(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】懸濁液からの懸濁物回収装置及び回収方法
(51)【国際特許分類】
F27D 17/00 20060101AFI20220202BHJP
F27B 7/33 20060101ALI20220202BHJP
F26B 17/10 20060101ALI20220202BHJP
C02F 1/12 20060101ALI20220202BHJP
B01D 1/20 20060101ALI20220202BHJP
B01D 1/18 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
F27D17/00 104G
F27B7/33
F26B17/10 Z
C02F1/12
B01D1/20
B01D1/18
(21)【出願番号】P 2017159766
(22)【出願日】2017-08-22
【審査請求日】2020-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今田 雄司
(72)【発明者】
【氏名】藤戸 幹大
(72)【発明者】
【氏名】福田 格章
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-131168(JP,A)
【文献】特開2012-081490(JP,A)
【文献】特開2017-096554(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0050759(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 17/00
B01D 1/18
F27B 7/33
F26B 17/10
C02F 1/12
B01D 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
助燃バーナ及び燃焼用空気供給ファンを有する固形燃料
である木質系バイオマス燃焼用のキルン本体と、該キルン本体内での
木質系バイオマスの燃焼に伴って生じる揮発分を燃焼分解する二次燃焼室とからなる熱風発生炉を備えると共に、該熱風発生炉の熱風通路に連通する懸濁液蒸発塔と、該懸濁液蒸発塔の上部に取り付けた懸濁液噴霧ノズルと、懸濁液タンク内に貯留した懸濁液を吸い込んで前記懸濁液噴霧ノズルに圧送するポンプと
、該ポンプにて圧送する懸濁液の流量を調整する流量調整用バルブとを備え
る一方、前記熱風通路には熱風温度検出用の熱風温度センサと、熱風量検出用の流量センサとを備え、これら各センサにて検出される熱風温度と熱風量とから熱風の保有熱量を逐次求め、この求めた保有熱量に基づいて前記流量調整用バルブの開度を調整し、前記懸濁液噴霧ノズルから噴霧する懸濁液が前記懸濁液蒸発塔内に残らず、かつ蒸発処理できる最大限度の噴霧量となるように調整制御する構成としたことを特徴とする懸濁液からの懸濁物回収装置。
【請求項2】
前記懸濁液蒸発塔は、塔上部に熱風通路を、塔下部に排気煙道を連通し、塔内には熱風を下向きから上向きへと転向させる折曲通路を前記排気煙道に連通して慣性集塵機構を備えると共に、塔下端部には懸濁液から分離した懸濁物を回収する懸濁物回収部を備えたことを特徴とする請求項1記載の懸濁液からの懸濁物回収装置。
【請求項3】
前記懸濁液噴霧ノズルは、所定圧力の空気とともに噴射する二流体ノズルとし、懸濁液を微粒化して熱風中に噴霧して蒸発させることを特徴とする請求項1または2記載の懸濁液からの懸濁物回収装置。
【請求項4】
キルン本体内にて必要な燃焼用空気を吹き込みながら木質系バイオマスを自燃によって燃焼する工程と、前記燃焼に伴って生じる揮発分を二次燃焼室にて燃焼分解させて高温の熱風を発生する工程と、前記発生した熱風と噴霧する懸濁液との間の直接的な接触により懸濁液を蒸発させる工程と、前記懸濁液の蒸発後に残る懸濁物を分離回収する工程とを含
み、前記熱風を発生する工程において発生した熱風の温度と熱風量とを逐次検出し、これらの各検出値から求められる熱風の保有熱量に基づいて、前記懸濁液を残さずかつ蒸発処理できる最大限度の噴霧量となるように懸濁液の噴霧量を調整制御することを特徴とする懸濁液からの懸濁物回収方法。
