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特許7017890水位連動回転数自動追随型の洗濯方法及び洗濯装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】水位連動回転数自動追随型の洗濯方法及び洗濯装置
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/32 20200101AFI20220202BHJP
   D06F 33/52 20200101ALI20220202BHJP
   D06F 23/02 20060101ALI20220202BHJP
   D06F 103/18 20200101ALN20220202BHJP
   D06F 105/48 20200101ALN20220202BHJP
【FI】
D06F33/32
D06F33/52
D06F23/02
D06F103:18
D06F105:48
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017176421
(22)【出願日】2017-09-14
(65)【公開番号】P2019050987
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000133445
【氏名又は名称】株式会社ダスキン
(74)【代理人】
【識別番号】100084342
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 久巳
(72)【発明者】
【氏名】芝原 孝憲
(72)【発明者】
【氏名】松田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】石井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】青鹿 夏樹
【審査官】関口 知寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-043259(JP,A)
【文献】特開2011-245211(JP,A)
【文献】特開2016-077622(JP,A)
【文献】特開2005-087466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00-95/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するドラムを有する洗濯機を用いた洗濯方法であり、洗濯工程が進行する中で変動する洗濯機内の水位を計測して、前記ドラムの回転数を前記水位の関数としての水位連動回転数に追随させる洗濯方法であり、
2パターン以上の洗濯パターンから1つの洗濯パターンを選択して実行するステップを有し、各々の前記洗濯パターンは少なくとも洗濯パターン中に1工程の水位連動洗濯工程を有し、各々の水位連動洗濯工程における前記水位の関数としての水位連動回転数は、その水位連動洗濯工程がどの洗濯パターンに含まれているかによって決まる関数であり、複数の水位連動洗濯工程が同一の洗濯パターンに含まれていれば、前記水位の関数としての水位連動回転数は、それらの複数の水位連動洗濯工程を通じて共通の関数で与えられ、前記水位の関数としての水位連動回転数が前記水位の1次関数である場合にはその1次関数の傾き、前記水位の関数としての水位連動回転数が前記水位の略1次関数である場合にはその略1次関数を直線近似する1次関数を選定した場合のその1次関数の傾きが、少なくとも2パターン以上の前記洗濯パターンについて共通の傾き又は相互に近似する傾きであることを特徴とする水位連動回転数自動追随型洗濯方法。
【請求項2】
ケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に配設されたドラムと、前記ケーシング内の水位を計測する水位計測手段と、前記ドラムの回転数を制御する回転数制御手段と、前記水位の関数としての水位連動回転数を記憶する水位連動回転数記憶手段を少なくとも有し、前記回転数制御手段は洗濯工程が進行する中で、前記回転数を、前記水位の関数としての水位連動回転数に追随させる洗濯装置であり、
2パターン以上の洗濯パターンを記憶する洗濯パターン記憶手段と、2パターン以上の洗濯パターンから1つの洗濯パターンを選択して実行する洗濯パターン選択実行手段を有し、各々の前記洗濯パターンは少なくとも1工程の水位連動洗濯工程を有し、各々の水位連動洗濯工程における前記水位の関数としての水位連動回転数は、その水位連動洗濯工程がどの洗濯パターンに含まれているかによって決まる関数であり、複数の水位連動洗濯工程が同一の洗濯パターンに含まれていれば、前記水位の関数としての水位連動回転数は、それらの複数の水位連動洗濯工程を通じて共通の関数で与えられ、前記水位の関数としての
水位連動回転数が前記水位の1次関数である場合にはその1次関数の傾き、前記水位の関数としての水位連動回転数が前記水位の略1次関数である場合にはその略1次関数を直線近似する1次関数を選定した場合のその1次関数の傾きが、少なくとも2パターン以上の前記洗濯パターンについて共通の傾き又は相互に近似する傾きであることを特徴とする水位連動回転数自動追随型洗濯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモップやマット等の被洗物の洗浄効率を向上させる洗濯方法及び洗濯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄効率を向上させる従来技術として、特開2016-77622号公報(特許文献1)がある。本発明は、特許文献1の発明を発展させた洗濯方法及び洗濯装置に関する。
特許文献1の洗濯方法は、ドラム式の洗濯機において、被洗物の商品種ごとに洗浄効率を最大にする最適回転数を、人工汚染布の洗濯前後の光学的反射率から実験的に求め、或いは、被洗物が描く放物軌道の態様から視覚的に求めて、ドラムをその最適回転数で回転させて洗濯する方法である。
【0003】
特許文献1の洗濯方法では、上記最適回転数が被洗物の商品種によって異なることは開示されているものの、給水、洗い、すすぎ、排水等の各洗濯工程の設定水位や洗濯工程中の水位変動によって上記最適回転数が時々刻々と変動し得ることは明確には認識されておらず、改良の余地がある。モップやマットのレンタル業界においては、使用済商品はひどく汚れており、リサイクルのための洗浄を常に最大の洗浄効率で行って、洗浄性の向上、使用薬品量の節減、洗濯温度の低温化、使用電力量の節減、洗濯水量の節減を実現する必要があるからである。
