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特許7017879機能分離型衝撃吸収装置及び機能分離型衝撃吸収装置を備えた橋梁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】機能分離型衝撃吸収装置及び機能分離型衝撃吸収装置を備えた橋梁
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/04 20060101AFI20220202BHJP
   E01D 1/00 20060101ALI20220202BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20220202BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20220202BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20220202BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20220202BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
E01D19/04 101
E01D1/00 Z
E04H9/02 311
F16F7/00 D
F16F7/12
F16F15/02 Z
F16F15/04 A
F16F15/04 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017153324
(22)【出願日】2017-08-08
(65)【公開番号】P2019031827
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】509200613
【氏名又は名称】株式会社横河NSエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】前島 稔
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-036601(JP,A)
【文献】特許第6173553(JP,B1)
【文献】特開2017-089146(JP,A)
【文献】特開2017-082904(JP,A)
【文献】特開2012-122288(JP,A)
【文献】特開2012-197864(JP,A)
【文献】特開2014-031670(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0006538(US,A1)
【文献】特許第6872359(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00ー24/00
E04H 9/02
F16F 7/00
F16F 7/12
F16F 15/02
F16F 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー吸収材としての変形芯材の材軸方向両端部に断面が拡大された継手部を有し、前記継手部を除く前記変形芯材を四方より座屈拘束材で挟み込んで、前記変形芯材の座屈を拘束するとともに、前記変形芯材と前記座屈拘束材とは、材軸直角方向に貫通する締付けボルトにより接合され、材軸方向の相対移動を拘束した固定部と、前記座屈拘束材に形成された長孔を材軸直角方向に貫通するガイドボルトによって接合され、前記長孔の長さの範囲内で材軸方向の相対移動を許容する可動部とを備え、両端の前記継手部間に作用する引張りおよび圧縮荷重を受けて材軸方向に伸縮する棒状の衝撃吸収装置において、
前記変形芯材の同一材軸線上に、材軸方向の引張り荷重を受けて弾塑性変形しつつ、あらかじめ設定された上限の変位において変位が拘束される構成とした引張り側の第1の変位区間と、前記設定された上限の変位において前記引張り側の第1の変位区間における変位が拘束された状態で、材軸方向の引張り荷重を受けて弾性変形または弾塑性変形する引張り側の第2の変位区間と、材軸方向の圧縮荷重を受けて弾塑性変形する圧縮側の変位区間とを設定し、
前記引張り側の第1の変位区間の一端には材軸直角方向に貫通する締付けボルトにより前記座屈拘束材と接合され、材軸方向の相対移動を拘束した固定部が形成され、他端には前記座屈拘束材に形成された長孔を材軸直角方向に貫通するガイドボルトによって接合され、前記長孔の長さの範囲内で材軸方向の相対移動を許容しつつ前記長孔の端部で材軸方向の変位が拘束される可動部が形成され、
前記引張り側の第2の変位区間の一端には材軸直角方向に貫通する締付けボルトにより前記座屈拘束材と接合され、材軸方向の相対移動を拘束した固定部が形成され、他端には材軸方向の相対移動を許容する可動部が形成され、
前記圧縮側の変位区間の一端には材軸直角方向に貫通する締付けボルトにより前記座屈拘束材と接合され、材軸方向の相対移動を拘束した固定部が形成され、他端には材軸方向の相対移動を許容する可動部が形成され、
ていることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置。
【請求項2】