【請求項5】
前記懸濁物を分離回収する工程にて回収した懸濁物を前記
木質系バイオマスを自燃によって燃焼
する工程に供給する工程を含むことを特徴とする請求項4記載の懸濁液からの懸濁物回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の懸濁物を含んだ懸濁液から懸濁物を分離して回収する回収装置及び回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の懸濁物を含んだ懸濁液から懸濁物を分離回収する場合、前記懸濁液を適宜の加熱手段にて加熱処理し、懸濁液中の水分を強制的に蒸発させ、残った懸濁物を回収するようにした装置がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-206856号公報
【文献】特開2005-326053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来装置では、懸濁液の加熱処理にあたって重油等の化石燃料をボイラーにて燃焼させることで発生させた高温の蒸気を利用するようにしており、コスト的に改善の余地があると考えられる。また、環境面から見ても、環境負荷の高い化石燃料の使用量をできるだけ抑えることが望ましい。
【0005】
本発明は上記の点に鑑み、低コストかつ低環境負荷にて懸濁液から懸濁物を分離回収可能な懸濁液からの懸濁物回収装置及び回収方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載の懸濁液からの懸濁物回収装置では、助燃バーナ及び燃焼用空気供給ファンを有する固形燃料である木質系バイオマス燃焼用のキルン本体と、該キルン本体内での木質系バイオマスの燃焼に伴って生じる揮発分を燃焼分解する二次燃焼室とからなる熱風発生炉を備えると共に、該熱風発生炉の熱風通路に連通する懸濁液蒸発塔と、該懸濁液蒸発塔の上部に取り付けた懸濁液噴霧ノズルと、懸濁液タンク内に貯留した懸濁液を吸い込んで前記懸濁液噴霧ノズルに圧送するポンプと、該ポンプにて圧送する懸濁液の流量を調整する流量調整用バルブとを備える一方、前記熱風通路には熱風温度検出用の熱風温度センサと、熱風量検出用の流量センサとを備え、これら各センサにて検出される熱風温度と熱風量とから熱風の保有熱量を逐次求め、この求めた保有熱量に基づいて前記流量調整用バルブの開度を調整し、前記懸濁液噴霧ノズルから噴霧する懸濁液が前記懸濁液蒸発塔内に残らず、かつ蒸発処理できる最大限度の噴霧量となるように調整制御する構成としたことを特徴としている。
【0007】
また、請求項2記載の懸濁液からの懸濁物回収装置では、前記懸濁液蒸発塔は、塔上部に熱風通路を、塔下部に排気煙道を連通し、塔内には熱風を下向きから上向きへと転向させる折曲通路を前記排気煙道に連通して慣性集塵機構を備えると共に、塔下端部には懸濁液から分離した懸濁物を回収する懸濁物回収部を備えたことを特徴としている。
【0008】
また、請求項3記載の懸濁液からの懸濁物回収装置では、前記懸濁液噴霧ノズルは、所定圧力の空気とともに噴射する二流体ノズルとし、懸濁液を微粒化して熱風中に噴霧して蒸発させることを特徴としている。
【0009】
また、請求項4記載の懸濁液からの懸濁物回収方法では、キルン本体内にて必要な燃焼用空気を吹き込みながら木質系バイオマスを自燃によって燃焼する工程と、前記燃焼に伴って生じる揮発分を二次燃焼室にて燃焼分解させて高温の熱風を発生する工程と、前記発生した熱風と噴霧する懸濁液との間の直接的な接触により懸濁液を蒸発させる工程と、前記懸濁液の蒸発後に残る懸濁物を分離回収する工程とを含み、前記熱風を発生する工程において発生した熱風の温度と熱風量とを逐次検出し、これらの各検出値から求められる熱風の保有熱量に基づいて、前記懸濁液を残さずかつ蒸発処理できる最大限度の噴霧量となるように懸濁液の噴霧量を調整制御することを特徴としている。
【0010】
