(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】刷版、版胴及び印刷ユニット
(51)【国際特許分類】
B41F 27/12 20060101AFI20220202BHJP
B41F 7/02 20060101ALI20220202BHJP
B41F 13/10 20060101ALI20220202BHJP
B41N 1/08 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
B41F27/12 D
B41F7/02 454
B41F13/10 324
B41N1/08
(21)【出願番号】P 2017089336
(22)【出願日】2017-04-28
【審査請求日】2020-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000151416
【氏名又は名称】株式会社東京機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】笠井 宣之
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-145707(JP,A)
【文献】特開2010-064460(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0291747(US,A1)
【文献】特開2007-260968(JP,A)
【文献】特開昭60-124250(JP,A)
【文献】特開2003-205597(JP,A)
【文献】実開昭60-005833(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 21/00 - 30/06
B41F 5/00 - 13/70
B41N 1/00 - 99/00
B41L 1/00 - 49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って延びる刷版装着溝及び該刷版装着溝に設けられたレジスターピンを有する版胴本体に装着される刷版であって、
前記刷版装着溝の咥え側エッジ部に係止可能に構成された咥え側端部と、
前記刷版装着溝内に設けられた刷版締め付け機構に係止可能に構成された咥え尻側端部と
を有し、
前記咥え側端部及び前記咥え尻側端部は、
共通の前記レジスターピンに係合可能な切り欠き部を有し、
前記咥え尻側端部の前記切り欠き部は、その全体において、前記咥え側端部の切り欠き部よりも広い開口幅を有する
ことを特徴とする刷版。
【請求項2】
軸方向に沿って延びる刷版装着溝及び該刷版装着溝に設けられたレジスターピンを有する版胴本体と、
前記版胴本体に装着される刷版と、
前記版胴本体の前記刷版装着溝内に設けられた刷版締め付け機構と
を備える版胴であって、
前記刷版は、前記刷版装着溝の咥え側エッジ部に係止可能に構成された咥え側端部と、前記刷版装着溝内に設けられた刷版締め付け機構に係止可能に構成された咥え尻側端部とを有し、
前記咥え側端部及び前記咥え尻側端部は、
共通の前記レジスターピンに係合可能な切り欠き部を有し、
前記咥え側端部の前記切り欠き部は、前記レジスターピンの幅と同寸法の開口幅を有し、
前記咥え尻側端部の前記切り欠き部は、前記レジスターピンとの間に隙間を有した状態で該レジスターピンに嵌合可能に構成されている
ことを特徴とする版胴。
【請求項3】
請求項2に記載の版胴と、
印刷用ブランケットが装着されるブランケット胴と、
前記版胴の前記刷版を介して前記ブランケット胴の前記印刷用ブランケットにインキを供給するインキ供給装置と、
前記版胴本体に対して前記刷版を着脱させる刷版自動着脱装置と
を備える印刷ユニットであって、
前記刷版自動着脱装置は、前記版胴本体に対する前記刷版の装着時において、前記刷版装着溝の咥え側エッジ部に前記刷版の前記咥え側端部が係止された状態で順方向に回転する前記版胴本体に対して該刷版を押し付け、かつ、該刷版装着溝に到達した該刷版の前記咥え尻側端部を該刷版装着溝に押し込むことで、該咥え尻側端部に形成された前記切り欠き部を前記レジスターピンに係合させるよう構成されている
ことを特徴とする印刷ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット輪転印刷機に用いられる刷版、版胴及び印刷ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、新聞用オフセット輪転印刷機に用いられる印刷ユニットは、多数のインキ供給ローラーを有するインキ供給装置と、湿し水を供給する湿し水供給装置と、刷版が装着される版胴と、ブランケットが装着されるブランケット胴とを備えている。この印刷ユニットに用いられる刷版には、親油性の印刷画線部と、親水性の非画線部とが設けられており、親水性の非画線部に湿し水供給装置から湿し水が供給された状態でインキ供給装置からインキが供給されることにより、親油性の印刷画線部のみにインキが塗布されるよう構成されている。そして、この印刷ユニットは、インキ供給装置から供給されたインキが版胴を介してブランケット胴に供給され、ブランケット胴が走行する連続紙と所定の圧力で接触することにより、連続紙に刷版の内容(文字や画像等)が転写されるよう構成されている。