請求項1記載の機能分離型衝撃吸収装置において、前記変形芯材の第2の変位区間は、引張り荷重を受けて弾塑性変形しつつ、あらかじめ設定された上限の変位において変位が拘束される構成とし、かつ前記第2の変位区間があらかじめ設定された上限の変位において拘束された状態で、材軸方向の引張り荷重を受けて弾性変形または弾塑性変形する引張り側の第3の変位区間を前記変形芯材の同一材軸線上に備えていることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の機能分離型衝撃吸収装置において、前記衝撃吸収装置を構成する変位芯材が、引張りおよび圧縮荷重を受けて、前記継手部の一方との連結が切り離された状態で実質的に無抵抗で軸引張り方向および軸圧縮方向に変位する遊間領域として設定される変位区間を前記変形芯材の同一材軸線上に備えていることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の機能分離型衝撃吸収装置において、前記変形芯材の第1,第2または第3の変位区間に、設定された引張り荷重で破断する破断誘発部が設けられていることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の機能分離型衝撃吸収装置において、前記変形芯材の第1、第2および/または第3の変位区間の材料として、形状記憶合金または低降伏点鋼を用いていることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置。
【請求項6】
レベル2地震動以上の地震動で支承の破壊を許容する構成とした橋梁の下部工と上部工との間に、請求項1~5の何れか一項に記載の機能分離型衝撃吸収装置が介在されていることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置を備えた橋梁。
【請求項7】
請求項6記載の機能分離型衝撃吸収装置を備えた橋梁において、レベル2地震動以上の地震動であって、前記支承が破壊する地震動以下の地震動で、前記機能分離型衝撃吸収装置が破壊することを許容するように前記変形芯材の変位区間が設定されていることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置を備えた橋梁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の棒状制振部材に対し、材軸方向の引張りおよび圧縮両方向の荷重に対する変形能力とエネルギー吸収能力に優れた機能分離型衝撃吸収装置及び機能分離型衝撃吸収装置を備えた橋梁に関するものであり、例えば、橋桁の端部と橋桁の端部を支える橋台との間に設置して、地震時の衝撃吸収部材として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
構造物の耐震性能、制震性能を高めるものとして、制振部材と構造部材を兼ねた制振ブレースなどの棒状制振部材が種々開発され、製品化されている。
【0003】
例えば、特許文献1、特許文献2には、平板または断面十字形の鋼材からなる芯材とその座屈変形を拘束する山形鋼からなる拘束材を用いた座屈拘束型の軸力負担部材が記載されている。
【0004】
また特許文献3には、鋼製芯材の外周をアンボンド層を介して座屈拘束用コンクリート部材で覆い、その座屈拘束用コンクリート部材の外周を鋼管で覆って補強した軸降伏型弾塑性履歴ブレースの改良技術が記載されている。
【0005】
図20(a),(b)は、従来の棒状制振部材の一例として、平板芯材を用いた座屈拘束型の棒状制振部材の具体例を示したものである。
【0006】
基本的な構成は、低降伏点鋼あるいは普通鋼からなるエネルギー吸収材としての芯材30本体の両端部に断面が拡大された継手部31、32を形成し、芯材30本体を四方より変形拘束部材33としての山形鋼で抑え、スペーサー34を介して変形拘束部材33どうしを高力ボルト35で締め付けて、芯材30本体が座屈しないようにしたものである。
【0007】
この例で、芯材30と変形拘束部材33とは、図20(a)における奥側の固定側継手部31と、手前側の可動側継手部32の2箇所において、それぞれ高力ボルト35で接合されており、可動側継手部32の高力ボルト35は芯材30に軸方向の引張力または圧縮力が作用したときに、変形拘束部材33に形成した長孔33aに沿って軸方向に摺動可能となっている。
【0008】
すなわち、芯材30に軸方向の引張力が作用したときは芯材30が弾性範囲または弾塑性範囲で伸び、芯材30に軸方向の圧縮力が作用したときは芯材30が弾性範囲または弾塑性範囲で縮み、変形拘束部材33には実質的に軸方向力が作用しないようになっている。
【0009】
また、芯材30に軸方向の圧縮力が作用したとき、変形拘束部材33が芯材30本体を四方から拘束していることで、芯材30本体の座屈変形が生じないため、制振部材としてのエネルギー吸収能力をフルに発揮させることができる。
【0010】
図21(a),(b)は、従来の棒状制振部材の一例として十字芯材を用いた座屈拘束ブレースの具体例を示したものであり、芯材30本体の断面を十字断面とした点以外の構成および作用効果は図18の平板の場合と同様であるが、同じ変形が生じた場合芯材30の方が断面が大きい分、エネルギー吸収能力が高い。
【0011】
ところで、道路橋などの橋梁においては、大規模地震時に上部工である橋桁の端部が橋桁端部を支える橋台や橋脚などの下部工から落橋しないように、下部工側に桁かかり長を十分に確保をしたり、上部工側の橋桁端部と下部工側の橋台や橋脚とを落橋防止材で連結することが行われ、また、特に近年では、棒状制振部材に落橋防止材としての機能を兼用させる検討をしたり,落橋防止材単体として使用をする検討がなされたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2000-265706号公報
