(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】転てつ機、及び転てつ機の給油方法
(51)【国際特許分類】
E01B 7/26 20060101AFI20220202BHJP
B61L 5/06 20060101ALI20220202BHJP
F16N 7/38 20060101ALI20220202BHJP
F16N 29/00 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
E01B7/26
B61L5/06
F16N7/38 B
F16N7/38 G
F16N29/00 E
(21)【出願番号】P 2017146064
(22)【出願日】2017-07-28
【審査請求日】2020-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130476
【氏名又は名称】原田 昭穂
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 一樹
(72)【発明者】
【氏名】岡野城 幸治
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】岡見 毅彦
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-116901(JP,A)
【文献】特開2013-256978(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02384949(EP,A1)
【文献】特開平06-322701(JP,A)
【文献】特開2004-034876(JP,A)
【文献】特開平11-257586(JP,A)
【文献】特開2005-344355(JP,A)
【文献】特開2003-239205(JP,A)
【文献】特公昭50-032486(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 1/00-26/00
B61L 1/00-99/00
F16N 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤を貯留する貯留部と、前記貯留部から駆動部に前記潤滑剤を給油させる給油機構部と、前記給油機構部に前記給油をさせる給油処理部と、潤滑剤溜まり部とを備え、
前記給油処理部は、潤滑剤センサによる前記潤滑剤溜まり部の前記潤滑剤の充填度合いと、前記貯留部から供給される潤滑剤の流量と、に基づいて前記潤滑剤の供給を制御することを特徴とする転てつ機。
【請求項2】
請求項1に記載の転てつ機であって、前記潤滑剤溜まり部の
前記充填度合いは、前記潤滑剤溜まり部に設けられる
前記潤滑剤センサにより計測されることを特徴とする転てつ機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の転てつ機であって、前記給油処理部は、前記潤滑
剤の給油に関する情報として、天候に関する情報又は前記潤滑剤に関する情報の少なくとも一方に基づき、前記給油機構部に前記潤滑剤の給油をさせることを特徴とする転てつ機。
【請求項4】
請求項3に記載の転てつ機であって、前記給油処理部は、転てつ機周辺に設置された気象観測センサと連動し、前記天候に関する情報として、降雨が予想されるか又は観測された場合には、前記給油機構部に前記潤滑剤の充填を指示することを特徴とする転てつ機。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の転てつ機であって、更に通信処理部を備え、前記給油処理部は、少なくとも前記貯留部又は前記駆動部のいずれか一方における前記潤滑剤に関する情報を前記通信処理部に通知し、前記潤滑剤の残量が少なくなった場合には前記通信処理部を介して外部端末に前記潤滑剤の補充を指示することを特徴とする転てつ機。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の転てつ機であって、前記給油機構部が少なくとも転てつ機内又は転てつ機周辺のいずれか一方に設置されることを特徴とする転てつ機。
