された照度データを含むレスポンスを制御装置10に送信する(t3)。制御装置10は、サーモパイルセンサ2#1のレスポンス受信完了後の上記待機期間経過後に、バス上のサーモパイル
センサ2#2のIDアドレスを指定し、照度センサ2bで検出された照度データを要求するコマンドを送信する(t4)。サーモパイルセンサ2#2からは、該サーモパイルセンサ2#2のIDアドレスと検出された照度データを含むレスポンスがバス上に送信される(t5)。
【0083】
また、上記シリアル通信においては、同一スレーブ機器に対する連続したコマンドの送信間隔は、先のコマンド送信開始時から次のコマンド送信開始まで、約300msec以上のインターバル期間が要求される。
【0084】
例えば、制御装置10は、サーモパイルセンサ2#1の照度データが所定の閾値を超える場合には、上記インターバル期間経過後に、サーモパイルセンサ2#1のIDアドレスを指定し、MEMS非接触温度センサ2aの人体検知を無効化するコマンドを送信する(t6)。サーモパイルセンサ2#1は、MEMS非接触温度センサ2aの人体検知に係る検知範囲4を無効に設定すると共に、人体検知が無効状態を示す情報(例えば、フラグ情報)を含むレスポンスを応答する(t7)。
【0085】
また、例えば、制御装置10は、サーモパイルセンサ2#1の照度データが所定の閾値以下の場合には、上記インターバル期間経過後に、MEMS非接触温度センサ2aを介して検知された検知範囲4内の人検知情報を要求するコマンドを送信する(t6)。上記要求コマンドは、サーモパイルセンサ2#1のIDアドレスを指定してバス上に送信される。サーモパイルセンサ2#1は、MEMS非接触温度センサ2aを介して検知された検知範囲4内の人検知情報を含むレスポンスを応答する(t7)。
【0086】
図10は、サーモパイルセンサ2の16分割時のレスポンス応答の一例である。
図10のテーブルTb2に示すように、人検知システム1を構成する各サーモパイルセンサ2は、16分割された検知範囲4の細分化領域(
図7、分割領域U1からU16)毎に検知された人体等の在/不在情報を、ワードデータを構成する各ビットの位置に対応付けて制御装置10に応答する。なお、テーブルTb2において、「ビット」行は、ワードデータのビット構成を表し、「エリア」行は、ビット位置に対応付けられた分割領域を表す。同様にして、「出力」行は、分割領域における人体等の在(1)/不在(0)のフラグ値を表す。
【0087】
図10のテーブルTb2においては、例えば、ワードデータを構成するMSB(Most Significant Bit:最上位ビット)が
図7に示す分割領域U16に対応し、LSB(Least Significant Bit:最下位ビット)が
図7に示す分割領域U1に対応する。
図10のテー
ブルTb2では、16分割された検知範囲4の内、分割領域U5、U6、U9、U10において人体等が検出されている。サーモパイルセンサ2は、ハッチング箇所に示すように、人体等が検出された各分割領域に対応する「出力」行のビット位置にフラグ値「1」を付与し、制御装置10に応答する。
【0088】
なお、サーモパイルセンサ2においては、1以上のサーモパイル素子を有する場合には、細分化された検知範囲4の各分割領域のそれぞれについて、人体等の検知を許可/不許可に設定することが可能である。制御装置10は、例えば、細分化された分割領域毎に人体等の検知を許可/不許可とするコマンドを、ワードデータを構成する各ビットの位置に対応付けてサーモパイルセンサ2に送信する。
【0089】
図11は、人体等の検知について分割領域毎に許可/不許可とする形態を説明する図である。
図11(1)は、16分割時の制御装置10からサーモパイルセンサ2へ送信される、分割領域毎の許可/不許可を設定するコマンドの一例である。
図11(2)は、人体等の検知について分割領域毎に許可/不許可が設定された場合の、サーモパイルセンサ2
の16分割時のレスポンス応答の一例である。
【0090】