【文献】特開2006-328688号公報
【文献】特開2014-031654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の棒状制振部材の設計では、大規模地震時には芯材を必ず降伏させて履歴減衰により地震エネルギーを吸収させる設計をしていたが、想定外の地震も考慮した設計対応も要求されることがある。また、棒状制振部材には、引張り荷重と共に圧縮荷重が引張り荷重と交互に作用するため、圧縮荷重を受けて降伏する芯材を取り付けることにより、変形能力および地震エネルギーの吸収能力は倍増させることができる。
【0014】
例えば、橋桁と橋桁を支える橋台との間に取り付けて使用する場合、棒状制振部材の芯材が仮に大規模地震時の繰り返し履歴で既に破断をしていたとすると、それ以降の落橋防止材としての変形挙動に対しては地震エネルギーの吸収ができないことになる。
【0015】
また、主として落橋防止材を設計する場合は、落橋防止システムとして、支承部の機能が喪失するまでは、芯材を塑性変形させる必要はなく、その間、支承部の変形に追随できる構造が要求される。つまり、想定外の地震挙動で支承部の機能が喪失した場合、芯材を塑性変形させれば良いことになり、使用目的により芯材を塑性変形させる設計のタイミングが異なってくるのである。
【0016】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、地震時の引張りおよび圧縮両方の荷重に対する変形能力とエネルギー吸収能力がきわめて高く、想定し得る範囲内で最大規模の地震(レベル2の地震動)に対してだけでなく、レベル2の範囲を超える想定外の大地震に対しても対応可能で、例えば、橋桁の端部と橋桁の端部を支える橋台との間に取り付けられる落橋防止材として適した機能分離型衝撃吸収装置及び機能分離型衝撃吸収装置を備えた橋梁を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、材軸方向の両端部に継手部を有し、引張りおよび圧縮荷重を受けて材軸方向に伸縮する棒状の機能分離型衝撃吸収装置であって、引張り荷重を受けて、塑性変形領域として設定される引張り側の第1の変位区間では、衝撃吸収装置を構成する引張り側の特定の第1の軸方向変形部材が弾性変形または塑性変形しつつ、前記第1の変位区間の上限において変位が拘束される構成とし、前記第1の変位区間を超え、引張り側の第2の塑性変形領域として設定される引張り側の第2の変位区間では、衝撃吸収装置を構成する引張り側の特定の第2の軸方向変形部材が弾性変形または塑性変形する構成とし、かつ圧縮荷重を受けて、圧縮側の塑性変形領域として設定された圧縮側の変位区間では、衝撃吸収装置を構成する圧縮側の軸方向変形部材が弾性変形または塑性変形する構成としたことを特徴とするものである。
【0018】
請求項1記載の機能分離型衝撃吸収装置において、引張り荷重を受けて、前記第2の軸方向変形部材が第2の変位区間を超え、第3の塑性変形領域として設定される第3の変位区間では、衝撃吸収装置を構成する特定の第3の軸方向変形部材が弾性変形または塑性変形する構成とすることができる。
【0019】
また、請求項1または2記載の機能分離型衝撃吸収装置において、引張りおよび圧縮荷重を受けて、衝撃吸収装置を構成する引張り側の特定の軸方向変位部材が、前記継手部の一方との連結が切り離された状態で実質的に無抵抗に引張り方向および圧縮方向に変位する遊間領域として設定される変位区間を備えた構成とすることができる。
【0020】
さらに、請求項1~3のいずれかひとつの機能分離型衝撃吸収装置において、衝撃吸収装置を構成する引張り側の特定の軸方向変形部材に、設定された引張り荷重で破断する破断誘発部を設けることにより、想定外の引張り荷重を受けた際に損傷が他の部分まで及ぶのを防止することができ、また、これにより早期にかつきわめて経済的に復旧させることができる。この場合の破断誘発部は、断面欠損を目的とした凹部または貫通孔などでよい。
【0021】
軸方向変形部材の材料としては、要求性能に応じて、JIS材である普通鋼に加えて、変形能に優れた低降伏点鋼または形状記憶合金等を用いることができる。
【0022】
本発明の機能分離型衝撃吸収装置は、レベル2地震動以上の地震動での支承の破壊を許容する構成とした橋梁の下部工と上部工との間に設置することができ、さらにレベル2地震動以上の地震動により一方の芯材が破壊したとしても、他方の芯材が衝撃吸収装置として機能するように、芯材の降伏荷重の階層化を行うことで対応できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の機能分離型衝撃吸収装置は、棒状制振部材の衝撃吸収装置の吸収材となる芯材を2つに切り離すことで、それぞれの機能を明確にし、芯材の降伏荷重の階層化が実現できる。また、切り離された芯材間に遊間長を設けることで、常時に対する変形の追随性を付加することに加え、従来のケーブルタイプでは対応ができなかった圧縮力に対しても衝撃吸収が可能となる。
【0024】
