(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】鼻孔用カニューラ補助装置
(51)【国際特許分類】
A61M 16/06 20060101AFI20220202BHJP
【FI】
A61M16/06 C
(21)【出願番号】P 2017114140
(22)【出願日】2017-06-09
【審査請求日】2020-06-03
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000189589
【氏名又は名称】上野 康男
(72)【発明者】
【氏名】上野 康男
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0203595(US,A1)
【文献】実開昭47-004797(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者が鼻孔部から気体を吸入する吸入部を設け、該吸入部から左右に伸びる可撓性材料で構成されたチューブ部材が左右の耳に掛かり着用者の顎の下で束ねられた状態で安全に装着される如く構成されている鼻孔用カニューラ装置に着脱可能に取り付ける鼻孔用カニューラ補助装置であって、該チューブ部材が左右の耳に掛かる部分近傍に着脱可能に取り付ける板状の接続部材と、該チューブ部材と同種の材質で形成された紐状部材とを設け、該接続部材に、該紐状部材を取り付けるべき第1の溝部と、チューブ部材を取り付けるべき第2の溝部を設け、該紐状部材は着用者の後頭部を回って左右の接続部材に固定された状態となしたことを特徴とする鼻孔用カニューラ補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸素などの気体を人体に供給するためのカニューラ装置に関するものであり、特に気体をカニューラ着用者の鼻孔に供給する気体供給用のチューブ部材を有するカニューラ本体と該カニューラ本体を着用者の鼻孔に確実に保持するための位置決め部材を有する鼻孔用カニューラ補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸素タンクなどから成る酸素供給装置から酸素などの気体の供給を受ける着用者などに該着用者の鼻孔を通じて該気体を供給するのに用いられる鼻孔用カニューラ装置は、下記特許文献1に開示されているようにその形状は一般に知られている。しかし、着用者が横向きに寝て耳が枕に接している状態で、後頭部の方向に位置がずれて耳たぶが顔の方向に折れ曲がると、該耳たぶにかけている状態で装着しているカニューラは容易に外れてしまう。着用者が眠っているとき、または意識が薄れている場合では、このままの状態で鼻孔からの酸素などの供給ができなくなり生命の危険が生じることとなる。このような危険があるにもかかわらず鼻孔用カニューラを装着する時点ではそのような危険性について充分な説明がなされているとは云い難い状態が少なくない。又特許文献2、3、4に示す如く上記の欠点を改善すべき対策も開示されている。
【0003】
しかし特許文献2に示すものは鉢巻状のカニューラ保持具にカニューラ本体を着用者の鼻の両側を通して固定するものであり、カニューラのチューブ自体が着用者の視線を遮るものとなっており着用者の装着感は、かなりうっとうしいものとなる。特許文献3及び4は頭頂部に配置したキャップ状または平板状の結合部にカニューラの一部を紐状の部材で結合するものであり、構造及び装着も操作が複雑になり正規に装着しなければカニューラの外れ防止効果が有効に働かないなどの欠点がある。更にカニューラ自体を構成する材料とは異なる材料を用いるために製品としての生産性を損ないコストアップの要因となる。コストは着用者の生命に替わる課題ではないが結果的に着用者にその負担を強いることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開第2003-38647公報
【文献】特許公報第4188133号公報
【文献】実用新案公報第3144843号公報
【文献】特開2006-61528公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は現在使用されている鼻孔用カニューラの利便性および装着感を損なわずに、簡単な構造で確実な外れ防止機能を付加することのできるカニューラ補助装置を提供するものである。素材自体もカニューラと同種の合成樹脂を使用することができるものであり、製造上の煩わしさもなく実用性の優れた鼻孔用カニューラ補助装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するための合理的な技術であり、その第1の手段は
