IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターの特許一覧

特許7017709三次元形状造形物の製造装置、付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造プログラム
<>
  • 特許-三次元形状造形物の製造装置、付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造プログラム 図1
  • 特許-三次元形状造形物の製造装置、付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造プログラム 図2
  • 特許-三次元形状造形物の製造装置、付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造プログラム 図3
  • 特許-三次元形状造形物の製造装置、付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造プログラム 図4
  • 特許-三次元形状造形物の製造装置、付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造プログラム 図5
  • 特許-三次元形状造形物の製造装置、付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造プログラム 図6
  • 特許-三次元形状造形物の製造装置、付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造プログラム 図7
  • 特許-三次元形状造形物の製造装置、付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造プログラム 図8
  • 特許-三次元形状造形物の製造装置、付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造プログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】三次元形状造形物の製造装置、付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造プログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20220202BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20220202BHJP
   B29C 64/135 20170101ALI20220202BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220202BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220202BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20220202BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/295
B29C64/135
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020185789
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2021-07-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 健一
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆一
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-508322(JP,A)
【文献】特開2003-321704(JP,A)
【文献】特開2019-77935(JP,A)
【文献】特開2019-155883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粉末を薄く敷いた層全体を融点以下に予熱する予熱手段と、前記樹脂粉末を薄く敷いた層のうちから、選択的に加熱する加熱手段を有し、これらの手段による予熱と、加熱を多層にわたって繰り返すことで、立体造形物を得る三次元形状造形物の製造装置において、
前記加熱手段は、樹脂粉末を溶融させることが可能な加熱パラメータ1で領域1を加熱溶融するものであり、
前記領域1よりも少なくとも一部の外側を含む領域2を、前記パラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱する半焼結加熱手段を有し、
前記半焼結加熱手段による前記領域2の加熱が、前記加熱手段による前記領域1の加熱溶融よりも先に、同一層内において実施され、且つ、その実施が、少なくとも1回以上行われ、さらに、得られた立体造形物の表面の半焼結部分を除去することを特徴とする三次元形状造形物の製造装置。
【請求項2】
樹脂粉末を薄く敷いた層全体を融点以下に予熱する予熱手段と、前記樹脂粉末を薄く敷いた層のうちから、選択的に加熱する加熱手段を有し、これらの手段による予熱と、加熱を多層にわたって繰り返すことで、立体造形物を得る三次元形状造形物の製造装置において、
前記加熱手段は、樹脂粉末を溶融させることが可能な加熱パラメータ1で領域1を加熱溶融するものであり、
前記領域1の稜線を外側へオフセットした線と、前記領域1の稜線を内側へオフセットした線で囲まれる領域2を、前記パラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱する半焼結加熱手段を有し、
前記半焼結加熱手段による前記領域2の加熱が、前記加熱手段による前記領域1の加熱溶融よりも先に、同一層内において実施され、且つ、その実施が、少なくとも1回以上行われ、さらに、得られた立体造形物の表面の半焼結部分を除去することを特徴とする三次元形状造形物の製造装置。
【請求項3】
樹脂粉末を薄く敷いた層全体を融点以下に予熱する予熱手段と、前記樹脂粉末を薄く敷いた層のうちから、選択的に加熱する加熱手段を有し、これらの手段による予熱と、加熱を多層にわたって繰り返すことで、立体造形物を得る三次元形状造形物の製造装置において、
前記加熱手段は、樹脂粉末を溶融させることが可能な加熱パラメータ1で領域1を加熱溶融するものであり、
前記領域1の一部の稜線を外側へオフセットした線分1と、前記一部の稜線を内側へオフセットした線分2と、線分1と線分2の対応する端点を接続した線で囲まれる領域2を、前記パラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱する半焼結加熱手段を有し、
