(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】シール材及び容器
(51)【国際特許分類】
A61J 1/10 20060101AFI20220202BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20220202BHJP
A61J 1/18 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
A61J1/10 335B
A61J1/05 315B
A61J1/18
(21)【出願番号】P 2017163209
(22)【出願日】2017-08-28
【審査請求日】2020-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000149435
【氏名又は名称】株式会社大塚製薬工場
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【氏名又は名称】西本 博之
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】永田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 友紀
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-083099(JP,A)
【文献】特開2018-139752(JP,A)
【文献】特開平08-301322(JP,A)
【文献】特開平10-305082(JP,A)
【文献】特開2019-023093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/00-1/20
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する容器本体の開口を被覆するシール材であって、
前記開口の周縁と剥離可能に接着するシーラント層と、該シーラント層の前記開口に対向する面とは反対の面側に形成された、針状物による穿刺により亀裂又は破断と収縮が生じる機能層とを備え、
前記機能層は、張力をかけた状態で前記シーラント層に接着されており、
前記機能層と前記シーラント層とは、前記張力の開放によって前記機能層が前記シーラント層から剥離可能となる弱シール接着されており、
前記亀裂又は破断と収縮は、
前記穿刺による前記張力の開放および前記機能層の前記シーラント層からの剥離によって生じる、シール材。
【請求項2】
前記開口は、前記容器本体に一端が接続された前記内容物の流出用のポートの他端に形成されたものである、請求項1記載のシール材。
【請求項3】
前記機能層は、前記シーラント層に全面で接着されている、請求項1又は2に記載のシール材。
【請求項4】
内容物を収容する容器本体の開口を被覆するシール材であって、
前記開口の周縁と剥離可能に接着するシーラント層と、該シーラント層の前記開口に対向する面とは反対の面側に形成された、針状物による穿刺により亀裂又は破断と収縮が生じる機能層と、を備え、
前記機能層は、張力をかけた状態で前記シーラント層に接着されており、
前記亀裂又は破断と収縮は、前記張力の開放に基づき、
前記機能層は、前記シーラント層に一部の面で接着されており、前記シール材で前記開口を被覆したときに該開口の内側に配置されるべき位置は未接着となってい
る、シール材。
【請求項5】
前記機能層上に保護層を備える、請求項1~
4のいずれか一項に記載のシール材。
【請求項6】
内容物を収容する容器本体の開口をシール材で被覆した容器であって、
前記シール材は、請求項1~
5のいずれか一項に記載のシール材である、容器。
【請求項7】
内容物として薬剤を収容する容器本体と、該容器本体に一端が接続され前記薬剤を流出入させるポートとを備える薬剤容器であって、
前記ポートの他端には前記開口が形成されており、前記他端は、請求項1~
5のいずれか一項に記載のシール材で被覆されている薬剤容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水・電解質の補給、栄養の補給、血管の確保、病態の治療等を目的として輸液が広く用いられている。輸液は、輸液バッグに収容して用いられるが、輸液バッグとしては、輸液を内包する容器本体と輸液排出用のポートとを有するものが一般的である。ポートの内部には、輸液の流出を防止するためのゴム栓等の封止体が配置されており、ポートの開口はシール材で被覆され、輸液バッグの使用時にはシール材の少なくとも一部が剥離される。
【0003】
