(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】基地局装置、制御方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 52/02 20090101AFI20220202BHJP
H04W 92/20 20090101ALI20220202BHJP
H04W 88/08 20090101ALI20220202BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20220202BHJP
【FI】
H04W52/02
H04W92/20
H04W88/08
H04W84/12
(21)【出願番号】P 2018160380
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-05-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】西原 友美
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和幸
(72)【発明者】
【氏名】八木 敬太
【審査官】青木 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-155057(JP,A)
【文献】特表2011-511588(JP,A)
【文献】特開2017-212686(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0329627(US,A1)
【文献】特開2011-130157(JP,A)
【文献】特表2018-520580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信可能エリアの少なくとも一部が重複している2つの基地局装置のうちの基地局装置であって、
無線通信をする通信インタフェースと、
前記2つの基地局装置のうち前記基地局装置とは異なる他の基地局装置による無線通信に用いる通信路の第一識別情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記第一識別情報と、前記基地局装置による無線通信に用いる通信路の第二識別情報とを含むビーコンフレームを生成し、生成した前記ビーコンフレームを前記通信インタフェースによって送信する制御部とを備え
、
前記基地局装置と前記他の基地局装置とは、ネットワークを介して通信可能に接続されており、
前記制御部は、さらに、
無線端末からプローブリクエストフレームを前記通信インタフェースにより受信した場合に、前記他の基地局装置をアウェイク状態に遷移させる遷移フレームを生成し、生成した前記遷移フレームを前記ネットワークを介して前記他の基地局装置に送信する
基地局装置。
【請求項2】
前記制御部は、さらに、
前記他の基地局装置がプローブレスポンスフレームを送信しない場合、前記遷移フレームを送信した後に、前記プローブリクエストフレームに対する応答であるプローブレスポンスフレームを前記無線端末に送信する
請求項
1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記ビーコンフレームの送信を繰り返し行い、
前記遷移フレームを送信した場合に前記ビーコンフレームを繰り返し送信することを停止する
請求項
1又は
2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記他の基地局装置がスリープ状態に遷移する通知を受信した場合に、前記ビーコンフレームを繰り返し送信することを開始する
請求項
3に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記基地局装置と前記他の基地局装置とは、ネットワークを介して通信可能に接続されており、
前記取得部は、前記第一識別情報を前記ネットワークを介して前記他の基地局装置から取得する
請求項1~
4のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記第一識別情報は、前記他の基地局装置のSSID(Service Set IDentifier)であり、
前記第二識別情報は、前記基地局装置のSSIDであり、
前記ビーコンフレームは、マルチプルSSIDビーコンフレームである
請求項1~
5のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項7】
無線通信可能エリアの少なくとも一部が重複している2つの基地局装置のうちの基地局
装置であって、アウェイク状態とスリープ状態とのいずれかをとりうる基地局装置であって、
無線通信をする通信インタフェースと、
(a)前記基地局装置がアウェイク状態である場合に、前記通信インタフェースを用いてフレームの転送をし、(b)前記基地局装置がスリープ状態である場合に前記転送をしない転送部と、
前記基地局装置がアウェイク状態とスリープ状態とのどちらをとるかを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記2つの基地局装置のうち前記基地局装置とは異なる他の基地局装置から、当該基地局装置をアウェイク状態に遷移させる遷移フレームを受信した場合に、前記基地局装置をアウェイク状態に遷移させるとともに、プローブリクエストフレームを受信することなくプローブレスポンスフレームを前記通信インタフェースによって送信する
基地局装置。
【請求項8】
無線通信可能エリアの少なくとも一部が重複している2つの基地局装置のうちの基地局装置の制御方法であって、
前記2つの基地局装置のうち前記基地局装置とは異なる他の基地局装置による無線通信に用いる通信路の第一識別情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記第一識別情報と、前記基地局装置による無線通信に用いる通信路の第二識別情報とを含むビーコンフレームを生成し、生成した前記ビーコンフレームを通信インタフェースによって送信する制御ステップとを含
み、
前記基地局装置と前記他の基地局装置とは、ネットワークを介して通信可能に接続されており、