さらに、圧縮荷重を受けて、圧縮側の塑性変形領域として設定された圧縮側の変位区間を備え、当該圧縮側の変位区間では、衝撃吸収装置を構成する圧縮側の軸方向変形部材が弾性変形または塑性変形する構成としたことで、材軸方向の引張りおよび圧縮両方向の変形能力とエネルギー吸収能力に優れ、例えば、橋桁の端部と橋桁の端部を支える橋台との間に設置して地震時の衝撃吸収部材として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の機能分離型衝撃吸収装置の第1の実施形態を図示したものであり、図1(a)は初期状態、図1(b)は橋軸方向の引張り力が作用し、左側の芯材が軸降伏後、塑性変形をして作動した状態、図1(c)は仮に継手部を破壊させた場合の最終破壊状態の斜視図である。
図2図1に図示する機能分離型衝撃吸収装置の分解斜視図である。
図3】第1変形芯材の端部の端部を図示したものであり、図3(a)は連結部が破断する前の状態を示す斜視図、図3(b)は連結部が破断した後の状態を示す斜視図である。
図4図4(a),(b)は、それぞれ図1(a)及び図15(a)におけるイ-イ線、ロ-ロ線断面図である。
図5】本発明の衝撃吸収装置の設置例を図示したものであり、橋桁の端部と橋桁を支える橋台との間に設置された機能分離型衝撃吸収装置の側面図である。
図6】橋桁端部と橋台との間に設置された本発明の機能分離型衝撃吸収装置の作動状態のうち引張り変形を示す側面図である。
図7】橋桁端部と橋台との間に設置された本発明の機能分離型衝撃吸収装置の作動状態のうち圧縮変形を示す側面図である。
図8】第1および第2変形芯材と変位芯材の引張りおよび圧縮荷重による挙動を示す説明図である。
図9図8の荷重-変位設計曲線を示すグラフである。
図10図1の機能分離型衝撃吸収装置に橋軸方向の荷重(圧縮および引張力)が作用した際の荷重-変位設計曲線を示すグラフである。圧縮側には橋台があり変位が限定される。引張り側は、設計最大荷重で破断する設計とした事例である。
図11】本発明の機能分離型衝撃吸収装置の第2の実施形態を図示したものであり、図11(a)は初期状態、図11(b)は引張り力が作用し、左側の芯材が軸降伏して作動した状態、図11(c)はその後、右側の芯材が軸降伏後塑性変形をし、仮に継手部を破壊させた場合の最終破壊状態の斜視図である。
図12図11に図示する機能分離型衝撃吸収装置に橋軸方向の荷重(圧縮および引張力)が作用した際の荷重-変位設計曲線を示すグラフである。分割された芯材が降伏荷重の階層化によりそれぞれ軸降伏した後、塑性変形をし、設計最大荷重で破断する設計とした事例である。
図13】本発明の機能分離型衝撃吸収装置の第3の実施形態を図示したものであり、図13(a)は初期状態、図13(b)は引張り力が作用し、左側の芯材が軸降伏して作動した状態の斜視図である。
図14図13に図示する機能分離型衝撃吸収装置に橋軸方向の荷重(圧縮および引張力)が作用した際の荷重-変位設計曲線を示すグラフである。
図15】本発明の機能分離型衝撃吸収装置の第4の実施形態を図示したものであり、図15(a)は初期状態、図15(b)は左側の芯材が軸降伏後、圧縮・引張りの変位を繰り返した後、引張り荷重が右側の芯材の降伏荷重に達して塑性変形をした作動状態の斜視図である。
図16図15に図示する機能分離型衝撃吸収装置に橋軸方向の荷重(圧縮および引張力)が作用した際の荷重-変位設計曲線を示すグラフである。
図17】本発明の機能分離型衝撃吸収装置の第5の実施形態の機能分離型衝撃吸収装置に橋軸方向の荷重(圧縮および引張力)が作用した際の荷重-変位設計曲線を示すグラフである。
図18】本発明の機能分離型衝撃吸収装置の第6の実施形態の衝撃吸収装置に橋軸方向の荷重(圧縮および引張力)が作用した際の荷重-変位設計曲線を示すグラフである。
図19】本発明の機能分離型衝撃吸収装置において芯材として用いられる代表的な鋼材の応力ひずみ曲線を示すグラフである。
図20図20(a)は従来の棒状制振部材としての座屈拘束ブレースの一例(平板芯材の場合)を示す部分透過斜視図、図20(b)は軸直角方向の断面図である。
図21図21(a)は従来の棒状制振部材としての座屈拘束ブレースの他の例(十字芯材の場合)を示す部分透過斜視図、図21 (b)は軸直角方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[実施形態1]
図1図10は、本発明の第1の実施形態であり、機能分離型衝撃吸収装置(以下「落橋防止材」)とその設置例を図示したものである。図において、橋桁1の端部と橋桁1の端部を支える橋台2との間に複数の落橋防止材3と支承4がそれぞれ設置され(図5,6,7参照)、いずれも、橋桁1の橋軸直角方向に間隔をおいて設置されている。符号17は橋桁1と橋台2間の挙動に追従して伸縮する伸縮装置である。
【0027】
落橋防止材3は、落橋防止材3の材軸方向(以下「橋桁1の橋軸方向」)に伸縮する棒状に構成され、橋軸方向の両端部に継手部5と継手部6がそれぞれ取り付けられている。継手部5は橋台2の側面に固定され、継手部6は橋桁1端部の下端面に固定されている。
【0028】
また、また、継手部5と継手部6との間に橋軸引張り方向の荷重によって弾塑性変形する引張り側第1変位区間L1橋軸圧縮方向の荷重によって弾塑性変形する圧縮側の変位区間L 3 がそれぞれ設けられている(図1図8参照)。引張り側第1変位区間L1は継手部5側に、圧縮側の変位区間L 3 は継手部6側にそれぞれ設けられている。
【0029】