【請求項7】
請求項6に記載の転てつ機であって、外部端末は、通信処理部を介して前記給油処理部に対し、前記給油機構部に前記潤滑剤を給油させるように指示することを特徴とする転てつ機。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の転てつ機であって、前記給油処理部は、設置された流量計から通知される前記潤滑剤の流量情報から、前記給油が正常に実施されたか否かを判断し、前記給油が正常に実施されていないと判断した場合には、再度給油の実施を指示することを特徴とする転てつ機。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の転てつ機の給油方法であって、前回の潤滑剤の給油時から所定期間を経過しているか否かを判定し、前記所定期間を経過している場合には前記潤滑剤を給油するステップと、動作かん挿入口又は鎖錠かん挿入口の近傍に設置される水位計から送信された雨水による水位が所定量を越えているか否かを判定し、前記水位が所定量を越えている場合には、前記潤滑剤が転てつ機の動作と共に前記転てつ機の内部や外部へ排出されるため前記潤滑剤を給油するステップと、を備えることを特徴とする転てつ機の給油方法。
【請求項10】
請求項9
に記載の転てつ機の給油方法であって、前記給油処理部が、少なくとも前記貯留部又は前記駆動部のいずれか一方における前記潤滑剤の残量情報を通信処理部に送信するステップと、前記通信処理部は、前記潤滑剤が不足していることを外部端末に送信するステップと、前記外部端末が、前記潤滑剤の補充を表示するステップと、を備えることを特徴とする転てつ機の給油方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転てつ機、及び転てつ機の給油方法に係り、特に、潤滑剤を動作かん駆動部及び鎖錠かん駆動部に設けられた潤滑剤溜まり部に給油する転てつ機に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示す、転てつ機1の動作かん20及び鎖錠かん21について説明する。転てつ機1は、トングレール(図示せず)を駆動して線路の開通方向を定めるもので、機器収納箱24の内部に転換機構及び鎖錠機構が内蔵されている。また、機器収納箱24の内部から外部に突出する動作かん20及び鎖錠21が備えられている。動作かん20は、動作かん挿入孔18に挿入され、電動モータ22の駆動力によりトングレールを駆動し、鎖錠かん21は鎖錠かん挿入孔19に挿入され、トングレールを転換位置に鎖錠する。
【0003】
動作かん20は、枠体25の長手方向の中間付近に、機器収納箱24を左右に貫通して備えられ、機器収納箱24に対して
図6の上下方向に往復移動することによってトングレールを駆動する。鎖錠かん21は、機器収納箱24の後端位置に、動作かん20と平行に枠体25を貫通して備えられ、機器収納箱24に対し、動作かん20と連動して
図6の上下方向に往復移動する。枠体25の後端から一部が突出している鎖錠片23は、左右の鎖錠かん21の動作終端位置で、鎖錠かん21の下面に形成された切欠き(図示せず)に係合し、鎖錠かん21及び動作かん20の位置を固定する。また、後述する水位計8は、例えば、動作かん挿入孔18又は鎖錠かん挿入孔19の近傍に設置されるのが好ましい。
【0004】
図7に、従来の転てつ機1の動作かん20が挿入される動作かん挿入孔18近傍の概略構成を示す。本実施形態に係る潤滑剤6の給油機構は、動作かん挿入孔18だけではなく鎖錠かん挿入孔19にも適用される。
図7に示すように、動作かん挿入孔18には、受圧部材28、封止部材29、及び保持部材30が積層されてボルト42により締め付けられる。封止部材29は、弾性を有する、例えばゴムパッキンなどの平板状のシール材であり、枠体25と保持部材30との間に受圧部材28と共に挟まれている。このように、封止部材29によりシールされて水の浸入を防ぐ防水構造が設けられる。また、後述する潤滑剤充填口27が設けられ、潤滑剤溜まり部26に潤滑剤が充填される。
【0005】
図8に、