前記制御ステップでは、さらに、
無線端末からプローブリクエストフレームを前記通信インタフェースにより受信した場合に、前記他の基地局装置をアウェイク状態に遷移させる遷移フレームを生成し、生成した前記遷移フレームを前記ネットワークを介して前記他の基地局装置に送信する
制御方法。
【請求項9】
請求項
8に記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局装置、制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線端末と無線LAN(Local Area Network)により接続し、無線通信を行う基地局装置がある。無線端末はステーション(STA)ともよばれ、基地局装置はアクセスポイント(AP)ともよばれる。
【0003】
一方、一般に、パーソナルコンピュータ又はスマートフォンなどの情報処理機器は、消費電力を抑制するためにスリープ状態(省電力状態)に遷移することができる。スリープ状態では、当該機器の一部の回路などへの電力供給を停止することで機器の電力消費が抑制される。なお、スリープ状態と対比して、機器が通常の電源供給を行っている状態をアウェイク状態という。
【0004】
基地局装置は、接続している無線端末から無線通信リンクの接続の要求をいつでも受けられるようにするために、また、無線端末との無線通信をいつでも行えるようにするために、常にアウェイク状態をとることが要求される。
【0005】
従来、スリープ状態である無線端末をアウェイク状態に遷移させる信号を送信する基地局装置に関する技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、基地局装置は、上記のように常にアウェイク状態をとることが要求されるので、スリープ状態に遷移することが一般に考慮されていない。そのため、基地局装置の消費電力が大きいという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、基地局装置の消費電力を削減し得る基地局装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る基地局装置は、無線通信可能エリアの少なくとも一部が重複している2つの基地局装置のうちの基地局装置であって、無線通信をする通信インタフェースと、前記2つの基地局装置のうち前記基地局装置とは異なる他の基地局装置による無線通信に用いる通信路の第一識別情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記第一識別情報と、前記基地局装置による無線通信に用いる通信路の第二識別情報とを含むビーコンフレームを生成し、生成した前記ビーコンフレームを前記通信インタフェースによって送信する制御部とを備える。
【0010】
これによれば、基地局装置は、自装置による無線通信に用いる通信路の識別情報だけでなく、他の基地局装置による無線通信に用いる通信路の識別情報を含むビーコンフレームを送信するので、他の基地局装置がビーコンフレームを送信しなくても、他の基地局による無線通信に用いる通信路の識別情報を端末に提供することができる。これは、他の基地局装置がスリープ状態であっても、他の基地局装置による無線通信に用いる通信路の識別情報を端末に提供できることを意味している。端末は、上記ビーコンフレームを受信することで、他の基地局装置との無線通信を開始するための処理を実行することができる。このように、基地局装置は、端末が他の基地局装置との無線通信を開始できる状態を維持しながら、他の基地局装置をスリープ状態にさせることで、消費電力を削減し得る。
【0011】
また、前記基地局装置と前記他の基地局装置とは、ネットワークを介して通信可能に接続されており、前記制御部は、さらに、無線端末からプローブリクエストフレームを前記通信インタフェースにより受信した場合に、前記他の基地局装置をアウェイク状態に遷移させる遷移フレームを生成し、生成した前記遷移フレームを前記ネットワークを介して前記他の基地局装置に送信してもよい。
【0012】
これによれば、基地局装置は、端末が他の基地局装置との無線通信を開始する目的で送信するプローブリクエストフレームを受信した場合に、他の基地局装置をアウェイク状態に遷移させる。その後、他の基地局装置は、無線端末との無線通信を開始することができる。このように、基地局装置は、他の基地局装置がスリープ状態である場合であっても、端末に他の基地局装置との無線通信を開始させることができる。
【0013】
また、前記制御部は、さらに、前記他の基地局装置がプローブレスポンスフレームを送信しない場合、前記遷移フレームを送信した後に、前記プローブリクエストフレームに対する応答であるプローブレスポンスフレームを前記無線端末に送信してもよい。
【0014】
これによれば、基地局装置は、端末が送信したプローブリクエストフレームに対する応答であるプローブレスポンスフレームを送信することで、他の基地局装置がプローブレスポンスフレームを送信する場合に比べて、他の基地局装置の消費電力を削減できる。よって、基地局装置は、消費電力をより一層削減し得る。
【0015】
また、前記制御部は、前記ビーコンフレームの送信を繰り返し行い、前記遷移フレームを送信した場合に前記ビーコンフレームを繰り返し送信することを停止してもよい。
【0016】
これによれば、基地局装置は、他の基地局装置がアウェイク状態になってビーコンを送信する場合に、ビーコンの送信を停止する。これにより、他の基地局の無線通信の識別情報が、当該基地局装置及び他の基地局装置から重複して端末に提供されることを回避できる。よって、基地局装置は、無線通信の識別情報の重複送信を回避しながら、より適切に、消費電力を削減し得る。
【0017】
また、前記制御部は、前記他の基地局装置がスリープ状態に遷移する通知を受信した場合に、前記ビーコンフレームを繰り返し送信することを開始してもよい。
【0018】
これによれば、基地局装置は、他の基地局装置がスリープ状態に遷移することでビーコンの送信を停止するときに、他の基地局の無線通信の識別情報を含むビーコンの送信を開始する。これにより、他の基地局装置がスリープ状態に遷移することで、他の基地局の無線通信の識別情報が端末に提供されない事態を回避することができる。
