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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】経口投与剤形
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20220202BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20220202BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220202BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220202BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220202BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220202BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220202BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20220202BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20220202BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220202BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220202BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220202BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220202BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220202BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220202BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220202BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20220202BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
A61K35/74 A
A61K35/747
A61P29/00
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/36
A61K9/20
A61P1/12
A61P1/08
A61P37/04
A61P37/06
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P9/12
A61P3/02
A61P33/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2016177258
(22)【出願日】2016-09-12
(65)【公開番号】P2018021000
(43)【公開日】2018-02-08
【審査請求日】2019-08-13
(31)【優先権主張番号】15184849.6
(32)【優先日】2015-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】15193826.3
(32)【優先日】2015-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】P 2016145220
(32)【優先日】2016-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511008850
【氏名又は名称】シムライズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110003018
【氏名又は名称】特許業務法人IPアドバンス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルズ ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン アンジャ
(72)【発明者】
【氏名】ゴッツ マルカス ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー ヨルグ ティロ
(72)【発明者】
【氏名】ホルムグレン ケルスティン
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-516616(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0008493(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0028431(US,A1)
【文献】特開2012-041293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0269515(US,A1)
【文献】Int. J. Pharm. (2009) vol.370, issue 1-2, p.54-60
【文献】Int. J. Pharm. Sci. Res. (2013) vol.4, issue 1, p.341-346
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/74
A61K 35/747
A61K 47/32
A61K 47/38
A61K 47/36
A61K 9/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内崩壊錠であって、
(a)ポリアクリル酸、ヒプロメロース及びキトサンの群から選択される、粘膜付着性ポリマー、および
プロバイオティクス又は熱処理されたプロバイオティクス及びそのフラグメントから選択される、固形活性剤を有する活性化された粘膜付着性組成物と、
(b)少なくとも1つの崩壊剤を有する賦形剤と、を有し、
前記粘膜付着性組成物は、直径が50~700μmの顆粒剤に形成されており、
前記成分(a)及び(b)を混合及び圧縮して生成される、口腔内崩壊錠。
【請求項2】
前記粘膜付着性組成物の水分活性(aw)は、0.1以下である、請求項1に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項3】
前記粘膜付着性ポリマーと前記固形活性剤との比率は、10:1から1:50の間である、請求項1に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項4】
