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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】EL発光回路及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/16 20200101AFI20220202BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20220202BHJP
   G09G 3/34 20060101ALI20220202BHJP
   H05B 45/60 20220101ALI20220202BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
H05B47/16
G09G3/20 611A
G09G3/20 612B
G09G3/20 612D
G09G3/20 642C
G09G3/20 642P
G09G3/20 670C
G09G3/34 J
H05B33/08
H05B33/14 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018092220
(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公開番号】P2019197701
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】518166483
【氏名又は名称】李 鍾學
(73)【特許権者】
【識別番号】518166494
【氏名又は名称】李 法宰
(73)【特許権者】
【識別番号】503462729
【氏名又は名称】松中 芳雄
(73)【特許権者】
【識別番号】513296671
【氏名又は名称】井澤 奈緒
(74)【代理人】
【識別番号】100123423
【弁理士】
【氏名又は名称】柿澤 紀世雄
(72)【発明者】
【氏名】李 鍾學
(72)【発明者】
【氏名】松中 芳雄
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-032763(JP,A)
【文献】特開2010-021109(JP,A)
【文献】特開2015-050060(JP,A)
【文献】特開平11-260548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/16
H05B 33/14
H05B 33/08
G09G 3/20
G09G 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流を流すと、低電圧を高い電圧に上げてくれる昇圧トランスと、該昇圧トランスを駆動させるための相補型トランジスタと、該相補型トランジスタを動作させるのに必要な駆動信号を出力する制御部と、交流電圧の入力を受けて点灯するEL発光体と、回路動作に必要な直流電源、及びトランジスタに流れる電流を電圧に変換して制御部に戻すシャント抵抗を具備してなるEL発光回路であって、
前記制御部は、前記昇圧トランスの出力電圧でEL発光体を充電する際、その出力電圧の勾配を追跡して、電圧勾配の極性が反対に変わろうとする瞬間に最適な視点と判断してトランジスタの駆動信号T_ON_AあるいはT_ON_Bを出力し、更に、
前記制御部は、前記シャント抵抗により測定された相補型トランジスタのエミッタ電流を感知して、これを電源電圧に乘算した消費電力値を算出し、前記駆動信号T_ON_AあるいはT_ON_Bの幅を加減することにより出力電圧を変化させて、EL発光体の輝度を必要な水準で維持できるようにしたことを特徴とするEL発光回路。
【請求項2】
昇圧トランスを駆動させるための相補型トランジスタを作動させる上で、制御部が前記相補型トランジスタに出力する駆動信号のタイミングは、昇圧トランスの出力電圧勾配を追跡して、電圧勾配の極性が反対に変わろうとする瞬間に行われるようにしたことを特徴とする、請求項1記載のEL発光回路の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はEL発光回路において、エネルギー効率を高め、電源電圧が変動しても輝度が必要な水準で維持されるようにするEL発光回路とその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ELとは、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence)の略で、ELには無機発光体(「無機EL」ともいう。)と有機発光体(「有機EL」ともいう。)がある。無機ELとは、硫化亜鉛等を基質として使用し、そこに銅等の単色発光する物質を添加して製作した無機化合物の蛍光体に電圧を印加して発光させる交流駆動型の発光素子で、薄型軽量で、輝度が高くない均一な面発光の為、夜間の補助灯、携帯用電子機器の表示用照明としての用途がある。