図7の動作かん20及び動作かん挿入孔18を側面からみた断面図を示す。動作かん20の枠体25に対する摺動に伴って潤滑剤6が転てつ機1の内部や外部に引き込まれる。動作かん挿入孔18には、その引き込まれた分の潤滑剤6を補うために潤滑剤溜まり部26が設けられる。また、この潤滑剤溜まり部26には、動作かん20の外周に適合した形状を有する環状金属片31が配置されている。これにより、潤滑剤溜まり部26に貯えられている潤滑剤6が、動作かん20と枠体25との間の隙間を介して枠体25の内部や外部に不要に引き込まれることが防止される。このように、従来の動作かん挿入孔18には、水の浸入を防ぐ防水構造と潤滑剤6を保持する潤滑構造が共に設置される。また、潤滑剤溜まり部26の上部には潤滑剤排出孔32が設けられ、潤滑剤充填口27から充填された潤滑剤6が潤滑剤排出孔32から漏れることで潤滑剤6が十分に充填されたことが確認できる。
【0006】
図9に、従来の潤滑剤溜まり部26への潤滑剤6の給油方法を示す。
図9に示すように、先端部にグリスニップル34が取り付けられたグリスガン33を用い、グリスニップル34を転てつ機1の潤滑剤充填口27に差し込んで給油しても良い。或いは、ホース37の一端を、後述する貯留部2(
図2参照)の実施例である潤滑剤タンク36に取り付け、多端のグルスニップル34を潤滑剤充填口27に差し込んで給油しても良い。そして、潤滑剤6の給油の際には、潤滑剤排出孔32に設けられたリリーフニップル35から潤滑剤6が漏れ出ることで潤滑剤溜まり部26に十分に潤滑剤6が供給されたことが確認できる。
【0007】
引用文献1には、必要な通気性を損なうことなく、摺動部の防水性を確保する防水潤滑構造及びそれを備える転てつ機が開示されている。ここでは、潤滑剤溜まりを形成し、潤滑剤の補充のため、潤滑剤溜まりに枠体の外側から潤滑剤を供給する手段を設ける。また、枠体に対し、その挿通孔形成部の外面に保持部材を締め付け、枠体と保持部材との間に封止部材を圧縮状態で介装し、封止部材をその内周全体に亘って摺動部材に押し付けることが開示されている。
【0008】
引用文献2は、転轍部の移動軌道の移動に伴って、軌道の下部の床板面に必要量の潤滑剤を自動的に供給する転轍部自動給油装置が開示されている。ここでは、転轍部の動作に関連して転動する転動ローラにより潤滑剤が床上に塗布され、その潤滑剤の量は減速された油供給部材により制御されるため、列車の通過による油の飛散を抑制し、列車の移動が円滑に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-256978号公報
【文献】特開平6-166373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した転てつ機では、潤滑剤溜まり部内の潤滑剤は、転てつ機の摺動とともに転てつ機の内部や外部に排出されるため潤滑剤の供給が必要となる。このため作業員が転てつ機の設置現場まで行き、定期的又は必要に応じて潤滑剤を手動により給油している。この給油作業は、約3月に1回の頻度で行われるが、現場作業となることから給油作業に手間がかかるという課題があった。
【0011】
また、雨水が潤滑剤溜まり部等に浸入して冠水すると、例えば、動作かんや鎖錠かんの歯車機構などの内部部品に錆が発生したり、また電気回路が短絡したりするなどの問題が発生する虞がある。動作かん又は鎖錠かんの正常な動作は列車の安全走行に不可欠であるため、転てつ機の保安作業は極めて重要である。そこで、作業員はゲリラ豪雨や台風の発生前に潤滑剤の供給を行うようにしているが、天候の変化は予測しづらく、冠水の直前にタイミング良く手動で給油を行うことは難しいという課題があった。
【0012】
さらに、現状では、定期的に給油作用を行っているが、貯留部又は潤滑剤溜まり部の潤滑剤が不足している場合に現場点検以外にそれを認識する手段がなく、管理すべき転てつ機の台数も多いことから、転てつ機への潤滑剤の供給を管理するには手間がかかるという課題があった。
【0013】
本願の目的は、かかる課題を解決し、定期的に又は必要に応じて転てつ機に潤滑剤を自動給油する転てつ機、及び転てつ機の給油方法を提供することである。
【0014】