【0004】
洗浄効率を向上させる別の従来技術として、実登2558176号公報(特許文献2)がある。特許文献2の洗濯機は、汚れのひどい物は高速回転し、汚れの少ない物は遅く回転し、生地のいたみ易いものは更に遅く回転するなど、異なる種類の被洗物に対して、適する洗濯回転速度を選べる制御装置により駆動されることを特徴とする。しかし、特許文献2には、上記の適する洗濯回転速度が水位に依存して変動し得ることは開示されていない。
【0005】
洗浄効率を向上させる更に別の従来技術として、特開平6-63285号公報(特許文献3)がある。特許文献3のドラム式の洗濯機は、洗濯時間を短縮するためにドラムの回転速度を速くすると、被洗物がドラムの内周面に張りついて洗濯効果が低下する問題を解決することを目指している。この洗濯機は、ドラムの1回転中の回転速度を可変として、被洗物が下部から上部に持ち上げられる際には高速回転とし、上部から下部へと落下する際には低速回転とすることで、洗濯時間の短縮と被洗物の張りつき防止の両立を図るものである。
しかし、特許文献3には、最適な回転速度が水位とともに変動し得るというアイデアは開示されていない。
【0006】
洗浄効率を向上させる更に別の従来技術として、特開平7-178280号公報(特許文献4)がある。特許文献4の洗濯機はドラム式ではなく縦型の洗濯機であり、給・排水工程中も洗浄又はすすぎを行うことで時間短縮を可能とすることを目指している。この洗濯機は、洗濯時に水を洗濯槽の中に給水しながら回転翼を低速回転させ、水位の上昇とともに回転翼の回転数を多段階に或いは連続的に上昇させ、所定水位に達したならば給水弁を閉じ回転翼を所定回転数で回転させ、その後排水しながら回転翼の回転数を多段階に或いは連続的に下げ、所定の水位まで水位が下がったなら回転翼を停止する洗濯機である。
【0007】
特許文献4には、水位の上昇或いは下降に並行して回転翼の回転数を上昇或いは下降させる、という技術的思想は開示されている。しかし、その目的は、回転翼を回転させても
布傷みが生じないような最低限の水位を確保することである(段落0012等)。つまり、同文献には、洗浄効率を最大にする最適回転数と言うアイデアも、最適回転数が水位に依存することも、ドラムの回転数を洗濯機内の水位に依存した最適回転数にリアルタイムで追随させて洗濯するという技術的思想も、一切開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-77622号公報
【文献】実登2558176号公報
【文献】特開平6-63285号公報
【文献】特開平7-178280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、特許文献1には、洗浄効率を最大にする回転数として実験的或いは視覚的に求められるドラムの最適回転数が、商品種に依存することは開示されているが、上記最適回転数が、洗濯工程の設定水位や洗濯工程中の水位変動によって変動し得るものであることは明確には認識されず、改良の余地がある。
特許文献2は、異なる種類の被洗物に対して、適する洗濯回転速度を選ぶことを開示しているが、上記の適する洗濯回転速度が水位に依存して変動し得ることは開示していない。
特許文献3は、ドラムの1回転中の回転速度を可変として洗濯時間の短縮と被洗物の張りつき防止の両立を図ることを開示しているが、最適な回転速度が水位とともに変動し得るというアイデアは開示していない。
特許文献4には、回転翼を回転させても布傷みが生じないような最低限の水位を確保するために、水位の上昇或いは下降に並行して回転翼の回転数を上昇或いは下降させることは開示されているが、洗浄効率を最大にする最適回転数と言うアイデアも、最適回転数が水位に依存することも一切、開示されていない。
【0010】
本発明者は、特許文献1の洗濯方法を実施し、その改良発展を模索する中で、被洗物の商品種及び投入負荷量と洗い方が同じであれば、洗い工程やすすぎ工程、加工工程等の各洗濯工程ごとに実験的又は視覚的に決定される上記の最適回転数が、各洗濯工程における設定水位によって決まり、上記設定水位の1次関数又は略1次関数という簡単な関数で与えられることを発見した。そして、この水位の1次関数又は略1次関数で与えられるドラムの回転数を、最大メカニカルアクション回転数、又は、より広い意味で水位連動回転数と呼ぶことにした。
【0011】
なお、所与の条件のもとで1つ又は複数の課題を達成するために採用されるのが水位の関数としての水位連動回転数であり、水位の関数としての水位連動回転数のうち、所与の条件のもとで洗浄効率を最大化するという特定の課題を達成するために採用されるのが水位の関数としての最大メカニカルアクション回転数である。
最大メカニカルアクション回転数以外の水位連動回転数の例としては、例えば、ある一定水準以上の洗浄性を確保しつつ、使用水量若しくは使用電力量を最小化するという課題を達成するための、水位の関数としての水位連動回転数が挙げられる。
【0012】
そして、給水工程や排水工程においては洗濯工程中に水位が上昇又は下降して変動すること、及び、通常は一定の水位設定がなされる洗い工程やすすぎ工程においても、被洗物による保水や、水位低下に伴う補充給水、昇温用蒸気の凝結、薬品の投入等により洗濯工程中に水位が変動し得ることを考慮して、変動する水位を計測しながら、ドラムの回転数をリアルタイムで、水位の関数としての最大メカニカルアクション回転数に自動的に追随
させて洗濯を行ったところ、従来と比べて約16%の洗浄率の向上を達成できることがわかった。又、従来と比べて約15%短い洗濯時間で、同程度の洗浄率を確保できることがわかった。
【0013】
従って、本発明の目的は、回転するドラムを有する洗濯機において、洗濯工程が進行する中で変動する洗濯機内の水位を計測して、ドラムの回転数を前記水位の関数としての水位連動回転数に自動的に追随させて洗濯することで、洗浄性の向上と洗濯時間の短縮を実現できる洗濯方法及び洗濯装置を提供することである。
本発明の目的は更に、上記の洗濯方法及び洗濯装置を応用して、使用薬品量の削減、洗濯温度の低温化、使用水量の節減、また使用電力量の節減を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記の目的を達成するために為されたものであり、本発明の第1の形態は、回転するドラムを有する洗濯機を用いた洗濯方法であり、洗濯工程が進行する中で変動する洗濯機内の水位を計測して、前記ドラムの回転数を前記水位の関数としての水位連動回転数に追随させることを特徴とする水位連動回転数自動追随型洗濯方法である。