鼻孔用カニューラ補助装置本体のカニューラチューブが着用者の左右の耳に掛かる部分近傍に平板状の接続部材を取り付け、該接続部材には左右2か所に、入り口が広く途中が狭い溝部が形成され該溝部が直角にまがった奥に円形状の広がり部を有する如く形成された第1の溝部を一対設け、該第1の溝部に可撓性の材料で形成された紐状部材の一端を該接続部材の左側裏面から表面―表面から右側裏面へと通すことで取り付ける。紐状部材の他端を着用者の反対側の耳に係る付近で他の接続部材に同様な方法で取り付け、該紐部材を着用者の後頭部を回した状態とする。このことでカニューラは
図1、
図2、
図3に示す如く着用者の所定の位置にしっかりと固定され、枕と耳のこすれなどで不用意に外れるのを防止することが出来る。水泳用のゴーグルの取り付けと同様とみなせば理解し易いが、水泳用ゴーグルの様に強く締め付ける必要はないので着用者の負担を強いるものではない。
【0007】
その第2の手段は、上記の接続部材の左右に形成した第1の溝部の奥に更に第2の溝部を形成し、カニューラチューブに対しても接続部材の着脱を可能としたものである。第2の溝部は第1の溝部と共通の入り口を持ち第1の直角にまがった溝の角を分岐させさらに奥に第2の折れ曲がり溝を設け、該折れ曲がり溝の奥に円形状の広がり部を有する第2の溝部とする。カニューラチューブが内部の流体通路を極端にせばめない範囲で通過可能な広がり部を設けている。この第2の溝部にカニューラチューブを接続部材の左側裏面から表面―表面から右側裏面へと通すことで接続部材を取り付ける。このようにすることによってカニューラ装置自体は従来のものと変わらないまま希望する位置に紐部材を取り付けることが出来る。従って保持機能のない従来のカニューラ装置を安全性の高い保持機能付きの装置とする為のカニューラ補助装置を提供するものである。この構造における第2の溝部は該接続部材自体が従来のカニューラ装置のカニューラチューブから外れることによる事故をも最大限に防止するためのものである。
【発明の効果】
【0008】
カニューラ装置のチューブ部材の左右の耳に掛かる接続部材を取り付け、該接続部材の第1の溝部を介して可撓性材料で構成された紐状部材を取り付け、該紐状部材が後頭部を回って左右の接続部材に取り付けた如く為したカニューラ装置は、着用者が横向きに寝て耳が枕に接している状態で後頭部の方向に位置がずれ、耳たぶが顔の方向に折れ曲がっても、該耳たぶにかけている状態で装着しているカニューラは紐状部材が後頭部を回って反対側の耳たぶ付近に接続部材を通した状態で結合しているので容易に外れることはない。着用者が姿勢を変えて耳たぶが枕から離れればカニューラの着用者に対する装着状態は本来の状態のままで鼻孔部から酸素などの吸引が妨げられるごとき不具合が生じることはない。
【0009】
本発明の第2の手段は、接続部材を該カニューラチューブに対して着脱可能に取り付けたことにある。その効果はカニューラ自体には変更がないため従来のカニューラ装置に接続部材及び紐状部材を追加するだけで外れ事故を防止する機能を付加することができる。
また、カニューラ装置自体は形状変更などが不要であるため、新たなモールド型などの製造設備製造する必要がない。可撓性材料で構成された紐状部材は既成のものを切断するだけで良く接続部材はプレス加工または小さな樹脂成型による成形加工で製作可能なため低コストであり、着用者に大きな負担を掛けるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のカニューラ装置の1実施例の構造を示す側面図である。
【
図2】
図2は、本発明のカニューラ装置の1実施例の構造を示す正面図である。
【
図3】
図3は、本発明のカニューラ装置の1実施例の構造を示す上面図である。
【
図4】
図4は、本発明のカニューラ装置の1実施例の構造を示す部分平面図である。
【
図5】
図5は、本発明のカニューラ装置の1実施例の構造を示す部分断面図である。
【
図6】
図6は、本発明のカニューラ装置の1実施例の構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の鼻孔用カニューラ装置の1実施例の装着状態を示す側面図、
図2は、本発明の鼻孔用カニューラ装置の1実施例の装着状態を示す側面図である、
図3は、本発明の鼻孔用カニューラ装置の1実施例の装着状態を示す上面図である。
図1、
図2及び