また、請求項5記載の懸濁液からの懸濁物回収方法では、前記懸濁物を分離回収する工程にて回収した懸濁物を前記木質系バイオマスを自燃によって燃焼する工程に供給する工程を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る請求項1記載の懸濁液からの懸濁物回収装置によれば、固形燃料である木質系バイオマス燃焼用のキルン本体と、該キルン本体内での木質系バイオマスの燃焼に伴って生じる揮発分を燃焼分解する二次燃焼室とからなる熱風発生炉を備えると共に、該熱風発生炉の熱風通路に連通する懸濁液蒸発塔と、該懸濁液蒸発塔に取り付けた懸濁液噴霧ノズルと、懸濁液タンク内に貯留した懸濁液を吸い込んで前記懸濁液噴霧ノズルに圧送するポンプと、該ポンプにて圧送する懸濁液の流量を調整する流量調整用バルブとを備える一方、前記熱風通路には熱風温度検出用の熱風温度センサと、熱風量検出用の流量センサとを備え、これら各センサにて検出される熱風温度と熱風量とから熱風の保有熱量を逐次求め、この求めた保有熱量に基づいて前記流量調整用バルブの開度を調整し、前記懸濁液噴霧ノズルから噴霧する懸濁液が前記懸濁液蒸発塔内に残らず、かつ蒸発処理できる最大限度の噴霧量となるように調整制御する構成としたので、重油等の化石燃料と比較して低コストでかつ環境負荷の低い固形燃料である木質系バイオマスを燃焼させることで得られる熱風でもって懸濁液を効率よく蒸発させて懸濁物を分離回収できる。
【0012】
また、請求項2記載の懸濁液からの懸濁物回収装置によれば、前記懸濁液蒸発塔は、塔上部に熱風通路を、塔下部に排気煙道を連通し、塔内には熱風を下向きから上向きへと転向させる折曲通路を前記排気煙道に連通して慣性集塵機構を備えると共に、塔下端部には懸濁液から分離した懸濁物を回収する懸濁物回収部を備えたので、懸濁液の蒸発によって熱風中に分散して混在する懸濁物を、熱風が転向する際の慣性力を利用して効果的に分離沈降させて回収できる。
【0013】
また、請求項3記載の懸濁液からの懸濁物回収装置によれば、前記懸濁液噴霧ノズルは、所定圧力の空気とともに噴射する二流体ノズルとし、懸濁液を微粒化して熱風中に噴霧して蒸発させるので、懸濁液をより効率よく蒸発できて懸濁物を分離回収できる。
【0014】
また、請求項4記載の懸濁液からの懸濁物回収方法によれば、キルン本体内にて必要な燃焼用空気を吹き込みながら木質系バイオマスを自燃によって燃焼する工程と、前記燃焼に伴って生じる揮発分を二次燃焼室にて燃焼分解させて高温の熱風を発生する工程と、前記発生した熱風と噴霧する懸濁液との間の直接的な接触により懸濁液を蒸発させる工程と、前記懸濁液の蒸発後に残る懸濁物を分離回収する工程とを含み、前記熱風を発生する工程において発生した熱風の温度と熱風量とを逐次検出し、これらの各検出値から求められる熱風の保有熱量に基づいて、前記懸濁液を残さずかつ蒸発処理できる最大限度の噴霧量となるように懸濁液の噴霧量を調整制御するので、重油等の化石燃料と比較して低コストでかつ環境負荷の低い固形燃料である木質系バイオマスを自燃させることで得られる高温の熱風でもって懸濁液を効率よく蒸発させて懸濁物を分離回収できる。
【0015】
また、請求項5記載の懸濁液からの懸濁物回収方法によれば、前記懸濁物を分離回収する工程にて回収した懸濁物を前記木質系バイオマスを自燃によって燃焼する工程に供給する工程を含むので、懸濁液から回収される懸濁物が可燃性のものであれば、懸濁液を蒸発させる熱風発生用の固形燃料の一部として利用でき、懸濁物回収時の一層の低コスト化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る懸濁液からの懸濁物回収装置及び回収方法の一実施例を示す概略説明図である。
【
図2】
図1の懸濁液蒸発塔の一部切り掻き拡大図である。
【
図3】
図1の懸濁液噴霧ノズルの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る懸濁液からの懸濁物回収装置及び回収方法にあっては、助燃バーナ及び燃焼用空気供給ファンを有する木質系バイオマス等の固形燃料燃焼用のキルン本体と、該キルン本体内での固形燃料の燃焼に伴って生じる可燃性の揮発分を燃焼分解する二次燃焼室とからなる熱風発生炉を備える。また、前記熱風発生炉の熱風通路に連通する懸濁液蒸発塔と、該懸濁液蒸発塔の上部に取り付けた懸濁液噴霧ノズルと、懸濁液タンク内に貯留した各種の懸濁物を含んだ懸濁液を吸い込んで前記懸濁液噴霧ノズルに圧送するポンプとを備える。