【0003】
EL発光体は、等価的なコンデンサであり、そのためコンデンサの特性上直流電源には全く反応せず交流電圧を与えた時だけ発光するが、発光時点は上昇区間と下降区間つまり電圧変化区間だけ発光する。
したがって、EL発光体を効率良く発光させるためには電圧変化区間にどのくらい猶予時間を与えればよいかによる。
【0004】
従来のELインバータの波形を図4に示した。
従来のEL発光回路は、アナログ駆動式になっていて、トランジスタに流れる電流の上昇区間と下降区間に、ジュール(Joule)熱が発生して、エネルギー効率が落ちる短所がある。
また、従来のELインバータには電圧が落ちた時の対策が施されていないため、電池電圧が下がれば消費電流は減少し輝度が急激に下がるという問題があった。
【0005】
例えば、特許文献1に記載された従来のEL発光回路に関して説明する。図3は、従来のEL発光回路の回路図である。従来のEL発光回路は、図3に示したとおり一つのトランジスタ(9)と、バイアス抵抗(10、11)と、コンデンサ(12)と昇圧トランス(6)と、直流電源(5)とEL発光体(7)で構成されている。
上記従来のEL発光回路構成の接続関係を説明すると、直流電源(5)のPlus(+)側はトランジスタ(9)のコレクタCに接続されて、また、バイアス抵抗(10)とバイアス抵抗(11)を通じてトランジスタ(9)のベースBに接続されて、トランジスタ(9)のエミッタEは昇圧トランス(6)の1次コイル(64)とベースコイル(65)がお互いに会うように接続されて、直流電源(5)のMinus(-)は昇圧トランス(6)の1次コイル(64)とEL発光体(7)と接地(8)が同等に接続されている。
また、コンデンサー(12)の一端は抵抗(10)と抵抗(11)がそれぞれQCに接続され、他の一端は昇圧トランス(6)のベースコイル(65)と2次コイル(66)等々に接続され、昇圧トランス(6)の2次コイル(66)の他の一端はEL発光体(7)の他の一端と接続されている。
【0006】
次に、上記従来のEL発光回路の各部について説明する。
図3において、トランジスタ(9)のベースBとエミッタE間にはバイアス抵抗(10、11)によってベースバイアス電流が流れて、トランジスタ(9)のコレクタCでエミッタEに流れる。エミッタ電流が、昇圧トランス(6)の1次コイル(64)を経て、接地に抜け出ている。
昇圧トランス:trans(6)の1次コイル(64)に電流が通ると、ベースコイル:base coil(65)にも電圧が誘起されて、ベースコイル(65)の一端とコンデンサ(12)の一端が接続された端子の電圧が上昇して、コンデンサ(12)の電位差を相殺させ、さらに進行すると、トランジスタ:transistor(9)のエミッタEとベースB間の電位差も消えて、トランジスタ(9)のベースBにはむしろ逆バイアス:biasがかかって、結局、トランジスタ(9)はターンオフ(Turn Off)する。
トランジスタ(9)がターンオフ(Turn Off)すると、昇圧トランス(6)の1次コイル(64)には、逆起電力が発生して、トランジスタ(9)のエミッタEはマイナス(-)方向に戻って、-頂点を経て、またプラス(+)方向に復帰する。この過程で、コンデンサ(12)はトランジスタ(9)のエミッタE電圧がマイナス(-)頂上まで下降する間、最大値の充電をしながら、トランジスタ(9)のベースEに逆バイアスを維持して、トランジスタ(9)がターンオフ(Turn Off)状態にとどまっているようにする。反対に昇圧トランス(6)の1次コイル(64)の逆起電力が-頂点以降、徐々に消滅してプラス(+)方向に回復時、コンデンサ(12)は放電を開始して、一定の時点が経過すると、トランジスタ(9)のベースBバイアスを逆で正に転換させる。トランジスタ(9)のベースBが再び正バイアスになると、トランジスタ(9)のコレクタCでエミッタEに再び電流が流れることになって、このような一連の作用を繰り返して、昇圧トランス(6)の2次コイル(66)には約100Vrmsレベルの交流電圧が発生して、EL発光体(7)を点灯させる。
【0007】
このように従来のEL発光回路は、駆動方式が全面的にアナログ(Analog)方式である。アナログ(Analog)方式の回路では、トランジスタに流れる電流の上昇区間と下降区間に、ジュール(Joule)熱が発生して、エネルギー効率が大きく落ちる短所がある。
ジュール熱(J)=Vce×Ic×t
Vce:トランジスタのコレクタとエミッタ間の電圧。
Ic:トランジスタのコレクタでエミッタに流れる電流。