輸液がアミノ酸や特定の抗生物質を含有する場合、酸素の影響を受けやすいためポートは酸素の侵入を防御可能なものである必要があり、ある種の薬剤を含む輸液では、解離平衡を維持するために、封止体とシール材の間のポート内スペース(ヘッドスペース)を窒素ガスで置換することがある。輸液が特殊な組成でない場合であっても、ポート内の清浄のためにポートの開口をシール材で覆うのが通常である。このように、輸液バッグにおいては、ポートをシール材で被覆することで密閉状態に保つ必要があり、密閉状態が損なわれたときにはそれを外部から検知する必要がある。
【0004】
密閉状態の検知が可能な輸液バッグとしては、例えば、ヘッドスペース内にガス検知体を配設し、密閉性が損なわれたときのガス検知体の反応を外部から目視で確認できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ポートから輸液バッグ内部へ意図的な異物混入が行われた事件が発生しており、異物が混入されたことを、人体に処方する前に容易に検知可能にする必要性が高まっている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、針状物等で容器のシール材を穿刺することで、容器本体に異物が混入された場合や異物を混入させる試みがされた場合であっても、容易にその事実を検知可能な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内容物を収容する容器本体の開口を被覆するシール材であって、上記開口の周縁と剥離可能に接着するシーラント層と、このシーラント層の上記開口に対向する面とは反対の面側に形成された、針状物による穿刺により亀裂又は破断と収縮(亀裂と収縮、破断と収縮、又は亀裂と破断と収縮)が生じる機能層とを備える、シール材を提供する。
【0009】
本発明のシール材は上記構成を有することから、このシール材で開口が被覆された容器について、シール材への穿刺で容器本体に異物が混入された場合や、異物を混入させる試みがされた場合であっても、機能層の亀裂又は破断と収縮により、容易にその事実を検知可能である。
【0010】
上記開口は、上記容器に一端が接続された上記内容物の流出用のポートの他端に形成されたものであってもよい。すなわち、本発明は、薬剤を収容する容器本体に一端が接続された上記薬剤の流出入用のポートの、他端を被覆するシール材であって、上記他端と剥離可能に接着するシーラント層と、このシーラント層の上記ポートと接する面とは反対の面側に形成された、針状物による穿刺により亀裂又は破断と収縮が生じる機能層とを備える、シール材を提供する。
【0011】
上記シール材によれば、針状物等で容器のシール材を穿刺することで、ポートから容器本体に異物が混入された場合や異物を混入させる試みがされた場合であっても、容易にその事実を検知可能となる。意図的に異物を混入させようとする者は、異物混入の痕跡を消そうとするために、容器本体を直接穿刺するのではなく、ポート側から容器本体へ異物を混入させる。すなわち、容器本体をニードル等の針状物で穿刺した場合、抜針後に薬剤が漏れ出すことから、ポートにシール材が貼り付けられた状態のまま、針状物をシール材及び封止体(ゴム栓)に突き刺して貫通させ、容器本体内部へ異物を混入させた後抜針する。抜針の結果生じた穿孔のサイズが小さかったり目立たなかった場合には、医療関係者は、シール材が貼られたままであるため未使用であると誤解して、そのまま使用してしまう可能性がある。
【0012】
上記シール材は、機能層を備えており、針状物を用いてポートから異物が混入された場合や異物を混入させる試みがされた場合に、機能層に亀裂又は破断と収縮が生じるため、異物混入又はその試みを検出可能である。
【0013】
シール材においては、機能層は、(1)張力をかけた状態で隣接する層に全面で接着していても、(2)張力をかけた状態で隣接する層に一部の面で接着していてもよい。(1)(2)のいずれの場合も、亀裂又は破断と収縮は上記張力の開放に基づいて生じる。なお、(2)の場合においては、シール材で開口を被覆したときに開口の内側に配置されるべき位置においては機能層は未接着とする。
【0014】
機能層が隣接する層に全面で弱シール(弱い接着強度)で接着していても、針状物による穿刺により穿孔が生じると、機能層に付与されている張力によりその穿孔のサイズが広がるために、形状変化が検出できる。上記の位置で未接着部位を有する場合は、針状物による穿刺が生じると、未接着部位は隣接する層の拘束を受けることなく収縮するために、形状変化がより顕著になり検出が容易になる。なお機能層が隣接する層に対して接着部位と未接着部位とを有する場合においては、接着部位は弱シールであっても、強シール(強い接着強度)であってもよい。
【0015】
機能層が隣接する層は、シーラント層とすることができる。機能層とシーラント層が隣接している場合は、穿刺により機能層が収縮して開口が生じると、シール材上面からシーラント層を観察することができるようになり、例えば、シーラント層が着色されている場合やシーラント層に印刷が施されていた場合、それらが認知できるようになる。
【0016】