図11(1)のテーブルTb3に示すように、制御装置10は、16分割された検知範囲4の分割領域毎に人体等の検知についての許可/不許可を、所定のコマンドと共にワードデータを構成する各ビットの位置に対応付けてサーモパイルセンサ2に送信する。テーブルTb3において、「ビット」行は、ワードデータのビット構成を表し、「エリア」行は、ビット位置に対応付けられた分割領域を表す。テーブルTb3の「ビット」行、「エリア」行は、テーブルTb2と同様である。同様にして、テーブルTb3の「出力」行は、分割領域における人体等の検知についての許可(0)/不許可(1)のフラグ値を表す。
【0091】
図11(1)のテーブルTb3においては、16分割された検知範囲4の内、分割領域U5、U6に対して、人体等の検知についての不許可が設定される。サーモパイルセンサ2は、制御装置10から送信された、分割領域毎の人体等の検知についての許可/不許可が指定されたワードデータを所定領域に保持する。そして、サーモパイルセンサ2は、制御装置10から検知範囲4内の人検知情報を要求するコマンドが送信された場合には、
図11(2)に示す形態でレスポンスを応答する。
【0092】
図11(2)に示すテーブルTb4は、
図10で説明したサーモパイルセンサ2の16分割時のレスポンス応答を示すテーブルTb2の構成と同様である。但し、サーモパイルセンサ2は、人体等の検知に対し不許可(
図11(1)の出力行のフラグ値「1」)が設定された分割領域U5、U6については、強制的にビット値を「0」に設定した状態でレスポンスを応答する。
【0093】
例えば、サーモパイルセンサ2においては、16分割された検知範囲4の内、分割領域U5、U6、U9、U10において人体等が検出されたと想定する。サーモパイルセンサ2は、不許可が指定された分割領域U5、U6に対応するビット値に「0」を挿入すると共に、人体等の検知に対して許可状態にある分割領域U9、U10については、
図11(2)のハッチング箇所に示すように、ビット値「1」を挿入してレスポンスを応答する。
【0094】
(ケース1)
図7に例示の説明図に戻り、人検知システム1では、制御装置10は、例えば、バス上に接続されたサーモパイルセンサ2#1からサーモパイルセンサ2#16の順に、それぞれが照度センサ2bを介して検出した照度データを取得する。
図7の、領域B1から領域B8および領域C1から領域C8のそれぞれに対応する照度データが、サーモパイルセンサ2#1からサーモパイルセンサ2#16を介して制御装置10に取得される。
【0095】
人検知システム1の制御装置10は、各サーモパイルセンサ2から取得した照度データに基づいて、領域B1から領域B8および領域C1から領域C8に対する日射による人体検知の有効/無効を設定する。制御装置10は、窓側の日射が射し込まれた室内領域である、領域C1、C2、C3、C4、C5、C7の照度データが所定の閾値を超えることを条件として上記領域の人体検知を無効化する。人体検知を無効化は、検知範囲4毎に設定される。上記領域に対応する各サーモパイルセンサ2には、MEMS非接触温度センサ2aの人体検知を無効化するコマンドが送信される。なお、上記領域C1、C2、C3、C4、C5、C7を除く各領域については、MEMS非接触温度センサ2aの人体検知を有効化するコマンドが送信される。
【0096】
但し、サーモパイルセンサ2では、MEMS非接触温度センサ2aの人体検知が無効化された状態であっても照度データの取得が可能である。人検知システム1の制御装置10は、人体検知を無効化した各サーモパイルセンサ2から定期的に照度データを取得するこ
とで、例えば、時間単位で日射が射し込む室内領域の照度データに基づく人体検知の有効/無効を設定することが可能になる。人検知システム1では、一旦、人体検知を無効化した検知範囲4の領域を、日射が射し込む室内領域の照度変化に応じて、再び人体検知を有効化することが可能になる。
【0097】
また、制御装置10は、サーモパイルセンサ2の分割領域毎に人体検知を無効化するとしてもよい。例えば、人検知システム1は、複数の照度センサを介して
図5(1)に示す4分割領域のそれぞれに対する照度データが取得可能であると想定する。制御装置10は、取得された照度データが所定の閾値を超えることを条件として、4分割領域内に存在する分割領域U1からU16を指定してそれぞれの人体検知を許可/不許可に設定すればよい。
【0098】