前記半焼結加熱手段による前記領域2の加熱が、前記加熱手段による前記領域1の加熱溶融よりも先に、同一層内において実施され、且つ、その実施が、少なくとも1回以上行われ、さらに、得られた立体造形物の表面の半焼結部分を除去することを特徴とする三次元形状造形物の製造装置。
【請求項4】
前記加熱パラメータ2によって、前記樹脂粉末に与えられる単位面積当たりの総エネルギー量が、前記加熱パラメータ1で与えられる単位面積当たりの総エネルギー量の1/4以下であることを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の三次元形状造形物の製造装置。
【請求項5】
前記加熱手段及び前記半焼結加熱手段は、レーザーによるものであることを特徴とする請求項1~4何れか1項記載の三次元形状造形物の製造装置。
【請求項6】
使用する樹脂粉末には、請求項1~5何れか1項記載の三次元形状造形物の製造装置における予熱手段を用いて、再結晶化温度から融点の間に少なくとも1回加熱された粉末を80%以上含むものが用いられることを特徴とする請求項1~5何れか1項記載の三次元形状造形物の製造装置。
【請求項7】
樹脂粉末を薄く敷いた層全体を融点以下に予熱する予熱手段と、前記樹脂粉末を薄く敷いた層のうちから、選択的に加熱する加熱手段を有し、これらの手段による予熱と、加熱を多層にわたって繰り返すことで、立体造形物を得る付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法において、
前記予熱手段により、薄く敷いた樹脂粉末の層全体を融点以下に予熱し、
続いて、前記加熱手段により、樹脂粉末を溶融させることが可能な加熱パラメータ1で領域1を加熱溶融する加熱工程を含み、
前記加熱工程の前に、前記領域1よりも少なくとも一部の外側を含む領域2を、前記加熱パラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱する工程が、同一層内において実施されることが、少なくとも1回以上であり、さらに、得られた立体造形物の表面の半焼結部分を除去する工程を含むことを特徴とする付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法。
【請求項8】
樹脂粉末を薄く敷いた層全体を融点以下に予熱する予熱手段と、前記樹脂粉末を薄く敷いた層のうちから、選択的に加熱する加熱手段を有し、これらの手段による予熱と、加熱を多層にわたって繰り返すことで、立体造形物を得る付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法において、
前記予熱手段により、薄く敷いた樹脂粉末の層全体を融点以下に予熱し、
続いて、前記加熱手段により、樹脂粉末を溶融させることが可能な加熱パラメータ1で領域1を加熱溶融する加熱工程を含み、
前記加熱工程の前に、前記領域1の稜線を外側にオフセットした線と、前記領域1の稜線を内側にオフセットした線で囲まれる領域2を、前記加熱パラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱する工程が、同一層内において実施されることが、少なくとも1回以上であり、さらに、得られた立体造形物の表面の半焼結部分を除去する工程を含むことを特徴とする付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法。
【請求項9】
樹脂粉末を薄く敷いた層全体を融点以下に予熱する予熱手段と、前記樹脂粉末を薄く敷いた層のうちから、選択的に加熱する加熱手段を有し、これらの手段による予熱と、加熱を多層にわたって繰り返すことで、立体造形物を得る付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法において、
前記予熱手段により、薄く敷いた樹脂粉末の層全体を融点以下に予熱し、
続いて、前記加熱手段により、樹脂粉末を溶融させることが可能な加熱パラメータ1で領域1を加熱溶融する加熱工程を含み、
前記加熱工程の前に、前記領域1の一部の稜線を外側にオフセットした線分1と、前記領域1の一部の稜線を内側にオフセットした線分2と、線分1と線分2の対応する端点を接続した線で囲まれる領域2を、前記加熱パラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱する工程が、同一層内において実施されることが、少なくとも1回以上であり、さらに、得られた立体造形物の表面の半焼結部分を除去する工程を含むことを特徴とする付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法。
【請求項10】
前記加熱パラメータ2によって、前記樹脂粉末に与えられる単位面積当たりの総エネルギー量が、前記加熱パラメータ1で与えられる単位面積当たりの総エネルギー量の1/4以下であることを特徴とする請求項7~9何れか1項記載の付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法。
【請求項11】
前記加熱手段及び前記半焼結加熱手段は、レーザーによるものであることを特徴とする請求項7~10何れか1項記載の付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法。
【請求項12】
使用する樹脂粉末には、請求項7~11何れか1項記載の付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法において、予熱手段を用いて、再結晶化温度から融点の間に少なくとも1回加熱された粉末を80%以上含むものが用いられることを特徴とする請求項7~11何れか1項記載の付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法。
【請求項13】
コンピュータに、付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法を実行させるプログラムであって、3次元データの少なくとも一部の面を指定することにより、請求項9に記載の稜線または領域の指定を可能とすることを特徴とする付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法を実行させるプログラム。
【請求項14】