前記活性化された粘膜付着性組成物は、口腔内崩壊錠の全体重量に基づき、0.1~80重量%である、請求項1から請求項3に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項5】
活性化された粘膜付着性顆粒剤の製造方法であって、
(i)固形活性剤及び粘膜付着性ポリマーをバインダ溶液で混合し、湿った混合物を生成する工程と、
(ii)湿った顆粒剤を製造するために、工程(i)の湿った混合物を顆粒化する工程と、
(iii)工程(ii)の顆粒剤を乾燥し及びふるい分けし、直径が50~700μmの活性化された粘膜付着性顆粒剤を入手する工程と、を含む、
前記固形活性剤は、プロバイオティクス又は熱処理されたプロバイオティクス及びそのフラグメントであり、
前記粘膜付着性ポリマーは、ポリアクリル酸、ヒプロメロース及びキトサンの群から選択される、
粘膜付着性顆粒剤の製造方法。
【請求項6】
前記粘膜付着性顆粒剤の水分活性(aw)は、0.1以下である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記粘膜付着性ポリマーと前記固形活性剤との比率は、10:1から1:50の間である、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
活性化された粘膜付着性組成物は、直径75~600μmの顆粒剤に加工される、請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性物質の口腔投与の分野に関し、口腔に活性物質を投与する活性化された粘膜付着性組成物及び対応する粘膜付着性剤形、特に、プロバイオティクス物質を投与するための口腔内崩壊錠に関する。本発明はさらに、上記の組成物の製造方法及び上記組成物から粘膜付着剤形を製造する方法、特に口腔内崩壊錠を製造する方法に関する。本発明はさらに、剤形の粘膜付着性を試験するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経口投与は、人体及び動物の消化管に活性物質を放出することを目的とし、活性物質を飲み込む方法である。消化管は主に腹部、小腸及び大腸から構成される。製薬/ヘルスケア産業においては、経口投与は最も一般的な投与方法であり、安いコスト、摂取時の痛み回避、非経口剤形の投与に伴う感染症の回避等の理由により、活性物質を摂取するために最も好まれる方法である。さらに、比較的に多い液体の体積、吸収に必要な粘膜の面積の増加、胃粘膜への豊富な血液供給は、様々な薬品の吸収を助長する。
【0003】
しかし、低い溶解性、安定性及び複数の活性物質の生物学的利用能によって、消化管を介した治療レベルの達成が困難となる。経口投与では、酸性の胃環境及び消化管を保護する粘液の継続的分泌等、様々な課題を克服しなければならない。
【0004】
経口投与に関する上述の課題を解消し、活性物質の効果的かつ手軽な摂取を達成するために、多くの研究者が口腔粘膜に活性物質を投与する新たなシステムの開発に着目している。
【0005】
患者/消費者の消化管を通じて腹部又は腸上皮で活性剤を吸収させる従来の経口投与剤形とは異なり、バッカル剤形及び/又は舌下投与剤形は、含まれる活性物質が口腔で完全に放出されるまで口内又は舌下に置かれることを意図している。
【0006】
バッカル剤形及び/又は舌下投与剤形による投与の主な課題は、生理的及び薬理学的な活性物質、食用化粧品並びに食料品、特に口腔粘膜で即時に相互作用が働かない物質は、唾液の継続的な分泌によって、多くの割合で流れてしまうことである。適したバッカル剤形及び/又は舌下投与剤形は、含有される活性物質が口腔粘膜と相互作用するために十分な時間、口腔粘膜と接触する必要がある。従って、口腔における滞留時間を長くし、口腔粘膜での活性物質の持続性を上げるためには、粘膜付着剤を剤形に添加する必要がある。関連する技術は、以下の出願において開示されている。
【0007】
米国特許第2014/0234212号(特表2016-510001号公報、出願人:マサチューセッツ工科大学)は、粘膜付着性ポリマーマトリックス、前記マトリックスに分散されたナノ粒子及び不浸透性裏打ち層を含む経口投与デバイスを開示しており、前記ナノ粒子には活性物質が組み込まれている。経口投与デバイスは粘液層に適用され、粘膜付着により口腔上皮に付着し、ナノ粒子は粘膜に浸透し、組織中に活性物質を放出する。適用されるナノ粒子の製造方法は、活性物質と対応するポリマーとを含む溶液によって実現される。
【0008】
米国特許第2013/0337022号(特表2013-544259号公報、出願人:ウィットウォーターズ大学)は、粘膜付着層、非水溶性層及び活性物質を含有する中間層を有する医薬投与形態を開示しており、前記活性物質はミクロ-及び/又はナノ構造であり、中間層に直接溶解、懸濁液または乳濁液として組み合わされる医薬投与形態を開示している。剤形の粘膜付着の評価は、テクスチャーアナライザーを用いて、擬似胃膜の一部から水和された膜を分離するために必要な引張力を測定することによって行う。
【0009】
米国特許第2011/0028431号(出願人:ゼルべ、等)は、粘膜付着性ポリマー、薬学的活性物質、崩壊剤その他の抗生物質を混合し、他の混合物を圧縮することにより生成される直接圧縮製剤に関する。生成された圧縮製剤からは、さらに固形の経口投与剤形が生成される。投与剤形を適用することにより、口腔粘膜を通じた活性物質の吸収が向上し、活性物質の消化が低減する。
【0010】
米国特許第2010/0063110号(出願人:メイヤー、等)は、アルカリ物質を含有し口内で溶解するフィルムを開示しており、当該フィルムは口内で1~10分で溶解して頬粘膜に接着する。フィルムの粘膜付着性は、引張力試験機で試験される。
【0011】
米国特許第2009/0110717号(特表2009-535397号公報、発明者:シン、等)は、二つの区画を含む活性物質を投与するための経粘膜ディスクに関し、好ましくは内部区画に活性物質が含まれ、外部区画に粘膜接着剤が含まれている。適用時において、一部の内部区画及び外部区画が粘膜に付着し、頬粘膜を通じて活性物質を投与する。活性物質の望ましい効果が得た後、ディスクは容易に剥がされる。
【0012】
本発明の適用では、プロバイオティクスは最も一般的に使用される活性物質の一つとして導入される。プロバイオティクスは消化可能な生きた非毒性微生物であり、宿主に(1)腸内フローラの正常化(例えば、PPMの抑制、腸粘膜の完全性の提供、腸の活性化やIBSの調節等);(2)免疫調節(例えば、免疫の強化、食物アレルギー症状の緩和、IBDの制御等);(3)代謝効果(例えば、ビタミンの産生による消化の向上、乳糖不耐症の最小化、コレステロールの低下、胆汁酸脱抱合の促進等)、その他疾患を発生することなく宿主の腸の細菌のバランスを整えるための多くの利益を与える。
【0013】
