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特許7017722ノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系発泡体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】ノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系発泡体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/06 20060101AFI20220202BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20220202BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20220202BHJP
   C08K 5/52 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
C08J9/06 CES
C08L23/00
C08K3/32
C08K5/52
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017191399
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019065151
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000177380
【氏名又は名称】三和化工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】倉田 誠一
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-209497(JP,A)
【文献】特開平09-235402(JP,A)
【文献】特開2005-036072(JP,A)
【文献】特開2001-233985(JP,A)
【文献】特表2015-503663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/06
C08L 23/00
C08K 3/32
C08K 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂100重量部に赤リン7~11重量部、ポリリン酸アンモニウム40~80重量部、亜リン酸アルミニウム12~18重量部、発泡剤、発泡助剤、架橋剤を添加混練し、得られた架橋製発泡性組成物を加圧下で加熱し、組成物中の発泡剤を部分的
に分解させた状態で、除圧して、中間発泡体を生成させ、次いで、該中間発泡体を常圧下で加熱し、未分解で残存する発泡剤を分解し、発泡させるノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系発泡体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系発泡体は、家電分野や自動車部品、建築分野等で、緩衝材、防音材、断熱材、シール材などの様々な分野で使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3308633号公報
【文献】特開2012-1572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存のノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系発泡体は、12秒垂直燃焼試験(14CFR Part25 Appendix F part1、以下14CFRと記載)に合格するため、航空機のシートクッションや詰め物等への使用が可能だが、60秒垂直燃焼試験(14CFR)には合格しないため、航空機の天井や壁、床等の組立材料への使用が認められなかった。
本発明者は60秒垂直燃焼試験(14CFR)には合格するノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系発泡体を得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系発泡体は、基材となるポリオレフィン系樹脂100重量部にポリリン酸アンモニウム40~80重量部、赤リン7~11重量部、亜リン酸アルミニウム12~18重量部、発泡剤、発泡助剤、架橋剤を添加混練し、得られた架橋製発泡性組成物を加圧下で加熱し、組成物中の発泡剤を部分的に分解させた状態で、除圧して、中間発泡体を生成させ、次いで、該中間発泡体を常圧下で加熱し、未分解で残存する発泡剤を分解し、発泡させてなるものである。
【0006】
本発明に係るノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系発泡体の製造方法は、基材となるポリオレフィン系樹脂100重量部にポリリン酸アンモニウム40~80重量部、赤リン7~11重量部、亜リン酸アルミニウム12~18重量部、発泡剤、発泡助剤、架橋剤を添加混練し、得られた架橋製発泡性組成物を加圧下で加熱し、組成物中の発泡剤を部分的に分解させた状態で、除圧して、中間発泡体を生成させ、次いで、該中間発泡体を常圧下で加熱し、未分解で残存する発泡剤を分解し、発泡させる製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法によれば、十分な難燃性を有し、且つ、人体や環境に悪影響を及ぼすハロゲンを含有しない発泡体が得られた。
得られた発泡体は、垂直燃焼試験(14CFR)に合格することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明でいうポリオレフィン系樹脂とは、エチレン-酢酸ビニル共重合体を除く、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、エチレン共重合体を挙げることができる。
【0009】
本発明でいう発泡剤とは、ポリオレフィン系樹脂の溶融温度以上の分解温度を有する化学発泡剤であり、例えばアゾ系化合物のアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等;ニトロソ系化合物のジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリニトロトリメチルトリアミン等;ヒドラジッド系化合物のp,p‘-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等;スルホニルセミカルバジッド系化合物のp,p‘-オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、トルエンスルホニルセミカルバジッド等がある。
【0010】