また、本願の他の目的は、各転てつ機への潤滑剤の自動給油が確実に実施されたか否かを容易に確認できる転てつ機、及び転てつ機の給油方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係る転てつ機は、潤滑剤を貯留する貯留部と、貯留部から駆動部に潤滑剤を給油させる給油機構部と、給油機構部に給油をさせる給油処理部と、潤滑剤溜まり部とを備え、給油処理部は、潤滑剤センサによる潤滑剤溜まり部の潤滑剤の充填度合いと、貯留部から供給される潤滑剤の流量と、に基づいて潤滑剤の供給を制御することを特徴とする。
【0016】
上記構成により、転てつ機は、給油処理部を有する給油機構部を備え、給油機構部により貯留部と駆動部とを、例えば、ホースなどにより連結させて潤滑剤の供給の制御が可能となる(
図9参照)。具体的には、少なくとも貯留部又は潤滑剤溜まり部のいずれかに、人手をかけずに定期的に潤滑剤を自動供給することができ、貯留部又は潤滑剤溜まり部における潤滑剤の残量から給油機構部に潤滑剤の供給を指示することができる。
【0017】
また、転てつ機は、給油処理部が潤滑剤の給油に関する情報として、天候に関する情報又は潤滑剤に関する情報の少なくとも一方に基づき、給油機構部に潤滑剤の給油をさせることが好ましい。これにより、定期的に又は必要に応じて貯留部又は潤滑剤溜まり部に潤滑剤を供給することが可能となる。
【0018】
また、転てつ機は、転てつ機周辺に設置された気象観測センサと連動し、天候に関する情報として、降雨が予想されるか又は観測された場合には、給油機構部に潤滑剤の充填を指示することが好ましい。これにより、動作かん挿入孔又は鎖錠かん挿入孔から雨水が浸入して冠水する前に潤滑剤の給油を行うことができる。
【0019】
また、転てつ機は更に通信処理部を備え、給油処理部が少なくとも貯留部又は駆動部内のいずれか一方における潤滑剤に関する情報を通信処理部に通知し、潤滑剤の残量が少なくなった場合には通信処理部を介して外部端末に潤滑剤の補充を指示することが好ましい。これにより、潤滑剤の残量をモニタすることができ残量が少なくなった場合に、迅速に対処することができる。
【0020】
また、転てつ機は、前記給油機構部が少なくとも転てつ機内又は転てつ機周辺のいずれか一方に設置されることが好ましい。これにより、各転てつ機の設置状況により給油機構部による動作かん駆動部、又は鎖錠かん駆動部への潤滑剤の供給を複数の方式から選択することができる。
【0021】
また、転てつ機は、外部端末が通信処理部を介して給油処理部に対し、給油機構部に潤滑剤を給油させるように指示することが好ましい。これにより、例えば、中央制御室などの遠隔から潤滑剤の給油を指示する機能を備えさせることができる。
【0022】
また、転てつ機は、給油処理部が設置された流量計から通知される潤滑剤の流量情報から、給油が正常に実施されたか否かを判断し、給油が正常に実施されていないと判断した場合には、再度給油の実施を指示することが好ましい。これにより、潤滑剤の給油が正常に行われたか否かが判断でき、給油に異常があった場合には、迅速な対応が可能となる。
【0023】
また、転てつ機の給油方法は、前回の潤滑剤の給油時から所定期間を経過しているか否かを判定し、所定期間を経過している場合には潤滑剤を給油するステップと、動作かん挿入口又は鎖錠かん挿入口の近傍に設置される水位計から送信された雨水による水位が所定量を越えているか否かを判定し、水位が所定量を越えている場合には、潤滑剤が転てつ機の動作と共に転てつ機の内部や外部へ排出されるため潤滑剤を給油するステップと、を備えることが好ましい。これにより、定期的に又は必要に応じて貯留部又は潤滑剤溜まり部に潤滑剤の供給をすることができる。
【0024】
さらに、転てつ機の給油方法は、給油処理部が、少なくとも貯留部又は駆動部のいずれか一方における潤滑剤の残量情報を通信処理部に送信するステップと、通信処理部が潤滑剤が不足していることを外部端末に送信するステップと、外部端末が、潤滑剤の補充を表示するステップとを備えることが好ましい。このように、貯留部又は潤滑剤溜まり部の潤滑剤が不足している場合、外部端末が画面に表示する機能を有することで、貯留部又は潤滑剤溜まり部に、遠隔においても定期的に又は必要に応じて潤滑剤の供給をすることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明に係る転てつ機、及び転てつ機の給油方法によれば、定期的に又は必要に応じて転てつ機に潤滑剤を自動給油することができる。