本発明は、回転数をリアルタイムで制御可能な洗濯機を対象とし、例えばインバータ等により回転数が可変な洗濯機を用いた洗濯方法である。
【0015】
本発明の第2の形態は、回転するドラムを有する洗濯機を用いた洗濯方法であり、洗濯パターン中に2工程以上の水位連動洗濯工程を含み、前記水位連動洗濯工程が進行する中で変動する洗濯機内の水位を計測して、前記ドラムの回転数を前記水位の関数としての水位連動回転数に追随させ、前記水位の関数としての前記水位連動回転数は、前記洗濯パターン中の2工程以上の前記水位連動洗濯工程を通じて共通の関数で与えられることを特徴とする水位連動回転数自動追随型洗濯方法である。
【0016】
洗濯パターンは、加工工程(例えば、水位レベル2又は4)、洗い工程(例えば、水位レベル6)、すすぎ工程(例えば、水位レベル8)や、給水工程、排水工程、脱水工程等の一連の洗濯工程からなり、脱水工程以外の洗濯工程には設定水位又は水位変動プロファイルが定められ、前記設定水位又は前記水位変動プロファイルに従って前記洗濯工程中の水位の制御がなされる。
【0017】
洗濯パターンを構成する一連の洗濯工程の各々は、水位連動洗濯工程であるか非水位連動洗濯工程であるかのいずれかであり、水位連動洗濯工程においては、変動する洗濯機内の水位を計測して、ドラムの回転数を前記水位の関数としての水位連動回転数に自動的に追随させて洗濯が行われる。又、非水位連動洗濯工程においては、従来のように、設定回転数で、又は回転数変動プロファイルに従って、ドラムを回転させて洗濯が行われる。脱水工程は非水位連動洗濯工程である。脱水工程以外の洗濯工程は、水位連動洗濯工程となり得る。
【0018】
本発明の第3の形態は、前記水位の関数としての前記水位連動回転数が、被洗物の洗浄効率を最大にする最大メカニカルアクション回転数である水位連動回転数自動追随型洗濯方法である。
上記最大メカニカルアクション回転数は、特許文献1で見出された、洗浄効率を最大にする洗濯工程ごとの最適回転数と密接に関係し、水位に応じて決まる回転数であり、実験的方法又は視覚的方法によって決定される。
実験的方法によって決定される最大メカニカルアクション回転数は、洗濯前後での人工汚染布の光学的反射率の測定結果等から計算される洗浄率が最大となる洗濯工程ごとの最適回転数をよく近似する、水位の1次関数又は略1次関数で表されるドラムの回転数である。視覚的方法によって決定される最大メカニカルアクション回転数は、揉み洗いの場合
には観察される被洗物の放物軌道距離が最大になるドラムの回転数であり、タタキ洗いの場合には観察される被洗物の放物軌道の頂点が最高位置になり、落下高さが最大になるドラムの回転数である。
【0019】
揉み洗いの場合、被洗物は主として集団状態で揉み洗いされながら放物軌道を描いて水面若しくはドラムの内周面に向けて落下してゆき、揉み洗い時間が最大になるために放物軌道に沿った放物軌道距離が最大になるドラムの回転数が被洗物の洗浄効率を最大にする最大メカニカルアクション回転数を与える。また、タタキ洗いの場合、被洗物は主として個々バラバラに放物軌道を描いて水面若しくはドラムの内周面に向けて落下してタタキ洗いされ、タタキ洗いの衝撃が最大になるために放物軌道の頂点が最高位置になって落下高さが最大になるドラムの回転数が被洗物の洗浄効率を最大にする最大メカニカルアクション回転数を与える。
【0020】
上記最大メカニカルアクション回転数は一般に、上記水位のほか、揉み洗いかタタキ洗いかといった洗い方、ドラムの半径、ドラム(内胴)とケーシング(外胴)の間の内外胴間クリアランス(隙間距離)、被洗物の商品種及び投入負荷量、ビータの形状及び個数にも依存する。
【0021】
本発明の第4の形態は、前記水位連動回転数が前記水位の1次関数又は略1次関数で与えられる水位連動回転数自動追随型洗濯方法である。
【0022】
本発明の第5の形態は、2パターン以上の洗濯パターンから1つの洗濯パターンを選択して実行するステップを有し、各々の前記洗濯パターンは少なくとも洗濯パターン中に1工程の水位連動洗濯工程を有し、各々の水位連動洗濯工程における前記水位の関数としての水位連動回転数は、その水位連動洗濯工程がどの洗濯パターンに含まれているかによって決まる関数であり、複数の水位連動洗濯工程が同一の洗濯パターンに含まれていれば、前記水位の関数としての水位連動回転数は、それらの複数の水位連動洗濯工程を通じて共通の関数で与えられ、前記水位の関数としての水位連動回転数が前記水位の1次関数である場合にはその1次関数の傾き、前記水位の関数としての水位連動回転数が前記水位の略1次関数である場合にはその略1次関数を直線近似する1次関数を適切に選定した場合のその1次関数の傾きが、少なくとも2パターン以上の前記洗濯パターンについて共通の傾き又は相互に近似する傾きである水位連動回転数自動追随型洗濯方法である。
ここで、2つ以上の上記の傾きk1,k2,…が相互に近似する傾きであるとは、いずれも正の傾きであるk1,k2,…のうち、最大の傾きが、最小の傾きの1.00倍以上1.05倍以下の範囲に含まれることをいう。
【0023】
本発明の第6の形態は、ケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に配設されたドラムと、前記ケーシング内の水位を計測する水位計測手段と、前記ドラムの回転数を制御する回転数制御手段と、前記水位の関数としての水位連動回転数を記憶する水位連動回転数記憶手段を少なくとも有し、前記回転数制御手段は洗濯工程が進行する中で、前記回転数を、前記水位の関数としての水位連動回転数に追随させることを特徴とする水位連動回転数自動追随型洗濯装置である。
【0024】
本発明の第7の形態は、ケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に配設されたドラムと、前記ケーシング内の水位を計測する水位計測手段と、前記ドラムの回転数を制御する回転数制御手段と、前記水位の関数としての水位連動回転数を記憶する水位連動回転数記憶手段と、タイマーと、洗濯パターン中に1工程以上持つ水位連動洗濯工程における設定水位又は水位変動プロファイルを記憶する設定水位記憶手段と、前記タイマーと前記設定水位又は前記水位変動プロファイルに従って前記水位を調節する水位調節手段を少なくとも有し、前記回転数制御手段は前記水位連動洗濯工程において、前記回転数を、前記水
位の関数としての水位連動回転数に追随させることを特徴とする水位連動回転数自動追随型洗濯装置である。
【0025】
本発明の第8の形態は、前記水位の関数としての前記水位連動回転数が、被洗物の洗浄効率を最大にする最大メカニカルアクション回転数である水位連動回転数自動追随型洗濯装置である。
【0026】