圧縮側の変位区間L 3 と継手部6との間に、変位芯材8が引張りおよび圧縮荷重を受けて、軸引張り方向および軸圧縮方向に変位する遊間領域として設定された変位区間L 2 が設けられている。変位区間L 2 引張り側第1変位区間L1および圧縮側変位区間L 3 と同一材軸線上で互いに隣接して設けられている(図1図8参照)。変位芯材8は継手部5との連結が切り離された状態で、実質的に無抵抗で軸引張り方向および軸圧縮方向に変位する
【0030】
引張り側第1変位区間L1と圧縮側変位区間L 3 に第1変形芯材7Aと第2変形芯材7Bがそれぞれ設置され、遊間領域として設定された変位区間L 2 には変位芯材8が設置されている。
【0031】
第1および第2変形芯材7A,7Bは、橋軸方向に連続する単体の細長い平板状に形成され、かつその橋軸方向の両端部に拡径部7a,7b、第1変形芯材7Aと第2変形芯材7B間に拡径部7cがそれぞれ形成されている。拡径部7a,7b,7cは、いずれも断面略十字形状に形成されている。
【0032】
また、第1変形芯材7Aの継手部5側の端部に拡径部7aと同じ幅で継手部5側に延びる平板状の連結部7dが形成され、連結部7dは継手部5に回転自在に連結されている。さらに、拡径部7aと連結部7dとの境界部に破断誘発凹部7eと座屈拘束リブ7fがそれぞれ形成されている(図3(a),(b)参照)。
【0033】
破断誘発凹部7eは、継手部5と6間に橋軸方向の引張り荷重が設計値以上作用した際に、
当該破断誘発凹部7eで計画的に破断させることで、破断等の破損が他の部分に及ばないようにするために設けられており、図示するような凹部の他、単に貫通孔であってもよい。
【0034】
また、座屈拘束リブ7fは、継手部5と6間に作用する橋軸方向の圧縮荷重で、連結部7dが座屈しないように形成されている。当該座屈拘束リブ7fは、連結部7dの上下両面の中央に第1変形芯材7Aの拡径部7a,7aと同一鉛直面内で、拡径部7a,7aの端面と互いに当接するように形成されており、軸圧縮荷重のみを伝達し、引張り荷重は伝達しない。
【0035】
また、第1および第2変形芯材7A,7Bは橋軸方向に作用する引張り荷重に対して、連結部7dより先に弾塑性変形するように形成され、例えば、連結部7dより小径断面に形成されているか、或いは低降伏点鋼(例えば、LY225規格等)等から形成されている(図19参照)。
【0036】
変位芯材8は、橋軸方向に細長く連続する断面略十字形状に形成され、また、橋軸方向の両端部に拡径部8a,8aが形成されている。拡径部8aは変位芯材8より大径の断面略十字形状に形成されている。また、継手部6側の端部に拡径部8aと同じ幅で継手部6側に延びる平板状の連結部8bが形成され、連結部8bは継手部6に回転自在に連結されている。
【0037】
さらに、変位芯材8は橋軸方向の引張り荷重に対して、連結部7dより先に降伏破断しないように形成され、例えば、連結部7dより大断面形に形成されているか、或いは普通鋼(例えば、SM400)などから形成されている(図19参照)。
【0038】
座屈拘束材9は、第1および第2変形芯材7A,7Bと変位芯材8の橋軸方向に連続し、第1および第2変形芯材7A,7Bと変位芯材8の全長とほぼ同等の長さを有し、かつ断面略等辺山形状に形成されている。
【0039】
また、第1および第2変形芯材7A,7Bと変位芯材8の軸直角方向の外側に第1および第2変形芯材7A,7Bと変位芯材8を四方から挟み込むように設置されている。そして、第1および第2変形芯材7A,7Bの拡径部7a,7cおよび変位芯材8の拡径部8a,8aの両側面に複数の締付けボルト10aとガイドボルト10bによって接合され、また、拡径部7a,7c間、拡径部7b,7c間および拡径部8a,8a間において、それぞれスペーサー11を介在し、複数の締付けボルト10aによって互いに接合されている。
【0040】
なお、ガイドボルト10bのボルト孔9aは、橋軸方向に長い長孔に形成されている。また、拡径部8a,8aとスペーサー11間、拡径部8aと7b間に、それぞれ橋軸方向に幅広な遊間Lt,Lcが設けられている。
【0041】
このような構成において、継手部5と継手部6間に作用する橋軸方向の荷重(引張りおよび圧縮荷重)に対し、レベル2に至る大規模の地震エネルギー(想定し得る範囲内で最大規模の地震エネルギー)に対しては、変位芯材8が、継手部5との連結が切り離された状態で橋軸方向に実質的に無抵抗で変位し、座屈拘束材9のボルト孔9aの長孔の範囲内で橋軸方向に相対変位する(図8(a),(b),(c)、図9,10参照)。符号Lt,Lcは、変位芯材8が実施的に無抵抗で変位可能な遊間を示す。
【0042】
これにより、橋桁1と橋台2間で引張りおよび圧縮荷重の伝達は起こらず、橋桁1の端部と橋台2間に作用するレベル2に至る大規模の地震エネルギーを吸収することができる(図10の荷重-変位設計曲線(1)-(2)-(2)'参照)。
【0043】
また、レベル2を超える想定外の地震エネルギー(大地震)に対し、圧縮荷重に対しては、変位芯材8が継手部方向に座屈拘束材9と相対変位して、変位芯材8の拡径部8aの端部が第2変形芯材7Bの拡径部7bの端部に面タッチする(図8(c)参照)。
【0044】
そして、変位芯材8、第2変形芯材7Bおよび座屈拘束材9を介して、継手部5と継手部6間、すなわち橋桁1の端部と橋台2間で圧縮荷重が伝達され、第2変形芯材7Bが橋軸圧縮方向に弾性または塑性変形する(図8(d),(e)、図9,10の荷重-変位設計曲線(2)'-(3)'-(4)'-(5)'参照)。これによりレベル2を越える想定外の地震エネルギー(圧縮荷重)を吸収することができる。
【0045】