【0003】
従来の版胴100は、4頁分の刷版110を並べて装着可能な軸方向の長さを有する印刷胴であり、
図8及び
図9に示すように、軸方向に沿って延びる刷版装着溝102と、刷版装着溝102に連続する内部空間である収容部104と、刷版装着溝102に設けられたレジスターピン106(
図9参照)とを有している。収容部104には、刷版110の咥え尻側端部114を刷版装着溝102内に引き込むことで、刷版110を版胴100の周面に巻き付けるよう構成された刷版締め付け機構(図示せず)が埋設されている。レジスターピン106は、版胴100に対する刷版110の取付位置を特定するためのピン部材であり、1つの刷版110に対して1つ設けられている。なお、
図9では、1頁分の刷版110に対応する領域のみを拡大して示している。
【0004】
従来の刷版110は、長手方向の一端部に、版胴100の刷版装着溝102の一方側の咥え側エッジ部102aに係止可能な咥え側端部112を有し、他端部に、刷版締め付け機構によって刷版装着溝102内に引き込まれるよう構成された咥え尻側端部114を有している。刷版110の咥え側端部112及び咥え尻側端部114には、それぞれ、版胴100のレジスターピン106に嵌合可能な切り欠き部113,115が形成されており、これら切り欠き部113,115をレジスターピン106に嵌合させることにより、刷版110の位置決めを行うよう構成されている。
【0005】
このような従来の新聞用オフセット輪転印刷機では、刷版110の交換によって、印刷画像の変更が行われる。しかしながら、このような刷版110の交換作業は、複数の版胴100に対して行う必要があると共に、版胴100毎に4頁分の刷版110を交換する必要があるため、煩雑であり、作業負担が大きいという問題がある。
【0006】
このような問題を解決するために、近年、版胴100に対して刷版110を自動で装着する刷版自動着脱装置が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1の刷版自動着脱装置は、
図10(a)~
図10(d)に示すように、版胴100の咥え側エッジ部102aに手作業で刷版110の咥え側端部112を係止させ、次に水着けローラー120を版胴100に圧接させた状態で版胴100を正回転させることで、刷版110を版胴100と水着けローラー120との間を通過させて、版胴100の外周面に密着させつつ咥え尻側端部114を刷版装着溝102内に挿入させるよう構成されている。なお、
図10(a)は、版胴100が停止した状態で、手作業によって、刷版110の咥え側端部112を版胴100の咥え側エッジ部102aに係止させた状態を示しており、
図10(b)は、水着けローラー120を版胴100に圧接させた状態を示している。また、
図10(c)は、刷版自動着脱装置のレバー押さえローラーによって刷版締め付け機構を作動させた状態を示しており、
図10(d)は、版胴100に対する刷版110の装着が完了した状態を示している。
【0007】
特許文献1の刷版自動着脱装置は、このような構成を備えることにより、版胴100の回転中に刷版110の咥え側端部112を咥え側エッジ部102aに確実に係止させ、意図しない脱落を防止することが可能となるため、刷版110を版胴100の外周面に密着状態で装着させることができる。また、特許文献1の刷版自動着脱装置は、水着けローラー120を版押さえローラーとして活用することにより、別に専用の版押さえローラーを設ける場合と比較して、装置構成を簡素化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の刷版110は、版胴100の周方向に対して斜めに傾いた状態で巻き付いてしまう装着不良や、印刷稼働時のガタツキ等を防止するために、咥え側端部112及び咥え尻側端部114の切り欠き部113,115の開口幅がレジスターピン106の幅と同寸法となるよう形成されている。このため、刷版自動着脱装置によって咥え尻側端部114の切り欠き部115をレジスターピン106に嵌合させる際に、咥え尻側端部114の切り欠き部115とレジスターピン106との位置が僅かにずれただけでも、咥え尻側端部114がレジスターピン106と干渉し、咥え尻側端部114の破損や、刷版110の装着不良に伴う見当精度不良を引き起こすおそれがある。また、咥え尻側端部114がレジスターピン106と干渉した状態で印刷が開始されると、干渉部位に対する応力集中によって版切れ等の事故が起きるおそれがある。
【0010】
一方、レジスターピン106に対する干渉を避けるために咥え側端部112及び咥え尻側端部114の切り欠き部113,115の開口幅をレジスターピン106の幅よりも大きく形成すると、版胴100に対して斜めに巻き付いてしまうおそれがあると共に、印刷稼働時にガタツキが生じるおそれがあるため、版胴100に対する装着精度を維持することが困難であるという問題が生じる。