本発明の第9の形態は、前記水位連動回転数が前記水位の1次関数又は略1次関数で与えられる水位連動回転数自動追随型洗濯装置である。
【0027】
本発明の第10の形態は、2パターン以上の洗濯パターンを記憶する洗濯パターン記憶手段と、2パターン以上の洗濯パターンから1つの洗濯パターンを選択して実行する洗濯パターン選択実行手段を有し、各々の前記洗濯パターンは少なくとも1工程の水位連動洗濯工程を有し、各々の水位連動洗濯工程における前記水位の関数としての水位連動回転数は、その水位連動洗濯工程がどの洗濯パターンに含まれているかによって決まる関数であり、複数の水位連動洗濯工程が同一の洗濯パターンに含まれていれば、前記水位の関数としての水位連動回転数は、それらの複数の水位連動洗濯工程を通じて共通の関数で与えられ、前記水位の関数としての水位連動回転数が前記水位の1次関数である場合にはその1次関数の傾き、前記水位の関数としての水位連動回転数が前記水位の略1次関数である場合にはその略1次関数を直線近似する1次関数を適切に選定した場合のその1次関数の傾きが、少なくとも2パターン以上の前記洗濯パターンについて共通の傾き又は相互に近似する傾きである水位連動回転数自動追随型洗濯装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の第1の形態によれば、回転するドラムを有する洗濯機を用いた洗濯方法であって、洗濯工程が進行する中で変動する洗濯機内の水位を計測して、前記ドラムの回転数を前記水位の関数としての水位連動回転数に追随させることを特徴とする水位連動回転数自動追随型洗濯方法を提供することができる。
【0029】
洗濯の際には、洗浄性の向上、洗濯時間の短縮、使用電力量の節減、使用薬品量の節減、洗濯温度の低温化、また使用水量の節減といった種々の課題の達成を総合考慮する必要がある。本発明者は、このような課題を達成する上で、洗濯工程が進行する中で変動する洗濯機内の水位を計測して、ドラムの回転数を、前記水位の関数としての水位連動回転数に自動的に追随させる洗濯方法が、従来の、各洗濯工程ごとに一定の回転数と水位を設定する方法よりも効果的であることを見出した。
【0030】
一例として、洗浄効率の向上という課題を例にとれば、所与の条件のもとで洗浄効率を最大にするドラムの回転数は、洗濯機内の水位に依存する。例えば被洗物の種類がモップで洗い方がタタキ洗いの場合、回転するドラムの上部でドラムの内周面から離れたモップが放物軌道の最高点に達した後に自由落下して水面若しくはドラムの内周面に叩きつけられるまでの高度差が最大となる回転数が、洗浄効率を最大とする回転数、すなわち上記課題を達成するために最適化された水位連動回転数であるが、この水位連動回転数は上記水位に依存するからである。なお、洗浄効率を最大とする上記回転数は一般に、上記水位のほか、ドラムの半径、被洗物の商品種及び投入負荷量、ドラムの内周面に凸設されるビータの形状及び個数などにも依存する。
【0031】
洗濯時間の短縮のためには、給・排水工程のように水位が変動する洗濯工程中もドラムを回転させて洗濯やすすぎを実施することが望ましい。又、洗い工程やすすぎ工程や加工工程のように通常は一定の設定水位で実施される洗濯工程においても、被洗物による保水や、水位低下に伴う補充給水、昇温用蒸気の凝結、薬品の投入等の原因によって、水位の
変動が起き得る。
【0032】
変動する水位を計測して、ドラムの回転数を、洗浄性の向上等の、1つ又は複数の課題の達成のために最適化された水位連動回転数に自動的に追随させることで、従来のように、一定の設定回転数又は洗濯工程ごとに一定の設定回転数で洗濯するよりも、より良く上記1つ又は複数の課題を達成することができる。
【0033】
ここで、本発明と特許文献4の発明の相違点について説明する。既述の通り、特許文献4には、水位の上昇或いは下降に並行して回転翼の回転数を上昇或いは下降させる、という技術的思想は開示されている。しかし、その目的は、回転翼を回転させても布傷みが生じないような最低限の水位を確保することである。同文献には、洗浄効率を最大にする最適回転数、若しくはより一般に水位連動回転数というアイデアも、水位連動回転数が水位の関数であることも、ドラムの回転数を洗濯機内の水位に依存した水位連動回転数にリアルタイムで追随させて洗濯するという技術的思想も、一切開示されていない。特許文献4が水位で決まる最適回転数若しくは水位連動回転数という技術的思想を仮に有しているならば、水位が上昇中であるか下降中であるかによらず、同じ水位ならば同じ最適回転数若しくは水位連動回転数でドラムを回転させることが開示されているはずであるが、同文献にはその旨の記載も示唆も一切ない。
そもそも特許文献4の自動洗濯機は、家庭用洗濯機であり、回転軸が鉛直方向に向く縦型洗濯機であり、水位がゼロ若しくは極めて低下した場合に回転翼が回転していると被洗濯物が破れるなどの損傷を受けるから水位の上昇や下降に並行して回転数を変更するものでしかない。本発明が主に対象として想定している業務用洗濯機は一般にドラムの回転軸が鉛直方向ではなく回転翼も有さないから、水位がゼロ若しくは極めて低下した場合であってもドラムの回転により被洗濯物が損傷を受けることがない。従って、ドラムの回転数を変更する目的も、回転数と水位の関係性も、家庭用と業務用とでは全く異なると言わざるを得ない。
もっとも、本発明の対象は業務用洗濯機に限られるわけではなく、回転翼を有さない洗濯機に限られるわけでもない。変動する水位を計測して、ドラムの回転数を、水位に依存して決まる最適な回転数若しくはより一般に水位連動回転数にリアルタイムで追随させる、というアイデアが適用可能な洗濯機であれば、本発明の対象となり得る。
【0034】
本発明の第2の形態によれば、回転するドラムを有する洗濯機を用いた洗濯方法であり、洗濯パターン中に2工程以上の水位連動洗濯工程を含み、前記水位連動洗濯工程が進行する中で変動する洗濯機内の水位を計測して、前記ドラムの回転数を前記水位の関数としての水位連動回転数に追随させ、前記水位の関数としての前記水位連動回転数は、前記洗濯パターン中の2工程以上の前記水位連動洗濯工程を通じて共通の関数で与えられることを特徴とする水位連動回転数自動追随型洗濯方法を提供することができる。
【0035】
本形態の洗濯方法においては、洗濯パターンを構成する一連の洗濯工程には、少なくとも2つの水位連動洗濯工程が含まれ、それらの水位連動洗濯工程においては、水位の関数としての水位連動回転数は、共通の関数で表される。