図7において、領域C1の分割領域U9、U10、U13、U14に対応する照度データが所定の閾値を超え、および、領域C1の分割領域U11、U12、U15、U16に対応する照度データが所定の閾値を超えた場合を想定する。制御装置10は、例えば、領域C1の分割領域U1からU8を指定して人体検知を許可すると共に、領域C1の分割領域U9からU16を指定して人体検知を不許可にすることができる。制御装置10は、分割領域毎に人体検知の許可/不許可を設定することで、照度データに基づく人体検知の有効/無効の設定精度を向上できる。
【0099】
(ケース2)
制御装置10は、上記照度データに基づいて対象領域の人体検知の無効化を設定したときに、対象領域に隣接する隣接領域で検知された人体検知位置の時系列情報に基づいて、無効化した対象領域への人体等の出入りを推定する。
【0100】
図7の人検知システム1において、制御装置10は、照度センサ2bで検知されたサーモパイルセンサ2毎の照度データに基づいて、領域C1、C2、C3、C4、C5、C7の人体検知を無効化したものと想定する。制御装置10は、例えば、室内に配置された各サーモパイルセンサ2の配置位置と、各サーモパイルセンサ2のIDアドレスとの対応関係から、上記人体検知が無効化された各領域に隣接する隣接領域を特定する。
【0101】
例えば、
図7においては、領域C1に対して領域B1を検知範囲4とするサーモパイルセンサ2#1が特定される。同様にして、領域C2に隣接する領域B2のサーモパイルセンサ2#2、領域C3に隣接する領域B3のサーモパイルセンサ2#3、領域C4に隣接する領域B4のサーモパイルセンサ2#4が特定される。また、領域C5に隣接するサーモパイルセンサ2として、領域B5のサーモパイルセンサ2#5、領域C6のサーモパイルセンサ2#14が特定される。さらに、領域C7に隣接するサーモパイルセンサ2として、領域C6のサーモパイルセンサ2#14、領域B7のサーモパイルセンサ2#7、領域C8のサーモパイルセンサ2#16が特定される。
【0102】
制御装置10は、所定周期間隔で上記無効化された各領域に隣接する隣接領域毎の人検知情報を取得する。サーモパイルセンサ2の検知範囲4がサーモパイル素子数に応じて細分化される場合には、制御装置10は、細分化された分割領域毎に検知された人体等の在/不在等の情報を取得する。分割領域毎に検知された人体等の在/不在等の情報は、
図10等を用いて説明したように、ワードデータを構成する各ビットの位置に対応付けられたフラグ値(在(1)/不在(0))として取得される。
【0103】
例えば、人体検知が無効化された領域C7については、領域C6の分割領域U1、領域B7の分割領域U13およびU14、領域C8の分割領域U5およびU13で検知された人体等の存在(フラグ値「1」)が取得される。制御装置10は、所定周期間隔で取得し
た隣接領域毎の人体等の在/不在等の情報を、例えば、分割領域の識別番号、および、上記情報を取得した時刻情報等に対応付けて主記憶装置12等の所定の領域に記憶する。領域C1からC5についても、同様の処理が行われる。
【0104】
制御装置10は、例えば、人検知情報の取得毎に上記処理を繰り返し、所定周期間隔でサンプリングされた隣接領域毎の人体等の在/不在等の情報を主記憶装置12等に蓄積する。そして、制御装置10は、主記憶装置12等に蓄積された上記情報に基づいて、無効化した各領域への人体等の出入りを推定する。
【0105】
制御装置10は、例えば、隣接領域毎の時系列上で前後する人体等の在/不在の情報について比較を行い、人体等の検知状態が「在」から「不在」への変化を特定する。人体等の検知状態の変化の特定は、分割領域毎に行われる。例えば、
図7に示すように、無効化された領域C7に隣接する各領域の内、領域B7の分割領域U13およびU14、領域C8の分割領域U5およびU13が、領域C7との間の境界に接している。
【0106】
制御装置10は、例えば、所定周期間隔でサンプリングされた時系列上で前後する、領域C8の分割領域U13の人体等の検知状態が「在」から「不在」に変化した場合には、「在」状態で検知された人体等が境界を越えて無効化された領域C7に移動したものと推定する。制御装置10は、分割領域単位で無効化された領域内への人の出入りが推定できるため、推定精度を高めることができる。
【0107】