コンピュータに、付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法を実行させるプログラムであって、2次元データの少なくとも一部の線を指定することにより、請求項9に記載の稜線または領域の指定を可能とすることを特徴とする付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元形状造形物の製造装置、付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造プログラムに関するもので、詳しくは、樹脂粉末床溶融結合固有の課題とされる、オレンジピールと呼ばれる凹凸の激しい表面の形成の抑制に加えて、材料消費量の低減も同時に達成するものである。
【背景技術】
【0002】
現在普及している樹脂粉末床溶融結合では、樹脂粉末をヒーター等で融点近くまで予熱した後に、レーザー等の選択的加熱手段で部分的に溶融させる方法が採用されているが、この方法では、側面にオレンジピールと呼称される凹凸の激しい表面(欠陥表面)が形成されることがしばしばあった。
【0003】
ところで、例えば、金属粉末溶融結合では、水平面(積層方向を法線とする面)から30°程度までの角度を持つ面には、サポートと呼ばれる造形物の崩れを防ぐ構造体を付与しながら積層する必要がある一方、樹脂粉末床溶融結合では前述のようなサポート構造を付与しなくても造形物の崩れは発生しない。しかし、前記水平面に垂直な面(すなわち側面)となす角度が小さい面ほどオレンジピールが発生しやすいという課題があった。
【0004】
また、通常は樹脂粉末床溶融結合では粉末を融点近くまで加熱した状態で、レーザー等で部分的に溶融させ、この溶融した部分は造形品となるが、融点付近まで加熱されたもののレーザー等で溶融されなかった粉末(リサイクル粉末と呼ぶ)は回収され、次回のジョブで使用されるが、このリサイクル粉末は、予熱されたことがない新しい粉末とある割合で混合され、使用されることがほとんどである。
【0005】
このとき、リサイクル粉末の割合が多いとオレンジピールが発生しやすいという課題があった。例えば、メーカー推奨では30~50%の割合で新しい粉末を混合することが推奨されるが、新しい粉末の割合が多いと、余剰の粉末が発生してしまい廃棄する粉末が発生する。なお、本発明者による過去の実験では、新しい粉末の混合率を20%としていたが、これでも余剰粉末が発生していた。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1には、上記のオレンジピールの発生を抑制させる技術として、ISO3146に準拠して測定される融点が100℃以上であり、 0.1kPaの圧力下、融点から15℃低い温度で4時間保温する前後に、JIS K7210に準拠して2.16kgの荷重、及び融点より15℃高い温度の条件でメルトマスフローレートを測定したときに、保温後のメルトマスフローレートを、保温前のメルトマスフローレートで除した比が、0.80より大きく、1.20以下である立体造形用樹脂粉末や、この立体造形用樹脂粉末を用いた立体造形装置や立体造形物の製造方法が開示されている。
【0007】
また、例えば、特許文献2には、粉末材料を焼結し、又は溶融し、固化する際に、粉末材料中に含まれる酸素、窒素及び水分に起因して生じる不都合を一層抑制することができる粉末積層造形装置及び粉末積層造形方法が開示されており、この技術によると、樹脂粉末にも適用し、造形に用いる樹脂粉末から、酸素、窒素及び水分を除くことができることから、粉末材料の組成純度が劣化するのを防止できるため粉末材料のリサイクル性が向上し、オレンジピールの発生を抑えられるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-1154号公報
【文献】特開2014-28996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献に開示されている技術では、オレンジピールの形成の抑制が確実なものとするのに加えて、材料消費量の低減も同時に達成することは、難しく、また、複雑な装置構成となってしまうため、高いランニングコスト、製造コストの発生が問題視されていた。
【0010】
本発明が解決しようとしている課題は、複雑な装置構成を採用せずとも、樹脂粉末床溶融結合固有の課題とされる、オレンジピール形成の抑制に加えて、材料消費量の低減も同時に達成する付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造に用いるプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために、本発明は、以下の技術的手段を講じている。
即ち、請求項1記載の発明は、樹脂粉末を薄く敷いた層全体を融点以下に予熱する予熱手段と、前記樹脂粉末を薄く敷いた層のうちから、選択的に加熱する加熱手段を有し、これらの手段による予熱と、加熱を多層にわたって繰り返すことで、立体造形物を得る三次元形状造形物の製造装置において、前記加熱手段は、樹脂粉末を溶融させることが可能な加熱パラメータ1で領域1を加熱溶融するものであり、前記領域1よりも少なくとも一部の外側を含む領域2を、前記パラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱する半焼結加熱手段を有し、前記半焼結加熱手段による前記領域2の加熱が、前記加熱手段による前記領域1の加熱溶融よりも先に、同一層内において実施され、且つ、その実施が、少なくとも1回以上行われ、さらに、得られた立体造形物の表面の半焼結部分を除去することを特徴とする三次元形状造形物の製造装置である。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、樹脂粉末を薄く敷いた層全体を融点以下に予熱する予熱手段と、前記樹脂粉末を薄く敷いた層のうちから、選択的に加熱する加熱手段を有し、これらの手段による予熱と、加熱を多層にわたって繰り返すことで、立体造形物を得る三次元形状造形物の製造装置において、前記加熱手段は、樹脂粉末を溶融させることが可能な加熱パラメータ1で領域1を加熱溶融するものであり、前記領域1の稜線を外側へオフセットした線と、前記領域1の稜線を内側へオフセットした線で囲まれる領域2を、前記パラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱する半焼結加熱手段を有し、前記半焼結加熱手段による前記領域2の加熱が、前記加熱手段による前記領域1の加熱溶融よりも先に、同一層内において実施され、且つ、その実施が、少なくとも1回以上行われ、さらに、得られた立体造形物の表面の半焼結部分を除去することを特徴とする三次元形状造形物の製造装置である。
【0013】
