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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】味覚センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/333 20060101AFI20220202BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20220202BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
G01N27/333 331C
G01N27/327
G01N27/416 341M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017111097
(22)【出願日】2017-06-05
(65)【公開番号】P2018205140
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591282205
【氏名又は名称】島根県
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 淳
(72)【発明者】
【氏名】古田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】今若 直人
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-107339(JP,A)
【文献】特開平03-054446(JP,A)
【文献】特開2003-028830(JP,A)
【文献】特表平02-501860(JP,A)
【文献】国際公開第2012/121618(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子基質と、可塑剤と、脂質とを含む脂質膜であって、前記脂質がモノアルキルホス
フェートを含み、
前記モノアルキルホスフェートが、モノエチルヘキシルホスフェートである脂質膜。
【請求項2】
前記脂質が、前記脂質膜の30~65質量%で含まれる請求項1に記載の脂質膜。
【請求項3】
前記脂質が、前記脂質膜の35~60質量%で含まれる請求項1に記載の脂質膜。
【請求項4】
前記高分子基質が前記脂質膜の質量を基準に20~40%の量で含まれ、前記可塑剤が
前記脂質膜の質量を基準に、15~30%の量で含まれる請求項1~3のいずれか一項に
記載の脂質膜。
【請求項5】
前記モノアルキルホスフェートのアルキル基が、炭素数6~20の直鎖または分岐アル
キル基である請求項1~4のいずれか一項に記載の脂質膜。
【請求項6】
前記脂質は、モノアルキルホスフェートとジアルキルホスフェートを含む請求項1~5
のいずれか一項に記載の脂質膜。
【請求項7】
前記脂質がモノアルキルホスフェートおよびジアルキルホスフェート以外の脂質を0~
20質量%含む請求項1~6のいずれか一項に記載の脂質膜。
【請求項8】
導電体と、
前記導電体と電荷移動可能に連結された前記請求項1~のいずれか一項に記載の脂質
膜と、
を有する電極。
【請求項9】
前記導電体が、容器内の内部電解質に浸漬され、
前記容器は前記脂質膜で覆われた開口部が設けられている請求項に記載の電極。
【請求項10】
前記導電体が基板上に形成され、前記脂質膜が前記導電体の少なくとも一部を覆って形
成されている、請求項に記載の電極。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載の電極を作用極として含む味覚センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子基質と、可塑剤と、脂質とを混合して形成した脂質膜、当該脂質膜を備えた電極、および当該脂質膜を備えた味覚センサに関する。詳細には、旨味用味覚センサに関する。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料等の味を、人の官能検査によらず、検知し数値化する技術として、高分子基質と可塑剤と脂質とを混合して形成した脂質膜を有し、被測定液中の物質に感応して膜電位が変化する味覚センサ(味認識装置とも呼ばれる)を用いることが知られている(例えば、特許文献1および特許文献2ならびに非特許文献1等参照)。
【0003】
味は、人間の体に対する価値によって認知できる濃度が異なっており、例えば、その性質と疎水性・親水性の違いを利用して、塩味、酸味、旨味、苦味、渋味の味をそれぞれ感知する五種類の味覚センサにより、味を測定する方法が開発されてきた(例えば非特許文献1参照)。センサにより味を数値化することで、例えば、農畜水産物の産地ごとの味の比較および差別化、測定データを用いた市場開拓、製品の品質管理、研究開発の効率化等を図ることができると考えられている。
【0004】
一方、現在市販されている味覚センサは、それぞれ単独の味のみに応答するわけではなく、例えば、旨味測定用味覚センサは旨味のほか、酸味にも強く反応する。そのため、このような味覚センサでは、酸味と旨味が混在するような食品(例えば、出汁入りポン酢など)の旨味を正確に測定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2578370号
【文献】特許第3355412号