図3において、鼻孔用カニューラ装置1は着用者Aが鼻孔部Bから気体を吸入する吸入部2を設け、該吸入部2から左右に伸びたチューブ部材3が左右の耳Cに掛かり着用者Aの顎の下で2本のチューブ部材3はリング4によって束ねられた状態で安全に装着される如く構成されている。
【0012】
また、チューブ部材3が左右の耳Cに掛かる部分近傍に第1の溝部6と第2の溝部8を備えた接続部材7が配置されている。
図4は接続部材7の形状を示す部分平面図である。
図5は接続部材7とチューブ部材3の取り付け状態を示す
図4に於けるQ-Q断面図である。接続部材7は平板上の樹脂材料で製作が可能である。
図6は紐状部材5と接続部材7との接続状態を示す接続部材7のP-P断面図である。接続部材7のチューブ部材3への取り付け状態は
図5に示す如く第2の溝部8にチューブ部材3を左側裏面から表面―表面から右側裏面へと通すことで任意に位置調整が可能な状態で固定できる。又。チューブ部材3の内径が変形して気体の流れに支障がないように切欠き部の形状寸法を決定している。また、接続部材7の紐状部材5への取り付け状態は
図6に示す如く第1の切欠き部6に紐状部材5を左側裏面から表面―表面から右側裏面へと通すことで任意に位置調整が可能な状態で固定できる。上記のごとく左右の耳Cに掛かる部分近傍においてチューブ部材3に紐状部材5を位置調整が可能な状態で固定したカニューラ装置1は、該紐状部材5着用者の後頭部Dを回って左右の接続部材7を介してチューブ部材3に固定した状態となしているので、着用者Aが横向きに寝て耳Cが枕に接している状態で、後頭部Dの方向に頭部の位置がずれ、耳たぶが顔の方向に折れ曲がっても後頭部を回って反対側の耳たぶ付近に接続部材7を介した状態で結合しているのでチューブ部材3は容易に外れることはない。
【0013】
着用者が姿勢を変えて耳たぶが枕から離れればカニューラのチューブ部材3の着用者に対する装着状態は本来の状態のままで鼻孔から酸素などの吸引が妨げられるごとき不具合が生じることはない。本来この鼻孔用カニューラ装置は着用者の命を守る大切な装置であり、もし外れれば着用者は呼吸不全となり死亡事故につながる可能性が高いものであるが、その構造及び着用操作が簡単であるために着用者及び看護担当者にそのことが充分に知られていない。特に床擦れ防止の目的で着用者の意識と無関係に左右に傾く方式の危険なベッド(マット装置)を使用する場合があるが、この場合には特にカニューラが外れる危険性が高い。しかもベッドメーカー及び看護サービス会社はその危険性に関して着用者及び看護担当者に特別充分に伝えていない。このような場合には事故が起きた時の責任の所在があいまいのままにされる。本来どちらかが責任を問われるべきである。一日も早い改善が望まれている。本明細書においてカニューラ装置と記載したものは鼻孔用カニューラ装置を示すものとしてよい。
[効果]
【0014】
本発明の効果は上記説明によって明らかな如く軽い気持ちが重大な死亡事故につながる現状を改善することが出来ることで医療上の効果は極めて大きい。その上従来の鼻孔用カニューラ装置をそのまま利用して極めて安価な部材の取り付けだけですぐにでも実施可能であることは改善に時間を要しない点で即時実施可能な極めて大きな事故防止効果を有するものである。
[作用]
【0015】
上記実施形態に示す本発明の鼻孔用カニューラ補助装置の作用について説明する。
チューブ部材3の左右の耳Cに掛かる部分近傍に合成樹脂などで構成された板状の接続部材7を介して位置修正が可能に固定した紐状部材5が着用者Aの後頭部Dを回って接続された状態となしたカニューラ装置1は着用者Aが横を向いた状態で頭部が動いてもカニューラ装置1の吸入部2が使用者Aの鼻孔部Bから吸入部2がずれて酸素などの気体の吸入状態が損なわれることを防止することができる。また、接続部材7を該チューブ部材3に対して着脱可能に取り付けたことにより従来のカニューラ装置の形状をそのまま使用することが出来、新たに成形型などの製造設備を作りなおす必要がないので容易に実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
以上の説明で明らかなごとく本発明のカニューラ補助装置は着用者の死亡事故にもつながる鼻孔カニューラ装置の不慮の外れ事故を極めて簡単な構造で防止し、着用者の安全性を向上することが出来、実施が容易な鼻孔用カニューラ補助装置を提供するものであり、その医療機器産業上の利用効果は極めて著しい。
【符号の説明】
【0017】
1 鼻孔用カニューラ装置
2 吸入部
3 チューブ部材
4 リング
5 紐状部材
6 第1の溝部
7 接続部材
8 第2の溝部
A 着用者
B 鼻孔
C 耳
D 後頭部