さらに、請求項3記載の発明は、樹脂粉末を薄く敷いた層全体を融点以下に予熱する予熱手段と、前記樹脂粉末を薄く敷いた層のうちから、選択的に加熱する加熱手段を有し、これらの手段による予熱と、加熱を多層にわたって繰り返すことで、立体造形物を得る三次元形状造形物の製造装置において、前記加熱手段は、樹脂粉末を溶融させることが可能な加熱パラメータ1で領域1を加熱溶融するものであり、前記領域1の一部の稜線を外側へオフセットした線分1と、前記一部の稜線を内側へオフセットした線分2と、線分1と線分2の対応する端点を接続した線で囲まれる領域2を、前記パラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱する半焼結加熱手段を有し、前記半焼結加熱手段による前記領域2の加熱が、前記加熱手段による前記領域1の加熱溶融よりも先に、同一層内において実施され、且つ、その実施が、少なくとも1回以上行われ、さらに、得られた立体造形物の表面の半焼結部分を除去することを特徴とする三次元形状造形物の製造装置である。
【0014】
そして、請求項4記載の発明は、請求項1~3何れか1項記載の三次元形状造形物の製造装置であって、前記加熱パラメータ2によって、前記樹脂粉末に与えられる単位面積当たりの総エネルギー量が、前記加熱パラメータ1で与えられる単位面積当たりの総エネルギー量の1/4以下であることを特徴としている。
【0016】
また、請求項記載の発明は、請求項1~4何れか1項記載の三次元形状造形物の製造装置であって、前記加熱手段及び前記半焼結加熱手段は、レーザーによるものであることを特徴としている。
【0017】
そして、請求項記載の発明は、請求項1~5何れか1項記載の三次元形状造形物の製造装置であって、使用する樹脂粉末には、請求項1~5何れか1項記載の三次元形状造形物の製造装置における予熱手段を用いて、再結晶化温度から融点の間に少なくとも1回加熱された粉末を80%以上含むものが用いられることを特徴としている。
【0018】
さらに、請求項7記載の発明は、樹脂粉末を薄く敷いた層全体を融点以下に予熱する予熱手段と、前記樹脂粉末を薄く敷いた層のうちから、選択的に加熱する加熱手段を有し、これらの手段による予熱と、加熱を多層にわたって繰り返すことで、立体造形物を得る付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法において、前記予熱手段により、薄く敷いた樹脂粉末の層全体を融点以下に予熱し、続いて、前記加熱手段により、樹脂粉末を溶融させることが可能な加熱パラメータ1で領域1を加熱溶融する加熱工程を含み、前記加熱工程の前に、前記領域1よりも少なくとも一部の外側を含む領域2を、前記加熱パラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱する工程が、同一層内において実施されることが、少なくとも1回以上であり、さらに、得られた立体造形物の表面の半焼結部分を除去する工程を含むことを特徴とする付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法である。
【0019】
そして、請求項8記載の発明は、樹脂粉末を薄く敷いた層全体を融点以下に予熱する予熱手段と、前記樹脂粉末を薄く敷いた層のうちから、選択的に加熱する加熱手段を有し、これらの手段による予熱と、加熱を多層にわたって繰り返すことで、立体造形物を得る付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法において、前記予熱手段により、薄く敷いた樹脂粉末の層全体を融点以下に予熱し、続いて、前記加熱手段により、樹脂粉末を溶融させることが可能な加熱パラメータ1で領域1を加熱溶融する加熱工程を含み、前記加熱工程の前に、前記領域1の稜線を外側にオフセットした線と、前記領域1の稜線を内側にオフセットした線で囲まれる領域2を、前記加熱パラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱する工程が、同一層内において実施されることが、少なくとも1回以上であり、さらに、得られた立体造形物の表面の半焼結部分を除去する工程を含むことを特徴とする付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法である。
【0020】
そしてさらに、請求項9記載の発明は、樹脂粉末を薄く敷いた層全体を融点以下に予熱する予熱手段と、前記樹脂粉末を薄く敷いた層のうちから、選択的に加熱する加熱手段を有し、これらの手段による予熱と、加熱を多層にわたって繰り返すことで、立体造形物を得る付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法において、前記予熱手段により、薄く敷いた樹脂粉末の層全体を融点以下に予熱し、続いて、前記加熱手段により、樹脂粉末を溶融させることが可能な加熱パラメータ1で領域1を加熱溶融する加熱工程を含み、前記加熱工程の前に、前記領域1の一部の稜線を外側にオフセットした線分1と、前記領域1の一部の稜線を内側にオフセットした線分2と、線分1と線分2の対応する端点を接続した線で囲まれる領域2を、前記加熱パラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱する工程が、同一層内において実施されることが、少なくとも1回以上であり、さらに、得られた立体造形物の表面の半焼結部分を除去する工程を含むことを特徴とする付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法である。
【0021】
また、請求項10記載の発明は、請求項7~9何れか1項記載の付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法であって、前記加熱パラメータ2によって、前記樹脂粉末に与えられる単位面積当たりの総エネルギー量が、前記加熱パラメータ1で与えられる単位面積当たりの総エネルギー量の1/4以下であることを特徴としている。
【0023】
さらに、請求項11記載の発明は、請求項7~10何れか1項記載の付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法であって、前記加熱手段及び前記半焼結加熱手段は、レーザーによるものであることを特徴としている。
【0024】
次に、請求項12記載の発明は、請求項7~11何れか1項記載の付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法であって、使用する樹脂粉末には、請求項7~11何れか1項記載の付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法において、予熱手段を用いて、再結晶化温度から融点の間に少なくとも1回加熱された粉末を80%以上含むものが用いられることを特徴としている。
【0025】