【0026】
また、本発明に係る転てつ機、及び転てつ機の給油方法によれば、転てつ機への潤滑剤の自動給油が確実に実施されたか否かを容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る転てつ機における潤滑剤の給油に関する構成について一つの実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】転てつ機への潤滑剤に関する情報の流れについて一つの実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】潤滑剤溜まり部への潤滑剤を供給する構成を示す斜視図である。
【
図4】潤滑剤の定期的な給油及び冠水時の潤滑剤の給油に関するフロー図であり、遠隔から潤滑剤の給油を指示する場合のフロー図である。
【
図5】貯留部又は潤滑剤溜まり部に潤滑剤が不足していることを通知するフロー図である。
【
図6】従来の転てつ機の動作かん及び鎖錠かんの構成を示す平面図である。
【
図7】従来の転てつ機の動作かん挿入孔近傍の概略構成を示す分解斜視図である。
【
図8】
図7の転てつ機の動作かん挿入孔近傍を側面から見た断面詳細図である。
【
図9】従来の転てつ機への潤滑剤の給油方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(転てつ機の構成)
以下に、図面を用いて本発明に係る転てつ機1における潤滑剤(
図3参照)の給油に関する構成につき、詳細に説明する。
図1に転てつ機1の一つの実施形態の概略構成をブロック図で示す。転てつ機1内部に設けられた潤滑剤溜まり部26a,26bの潤滑剤6は、転てつ機1の動作と共に転てつ機1の内部や外部へ排出されてしまう。そこで、定期的に潤滑剤6の給油が必要となる。また、ゲリラ豪雨や台風の発生前であって転てつ機1の内部に雨水が冠水する直前に潤滑剤6を必要に応じて給油する必要がある。
【0029】
転てつ機1は、貯留部2、給油機構部3、給油処理部4、動作かん駆動部5a、鎖錠かん駆動部5b、及び通信処理部15から構成され、動作かん20及び鎖錠かん21(
図6参照)に潤滑剤6を供給させる機構を備える。貯留部2は潤滑剤6を、例えばタンク(図示せず)などに貯留する。本明細書では、転てつ機1の動作かん駆動部5a及び鎖錠かん駆動部5bは駆動部5と総称され、それぞれ動作かん20及び鎖錠かん21を駆動させる。給油機構部3は、駆動部5の摺動を円滑に行わせるために、駆動部5の潤滑剤溜まり部26a,26bに潤滑剤6を給油する。すなわち、貯留部2と駆動部5とを連結させて潤滑剤6の給油を制御する。給油処理部4は、潤滑剤の給油に関する情報として、天候に関する情報12又は潤滑剤に関する情報13の少なくとも一方に基づいて、給油機構部3の潤滑剤溜まり部26a,26bに潤滑剤6を給油させる。さらに、通信処理部15は、送受信装置を備え、例えば、中央制御室(図示せず)などに設置された外部端末11に転てつ機1の潤滑剤6の残量などの情報を伝送する。そして、外部端末11は、通信処理部15から伝送された情報を端末機のモニタ(図示せず)などの表示装置に表示する。
【0030】
給油機構部3は、少なくとも転てつ機1の内部、又は転てつ機1の外部である周辺のいずれか一方に設置される。そして、給油機構部3は、
図2に示すように、例えばホース37等により潤滑剤6を貯留部2から駆動部5の潤滑剤充填口27へと供給する。このホース37は、転てつ機1の内外でケーブルクランプ(図示せず)等により床面や壁面に固定されても良い。
【0031】
(潤滑剤の給油に関する情報)