ここで、制御装置10は、領域C8の分割領域U13の人体等の検知状態が「在」から「不在」に変化した時点の、検知範囲4内の人数等の減少を上記無効化された領域C7への移動の推定条件に加えるとしてもよい。分割領域毎に人体等の在/不在が検知される場合、制御装置10は、例えば、領域C8に対応するサーモパイルセンサ2#16からのワードデータ内における、「在」状態を示すフラグ値「1」の数量をカウントすることで検知範囲4内の人数を特定できる。あるいは、制御装置10は、検知範囲4内における分割領域毎の人体検知情報と共に、検知範囲4内における人数情報を領域C8に対応するサーモパイルセンサ2#16から取得するとしてもよい。
【0108】
さらに、制御装置10は、主記憶装置12等に蓄積された上記情報から、室内に配置された各サーモパイルセンサ2の検知範囲4と、それぞれの検知範囲4内において人体等が検知された分割領域とを関連づけたマップ情報を生成するとしてもよい。マップ情報により、検知範囲4内における人体等の検出位置が特定できる。
【0109】
そして、制御装置10は、室内に配置されたサーモパイルセンサ2毎に、それぞれの検知範囲4内で検知された人数等を上記マップ情報に対応付けて管理することで、検知範囲4内の人数と人体等の検出位置とが特定される。
【0110】
制御装置10は、上記マップ情報により特定された、サーモパイルセンサ2毎の検知範囲4内の人数変化と人体等の検出位置の変化とを、無効化された領域への移動推定の際の推定条件に加えるとしてもよい。
【0111】
同様にして、制御装置10は、隣接領域毎の時系列上で前後する人体等の在/不在の情報について比較を行い、人体等の検知状態が「不在」から「在」への変化に基づいて、無効化された領域からの人体等の移動を推定することができる。
【0112】
制御装置10は、例えば、所定周期間隔でサンプリングされた時系列上で前後する、領域C8の分割領域U13の人体等の検知状態が「不在」から「在」に変化した場合には、「在」状態で検知された人体等が無効化された領域C7から境界を越えて領域C8に移動
したものと推定する。
【0113】
上記推定においては、推定時点から少なくとも所定期間以内で、無効化された領域C7への移動の推定が行われたことを条件付けるとしてもよい。また、無効化された領域C7からの移動の推定については、領域C7の境界に接する分割領域での、人体等の検知状態の「不在」から「在」への変化に限定するとしてもよい。
【0114】
例えば、
図7の領域C7の境界に接する分割領域は、領域B6の分割領域U16、領域B7の分割領域U13からU16、領域B8の分割領域U13、領域C6の分割領域U4,U8,U12,U16、領域C8の分割領域U1,U5,U9,U13が例示される。このような室内の配置関係は、サーモパイルセンサ2の検知範囲4の大きさ、検知対象の移動速度、サンプリング周期等に応じて予め設定するとすればよい。
【0115】
制御装置10の主記憶装置12等に所定周期間隔で蓄積された、分割領域毎の人体等の在/不在等の変化は、検知範囲4内における時系列上の軌跡として表すことが可能である。例えば、
図7において、領域B5の分割領域U7で検知された人体等が、時間経過に沿って分割領域U7からU11経由でU15に移動する場合には、検知範囲4内における人体検知状態が分割領域上の軌跡として表される。
【0116】
制御装置10は、例えば、主記憶装置12等に所定周期間隔で蓄積された分割領域毎の人体等の在/不在等の変化に基づいて、検知範囲4内の分割領域上における軌跡を特定する。そして、制御装置10は、特定した軌跡の推移方向、および、無効化された領域との間の境界に接する分割領域の、時系列上で前後する検知状態の「在」から「不在」への変化に基づいて無効化された領域への人体等の移動の推定を行うとしてもよい。
【0117】
例えば、
図7の領域B5における人体等の検知を示す「在」状態が、時間経過に伴い分割領域U7→U11→U15に遷移したものとする。制御装置10は、時間経過に伴う「在」状態の検知範囲4内の軌跡から推移方向(例えば、分割領域U7から下側方向)を特定する。そして、制御装置10は、無効化された領域C5との間の境界に接する分割領域U15の検知状態が「在」から「不在」へ変化した場合には、無効化された領域C5内への人体等の移動を推定する。制御装置10においては、無効化された領域に隣接する隣接領域に設けられたサーモパイルセンサ2で検知された人検知情報の時間軸上の動的変化から、無効化された領域への出入りが推定できる。