プロバイオティクスは保存時に安定する製剤のまま投与されるべきである。生菌(生きた微生物)のコロニー形成単位及び存続可能性は、信頼性があり、小腸及び大腸に到達するまでに上部消化管の酸及び胆汁で生存しなくてはならない。プロバイオティクスの質及び内容は調整されていないため、その効能及び安全性を適切に評価することは難しい。プロバイオティクスの投与システムは、慣習的な医薬製剤としての投与と、主に商用の食料品である非慣習的な投与とに区分けされる。両者には大きな違いがあるにも関わらず、殆どのプロバイオティクスは消化管で吸収される。
【0014】
例えば、国際公開第2014/152338号(特表2016-517425号公報)では、被験体の回腸及び近位結腸にプロバイオティクス製剤を投与する経口投与システムを開示しており、当該システムはプロバイオティック製剤のコアを含有し、前記プロバイオティック製剤は第1腸溶性コーティングによってコーティングされている生分解性の第1カプセルと、コーティングされた第1カプセルを包含するサイズの第2カプセルと、を有し、前記第2カプセルは回腸に第1カプセルを放出し、放出された第1カプセルは含有されているプロバイオティクス製剤と共に近位結腸で溶解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特表2016-510001号公報
【文献】特表2013-544259号公報
【文献】米国特許第2011/0028431号
【文献】米国特許第2010/0063110号
【文献】特表2009-535397号公報
【文献】特表2016-517425号公報
【0016】
しかし、プロバイオティクスの温度/湿度に対する感受性、並びに生理機能、活動機能及び生存能力によって効能が左右されることから、生菌の生成は技能及び生成時において厳重な品質管理が必要とされている。生きたプロバイオティクスから精製され、生存し、安定した一定のプロバイオティクス製剤を製造及び加工する工業的能力を持つ企業は、世界中の企業のうちの少数である。特に、口腔内で長時間投与されるプロバイオティクス製剤については、殆どの企業において関連する情報及び研究開発が報告されていない。
【0017】
従って、体内フローラに影響を与えることによるプロバイオティクスの健康への重要な利益に基づき、本発明によって解決しようとする主な問題は、活性化された粘膜付着性組成物及び対応する粘膜付着性剤形に関する。特に、口腔にプロバイオティクスの適用を拡張するためのプロバイオティック物質を投与する口腔内崩壊錠に関し、抗炎症、抗菌、付着促進及び口腔に影響を与える微生物叢などの様々な影響を受けて歯肉炎及び歯周炎の発生する事態を防ぐことである。本発明で解決しようとする他の課題は、上記の顆粒剤の製造及び顆粒剤から粘膜付着剤形の製造、特に口腔内崩壊錠の製造に関する。本発明に関連する更なる課題は、投与剤形の粘膜付着を評価し、安定かつ信頼性が高い結果を得るために、投与剤形の粘膜付着を試験するシステム及び方法を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の目的は、プロバイオティクス生菌を口腔で直接摂取し、プロバイオティクスの影響を受けて口内を健康に保つために、十分な量のプロバイオティクスを口腔粘膜に付着させることである。従って本発明は、口腔粘膜の内部に活性物質を投与できる、活性化された粘膜付着性顆粒剤及びその顆粒剤から生成された粘膜付着性剤形に関し、特にプロバイオティクス物質を投与するための口腔内崩壊錠に関する。上記の口腔内崩壊錠は、粘膜付着性物質の助けを得て短時間で口腔内の粘膜に付着し、短時間で完全に溶解し、活性かつ無毒のプロバイオティクスを放出する
【0019】
(i)本発明の活性化された粘膜付着性組成物は
(ii)粘膜付着性ポリマーと
(iii)固形活性剤と、を有する。
【0020】
驚くべきことに、本発明の活性化された粘膜付着性組成物は顕著な生物学的活性を有し、純粋な活性物質との比較において高い適用可能性を有する。その他、活性化された原材料である上記組成物からは、錠剤やカプセル等、様々な粘膜付着性の経口剤形が容易に製造できるため、活性原料として産業的に高いポテンシャルを与える。本発明の口内分散性のプロバイオティクスを利用した錠剤の安定性データは、図1に示されている。
【0021】
本発明における固形活性剤は、好ましくは抗炎症、コルチコステレオイド、止瀉薬、オピオイド、免疫抑制薬、抗生物質、制吐薬、抗真菌性、抗ウイルス薬、抗マラリア薬、抗結核薬、抗レトロウイルス薬、降圧剤、プロテイン、ペプチド、化学療法薬、診断用薬、プレビオティック、マルチビタミン、ミネラル、微量元素製剤、ファイトニュートリエント、プロテイン、ペプチド等である。
【0022】
さらに好ましくは、本発明で使用されている固形活性剤は有用な微生物(プロバイオティクス)及びその誘導体である。特記するべき事項は、本発明は、粘膜付着性ポリマーの補助によって、プロバイオティクスが口腔粘膜に付着する状態を認識する初めての機会である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の口内分散性のプロバイオティクスを利用した錠剤の安定性データである。
図2】本発明の製剤の粘膜付着性を試験するシステムである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<プロバイオティクス及びその誘導体>
本発明において、プロバイオティクスはホストにとって有益である特性を持つ生菌と理解される。FAO/WHOの定義によると、プロバイオティクスは「適正な量を摂取したときにホストに健康の効果をもたらす生菌」と定義される。プロバイオティクスは発酵食品を構成する物質として消化され、例えばヨーグルト、豆乳ヨーグルト、又は他のプロバイオティクス食品などに特別な生菌が添加されたものである。さらに、フリーズドライされた微生物を含む錠剤、カプセル、粉末、サッシェなどでも摂取可能である。
【0025】
本発明に基づいて使用される好ましいプロバイオティクスは、以下の通りである。
・ラクトバチルス・プランタラム299V
・ラクトバチルス・プランタラムHeal9(DSM15312)
・ラクトバチルス・プランタラムHeal52A(Heal19)(DSM15313)
・ラクトバチルス・プランタラムHeal99(DSM15316)
・ラクトバチルス・ファーメンタム35D(データベース番号は無し)
・ラクトバチルス・ファーメンタムGOS51(データベース番号は無し)
・ラクトバチルス・プランタラムGOS42(データベース番号は無し)
・ラクトバチルス・パラガセイGOS63(データベース番号は無し)
プロバイオティクスの他、例えば熱処理されたプロバイオティクス及びそのフラグメント等の誘導体から、本発明の活性剤として、例えばエピトープが生成される。
【0026】
<粘膜付着性ポリマー>
