(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】湿式処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220202BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20220202BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
H01L21/304 642D
H01L21/304 642A
H01L21/68 N
H01L21/306 J
(21)【出願番号】P 2018230691
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-07-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509324780
【氏名又は名称】株式会社サンエイ
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】本間 剛
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-092282(JP,A)
【文献】特開2006-035139(JP,A)
【文献】特開2005-317907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/683
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形をなす複数枚のウエハを、縦置きにした状態で厚み方向に間隔をあけて支持するカセットと、
前記ウエハに対して所定の湿式処理を行う処理液を収容する処理槽と、
前記処理槽に浸漬させた前記カセットを、縦置きにした前記ウエハの表面に沿って、縦方向、横方向、又はこれらを組み合わせた方向に移動させる移動手段と、を備え
、
前記移動手段は、前記カセットを縦方向に移動させる縦方向移動手段と前記カセットを横方向に移動させる横方向移動手段とにより構成され、前記処理槽に浸漬させた前記カセットを、前記縦方向移動手段と前記横方向移動手段を駆動させることによって、楕円状に移動させつつ、直線状、楕円状、又はこれらを組み合わせた形状の軌道に沿って移動させ、
前記処理槽は、処理液を収容する区域の縦方向と横方向の両方の内寸が、前記ウエハの直径の2倍以上である湿式処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子に使用される円形のウエハに対して所定の湿式処理を行うための湿式処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円形薄板状をなす半導体ウエハに対して、洗浄、エッチング、レジスト剥離などの湿式処理を行うものとして、複数枚のウエハをカセットに収容してバッチ処理を行うようにした装置が知られている。例えば特許文献1には、複数枚のウエハを縦置きにした状態で間隔をあけて支持するカセットを、レジスト剥離液を収容した処理槽に浸漬させ、更にカセット内のウエハを、その中心回りに回転させるようにした装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示される装置のように円形状のウエハをその中心回りに回転させると、ウエハにおける中心近くの部分と外縁近くの部分では、回転によって移動する距離が相違する(外縁近くの部分に対して中心近くの部分の移動距離は小さい)ことになる。すなわち、同一のウエハであっても、径方向で湿式処理の差が生じることになっていた。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、ウエハに対する所定の湿式処理を均一に行うことができる湿式処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、円形をなす複数枚のウエハを、縦置きにした状態で厚み方向に間隔をあけて支持するカセットと、前記ウエハに対して所定の湿式処理を行う処理液を収容する処理槽と、前記処理槽に浸漬させた前記カセットを、縦置きにした前記ウエハの表面に沿って、縦方向、横方向、又はこれらを組み合わせた方向に移動させる移動手段と、を備える湿式処理装置である。
なお、本明細書等における「湿式処理」には、洗浄やエッチング、レジスト剥離などが含まれる。
【0007】
また前記処理槽は、処理液を収容する区域の縦方向と横方向の内寸が、前記ウエハの直径の2倍以上であることが好ましい。
【0008】
そして前記移動手段は、前記処理槽に浸漬させた前記カセットを、楕円状に移動させつつ、直線状、楕円状、又はこれらを組み合わせた形状の軌道に沿って移動させることが好ましい。
なお、本明細書等における「楕円状」とは、図面や詳細な説明で具体的に形状を特定したものを除いて広義の意味で楕円に含まれるものを意味し、楕円形状や円形状の他、2つの直線と2つの円弧で取り囲んだ長円形状や卵形状、これらに類似する形状も含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の湿式処理装置によれば、処理槽に浸漬させたカセットを、このカセットに縦置きにしたウエハの表面に沿って、縦方向、横方向、又はこれらを組み合わせた方向に移動させることができるため、処理槽に収容した処理液によってウエハの表面(裏面)を均一に湿式処理することができる。
【0010】