【0011】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、刷版自動着脱装置によって版胴に刷版を装着させる場合において、版胴に対する刷版の装着精度を維持しつつ、刷版の破損を防止することが可能な刷版、版胴及び印刷ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る刷版は、軸方向に沿って延びる刷版装着溝及び該刷版装着溝に設けられたレジスターピンを有する版胴本体に装着される刷版であって、前記刷版装着溝の咥え側エッジ部に係止可能に構成された咥え側端部と、前記刷版装着溝内に設けられた刷版締め付け機構に係止可能に構成された咥え尻側端部とを有し、前記咥え側端部及び前記咥え尻側端部は、前記レジスターピンに係合可能な切り欠き部を有し、前記咥え尻側端部の前記切り欠き部は、前記咥え側端部の切り欠き部よりも広い開口幅を有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る版胴は、上述した刷版と、軸方向に沿って延びる刷版装着溝及び該刷版装着溝に設けられたレジスターピンを有する版胴本体と、前記版胴本体の前記刷版装着溝内に設けられた刷版締め付け機構とを備える版胴であって、前記咥え側端部の前記切り欠き部は、前記レジスターピンの幅と同寸法の開口幅を有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る印刷ユニットは、上述した版胴と、印刷用ブランケットが装着されるブランケット胴と、前記版胴の前記刷版を介して前記ブランケット胴の前記印刷用ブランケットにインキを供給するインキ供給装置と、前記版胴本体に対して前記刷版を着脱させる刷版自動着脱装置とを備える印刷ユニットであって、前記刷版自動着脱装置は、前記版胴本体に対する前記刷版の装着時において、前記刷版装着溝の咥え側エッジ部に前記刷版の前記咥え側端部が係止された状態で順方向に回転する前記版胴本体に対して該刷版を押し付け、かつ、該刷版装着溝に到達した該刷版の前記咥え尻側端部を該刷版装着溝に押し込むことで、該咥え尻側端部に形成された前記切り欠き部を前記レジスターピンに係合させるよう構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、刷版自動着脱装置によって版胴に刷版を装着させる場合において、版胴に対する刷版の装着精度を維持しつつ、刷版の破損を防止することが可能な刷版、版胴及び印刷ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る印刷ユニットの概略構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る版胴及び刷版自動着脱装置の概略構成を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る刷版の概略構成を示す図である。
【
図4】
図4(a)は、後退状態における刷版押さえ機構の概略構成を示す側面図であり、
図4(b)は、前進状態における刷版押さえ機構の概略構成を示す側面図である。
【
図5】
図5(a)~
図5(c)は、版掛工程における刷版押さえ機構、版胴及び刷版の状態を概略的に示す工程図である。
【
図6】版胴に対する刷版の装着時における刷版着脱操作機構の概略構成を示す側面図であり、
図6(a)は、後退状態における刷版着脱操作機構の概略構成を示しており、
図6(b)は、前進状態における刷版着脱操作機構の概略構成を示している。
【
図7】版胴に対する刷版の取り外し時における刷版着脱操作機構の概略構成を示す側面図であり、
図7(a)は、後退状態における刷版着脱操作機構の概略構成を示しており、
図7(b)は、前進状態における刷版着脱操作機構の概略構成を示している。
【
図8】従来の版胴及び刷版の概略構成を示す図である。
【
図9】従来の版胴及び刷版の概略構成を部分的に拡大して示す図である。
【
図10】
図10(a)~
図10(d)は、特許文献1に記載の刷版自動着脱装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
本実施形態に係るオフセット輪転印刷機は、連続紙(被印刷体)をロール状に巻いたロール紙をセットする連続紙供給ユニット(図示せず)と、連続紙供給ユニットから供給される連続紙の両面にオフセット印刷を施す複数の印刷ユニット1a,1bと、オフセット印刷後の連続紙を断裁して個々の枚葉状シートを形成すると共に、一枚の枚葉状シート又は複数の枚葉状シートからなる枚葉状シート群を折り畳んで折丁を形成する折機(図示せず)と、折機により形成された折丁を更に二つ折りする等の所定の処理を行い集積する後処理機構(図示せず)と、各構成の各種制御を実行する一又は複数の制御部(図示せず)と、各種設定情報を入力するための設定入力部(図示せず)とを備えている。なお、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機において、連続紙供給ユニット、折機、後処理機構、制御部及び設定入力部は、種々の公知のものを任意に用いることができるため、その説明を省略する。
【0019】
上段印刷ユニット1a及び下段印刷ユニット1bは、それぞれ、