なお、その際、第1変形芯材7Aと変位芯材8の外側に複数の座屈拘束材9が設置されていることにより、第1変形芯材7Aと変位芯材8が圧縮荷重で座屈することはない。また、連結部7dの上下面部に座屈拘束リブ7fが形成されていることにより、連結部7dも圧縮荷重で座屈することはない。
【0046】
一方、引張り荷重に対しては、第1変形芯材7Aが橋軸引張り方向に弾塑性変形し(図8(f),(g),、図9,10の荷重-変位設計曲線(2)-(3)-(4)参照)、引張り荷重の増大と共に第1変形芯材7Aの連結部7dが弾性または塑性変形する(図9,10の荷重-変位設計曲線(4)-(5)参照)。これによりレベル2を越える想定外の地震エネルギー(引張り荷重)を吸収することができる。また、引張り荷重がPmaxに達した時点で連結部7dが破断することにより(図8(h)、図9,10の荷重-変位設計曲線((5)参照)、致命的な損傷に至るのを未然に防止することができる。
【0047】
なお、連結部7dは、継手部5と6間に作用する橋軸方向の引張り荷重が予め設定された荷重を越えた時点で破断誘発凹部7eで計画的に破断させることができる。
【0048】
[実施形態2]
図11図12は、本発明の第2の実施形態を図示したものである。図において、各座屈拘束材9が変位芯材8のほぼ中間部で、橋軸方向に座屈拘束材ユニット(以下「ユニット」)9Aと9Bに分割され、かつ各ユニット9Aと9Bが棒状ストッパー12で連結された構成になっている点で、実施形態1の落橋防止材と構成が異なっている。このように構成されていることで、継手部5と6間に作用する想定外の地震エネルギーに対して変位芯材8を塑性変形芯材としても機能させることができる。
【0049】
詳しく説明すると、各座屈拘束材9は、変位芯材8のほぼ中間部を境に継手部5側のユニット9Aと継手部6側のユニット9Bの2本のユニットから形成されている。各ユニット9Aは、第1および第2変形芯材7A,7Bの拡径部7a,7cの側面に複数の締付けボルト10aとガイドボルト10bによって接合され、また、拡径部7a,7c間および拡径部7b,7c間においてスペーサー11を介在し、複数の締付けボルト10aによって互いに接合されている。
【0050】
ユニット9Bは、変位芯材8の継手部6側に位置する拡径部8aの側面にガイドボルト10bによって接合され、かつ拡径部8a,8a間においてスペーサー11を介在し、複数の締付けボルト10aによって互いに接合されている。
【0051】
棒状ストッパー12は、ユニット9Aと9B間の離間距離を制御するための制御部材であり、各ユニット9Aおよびユニット9Bの軸直角方向の外側に橋軸方向とほぼ平行に設置され、かつユニット9Aおよび9Bの両方向に所定長延長されている。
【0052】
各棒状ストッパー12のユニット9B側の端部12bは、ユニット9Bの側部に突設された定着用リブ13に固定され、ユニット9A側の端部12aは、ユニット9Aの側部に突設された定着用リブ14に形成されたルーズ孔(図省略)を貫通し、先端部12aに抜止めストッパー15が取り付けられている。
【0053】
なお、棒状ストッパー12には長ボルト、抜止めストッパー15にはナットがそれぞれ用いられている。また、抜止めストッパー15にゴムなどの緩衝材(図省略)を取り付けることで、ユニット9Aと9B間の離間制限時に緩衝効果を高めることができる。
【0054】
このような構成において、継手部5と継手部6間に作用する橋軸方向の荷重(引張りおよび圧縮荷重)に対し、レベル2に至る規模の地震エネルギーに対しては、変位芯材8が、継手部5との連結が切り離された状態で橋軸方向に実質的に無抵抗で変位し、座屈拘束材9のボルト孔9aの長孔の範囲内で橋軸方向に相対変位する(図8(a),(b),(c)参照)。
【0055】
これにより、橋桁1と橋台2間で引張りおよび圧縮荷重の伝達は起こらず、橋桁1の端部と橋台2間に作用するレベル2に至る規模の地震エネルギーを吸収することができる(図12の荷重-変位設計曲線(1)-(2)-(2)'参照)。
【0056】
また、レベル2を超える想定外の地震エネルギー(大地震)に対し、圧縮荷重に対しては、変位芯材8が継手部方向に座屈拘束材9と相対変位して、拡径部8aの端部が第2変形芯材7Bの拡径部7bの端部に面タッチする(図8(c)参照)。
【0057】
そして、変位芯材8、第2変形芯材7Bおよび座屈拘束材9を介して、継手部5と継手部6間、すなわち橋桁1の端部と橋台2間で圧縮荷重が伝達され、第2変形芯材7Bが橋軸圧縮方向に弾性または塑性変形する(図12の荷重-変位設計曲線(2)'-(3)'-(4)'-(5)'-(6)'参照)。これによりレベル2を越える想定外の地震エネルギー(圧縮荷重)を吸収することができる。
【0058】
一方、引張り荷重に対しては、第1変形芯材7Aが橋軸引張り方向に弾塑性変形する(図12の荷重-変位設計曲線(2)-(3)-(4))し、さらに、引張り荷重が設計荷重Py2に達すると(図12の荷重-変位設計曲線(4)-(5))、変位芯材8が軸降伏して塑性変形することで衝撃吸収に寄与する。また、引張り荷重が設計最大荷重Pmaxに達した時点で継手部5側の連結部7dが破断することにより(図12の荷重-変位設計曲線(5)-(6)参照)、致命的な損傷に至るのを未然に防止することができる。
【0059】