機能層上には保護層を設けることもできる。機能層としては亀裂や破断が生じるものを使用しているため、これが露出していると、異物混入目的の針状物以外のものと接触したときに、亀裂や破断が生じてしまうことも考えられるため、機能層を保護層で被覆することで想定外の亀裂や破断が生じることを防止でき、異物が混入されたこと、或いは異物を混入させる試みがされたことを確実に検出できる。
【0017】
また、機能層に張力がかかった状態でシーラント層に接着されると、機能層の圧縮応力によりシール材の厚み方向に応力が発生しシール材全体が機能層側に反る。そこで、更に機能層側に保護層を接着することで応力を相殺し、反りを抑制する。そうすることでシール材のハンドリング性が向上するようになる。
【0018】
本発明は上述したシール材の他、容器も提供する。すなわち、本発明は、内容物を収容する容器本体の開口をシール材で被覆した容器であって、上記シール材は、上述したシールである容器を提供する。本発明はまた、薬剤を収容する容器本体と、この容器本体に一端が接続され上記薬剤を流出入させるポートとを備える薬剤容器であって、上記ポートの他端は上述したシール材で被覆されている薬剤容器を提供するものである。
【0019】
本発明のシール材は、バイアル瓶等の薬剤容器、及びゼリー、豆腐、インスタントコーヒーのビン、サプリメントボトル等の食品容器の開口を封止するものとしても適用できる。
【0020】
この容器は、本発明のシール材でポートが被覆されていることから、ポートから容器本体に異物が混入された場合や異物を混入させる試みがされた場合に、機能層に亀裂又は破断を生じ、更に収縮が生じることから、その事実を目視により容易に検出することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、針状物等で容器のシール材を穿刺することで、容器本体に異物が混入された場合や異物を混入させる試みがされた場合であっても、容易にその事実を検知可能な手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図4】ポートからニードルによる穿刺が行われたところを示す断面図である。
【
図7】ポートからニードルによる穿刺が行われたところを示す断面図である。
【
図9】(a)は穿刺前のシール層の上面図、(b)は抜針後のシール層の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。本説明において、同一要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。
【0024】
図1は、容器本体とシール材で被覆されたポートとを備える容器(後述のように第1実施形態の薬剤容器に該当する。)の上面図であり、
図2は
図1のAで示される部分の断面図である。
図1に示す薬剤容器30は、薬剤32を収容する容器本体34と、容器本体34に一端が接続されたポート20と、ポート20の他端を被覆するシール材1とを備えている。ポート20は筒状部22と口部24とから構成されており、
図2に示すようにポート20の内部には、薬剤32の流出を防止するための封止体26が配置されている。
【0025】
図3は第1実施形態のシール材の断面図である。
図3に示すシール材1は、ポート20の他端と剥離可能に接着されるシーラント層16と、シーラント層のポート20と接する面とは反対の面側に形成された機能層17とを備えている。機能層17は弱シールによりシーラント層16に接着している。機能層17は、針状物による穿刺により亀裂又は破断と収縮が生じる層であり、第1実施形態では機能層17はシーラント層16に全面で接着されている。第1実施形態のように、シーラント層16と機能層17とが全面で接着する構成とすることで、シール材1そのものの製造を容易にする。
【0026】
図4は、第1実施形態のシール材が適用されたポート20から、ニードルによる穿刺が行われたところを示す断面図である。
図4においては、シリンジ本体44とニードル46とから構成されるシリンジ40の内部に異物42が導入され、これを用いて異物42を混入させているところが示されている。ニードル46は、封止体26、シーラント層16及び機能層17を貫通しており、容器本体34の内部に異物42が混入されている。ニードル46によるシール材1への穿刺により、張力がかかった状態でシーラント層16に接着されている機能層17に亀裂又は破断が生じ、これに伴って収縮も生じる。機能層17の収縮は、ニードル46の穿刺部分からシール材1周縁に向かって生じるので、シール材1には大きな開口が生じる。開口は視認可能であるため、異物混入の事実を容易に検出できる。
【0027】
上述のように、第1実施形態のシール材においては、機能層17はシーラント層16に全面で弱シール接着されているが、針状物による穿刺により、亀裂又は破断と収縮は問題なく生じる。これは、ニードル46により穿刺により機能層17に穴が開き、ニードル46が更にシーラント層16を押すことでシーラント層16と機能層17が剥離し、張力のかかった機能層17のみが、亀裂又は破断、収縮を生じるものである。つまり、ここでいう弱シールの強度は、針状物がシーラント層16を押した際に発生するシール材1内の応力により剥離する程度のものでなければならない。