【0019】
また、前記基地局装置と前記他の基地局装置とは、ネットワークを介して通信可能に接続されており、前記取得部は、前記第一識別情報を前記ネットワークを介して前記他の基地局装置から取得してもよい。
【0020】
これによれば、基地局装置は、他の基地局装置の無線通信の識別情報を、当該他の基地局装置から取得するので、例えば人手により設定される場合に比べて、利便性を高めることができる。
【0021】
また、前記第一識別情報は、前記他の基地局装置のSSID(Service Set IDentifier)であり、前記第二識別情報は、前記基地局装置のSSIDであり、前記ビーコンフレームは、マルチプルSSIDビーコンフレームであってもよい。
【0022】
これによれば、基地局装置は、複数の識別情報を含むフレームとしてマルチプルSSIDビーコンフレームを利用することによって、より容易に、消費電力を削減できる。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る基地局装置は、無線通信可能エリアの少なくとも一部が重複している2つの基地局装置のうちの基地局装置であって、アウェイク状態とスリープ状態とのいずれかをとりうる基地局装置であって、無線通信をする通信インタフェースと、(a)前記基地局装置がアウェイク状態である場合に、前記通信インタフェースを用いてフレームの転送をし、(b)前記基地局装置がスリープ状態である場合に前記転送をしない転送部と、前記基地局装置がアウェイク状態とスリープ状態とのどちらをとるかを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記2つの基地局装置のうち前記基地局装置とは異なる他の基地局装置から、当該基地局装置をアウェイク状態に遷移させる遷移フレームを受信した場合に、前記基地局装置をアウェイク状態に遷移させるとともに、プローブリクエストフレームを受信することなくプローブレスポンスフレームを前記通信インタフェースによって送信する。
【0024】
これによれば、基地局装置は、スリープ状態をとっているときに、他の基地局装置が端末からプローブリクエストフレームを受信したことに基づいて送信した遷移フレームを受信した場合に、プローブレスポンスフレームを送信する。一般に基地局装置は、プローブリクエストフレームを受信したことに基づいてプローブレスポンスフレームを送信する。しかし、他の基地局装置が端末からプローブリクエストフレームを受信した場合には、基地局装置は、そのプローブリクエストフレームに対する応答であるプローブレスポンスフレームを送信するだけでよく、このときにプローブリクエストフレームを受信したことを契機とする必要はない。よって、基地局装置は、プローブリクエストフレームを受信することなく、プローブレスポンスフレームを送信することで、適切に、端末との無線通信をすることができる。このように、基地局装置は、スリープ状態において他の基地局装置からの遷移フレームを利用してアウェイク状態に遷移して無線通信を開始できる状態をとることができる。よって、基地局装置は、無線通信を開始できる状態を維持しながら、基地局装置の消費電力を削減できる。
【0025】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御方法は、無線通信可能エリアの少なくとも一部が重複している2つの基地局装置のうちの基地局装置の制御方法であって、前記2つの基地局装置のうち前記基地局装置とは異なる他の基地局装置による無線通信に用いる通信路の第一識別情報を取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得した前記第一識別情報と、前記基地局装置による無線通信に用いる通信路の第二識別情報とを含むビーコンフレームを生成し、生成した前記ビーコンフレームを通信インタフェースによって送信する制御ステップとを含む。
【0026】
これによれば、上記基地局装置と同様の効果を奏する。
【0027】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るプログラムは、上記の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0028】
これによれば、上記中継装置と同様の効果を奏する。
【0029】
なお、本発明は、装置として実現できるだけでなく、その装置を構成する処理手段をステップとする方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体として実現したり、そのプログラムを示す情報、データ又は信号として実現したりすることもできる。そして、それらプログラム、情報、データ及び信号は、インターネット等の通信ネットワークを介して配信してもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、通信装置は、基地局装置の消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る通信システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る基地局の構成を示す第一のブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る基地局の構成を示す第二のブロック図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る基地局が取得する識別情報の説明図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る基地局の制御方法を示す第一のフロー図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る基地局によるビーコンの送信の説明図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る基地局により送信されるビーコンに含まれる情報の説明図である。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る基地局の制御方法を示す第二のフロー図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に係る基地局の制御方法を示す第三のフロー図である。