【0118】
なお、以上の推定処理は、室内においてサーモパイルセンサ2が配置されていない領域を対象領域として適用することが可能である。制御装置10は、少なくとも室内におけるサーモパイルセンサ2の配置位置を示すマップ情報等を予め補助記憶装置13に保持するとすればよい。制御装置10は、マップ情報、サーモパイルセンサ2の配置位置、サーモパイルセンサ2の検知範囲4に基づいて、室内のサーモパイルセンサ2が配置されていない領域を特定することができる。
【0119】
また、制御装置10は、マップ情報等に基づいて、サーモパイルセンサ2が配置されていない室内の領域を対象領域として、例えば、対象領域に隣接する検知範囲4の領域、対象領域との間の境界に接する分割領域を特定することができる。制御装置10は、例えば、特定した対象領域との間の境界に接する分割領域の、時間経過に伴う人体等の検知状態の変化から対象領域への人体等の出入りを推定することが可能になる。
【0120】
なお、制御装置10によって人体等の出入りが推定された対象領域については、例えば、人体等の検知状態を示す「在」/「不在」の情報に対して推定値であることを示すフラグ値が付与されて検知状態が管理される。制御装置10は、例えば、人検知システム1と
組合せられる制御システムに対して対象領域の人体等の検知状態を示す情報を出力する際には、推定された検知状態を示す「在」/「不在」の情報と共に、推定値であることを示すフラグ値(例えば、「1」)を出力する。制御システムは、当該フラグ情報に基づいて、出力された人体検知情報が、推定状態であることを識別できる。
【0121】
(ケース3)
制御装置10は、主記憶装置12等に蓄積された所定周期間隔毎の上記情報に基づいて、検知範囲4内の一定期間に亘り人体等を検知しない分割領域をグループ化し、無検知領域として特定することができる。制御装置10は、各サーモパイルセンサ2の検知範囲4毎に、上記無検知領域を特定し、特定した無検知領域を補助記憶装置13等に管理情報として保持する。
【0122】
制御装置10は、(ケース2)で説明した人体検知の無効化領域、あるいは、サーモパイルセンサ2の非設置領域等の対象領域への人体等の出入りの推定の際に、上記無検知領域を反映することで処理負担を軽減することが可能になる。制御装置10は、例えば、補助記憶装置13等に管理情報として保持された上記無検知領域を参照し、対象領域に隣接する各サーモパイルセンサ2の検知範囲4から無検知領域を除外する。無検知領域が除外された検知範囲4においては、時間経過に伴う人体等の検知状態の変化を監視する分割領域が制限される。このため、制御装置10においては、対象領域に対する人体等の出入りを推定する際の処理負担の軽減が期待できる。
【0123】
<4.処理の流れ>
次に、
図12、
図13を参照し、本実施形態に係る検知処理を説明する。
図12は、日射によるサーモパイルセンサ2の人体検知の有効/無効設定処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係る制御装置10は、例えば、CPU11等が補助記憶装置13に記憶された各種プログラムや各種データを読み出して実行することで、
図12、
図13に示す処理を提供する。
【0124】
図12のフローチャートにおいて、処理の開始は、室内の天井等に配置された起動完了後の、1以上のサーモパイルセンサ2に対する照度データの要求のときが例示される。制御装置10は、通信バス上に接続された起動完了後の各サーモパイルセンサ2に対して、それぞれに付与されたIDアドレスを指定し、照度センサ2bで検出された照度データを要求するコマンドを送信する。制御装置10は、
図7から
図11で説明したように、通信バス上に接続された各サーモパイルセンサ2からの上記コマンドに応じたレスポンスを受け付けると共に、各レスポンスに含まれる照度センサ2bで検出された検知範囲4に対応する照度データを取得する(S1)。
【0125】