【0028】
図5は、第2実施形態のシール材の断面図である。
図5に示すシール材1は、シーラント層16及び機能層17がこの順に積層された構成を有している。第2実施形態のシール材では、機能層17は張力をかけた状態で、隣接する層(シーラント層16)に一部の面で接着している。すなわち、シール材1でポート20を被覆したときにポート20の開口の内側に配置されるべき位置は未接着となっており、
図5のXで示される部位は隣接する層と未接着であり、Yで示される部位は隣接する層と接着されている。このように、第2実施形態のシール材1では機能層17の未接着部位が存在するが、例えば、シーラント層16としてコシのある硬いフィルムを使用することで、機能層17の張力に耐えられるため、穿刺前のシール材1に変形等は生じないようにできる。
【0029】
図6は、第3実施形態のシール材の断面図である。
図6に示すシール材1は、シーラント層16、機能層17及び保護層14がこの順に積層された構成を有している。第3実施形態のシール材では、機能層17は張力をかけた状態で、隣接する層(シーラント層16及び保護層14)に全面で接着している。このように機能層17が隣接する両層に接着することで厚さ方向の応力を相殺し、シール材1の反りが抑制される。
【0030】
図7は、第3実施形態のシール材が適用されたポート20から、ニードルによる穿刺が行われたところを示す断面図である。
図7においては、ニードル46は、封止体26、シーラント層16、機能層17及び保護層14を貫通しており、容器本体34の内部に異物42が混入されている。ニードル46によるシール材1への穿刺により、張力をかけた状態でシーラント層16及び保護層14に接着されている機能層17に亀裂又は破断が生じ、これに伴って収縮も生じる。機能層17の収縮は、ニードル46の穿刺部分からシール材1周縁に向かって生じるので、シール材1には大きな開口が生じる。開口は視認可能であるため、異物混入の事実を容易に検出できる。
【0031】
図8はニードル46の抜針後のシール材1の上面図である。上述したように穿刺により機能層17には開口Bが生じるが、例えば、保護層14が透明又は半透明であり、シーラント層16が着色されていたり、印刷が施されていた場合は、シーラント層16の着色や印刷を、シール材1の上面から観察できる。なお、当該現象はポートの開口に接着領域を設けない第2実施形態での場合、開口Bはポートの形状にほぼ揃うものとなる。
【0032】
図9はシール材1の上面図を示すものであり、(a)は穿刺前、(b)は抜針後のシール材1の上面図である。
図9(a)は、例えば保護層14及び機能層17を透明又は半透明とし、シーラント層16にP1の印刷を施し、機能層17にP2の印刷を施した状態を示す。なお、保護層14を有しない場合は、機能層17及びシーラント層16にそれぞれ印刷を施す。このような構成にすると、シール材1の上面からP1とP2とが
図9(a)のような位置関係で観察できる。シール材1が
図9(b)のQの位置で針状物により穿刺されると、機能層17が収縮してP1とP2の相対的位置関係が
図9(b)のように変化する。この位置関係の変化に基づいて、異物混入の事実を検出することもできる。なお、当該現象はシーラント層16と機能層17とを全面で弱シールした第1実施形態において顕著に表れるものである。
【0033】
シーラント層16は、例えば、高分子物質、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンで形成させることができ、機能層17は、張力をかけることにより弾性変形する材料であり、例えば、合成ゴム、スチレン系エラストマー等のゴム又はエラストマーで形成させることができる。保護層14は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロン等の高分子物質で形成させることができる。なお、保護層14は単層であっても、複数の層からなる積層体であってもよい。
【0034】
シーラント層16、機能層17、保護層14の厚さは任意であるが、それぞれ、シーラント層16は10~150μm、機能層17は10~100μm、保護層14は10~100μmにすることができる。シール材1全体の厚さについても任意であるが、本発明の効果を確実に発揮させるため、例えば、50~300μmにすることができ、70~110μmであるとさらによい。
【0035】
第1及び第2実施形態のシール材は、シール材を構成する各層を個別に製造しておき、全体を熱ラミネートして製造できる他、ラミネート、共押し出し等の公知の方法によっても製造可能である。
【0036】
上述したシール材を用いて薬剤容器を提供することができる。
図1は、そのような薬剤容器を示す上面図である。