図1に示すように、多数のインキ供給ローラーを有する一対のインキ供給装置4と、湿し水を供給する一対の湿し水供給装置5と、刷版7A~7Dが装着された一対の版胴2と、印刷用ブランケット(図示せず)が装着された一対のブランケット胴3と、操作側の版胴2に近接して配置された刷版自動着脱装置10とを備えている。また、上段印刷ユニット1a及び下段印刷ユニット1bは、共通の構成として、各構成の各種制御を実行する印刷制御部(図示せず)を備えている。各印刷ユニット1a,1bは、従来の印刷ユニットと同様に、インキ供給装置4から供給されたインキが版胴2の刷版7A~7Dを介してブランケット胴3の印刷用ブランケットに供給され、印刷用ブランケットが走行する連続紙(被印刷体)と所定の圧力で接触することにより、連続紙に刷版の内容(文字や画像等)が転写されるよう構成されている。なお、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機において、インキ供給装置4、湿し水供給装置5及びブランケット胴3は、種々の公知のものを任意に用いることができるため、その説明を省略する。
【0020】
版胴2は、
図2に示すように、軸方向に沿って延びる直線状の刷版装着溝6b及びこの刷版装着溝6bから径方向内側に延びる内部空間である収容部(図示せず)が形成された円柱状の版胴本体6と、版胴本体6の収容部内に埋設された刷版締め付け機構50と、刷版締め付け機構50によって版胴本体6の外周面に装着される刷版7A~7Dとを備えている。
【0021】
版胴本体6は、円柱状に形成された印刷胴であり、
図2に示すように、両端部にそれぞれ設けられた取付け軸6aと、4頁分の刷版7A~7Dを軸方向に並べて装着可能な刷版装着領域Rを有する周面と、軸方向に沿って延びる刷版装着溝6bと、刷版装着溝6bに連続する内部空間である収容部(図示せず)と、刷版装着領域Rよりも端部側にそれぞれ形成された操作開口部6cと、刷版装着溝6bに設けられた複数の(本実施形態では4つの)レジスターピン6dとを有している。本実施形態において、版胴本体6は、その周面が、新聞1頁の横方向の長さの4倍に略等しい軸方向の長さ(W)と、新聞1頁の縦方向の長さと略等しい周方向の長さ(L)とを有する、所謂4(W)×1(L)型の版胴である。
【0022】
版胴本体6は、
図2に示すように、両端部の取付け軸6aが軸受け(図示せず)を介して一対のフレームF,Fに取り付けられ、一方の取付け軸6aに接続された回転駆動手段(図示せず)により所定の速度で回転駆動されるよう構成されている。
【0023】
レジスターピン6dは、版胴本体6に対する刷版7A~7Dの取付位置を特定するためのピン部材であり、1つの刷版に対して1つ(本実施形態では、1頁分の刷版を軸方向に4枚並べて装着する構成であるため、版胴本体6の軸方向に所定の間隔をおいて4つ)設けられている。レジスターピン6dの幅は、刷版7A~7Dの咥え側端部7aの切り欠き部8aの開口幅W1と同寸法で、かつ、刷版7A~7Dの咥え尻側端部7bの切り欠き部8bの開口幅W2よりも小さい寸法を有している。このようなレジスターピン6dの幅W1は、任意に設定することが可能であり、例えば8.5mmに設定することが可能である。
【0024】
収容部には、刷版7A~7Dの咥え尻側端部7bを刷版装着溝6b内に引き込むことで、刷版7A~7Dを版胴本体6の周面に巻き付けるよう構成された刷版締め付け機構50が埋設されている。操作開口部6cは、刷版締め付け機構50の第1~第4操作機構52a~52dを操作するための開口である。なお、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機において、版胴本体6は、種々の公知のものを任意に用いることができるため、その詳細な説明を省略する。
【0025】
刷版7A~7Dは、新聞1頁に相当する大きさを有する可撓性の金属製薄板材から形成されており、
図3に示すように、長手方向の一端部に、版胴本体6の刷版装着溝6bの一方側のエッジ部(咥え側エッジ部)に係止可能な咥え側端部7aを有し、他端部に、刷版締め付け機構50によって刷版装着溝6b内に引き込まれるよう構成された咥え尻側端部7bを有している。刷版7A~7Dの咥え側端部7a及び咥え尻側端部7bには、それぞれ、版胴本体6のレジスターピン6dに係合可能な切り欠き部8a,8bが形成されており、これら切り欠き部8a,8bをレジスターピン6dに係合させることにより、刷版7A~7Dの位置決めを行うよう構成されている。
【0026】
刷版7A~7Dの咥え側端部7aの切り欠き部8aは、レジスターピン6dの幅と同寸法の開口幅W1を有しており、レジスターピン6dに隙間無く嵌合するよう構成されている。刷版7A~7Dの咥え尻側端部7bの切り欠き部8bは、レジスターピン6dの幅及び咥え側端部7aの切り欠き部8aの開口幅W1よりも広い開口幅W2を有しており、レジスターピン6dとの間に僅かな隙間を有した状態でレジスターピン6dに嵌合するよう構成されている。ここで、「同寸法」とは、刷版7A~7Dの咥え側端部7aの切り欠き部8aがレジスターピン6dに隙間無く嵌め込まれる寸法を意味する。
【0027】