洗濯パターンを構成する複数の水位連動洗濯工程を通じて常に、ドラムの回転数を、上記1つ又は複数の課題を達成するために最適化された前記水位の関数としての水位連動回転数に自動的に追随させて洗濯が行われるから、従来のように、一定の設定回転数で、又は前記水位に連動させることなく予め与えられた回転数変動プロファイルに従って、又は洗濯工程ごとの設定回転数で、ドラムを回転させて洗濯を行う場合と比べて、上記1つ又は複数の課題をより良く達成することができる。
【0036】
本発明の第3の形態によれば、前記水位の関数としての前記水位連動回転数が、被洗物の洗浄効率を最大にする最大メカニカルアクション回転数である水位連動回転数自動追随
型洗濯方法を提供することができる。
【0037】
本形態の洗濯方法によれば、変動する水位を計測して、ドラムの回転数を常に、被洗物の洗浄効率を最大にする最大メカニカルアクション回転数に自動的に追随させて洗濯を行うから、従来の洗濯方法に比べて、洗浄性の向上、洗濯時間の短縮、使用電力量の節減、使用薬品量の節減、洗濯温度の低温化、及び/又は使用水量の節減といった1つ又は複数の課題をより良く達成することができる。
【0038】
本発明者は、ドラムが、洗浄効率が最大となる最大メカニカルアクション回転数で回転している状態は、被洗物が「最大メカニカルアクション」を受けている状態であると考えている。最大メカニカルアクションが得られる回転数は水位に依存するから、水位に応じた最大メカニカルアクション回転数に、ドラムの回転数を自動的に追随させて洗濯を行うことにより、常に最大メカニカルアクションを被洗物に作用させながら洗濯を実施することができ、洗浄効率を最大にすることができるのである。
【0039】
上記最大メカニカルアクション回転数は一般に、上記水位のほか、揉み洗いかタタキ洗いかといった洗い方、ドラムの半径、内外胴間クリアランス(隙間距離)、被洗物の商品種及び投入負荷量、ビータの形状及び個数にも依存する。タタキ洗いの場合、他の条件が同じであれば一般に、内外胴間クリアランスが小さいほど、又は、ビータの楔形の頂角が小さいほど、又は、ドラムの内周面に凸設されるビータの個数が多いほど、同じメカニカルアクションを被洗物に作用させるために必要なドラムの回転数は小さくて済み、使用電力量も少なくて済む。
【0040】
本発明の第4の形態によれば、前記水位連動回転数が前記水位の1次関数又は略1次関数で与えられる水位連動回転数自動追随型洗濯方法を提供することができる。
本発明者は、特許文献1の洗濯方法の改良発展を模索する中で、実験的又は視覚的に決定される、洗浄効率を最大にする洗濯工程ごとの最適回転数が、洗い工程、すすぎ工程、加工工程等の各洗濯工程ごとの設定水位の1次関数又は略1次関数で与えられることを発見した。
【0041】
1つの洗濯パターンに含まれる一連の各洗濯工程について考えた場合、言い換えれば、被洗物の商品種及び投入負荷量とタタキ洗いや揉み洗いといった洗い方を指定して、その洗い方に必要な各洗濯工程について考えた場合、横軸に各洗濯工程における従来の一定の設定水位、縦軸に実験的又は視覚的に求められる洗濯工程ごとの最適回転数をとってプロットすると、各洗濯工程に対応した各点はほぼ直線の上に乗る。水位レベルが0以上8以下の範囲内において、洗濯工程ごとの最適回転数の前記直線からのずれは、多くの商品種及び投入負荷量と洗い方について±3%以内であり、検証したすべての商品種及び投入負荷量と洗い方について±5%以内である。
【0042】
本形態の洗濯方法によれば、変動する水位を計測して、ドラムの回転数を常に、被洗物の洗浄効率を最大にする最大メカニカルアクション回転数に近い、前記水位の1次関数又は略1次関数で表される水位連動回転数に自動的に追随させて洗濯を行うから、水位のシンプルな関数を用いる回転数制御により、従来の洗濯方法に比べて、洗浄性の向上、洗濯時間の短縮、使用電力量の節減、使用薬品量の節減、洗濯温度の低温化、及び/又は使用水量の節減を実現することができる。
【0043】
なお、水位の略1次関数とは、水位のある正値1次関数が存在して、水位レベルが0以上8以下の範囲においてその略1次関数の関数値が常に、上記の正値1次関数の関数値の0.97倍以上1.03倍以下の範囲内にあるか、又は、0.95倍以上1.05倍以下の範囲内にある連続関数のことをいう。このとき、上記の水位のある正値1次関数は、上
記の水位の略1次関数を直線近似する1次関数であるという。水位のある略1次関数を直線近似する水位の1次関数は1つとは限らず、一般には無数に存在し得る。
【0044】
本発明の第5の形態によれば、2パターン以上の洗濯パターンから1つの洗濯パターンを選択して実行するステップを有し、各々の前記洗濯パターンは少なくとも洗濯パターン中に1工程の水位連動洗濯工程を有し、各々の水位連動洗濯工程における前記水位の関数としての水位連動回転数は、その水位連動洗濯工程がどの洗濯パターンに含まれているかによって決まる関数であり、複数の水位連動洗濯工程が同一の洗濯パターンに含まれていれば、前記水位の関数としての水位連動回転数は、それらの複数の水位連動洗濯工程を通じて共通の関数で与えられ、前記水位の関数としての水位連動回転数が前記水位の1次関数である場合にはその1次関数の傾き、前記水位の関数としての水位連動回転数が前記水位の略1次関数である場合にはその略1次関数を直線近似する1次関数を適切に選定した場合のその1次関数の傾きが、少なくとも2パターン以上の前記洗濯パターンについて共通の傾き又は相互に近似する傾きである水位連動回転数自動追随型洗濯方法を提供することができる。
【0045】
洗濯機のドラムの形状、すなわち、ドラムの半径やドラムの内周面に凸設されるビータの形状及び個数が同じであっても、どの種類のマットやモップであるかといった被洗物の商品種や投入負荷量が異なったり、タタキ洗いであるか揉み洗いであるかといった洗い方が異なれば、洗濯パターンが異なり、1つ1つの洗濯パターンを構成する、一連の洗濯工程の設定水位又は水位変動プロファイルと、その設定水位又は水位変動プロファイルにおける最大メカニカルアクション回転数若しくは水位連動回転数を表す、又は近似する上記の1次関数又は略1次関数も異なる。
【0046】
しかし、本発明者は、洗濯機のドラムの半径と被洗物の投入負荷量が同じであれば、上記の1次関数の傾き又は上記の略1次関数を直線近似する1次関数の傾きは、洗濯パターンによらずほぼ同一の傾きであること、言い換えれば、被洗物の商品種や洗い方によらずほぼ同一の傾きであることを発見した。検証したすべての商品種及び投入負荷量と洗い方について上記の傾きのバラツキは±5%以内である。
更に、水位を後述する「LEVEL」を単位として表して、上記の傾きを単位「rpm/LEVEL」を用いて表した場合、洗濯機の機種が違っても、洗濯機のドラムの半径が同じであれば、ドラムの内面に凸設されたビータの形状や個数、内外胴間クリアランス(隙間距離)によらず、上記の傾きを表す数値がほぼ同一となることを見出した。