「粘膜付着/粘膜付着性」とは、人間の体内の粘膜部位に付着する能力を持つ物質の特性である。本発明で使用される粘膜付着性ポリマーには、親水性ポリマー及び天然ガムが含まれる。親水性ポリマーの例は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩並びに上記組成物の混合物等のセルロースポリマー;酢酸ポリビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のビニルポリマー;及びポリアクリル酸及びその塩、ポリカルボフィル等のアクリル酸ポリマー及びコポリマーである。天然ガムは天然由来の多糖類である。天然ガムの例としては、カラギーナン、こんにゃく、アルギン酸塩、アルギン酸カルシウム、アガロース、グアーガム、ペクチン、トラガカンス、アカシア、アラビアガム、デキストラン、ゲラン、キサンタン、スクレログルカン、ヒアルロン酸、キトサン、フェヌクリークガム、イナゴマメガム等である。その他、上述の粘膜付着性ポリマーの組み合わせを使用してもよい。他の粘膜付着性ポリマー又は粘膜付着性ポリマーの組み合わせを使用しても良い。
【0027】
本発明の粘膜付着性ポリマーの最も好ましい組み合わせは、以下の群から選択される:カーボポール971PF(ポリアクリル酸)、チロプール615(ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、HPMC)、メトローズ65SH50(ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、HPMC)及びキトサン。
【0028】
本発明の好ましい一形態において、粘膜付着性ポリマー及び固形活性剤の使用比率は、約10:1から約1:50の間であり、好ましくは2:1から1:20の間であり、更に好ましくは1:1から1:10の間である。
【0029】
他の好ましい実施形態では、使用された固形活性剤は顆粒化され、その後粘膜付着性ポリマーと混合される。固形活性剤から生成された顆粒の大きさは、直径50μmから1,000μmの間である。
【0030】
本発明の他の実施形態では、本発明の活性化された粘膜付着性組成物から、直径50μmから1,000μmの顆粒が生成される。本発明の他の目的は粘膜付着性製剤に関し、特に、口腔内にプロバイオティクス物質を投与するための口腔内崩壊錠に関する。
本発明の口腔内崩壊錠は、以下から構成される:
(i)本発明における活性化された粘膜付着性組成物と、
(ii)少なくとも1つの崩壊剤を有する賦形剤と、
(iii)錠剤を製造するための混合工程及び圧縮工程と;を有する。
【0031】
欧州薬局方(European Pharmacopoeia)が発行する「錠剤及びカプセルの分解」(2.9.1)で測定した方法によれば、本発明の口腔内崩壊錠は3分以内に完全に分解する。FDAが発行する「口腔で分解する錠剤の溶解に関するガイド」によると、錠剤の分解時間は30秒以内が好ましい。放出された粘膜付着性のプロバイオティクス顆粒剤は、頬粘膜に付着する。
【0032】
<口腔内崩壊錠>
口腔内崩壊錠(以下、「ODT」という)は、口腔内崩壊型錠剤、口腔内溶解錠剤、迅速溶解性錠剤、急速崩壊性錠剤、即溶性錠剤、即溶解錠剤とも呼ばれている。最近では、欧州薬局方が用語「口腔内崩壊錠」を使用している。ODTと従来の錠剤との違いは、全体として飲み込む代わりに、約3分といった短時間で、例えば舌などの口腔で溶解するように組成されている。ODTは口腔に活性物質を直接投与する代替剤形としての役割を持ち、頬粘膜に属する活性部に影響を与える。
【0033】
<賦形剤(Excipients)>
本発明において、賦形剤とは、製造時に添加され又は投与剤形の最終医薬品に含まれる、生理的及び薬理学的な活性構成物質、食用化粧品並びに食料品を除く、不活性な構成要素として定義される。薬品がその効能を発揮するために人体の特定部位に活性要素を運ぶことに加え、賦形剤は製造時においても重要な役割を果たす。賦形剤は吸収過程において、活性物質が早く放出される状態を防ぐ。他の賦形剤は薬品が粒子に早く分解されるのを防ぎ、活性原料の放出を防ぎつつ、使用時に最大の効果を発揮するように製品の安定性を保持する。さらに、賦形剤は薬品の識別を補佐するためにも使用される。最後に、賦形剤は単に製品の食味を改善し、外観を良くするためにも使用される。上記により、患者、特に子供への適合性を改善する。賦形剤は、治療学的には用語「不活性」が使用されるが、現在の薬品において、薬用賦形剤は重要かつ必須の構成要素である。多くの製品において、賦形剤は全体の剤形の多くを占める。
【0034】
本発明で使用されている賦形剤は、少なくとも1つの崩壊剤を含む。
【0035】
<崩壊剤>
崩壊剤は錠剤又はカプセル剤に添加される賦形剤であり、液体環境に置かれると、詰め込まれた容積の分解を助長する。これは、活性物質の迅速な放出が必要とされる、即時放出性製品にとって重要である。経口投与剤形、特に本実施例の口腔内崩壊錠は、望ましい且つ効果的な崩壊速度を達成するために十分な量のクロスカルメロースナトリウム、カルシウムカルボキシメチルセルロース、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース(低置換)、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸、アルギン酸カルシウム、ベントナイト、セルロース、グアーガラクトマンナン等を含んだ崩壊剤である。口腔内崩壊錠は、生理的及び薬理学的な活性物質、食用化粧品及び食料品の放出を促進し、使用者の不快感及び不便さを軽減し、又は放出時の効率及び低減された不快感及び/又は不便さのバランスを達成する。
【0036】
本発明の望ましい一態様として、口腔内崩壊錠を生成するために、クロスポビドン(例えばコリドンCL-SF)が崩壊剤として使用されている。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、口腔内崩壊錠の全体重量に基づき、約0.1~80重量%、好ましくは約10~40重量%の活性化された粘膜付着性組成物が存在する。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、口腔内崩壊錠の全体重量に基づき、約1~15重量%、好ましくは約2~5重量%の崩壊剤が存在する。
【0039】
本発明の更に好ましい実施例は、生成された口腔内崩壊錠は、約3分以内、好ましくは30秒以下で完全に溶解する。
【0040】
本発明の更に好ましい実施例は、活性化された粘膜付着性組成物は固形活性剤、特に顆粒状のプロバイオティクスを含む。使用済みの構成要素を顆粒化すると、生成された口腔内崩壊錠の溶解時間に悪影響を与えることは、当業者にとっては周知である。従って、当業者は、口腔内崩壊錠の薬品を効率的に放出するためには、粘膜付着性ポリマーと活性剤との顆粒化を避けるようにする。しかし、驚くべきことに、特にヒプロメロース、ポリアクリル酸又はキトサンなど、粘膜付着性ポリマーを含むプロバイオティクス等の活性剤を顆粒化することにより、生成された口内分散性錠剤の崩壊時間が低下し、例えばヒプロメロースの場合は低減し、ポリアクリル酸の場合は著しく低下することが判明した。従って、プロバイオティクス及び粘膜付着性ポリマーを顆粒化することは、顆粒化されていない粘膜付着性ポリマーを含む錠剤と比較し、分解が早くなる。それでも、顆粒化キトサンを含有する錠剤の方が迅速に分解する。