【非特許文献】
【0006】
【文献】「味の数値化。」独立行政法人科学技術振興機構広報・ポータル部広報課 JSTNews vol.4、No.5、2007,August,第6頁~第9頁(平成19年8月)
【文献】(Kiyoshi Toko, “A Taste Sensor”Meas. Sci. Technol., 9 (1998) 1919-1936)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情を鑑み、本発明の課題は、より選択性の高い味覚センサを提供すること、詳細には、より選択性の高い旨味測定用味覚センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を鋭意研究し、本発明者は、脂質としてモノアルキルホスフェートを含む脂質膜を備えた電極を用いた味覚センサが旨味について高い選択性で測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、高分子基質と、可塑剤と、脂質とを含む脂質膜であって、前記脂質がモノアルキルホスフェートを含む脂質膜に関する。本発明の一実施態様において、脂質は該脂質膜の30~65質量%で含まれる。好ましくは35~60質量%で含まれる。
【0010】
また、本発明の一実施態様において、高分子基質が脂質膜の質量を基準に20~40%の量で含まれ、可塑剤が脂質膜の質量を基準に、15~30%の量で含まれる。
【0011】
本発明の一実施態様において、モノアルキルホスフェートのアルキル基は、炭素数6~20の直鎖または分岐アルキル基である。
【0012】
さらに、本発明は、このような脂質膜と、該脂質膜と電荷移動可能に連結された導電体とを含む電極に関する。加えて、本発明は、このような脂質膜を有する電極を作用極として含む味覚センサも提供する。
【発明の効果】
【0013】
上記のように、本発明の味覚センサは、脂質にモノアルキルホスフェートを含む脂質膜を用いることで、旨味物質を、他の味物質に対して選択的にかつ高感度で測定することができる。特に、酸味物質の影響を抑え、従来の味覚センサよりも、正確に旨味を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)本発明の味覚センサの一実施形態の構成を示す。(b)本発明の味覚センサの作用極の拡大図である。
図2】(a)本発明の味覚センサの一実施形態の構成を示す。(b)本発明の味覚センサの作用極の拡大図である。
図3】比較例1として市販の旨味用味覚センサ(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製味認識装置TS-5000Z AAEセンサヘッド)を用いて味覚標準液を測定した結果である。
図4】比較例2の旨味用味覚センサを用いて味覚標準液を測定した結果である。
図5】比較例3の旨味用味覚センサを用いて味覚標準液を測定した結果である。
図6】実施例1の旨味用味覚センサを用いて味覚標準液を測定した結果である。
図7】実施例2~7の旨味用味覚センサを用いて味覚標準液を測定した結果から、脂質の含有比に対する旨味応答/酸味応答の値をプロットしたグラフである。
図8】実施例6の旨味用味覚センサを用いて味覚標準液を測定した結果である。
図9】比較例4の旨味用味覚センサを用いて味覚標準液を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、高分子基質と、可塑剤と、脂質とを混合して形成した脂質膜、当該脂質膜を備えた電極、および当該脂質膜を備えた味覚センサに関する。
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の単なる一例であって、当業者であれば、適宜設計変更可能である。
【0017】
味覚センサ
図1は本発明の味覚センサの一実施形態の構成を示す。本発明の味覚センサは、作用極、外部参照極、基準液、サンプル液あるいは洗浄液等を入れるための容器、作用極と外部参照極との電位差を測定する電圧検出器、ならびに得られたデータを出力し、計算するデータ出力部および演算装置部(図示せず)を有する(図1(a)参照)。
【0018】
図2は、図1と異なる作用極を含む本発明の味覚センサの他の実施形態の構成を示す(図2(a)参照)。
【0019】
電極
本発明の味覚センサは、少なくとも1種類の作用極と外部参照極とを含む。
【0020】
(作用極)
作用極は、導電体と、該導電体と電荷移動可能に連結された脂質膜とを含む。
【0021】
一実施態様において、導電体は容器内の内部電解質に浸漬され、該容器は脂質膜で覆われた開口部を有する(図1(a)参照)。詳細には、サンプル液中の呈味物質が脂質膜に吸着して、導電体と外部参照極との間で発生した電位差を測定する(図1(b)参照)。導電体は、好ましくはAg/AgCl電極であり、内部電解質溶液は、好ましくは飽和KCl溶液である。
【0022】
また本発明の他の実施態様において、本発明の作用極は、導電体が基板上に形成され、脂質膜が該導電体の少なくとも一部を覆って形成される(図2(a)および(b)参照)。
【0023】
基板は、絶縁体で、かつサンプル液等に浸漬し、測定するのに十分な強度を提供できるものであればよい。例えば、これらに限定されないが、ガラス、プラスティック、合成ゴム、セラミックス、または耐水処理した紙や木材等を用いることができる。
【0024】