このような咥え尻側端部7bの切り欠き部8bの開口幅W2は、任意に設定することが可能である。ただし、咥え尻側端部7bの切り欠き部8bの開口幅W2と、レジスターピン6dの幅及び咥え側端部7aの切り欠き部8aの開口幅W1との差が0.5mm未満であると、当該差が0.5mm以上に設定される場合と比較して、咥え尻側端部7bの切り欠き部8bがレジスターピン6dと干渉し易くなる。また、当該差が1.5mmを超えると、当該差が1.5mm以下に設定される場合と比較して、版胴本体6に対する刷版7A~7Dの装着精度を維持することが困難となる。したがって、咥え尻側端部7bの切り欠き部8bの開口幅W2は、レジスターピン6dの幅及び咥え側端部7aの切り欠き部8aの開口幅W1よりも0.5mm~1.5mm程度、例えば1mm程度大きい値に設定することが好ましい。例えば、レジスターピン6dの幅及び咥え側端部7aの切り欠き部8aの開口幅W1が8.5mmに設定されている場合には、咥え尻側端部7bの切り欠き部8bの開口幅W2は、9.5mm程度の開口幅、すなわち、レジスターピン6dの両側部との間にそれぞれ0.5mm程度の隙間が形成される開口幅に設定することが可能である。
【0028】
刷版締め付け機構50は、4つの角変位軸(図示せず)が同軸となるように軸方向に沿って連結されることにより構成された係止バー部材(図示せず)と、係止バー部材の各角変位軸を独立して回転させる4つの操作機構(第1~第4操作機構52a~52d)とを備える所謂ロックアップ式版締め装置である。4つの角変位軸は、それぞれ、新聞1頁の横方向の長さに略等しい軸方向の長さを有しており、刷版7A~7Dの咥え尻側端部7bがそれぞれ係止可能に構成されている。また、4つの角変位軸は、それぞれ異なる操作機構(第1~第4操作機構52a~52d)と接続されており、接続された操作機構を操作することにより、軸を中心としてそれぞれ独立して刷版7A~7Dを牽引又は緩める方向に軸回転(角変位)するよう構成されている。第1~第4操作機構52a~52dは、
図2に示すように、それぞれ、対応する角変位軸を操作するための操作レバー54を備えており、操作レバー54が操作されることにより、刷版7A~7Dを版胴本体6の外周面上に締め付ける装着位置と、係止バー部材と刷版7A~7Dの咥え尻側端部7bとの係合が解除される解除位置との間において、対応する角変位軸を角変位させるよう構成されている。なお、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機において、刷版締め付け機構50は、種々の公知のものを任意に用いることができるため、その詳細な説明を省略する。
【0029】
刷版自動着脱装置10は、
図1に示すように、版胴2が後述する版掛位置(刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に刷版7A~7Dの咥え側端部7aを係止させることが可能となる位置)に停止した状態における、刷版装着溝6bと整合する位置に設けられており、版胴2に対して刷版7A~7Dを自動で装着させることが可能で、かつ、版胴2から刷版7A~7Dを自動で取り外すことが可能に構成されている。
【0030】
具体的には、刷版自動着脱装置10は、
図2に示すように、左右一対のブラケット14を介して一対のフレームF,F間に懸架された固定ベース部材12と、版胴2に対して進退可能な状態で固定ベース部材12に取り付けられた複数(本実施形態では4つ)の刷版押さえ機構20a~20d及び刷版着脱操作機構30a~30dと、固定ベース部材12の前面を覆うように取り付けられた前部カバー16(
図4及び
図5参照)とを備えている。
【0031】
刷版押さえ機構20a~20dは、
図2に示すように、それぞれ、固定ベース部材12の上面部の内面(下面)に取り付けられたエアーシリンダー22と、エアーシリンダー22のシリンダーロッド23の先端に取り付けられた可動ベース部材24と、可動ベース部材24に固定されたガードブラケット26(
図4及び
図5参照)と、ガードブラケット26に取り付けられたガード部材27(
図4及び
図5参照)と、可動ベース部材24に取り付けられた複数の押さえコロ部材28a,28bとを備えている。刷版押さえ機構20a~20dは、刷版7A~7Dと1対1で対応するように設けられており、それぞれ独立して動作可能に構成されている。
【0032】
可動ベース部材24は、
図2に示すように、各刷版7A~7Dの横方向の長さと略等しい長さを有する長尺な薄板部材からなり、シリンダーロッド23の進退に伴って、版胴2に対して接近又は離間するよう構成されている。各可動ベース部材24の下面には、
図4及び
図5に示すように、その前端縁部に、下方に向けて突出するようにガードブラケット26が取り付けられると共に、ガードブラケット26よりも後方側の領域に、複数の押さえコロ部材28a,28bが取り付けられている。各可動ベース部材24の上面には、固定ベース部材12の背面部の内面(正面)に固定されたリニアブッシュ13aにガイドされるシャフト13bが設けられている。
【0033】
ガードブラケット26は、版胴本体6に対する刷版7A~7Dの着脱時に、誤って指等を版胴2と押さえコロ部材28a,28bとの間に巻き込まないようにするためのフィンガーガードとして機能するよう構成されている。ガード部材27は、ガードブラケット26よりも柔軟な材料、例えばポリアミド等の樹脂材料等から形成されており、版胴本体6に対する刷版7A~7Dの着脱時に、ガードブラケット26に刷版7A~7Dが直接接触して損傷しないようにするためのガードとして機能するよう構成されている。
【0034】
複数の押さえコロ部材28a,28bは、