さらに、請求項13記載の発明は、コンピュータに、付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法を実行させるプログラムであって、3次元データの少なくとも一部の面を指定することにより、請求項に記載の稜線または領域の指定を可能とすることを特徴とする付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法を実行させるプログラムである。
【0026】
またさらに、請求項14記載の発明は、コンピュータに、付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法を実行させるプログラムであって、2次元データの少なくとも一部の線を指定することにより、請求項に記載の稜線または領域の指定を可能とすることを特徴とする付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法を実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、オレンジピールが発生しなくなり、外観不良が激減する。また、リサイクル100%の樹脂粉末を使用してもオレンジピールが発生しないため、新材の使用率を低く設定することが可能であり、材料消費の低減が可能となる。また、装置構成を複雑なものとする必要がないため、ランニングコスト、製造コストを抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る三次元形状造形物の製造装置及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法の第1の実施形態における工程を示した図である。
図2】本発明に係る三次元形状造形物の製造装置及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法の第2の実施形態における工程を示した図である。
図3】本発明に係る三次元形状造形物の製造装置及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法の第3の実施形態における工程を示した図である。
図4】従来の三次元形状造形物の製造装置及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法工程を示した図である。
図5】従来プロセスと本発明に係る実施形態におけるプロセスで製造した三次元形状造形物の写真データによる比較データである。
図6】従来プロセスと本発明に係る実施形態におけるプロセスで製造した三次元形状造形物の3Dスキャンデータによる比較データである。
図7】従来プロセスと本発明に係る実施形態におけるプロセスで製造した三次元形状造形物の表面に発生する凹凸量を比較する実験における条件一覧である。
図8】従来プロセスと本発明に係る実施形態におけるプロセスで製造した三次元形状造形物の表面に発生する凹凸量を比較する実験における結果を示したグラフである。
図9】本発明に係る三次元形状造形物の製造装置の実施形態を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
続いて、本発明に係る三次元形状造形物の製造装置及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る三次元形状造形物の製造装置10及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法の第1の実施形態における工程を示した図である。また、図9は、本発明に係る三次元形状造形物の製造装置の実施形態を示した概略図である。
【0030】
まず、従来の三次元形状造形物の製造装置及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法では、図4に示すように、樹脂粉末を薄く敷いた状態で、それをヒーターにより融点近傍まで加熱し、続いて、レーザーにより、部分的に溶融させ(図中、1→2の流れ)、それをn回繰り返し、その後、半焼結部を除去することにより、所望の三次元形状造形物を製造する。
【0031】
また、融点近傍まで加熱された後、レーザー等で溶融されなかった樹脂粉末(リサイクル粉末)は回収され、次回のジョブで使用されるが、このリサイクルされる樹脂粉末は、予熱されたことがない新しい粉末と混合され、使用されることがほとんどであり、このリサイクルされる樹脂粉末の混合割合が高いと、オレンジピールが発生しやすい。
【0032】
本発明における第1の実施形態における三次元形状造形物の製造装置10の概略は、図9に示すように、ローラー18が、粉末供給材料ボックス20から供給される粉末材料を造形用プレートハウジング22に設けられた昇降可能な造形用プレート30上に薄く敷き詰める(供給する)動作を行う。続いて、造形用プレートハウジング22内の予熱手段12や、図示しないヒーターにより、薄く敷き詰めた粉末材料の層全体を融点以下に予熱する。そして、加熱手段14からレーザーを出力し、これを第1の走査ミラー24を通じ、造形用プレート30上に供給された粉末材料に対して照射することで、粉末材料を溶融固化させて造形物を形成する造形作業を行われる。そして、この造形作業を繰り返していくことで、三次元形状の造形物が製造されていく。
【0033】
次に、繰り返される造形作業それぞれの作業中において、領域1よりも少なくとも一部の外側を含む領域2に対して半焼結加熱を行う際には、半焼結加熱手段16から、加熱手段14に設定するパラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱するレーザーを出力し、これを第2の走査ミラー26を通じて照射していく。なお、加熱手段14と、半焼結加熱手段16の切り替えを行う切替手段を設け、所定の法則に基づいて、レーザーを出力する手段の切り替え制御を行うように構成しておく。なお、本実施形態にあるように、カメラ28を配置しておき、加熱手段14と半焼結加熱手段16による動作のチェックや、温度分布を計測できるようにしても良い。
【0034】
詳しくは、本実施形態は、樹脂粉末を薄く敷いた層全体を融点以下に予熱する予熱手段12と、樹脂粉末を薄く敷いた層のうちから、選択的に加熱する加熱手段14を有し、これらの手段による予熱と、加熱を多層にわたって繰り返すことで、立体造形物を得るもので、加熱手段14は、樹脂粉末を溶融させることが可能な加熱パラメータ1で領域1を加熱溶融するものであり、領域1よりも少なくとも一部の外側を含む領域2を、パラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱する半焼結加熱手段16を有しており、加熱手段14による樹脂粉末の加熱溶融時、又は、加熱溶融の前に、半焼結加熱手段16による樹脂粉末の加熱が、同一層内において実施されることが、少なくとも1回以上となるよう設定されている。また、加熱手段14と、半焼結加熱手段16及び第1の走査ミラー24と第2の走査ミラー26は、それぞれ一体化して、レーザーと走査ミラーの制御によって、加熱パラメータ1と、加熱パラメータ2による加熱の両方を同一に実施できる構成を採用しても良い。