【
図10】
図10は、実施の形態に係る通信システムにおける通信の説明図である。
【
図11】
図11は、実施の形態の変形例に係る通信システムにおけるビーコンの送信の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0033】
以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。なお、同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0034】
(実施の形態)
本実施の形態において、基地局装置の消費電力を削減し得る基地局装置等について説明する。なお、基地局装置を単に基地局ともいう。
【0035】
図1は、本実施の形態に係る通信システム1の構成を示す模式図である。
図1は、通信システム1が配置されるオフィスなどの空間5の上面図である。通信システム1は、空間5に配置され、無線端末S1~S6と無線で接続される。なお、無線端末を単に端末ともいう。また、無線端末S1~S6を端末S1等ともいう。
【0036】
通信システム1は、複数の基地局A1、A2及びA3(基地局A1等ともいう)を備える。基地局A1は、無線通信可能エリアとして、基地局A1を中心とする半径R1の円形の領域を有しているとする。同様に、基地局A2及びA3は、それぞれ、無線通信可能エリアとして、基地局A2及びA3を中心とする半径R2及びR3の円形の領域を有しているとする。なお、半径R1、R2及びR3は互いに異なっていてもよい。また、無線通信可能エリアは円形に限られない。
【0037】
図1に示されるように、基地局A1及びA2の無線通信可能エリアは、一部が重複するように配置されている。また、基地局A1及びA3の無線通信可能エリアは、一部が重複するように配置されている。そして、基地局A1、A2及びA3の無線通信エリアが空間5内のほぼ全体をカバーする位置に、基地局A1、A2及びA3が配置されている。
【0038】
一般に、空間5に配置される基地局A1等の個数は、空間5に存在すると想定される端末の個数、又は、端末の通信量等に応じて定められる。端末が十分な速度で無線通信を行えるようにするためである。
【0039】
基地局A1等は、ビーコンフレーム(以降、単にビーコンともいう)を繰り返し送信することによって、自装置が行い得る無線通信に用いる通信路の識別情報(以降、単に「無線通信の識別情報」ともいう)を端末に提供する。
【0040】
また、基地局A1、A2及びA3は、基幹ネットワーク(不図示)に接続されている。基幹ネットワークは、基地局A1、A2及びA3を通信可能に接続するネットワークであり、有線又は無線を問わず、無線メッシュネットワークでもよい。また、基幹ネットワークは、インターネットなどの外部ネットワークに接続されていてもよい。
【0041】
端末S1等は、基地局A1等が送信するビーコンを受信することで、自装置の無線通信可能エリア内に基地局A1等が存在することを認識する。端末S1等は、無線通信可能エリア内に存在する基地局のうちの所定の基地局と無線通信によって接続することが想定される。例えば、端末S2は、基地局A1及びA2から識別情報を受信することで、無線通信可能エリアに基地局A1及びA2が存在することを認識する。また、端末S2は、所定の基地局としての基地局A2と、無線通信によって接続することが想定される。
【0042】
ここで、例えば基地局A2がスリープ状態に遷移してビーコンの送信を停止したと仮定すると、端末S2は、基地局A2からビーコンを受信できなくなる。そのため、端末S2は、基地局A2の無線通信の識別情報を受信できず、基地局A2との無線通信を行うことができない。
【0043】
本発明の基地局によれば、端末が基地局の無線通信の識別情報を受信している状態を維持しながら、基地局をスリープ状態に遷移させる。これにより、基地局の消費電力を削減することができる。
【0044】
本発明の通信システム1が備える複数の基地局のそれぞれは、アウェイク状態を維持する基地局である親基地局と、スリープ状態に遷移し得る基地局である子基地局とのいずれかである。以降では、一例として
図1における基地局A1が親基地局であり、基地局A2及びA3が子基地局である場合について、親基地局及び子基地局それぞれの動作を説明する。なお、親基地局の個数は、1に限られず、2以上であってもよい。また、子基地局の個数は、2に限られず、1又は3以上であってもよい。
【0045】
図2は、本実施の形態に係る親基地局である基地局A1の構成を示す第一のブロック図である。
図2を参照しながら、親基地局の構成について説明する。
【0046】
図2に示されるように、基地局A1は、通信IF11と、通信IF12と、取得部13と、制御部14と、転送部15とを備える。
【0047】
通信IF11は、端末と無線で接続され得る通信インタフェース装置である。通信IF11は、例えばインフラストラクチャモードにおけるアクセスポイント側の通信インタフェースとして動作し、端末S1等と接続し得る。無線IF11の通信規格は、例えば、IEEE802.11a、b、g、nに適合する無線LANである。
【0048】
通信IF12は、基幹ネットワークに接続される通信インタフェース装置である。通信IF12は、基幹ネットワークを介して基地局A2及びA3の通信IF22に接続されている。
【0049】
取得部13は、子基地局による無線通信に用いる通信路の識別情報(第一識別情報に相当)を取得する処理部である。識別情報は、通信路を一意に識別し得る情報であればよく、例えばSSID(Service Set IDentifier)であり、この場合を例として説明する。また、基地局A1、A2及びA3の無線通信のSSIDを、それぞれ、SSID1、SSID2及びSSID3とする。なお、識別情報には、通信路を一意に識別し得る情報の他にも、サポートしている伝送レートを示す情報などを含む属性情報が含まれていてもよい。
【0050】