【0018】
前記懸濁液蒸発塔は、塔上部に前記熱風通路を、塔下部に排気煙道を連通し、前記熱風通路より塔内に導入した熱風が塔上部側から塔下部側に向けて流下するように構成している一方、塔内には前記熱風の流向を下向きから上向きへと急激に転向させるように、例えば、塔の水平断面略中心部付近に下方へ向けて熱風導出用の開口部を開口し、該開口部から塔側壁方向へ向けて略直角に折曲形成してなる折曲通路を前記排気煙道に連通して慣性集塵機構を備えると共に、塔下端部には懸濁液から分離した懸濁物を回収する懸濁物回収部を備える。
【0019】
また、好ましくは、前記懸濁液噴霧ノズルを所定圧力の空気と共に噴射する外部混合型の二流体ノズルとし、例えば、懸濁物が混在する懸濁液を微粒化しながら前記熱風通路より供給する熱風に向けて噴霧するようにすると、懸濁液を効率よく蒸発させることができ、単位時間当たりより多くの懸濁物を分離回収できる構成となる。また、多くの懸濁物を含んだ懸濁液でもノズル先端部等で目詰まりさせることなく比較的安定して噴霧できる。
【0020】
なお、前記懸濁液噴霧ノズルより噴霧する懸濁液の噴霧量としては、少なくとも懸濁液を残さずに(塔内でドレン水等を発生させることなく)蒸発処理できる範囲内で適宜調整するとよいが、例えば、前記熱風発生炉にて発生する熱風の温度や熱風量等を逐次検出し、それらの検出値から求められる熱風の保有熱量に基づいて、懸濁液を残さずに蒸発処理できる最大限度程度の噴霧量となるように調整制御するようにすると好ましい。また、前記懸濁液蒸発塔下流の排気煙道においても排ガス温度を検出し、この排ガス温度が露点温度を下回らないように、例えば、排ガス温度が露点温度以下になれば前記懸濁液噴霧ノズルからの噴霧量を絞る方向へ調整制御するようにするとよい。
【0021】
上記構成とすることにより、例えば、安定供給の難しい木質系バイオマス等の固形燃料の性状(例えば、含水率等)や供給量等のバラツキによって発生する熱風の保有熱量が大きく変動する場合でも、懸濁液をそれに追随させるように過不足なく噴霧して適正に蒸発処理できると共に、蒸発処理に伴って冷却されかつ高湿度状態にある排ガスの温度を少なくとも露点温度以上に保て、懸濁液蒸発塔下流側に設置される集塵機や煙突等での結露の発生を防いで腐食等の不具合を防止できる。
【0022】
そして、上記構成の装置を使用し、各種の懸濁物を含んだ懸濁液を蒸発させて懸濁物を分離回収するときには、先ず、熱風発生炉の助燃バーナを燃焼させてキルン本体内を予熱後、例えば木質系バイオマス等の固形燃料を所定量ずつ投入して着火燃焼させると共に、燃焼用空気供給ファンより燃焼に必要な燃焼用空気をキルン内に吹き込み、前記固形燃料の燃焼が安定してくれば助燃バーナを消火して固形燃料を自燃状態で燃焼させる一方、前記燃焼に伴って生じる可燃性の揮発分は下流の二次燃焼室にて燃焼分解させて高温の熱風を発生させる。
【0023】
そして、前記二次燃焼室にて発生させた熱風は熱風通路を介して下流の懸濁液蒸発塔に導入し、この高温の熱風に対して懸濁液蒸発塔上部の懸濁液噴霧ノズルより所定量の懸濁液を噴霧し、熱風と直接的に接触させながら懸濁液を蒸発させていく。そして、蒸発した懸濁液は、熱風(排ガス)と共に塔下部側へ流下した後、前記折曲通路を介して下流の排気煙道へと導出する。
【0024】
このとき、熱風中に混在する懸濁物は、前記折曲通路部分で熱風の流向が下向きから上向きへと急激に転向する際に掛かる強い慣性力によって効果的に分離沈降され、塔下端部の懸濁物回収部に落下して回収される。一方、排気煙道へ導出した熱風は、下流の集塵機等を経て煙突より大気中へ放出する。
【0025】
なお、前記懸濁液蒸発塔や集塵機にて回収・捕集される懸濁物が、例えば可燃性のものであれば、前記熱風発生炉のキルン本体へ供給して熱風発生用の固形燃料の一部として利用するようにしてもよい。
【0026】