【0035】
つまり、本実施形態は、図1に示すように、樹脂粉末をヒーター等で融点近くまで予熱した後に、樹脂粉末を溶融させるレーザー出力よりも弱い出力で、樹脂粉末と溶融部の境界となる領域近傍(領域1よりも少なくとも一部の外側を含む領域2)を追加加熱する(レーザーによって半焼結させる。図中、番号1)。なお、追加加熱は溶融のためのレーザー照射を行う前に行うことが望ましい。この追加加熱(レーザーによって半焼結させる)によって、境界近傍の粉末は半焼結状態(粉末は完全に溶融しないものの、部分的に溶融し、隣接する粉末と部分的に接合し、ある程度の強度を持つ状態を指す)になり、この状態で溶融のためのレーザー描画(レーザーによって溶融、図中、番号2→3の流れ)を行うと、溶融部の側面には半焼結した粉末が確実に固着することになる。
【0036】
この工程をn回繰り返した後、続いて、未溶融の樹脂粉末を除去し、さらに、半焼結部を除去することで、所望の三次元形状造形物が完成する。なお、本実施形態では、上記追加加熱は、加熱溶融が行われた同一層内において実施されることが、少なくとも1回以上に設定されるものであるから、全ての層における工程で行う必要はないし、また、逆に全ての層において実施しても良い。
【0037】
この追加加熱プロセスを採用することで、三次元形状造形物の側面の品質が安定し、オレンジピールが発生しなくなった。さらに、リサイクル粉末100%を用いた三次元形状造形物の製造においても、この追加加熱プロセスを採用すればオレンジピールは発生しなかった。
【0038】
つまり、半焼結体は溶融した樹脂の自由な流動を発生させないような固定効果があると考えられ、流動を抑制することでオレンジピールを抑制していると考えられる。一方で、樹脂粉末床溶融結合では溶融部分が冷却され固化した後に、周囲の未溶融粉末を取り除くことで立体造形品を得るものであることから、追加加熱を用いたプロセスでは、半焼結体も取り除く必要があるため、除去可能な強度が求められる。ここで、前述の通り、金属粉末溶融結合では、水平面(積層方向を法線とする面)から30°程度までの角度を持つ面には、サポートと呼ばれる造形物の崩れを防ぐ構造体を付与しながら積層していく一方、樹脂粉末床溶融結合では前述のようなサポート構造を付与しなくても造形物の崩れは発生しないことから、金属粉末溶融結合と、本発明とは、目的とする課題や、そのための解決方法が異なってくる。従って、本発明の手法は、金属粉末溶融結合の工程に適用されるものでないことは言うまでもない。
【0039】
実験では、半焼結に用いたレーザー出力は、樹脂粉末を溶融させるレーザー出力の1/4以下である必要があった。1/4以上であると半焼結部の除去が困難な硬さになってしまうことが分かった。また、ヒーターによる予熱温度を高くすると半焼結保護による効果と同等の効果が得られる場合があったが、未溶融粉末の再利用が不可能であったため材料消費量が著しく増加してしまうというデメリットが生じた。
【0040】
本実施形態において、発明者が実施した実験においては、追加加熱を行わない場合の造形(図4に示す従来工程)オレンジピール発生確率は体感70%以上であったところ、追加加熱を行う場合は、0%であった。追加加熱は、限定的な部分を半焼結させるため、材料消費量にほとんど影響を与えない手法であり、現実的なコストで運用できる。ただし、半焼結のためのレーザー描画の分、プロセス時間は増加する点は若干の注意が必要であると言える。
【0041】
追加加熱を用いるプロセスでは、リサイクル粉末100%で実施した造形においてもオレンジピールの発生は0%であり、従来よりも新材の投入量を少なくすることが可能になることが分かった。ここで、図5図6に従来プロセスと本実施形態プロセスで製造した三次元形状造形物の表面の比較結果を示す。なお、図5は写真データ(左が従来プロセス、右が本実施形態プロセス)、図6は3Dスキャンデータ(左が従来プロセス、右が本実施形態プロセス)である(なお、図5と、図6は異なるサンプルである)。従来プロセスで製造した三次元形状造形物は表面に凹凸(オレンジピール)があることが確認できるが、本実施形態プロセスで製造した三次元形状造形物の表面にはオレンジピールは確認されなかった。
【0042】
続いて、本発明に係る三次元形状造形物の製造装置及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明に係る三次元形状造形物の製造装置及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法の第2の実施形態における工程を示した図である。また、図7は、従来プロセスと本発明に係る実施形態におけるプロセスで製造した三次元形状造形物の表面に発生する凹凸量を比較する実験における条件一覧で、図8は、従来プロセスと本発明に係る実施形態におけるプロセスで製造した三次元形状造形物の表面に発生する凹凸量を比較する実験における結果を示したグラフである。
【0043】
本発明における第2の実施形態における三次元形状造形物の製造装置10の概略は、図9に示すように、ローラー18が、粉末供給材料ボックス20から供給される粉末材料を造形用プレートハウジング22に設けられた昇降可能な造形用プレート30上に薄く敷き詰める(供給する)動作を行う。続いて、造形用プレートハウジング22内の予熱手段12と、図示しないヒーターにより、薄く敷き詰めた粉末材料の層全体を融点以下に予熱する。そして、加熱手段14からレーザーを出力し、これを第1の走査ミラー24を通じ、造形用プレート30上に供給された粉末材料に対して照射することで、粉末材料を溶融固化させて造形物を形成する造形作業を行われる。そして、この造形作業を繰り返していくことで、三次元形状の造形物が製造されていく。
【0044】
次に、繰り返される造形作業それぞれの作業中において、領域1よりも少なくとも一部の外側を含む領域2に対して半焼結加熱を行う際には、半焼結加熱手段16から、加熱手段14に設定するパラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱するレーザーを出力し、これを第2の走査ミラー26を通じて照射していく。なお、加熱手段14と、半焼結加熱手段16の切り替えを行う切替手段を設け、所定の法則に基づいて、レーザーを出力する手段の切り替え制御を行うように構成しておく。なお、本実施形態にあるように、カメラ28を配置しておき、加熱手段14と半焼結加熱手段16による動作のチェックや、温度分布を計測できるようにしても良い。
【0045】