【0047】
本形態の洗濯方法によれば、1つの洗濯パターンについて、言い換えれば、ある商品種と洗い方について上記の1次関数の傾き又は上記の略1次関数を直線近似する1次関数の傾き(kとする)が分かっていれば、別の洗濯パターンについて上記の1次関数の傾き又は上記の略1次関数を直線近似する1次関数の傾きが分かっていなくても、ある1つの水位についての水位連動回転数が分かるだけで、上記の傾きkを用いて、当該別の洗濯パターンについて上記1次関数又は略1次関数が推定できるから、変動する洗濯機内の水位を計測して、ドラムの回転数を、推定したその1次関数又は略1次関数で与えられる水位連動回転数に自動的に追随させて洗濯を行うことにより、従来の洗濯方法に比べて、洗浄性の向上、洗濯時間の短縮、使用電力量の節減、使用薬品量の節減、洗濯温度の低温化、及び/又は使用水量の節減を実現することができる。
【0048】
本発明の第6の形態によれば、ケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に配設されたドラムと、前記ケーシング内の水位を計測する水位計測手段と、前記ドラムの回転数を制御する回転数制御手段と、前記水位の関数としての水位連動回転数を記憶する水位連動回転数記憶手段を少なくとも有し、前記回転数制御手段は洗濯工程が進行する中で、前記回転数を、前記水位の関数としての水位連動回転数に追随させることを特徴とする水位連
動回転数自動追随型洗濯装置を提供することができる。
【0049】
洗濯の際には、洗浄性の向上、洗濯時間の短縮、使用電力量の節減、使用薬品量の節減、洗濯温度の低温化、また使用水量の節減といった種々の課題の達成を総合考慮する必要がある。本形態の洗濯装置は、変動する水位を計測して、ドラムの回転数を、洗浄性の向上等の、1つ又は複数の課題の達成のために最適化された水位連動回転数に自動的に追随させることで、従来のように、一定の設定回転数又は洗濯工程ごとに一定の設定回転数で洗濯する洗濯装置よりも、より良く上記1つ又は複数の課題を達成することができる。
【0050】
本発明の第7の形態によれば、ケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に配設されたドラムと、前記ケーシング内の水位を計測する水位計測手段と、前記ドラムの回転数を制御する回転数制御手段と、前記水位の関数としての水位連動回転数を記憶する水位連動回転数記憶手段と、タイマーと、洗濯パターン中に1工程以上持つ水位連動洗濯工程における設定水位又は水位変動プロファイルを記憶する設定水位記憶手段と、前記タイマーと前記設定水位又は前記水位変動プロファイルに従って前記水位を調節する水位調節手段を少なくとも有し、前記回転数制御手段は前記水位連動洗濯工程において、前記回転数を、前記水位の関数としての水位連動回転数に追随させることを特徴とする水位連動回転数自動追随型洗濯装置を提供することができる。
【0051】
本形態の洗濯装置においては、洗濯パターンを構成する複数の水位連動洗濯工程を通じて常に、ドラムの回転数を、上記1つ又は複数の課題を達成するために最適化された前記水位の関数としての水位連動回転数に自動的に追随させて洗濯が行われるから、従来のように、一定の設定回転数で、又は前記水位に連動させることなく予め与えられた回転数変動プロファイルに従って、又は洗濯工程ごとの設定回転数で、ドラムを回転させて洗濯を行う洗濯装置と比べて、上記1つ又は複数の課題をより良く達成することができる。
【0052】
本発明の第8の形態によれば、前記水位の関数としての前記水位連動回転数が、被洗物の洗浄効率を最大にする最大メカニカルアクション回転数である水位連動回転数自動追随型洗濯装置を提供することができる。
【0053】
本形態の洗濯装置によれば、変動する水位を計測して、ドラムの回転数を常に、被洗物の洗浄効率を最大にする最大メカニカルアクション回転数に自動的に追随させて洗濯を行うから、従来の洗濯装置に比べて、洗浄性の向上、洗濯時間の短縮、使用電力量の節減、使用薬品量の節減、洗濯温度の低温化、及び/又は使用水量の節減といった1つ又は複数の課題をより良く達成することができる。
【0054】
本発明の第9の形態によれば、前記水位連動回転数が前記水位の1次関数又は略1次関数で与えられる水位連動回転数自動追随型洗濯装置を提供することができる。
【0055】
本形態の洗濯装置によれば、変動する水位を計測して、ドラムの回転数を常に、被洗物の洗浄効率を最大にする最大メカニカルアクション回転数に近い、前記水位の1次関数又は略1次関数で表される水位連動回転数に自動的に追随させて洗濯を行うから、水位のシンプルな関数を用いる回転数制御により、従来の洗濯装置に比べて、上記1つ又は複数の課題をより良く達成することができる。
【0056】
本発明の第10の形態によれば、2パターン以上の洗濯パターンを記憶する洗濯パターン記憶手段と、2パターン以上の洗濯パターンから1つの洗濯パターンを選択して実行する洗濯パターン選択実行手段を有し、各々の前記洗濯パターンは少なくとも1工程の水位連動洗濯工程を有し、各々の水位連動洗濯工程における前記水位の関数としての水位連動回転数は、その水位連動洗濯工程がどの洗濯パターンに含まれているかによって決まる関
数であり、複数の水位連動洗濯工程が同一の洗濯パターンに含まれていれば、前記水位の関数としての水位連動回転数は、それらの複数の水位連動洗濯工程を通じて共通の関数で与えられ、前記水位の関数としての水位連動回転数が前記水位の1次関数である場合にはその1次関数の傾き、前記水位の関数としての水位連動回転数が前記水位の略1次関数である場合にはその略1次関数を直線近似する1次関数を適切に選定した場合のその1次関数の傾きが、少なくとも2パターン以上の前記洗濯パターンについて共通の傾き又は相互に近似する傾きである水位連動回転数自動追随型洗濯装置を提供することができる。
【0057】
本形態の洗濯装置によれば、1つの洗濯パターンについて、言い換えれば、ある商品種と洗い方について上記の1次関数の傾き又は上記の略1次関数を直線近似する1次関数の傾き(kとする)が分かっていれば、別の洗濯パターンについて上記の1次関数の傾き又は上記の略1次関数を直線近似する1次関数の傾きが分かっていなくても、ある1つの水位についての水位連動回転数が分かるだけで、上記の傾きkを用いて、当該別の洗濯パターンについて上記1次関数又は略1次関数が推定できるから、前記水位を計測して、ドラムの回転数を、推定したその1次関数又は略1次関数で与えられる水位連動回転数に自動的に追随させて洗濯を行うことにより、従来の洗濯装置に比べて、上記1つ又は複数の課題をより良く達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は、本発明に係る水位連動回転数自動追随型の洗濯装置1の説明図である。