図1に示す第1実施形態の薬剤容器30は、薬剤32を収容する容器本体34と、容器本体34に一端が接続され薬剤32を流出入させるポート20とを備え、ポート20の他端は、実施形態のシール材1で被覆されている。なお、ポート20はその内部に、薬剤32の流出を防止する封止体26を備えている。第1実施形態の薬剤容器30は、薬剤32を収容する収容部(薬剤収容部)が1つであるため、単室バッグに相当する。
【0037】
図10は、第2実施形態の容器(薬剤容器30)を示す上面図である。
図10に示す薬剤容器30は、薬剤を収容する収容部(薬剤収容部)を2つにしたこと、すなわち、ポート20側の第1薬剤収容部に第1薬剤32aを、ポート20から離れた側の第2薬剤収容部に第2薬剤32bを収容させたこと以外は、第1実施形態の薬剤容器と同様の構成を有する。第1薬剤収容部と第2薬剤収容部の間は、易剥離性を有する弱シール部36で仕切られており、薬剤容器30の使用の直前に弱シール部36を剥離して、第1薬剤32aと第2薬剤32bとを混合させる。なお、薬剤収容部を3以上にしたものであっても、実施形態のシール材1を適用可能である。
【0038】
第1及び第2実施形態の薬剤容器において、容器本体34に収容される、薬剤32、第1薬剤32a、第2薬剤32bとしては、電解質液(生理食塩水、リンゲル液)、ブドウ糖液、アミノ酸液、ビタミン液、微量元素液等が挙げられる。薬剤は、液状であっても非液状(固形状等)であってもよい。
【0039】
容器本体34は、耐熱性、シール強度、透明性、不透湿性、柔軟性等に優れる高分子フィルムで構成させることができ、この高分子フィルムは上記性能向上のため積層体であってもよい。高分子フィルムに用いられる高分子としては、オレフィンの単独又は共重合体、オレフィンとオレフィン以外のエチレン性不飽和結合を有する化合物との共重合体、オレフィン以外のエチレン性不飽和結合を有する化合物の単独又は共重合体が挙げられる。オレフィン共重合体の例としては、エチレン・α-オレフィン共重合体があり、異なる密度を有するエチレン・α-オレフィン共重合体を複数積層した積層体で容器本体34を構成することも可能である。
【0040】
ポート20は、口部24と、口部24の一端に嵌め込まれた筒状部22と、筒状部22内部に密着して配置され薬剤32の流出を防止する封止体26とから構成される。口部24の他端は開口を覆うようにシール材1で被覆される。筒状部22は容器本体34と隙間なく接着(密着接合)されるが、筒状部22を構成する部材と容器本体34を構成する最内層とを同一の樹脂として、ヒートシール等により密着接合することが好ましい。
【0041】
ポート20は、筒状部22の上部に封止体26を挿入した後に、加熱した治具を用いて封止体26に対して口部24をプレスして被嵌させることで製造できる。また、シール材1の口部24への接着は、ヒートシール又は接着剤塗布による接着で実現可能である。
【0042】
第1実施形態の薬剤容器30の製造方法としては、以下の方法がある。すなわち、容器本体34を構成する1組の高分子フィルムについて、ポート20が挿入される辺以外の3辺の周縁部をヒートシールする。次いで、筒状部22をヒートシールされていない箇所に挿入した後に、筒状部22と高分子フィルムとをヒートシールして隙間なく接着させる。筒状部22を通して薬剤32を容器本体34内部に充填し、筒状部22の上部に封止体26を挿入した後に、加熱した治具を用いて封止体26に対して口部24をプレスして被嵌させる。次いで、シール材1を口部24にヒートシールするか接着剤塗布で接着する。
【0043】
第1実施形態の薬剤容器30の他の製造方法としては、以下の方法がある。すなわち、筒状部22を、容器本体34を構成する1組の高分子フィルムで挟み、ヒートシールで隙間なく接着させる。次いで、筒状部22の上部に封止体26を挿入した後に、加熱した治具を用いて封止体26に対して口部24をプレスして被嵌させ、シール材1を口部24にヒートシールするか接着剤塗布で接着する。これと同時又はこの後に、ポート20が挿入されていない1辺を残して、残りの3辺の周縁部をヒートシールする。ヒートシールされていない1辺から薬剤32を容器本体34内部に充填し、その後、この辺をヒートシールする。
【0044】
実施形態の薬剤容器30は、シール材1でポート20が被覆されていることから、ポート20から容器本体34内部に異物が混入された場合や異物を混入させる試みがされた場合に、機能層17に亀裂又は破断と収縮が生じるため、異物が混入されたか混入させる試みがされた薬剤容器30を正常品と誤認して使用することがなくなる。
【符号の説明】
【0045】
1…シール材、14…保護層、16…シーラント層、17…機能層、20…ポート、22…筒状部、24…口部、26…封止体、30…薬剤容器、32…薬剤、32a…第1薬剤、32b…第2薬剤、34…容器本体、36…弱シール部、40…シリンジ、42…異物、44…シリンジ本体、46…ニードル。