図2に示すように、可動ベース部材24の長手方向の略中央に配された1つの中央押さえコロ部材28aと、中央押さえコロ部材28aを中心として長手方向に離間して配された2つの周辺押さえコロ部材28bとから構成されている。中央押さえコロ部材28a及び周辺押さえコロ部材28bは、互いに等しい径を有しており、可動ベース部材24が版胴2の周面に接近した状態(前進位置)において、均一な押さえ付け力で版胴本体6の周面に刷版7A~7Dを押さえ付けることが可能に構成されている。2つの周辺押さえコロ部材28bは、
図4及び
図5に示すように、互いに回転軸が同軸となるよう、版胴2の軸方向に沿って整列して配置されている。一方、中央押さえコロ部材28aは、2つの周辺押さえコロ部材28bよりも、版胴2の順方向の上流側に微小距離x(例えば、1~5mm)だけ位置をずらして配されている。なお、押さえコロ部材28a,28bとしては、例えば、直径25mmの円筒状のウレタン製ローラーを好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。また、中央押さえコロ部材28a及び周辺押さえコロ部材28bの位置及び数は、必要に応じて、任意の数及び位置に変更することが可能である。
【0035】
本実施形態に係る刷版押さえ機構20a~20dは、以上の構成を備えることにより、例えば
図4及び
図5に示すように、版胴本体6に対する刷版7A~7Dの装着時において、刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に刷版7A~7Dの咥え側端部7aが係止された状態で順方向に回転する版胴本体6に対して、複数の押さえコロ部材28a,28bによって刷版7A~7Dを押し付けるよう構成されている。この際、本実施形態に係る刷版押さえ機構20a~20dでは、中央押さえコロ部材28aが周辺押さえコロ部材28bよりも版胴2の順方向の上流側に位置をずらして配されていることにより、周辺押さえコロ部材28bに先行して、中央押さえコロ部材28aによって刷版7A~7Dの横方向の略中央部を押圧することが可能となる。これにより、中央押さえコロ部材28a及び周辺押さえコロ部材28bによって均一な押さえ付け力で版胴本体6の周面に刷版7A~7Dを押さえ付けた状態において、中央押さえコロ部材28aから各周辺押さえコロ部材28bに向かう方向、すなわち、刷版7A~7Dの横方向の中央部から両端部に向かう方向に向けて刷版7A~7Dに押さえ付け力を付与することが可能となるため、刷版7A~7Dの装着精度を向上させることが可能となる。
【0036】
また、本実施形態に係る刷版押さえ機構20a~20dは、例えば
図5(c)に示すように、刷版装着溝6bに到達した刷版7A~7Dの咥え尻側端部7bを中央押さえコロ部材28aによって刷版装着溝6bに押し込むことで、咥え尻側端部7bに形成された切り欠き部8bをレジスターピン6dに嵌合させるよう構成されている。この際、本実施形態に係る刷版押さえ機構20a~20dでは、上述のとおり、周辺押さえコロ部材28bに先行して、中央押さえコロ部材28aによって刷版7A~7Dの横方向の略中央部を押圧するよう構成されているため、中央押さえコロ部材28aによって刷版7A~7Dの咥え尻側端部7bの近傍を刷版装着溝6bに向けて押圧し、版胴本体6のレジスターピン6dに対する咥え尻側端部7bの嵌合をスムーズかつ確実に行うことが可能となる。
【0037】
さらに、本実施形態に係る刷版押さえ機構20a~20dは、版胴本体6からの刷版7A~7Dの取り外し時においても、刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に刷版7A~7Dの咥え側端部7aが係止された状態で逆方向に回転する版胴本体6に対して、複数の押さえコロ部材28a,28bによって刷版7A~7Dを押し付け、刷版7A~7Dのばたつきを抑制するよう構成されている。
【0038】
刷版着脱操作機構30a~30dは、
図2に示すように、第1~第4操作機構52a~52dと整合する位置にブラケット32を介してそれぞれ1つずつ設けられている。刷版着脱操作機構30a~30dは、それぞれ、ブラケット32に取り付けられたエアーシリンダー34と、エアーシリンダー34のシリンダーロッド36の先端に取り付けられたレバー押圧部材38とを備えており、シリンダーロッド36の進退動作によってレバー押圧部材38を版胴2に対して進退移動させるよう構成されている。
【0039】
刷版着脱操作機構30a~30dは、
図6に示すように、刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に刷版7A~7Dの咥え側端部7aが係止され、刷版装着溝6b内に咥え尻側端部7bが押し込まれた状態の版胴2に対してレバー押圧部材38が前進し、対応する操作機構(第1~第4操作機構52a~52d)の操作レバー54の先端部側を下方(版胴2の径方向内側)に押し下げることにより、対応する角変位軸を締め付け方向に回転させ、版胴2の周面に刷版7A~7Dを自動で装着させるよう構成されている。
【0040】
また、刷版着脱操作機構30a~30dは、
図7に示すように、刷版7A~7Dが装着された状態の版胴2に対してレバー押圧部材38が前進し、対応する操作機構(第1~第4操作機構52a~52d)の操作レバー54の基端部側を下方(版胴2の径方向内側)に押し下げることにより、操作レバー54のロックを解除し、ロックが解除された角変位軸を締め付け方向とは反対の方向に回転させ、これにより、刷版締め付け機構50の係止バー部材と刷版7A~7Dの咥え尻側端部7bとの係合を解除するよう構成されている。