導電体は、これらに限定されないが、アルミニウム、クロム、銅、銀、白金、金等の金属や炭素であってもよい。好ましくは、Ag/AgClである。基板上への導電体の形成は、当分野で一般的に用いられている方法を用いることができる。例えば、Ag/AgClペーストをスクリーン印刷法等により、基板上に塗布し、乾燥および焼成し、Ag/AgCl層を基板上に形成することができる。また、スパッタリングまたは蒸着法により、導電体層を形成してもよい。
【0025】
さらに、導電体層上に樹脂保護層を形成してもよい。樹脂保護層は開口部を有し、導電体層の少なくとも一部が後述する脂質膜と直接又は間接的に電荷移動可能に連結される。樹脂保護層は絶縁性であり、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリサルフォン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリビニルアルコール等のプラスティックや、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、のような合成樹脂等を用いることができる。
【0026】
樹脂保護層は紫外線等のエネルギー線によるエネルギー線硬化樹脂または熱硬化樹脂であってもよい。さらに、樹脂保護層は、導電体層上にパターン形成してもよい。例えば、導電体層上にエネルギー線硬化型樹脂保護層材料を塗布し、パターンマスク露光を行い、未硬化樹脂を現像してパターンを形成することができる。また、他の実施態様では、導電体層上にエネルギー線硬化型樹脂保護層材料をスクリーン印刷し、露光して、樹脂保護層を形成してもよい。
【0027】
脂質膜(後述)は導電体の少なくとも一部を覆うように形成される。導電体層上に樹脂保護層が形成されている場合には、樹脂保護層に形成された開口部等の樹脂保護層が導電体層を被覆していない部分上に脂質膜が形成され、導電体と脂質膜が電荷移動可能に連結される。
【0028】
(参照極)
外部参照極は、金属電極と内部電解質と液絡部とこれらをまとめる外部容器とで構成され、基準となる電位を長時間安定に示すことができればどのような構成であってもよい。好ましくは、金属電極としてAg/AgCl電極が、内部電解質として飽和KCl溶液が用いられる。
【0029】
脂質膜
本発明の脂質膜は、高分子基質と、可塑剤と、脂質とを混合して形成される。
【0030】
本発明の脂質膜に用いられる高分子基質は、脂質膜に基準液またはサンプル液等に浸漬し、測定するのに十分な強度を提供できるものであればよい。これらに限定されないが、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン、ポリサルフォン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチルスルフォン、ポリサルフォン・サルフォネート、アロマチックポリアミド、ポリグルタメート、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリビニールダイフロライド、ポリエチレン・ウレタン、ポリビニールブチラル、ポリビニールピリジン、ナイロン66、セルローズアセテート、セルローズアセテートブチレート、アガー、k-カラギーナン、ソジウムアルギネート、エポキシ、ポリp-キシレン、ポリテトラフルオロエチレン、うるし等を用いることができる。好ましくは、高分子基質は、脂質膜全体の質量を基準に20~40%の量で含まれる。
【0031】
本発明の脂質膜に用いられる可塑剤は、脂質膜に柔軟性を提供する。これらに限定されないが、可塑剤として、ジオクチルフェニルホスホネート(DOPP)のようなリン酸エステル、フタル酸エステル、脂肪酸エステル、アジピン酸エステル、クエン酸エステル、セバシン酸エステル等を用いることができる。好ましくは、可塑剤は、脂質膜全体の質量を基準に、15~30%の量で含まれる。
【0032】
本発明の脂質膜に用いられる脂質は、モノアルキルホスフェートを含む。該モノアルキルホスフェートのアルキル基は、好ましくは、炭素数6~20の直鎖または分岐アルキル基である。より好ましくは、オクチル基、エチルヘキシル基である。
【0033】
本発明の一実施態様において、モノアルキルホスフェートはジアルキルホスフェートとともに、本発明の脂質膜の脂質に用いられてもよい。例えば、本発明の脂質膜は、モノエチルヘキシルホスフェート(MEHP)とともに、ジエチルヘキシルホスフェート(DEHP)を含んでもよい。
【0034】
また、本発明の脂質膜は、モノアルキルホスフェートおよびジアルキルホスフェート以外の脂質を含んでもよい。例えば、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(TOMA)を脂質全体の20質量%まで含んでもよい。
【0035】
本発明の脂質膜に用いられる脂質は、脂質膜全体の30~65質量%で含まれ、好ましくは、35~60質量%の量で含まれる。
【0036】
【化1】
【0037】
本発明の脂質膜は、一般的な膜の形成方法を用いて得ることができる。例えば、高分子基質、可塑剤、および脂質が溶解しうる有機溶媒に、これらを溶解し、ガラス等の基材表面に塗布した後、溶媒を留去して膜を形成することができる。有機溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、クロロホルム、酢酸ブチル、トルエン、ヘキサン、メチルエチルケトン、ニトロベンゼン、シクロヘキサノン等を用いることができる。また、溶液の塗布には、スピンコーティング法、ディップ法、ドクターブレード法、ディスペンサー、印刷法等を用いることができる。