詳しくは、本実施形態は、樹脂粉末を薄く敷いた層全体を融点以下に予熱する予熱手段と、樹脂粉末を薄く敷いた層のうちから、選択的に加熱する加熱手段を有し、これらの手段による予熱と、加熱を多層にわたって繰り返すことで、立体造形物を得る三次元形状造形物の製造装置において、加熱手段は、樹脂粉末を溶融させることが可能な加熱パラメータ1で領域1を加熱溶融するものであり、領域1の稜線を外側へオフセットした線と、領域1の稜線を内側へオフセットした線で囲まれる領域2を、加熱パラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱する半焼結加熱手段を有し、加熱手段による樹脂粉末の加熱溶融時、又は、加熱溶融の前に、半焼結加熱手段による樹脂粉末の加熱が、同一層内において実施されることが、少なくとも1回以上となるよう設定されている。また、加熱手段14と、半焼結加熱手段16及び第1の走査ミラー24と第2の走査ミラー26は、それぞれ一体化して、レーザーと走査ミラーの制御によって、加熱パラメータ1と、加熱パラメータ2による加熱の両方を同一機構によって実施できる構成を採用しても良い。
【0046】
つまり、本実施形態は、図2に示すように、樹脂粉末をヒーター等で融点近くまで予熱した後に、樹脂粉末を溶融させるレーザー出力よりも弱い出力で、樹脂粉末と溶融部の境界となる領域近傍(領域1の稜線を外側へオフセットした線と、領域1の稜線を内側へオフセットした線で囲まれる領域2)を追加加熱する(レーザーによって半焼結させる、図中、番号1)。なお、追加加熱は溶融のためのレーザー描画を行う前に行うことが望ましい。
【0047】
この追加加熱(レーザーによって半焼結させる)によって、境界近傍の粉末は半焼結状態(完全に溶融しないものの、ある程度の強度を持つ状態を指す)になり、この状態で溶融のためのレーザー描画(レーザーによって溶融、図中、番号2→3の流れ)を行うと、溶融部の側面には半焼結した粉末が確実に固着することになる。
【0048】
この工程をn回繰り返した後、続いて、未溶融の樹脂粉末を除去し、さらに、半焼結部を除去することで、所望の三次元形状造形物が完成する。なお、本実施形態では、上記追加加熱は加熱溶融が行われた同一層内実施されることが、少なくとも1回以上とされるものであるから、全ての層における工程で行う必要はないし、また、逆に全ての層において実施しても良い。
【0049】
ここで、従来プロセスと本発明に係る実施形態におけるプロセスで製造した三次元形状造形物の表面に発生する凹凸量を比較する実験を行った。この実験における条件を図7に示す。図中、加熱パラメータ2において、0Wの条件は従来工程を指している。図7に示す項目の数値に対して、いくつかを組み合わせた条件についての造形物の表面(1条件当たり56面)の凹凸度を調べた。
【0050】
本実験の結果を図8に示す。本実験によれば、従来プロセスにより製造した三次元形状造形物(図中、条件No.1、No.4、No.8、No.10)に比べ、本発明に係る実施形態におけるプロセスで製造した三次元形状造形物(図中、条件No.2、No.3、No.5、No.9、No.11)は、その表面に発生する凹凸量が極めて少なくなることが分かった。
【0051】
本発明における実施形態のように、追加加熱プロセスを採用することで、三次元形状造形物の側面の品質が安定し、オレンジピールが発生しなくなったことが分かる。さらに、リサイクル粉末100%を用いた三次元形状造形物の製造においても、この追加加熱プロセスを採用すればオレンジピールは発生しなかった。
【0052】
つまり、半焼結体は溶融した樹脂の自由な流動を発生させないような固定効果があると考えられ、流動を抑制することでオレンジピールを抑制していると考えられる。一方で、樹脂粉末床溶融結合では溶融部分が冷却され固化した後に、周囲の未溶融粉末を取り除くことで立体造形品を得るものであることから、追加加熱を用いたプロセスでは、半焼結体も取り除く必要があるため、除去可能な強度が求められる。
【0053】
実験では、半焼結に用いたレーザー出力は、樹脂粉末を溶融させるレーザー出力の1/4以下である必要があった。1/4以上であると半焼結部の除去が困難な硬さになってしまうことが分かった。また、ヒーターによる予熱温度を高くすると半焼結保護による効果と同等の効果が得られる場合(図8中、No.6、No.7)があったが、完全にはオレンジピールを抑制できず、さらには未溶融粉末の再利用が不可能であったため材料消費量が著しく増加してしまうというデメリットが生じた。
【0054】
ところで、本実施形態において、発明者が実施した実験において、追加加熱を行わない場合の造形(図4に示す従来工程)オレンジピール発生確率は体感70%以上であったが、追加加熱を行う場合(図2に示す工程)は0%であった。このとき、半焼結部を照射したレーザー出力は15W以下である必要があったことに対して、溶融部を照射したレーザー出力は60Wであった。出力の調整はレーザーの強度の変更で実現してもよいし、デフォーカスで実現してもよい。本発明における第1の実施形態と比較すると、稜線付近にのみ追加加熱を行うため、レーザーの照射時間は短くなるメリットがある。一方で、稜線付近のみ多く加熱されるため、同一部品内に若干の強度分布が生じる可能性があるが、追加加熱用のレーザー出力は低いため、実用上の影響はなかった。また、図2中の番号1の追加加熱と番号2、3の加熱順序を入れ替えた場合の実験(結果は図示しない)では、従来条件より遥かに軽微ではあるがオレンジピールが発生する場合があった。
【0055】
続いて、本発明に係る三次元形状造形物の製造装置及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法の第3の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図3は、本発明に係る三次元形状造形物の製造装置及び付加製造装置による三次元形状造形物の製造方法の第3の実施形態における工程を示した図である。
【0056】
本発明における第3の実施形態における三次元形状造形物の製造装置10の概略は、図9に示すように、ローラー18が、粉末供給材料ボックス20から供給される粉末材料を造形用プレートハウジング22に設けられた昇降可能な造形用プレート30上に薄く敷き詰める(供給する)動作を行う。続いて、造形用プレートハウジング22内の予熱手段12や、図示しないヒーターにより、薄く敷き詰めた粉末材料の層全体を融点以下に予熱する。そして、加熱手段14からレーザーを出力し、これを第1の走査ミラー24を通じ、造形用プレート30上に供給された粉末材料に対して照射することで、粉末材料を溶融固化させて造形物を形成する造形作業を行われる。そして、この造形作業を繰り返していくことで、三次元形状の造形物が製造されていく。
【0057】