また処理槽を、処理液を収容する区域の縦方向と横方向の内寸がウエハの直径の2倍以上になるように構成することによって、処理槽内でウエハを、移動前の位置に重ならない位置まで移動させることができる。すなわちウエハを、処理槽内で片寄りなく移動させることができるため、湿式処理をより均一に行うことができる。
【0011】
そして、処理槽に浸漬させたカセットを、楕円状に移動させつつ、直線状、楕円状、又はこれらを組み合わせた形状の軌道に沿って移動させる場合は、処理液に対してウエハをよりムラ無く動かすことができるため、ウエハの表面(裏面)に対する処理を更に均一に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に従う湿式処理装置の一実施形態を概略的に示した側面図である。
【
図2】(a)は
図1におけるA-Aに沿う断面図であり、(b)は
図1における矢印Bからの矢視図である。
【
図3】処理槽内でカセットを、主に直線に沿う軌道で移動させる場合について例示した図である。
【
図4】処理槽内でカセットを、円又は楕円に沿う軌道で移動させる場合について例示した図である。
【
図5】処理槽内でカセットを、円に沿う軌道で移動させつつ、この円よりも直径が大きな円に沿う軌道で移動させる場合について例示した図である。
【
図6】処理槽内でカセットを、円に沿う軌道で移動させつつ、この円よりも直径が小さな円に沿う軌道で移動させる場合について例示した図である。
【
図7】処理槽内でカセットを、楕円に沿う軌道で移動させつつ、円に沿う軌道で移動させる場合について例示した図である。
【
図8】処理槽内でカセットを、円に沿う軌道で移動させつつ、直線、円、又はこれらを組み合わせた形状の軌道に沿って移動させる場合について例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に従う湿式処理装置の一実施形態について説明する。なお説明の便宜上、図面ではXYZ直交座標系によって方向を示していて、X方向は横方向(左右方向、+側が右側、-側が左側)、Y方向は前後方向(+側が前側、-側が奥側)、Z方向は縦方向(上下方向、+側が上側、-側が下側)を示す。
【0014】
図1は、本実施形態の湿式処理装置を概略的に示した側面図であり、
図2は、その断面図及び矢視図である。本実施形態の湿式処理装置は、後側に設けたベース1に、横方向移動手段2が設けられている。横方向移動手段2は、例えばボールねじ、サーボモータ、リニアガイドなどで構成されるスライドユニットであって、所定の指令に基づいてサーボモータを駆動させることによって、ベース1に固定される本体部2aに対して横方向移動部2bをX方向の所定の位置に移動させることが可能である。
【0015】
そして本体部2aには、縦方向移動手段3が設けられている。縦方向移動手段3も横方向移動手段2と同様の構成になるものであって、横方向移動部2bに固定される本体部3aと、本体部3aに対してZ方向の所定の位置に移動可能な縦方向移動部3bとにより構成されている。
【0016】
このような横方向移動手段2と縦方向移動手段3は、
図2(b)に示すように、「十」字状に組み合わされて構成されている。なお、本明細書等においては、横方向移動手段2と縦方向移動手段3を組み合わせたものを「移動手段」と称する場合もある。
【0017】
図1に示すように縦方向移動手段3の前方には、湿式処理装置を前後に区画する区画側壁4と、区画側壁4に連結する区画天壁5が設けられている。区画側壁4と区画天壁5は、横方向移動手段2や縦方向移動手段3の他、不図示の電気設備などに後述する処理液がかからないようにするためのものである。また区画天壁5には、横方向に長く延在する開口6が設けられている。
【0018】
また区画天壁5の前方には、チャンバー7が設けられている。チャンバー7の内側には、回収槽8が設けられていて、回収槽8の内側には、処理槽9が設けられている。また処理槽9の下部には、導入パイプ10が設けられている。
【0019】
導入パイプ10は、後述するウエハに対して所定の湿式処理を行うための処理液を処理槽9に導入するものである。上述したように所定の湿式処理とは、例えば洗浄やエッチング、レジスト剥離などであって、目的の処理に応じた処理液(例えばアルカリ性や酸性の薬液、エッチング液など)が導入パイプ10から処理槽9に導入される。なお、図示は省略するが、導入パイプ10には処理液を溜めておくバッファータンクが接続され、バッファータンクには、タンク内の処理液を冷却又は加温するための冷却装置や加温装置が接続されている。このため、例えばエッチングを行う場合は、処理中に反応熱が生じて処理液の温度が次第に上昇することが懸念されるが、本実施形態の湿式処理装置によれば、上述した付帯設備によって、処理槽9内の処理液の温度を一定に保つことができるため、温度差に伴う湿式処理の変動を抑えることができる。
【0020】
なお本実施形態の湿式処理装置においては、導入パイプ10によって導入された処理液を、処理槽9の上部からオーバーフローさせることが可能である。すなわち、処理槽9内の処理液は入れ替わるため、処理液の劣化による湿式処理への影響を抑制することができる。なお、オーバーフローさせた処理液は、回収槽8に設けた不図示の回収手段でバッファータンクに戻すことができる。
【0021】
そして処理槽9に導入された処理液には、
図2に示すように、薄板円形状になるウエハ11を複数枚支持するためのカセット12が浸漬される。詳細な説明は省略するが、カセット12には、複数枚のウエハ11が縦置きにされた状態で厚み方向に間隔をあけてセットされる。また本実施形態のカセット12は、ウエハ11の表面(裏面)がXZ平面に平行になる向きで処理槽9に導入される。
【0022】
ここでカセット12は、
図1に示したX方向に開閉する把持部13によって着脱自在に把持される。また把持部13は、縦方向移動部3bに接続されたアーム14に連結している。