【0041】
印刷制御部は、本実施形態ではPLC(Programmable Logic Controller)であり、版胴2の回転制御と、刷版押さえ機構20a~20d及び刷版着脱操作機構30a~30dの動作制御とを含む、種々の印刷制御を実行可能に構成されている。具体的には、印刷制御部は、エンコーダー等の回転位置検出器により検出された版胴2の回転動作の情報(回転速度や回転位置等)に基づき、版胴2を各刷版着脱工程における所定の停止位置に正確に停止させるよう構成されている。また、印刷制御部は、版胴2の回転動作の情報に基づいて、版胴2の回転動作に合わせて、各刷版押さえ機構20a~20d及び各刷版着脱操作機構30a~30dを適宜のタイミングで独立して動作させるよう構成されている。
【0042】
下段印刷ユニット1bの一対のフレームF,F間には、
図1に示すように、版掛位置釦(図示せず)と、版掛準備釦(図示せず)と、版掛釦(図示せず)と、版取外釦(図示せず)とが配された操作部9が設けられている。印刷制御部は、これらの釦が作業者によって押下されるか、又は、設定入力部から実行指示を受け付けた際に、版胴2及び刷版自動着脱装置10を自動で動作させることにより、版胴本体6に対して任意の刷版7A~7Dを自動で装着及び脱離させる(取り外す)ことが可能に構成されている。また、操作部9には、上段印刷ユニット1a及び下段印刷ユニット1bにそれぞれ設けられている各刷版押さえ機構20a~20d及び各刷版着脱操作機構30a~30dの中から動作させる刷版押さえ機構20a~20d及び刷版着脱操作機構30a~30dを選択するための面選択釦(図示せず)が更に配されている。
【0043】
次に、本実施形態に係る刷版自動着脱装置10を用いて版胴本体6に対して刷版7A~7Dを自動で着脱させる方法について、説明する。
【0044】
まず、作業者によって操作部9の版掛位置釦が押下されることで、版胴本体6が版掛位置まで順方向に回転し、停止する。この状態において、
図4(a)に示すように、作業者によって、刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に刷版7A~7Dの咥え側端部7aが係止される(版掛準備工程)。次に、作業者によって版掛準備釦が押下されることで、
図4(b)に示すように、「脱」状態となっている刷版押さえ機構20a~20dが版胴本体6に対して前進し、複数の押さえコロ部材28a,28bによって版胴本体6の周面に刷版7A~7Dを押さえ付ける(刷版押さえ機構前進工程)。その後、作業者によって版掛釦が押下されることで、
図5(a)~
図5(c)に示すように、版胴本体6が締め付け位置(操作レバー54の先端部がレバー押圧部材38の突出部と整合する位置)まで順方向に略1回転する(版掛工程)。これにより、版胴本体6の外周面に刷版7A~7Dが密着して巻き付けられると共に、中央押さえコロ部材28aによって刷版7A~7Dの咥え尻側端部7bが刷版装着溝6bに押し込まれ、咥え尻側端部7bの切り欠き部8bがレジスターピン6dに嵌合される。そして、版胴本体6が締め付け位置にて停止した後に、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、刷版着脱操作機構30a~30dが版胴本体6に対して前進し、レバー押圧部材38の突出部によって版胴2の刷版締め付け機構50の操作レバー54の先端部が押し下げられる(版装着工程)。これにより、対応する角変位軸が締めつけ方向に回転し、刷版7A~7Dの咥え尻側端部7bが版胴2の内部に引き込まれることで、版胴本体6の外周面に刷版7A~7Dが自動で装着される。版胴本体6に対する刷版7A~7Dの装着が完了した後に、刷版押さえ機構20a~20d及び刷版着脱操作機構30a~30dが版胴2から後退する(刷版自動着脱装置後退工程)。これにより、刷版7A~7Dの装着に関する刷版自動着脱装置10の一連の動作が終了する。
【0045】
そして、所定の印刷が完了した後に、作業者によって版取外釦が押下されるか、設定入力部を介して実行指示が出力されることで、版替えの対象となる刷版7A~7Dのみを版胴本体6から自動で取り外す処理が実行される。具体的には、まず、版胴本体6が咥え尻取り外し位置(操作レバー54の基端部がレバー押圧部材38の突出部と整合する位置)に到達するまで順方向に回転する。また、版胴本体6が咥え尻取り外し位置にて停止した後に、刷版自動着脱装置10の刷版押さえ機構20a~20dが版胴本体6に対して前進し、複数の押さえコロ部材28a,28bによって版胴本体6の外周面に刷版7A~7Dを押さえ付ける(刷版押さえ機構前進工程)。そして、刷版押さえ機構20a~20dが前進した後に、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、版替えの対象となる刷版7A~7Dに対応する刷版着脱操作機構30a~30dのみが版胴本体6に対して前進し、レバー押圧部材38の突出部によって刷版締め付け機構50の操作レバー54の基端部が押し下げられる(ロック解除工程)。これにより、操作レバー54のロックが解除され、対応する角変位軸が締めつけ方向とは反対の方向に回転することで、係止バー部材と版替えの対象となる刷版7A~7Dの咥え尻側端部7bとの係合が解除される。