潤滑剤の給油に関する情報の第1である、天候に関する情報12について説明する。これは、転てつ機1の動作かん駆動部5a又は鎖錠かん駆動部5bに水が浸入すると、機構の腐食や配線の短絡により動作かん20又は鎖錠かん21が使用できなくなるからである。そこで、転てつ機1の周辺には、気象観測センサ7が設けられ、給油処理部4に天候に関する情報12が伝達される。気象観測センサ7は、例えば、降雨量を計測する水位計8、台風の接近による気圧の変化を計測する気圧計9などであるが、これらに限らず、降雨や台風などの気象を観測して天候に関する情報12を発信するものであれば全て含まれる。水位計8は、転てつ機1に設けられた動作かん20及び鎖錠かん21の挿入孔18,19の周辺に設置され、直接的に駆動部5への雨水の浸入を警告するのが望ましい。また、この水位計8は、転てつ機1ごとに設けられるのが望ましい。なお、気象観測センサ7には、一般的な湿度計、雨量計なども含まれる。給油処理部4は、転てつ機1の周辺に設置された気象観測センサ7と連動し、天候に関する情報12として、降雨が予想されるか又は観測された場合には、給油機構部3に潤滑剤6の給油を指示する。
【0032】
次に、潤滑剤6の給油に関する情報の第2である、潤滑剤に関する情報13について説明する。
図2に、転てつ機1への潤滑剤に関する情報13の流れについて一つの実施形態の概略構成をブロック図で示す。
図2(a)は情報の流れをブロック図で示し、
図2(b)は潤滑剤6の供給例を示す。
【0033】
潤滑剤に関する情報13には、潤滑剤6の供給量に関する情報、及び潤滑剤6の残量に関する情報が含まれる。
図1に示す転てつ機1の構成要素に対し、
図2では更に潤滑剤流量計16a,16b及び潤滑剤センサ17a,17bが追加して記載される。潤滑剤流量計16a,16bは、
図2(b)に示すように、貯留部2の一例である潤滑剤タンク36から潤滑剤溜まり部26a,26bの潤滑剤充填口27まで設けられたホース37に接続される。そして、ホース37内を流れる潤滑剤6の流量を計測する。本実施形態では、潤滑剤流量計16a,16bは、動作かん20及び鎖錠かん21それぞれの流量を計測するが、一つの流量計16でトータルの流量を計測しても良い。また、ホース37を省略して直接グリス給油器39(
図3参照)に潤滑剤流量計16a,16bを接続して潤滑剤充填口27に取り付けても良い。
【0034】
潤滑剤流量計16a,16bは、貯留部2から潤滑剤溜まり部26a,26bへ供給される潤滑剤6の流量を計測し、その流量の情報を給油処理部4に伝送する。給油処理部4は、潤滑剤6の供給時において正常に給油されたか否かを判定する。そして、正常に給油された場合は、通信処理部15を介して外部端末11に対して「正常に給油完了」と報告する(
図2中の(1)で示す)。一方、給油処理部4は、給油が不完全であった場合には、通信処理部15を介して外部端末11に対して「給油不完全」と報告し、給油機構部3にリトライの指令を送る(
図2中の(2)で示す)。このように、給油処理部4は、潤滑剤流量計16a,16bにより潤滑剤6の供給量に関する情報を得ることができる。
【0035】
図3に、潤滑剤溜まり部26への潤滑剤6を供給する構成を斜視図で示す。
図3(a)は、動作かん挿入孔18を斜視図で示す。
図3(b)は、転てつ機1の内部から潤滑剤6を給油する場合に、潤滑剤タンク(図示せず)にホース37を接続し、潤滑剤6をジョイト38先端のネジ部40から給油する構成を示す。また、
図3(c)は、グリス給油器39を用いてネジ部40から直接給油する構成を示す。斜視図で示す
図3(a)のグレーにハッチングした部分は、潤滑剤溜まり部26に供給された潤滑剤6を示す。給油機構部3は、転てつ機1の内部から、又は転てつ機1の外部から潤滑剤6を供給する。
図3(a)は、転てつ機1の内部から潤滑剤6を供給する場合を示し、
図3(b)又は
図3(c)の構成により潤滑剤貫通孔41に接続して給油する。また、水位計8は、例えば、
図3(a)の動作かん挿入孔18又は鎖錠かん挿入孔19の近傍に設置するのが望ましい。
【0036】
転てつ機1の外部から給油する場合は、
図3(b)又は
図3(c)の構成により、転てつ機1の外部から接続して給油を行う。潤滑剤センサ17a,17bは、
図3(a)に符号17で示すように潤滑剤溜まり部26に設けられ、潤滑剤6の充填度を計測する。そして、
図2に示すように、潤滑剤6の充填度を給油処理部4に報告する。
【0037】