なお、各サーモパイルセンサ2の検知範囲4に対応する照度データは、例えば、人検知システム1と組合せられる制御システム等が有する照度センサから取得するとしてもよい。制御装置10は、取得した照度データをサーモパイルセンサ2のIDアドレスに対応付けて主記憶装置12の所定の領域に一時的に記憶する。
【0126】
制御装置10は、S1の処理で取得した照度データが所定の閾値を超える各サーモパイルセンサ2に対して検知範囲4を無効に設定すると共に、照度データが所定の閾値を超える各サーモパイルセンサ2に対して検知範囲4を無効に設定する(S2)。検知範囲4の有効設定、無効設定は、例えば、通信バス上に接続された各サーモパイルセンサ2へのIDアドレスを指定したMEMS非接触温度センサ2aの人体検知を無効化するコマンドの送信を介して行われる。
【0127】
制御装置10は、S2の処理で検知範囲4を無効に設定した各サーモパイルセンサ2の
IDアドレス、検知範囲4を有効に設定した各サーモパイルセンサ2のIDアドレスを時刻情報と共に主記憶装置12の所定の領域に一時的に記憶する(S3)。なお、S3の処理で記憶された情報は、所定の周期間隔で取得した各サーモパイルセンサ2の検知範囲4に対応する照度データに基づいて更新される。制御装置10は、S3の処理後、
図12の処理を終了する。
【0128】
以上の処理により、本実施形態に係る制御装置10においては、検知範囲4に対応する照度データの所定の閾値を超えることを条件として、通信バス上に接続された1以上のサーモパイルセンサ2に対して人体等の検知を無効化することができる。本実施形態に係る制御装置10を含む人検知システム1は、室内に日射が射し込む範囲が存在しても照度センサ2bを介して検出された照度データの照度変化に応じて、サーモパイルセンサ2による人体検知の有効化・無効化を設定できる。本実施形態に係る人検知システム1においては、雨天時や曇天時、夜間等の室内に日射が射し込まない状況下では、サーモパイルセンサ2を介した人体検知が可能になる。
【0129】
図13は、人体検知が無効化された領域についての人体等の推定処理の一例を示すフローチャートである。
図13のフローチャートにおいて、処理の開始は、室内の天井等に配置された1以上のサーモパイルセンサ2のそれぞれについて、人体検知の有効化・無効化の設定のときが例示される。
【0130】
制御装置10は、無効化した各サーモパイルセンサ2の検知範囲4に隣接する、人体検知を有効とする有効検知範囲を特定する(S11)。制御装置10は、
図7等で説明したように、例えば、室内に配置された各サーモパイルセンサ2の配置位置と、各サーモパイルセンサ2のIDアドレスとの対応関係から、上記人体検知が無効化された各対象領域に隣接する隣接領域を特定する。なお、室内に配置された各サーモパイルセンサ2の配置位置と、各サーモパイルセンサ2のIDアドレスとの対応関係は、例えば、予め補助記憶装置13に保持される。
【0131】
制御装置10は、S1の処理で特定した有効検知範囲について所定の周期間隔で検知された人検知情報を取得し、取得した人検知情報に時刻情報と人体等が検知された分割領域の識別番号とを対応付けて主記憶装置12の所定の領域に蓄積する(S12)。人検知情報には、分割領域毎の人体等の「在」/「不在」、有効化された検知範囲4内の人数等が含まれる。また、各分割領域と検知範囲4との位置関係により、検知範囲4内の人体等の位置が特定される。所定の周期間隔で蓄積された検知範囲4内の人数の変化は、時系列上の推移になる。
【0132】
制御装置10は、S12の処理で蓄積した隣接する有効検知範囲の時系列上の人検知情報が所定の推定条件を満たす場合には、無効化した検知範囲への移動を推定する(S13)。無効化した検知範囲についての人体等の出入りについては、
図7等で説明した。
【0133】
制御装置10は、S13の処理で推定された移動対象を区別する情報(例えば、フラグ値)を付与し、無効化された検知範囲における人体検知情報を出力する(S14)。人検知システム1と組合せられる制御システムに対しては、無効化された検知範囲における推定された検知状態を示す分割領域毎の「在」/「不在」の情報と共に、推定値であることを示すフラグ値(例えば、「1」)が出力される。制御装置10は、S14の処理後、
図13の処理を終了する。
【0134】
なお、制御装置10は、サーモパイルセンサ2が配置されていない室内の領域を対象領域として、