取得部13は、例えば、基地局A1が有する記憶装置(不図示)に記憶されている第一識別情報を読み出すことで第一識別情報を取得してもよいし、子基地局から通信などにより第一識別情報を取得してもよい。より具体的には、基地局A1は、子基地局である基地局A2の無線通信の識別情報であるSSID2が予め記憶装置に記憶されている場合には、その記憶されているSSID2を読み出すことで取得する。また、基地局A1は、基地局A2から基幹ネットワークを介した通信によってSSID2を取得してもよい。基地局A3、及び、基地局A3の無線通信の識別情報であるSSID3についても同様である。取得部13は、この方法によりスリープ状態である子基地局の無線通信の識別子を取得する。なお、取得部13は、例えば、子基地局がスリープ状態に遷移することを示す通知を受けた場合に、当該子基地局がスリープ状態であることを知ることができる。
【0051】
制御部14は、ビーコンを生成し、生成したビーコンを通信IF11によって送信する処理部である。制御部14が生成するビーコンは、取得部13が取得した第一識別情報と、自装置による無線通信の識別情報(第二識別情報に相当)とを含む。子基地局が複数ある場合には、第一識別情報は、複数の基地局それぞれの第一識別情報を含んでいる。
【0052】
制御部14は、ビーコンを生成する前に、自装置が通信IF11による無線通信に用いる通信路の第二識別情報を取得し、取得した第二識別情報を含めたビーコンを生成する。このように、制御部14が生成するビーコンは、第一識別情報と第二識別情報とを含む2以上の識別情報を含む。このように2つの識別情報を含むビーコンを、ここではマルチIDビーコンともいう。このようなビーコンのフォーマットは、例えばIEEE802.11ai規格において定められているマルチプルSSIDビーコンフレームとして定められたフォーマットを利用できる。
【0053】
制御部14によるビーコンの送信は、繰り返し行われ、例えば100ミリ秒間隔で周期的に行われる。
【0054】
また、制御部14は、端末S2からプローブリクエストフレーム(以降、プローブリクエストともいう)を通信IF11により受信した場合に、子基地局である基地局A2をアウェイク状態に遷移させる遷移フレームを生成する。そして、制御部14は、生成した遷移フレームを基幹ネットワークを介して送信する。遷移フレームは、例えば、WoL(Wake on LAN)、又は、WoW(Wake on Wireless LAN)におけるマジックパケットである。
【0055】
転送部15は、通信フレーム(以降、単にフレームともいう)を転送する処理部である。転送部15は、通信IF11又は12が受信したフレームを、そのフレームの宛先に基づいて通信IF11又は12により送信することによって、フレームを転送する。
【0056】
図3は、本実施の形態に係る子基地局である基地局A2の構成を示す第二のブロック図である。
図3を参照しながら、子基地局の構成について説明する。
【0057】
図3に示されるように、基地局A2は、通信IF21と、通信IF22と、制御部23と、転送部24とを備える。
【0058】
通信IF21は、端末と無線で接続され得る通信インタフェース装置である。通信IF21は、例えばインフラストラクチャモードにおけるアクセスポイント側の通信インタフェースとして動作し、端末S2等と接続し得る。通信IF21は、基地局A1の通信IF11と同等である。
【0059】
通信IF22は、基幹ネットワークに接続される通信インタフェース装置である。通信IF22は、基幹ネットワークを介して基地局A1の通信IF12に接続されている。
【0060】
制御部23は、基地局A2がアウェイク状態とスリープ状態とのどちらをとるかを制御する処理部である。また、制御部23は、スリープ状態及びアウェイク状態の一方から他方への状態の遷移も制御する。制御部23は、基地局A2がスリープ状態である場合にも、アウェイク状態である場合にも動作する。
【0061】
制御部23は、基地局A2がスリープ状態である場合、基地局A2をアウェイク状態に遷移させるためのマジックパケットを基地局A1から受信すると、基地局A2をアウェイク状態に遷移させる。基地局A2をアウェイク状態に遷移させるとは、具体的には、通信IF21及び転送部24に電力を供給することにより、通信IF21によるフレームの送受信、及び、転送部24によるフレームの転送を行えるようにすることを含む。また、制御部23は、基地局A2をアウェイク状態に遷移させる際に、プローブリクエストフレームを受信することなくプローブレスポンスフレームを通信IF21によって送信してもよい。プローブレスポンスフレームの送信については後で詳しく説明する。
【0062】
また、制御部23は、通信IF21に接続されている端末の個数がゼロになった場合、つまり、通信IF21にどの端末も接続されていない場合に、基地局A2をスリープ状態に遷移させる。そして、制御部23は、通信IF22を介して、基地局A2がスリープ状態に遷移した旨を基地局A1に通知する。基地局A2をスリープ状態に遷移させるとは、具体的には、通信IF21及び転送部24への電力の供給を停止することにより、通信IF21によるフレームの送受信、及び、転送部24によるフレームの転送を行わないようにすることを含む。
【0063】
転送部24は、フレームを転送する処理部である。転送部24は、通信IF21又は22が受信したフレームを、そのフレームの宛先に基づいて、通信IF21又は22により送信することによって、フレームを転送する。転送部24は、基地局A2がアウェイク状態である場合に、通信IF21又は22を用いてフレームの転送をし、基地局A2がスリープ状態である場合に上記転送をしないように制御される。
【0064】
なお、基地局A3の構成は、基地局A2の構成と同じであるので説明を省略する。
【0065】
図4は、本実施の形態に係る親基地局である基地局A1が取得する識別情報40の説明図である。
【0066】
識別情報40は、子基地局である基地局A2から取得した識別情報41と、子基地局である基地局A3から取得した識別情報42とを含む。
【0067】
識別情報41は、基地局A2の通信IF21による無線通信の通信路の識別情報であるSSID2を含む。
【0068】