このように、上記懸濁液からの懸濁物回収装置及び回収方法によれば、木質系バイオマス等の固形燃料の自燃によって発生させた熱風と噴霧した懸濁液とを直接接触させることにより、懸濁液を効果的に蒸発処理して懸濁物を分離回収することができ、従来の化石燃料を主燃料とする装置等と比較して低コストかつ低環境負荷にて回収できて好適である。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0028】
図中の1は懸濁液からの懸濁物回収装置であって、木質系バイオマス等の固形燃料を主燃料として燃焼させるロータリーキルン方式のキルン本体2と、該キルン本体2での固形燃料の燃焼に伴って生じる可燃性の揮発分を燃焼分解する二次燃焼室3とからなる熱風発生炉4を備えていると共に、該熱風発生炉4の熱風通路5に連通する懸濁液蒸発塔6を備えている。また、前記懸濁液蒸発塔6には熱風(排ガス)導出用の排気煙道7を連結し、該排気煙道7の下流には熱風中のダスト捕捉用の集塵機であるバグフィルタ8を備えていると共に、その下流側には排風量調整用のメインダンパー9、排風機10及び煙突11を備えている。
【0029】
前記熱風発生炉4のキルン本体2は、円筒状の鋼板の内壁面に、例えば、耐火煉瓦やセラミック等の耐熱性のキャスター12を周設し、基台13上に回転自在に傾斜支持すると共に、その一端部には固形燃料投入用の投入シュート14、キルン本体2内の予熱や種火用等に用いられ、石油や天然ガス等の化石燃料を使用する小型の助燃バーナ15、キルン本体2内に投入した固形燃料を自燃で燃焼させるのに必要な燃焼用空気を吹き込むようにして供給する燃焼用空気供給ファン16を備えている一方、他端部には前記二次燃焼室3を直結している。
【0030】
前記二次燃焼室3は、キルン本体2と同様に、その内壁面に耐熱性のキャスター(図示せず)を貼着していると共に、キルン本体2より導入される可燃性の揮発分が約2秒程度以上かけて下流側の熱風通路5へと導出されるように縦長の構造としており、木質系バイオマス等の固形燃料を燃焼させた際に生じる揮発分や炭化物等の飛散性未燃分が、高温に維持された前記二次燃焼室3内を通過する間に完全に燃焼分解されるようにしている。また、図中の17は、前記助燃バーナ15と同様に、化石燃料を使用して二次燃焼室3内に熱風を供給する小型の補助バーナであって、例えば、熱風発生炉4の運転初期時などに燃焼させて二次燃焼室3内を予熱し、予熱完了後は消火するようにしている。
【0031】
また、前記二次燃焼室3の下部には、キルン本体2から排出される木質系バイオマス等の固形燃料の燃焼灰や炭化物等の固形未燃分を一時的に貯留する貯留ホッパ18を備えていると共に、該貯留ホッパ18の下端部には燃焼灰排出用の排出ゲート19を開閉自在に備えている。また、前記排出ゲート19の上位には再燃焼用空気供給手段20を備えており、キルン本体2内で燃焼しきれずに貯留ホッパ18内へ排出される固形未燃分に対して前記再燃焼用空気供給手段20より所定量の再燃焼用空気を吹き込むことにより、固形未燃分を十分に燃焼分解させ、木質系バイオマス等の固形燃料の発熱量を無駄なく有効活用できるようにしている。
【0032】
また、前記二次燃焼室3の上部付近には、固形燃料を燃焼させて発生させた高温の熱風を下流の懸濁液蒸発塔6へ供給する熱風通路5を連結していると共に、二次燃焼室3の上端部には、排気ダンパー21を開閉自在に備えており、緊急時等に開放して二次燃焼室3内の熱風を放出可能なようにしている。
【0033】
前記懸濁液蒸発塔6は、二次燃焼室3より導入される高温の熱風が約4秒程度かけて下流側の排気煙道7へと導出されるように、二次燃焼室3と同様に縦長の構造としており、塔上部には複数の、例えば2~8本程度の懸濁液噴霧ノズル22を、それぞれの噴霧先を前記熱風通路5から導入される熱風と直接接触するように塔中心側へ向けて取り付けている。また、前記懸濁液蒸発塔6の近傍には、各種の懸濁物を含んだ懸濁液を貯留する懸濁液タンク23を備え、該懸濁液タンク23と前記懸濁液噴霧ノズル22とを懸濁液供給配管24にて連結していると共に、該懸濁液供給配管24の途中には懸濁液圧送用のポンプ25と、流量調整用バルブ26とを介在させている。