本発明でいう架橋剤とは、ポリエチレン系樹脂中において少なくともポリエチレン樹脂の流動開始温度以上の分解温度を有するものであって、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生してその分子間もしくは分子内に架橋結合を生じせしめるラジカル発生剤であるところの有機過酸化物、例えばジクミルパーオキサイド、1,1-ジターシャリーブチルパーオキサイド、1,1-ジターシャリーブチルパーオキシー3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルー2,5-ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5-ジメチルー2,5-ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン、α、α―ジターシャリーブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、ターシャリーブチルパーオキシケトン、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエートなどがあるが、その時に使用される樹脂によって最適な有機過酸化物を選択しなければならない。
【0011】
本発明において、発泡助剤を発泡剤の種類に応じて添加することができる。発泡助剤としては尿素を主成分とした化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸等を主成分とする化合物、即ち高級脂肪酸あるいは高級脂肪酸の金属化合物などがある。
【0012】
本発明においては、使用する組成物の物性の改良或いは価格の低下を目的として、架橋結合に著しい悪影響を与えない配合剤(充填剤)、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、あるいはパルプ等の繊維物質、又は各種染料、顔料並びに蛍光物質、その他常用のゴム及びプラスチック配合剤等を必要に応じて添加することができる。
【0013】
本発明のノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系発泡体の製造方法は、用いた有機過酸化物や発泡剤などによる発泡温度や架橋開始温度などにより、従来公知の方法及び適宜の条件で行うことができる。
【0014】
本発明でいう燃焼試験は、14CFR Part25 Appendix F part1(米国連邦規則集 14章パート25 付録F パート1)に規定される方法でおこなった。
【0015】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
低密度ポリエチレン(商品名:ノバテックLJ600、三菱化学株式会社製)100重量部にポリリン酸アンモニウム(商品名:FCP-770、株式会社鈴裕化学製)60重量部、赤リン9重量部、亜リン酸アルミニウム(商品名:APA-100、太平化学産業株式会社製)15重量部、アゾジカルボンアミド8.5重量部、ジクミルパーオキサイド0.8重量部、酸化亜鉛0.8重量部からなる組成物を100℃のミキシングロールにて混練し、145℃に加熱されたプレス内の金型(38×160×160mm)に練和物を充填し、65分間加圧下で加熱して中間発泡体を成形した。
【0017】
次いで、該中間発泡体を加熱水蒸気の流路を周囲に設けた気密でない開閉式金属金型(100×370×370mm)の略中央に載置し、6.0kg/cm2の加熱水蒸気を該流路に流して60分間加熱して残存する発泡剤及び架橋剤を分解して冷却後、発泡体を得た。
【0018】
得られた発泡体の見掛け密度は72kg/mであった。
得られた発泡体について、前記の60秒垂直燃焼試験(14CFR Part25)を行った結果、すべての要求を満たし合格した。
【実施例2】
【0019】
ポリリン酸アンモニウムの添加量を40重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。得られた発泡体の見掛け密度は71kg/mであり、60秒垂直燃焼試験に合格した。
【実施例3】
【0020】
ポリリン酸アンモニウムの添加量を80重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。得られた発泡体の見掛け密度は75kg/mであり、60秒垂直燃焼試験に合格した。
【実施例4】
【0021】
赤リンの添加量を7重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。得られた発泡体の見掛け密度は72kg/mであり、60秒垂直燃焼試験に合格した。
【実施例5】
【0022】
赤リンの添加量を11重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。得られた発泡体の見掛け密度は73kg/mであり、60秒垂直燃焼試験に合格した。
【実施例6】
【0023】
亜リン酸アルミニウムの添加量を12重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。得られた発泡体の見掛け密度は72kg/mであり、60秒垂直燃焼試験に合格した。
【実施例7】
【0024】
亜リン酸アルミニウムの添加量を18重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。得られた発泡体の見掛け密度は74kg/mであり、60秒垂直燃焼試験に合格した。
比較例1
【0025】
ポリリン酸アンモニウムの添加量を30重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。得られた発泡体の見掛け密度は71kg/mであり、60秒垂直燃焼試験を行ったが、不合格であった。
比較例2
【0026】
ポリリン酸アンモニウムの添加量を100重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させたが、発泡体が得られなかった。
比較例3
【0027】
赤リンの添加量を5重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。得られた発泡体の見掛け密度は70kg/mであり、60秒垂直燃焼試験を行ったが、不合格であった。
比較例4
【0028】
赤リンの添加量を13重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。得られた発泡体の見掛け密度は75kg/mであったが、気泡が不均一でピンホールがあり、使用に耐えられないものであった。
比較例5
【0029】
亜リン酸アルミニウムの添加量を10重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。得られた発泡体の見掛け密度は72kg/mであり、60秒垂直燃焼試験を行ったが、不合格であった。
比較例6
【0030】
亜リン酸アルミニウムの添加量を20重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させたが、発泡体が得られなかった。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明の方法によれば、60秒垂直燃焼試験(14CFR)に合格するノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系発泡体を製造できる。本発明の方法によって製造されたノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系発泡体は、航空機の天井や壁の内張板、仕切り、調理室の構造、キャビネットの壁、床の構造及び積載室の組立材料に使用できる。また、家電分野や自動車部品、建築分野等で、緩衝材、防音材、断熱材、シール材などの様々な分野に適用できる。