識別情報42は、基地局A3の通信IF21による無線通信の通信路の識別情報であるSSID3を含む。
【0069】
識別情報40は、ユーザによって基地局A1に設定された情報で、基地局A1が備える記憶装置に記憶されたものを読み出すことによって取得されたものであってもよい。また、識別情報40は、子基地局である基地局A2から通信により識別情報41を受信し、また、子基地局である基地局A3から通信により識別情報42を受信することで、取得されたものであってもよい。
【0070】
以上のように構成された基地局の制御方法について、
図5、
図6、及び、
図7を用いて説明する。
【0071】
図5は、本実施の形態に係る親基地局である基地局A1の制御方法を示す第一のフロー図である。
【0072】
ステップS101において、取得部13は、子基地局である基地局A2から無線通信の識別情報であるSSID2を取得する。また、取得部13は、子基地局である基地局A3から無線通信の識別情報であるSSID3を取得する。
【0073】
ステップS102において、制御部14は、ステップS101で取得したSSID2及びSSID3と、基地局A1の無線通信の識別情報であるSSID1とを含むビーコンを生成する。
【0074】
ステップS103において、制御部14は、ステップS102で生成したビーコンを通信IF11により送信する。ステップS103を終えたら、制御部14はステップS102を行う。
【0075】
図5に示される一連の処理により、基地局A1は、自装置の無線通信の識別情報に加えて、基地局A2及びA3の無線通信の識別情報を含むビーコンを繰り返し送信する。これにより、基地局A2がスリープ状態である場合でも、基地局A2の無線通信の識別情報が端末に提供される。
【0076】
上記ステップS102におけるビーコンの送信について詳細に説明する。
【0077】
図6は、本実施の形態に係る基地局A1によるビーコンの送信の説明図である。
図7は、本実施の形態に係る基地局A1により送信されるビーコンの説明図である。
【0078】
図6に示されるように、ステップS102において、基地局A1はビーコン50を送信する。ビーコン50は、
図7に示されるように、宛先アドレスフィールド51と、送信元アドレスフィールド52と、SSIDフィールド53とを含む。
【0079】
宛先アドレスフィールド51は、ビーコン50の宛先を示すフィールドであり、全端末向けを意味するブロードキャストアドレス(ff:ff:ff:ff:ff:ff)が格納される。
【0080】
送信元アドレスフィールド52は、ビーコン50の送信元を示すフィールドであり、基地局A1のアドレスが格納される。
【0081】
SSIDフィールド53は、SSIDを示すフィールドであり、基地局A1の通信IF11のSSIDであるSSID1に加えて、基地局A2及びA3それぞれの通信IF21のSSIDであるSSID2及びSSID3が格納されている。SSIDフィールド53にSSID1、SSID2及びSSID3が格納されるのは、基地局A2及びA3がスリープ状態である場合である。
【0082】
端末S2は、ビーコン50を受信することによって、SSID1、SSID2及びSSID3の無線通信が可能であることを認識することができる。このとき、子基地局である基地局A2及びA3はビーコンを送信する必要がないので、スリープ状態をとることができ、電力消費が抑制され得る。
【0083】
次に、端末S2が基地局A2との無線通信を行うことを目的として、プローブリクエストフレームを送信した場合の通信について説明する。なお、以降の説明においてプローブレスポンスは、基地局A1及びA2の一方が送信すれば十分である。そこで、例えば予め基地局A1及びA2のどちらがプローブレスポンスを送信するかを決定しておいて、この決定に基づいて基地局A1及びA2のいずれかがプローブレスポンスを送信するようにしてもよい。具体的には、基地局A1がプローブレスポンスを送信する(ステップS203を実行する)場合には、基地局A2はプローブレスポンスを送信しない(ステップS303を実行しない)とし、基地局A2がプローブレスポンスを送信する(ステップS303を実行する)場合には、基地局A1はプローブレスポンスを送信しない(ステップS203を実行しない)としてもよい。また、基地局A1及びA2のどちらがプローブレスポンスを送信するかは、固定的に定められていてもよいし、動的に定められていてもよいし、基地局A1及びA2が互いに通信することで決定してもよい。
【0084】
図8は、本実施の形態に係る親基地局である基地局A1の制御方法を示す第二のフロー図である。
図9は、本実施の形態に係る子基地局である基地局A2の制御方法を示す第三のフロー図である。
図10は、本実施の形態に係る通信システム1における通信の説明図である。
【0085】
ここでは、基地局A2がスリープ状態である場合に、端末S2が基地局A2に接続するためにプローブリクエストを送信した場合を説明する。
【0086】
図8に示されるように、ステップS201において、基地局A1の制御部14は、端末S2が送信したプローブリクエストフレーム(
図10の(a))を通信IF11により受信したか否かを判定する。プローブリクエストフレームを通信IF11により受信したと判定した場合(ステップS201でYes)には、ステップS202に進み、そうでない場合(ステップS201でNo)には、ステップS201を再び実行する。つまり、制御部14は、プローブリクエストフレームを受信するまでステップS201で待機状態をとる。
【0087】
ここで、端末S2が送信したプローブリクエストフレームの宛先は、基地局A1に設定されている。端末S2がプローブリクエストフレームの宛先を基地局A1としたのは、事前に受信したビーコン50の送信元が基地局A1であることに基づく。
【0088】
ステップS202において、制御部14は、マジックパケットを基幹ネットワークを介して基地局A2に送信する(
図10の(b))。このマジックパケットは、SSID2によって無線通信をする基地局である基地局A2をアウェイク状態にするためのマジックパケットである。基地局A2は、基地局A1が送信したマジックパケットを通信IF22によって受信する。なお、送信されるマジックパケットには、プローブリクエストの送信元である端末S2のアドレスを含めてもよい。このようにすることで、基地局A2からプローブレスポンスを送信することが可能となる(後述するステップS303)。