転てつ機1は、更に通信処理部15を備え、給油処理部4は、潤滑剤6の残量が少なくなった場合には通信処理部15を介して外部端末11に潤滑剤6の補充を報告し、外部端末11は、潤滑剤6の補充が必要なことをモニタに表示する。また、外部端末11から遠隔操作で給油機構部3に対して潤滑剤6の給油を指令しても良い。
【0038】
図4(a)に、潤滑剤6の定期的な給油及び冠水時の潤滑剤6の給油に関する方法をフロー図で示す。
図4(a)の各ステップはS1~S4にて示す。まず、前回の潤滑剤6の給油時から所定期間を経過しているか否かを判定する(S1)。通常は3か月に1回の周期で定期点検が行われる。そして、所定期間を経過している場合には潤滑剤6の給油を給油処理部4に指示する(S2)。一方、所定期間を経過していない場合には、水位計8から送信された水位が所定量を越えているか否かを判定する(S3)。水位が所定量を越えている場合には潤滑剤6の給油を給油処理部4に指示する(S4)。一方、水位が所定量を越えていない場合には、ステップ1に戻る。
【0039】
また、
図4(b)に、遠隔から潤滑剤6の給油を指示する場合のフロー図を示す。
図4(a)に示すように、潤滑剤6の定期的な給油及び冠水時の潤滑剤6の給油だけではなく、中央制御室(図示せず)などの遠隔から外部端末11により潤滑剤6の給油を指示しても良い。この場合、
図4(b)に示すように、
図4(a)とは異なる経路により指示が伝達される。例えば中央制御室の監視員等が潤滑剤6を貯留部2から動作かん駆動部5a又は鎖錠かん駆動部5bに給油すべきか否かを判断する(S1)。給油すべきと判断した場合(Yesの場合)は、外部端末11から通信処理部15を介して給油処理部4に指示をする(S2)。そして、指示を受けた給油処理部15は、給油機構部3に潤滑
剤6を貯留部2から動作かん駆動部5a又は鎖錠かん駆動部5bに給油してステップ1に戻る。給油する必要がないと判断した場合(Noの場合)は、ステップ1の戻る。これにより、例えば、中央制御室などの遠隔から潤滑剤6の給油を指示する機能を備えさせることができる。
【0040】
図5(a)に、少なくとも貯留部2又は潤滑剤溜まり部26のいずれか一方で潤滑剤6が不足していることを通知する方法をフロー図で示す。
図5の各ステップはS1~S5にて示す。
【0041】
給油処理部4は、潤滑剤6の残量を貯留部2又は潤滑剤溜まり部26に設けた潤滑剤センサ17a,17b,14から受信する(S1)。次に、給油処理部4は、潤滑剤6の残量を通信処理部15に送信する(S2)。さらに、通信処理部15は、潤滑剤6の残量から潤滑剤6が不足しているか否かを判断する(S3)。潤滑剤6が不足している場合は、通信処理部15は、潤滑剤6の不足を外部端末11に通知する(S4)。そして、外部端末11は、通信処理部15を介して給油処理部4に潤滑剤6の補充を表示する(S5)。一方、通信処理部15は、潤滑剤6の残量から潤滑剤6が不足していないと判断した場合は、ステップ1に戻る。
【0042】
以上の実施形態で説明された転てつ機1の構成、形状、大きさ、及び配置関係については、本発明が理解、実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 転てつ機、2 貯留部、3 給油機構部、4 給油処理部、5 駆動部,5a 動作かん駆動部,5b 鎖錠かん駆動部、6 潤滑剤、7 気象観測センサ、8 水位計、9 気圧計、11 外部端末、12 天候に関する情報、13 潤滑剤に関する情報、14 潤滑剤センサ、15 通信処理部、16a 動作かん潤滑剤流量計,16b 鎖錠かん潤滑剤流量計、17a 動作かん潤滑剤センサ,17b 鎖錠かん潤滑剤センサ、
18 動作かん挿入孔、19 鎖錠かん挿入孔、20 動作かん、21 鎖錠かん、22 電動モータ、23 鎖錠片、24 機器収納箱、25 枠体、26 潤滑剤溜まり部,26a 動作かん潤滑剤溜まり部,26b 鎖錠かん潤滑剤溜まり部、27 潤滑剤充填口、28 受圧部材、29 封止部材、30 保持部材、31 環状金属片、32 潤滑剤排出孔、33 グリスガン、34 グリスニップル、35 リリーフニップル、36 潤滑剤タンク、37 ホース、38 ジョイント、39 グリス給油器、40 ネジ部、41 潤滑剤貫通孔、42 ボルト。