t:トランジスタ動作時間。
ここで、Icはトランジスタに流れた電流と定義したが、厳密に区分すると、トランジスタ電流の勾配期間(上昇と下降)に限定する。
【0008】
主に乾電池を電源として使用する小型、薄型のEL発光回路はエネルギー効率を高め、乾電池寿命を高めることが最も重要な課題であるが、アナログ(Analog)方式の従来EL発光回路は、トランジスタでジュール熱(J)が発生し、エネルギー損失を防ぐことが、物理的にできない。
また、従来のEL発光回路は電源電圧が低下すると、消費電流も比例的に減少して、それによって昇圧トランスの2次コイル電圧も下がっており、EL発光体の輝度が低下する問題があるが、輝度低下に対する準備策が具備されていない。
【0009】
また、特許文献2には、可変出力のインバータを有しEL素子の定電流制御を行う点灯回路と、調光制御用のパルス信号をそのデューティ比に応じた直流信号に変換するDC変換回路と、その直流信号に従って前記インバータのトランスへの入力を変化させて調光を行う調光回路と、インバータのトランスに接続されたスイッチング素子の出力の変化からEL素子の異常を検出する検出回路とを備え、不点灯防止回路を設けたEL素子の点灯制御装置につい記載されている。
しかしながら、該特許は、負荷の異常、遮断や短絡を判断/検出する回路を持つ点灯制御装置であるため、それぞれの回路を稼働させれば消費電流は相当に必要なはずである。該特許の効果として、消費電力が小さい、即ち、効率が良いと記載されているが、アナログ方式に関する効率について記した通り、トランジスタでジュール熱(J)が発生し、エネルギー損失を防ぐことが、物理的にできないという問題点が依然として存在する。
そして、該特許の着眼点は、安定輝度を得るために定電流にすることにより輝度を維持するというものであるのに対して、本発明では電源電圧が低下しても消費電力を一定にすることに着眼し、そのために電流値(駆動信号)をコントロールして一定の照度を得られるようにした発明であるので、輝度を維持する為の手段(構成)が相違している。
【0010】
本発明のEL発光回路は、判断/検出をする回路は不要とした最良効率を追求した発明である。さらに本発明は、EL駆動消費電流が回路内消費電流とほぼ同一電流値でエネルギー効率が最高レベルということができる。
特に従来のアナログ方式のエネルギー損失を改善し、さらに消費電流を下げるためにどのタイミングで駆動信号を出力すれば効率が上がるかを追求した回路である。
特に乾電池を使用したインバータにおいて電圧が降下すれば照度も低下する従来の常識から電圧が降下しても一定の照度が得られるという全く新しいシステムであり、多くのインバータに波及する可能性を持っている。
【0011】
EL発光体は、等価的にコンデンサ(CAPACITOR)で表現され、コンデンサの特性上、直流電源には全く反応せず、交流電圧を認可した時だけ発光するが、発光は電圧の上昇区間と下降区間すなわち、電圧変化区間だけで発光する。
従来のEL発光回路は、アナログ駆動式になっていて、トランジスタに流れる電流の上昇区間と下降区間に、ジュール(Joule)熱が発生して、エネルギー効率が落ちる短所がある。
また、従来のEL発光回路は、電源用電池の電圧が落ちたときには、EL発光体の輝度低下を補完する対策が具備されておらず、乾電池で動作させる場合、電源用電池の電圧が落ちと、消費電流も同じように減少して輝度が低下する問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、昇圧トランスの2次コイルの出力電圧でEL発光体を充電する際、制御部が2次コイルの出力電圧E01の勾配を追跡して、最適の視点にトランジスタの駆動信号を出力して、最高のエネルギー効率を出すようにしたものである。即ち、本発明の目的は、使用電源の電圧が落ちたときには、自動的に消費電流を増加させ、EL発光体の輝度低下を補正するEL発光回路及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、相補型トランジスタや、制御部と、直流電源と、昇圧トランスで構成されたEL発光回路を通じて、EL発光体を点灯させるのにおいて、制御部が相補型トランジスタに駆動信号T_ON_A、T_OFF_A、T_ON_B、T_OFF_Bを出力すると、相補型トランジスタが昇圧トランスに電流を流して昇圧トランスの2次コイルに100Vrms相当の交流電圧が発生し、その交流電圧でEL発光体を点灯させるEL発光回路とその制御方法である。
【0014】
本発明は、下記の(1)~(2)のEL発光体の輝度低下を補正するEL発光回路及びその制御方法を提供するものである。即ち、