【0041】
他の好ましい実施形態としては、活性化された粘膜付着性組成物は、直径が約50~1,000μm、好ましくは約75~700μmの顆粒剤に生成される。
【0042】
ヨーロッパ薬局方では、用語「完全崩壊(Complete disintegration)」とは、不溶解性のコーティング又はカプセル剤の外殻を除き、試験機のスクリーンに表示される単位の残留物が、明確なフィルムの芯部を有しない柔らかい部分のみである状態を指す。
【0043】
分解時間は、口腔内崩壊錠の重要なパラメータである。崩壊錠の分解時間は、一般的な方法である、ヨーロッパ薬局方に記述された方法に基づいて測定される(錠剤の崩壊(ヨーロッパ薬局方2.9.1))。崩壊時間を確実に特定するために、1回の測定につき1つの錠剤の崩壊時間を測定する。液体の温度は摂氏35~39度の間である。ビーカーの水を完全に入れ替える前に、1サイクルにつき最大3つの錠剤を試験する。各束から6つの錠剤のサンプルのサイズを測定する。錠剤はその低い比重によって浮く傾向があることから、親水性及びヨーロッパ薬局方に従い、錠剤をバラストさせるためにディスクが使用される。
【0044】
実用の観点からは、本発明の口腔内崩壊錠は、唾液で溶解しない錠剤の構成要素は溶解せず、固体のままであるが、厳格な理科的観点に基づく条件付きで、特定された時間内に体内に完全に分散する。
【0045】
本発明の口腔内崩壊錠で使用される賦形剤は、崩壊剤の他、添加剤及び潤沢剤を含む。
【0046】
<添加剤>
希釈剤(Diluents)又は添加剤(fillers)は、錠剤の最終形態の化学的及び物理的特性に著しく影響を与え、プロファイルの放出に影響を与える不活性成分である。さらに、バインダ及び添加剤は、直接圧縮によりODTを用意し、適切な硬さを達成するために必要な物質である。セルロース製品は、上記目的に必要とされる典型的な物質である。特に結晶セルロースは、ODTの迅速な分解、膨張効果及びウィッキング効果を与えるため、有用である。さらに、本発明の圧縮及び経口投与剤形に使用される添加剤は、ラクトース、グルコース、スクロース、デキストロース、イソマルト及びラクトース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール及びエリスリトール等の糖アルコール類などの水溶性糖類を含む。他の水溶性糖類及び糖アルコール類、又は水溶性糖類及び糖アルコール類の組み合わせを使用してもよい。使用可能な他の添加剤には、特に制限を設けず、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸、スターチ及び結晶セルロースが含まれる。本発明の口腔内崩壊錠において、添加剤の量は、口腔内崩壊錠のうちの約10~90重量%で存在している。
【0047】
<滑沢剤>
混合、ローラー圧縮、錠剤製造及びカプセル剤充填等の薬品製造工程において、滑沢剤(lubricants)は製造機械と活性固体との間の摩擦を軽減し、剤形の凝集を防止し、製造の継続を保証するために重要である。医薬品の滑沢剤は、剤形の製造過程を改善するために、錠剤製剤に、極めて少量で添加される剤形である(およそ0.25~5.0重量%添加される)。本発明の圧縮及び経口投与剤形に使用される滑沢剤には、カルシウム及びテアリン酸マグネシウム、グリセロールジシビレート、グリセロールジステアレート、フマル酸ステアリルナトリウム、オレイン酸、硬化ヒマシ油、スクロース脂肪酸エステル、ステアリン酸、アジピン酸、フマル酸、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポロクサマー等が含まれる。
【0048】
本発明の実施形態において使用される滑沢剤の一態様は、フマル酸ステアリルナトリウム(プルブ(登録商標))である。
【0049】
本発明の粘膜付着性製剤には、アスパルテーム、食味マスキング剤、メントール及び冷却材(例えば赤色酸化鉄)等の風味材料等、天然及び/又は人工甘味料の原料が、所望に応じて含まれていてもよい。錠剤又は他の経口投与剤形にするために、取り扱い及び/又は圧縮を促進するために、必要に応じて、抗酸化剤、安定剤、溶剤、保存剤、冷却材、その他の加工助剤が含まれていてもよい。
【0050】
<粘膜付着>
本発明の他の目的は活性化された粘膜付着性顆粒剤の製造方法に関し、特に以下の工程を含む活性化された粘膜付着性顆粒剤の製造方法に関する:
(i)固形活性剤及び粘膜付着性ポリマーをバインダ溶液で混合し、湿った混合物を生成する工程と
(ii)湿った顆粒剤を製造するために、工程(i)の湿った混合物を顆粒化する工程と
(iii)工程(ii)の顆粒剤を乾燥及びふるい分けし、活性化された粘膜付着性顆粒剤を入手する工程と、を含む。
【0051】
本発明の方法で使用される固形活性剤は、好ましくはプロバイオティクスである。
【0052】
本発明の一実施例では、プロバイオティクス物質の直径は500μm以下であり、好ましくは400μm以下であり、更に好ましくは300μmである。
【0053】
本方法で使用される好ましい粘膜付着性ポリマーは、以下の群から選択される:カーボポール971PNF(ポリアクリル酸)、チロプール615(ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、HPMC)、メトローズ65SH50(ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、HPMC)及びキトサン。
【0054】
本発明の好ましい一形態において、粘膜付着性ポリマー及び固形活性剤の使用比率は、約10:1から約1:50の間であり、好ましくは約2:1から約1:20の間であり、更に好ましくは約1:1から約1:10の間である。
【0055】
<バインダ>
バインダは、活性物質及び非活性物質を結合するために使用される医薬製剤(又は固形の経口投与剤)である。本発明では、バインダは固形活性剤、特にプロバイオティクスと粘膜付着性ポリマーとを結合するために使用される。典型的なバインダの例としては、アカシアゴム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン及びコポビドン、ポリビニルアルコール、デンプン(ペースト状及びゼラチン化前の状態)、アルギン酸ナトリウム及びアルギネートの誘導体、ソルビトール、グルコース及び他の糖類、トラガカンス及び水溶性セルロースの誘導体、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩及びヒドロキシプロピルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリレートコポリマー、例えば、アンモニオメタクリレートコポリマー、メタクリル酸メチルメチクリレートコポリマー、典型的なブチルメタクリル酸エチルアクリレートコポリマー、メタクリル酸エチルアクリレートコポリマー、セラセフェート、ヒプロメロースアセテートサクシネート、ヒプロメロースフタレート、酢酸ポリビニルフタレート、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールコポリマー、シェラックである。さらに、粘膜付着性ポリマーはバインダとしても使用可能である。