【0034】
また、前記懸濁液蒸発塔6には、
図2に示すように、塔上部に熱風通路5を、塔下部に排気煙道7を連通し、前記熱風通路5より塔内に導入した熱風が塔上部側から塔下部側に向けて流下するように構成している一方、塔内には前記熱風の流向を、図中の実線矢印で示すように、下向きから上向きへと急激に転向させるように、塔の水平断面略中心部付近に下方へ向けて熱風導出用の開口部27を開口し、該開口部27から塔側壁方向へ向けて略直角に折曲形成してなる折曲通路28を前記排気煙道7に連通して慣性集塵機構を備えると共に、塔下端部には懸濁液から分離した懸濁物Wを一時貯留するホッパ部29と、ダンパーゲート30を開閉自在に有した排出部31とからなる懸濁物回収部32を備えている。
【0035】
前記水噴霧ノズル22は、懸濁物を含んだ懸濁液を所定圧力の空気と共に噴射する、
図3に示すような、外部混合型の二流体ノズルであって、懸濁液噴射用の内管22aと、圧縮空気噴射用の外管22bとからなり、前記懸濁液タンク23より懸濁液供給配管24を介して供給される懸濁液を前記内管22aへ、またコンプレッサ33よりエア供給配管34を介して供給される所定圧力の空気を前記外管22bへそれぞれ送り出し、前記内管22a先端部より噴射する懸濁液を外管22bより送り出される高圧空気にて吹き飛ばして微粒化しながら熱風に向けて噴霧する構成としている。
【0036】
図中の35は排ガス温度センサであって、該排ガス温度センサ35にて検出される排ガス温度を懸濁液噴霧量制御器36に逐次取り込む一方、該懸濁液噴霧量制御器36には排ガスの露点温度として、例えば110~120℃程度の温度値を予め設定しておき、取り込んだ排ガス温度が前記露点温度を下回れば前記流量調整用バルブ26の開度を絞る方向へ調整制御するようにしている。
【0037】
上記構成とすることにより、例えば、安定供給の困難な木質系バイオマス等の固形燃料の性状(例えば、含水率等)や供給量等のバラツキによって熱風の保有熱量が大きく変動する場合でも、特に保有熱量が急激に低下した場合でも、排ガスの温度を少なくとも前記露点温度以上に維持でき、懸濁液蒸発塔6下流側のバグフィルタ8や煙突11等での結露の発生を未然に防止できるように図っている。
【0038】
図中の37は外気導入口であって、例えば、固形燃料の性状等のバラツキから、熱風の保有熱量が急激に上昇した場合に、前記外気導入口37を開放して外気(冷気)を排気煙道7内に導入し、排ガス温度を低下させて下流側のバグフィルタ8の焼損を防止できるように図っている。
【0039】
なお、上記のように、木質系バイオマス等の固形燃料は安定供給が困難であることより、例えば、前記熱風通路5等に熱風温度検出用の熱風温度センサと、熱風量検出用の流量センサとを備え、これら各センサにて逐次検出される熱風温度と熱風量とから熱風の保有熱量を逐次求め、この求めた保有熱量に基づいて前記流量調整用バルブ26の開度を調整し、前記懸濁液噴霧ノズル22から噴霧する懸濁液が極力残らないように(懸濁液蒸発塔6内にドレン水等を発生させないように)しながらも、蒸発処理できる最大限度程度の噴霧量となるように調整制御するようにすると、熱風の保有熱量が大きく変動する場合でも、懸濁液をそれに追随させるように過不足なく噴霧して適正に蒸発処理することが可能となる。
【0040】
また、前記熱風発生炉4のキルン本体2の助燃バーナ15側の隅部には、キルン本体2内の静圧を検出する静圧センサ38を備えていると共に、該静圧センサ38にて検出される静圧値が所定の負圧値、例えば大気圧と同等程度か、或いは大気圧よりも僅かに低い、約-10~-30Pa程度に維持されるように、前記排気煙道7に備えたメインダンパー9の開度、或いは排風機10の回転数を調整制御する静圧/排風量制御器39を備えており、前記同様に、固形燃料の性状等のバラツキに由来する熱風の保有熱量の変動などから、前記懸濁液蒸発塔6で発生する水蒸気量が大きく変動する場合でも、キルン本体2両端の隙間等からの熱風や水蒸気の噴き出しを防止しながらも、熱風温度を低下させる要因となる外気(冷気)の侵入を極力抑えられ、懸濁液を効率よく蒸発処理できるように図っている。