次に、繰り返される造形作業それぞれの作業中において、領域1よりも少なくとも一部の外側を含む領域2に対して半焼結加熱を行う際には、半焼結加熱手段16から、加熱手段14に設定するパラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱するレーザーを出力し、これを第2の走査ミラー26を通じて照射していく。なお、加熱手段14と、半焼結加熱手段16の切り替えを行う切替手段を設け、所定の法則に基づいて、レーザーを出力する手段の切り替え制御を行うように構成しておく。なお、本実施形態にあるように、カメラ28を配置しておき、加熱手段14と半焼結加熱手段16による動作のチェックや、温度分布を計測できるようにしても良い。
【0058】
詳しくは、本実施形態は、樹脂粉末を薄く敷いた層全体を融点以下に予熱する予熱手段と、樹脂粉末を薄く敷いた層のうちから、選択的に加熱する加熱手段を有し、これらの手段による予熱と、加熱を多層にわたって繰り返すことで、立体造形物を得る三次元形状造形物の製造装置において、加熱手段は、樹脂粉末を溶融させることが可能な加熱パラメータ1で領域1を加熱溶融するものであり、領域1の一部の稜線を外側へオフセットした線分1と、一部の稜線を内側へオフセットした線分2で、線分1と線分2の対応する端点を接続した線で囲まれる領域2を、加熱パラメータ1で到達する温度よりも低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱する半焼結加熱手段を有し、加熱手段による樹脂粉末の加熱溶融時、又は、加熱溶融の前に、半焼結加熱手段による樹脂粉末の加熱が、同一層内において実施されることが、少なくとも1回以上となるよう設定されている。また、加熱手段14と、半焼結加熱手段16及び第1の走査ミラー24と第2の走査ミラー26は、それぞれ一体化して、レーザーと走査ミラーの制御によって、加熱パラメータ1と、加熱パラメータ2による加熱の両方を同一機構によって実施できる構成を採用しても良い。
【0059】
つまり、本実施形態は、図3に示すように、樹脂粉末をヒーター等で融点近くまで予熱した後に、樹脂粉末を溶融させるレーザー出力よりも弱い出力で、樹脂粉末と溶融部の境界となる領域近傍(領域1の一部の稜線を外側へオフセットした線分1と、一部の稜線を内側へオフセットした線分2で、線分1と線分2の対応する端点を接続した線で囲まれる領域2)を追加加熱する(レーザーによって半焼結させる、図中、番号1)。なお、追加加熱は溶融のためのレーザー描画を行う前に行うことが望ましい。
【0060】
この追加加熱(レーザーによって半焼結させる)によって、境界近傍の粉末は半焼結状態(完全に溶融しないものの、ある程度の強度を持つ状態を指す)になり、この状態で溶融のためのレーザー描画(レーザーによって溶融、図中、番号2→3の流れ)を行うと、溶融部の側面には半焼結した粉末が確実に固着することになる。
【0061】
この工程をn回繰り返した後、続いて、未溶融の樹脂粉末を除去し、さらに、半焼結部を除去することで、所望の三次元形状造形物が完成する。なお、本実施形態では、上記追加加熱は、加熱溶融が行われた同一層内で実施されることが、少なくとも1回以上とされるものであるから、全ての層における工程で行う必要はないし、また、逆に全ての層において実施しても良い。
【0062】
本発明における実施形態のように、追加加熱プロセスを採用することで、部分的に追加加熱を行った付近において三次元形状造形物の側面の品質が安定し、オレンジピールが発生しなくなったことが分かる。さらに、リサイクル粉末100%を用いた三次元形状造形物の製造においても、この追加加熱プロセスを採用すれば部分的に追加加熱を行った付近においてオレンジピールは発生しなかった。
【0063】
つまり、半焼結体は溶融した樹脂の自由な流動を発生させないような固定効果があると考えられ、流動を抑制することでオレンジピールを抑制していると考えられる。一方で、樹脂粉末床溶融結合では溶融部分が冷却され固化した後に、周囲の未溶融粉末を取り除くことで立体造形品を得るものであることから、追加加熱を用いたプロセスでは、半焼結体も取り除く必要があるため、除去可能な強度が求められる。
【0064】
実験では、半焼結に用いたレーザー出力は、樹脂粉末を溶融させるレーザー出力の1/4以下である必要があった。1/4以上であると半焼結部の除去が困難な硬さになってしまうことが分かった。また、ヒーターによる予熱温度を高くすると半焼結保護による効果と同等の効果が得られる場合があったが、未溶融粉末の再利用が不可能であったため材料消費量が著しく増加してしまうというデメリットが生じた。
【0065】
ところで、本実施形態において、発明者が実施した実験において、追加加熱を行わない場合の造形(図1に示す従来工程)のオレンジピール発生確率は体感70%以上であったが、追加加熱を行った稜線付近(図3に示す工程)は0%であった。追加加熱を行わなかった稜線付近にはオレンジピールが発生することがあったが、追加加熱のためのレーザーの照射時間は実施形態2よりもさらに早くなり、製造時間における追加加熱の影響は軽微であった。オレンジピールが発生してほしくない面が限定されている場合において、有効な実施形態である。このとき、半焼結部を照射したレーザー出力は15W以下である必要があったことに対して、溶融部を照射したレーザー出力は60Wであった。出力の調整はレーザーの強度の変更で実現してもよいし、デフォーカスで実現してもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 三次元形状造形物の製造装置
12 予熱手段
14 加熱手段
16 半焼結加熱手段
18 ローラー
20 粉末供給材料ボックス
22 造形用プレートハウジング
24 第1の走査ミラー
26 第2の走査ミラー
28 カメラ
30 造形用プレート
【要約】      (修正有)
【課題】複雑な装置構成を採用せずとも、樹脂粉末床溶融結合固有の課題とされる、オレンジピール形成の抑制に加えて、材料消費量の低減も同時に達成する三次元形状造形物の製造方法及び三次元形状造形物の製造に用いるプログラムを提供する。
【解決手段】樹脂粉末を薄く敷いた層全体を融点以下に予熱する手段と、前記樹脂粉末を薄く敷いた層のうちから、選択的に加熱する手段を有する三次元形状造形物の製造装置において、加熱手段は、樹脂粉末を溶融させることが可能な加熱パラメータ1で領域1を加熱溶融するものであり、領域1より少なくとも一部の外側を含む領域2を、パラメータ1で到達する温度より低い温度に設定された加熱パラメータ2で加熱する半焼結加熱手段を有し、加熱手段による樹脂粉末の加熱溶融時、又は、加熱溶融の前に、半焼結加熱手段による樹脂粉末の加熱が、同一層内で実施されることが、少なくとも1回以上とした。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9