図13に例示の処理を適用することができる。制御装置10は、少なくとも室内におけるサーモパイルセンサ2の配置位置を示すマップ情報等を予め補助記憶装置13
に保持すればよい。制御装置10は、マップ情報、サーモパイルセンサ2の配置位置、サーモパイルセンサ2の検知範囲4に基づいて、室内のサーモパイルセンサ2が配置されていない対象領域を特定することができる。また、制御装置10は、マップ情報等に基づいて、対象領域に隣接する検知範囲4の領域、対象領域との間の境界に接する分割領域を特定することができる。制御装置10は、例えば、特定した対象領域との間の境界に接する分割領域の、時間経過に伴う人体等の検知状態の変化から対象領域への人体等の出入りを推定できる。
【0135】
以上の処理により、本実施形態に係る制御装置10においては、無効化した検知範囲4、あるいは、サーモパイルセンサ2の非設置領域に隣接する他のサーモパイルセンサ2の検知範囲内で検知された人体検知情報に基づいて、該無効化した検知範囲4、あるいは、サーモパイルセンサ2の非設置領域への人体等の出入りが推定できる。本実施形態に係る人検知システム1では、室内に日射が射し込む範囲が存在する場合であっても、隣接する他のサーモパイルセンサ2の検知範囲内で検知された人体検知情報に基づく人検知精度の向上が可能になる。
【0136】
なお、制御装置10においては、人体等の出入りの推定の際に、所定期間に継続して人体等が検知されていない検知範囲4、あるいは、検知範囲4内の分割領域を蓄積データから特定し、除外するとしてもよい。本実施形態に係る人検知システム1は、所定期間に継続して人体等が検知されていない検知範囲4、あるいは、検知範囲4内の分割領域を除外することで、無効化した検知範囲、あるいは、サーモパイルセンサ2の非設置領域への人体等の出入りの推定精度を高めると共に推定に係る処理負担を軽減できる。
また、制御装置10は、例えば、補助記憶装置13に人検知システム1が適用される工場や学校、企業のオフィスの建築空間情報を格納し、当該建築空間情報に基づいて無検知領域を特定するとしてもよい。建築空間情報には、例えば、壁、通路、扉、机やラックといった家具等の配置位置が含まれる。制御装置10は、建築空間情報を用いることで、人体等の出入りの推定精度を向上できる。
さらに、制御装置10は、補助記憶装置13等に保持された無検知領域の推移を学習し、所定期間(例えば、一ヶ月)に亘り継続して人体等の出入りが検知されない無検知領域を壁や柱、机やラックといった設備の配置領域に推定するとしてもよい。そして、制御装置10は、推定された配置領域から人検知システム1が適用される工場や学校、企業のオフィス等の建築空間情報を生成するとしてもよい。人検知システム1が適用される工場や学校、企業のオフィス等の建築空間情報が事前に入手できない場合であっても、生成された当該建築空間情報を用いることで、人体等の出入りの推定精度をさらに高めることが期待できる。本実施形態によれば、サーモパイルセンサを用いた人検知システムの精度向上を可能とする技術が提供される。
【0137】
なお、上述の実施形態は、本開示の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更して実施し得る。本実施形態に係る人検知システム1は、工場や学校、企業のオフィス、家屋等の室内における人体等の在/不在や位置分布に応じて住環境を制御する制御システムの一部を構成するとしてもよい。このような住環境を制御する制御システムとして、例えば、空調制御システム、照明制御システム等が例示される。また、人検知システム1が検知した人体等の在/不在や位置分布等の情報を用いて、高齢者施設等に入居する人体等の見守りや監視といった各種サービス等を提供するサービスシステムの一部を構成するとしてもよい。
【符号の説明】
【0138】
1 人検知システム
2 サーモパイルセンサ
2a MEMS非接触温度センサ
2b 照度センサ
2c、2d 表示LED
2e MCU
2f 電源IF
2g 通信IF
2h 入出力IF
2i 取付バネ
3 天井
4 検知範囲
5 床面
10 制御装置
11 CPU
12 主記憶装置
13 補助記憶装置
14 通信IF
15 入出力IF
16 接続バス