【0041】
そして、上記構成の懸濁液からの懸濁物回収装置1を使用し、例えば木質系バイオマス等を固形燃料として燃焼させ、発生した熱風を熱源として各種の懸濁物を含んだ懸濁液を蒸発させて懸濁物を分離回収するときには、先ず、前記熱風発生炉4のキルン本体2の助燃バーナ15、及び二次燃焼室3の補助バーナ17をそれぞれ燃焼させ、キルン本体2内及び二次燃焼室3内をそれぞれ予熱後、前記キルン本体2内に木質系バイオマス等の固形燃料を所定量ずつ投入して着火燃焼させると共に、燃焼用空気供給ファン16から固形燃料の投入量に見合った燃焼用空気をキルン本体2内に吹き込み、前記固形燃料の燃焼が安定してくれば助燃バーナ15、及び補助バーナ17を消火して固形燃料を自燃状態で燃焼させる一方、前記燃焼に伴って生じる可燃性の揮発分は前記二次燃焼室3にて燃焼分解させて高温の熱風を発生させる。
【0042】
そして、前記二次燃焼室3にて発生させた高温の、例えば約800℃程度の熱風は、熱風通路5を介して下流の懸濁液蒸発塔6に導入し、この高温の熱風に対して前記懸濁液噴霧ノズル22より所定量の懸濁液を噴霧し、熱風と直接的に接触させながら懸濁液を蒸発させていく。そして、蒸発して気化した懸濁液は、懸濁液との熱交換によって、例えば約180℃程度に冷却された熱風(排ガス)と共に塔下部側へ向けて流下した後、前記折曲通路28を介して下流の排気煙道7へと導出する。
【0043】
このとき、前記懸濁液の蒸発に伴って熱風中に分散して混在する懸濁物Wは、前記折曲通路28の開口部27で熱風の流向が下向きから上向きへと急激に転向(反転)する際に掛かる下向きへの強い慣性力によって効果的に分離沈降され、懸濁液蒸発塔6下端部に備えた懸濁物回収部32に落下して回収される。一方、排気煙道7へ導出した懸濁液の水蒸気を含んだ熱風は、下流のバグフィルタ8を経て煙突11より大気中へ放出する。
【0044】
なお、前記懸濁液蒸発塔6やバグフィルタ8にて回収・捕集される懸濁物W、W′が、例えば可燃性のものであれば、
図1の二点鎖線にて示すように、前記熱風発生炉4のキルン本体2へ随時供給して熱風発生用の固形燃料の一部として利用するようにしてもよい。
【0045】
また、懸濁液蒸発塔6にて懸濁液の噴霧に伴って発生した水蒸気は、冷却された熱風と共に排気煙道7より導出されるが、固形燃料の性状等のバラツキによって熱風の保有熱量が変動することより、前記水蒸気量も大きく変動する可能性があるものの、前記静圧/排風量制御器39にてキルン本体2内の静圧を所定の負圧値に維持するように排風量を制御しているため、キルン本体2両端の隙間等からの噴き出しを防止しつつ、熱風温度を低下させる要因となる外気(冷気)の進入を極力抑えられ、懸濁液を効率よく蒸発処理できる。
【0046】
このように、上記懸濁液からの懸濁物回収装置1及び回収方法によれば、木質系バイオマス等の固形燃料の自燃によって発生させた熱風に対して懸濁液を直接噴霧することにより、懸濁液を効率よく蒸発して懸濁物を分離回収することができ、低コストかつ低環境負荷にて回収できて好適である。
【0047】
なお、前記熱風発生炉4に投入する固形燃料としては、前記実施例のように、木質系バイオマスに限定されるものではなく、例えばRPFやRDF等の固形燃料も低コスト化と低環境負荷を期待できて有効に採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、各種の懸濁物を含んだ様々な懸濁液から懸濁物を分離回収する場合に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…懸濁液からの懸濁物回収装置 2…キルン本体
3…二次燃焼室 4…熱風発生炉
5…熱風通路 6…懸濁液蒸発塔
7…排気煙道 8…バグフィルタ(集塵機)
15…助燃バーナ 16…燃焼用空気供給ファン
22…懸濁液噴霧ノズル 23…懸濁液タンク
24…懸濁液供給配管 25…ポンプ
26…流量調整用バルブ 28…折曲通路
32…懸濁物回収部 33…コンプレッサ
34…エア供給配管 35…排ガス温度センサ
36…懸濁液噴霧量制御器 38…静圧センサ
39…静圧/排風量制御器