【0056】
顆粒化されたラクトバチルス群によって生成された錠剤の分解は、純粋なバクテリアによる分解よりも明らかに早い。その効果は使用された群から独立している。
【0057】
本発明で好ましく使用されるバインダは、アニオン性メタクリル酸エチルアクリレートコポリマー(EUDRAGIT(登録商標)L-Types)である。
【0058】
本発明の一実施形態では、バインダは溶液で溶解し、揮発性が高く、乾燥することにより移動可能であり、毒性が少ない。典型的な溶液には、水、エタノール及びイソプロパノールが単独または組み合わせで含まれる。
【0059】
本発明の好ましい一実施形態では、バインダは固形活性剤に対し、0.5~20重量%、好ましくは2~15重量%で含まれる。
【0060】
本発明の他の実施形態では、例えば乾燥剤袋を使用した乾燥環境下において、固形活性剤は粘膜付着性ポリマーと混合し、乾燥混合物を生成する。
【0061】
本発明の他の好ましい実施形態では、生成した乾燥混合物の温度は摂氏15~25度の間であり、好ましくは摂氏20度であり、継続的に窒素が流れている。その後、撹拌中にバインダ溶液が乾燥混合物に添加される。
【0062】
本発明の他の好ましい実施形態では、湿った顆粒剤は乾燥前にふるい分けされることにより、直径3,500μm以上、好ましくは直径1,000μm以上、さらに好ましくは直径700μm以上の大きい顆粒剤が取り除かれる。
【0063】
本発明の他の好ましい実施形態では、湿った顆粒剤は、乾燥機を使用して、圧縮空気を流すことによって乾燥する。
【0064】
本発明の方法によって製造された、活性化された粘膜付着性顆粒剤の水分活性(aw)は、0.1以下であることが好ましい。本発明における水分活性とは、物質に含まれる水蒸気圧と、その温度における純水の蒸気圧との比と定義される。
【0065】
本発明の他の好ましい実施形態では、乾燥した顆粒剤は、最終的には、直径1,000μm以上、好ましくは直径500μm以上、さらに好ましくは直径250μm以上の大きな顆粒剤を取り除くために、ふるいにかけられる。
【0066】
<製造工程>
本発明の他の目的は、以下の工程からなる、口腔内崩壊錠を生成する方法に関する:
(i)本発明の活性化された粘膜付着性組成物と、少なくとも1つの崩壊剤を含む賦形剤とを混合し、混合物を生成する工程と
(ii)前記(i)で生成した混合物を圧縮し、口腔内崩壊錠を生成する工程。
【0067】
本発明の好ましい一実施形態では、活性化された粘膜付着性顆粒剤の直径は、約50~1,000μmの間であり、好ましくは約75~700μmの間であり、さらに好ましくは約100~600μmの間であり、最も好ましくは約500μmである。
【0068】
他の好ましい実施例では、まずは賦形剤をふるいにかけ、直径500μm以下、好ましくは400μm以下、さらに好ましくは200μm以下の賦形剤を抽出する。
【0069】
本発明の方法によって生成された口腔内崩壊錠の重量は、好ましくは20~1,000mgの間である。
【0070】
また、本発明の方法によって生成された口腔内崩壊錠は直径5~18mmの間であり、好ましくは直径10mmである。
【0071】
本発明の他の実施形態では、粘膜付着性製剤を試験し、粘膜付着物質の量を数値化するシステムに関し、特に以下の製法による粘膜付着性を試験するシステムに関する
【0072】
(i)底部(1)と、パラフィルム(2)と、金属ディスク(3)と、固定リング(4)と、を有する金属セルと
(ii)支持部(5)と孔部(7)が形成された上部カバー(6)とによって構成され、前記支持部(5)の高さは第1コンテナ(B)の半分の高さよりも高く、前記支持部(5)の上面部は金属セル(A)を支持するために十分な大きさである第1コンテナと;を有し
(iii)前記金属セル(A)は前記支持部(5)の上面部に配置され、前記孔部(7)は前記金属セル(A)の上部に配置される。
【0073】
本発明の他の好ましい実施形態では、前記システムは更に、孔部(9)とポンプ(D)とが形成された上部カバー(8)を有し、孔部(7)と孔部(9)とを通過するパイプ(10)によって第1コンテナに接続する第2コンテナ(C)を有する。
【0074】
本発明の他の実施形態では、第1コンテナ(B)と第2コンテナ(C)との温度を、適切な温度である摂氏37度に維持するためのウォーターバス(E)を有する。
【0075】
本発明の他の実施形態は、本発明のシステムを用いて剤形の粘膜付着を試験する方法に関し、前記方法は以下の工程で実施される
【0076】
(i)固定リング(4)を使用し、粘膜(M)の一部を金属セル(A)の底部(1)とパラフィルム(2)との間に配置し、人工唾液を用いて粘膜を湿らせ、粘膜(M)に粘膜付着性製剤(F)を与える工程と、
(ii)第1コンテナ(B)に配置された粘膜付着性製剤(F)に、孔部(7)を通して人工唾液を滴下する工程と、
(iii)金属セル(A)から粘膜(M)及びパラフィルム(2)を移動し、希釈剤で洗浄し、粘膜に付着した生菌の数を判断する工程と、
(iv)金属セル(A)の残りの部分を希釈剤で洗浄し、第1コンテナ(B)の人工唾液と混合し、人工唾液で洗い流された生菌の数を判断する工程と、を有する。
【0077】
本発明で使用される粘膜は、厚さ1~5mm、直径が金属セル(A)と同様である豚粘膜の一部であることが好ましい。
【0078】
試験された粘膜付着性製剤、またはその1/4の重さは、約10~200mgである。
【0079】
本発明で使用された人工唾液は、天然唾液を模擬しているが、唾液腺の活動を促す効果は有しない。
【0080】
本発明の好ましい一形態では、人工唾液は第2コンテナ(C)からポンプされ、パイプ(10)を通過して第1コンテナ(B)の粘膜付着性製剤(F)に到達し、人工唾液のポンプ流量は0.05ml/分から1.0ml/分の間であり、好ましくは0.1ml/分から0.5ml/分の間であり、ポンプの時間は30~120分、好ましくは60分である。
【0081】
本発明の好ましい形態では、粘膜に付着する又は人工唾液で洗浄される生菌の数は、コロニー形成単位(以下「CFU」という)で判断される。CFUは、サンプル内に含まれる生菌又は真菌細胞の推定数である。
【0082】
本発明の試験方法を用いて、以下の製剤の粘膜付着性を判断することが可能であるが、これに限られない:錠剤、ドラジェ、カプセル剤、顆粒、粉末及びチューイングガム及びスティックなどの固形製剤、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、スプレー、泡などの液体製剤、並びに軟膏、ゲル、ペースト等の半固体製剤。
【0083】
好ましくは、本発明の方法を使用して試験することができる組成物及び製品は、以下の群から選択される:歯磨き粉、歯磨きゲル、歯磨きパウダー、歯磨き用液体、歯磨き用泡、マウスウォッシュ、マウススプレー、デンタルフロス、チューイングガム、デンタルフロス、チューイングガム及びトローチ。