【0089】
ステップS203において、制御部14は、ステップS101で受信したプローブリクエストフレームに対する応答であるプローブレスポンスフレーム(以降、プローブレスポンスともいう)を端末S2に送信する。なお、ステップS203は、後述する
図9のステップS303が実行されない場合に実行される。
【0090】
次に子基地局である基地局A2の処理を説明する。
【0091】
図9に示されるように、ステップS301において、制御部23は、通信IF22によって、基地局A1からのマジックパケットを受信したか否かを判定する。マジックパケットを受信したと判定した場合(ステップS301でYes)には、ステップS302に進み、そうでない場合(ステップS301でNo)には、ステップS301を再び実行する。つまり、制御部23は、マジックパケットを受信するまでステップS301で待機状態をとる。
【0092】
ステップS302において、制御部23は、ステップS301でマジックパケットを受信したことに応じて、基地局A2をアウェイク状態に遷移させる。
【0093】
ステップS303において、制御部23は、ステップS201(
図8参照)で受信したプローブリクエストフレームに対する応答であるプローブレスポンスフレームを端末S2に送信する(
図10の(c))。ここで、送信されるプローブレスポンスの宛先は、ステップS301で受信したマジックパケットに含められた端末のアドレスとする。なお、ステップS303は、前述のステップS203が実行されない場合に実行される。
【0094】
ステップS304において、基地局A2は、端末S2との間で、無線通信による接続を確立し、無線通信を行う(
図10の(d))。具体的には、端末S2が基地局A2からのプローブレスポンスフレームを受信したことに基づいて、端末S2と基地局A2との間で認証要求フレーム、認証応答フレーム、帰属要求フレーム及び帰属応答フレームがやりとりされることによって無線通信による接続が確立される。無線通信による接続が確立されるまでの処理は、従来の無線通信と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0095】
なお、上記では、親基地局としての基地局A1と、子基地局としての基地局A2及びA3とのそれぞれの機能を説明したが、1つの基地局が親基地局と子基地局とのどちらとしても動作し得るように構成されてもよい。その場合、1つの基地局は、親基地局と子基地局との両方の機能を有するように構成され、親基地局として動作する場合には親基地局の機能を発揮し、子基地局として動作する場合には子基地局の機能を発揮するように構成される。
【0096】
なお、上記では、基地局A1等のうちの基地局A1が親基地局である場合を例として説明したが、親基地局は、基地局A1等により自律的に選択されてもよい。例えば、基地局A1等それぞれがビーコンを送信し、最も多くの他の基地局A1等からのビーコンを受信できた基地局が親基地局に選択されるようにしてもよい。このようにすれば、選択された親基地局は、通信システム内で運用される複数の基地局と無線通信できる可能性が高く、本発明における基地局としてより好ましい。
【0097】
なお、基地局A2がアウェイク状態になった後、基地局A1がビーコンを送信してもよいし、基地局A2がビーコンを送信してもよい。基地局A2がビーコンを送信する場合、基地局A1は、ビーコンを送信することを停止する。基地局A2がビーコンを送信する場合の通信システム1の処理を以下の変形例において説明する。
【0098】
(実施の形態の変形例)
本変形例において、基地局の消費電力を削減し得る基地局などについて、アウェイク状態に遷移した基地局が、自装置の無線通信の識別情報を含むビーコンを送信する場合の動作の例を説明する。
【0099】
図11は、本変形例に係る基地局によるビーコンの送信の説明図である。
図11を参照しながら、基地局A2がスリープ状態である状況からはじめて、基地局A1からのマジックパケットによって基地局A2がアウェイク状態になり、その後、再び基地局A2がスリープ状態になる場合の、基地局A1及びA2によるビーコンの送信方法を説明する。
【0100】
図11に示されるように、時刻t1付近において、基地局A1がビーコン50を繰り返し送信しており(
図5のステップS102及びS103)、基地局A2がスリープ状態をとっている。
【0101】
時刻t2において、基地局A1が端末S1等からプローブリクエストを受信したことに応じてマジックパケットを基地局A2に送信する(
図8のステップS202)。基地局A1は、マジックパケットを送信した後に、ビーコン50の送信を停止する。また、基地局A1は、ビーコン50の送信を停止した場合(基地局A1での時刻t2)、ビーコン60の送信を開始する。ビーコン60は、SSIDフィールド61に、基地局A1及びA3のSSIDであるSSID1及びSSID3を含むビーコンである。つまり、基地局A1は、マジックパケットを送信した後に、それまでに送信していたビーコン50からSSID2を除外したビーコン60を、繰り返し送信する。例えば、基地局A3がアウェイク状態の場合、ビーコン60は、SSIDフィールドにSSID1だけを含む通常のビーコンと同じになる。なお、仮に基地局A3が存在しない場合、ビーコン60は、SSIDフィールドにSSID1だけを含む通常のビーコンと同じになる。
【0102】
基地局A2は、マジックパケットを受信してアウェイク状態に遷移し(ステップS302)、通信端末との通信を行う。また、基地局A2は、アウェイク状態に遷移すると、ビーコン65を送信することを開始する。ビーコン65は、SSIDフィールド66に、基地局A2のSSIDであるSSID2を含むビーコンである。これで、基地局A2は、端末S2等と通信可能な状態となる。
【0103】