(1)電流を流すと、低電圧を高い電圧に上げてくれる昇圧トランスと、該昇圧トランスを駆動させるための相補型トランジスタと、該相補型トランジスタを動作させるのに必要な駆動信号を出力する制御部と、交流電圧の入力を受けて点灯するEL発光体と、回路動作に必要な直流電源、及び消費電流を測定する為の目的で、トランジスタに流れる電流を電圧に変換して制御部に戻すシャント抵抗とを具備してなるEL発光回路であって、
前記制御部は、前記昇圧トランスの出力電圧でEL発光体を充電する際、その出力電圧の勾配を追跡して、電圧勾配の極性が反対に変わろうとする瞬間に最適な視点と判断してトランジスタの駆動信号T_ON_AあるいはT_ON_Bを出力し、更に、
前記制御部は、前記シャント抵抗により測定された相補型トランジスタのエミッタ電流を感知して、これを電源電圧に乘算した消費電力値を算出し、前記駆動信号T_ON_AあるいはT_ON_Bの幅を加減することにより 出力電圧を変化させて、EL発光体の輝度を必要な水準で維持できるようにしたことを特徴とするEL発光回路。
(2)昇圧トランスを駆動させるための相補型トランジスタを作動させる上で、制御部が前記相補型トランジスタに出力する駆動信号のタイミングは、昇圧トランスの出力電圧勾配を追跡して、電圧勾配の極性が反対に変わろうとする瞬間に行われるようにしたことを特徴とする、(1)記載のEL発光回路の制御方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、昇圧トランスの2次コイルの出力電圧E01とEL発光体を充電する際、制御部は、2次コイルの出力電圧E01の勾配を追跡して、最適の視点にトランジスタの駆動信号を出力するようにする制御方法を具備することにより、エネルギー効率を最大に出す効果がある。
また、制御部はシャント抵抗を通じて測定した電圧値を、リアルタイムでA/D変換して、消費電流値に換算して、これを電源電圧に乗算して、P=EI(但し、Pは消費電力値、Eは電圧値、Iは消費電流値を表す。)がいつも同じ値となるよう、駆動信号の幅を調整して、EL発光体の輝度を必要な水準で維持する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のEL発光回路の回路図。
図2】本発明のEL発光回路の重要部分のタイミングを示すチャート図。
図3】従来のEL発光回路の回路図。
図4】従来のEL発光回路の重要部分のタイミングを示すチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、EL発光回路において、交流電圧によって発光するEL発光体と、EL発光体に電圧を供給する直流電源と、1次コイルに電流を流せば2次コイル電圧が上昇する昇圧トランスと、昇圧トランスを駆動させるトランジスタや、消費電流を測定するための目的で 前記トランジスタに流れる電流を電圧に変換して制御部に戻すシャント(Shunt)抵抗と、前記トランジスタにT_ON_A、T_OFF_A、T_ON_B、T_OFF_Bの駆動信号を出力する制御部から構成されていることを特徴とするEL発光回路である。
以下、本発明を一実施態様に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例
【0018】
本発明について、図1を参照して説明する。
本発明における、実施態様に従ったEL発光回路は、昇圧トランス(6)の2次コイル(63)の出力電圧E01とEL発光体を充電する際、制御部(1)が2次コイル(63)の出力電圧E01の勾配を追跡して、最適の視点にトランジスタ(2、3)の駆動信号を出力して、最高のエネルギー効率を出すことができるものである。
本発明のもう一つの特徴点は、トランジスタのエミッタ電流が事実上EL発光回路の主な消費電流なので、制御部でエミッタ電流を感知して、これを電源電圧に 乘算した値を通じて、EL発光体の輝度を必要な水準で維持する機能を持つことができるものである。
【0019】
EL発光回路の制御部(1)で、駆動信号T_ON_Aを出力すると、トランジスタ(2)がターンオン(Turn On)し、昇圧トランス(6)の1次コイル(61)に電流が流れて、昇圧トランス(6)の2次コイル(63)の出力電圧E01は、+Vppまで上昇する。次いでトランジスタ(2)には駆動信号T_OFF_Aが与えられて、トランジスタ(2)はOFF状態になる。この時昇圧トランス(6)の2次コイル(63)の出力電圧E01は-側に下降するが、-の頂点を通過し、再び+方向に反転した矢先、制御部(1)でこれを捕捉して駆動信号T_ON_Bを出力して、トランジスタ(3)をターンオン(Turn On)させる。トランジスタ(3)がターンオン(Turn On)になったら昇圧トランス(6)の1次コイル(62)に電流が流れて、昇圧トランス(6)の2次コイル(63)の出力電圧E01は-Vppまで下降する。次いでトランジスタ(3)には駆動信号T_OFF_Bが与えられて、トランジスタ(3)はOFF状態になる。この時昇圧トランス(6)の2次コイル(63)の出力電圧E01は、+側に上昇するが、+の頂点を通過し、再び-方向に反転した矢先、制御部(1)でこれを捕捉して駆動信号T_ON_Aを出力する。このような一連の動作が繰り返され、昇圧トランス(6)の2次コイル(63)には100Vrmsに相当するE01、交流電圧が発生して、これをEL発光体(7)に供給してEL発光体(7)を点灯させる。