なお、変位芯材8と座屈拘束材9間の相対変位がボルト孔9aの長孔の範囲を超えた時点で、継手部5と継手部6間に作用する橋軸方向の引張り荷重は、座屈拘束材9を介して変位芯材8に伝達される。また、ユニット9Aと9B間に棒状ストッパー12が設置されていることにより、変位芯材8が第1変形芯材7Aの連結部7dより先に破断してしまうことはない。但し、設計制御として耐力の階層化を行うことで棒状ストッパー12の軸部を破断させることは可能である。
【0060】
[実施形態3]
図13図14は、本発明の第3の実施形態を図示したものである。図において、各座屈拘束材9が第1変形芯材7Aのほぼ中間部で、橋軸方向に座屈拘束材ユニット(以下「ユニット」)9Aと9Bに分割され、かつユニット9Aと9Bが棒状ストッパー12で連結された構成になっている点でのみ、実施形態1の落橋防止材と構成が異なっている。
【0061】
詳しく説明すると、各座屈拘束材9は、第1変形芯材7Aのほぼ中間部を境に継手部5側のユニット9Aと継手部6側のユニット9Bの2本のユニットより形成されている。
【0062】
各ユニット9Aは、第1変形芯材7Aの継手部5側の拡径部7aの側面部に複数の締付けボルト10aによって接合され、かつ拡径部7a,7c間においてスペーサー11を介在し、複数の締付けボルト10aによって互いに接合されている。
【0063】
各ユニット9Bは、第1および第2変形芯材7A,7B間の拡径部7cの側面部および変位芯材8の継手部6側に位置する拡径部8aの側面に複数の締付けボルト10aとガイドボルト10bによって接合され、かつ第2変形芯材7Bの拡径部7b,7c間と変位芯材8の拡径部8a,8a間においてスペーサー11を介在し、複数の締付けボルト10aによって互いに接合されている。ガイドボルト10bのボルト孔9aは橋軸方向に長軸を有する長孔に形成されている。
【0064】
棒状ストッパー12は、ユニット9Aと9B間の離間距離を制御するための制御部材であり、各ユニット9Aおよびユニット9Bの軸直角方向の外側に橋軸方向とほぼ平行に設置され、かつユニット9Aおよび9Bの両方向に所定長延長されている。
【0065】
各棒状ストッパー12のユニット9B側の端部12bは、ユニット9Bの側部に突設された定着用リブ13に固定され、ユニット9A側の端部12aは、ユニット9Aの側部に突設された定着用リブ14に形成されたルーズ孔(図省略)を貫通し、その先端部12aに抜止めストッパー15が取り付けられている。
【0066】
なお、棒状ストッパー12には長ボルト、抜止めストッパー15にはナットがそれぞれ用いられている。また、抜止めストッパー15にゴムなどの緩衝材(図省略)を取り付けることで、変位制限時に緩衝効果を高めることができる。
【0067】
このような構成において、継手部5と継手部6間に作用する橋軸方向の荷重(引張りおよび圧縮荷重)に対し、レベル2に至る規模の地震エネルギーに対しては、変位芯材8が、継手部5との連結が切り離された状態で橋軸方向に実質的に無抵抗で変位し、座屈拘束材9のボルト孔9aの長孔の範囲内で橋軸方向に相対変位する(図8(a),(b),(c)参照)。
【0068】
これにより、橋桁1と橋台2間で引張りおよび圧縮荷重の伝達は起こらず、橋桁1の端部と橋台2間に作用するレベル2に至る規模の地震エネルギーを吸収することができる(図14の荷重-変位設計曲線(1)-(2)-(2)'参照)。
【0069】
また、レベル2を超える想定外の地震エネルギー(大地震)に対し、圧縮荷重に対しては、変位芯材8が継手部方向に座屈拘束材9と相対変位して、変位芯材8の拡径部8aの端部が第2変形芯材7Bの拡径部7bの端部に面タッチする(図8(c)参照)。
【0070】
そして、変位芯材8、第2変形芯材7Bおよび座屈拘束材9を介して、継手部5と継手部6間、すなわち橋桁1の端部と橋台2間で圧縮荷重が伝達されることにより、第2変形芯材7Bが橋軸圧縮方向に弾性または塑性変形する(図14の荷重-変位設計曲線(2)'-(3)'-(4)'-(5)'参照)。
【0071】
一方、引張り荷重に対しては、第1変形芯材7Aと変位芯材8が橋軸引張り方向に弾塑性変形し(図14の荷重-変位設計曲線(2)-(3)-(4)参照)、さらに、ユニット9Aと9B間の離間距離が変位制御されると荷重が立ち上がり、最終的に設計最大荷重Pmaxに達した時点で継手部5側の連結部7dが破断することにより(図14の荷重-変位設計曲線(4)-(5)参照)、致命的な損傷に至るのを未然に防止することができる。
【0072】
なお、変位芯材8と座屈拘束材9間の相対変位がボルト孔9aの長孔の範囲を超えた時点で、継手部5と継手部6間に作用する橋軸方向の引張り荷重は、座屈拘束材9を介して変位芯材8に伝達される。また、ユニット9Aと9B間に棒状ストッパー12が設置されていることにより、第1変形芯材7Aが連結部7dより先に破断してしまうことはない。
【0073】
[実施形態4]
図15図16は、本発明の第4の実施形態である。図において、変位芯材8に代えて変形芯材16が設置され、また、第1変形芯材7Aの弾塑性変形領域を広く設定することによりダンパー機能が付与されている点で実施形態1の落橋防止材と異なっている。
【0074】
詳しく説明すると、第1変形芯材7Aは、第2変形芯材7Bおよび変形芯材16より長尺に形成され、これにより第1変形芯材7Aの弾塑性変形領域が広くなり、継手部5と6間に作用する地震エネルギーを減衰させるダンパー機能を備えている。それ以外については、第1変形芯材7Aと基本的に同一に形成されている。
【0075】
また、変形芯材16は、橋軸方向に細長く連続する断面略十字形状に形成され、かつ橋軸方向の両端部に拡径部16a,16aが形成されており、基本的に変位芯材8とほぼ同じ形状に形成されている。