【0084】
このような組成物または製品は一般的に研磨系(研削又は研磨剤)、例えば、ケイ酸、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム及び/又はヒドロキシルアパタイト等、界面活性物質、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルサルコシンナトリウム及び/又はコカミドプロピルベタイン等、湿潤剤、例えばグリセリン及び/又はソルバイト等、増粘剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、カラギーナン及び/又はラポナイト(登録商標)、不快な呈味感用の味矯正剤、さらなる一般的に不快でない呈味感用の味矯正剤、味調節物質(例えばイノシトールリン酸、ヌクレオチド、例えばグアノシン一リン酸、アデノシン一リン酸又は他の物質、例えばグルタミン酸ナトリウム若しくは2-フェノキシプロピオン酸)等、冷却剤、例えば、メントール、メントール誘導体(例えば乳酸L-メンチル、L-メンチルアルキルカルボナート、メントンケタール)、イシリン及びイシリン誘導体、安定剤及び活性物質、例えば、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、四級アンモニウムフッ化物、クエン酸亜鉛、硫酸亜鉛、ピロリン酸第一スズ、塩化スズ、様々なピロリン酸塩の混合物、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸カリウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、塩化ストロンチウム、過酸化水素、香料及び/又は炭酸ナトリウム又は匂い矯正剤を含有する。
【0085】
本発明に係る好適なチューインガム又はデンタルケアチューインガムの基礎材は、従来用いられている天然樹脂または天然のチクル樹脂に加えて、以下を含む:ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリエチレン、(低分子量あるいは中間の分子量)、ポリイソブテン(PIB)、ポリブタジエン、イソブテン-イソプレンコポリマー、ポリビニルエチルエーテル(PVE)、ポリビニルブチルエーテルのようなエラストマ、ビニルエステルのコポリマー、ビニルエーテル、スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)、またはビニルエラストマ、例えば酢酸ビニル/ラウリン酸ビニル、酢酸ビニル/ステアリン酸ビニルまたはエチレン/酢酸ビニル、および前述のエラストマとの混合物(国際特許出願公開第0242 325号、米国特許第4,518,615号、米国特許第5,093,136号、米国特許第5,266,336号、米国特許第5,601,858号または米国特許第6,986,709号参照)。また、本発明に好ましく用いるチューインガム基礎材は、例えば以下の更なる成分を含む:(鉱物の)充填材、可塑剤、乳化剤、抗酸化剤、ワックス、硬化植物性脂肪もしくは動物性脂肪などの脂肪または脂肪油、モノ-、ジ-またはトリグリセリド。好適な(鉱物の)充填材は、炭酸カルシウム、二酸化チタン、二酸化珪素、タルカム、酸化アルミニウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、および水酸化マグネシウムならびにこれらの混合物である。好適な可塑剤または粘着防止剤(脱粘着剤)は、例えば、ラノリン、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、酢酸エチル、ジアセチン(グリセリンジアセタート)、トリアセチン(グリセリントリアセテート)、トリエチルシトレートである。
好適なワックスは、例えば、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、微結晶ワックスおよびポリエチレンワックスである。好適な乳化剤は、例えば、レシチンのようなホスファチドであり、例えばグリセリンモノステアレートなどの脂肪酸のモノ-およびジグリセリドである。
【0086】
本発明の試験システム及び方法を使用することにより、様々な製剤の粘膜付着性を容易かつ安定的に、安価で判定することができ、取得できる結果は高い正確性及び反復性が認められる。
【0087】
本発明の他の目的は、製剤の粘膜付着性を試験する方法を使用するシステムに関する。
【0088】
<実施例1>
粘膜付着性物質(メトローズ65SH50)を含むプロバイオティクス(ラクトバチルス・プランタラム299V)顆粒剤を含む、粘膜付着性の口腔内崩壊錠を用意する。
<<粘膜付着性プロバイオティクス顆粒剤の準備。>>
まず、ラクトバチルス・プランタラム299Vをふるいにかけ、直径が200μm以上の粒子を取り除く。次に、ふるいにかけられたLP299V(登録商標)及びメトローズ65SH50が、3次元混合機(Turbula-Mixer)を用いて30r/minで混合され、その後乾燥剤袋を追加して5分間混合し、乾燥した均一な混合物を生成した後、ソマコン・ラボミキサ(Somakon Labmixer)に移動され、乾燥窒素環境の下、摂氏20度で放置される。混合物に5mlのオイドラギットLイソプロパノール溶液(12.5%)を添加し、280r/minで混合した後、湿った混合物はスクラッパーを使用して1分間撹拌され、その後残りのオイドラギットLイソプロパノール溶液を添加し、280r/minで混合する。スクラッパーを使用して、370r/minで2分間混合した後、湿った顆粒剤を目が710μmのふるいにかけ、顆粒剤の水分活性が0.1以下になるまで、乾燥機に放置されて圧縮空気が供給される。抽出した顆粒剤は、目が500μmのふるいにかけられ、粘膜付着性のプロバイオティクス顆粒剤を生成する。
【0089】
<粘膜付着性の口腔内崩壊錠の準備>
まず、シロイド(登録商標)244FP及びAL-1FPシリカの混合物(1:1混合物)、オプタミント(登録商標)レモン-ライム風味及びアビセル(登録商標)PH112を、目が315μmのふるいにかけ、パーリトール(登録商標)100SD及びコリドン(登録商標)CL-SFと混合する。その後、混合物を3次元混合機に移動し、ステップ(1)で生成した粘膜付着性顆粒剤とふるい分けされたプルブ(登録商標)を添加し、30r/minで混合する。その後、乾燥剤袋を追加して10分間混合し、乾燥した均一な混合物を生成する。錠剤を圧縮する前に、パンチマシンの錠剤スタンプの周辺のハウジングには、湿度が15%以下になるまで、圧縮空気が供給される。次に、200mgの最終混合物をモールド金型に添加し、混合物を圧縮し、例1の口内分散性錠剤を生成する。錠剤の特徴データは表5に記されている。
【0090】
各原料の量は表1に表す
【0091】
【表1】
face=Century>
【0092】
<比較例C1>