前述したようにトランジスタがターンオフ(Turn Off)になると、昇圧トランスの2次コイルの出力電圧E01が上昇または下降をして、一定時点になれば、上昇または下降速度が鈍化しつつ、曲線が緩やかに変わる。その理由は昇圧トランスの2次コイルの出力電圧E01がその負荷に該当するEL発光体で行う充電作用が終わっていくからである。EL発光体は等価的にコンデンサに該当する。
【0020】
“+頂点(又は-頂点)”を通過して再び-方向(または+方向)で、反転した時、制御部(1)でこれを捕捉して駆動信号T_ON_A(またはT_ON_B)を出力するとしたのは、頂点を通過後再び方向を反転した時にトランジスタをターンオン(Turn On)させるのがエネルギー効率を高める最上の方法だからである。“頂点”は昇圧トランスで発生した電気エネルギーが部下であるEL発光体(7)に渡された時点なので、この時を逃さず、その次の駆動信号を出力して動作をつないでいくのがエネルギー効率を最大化する核心ポイントとなる。
例えば、“頂点”以前にその次の駆動信号が出力されてトランジスタがターンオン(Turn On)になったら、その頃から、頂点まで行く昇圧トランスの出力エネルギーが、トランジスタがターンオン(Turn On)した瞬間、熱で消えることになる。つまり、エネルギー効率が落ちることになる。
【0021】
本発明の実施態様におけるもう一つのポイントは、トランジスタのエミッタ電流が事実上EL発光体の消費電流なので、制御部でエミッタ電流を感知して、これを電源電圧に乘算した値を通じて、EL発光体の輝度を必要な水準で維持する機能を持つことができる。
【0022】
トランジスタ(2)とトランジスタ(3)のコレクタCとエミッタEの間に流れる電流は結局、シャント抵抗(4)を経て、接地へと流れている。シャント抵抗(4)に電流が流れれば、シャント抵抗(4)どちらかに電位差が発生し、その値を制御部(1)でA/D変換して、必要に応じて昇圧トランスの出力電圧を増加、または減少させ、EL発光体(7)の輝度を調整する。EL発光体(7)の輝度を高めるためには昇圧トランス(6)の2次コイル電圧E01を高めればいいが、昇圧トランス(6)の2次コイル電圧E01を高めるためには制御部(1)で、トランジスタ(2)、トランジスタ(3)の導通時間T_ON_A、T_ON_Bを増加させてくれる。
【0023】
逆に、EL発光体(7)の輝度を下げるためには、昇圧トランス(6)の2次コイル電圧E01を減らせばよいが、昇圧トランス(6)の2次コイル電圧E01を減らすためには制御部(1)で、トランジスタ(2)、トランジスタ(3)の導通時間T_ON_A、T_ON_Bを減らしてくれる。
制御部(1)はシャント抵抗(4)を通じて測定した電圧値を、リアルタイムでA/D変換して、消費電流値に換算して、これを電源電圧に乘算して、消費電力:P=EIがいつも同じ値となるよう、駆動信号T_ON_A、駆動信号T_ON_Bの幅を調整して、EL発光体の輝度を必要な水準で維持する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のEL発光回路とその制御方法は、EL発光回路において、エネルギー効率を高め、電源電圧が変動しても輝度が必要な水準で維持されるようにしたものであるから、無機EL発光体の輝度が補償されて乾電池の寿命が尽きるまで略一定の輝度が維持できるので、使い勝手が良くなり省資源にもなる為、輝度補償機能付き無機EL発光体を用いた照明器具の利用需要の可能性が高まり、無機EL発光体を用いた照明器具の技術分野の発展に寄与する。
【符号の説明】
【0025】
1:制御部(駆動信号A、駆動信号B、A/D変換、制御用マイクロプロセッサ)。
2、3、9:トランジスタ
4:シャント(Shunt)抵抗
5:直流電源
6:昇圧トランス
61、62、64:昇圧トランスの1次コイル
65:ベースコイル
63、66 :昇圧トランスの2次コイル
7:EL発光体
8:接地(波形測定の基準点)
10、11:バイアス(Bias)抵抗
12:コンデンサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【文献】特開平8-88081号公報
【文献】特開平2-288187号公報
図1
図2
図3
図4