【0076】
また、変形芯材16は、第2変形芯材7Bの継手部6側に第2変形芯材7Bと隣接して設置され、継手部6側の端部に拡径部16aと同じ幅で継手部6側に延びる平板状の連結部16bが形成され、連結部16bは継手部6に回転自在に連結されている。
【0077】
さらに、継手部5と継手部6間に作用する橋軸方向の引張り荷重に対して、第1変形芯材7Aの連結部7dより先に降伏破断しないように形成され、例えば、連結部7dより大断面径に形成されているか、或いは普通鋼(例えば、SM400)などから形成されている(図19参照)。
【0078】
なお、これらの部材は、設計の要求性能に応じて適宜選択、または組み合わせて使用することが望ましく、例えば同じ鋼材でも普通鋼あるいは低降伏点鋼や形状記憶合金では鋼材の降伏応力、伸び性能に違いがある(図18参照)。また、低ひずみの繰り返しを受ける場合は、これらの累積損傷度の度合いを主眼にした選定が望ましい。
【0079】
また、これらの部材断面の強度の階層化を行うことにより、塑性化させる順番を設計制御することが可能となる。例えば、同一鋼材の選定をした場合に断面積は、第1変形芯材7Aが一番小さく、続いて変形芯材16、第1変形芯材7Aの連結部7dの順で大きく、連結部16bの断面積が一番大きくなるように形成することで、これらの部材をこの順番で弾塑性変形させることができる。
【0080】
このような構成において、レベル2に至る規模の地震エネルギーに対しては、継手部5と継手部6間に作用する橋軸方向の軸力(引張りおよび圧縮荷重)に対し、第1変形芯材7Aが弾塑性変形する(図16の荷重-変位設計曲線(1)-(2)-(3) (4)-(5)-(6) -(7)参照)。これにより、継手部5と継手部6間に作用するレベル2に至る大規模の地震エネルギーを吸収することができる。
【0081】
また、レベル2を越える想定外の地震エネルギーに対し、圧縮荷重に対しては、変形芯材16がボルト孔9aの長孔の範囲で継手部5方向に座屈拘束材9と相対変位することにより、変形芯材16の拡径部16aの端部が第2変形芯材7Bの拡径部7bの端部に面タッチする(図8(c)参照)。
【0082】
そして、変形芯材16、第2変形芯材7Bおよび座屈拘束材9を介して、継手部5と継手部6間、すなわち橋桁1の端部と橋台2間で圧縮荷重が伝達され、第2変形芯材7Bが橋軸圧縮方向に弾性または塑性変形する(図16の荷重-変位設計曲線(8)'-(9)'-(10)'参照)。これによりレベル2を越える想定外の地震エネルギー(圧縮荷重)を吸収することができる。
【0083】
一方、引張り荷重に対しては、変形芯材16が長孔16aの範囲で橋軸引張り方向に弾塑性変形し(図16の荷重-変位設計曲線(3)-(8)-(9)参照)、さらに、第1変形芯材7Aの連結部7dが弾性または塑性変形する(図16の荷重-変位設計曲線(9)-(10)参照)。これによりレベル2を越える想定外の地震エネルギー(引張り荷重)を吸収することができる。また、引張り荷重がPmaxに達した時点で連結部7dが破断することにより、致命的な損傷に至るのを未然に防止することができる。
【0084】
なお、第1変形芯材7Aの弾塑性変形がボルト孔9aの範囲を超えた時点で、継手部5と継手部6間に作用する引張り荷重は座屈拘束材9を介して変形芯材16に伝達される。
【0085】
[実施形態5]
図17は、本発明の第5の実施形態であり、第4の実施形態において、各座屈拘束材9を変形芯材16のほぼ中間部で、橋軸方向に2本の座屈拘束ユニットに分割すると共に、各ユニットどうしをユニット間の離間を制御する棒状ストッパーでそれぞれ連結した場合の設計事例であり、荷重-変位設計曲線を示している。
【0086】
[実施形態6]
図18は、本発明の第6の実施形態であり、第4の実施形態において、変形芯材16に代えて実施形態1における変位芯材8を設置することにより、無抵抗で軸方向に変位する遊間領域を設定した場合の設計事例であり、荷重-変位設計曲線を示している。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、地震時の引張りおよび圧縮両方向の荷重に対する変形能力およびエネルギー吸収能力がきわめて大きく、想定し得る範囲内で最大規模の地震(レベル2の地震動)に対してだけでなく、レベル2の範囲を超える想定外の大地震に対しても対応が可能で、例えば、橋桁の端部と橋桁端部を支える橋台との間に取り付けられる落橋防止材として用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 橋桁の端部
2 橋台
3 落橋防止材(機能分離型衝撃吸収装置)
4 支承
5 継手部
6 継手部
7A 第1変形芯材(軸方向変形部材)
7B 第2変形芯材(軸方向変形部材)
7a 拡径部
7b 拡径部
7c 拡径部
7d 連結部
7e 破断誘発凹部(破断誘発部)
7f 座屈拘束リブ
8 変位芯材(軸方向変位部材)
8a 拡径部
8b 連結部
9 座屈拘束材
9A ユニット(座屈拘束材ユニット)
9B ユニット(座屈拘束材ユニット)
9a ボルト孔
10a 締付けボルト
10b ガイドボルト
11 スペーサー
12 棒状ストッパー
13 定着用リブ
14 定着用リブ
15 抜止めストッパー
16 変形芯材(軸方向変形部材)
16a 拡径部
16b 連結部
17 伸縮装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21