まず、乾燥剤袋を使用し、LP299V(登録商標)及びメトローズ65SH50を、3次元混合機(Turbula-Mixer)を用いて30r/minで10分間混合する。次に、シロイド(登録商標)244FP及びAL-1FPシリカの混合物(1:1混合物)、オプタミント(登録商標)レモン-ライム香料及びアビセル(登録商標)PH112を、目が315μmのふるいにかけ、パーリトール(登録商標)100SD及びコリドン(登録商標)CL-SFと混合する。生菌と混合されたプレミックスが添加された後、同様の条件下、3次元混合機でさらに10分間混合する。最後に、ふるい分けされたプルブ(登録商標)を添加し、5分間混合する。最終混合物は、実施例1と同様に圧縮し、粘膜付着性の口腔内崩壊錠Cp1を生成する。
【0093】
錠剤の特徴データは表4に記されている。
【0094】
<実施例2>
粘膜付着性物質(メトローズ65SH50)を含むプロバイオティクス(ラクトバチルス・パラガセイ8700:2)顆粒剤を含む、粘膜付着性の口腔内崩壊錠を用意する。
【0095】
準備工程は実施例1と同じ工程である。但し、顆粒化の前に生菌の粉末をふるい分けする工程は不要である。
各原料の量は表2に表す
【0096】
【表2】

例2で生成される粘膜付着性の口腔内崩壊錠Ex2の特徴データは、表4に記載する。
【0097】
<比較実施例C2>
準備工程は比較実施例1と同様である。各原料の量は表2に記載されている。比較実施例2では、口腔内崩壊錠Cp2が生成され、錠剤の特徴データは表4に記載されている。
【0098】
<実施例3>
粘着性(食品用キトサン)プロバイオティクス(ラクトバチルス・パラカゼイ、8700:2)顆粒剤を含む粘膜付着性の口腔内崩壊錠が生成される。
【0099】
準備工程は実施例1と同じ工程である。但し、顆粒化の前に生菌の粉末をふるい分けする工程は不要である。
各原料の量は表3に表す
【0100】
【表3】

例3では、粘膜付着性の口腔内崩壊錠Ex3が生成され、錠剤の特徴データは表4に記載される。
【0101】
<比較実施例C3>
準備工程は比較実施例1と同様である。各原料の量は表3に記載されている。比較実施例3では、口腔内崩壊錠Cp3が生成され、錠剤の特徴データは表4に記載されている。
【0102】
<特徴データ>
サンプルの破壊性は、ヨーロッパ薬局方8.2、キャプチャ2.9.7に基づいて試験された。
【0103】
サンプルの破壊強度は、ヨーロッパ薬局方8.2、キャプチャ2.9.8に基づいて試験された。
【0104】
サンプルの分解時間は、ヨーロッパ薬局方8.2、キャプチャ2.9.1に基づいて試験された。
組成物の単一質量の均一性は、ヨーロッパ薬局方8.2、キャプチャ2.9.5に基づいて試験された。
表4に、対応するデータが列挙されている
【0105】
【表4】

表4のデータは、本発明の実施例1、2、3で生成した錠剤は、比較実施例1、2,3で生成した錠剤よりも分解時間が短いことを表している。この結果は、本発明に基づいて生成される口腔内崩壊錠は、例えば粘膜付着性の活性顆粒剤を生成した後に加工された口腔内崩壊錠は、公知の口腔内崩壊錠よりも良い特性を持つことを示している。
【0106】
<実施例4>
粘膜付着性の(カーボポール971PNF)プロバイオティクス(ラクトバチルス・プランタラムHEAL9)を有する、粘膜付着性の口腔内崩壊錠が、フリーズドライ製法によって準備される。
【0107】
ラクトバチルス・プランタラムHEAL9を除く全ての賦形剤が混合され、均一の懸濁液が生成される。その後、分解されたプロバイオティクスを添加し、10分間撹拌され、賦形剤が均一に分散する。500μlの製剤が各気泡にピペットされ、22~24時間フリーズドライされる。1錠剤(凍結乾燥物)の各原料の量は表5に記載する
【表5】
【0108】
<比較実施例4>
プロバイオティクス(ラクトバチルス・プランタラムHEAL9)を有する口腔内崩壊錠が、フリーズドライ製法によって準備される。
準備工程は実施例4と同様である。各原料の量は表6に記載されている。但し、水の代わりにカーボポールが使用されている。
【0109】
<実施例5>
生成した粘膜付着性の口腔内崩壊錠の粘着付着性を試験する。
【0110】
生成した粘膜付着性の口腔内崩壊錠の粘着付着性の試験は、以下の手順で実施する。システムは図2に図示する。
【0111】
(i)厚さ2mm、直径が2.5cmの凍結した豚粘膜の一部を用意し、金属セル(A)の底部(1)に配置し、粘膜の上にパラフィルム(2)及び金属ディスク(3)を配置した。粘膜は固定リング(4)によって、金属セル(A)に固定し、表面には2~3滴の人工唾液を滴下した。金属セル(A)は第1コンテナ(B)の支持部(5)の上面に配置し、実施例又は比較実施例記載の方法で生成した錠剤の1/4(約10~15mg)を、ピンセットによって粘膜に押し付けた。(ii)第1コンテナ(B)の表面部(6)を閉じ、第2コンテナ(C)からポンプされた人工唾液を錠剤に、0.1~0.5ml/分の率で滴下した。滴下は60分後に停止し、第1コンテナ(B)から金属セル(A)を移動した。(iii)固定リング(4)を開放し、金属ディスク(3)と共に第1コンテナ(B)に戻した。その後、粘膜及びパラフィルム(2)は、ピンセットによって底部(1)から移動して第1滅菌ガラスビーカーに入れ、底部(1)は第1コンテナ(B)に戻した。100gの希釈剤(8.5g/lの塩化ナトリウム、1g/のペプトン、10m/のTween80)をガラスビーカーに入れ、溶液Aを500rpmで30分間、磁気撹拌した。(iv)最初に、第1コンテナ(B)の人工唾液は、第2滅菌ガラスビーカーに流し入れた。次に、500mlの希釈剤(8.5g/lの塩化ナトリウム、1g/のペプトン)を使用して第1コンテナ(B)及び残りの金属セル(A)を洗浄し、第2滅菌ガラスビーカーに入れた。希釈剤(8.5g/lの塩化ナトリウム、1g/のペプトン)を添加することにより、ガラスビーカーの液体が合計で1,000gとなる。溶液Bは200rpmで5分間、磁気撹拌した。(v)各ガラスビーカーから希釈液を取り除き、乳酸菌を列挙した。
【0112】
使用した人工唾液は、Matzker/Schreiber 1972(CaCl2を除く)に基づいて準備した。その組成は表6に記載する。
【表6】

生成した溶液A及びBは、それぞれ、粘膜に付着した生菌の数及び人工唾液によって洗浄された生菌の数を判断するために使用した。CFUは以下の式に基いて計算した。
【数1】
【0113】
結果は表7に示す
【表7】
【0114】
表7のデータによると、実施例1~4の方法で生成した活性プロバイオティクスは、比較例1~4の方法で生成した粘膜よりも容易に付着することが分かった。粘膜付着性ポリマーを使用していない錠剤を使用した試験の後、粘膜には10%のプロバイオティクスしか残留しないため、粘膜付着性ポリマーを添加することにより、菌の粘膜付着性が高まる。実施例及び比較実施例1~3は、粘膜付着性ポリマーを含むため、粘膜付着性が10%よりも高い。粘膜付着ポリマーの効果は、実施例4と比較実施例4(粘膜付着性ポリマーが無い場合)との間でも明確である。さらに、粘膜付着性ポリマーを含む菌の顆粒化によって、賦形剤のみを混合する手法(比較実施例1~3)よりも高い粘膜付着性(実施例1~3)を発揮する。
図1
図2