【実施例
【0038】
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものでない。なお、実施例中の部数や百分率は、特にことわりのない場合、質量基準である。
【0039】
(基準液および味覚標準液の作成)
測定電位の基準液および味覚標準液を以下の通りに作成した。
(1)基準液:30mM KCl水溶液+0.3mM 酒石酸
(2)塩味標準液:300mM KCl水溶液+0.3mM 酒石酸
(3)酸味標準液:30mM KCl水溶液+3mM 酒石酸
(4)旨味標準液:30mM KCl水溶液+0.3mM 酒石酸+10mM グルタミン酸水素ナトリウム
(5)苦味標準液:30mM KCl水溶液+0.3mM 酒石酸+0.01体積% イソα酸
(6)渋味標準液:30mM KCl水溶液+0.3mM 酒石酸+0.05質量%タンニン酸
【0040】
(比較例2の旨味味覚センサの作成)
ポリエチレンテレフタレート基板にAg/AgClペースト(Gwent Electronic Materials社製C2130809D5)をスクリーン印刷法により印刷し、120℃で60分焼成した。その後、Ag/AgCl電極部上に、紫外線硬化樹脂(互応化学工業株式会社製PSR-310)を、Ag/AgCl電極が露出するように開口部を設けてスクリーン印刷法により印刷し、さらに紫外線を照射して樹脂保護層を硬化させた。
【0041】
ついで、以下の材料の混合物を上記開口部に滴下し、乾燥させ、脂質膜を形成し、作用極を作製した。
ポリ塩化ビニル 400mg
ジオクチルフェニルホスホネート 300mg
ジエチルヘキシルホスホネート(DEHP) 200mg
トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(TOMA) 200mg
テトラヒドロフラン 5mL
【0042】
(比較例3の旨味味覚センサの作成)
比較例3として、以下の材料を混合して脂質膜を作成した以外は、比較例2と同様に作用極を作製した。
ポリ塩化ビニル 400mg
ジオクチルフェニルホスホネート 300mg
ジエチルヘキシルホスホネート(DEHP) 320mg
トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(TOMA) 80mg
テトラヒドロフラン 5mL
【0043】
(実施例1の旨味味覚センサの作成)
実施例1として、以下の材料を混合して脂質膜を作成した以外は、比較例2と同様に作用極を作製した。
ポリ塩化ビニル 400mg
ジオクチルフェニルホスホネート 300mg
エチルヘキシルホスフェート(モノ-、ジ-エステル混合物:以下、単に「EHP混合物」とする) 320mg
トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(TOMA) 80mg
テトラヒドロフラン 5mL
【0044】
(実施例2の旨味味覚センサの作成)
実施例2として、以下の材料を混合して脂質膜を作成した以外は、比較例2と同様に作用極を作製した。
ポリ塩化ビニル 400mg
ジオクチルフェニルホスホネート 300mg
EHP混合物 200mg
テトラヒドロフラン 5mL
【0045】
(実施例3~7の旨味味覚センサの作成)
EHP混合物の量を400mg、600mg、800mg、1000mg、および1200mgとした以外は、実施例2と同様に脂質膜を作成し、旨味味覚センサの作用極を作成した。
【0046】
(味覚標準液の測定)
上記のとおり、作成された実施例1~7ならびに比較例2および3の旨味味覚センサと、比較例1として市販の旨味味覚センサ(株式会社インテリジェントテクノロジー製味認識装置TS-5000Z AAEセンサヘッド)とを用いて、味覚標準液の電位を測定した。結果を表1と図3~8に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
比較例3と実施例1の結果を対比すると、脂肪酸としてDEHP単体とTOMAの混合物を用いた比較例3の旨味応答/酸味応答比が1.7であるのに対し、EHPにモノエチルヘキシルホスフェート(MEHP)を含む実施例1では3.9と倍以上に酸味応答を抑えることができた。
【0049】
さらに、実施例2~7の旨味応答/酸味応答をEHP混合物の含有量とともに図7に示す。本発明の味覚センサはEHP混合物を約35質量%含む場合からすでに市販の旨味味覚センサの1.5倍の選択性を有しており、最高7.9の旨味応答/酸味応答比を有する旨味味覚センサが得られた。
【0050】
(比較例4の旨味味覚センサの作成)
比較例4として、以下の材料を混合して脂質膜を作成した以外は、比較例2と同様に作用極を作製した。
ポリ塩化ビニル 400mg
ジオクチルフェニルホスホネート 300mg
オクチルホスホン酸(OPA) 400mg
テトラヒドロフラン 5mL
得られた作用極を用いた旨味味覚センサについて、上記と同様、味覚標準液の電位を測定した。結果を図9に示す。比較例4の旨味応答/酸味応答比は2.00であった。
【0051】
【化2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9