図2図2は、本発明に係る洗濯装置1の制御部40の説明図である。
図3図3は、本発明における、洗濯水の水位及びその水位レベルの定義を説明する図である。
図4図4は、本発明に係る洗濯方法及び洗濯装置に使用される、水位連動洗濯工程を制御する制御プログラムのフロー図である。
図5図5は、本発明の実施例1及び比較例1、2における洗濯パターンと、水位の変動、及びドラムの回転数の変動を示す簡略表である。
図6図6は、図5の表をより詳細なグラフで示した図である。
図7図7は、本発明に係る洗濯方法及び洗濯装置に使用される、洗濯パターンの選択と実行を制御する制御プログラムのフロー図である。
図8図8は、水位の関数としての水位連動回転数を設定・保存するための副プログラムのフロー図である。
図9図9は、本発明の着想のきっかけとなった発見の説明図である。
図10図10は、本発明の水位の関数としての水位連動回転数を示す、1次関数又は略1次関数の説明図である。
図11図11は、本発明の2以上の洗濯パターンについて、各洗濯パターンにおける水位の関数としての水位連動回転数どうしの関係を示す説明図である。
図12図12は、本発明の洗濯装置における被洗物の軌跡の特徴や電流値の洗濯装置依存性を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下に、本発明に係る水位連動回転数自動追随型の洗濯方法及び洗濯装置の実施形態の例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0060】
図1は、本発明に係る水位連動回転数自動追随型の洗濯装置1の説明図である。本洗濯装置1は少なくとも、制御部40と、内部にケーシング11とドラム20を有する洗濯機10と、ケーシング11内に洗濯水24を給水するための給水管12と、ケーシング11内から洗濯水24を外部に排出するための排水管13と、ドラム20を回転駆動するモー
タ31と、制御部40が発する回転数指令32に基づいてモータ31の回転数を変更することで、ドラム20の回転数を所望回転数に変更できるインバータ等の回転数制御手段30と、ケーシング11内の洗濯水24の水面25の位置、すなわち水位26を計測するための水位センサ34と、制御部40の指令により水位センサ34の出力を読み取って制御部40に伝達する水位計測手段33と、給水管12に設けられた給水弁36と、排水管13に設けられた排水弁37と、制御部40の指令により給水弁36及び/又は排水弁37の開閉状態を制御して水位26を調節する水位調節手段35を含む。
本洗濯装置1は他に、洗濯水24の温度を計測する温度センサー(図示せず)と、計測された温度に基づき、制御部40の指令のもと、洗濯水24の温度を昇温させるための昇温用蒸気の供給を行う昇温用蒸気供給手段(図示せず)を有してもよい。本洗濯装置1は更に、薬品投入手段(図示せず)を備えてもよい。薬品投入手段は手動で、若しくは操作者が入力装置42を通して制御部40に指示を与えることにより半自動で、若しくは制御部40の指令の下に自動で、洗濯水24に洗濯工程が進行する中で所定量の薬品及び/又は洗剤を投入する。
【0061】
ドラム20の中にはマットやモップ等の被洗物27が所定枚数若しくは所定質量だけ投入されている。洗濯水24の水面25の位置、すなわち水位26は一般に洗濯工程の進行とともに変動する。洗濯水24には所定量の洗剤が溶解混入されてもよく、洗濯水24はドラム20に無数にパンチングされた孔を通して、ケーシンク11からドラム20の内部にまで通水されている。
【0062】
ドラム20の内周面には適当位置に被洗物27を掻き上げる1つ又は複数のビータ21が設けられている。ドラム20は回転軸22を軸として矢印23が示す方向又はその逆方向に回転しており、その時々刻々の回転数(rpm)は回転数制御手段30により制御される。図1の実施形態では、回転軸22は水平または斜めであり、鉛直でも略鉛直でもない。被洗物27はビータ21により掻き上げられて、その被洗物表面28は図示するように左上方へと嵩高に盛り上がっている。一方向回転動作、正逆回転動作又は断続回転動作により被洗物27はドラム20の内部を回転落下し、次第に洗濯水24により洗濯されてゆく。
【0063】
図2は、本洗濯装置1の制御部40の説明図である。制御部40は、中央演算処理装置(CPU)41と、被洗物27の商品種と投入負荷量及び洗い方、若しくは、洗濯パターンを少なくとも入力する入力装置42と、演算状態を外部に出力する出力装置43と、記憶部44と、タイマー(図示せず)から構成される。
CPU41の指令により水位調節手段35は、設定水位記憶手段に記憶された設定水位又は水位変動プロファイルに従ってケーシング11内の水位を調節する。又、CPU41は、水位計測手段33から計測水位の値を受け取ることができる。又、CPU41は、前記計測水位の値に基づいて水位連動回転数を計算し、回転数制御手段30に時々刻々のドラム20の回転数を指令する回転数指令32を発することができる。
記憶部44は、制御プログラムを保存するリードオンリメモリ(ROM)46と、一時データを保存するランダムアクセスメモリ(RAM)45と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、フラッシュメモリ等で構成された記憶媒体47からなる。
【0064】
記憶媒体47は少なくとも、次のデータを保存する。なお、これらのデータの一部若しくは全部をROM46に保存してもよい。
(1)商品種と投入負荷量及び洗い方と、洗濯パターン(一連の洗濯工程)との対応関係。
(2)各洗濯パターンにおける水位の関数としての水位連動回転数。
(3)各洗濯パターン中に1工程以上持つ各水位連動洗濯工程における設定水位又は水位
変動プロファイル。
本発明の洗濯パターン記憶手段、水位連動回転数記憶手段、及び設定水位記憶手段の実体は、記憶媒体47、又は/及びROM46である。又、本発明の洗濯パターン選択実行手段の実体は、CPU41によって実行される前記制御プログラムである。
【0065】
図3は、本発明における、洗濯水の水位及びその水位レベルの定義の一例を説明する図である。断面がいずれも円形のケーシング(外胴)11とドラム(内胴)20は、回転軸22を共通の中心とするように配置され、ケーシング(外胴)11とドラム(内胴)20の間の隙間距離は内外胴間クリアランス18で与えられる。外胴11内に貯水された洗濯水24は、内胴20にパンチングされた無数の穴を通して、内胴20内に通水している。洗濯水24の水位26とは、外胴11の内周面の最下点17から水面25までの高さをいう。又、洗濯水24の水位レベルとは、外胴の内周面の半径15の10分の1の高さを 1 LEVEL と定義したとき、水位26が 1 LEVEL の何倍にあたるか、を示す数をいう。式で表せば次の(式1)のようになる。