図1に示すようにアーム14は、縦方向移動部3bに接続された後、上側に長く延在して開口6を通過し、更に前側に延在した後に下側に延在して、把持部13に連結している。これにより把持部13に把持されたカセット12を、横方向移動手段2と縦方向移動手段3を駆動させることによって、処理槽9に導入された処理液に浸漬された状態で、縦方向、横方向、又はこれらを組み合わせた方向に移動させることができる。すなわち、本実施形態の湿式処理装置によれば、処理槽9の処理液に浸漬されたウエハ11を、その表面(裏面)に沿う任意の向きで、直線状にも曲線状にも移動させることができる。
【0023】
このように本実施形態の湿式処理装置では、従来の装置のようにウエハをその中心回りに回転させるものではなく、処理液に対してウエハ全体を同じように移動させることができるため、その表面(裏面)を均一に湿式処理することができる。
【0024】
また本実施形態の処理槽9は、
図2(a)に示すように、処理液を収容する区域の縦方向の内寸L1と横方向の内寸L2が、ウエハ11の直径Dの2倍以上となっている。これによりウエハ11を、処理槽9内で移動前の位置に重ならない位置まで移動させることができる。上述したように処理槽9の処理液は、導入パイプ10によって下方の中央部から導入され、上方の縁部からオーバーフローされるように構成しているため、処理槽9内では、上下方向、左右方向(前後方向)において、処理液の性状に差が生じるおそれがある。このため、処理槽9が狭くてウエハ11を大きく動かせない場合には、ウエハ11の上下方向、左右方向で湿式処理に差が出るおそれがあるが、本実施形態ではウエハ11を、処理槽9に対して片寄りなく移動させることができるため、湿式処理をより均一に行うことができる。また、ウエハ11を大きく動かすことにより、処理槽9内の処理液を十分に撹拌させることができるため、この点でも湿式処理の差をなくすことができる。
【0025】
また本実施形態の湿式処理装置によれば、処理槽9内でカセット12を様々な方向や軌道で移動させることができる。例えば
図3(a)に示すように、カセット12を上下、左右方向に直線に沿う軌道で動かすことも可能であるし、
図3(b)に示すように、動かす距離を変えることも可能である。また、
図3(c)に示すように、上下、左右方向に対して斜めになる方向に直線に沿う軌道で移動させることも可能である。更に
図3(d)に示すように、角部を円弧状にした概略矩形状になるものを上下に2つ並べて「8」字状にした形状に沿う軌道で移動させてもよい。なお、
図3~
図8は、カセット12とその軌道を概略的に示したものであって、カセット12の大きさと軌道の大きさ(長さ)との関係を特定するものではない。
【0026】
またカセット12は、
図4(a)に示すように円に沿う軌道で移動させてもよいし、
図4(b)に示すように楕円に沿う軌道で移動させてもよい。また、
図4(c)に示すように、円を上下に2つ並べて「8」字状にした形状に沿う軌道で移動させてもよい。
【0027】
更にカセット12は、
図5~
図8に示すように、円や楕円に沿う軌道で移動させつつ、直線状、楕円状、又はこれらを組み合わせた形状の軌道に沿って移動させるようにしてもよい。
図5(a)は、カセット12を、実線で示した円に沿う軌道T1で移動させつつ、一点鎖線で示した、軌道T1よりも直径が大きな円に沿う軌道T2に沿って移動させる場合について示している。これにより、
図5(b)に示すような軌道でウエハ11を移動させることができる。
【0028】
また
図6(a)は、カセット12を、実線で示した円に沿う軌道T3で移動させつつ、一点鎖線で示した、軌道T3よりも直径が小さな円に沿う軌道T4に沿って移動させる場合について示している。これにより、
図6(b)に示すような軌道でウエハ11を移動させることができる。
【0029】
そして
図7(a)は、カセット12を、実線で示した楕円に沿う軌道T5で移動させつつ、一点鎖線で示した円に沿う軌道T6に沿って移動させる場合について示している。これにより、
図7(b)に示すような軌道でウエハ11を移動させることができる。
【0030】
また、例えば
図8(a)に示すように、カセット12を、実線で示した円に沿う軌道T7で移動させつつ、一点鎖線で示す「十」字状の軌道T8に沿って移動させてもよい。他にも、
図8(b)に示すようにカセット12を、実線で示した円に沿う軌道T9で移動させつつ、一点鎖線で示した、円を上下に2つ並べて「8」字状にした形状に沿う軌道T10に沿って移動させてもよいし、
図8(c)に示すように、実線で示した円に沿う軌道T11で移動させつつ、一点鎖線で示した、角部を円弧状にした概略矩形状になるものを上下に2つ並べて「8」字状にした形状に沿う軌道T11に沿って移動させてもよい。
【0031】
以上、本発明について具体的な実施形態を示しながら説明したが、本発明に従う湿式処理装置は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に従う範疇で種々の変更を加えたものも含まれる。例えば
図1では、ベース1に設けた横方向移動手段2に対して縦方向移動手段3を設けるようにしたが、ベース1に縦方向移動手段3を設けるとともに縦方向移動手段3に横方向移動手段2を設けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1:ベース
2:横方向移動手段(移動手段)
3:縦方向移動手段(移動手段)
4:区画側壁
5:区画天壁
6:開口
7:チャンバー
8:回収槽
9:処理槽
10:導入パイプ
11:ウエハ
12:カセット
13:把持部
14:アーム