そして、係止バー部材と咥え尻側端部7bとの係合が解除された後に、前進していた刷版着脱操作機構30a~30dが版胴2から後退し(刷版着脱操作機構後退工程)、版胴本体6が咥え取り外し位置(刷版装着溝6bの咥え側エッジ部から刷版7A~7Dの咥え側端部7aを取り外すことが可能となる位置)に到達するまで逆方向に回転する(逆方向回転工程)。また、版胴2が咥え取り外し位置にて停止した後に、版替えの対象となる刷版7A~7Dに対応する刷版押さえ機構20a~20dのみが版胴本体6から後退する(刷版押さえ機構後退工程)。これにより、作業者が刷版装着溝6bの咥え側エッジ部から版替えの対象となる刷版7A~7Dの咥え側端部7aを取り外すことが可能となり、刷版7A~7Dの取り外しに関する刷版自動着脱装置10の一連の動作が終了する。
【0046】
以上説明したとおり、本実施形態に係る刷版7A~7Dは、咥え側端部7aの切り欠き部8aが、レジスターピン6dの幅と同寸法の開口幅W1を有し、咥え尻側端部7bの切り欠き部8bが、レジスターピン6dの幅及び咥え側端部7aの切り欠き部8aの開口幅W1よりも広い開口幅W2を有している。
【0047】
このような構成を有する刷版7A~7Dによれば、咥え尻側端部7bの切り欠き部8bのみを意図的に幅広に形成することにより、刷版自動着脱装置10によって版胴本体6に刷版7A~7Dを装着させる場合においても、版胴本体6に対する刷版7A~7Dの装着精度を維持しつつ、刷版7A~7Dの破損を防止することが可能となる。
【0048】
すなわち、本実施形態に係る刷版7A~7Dでは、咥え尻側端部7bの切り欠き部8bを幅広に形成することにより、咥え尻側端部7bの切り欠き部8bとレジスターピン6dとの位置が僅かにずれた場合であっても、レジスターピン6dに干渉することなく、咥え尻側端部7bの切り欠き部8bをレジスターピン6dに係合させることが可能となる。これにより、咥え尻側端部7bの切り欠き部8bがレジスターピン6dの幅と同寸法に形成されている従来の刷版110と比較して、咥え尻側端部114の破損や版切れを防止することが可能となると共に、刷版110の装着不良に伴う見当精度不良を防止することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態に係る刷版7A~7Dでは、咥え側端部7aの切り欠き部8aについては幅広に形成せず、レジスターピン6dの幅と同寸法の開口幅W1に形成することにより、咥え側端部7aの切り欠き部8aにおいて正確に位置決めを行うことが可能となるため、咥え側端部7aの切り欠き部8aと咥え尻側端部7bの切り欠き部8bとの双方を幅広に形成した場合と比較して、版胴本体6に対して刷版7A~7Dが斜めに巻き付いてしまう現象や印刷稼働時におけるガタツキを防止し、版胴本体6に対する装着精度を維持することが可能となる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0051】
例えば、上述した実施形態における説明では、版胴2が、所謂4(W)×1(L)型の版胴であるものとして説明したが、これに限定されず、例えば所謂4(W)×2(L)型の版胴等、種々の版胴を用いることが可能である。また、刷版7A~7Dが、新聞1頁に相当する大きさを有し、版胴2の軸方向に沿って4枚並べて装着されるものとして説明したが、これに限定されず、例えば新聞2頁に相当する大きさを有する刷版等、種々の刷版を用いることが可能である。
【0052】
刷版締め付け機構50は、上述した実施形態に係る構成に限定されず、種々の任意の構成を採用することが可能である。また、刷版自動着脱装置10は、上述した実施形態に係る構成に限定されず、版胴本体6に対して刷版7A~7Dを自動で着脱させることが可能な構成であれば、種々の任意の構成を採用することが可能である。
【0053】
上述した実施形態では、刷版押さえ機構20a~20dが刷版7A~7Dと1対1となるよう設けられるものとして説明したが、これに限定されず、例えば、複数の刷版に対して1つの刷版押さえ機構が設けられる構成や、1つの刷版に対して複数の刷版押さえ機構が設けられる構成であっても良い。
【0054】
上述した実施形態では、版取外釦が押下された際、又は、設定入力部から実行指示を受け付けた際に、版胴2及び刷版自動着脱装置10に版外し動作を実行させるものとして説明したが、これに限定されず、印刷作業の完了時に、プリセットされた版替え情報に基づいて版胴2及び刷版自動着脱装置10が自動で作動し、版替えの対象となる刷版7A~7Dを版胴本体6から取り外す処理が実行される構成としても良いし、印刷作業の完了時に全ての刷版7A~7Dが自動で取り外される構成としても良い。
【0055】
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0056】
1a,1b 印刷ユニット、2 版胴、3 ブランケット胴、4 インキ供給装置、6 版胴本体、6b 刷版装着溝、6d レジスターピン、7A~7D 刷版、7a 咥え側端部、7b 咥え尻側端部、8a 咥え側端部の切り欠き部、8b 咥え尻側端部の切り欠き部、10 刷版自動着脱装置、50 刷版締め付け機構、W1 咥え側端部の切り欠き部の開口幅、W2 咥え尻側端部の切り欠き部の開口幅