その後、基地局A2は、スリープ状態に遷移するための所定条件を満たすか否かを判定し、所定条件を満たす場合に、スリープ状態に遷移する。スリープ状態では、基地局A2は、ビーコンを送信しない。また、基地局A2は、スリープ状態に遷移する前に、スリープ状態に遷移することを示す通知を基地局A1に送信する。なお、基地局A2がスリープ状態に遷移するための所定条件は、例えば、基地局A2に帰属している端末の数がゼロになること、又は、基地局A2に帰属している端末の数がゼロである状態を所定時間(例えば1分~10分程度)継続したこと、などを採用し得る。上記のように基地局A2がスリープ状態に遷移した時刻を時刻t3とする。
【0104】
時刻t3の後、基地局A1は、再びビーコン50を繰り返し送信する状態をとる。このとき、基地局A2はスリープ状態でありビーコンを送信しない。つまり、基地局A1は、基地局A2がスリープ状態に遷移する通知を受信した後に、それまでに送信していたビーコン60のSSIDフィールド61に、基地局A2のSSIDであるSSID2を追加したビーコン50を送信することになる。
【0105】
このようにして、通信システム1において、基地局がアウェイク状態である場合にビーコンを送信するように構成することができる。
【0106】
以上のように、本実施の形態及び変形例に係る基地局装置(例えば基地局A1)は、自装置による無線通信に用いる通信路の識別情報だけでなく、他の基地局装置による無線通信に用いる通信路の識別情報を含むビーコンフレームを送信するので、他の基地局装置がビーコンフレームを送信しなくても、他の基地局による無線通信に用いる通信路の識別情報を端末に提供することができる。これは、他の基地局装置がスリープ状態であっても、他の基地局装置による無線通信に用いる通信路の識別情報を端末に提供できることを意味している。端末は、上記ビーコンフレームを受信することで、他の基地局装置との無線通信を開始するための処理を実行することができる。このように、基地局装置は、端末が他の基地局装置との無線通信を開始できる状態を維持しながら、他の基地局装置をスリープ状態にさせることで、消費電力を削減し得る。
【0107】
また、基地局装置は、端末が他の基地局装置との無線通信を開始する目的で送信するプローブリクエストフレームを受信した場合に、他の基地局装置をアウェイク状態に遷移させる。その後、他の基地局装置は、無線端末との無線通信を開始することができる。このように、基地局装置は、他の基地局装置がスリープ状態である場合であっても、端末に他の基地局装置との無線通信を開始させることができる。
【0108】
また、基地局装置は、端末が送信したプローブリクエストフレームに対する応答であるプローブレスポンスフレームを送信することで、他の基地局装置がプローブレスポンスフレームを送信する場合に比べて、他の基地局装置の消費電力を削減できる。よって、基地局装置は、消費電力をより一層削減し得る。
【0109】
また、基地局装置は、他の基地局装置がアウェイク状態になってビーコンを送信する場合に、ビーコンの送信を停止する。これにより、他の基地局の無線通信の識別情報が、当該基地局装置及び他の基地局装置から重複して端末に提供されることを回避できる。よって、基地局装置は、無線通信の識別情報の重複送信を回避しながら、より適切に、消費電力を削減し得る。
【0110】
また、基地局装置は、他の基地局装置がスリープ状態に遷移することでビーコンの送信を停止するときに、他の基地局の無線通信の識別情報を含むビーコンの送信を開始する。これにより、他の基地局装置がスリープ状態に遷移することで、他の基地局の無線通信の識別情報が端末に提供されない事態を回避することができる。
【0111】
また、基地局装置は、他の基地局装置の無線通信の識別情報を、当該他の基地局装置から取得するので、例えば人手により設定される場合に比べて、利便性を高めることができる。
【0112】
また、基地局装置は、複数の識別情報を含むフレームとしてマルチプルSSIDビーコンフレームを利用することによって、より容易に、消費電力を削減できる。
【0113】
また、本実施の形態及び変形例に係る基地局装置(例えば基地局A2)は、スリープ状態をとっているときに、他の基地局装置が端末からプローブリクエストフレームを受信したことに基づいて送信した遷移フレームを受信した場合に、プローブレスポンスフレームを送信する。一般に基地局装置は、プローブリクエストフレームを受信したことに基づいてプローブレスポンスフレームを送信する。しかし、他の基地局装置が端末からプローブリクエストフレームを受信した場合には、基地局装置は、そのプローブリクエストフレームに対する応答であるプローブレスポンスフレームを送信するだけでよく、このときにプローブリクエストフレームを受信したことを契機とする必要はない。よって、基地局装置は、プローブリクエストフレームを受信することなく、プローブレスポンスフレームを送信することで、適切に、端末との無線通信をすることができる。このように、基地局装置は、スリープ状態において他の基地局装置からの遷移フレームを利用してアウェイク状態に遷移して無線通信を開始できる状態をとることができる。よって、基地局装置は、無線通信を開始できる状態を維持しながら、基地局装置の消費電力を削減できる。
【0114】
なお、本発明は、装置として実現できるだけでなく、その装置を構成する処理手段をステップとする方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体として実現したり、そのプログラムを示す情報、データ又は信号として実現したりすることもできる。そして、それらプログラム、情報、データ及び信号は、インターネット等の通信ネットワークを介して配信してもよい。
【0115】
以上、本発明の基地局装置等について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、消費電力を削減する基地局装置に適用され得る。具体的には、IEEE802.11a、b、g、nなどの規格に準拠する無線LANの基地局装置に適用され得る。
【符号の説明】
【0117】
1 通信システム
5 空間
11、12、21、22 通信IF
13 取得部
14、23 制御部
15、24 転送部
40、41、42 識別情報
50、60、65 ビーコン
51 宛先アドレスフィールド
52 送信元アドレスフィールド
53、61、66 SSIDフィールド
A1、A2、A3 基地局
R1、R2、R3 半径
S1、S2、S3、S4、S5、S6 端末