(式1) 水位レベル = 水位/LEVEL
= 10×水位/半径
例えば、洗濯水24が全くない状態の水位レベルは0であり、回転軸22の中央の位置まで洗濯水24が満ちていれば水位レベルは10であり、満水状態で水位26が外胴11の内周面の直径14と同じであれば水位レベルは20である。
【0066】
以上は、回転軸22が水平又は斜めの場合の水位レベルの定義の一例であるが、回転軸22が水平又は斜めとは限らない一般の場合でも、ある適当な高さを1 LEVELと定めることにより、無次元化した水位レベルを(式1)の最初の等号が示す定義式によって、同様に定義することができる。
【0067】
水位センサ34(図1参照)は、水位26を計測できるものであれば圧力式、光学式、超音波式、重量式など、様々な測定方式のものが使用できる。例えば、圧力式の場合、水位センサ34は、ケーシング11の下部と細いチューブでつながり、ケーシング11内に洗濯水24が貯まることによりチューブ内の気体の圧力(水頭圧)が変化し、その圧力変化を圧力計で読み取ることにより、水位26を計測する。したがって、圧力式の水位センサの場合、洗濯工程の進行とともに波立ったり傾斜したりする水面25の局所的な凹凸形状に影響されることなく、水面25の平均的な高さ、すなわち水平方向に平均化された水位26を計測することができる。他の測定方式の水位センサ34で水位26を計測する場合には、水面25の平均的な高さを計測できるよう、水平方向の平均化や水面の傾斜を補正することが必要になる場合もある。
【0068】
図4は、本発明に係る洗濯方法及び洗濯装置に使用される、水位連動洗濯工程を制御する制御プログラムのフロー図である。水位連動洗濯工程においては、水位26を計測して、ドラム20の回転数を、水位26の関数として決まる水位連動回転数に自動的に追随させるように制御する。ここで、水位26の計測値は一般に、洗濯工程の進行に伴い、給排水や、ドラム20の回転に伴って運動する被洗物27の偏り、被洗物による保水や、水位低下に伴う補充給水、昇温用蒸気の凝結、薬品の投入等の理由で小刻みに変動する。そこで毎回の水位の計測値そのものではなく、数十ミリ秒から数秒の時間、若しくは数十ミリ秒から1分程度の時間で平均化した、水位の計測値の時間的な平均値を求め、その平均値から計算される水位連動回転数に対して自動追随制御を行う。ドラム20の回転に伴って運動する被洗物27の偏りによる水位計測値の変動を平均化するため、水位を計測する時間間隔Twは、ドラム20の回転の1周期の時間T以下であることが望ましく、より望ましくは時間間隔Twは時間Tの2分の1以下とすべきである。又、平均化する時間は、ドラム20の回転の1周期の時間T以上であることが望ましく、より望ましくは時間Tの2倍以上とすべきである。
上記の1周期の時間Tとしては、例えば、当該水位連動洗濯工程における平均的なドラム20の回転数fの逆数f-1を用いることができる。つまり、T=f-1と考えて、望ましい時間間隔Twおよび平均化する時間を設定することができる。
【0069】
そこで、水位連動洗濯工程においては、監視サイクルごとに水位26を計測し、判定周期ごとに計測値の平均値を求めて、平均値に基づく自動追随制御を行う。具体的には、監視サイクルである時間Twおきに水位を計測し、連続するm回分の水位の計測値の平均値を計測水位として、ドラム20の回転数を、計測水位から計算される水位連動回転数に追随させるように制御する。時間Twをm回合わせた、平均化する時間m×Twは数十ミリ秒~1分程度と任意であるが、ドラム20の回転の1周期の時間T以上であることが望ましく、より望ましくは時間Tの2倍以上とすべきである。
【0070】
図4において、ステップS1で水位連動洗濯工程がスタートする。ステップS2の工程Aには次の2つの場合(i)と(ii)があり得る。
(i) ステップS2の工程Aで何も行わない場合:
この場合には、時間Twおきに水位を計測するたびに直近m回分の計測値の移動平均を計算しながら、ステップS6~S10が実行されることとなる。この場合、監視サイクルも判定周期もともに時間Twである。時間Twは数十ミリ秒~数秒、若しくは数十ミリ秒~1分程度に設定されるが、上記の条件を満たすことが望ましい。自然数mは、平均化する時間m×Twが望ましくは上記の条件を満たすように設定する。
(ii) ステップS2の工程Aで水位の計測回数をリセットする場合:
この場合には、監視サイクルである時間Twおきに水位を計測して、計測値がm個たまるごとに、すなわち時間m×Twおきに、m回分の計測値の平均値を計算しながら、ステップS6~S10が実行されることとなる。この場合、監視サイクルは時間Twであり、判定周期は時間m×Twである。監視サイクルの時間Twは数ミリ秒~数秒に設定されるが、上記の条件を満たすことが望ましい。自然数mは、平均化する時間m×Twが望ましくは上記の条件を満たすように設定する。
【0071】
ステップS3では、前回の水位計測から時間Twが経過したかどうかが判定される。YESの場合にはステップS4に進み、NOの場合にはステップS3に戻る。ステップS4では、水位計測手段33がケーシング11内の水位26を計測する。ステップS5では、すでにm回以上水位を計測したかどうかが判定される。YESの場合にはステップS6に進み、NOの場合にはステップS3に戻る。ステップS6では、直近m回の水位の計測値の平均値を計算し、その平均値を計測水位とする。ステップS7では、ステップS6で求めた計測水位に基づき、水位の関数としての水位連動回転数を計算する。ステップS8では、ステップS7で求めた水位連動回転数を回転数制御手段30に指令する。ステップS9では、回転数制御手段30がモータ31の回転数を制御することにより、ドラム20が水位連動回転数で回転する。ステップS10では、水位連動洗濯工程である当該工程が終了したか否かが判定される。NOの場合、ステップS2に戻る。YESの場合、当該工程を終了する。
【0072】
上記フロー図で示される方法により、比較的短いサンプリング時間間隔Twで取得したm回分の水位の計測値を平均した計測水位に基づき、ドラム20の回転数を、前記計測水位の関数としての水位連動回転数にリアルタイムで自動的に追随させる制御が実現できるので、従来の洗濯方法に比べて、洗浄性の向上、洗濯時間の短縮、使用電力量の節減、使用薬品量の節減、洗濯温度の低温化、及び/又は使用水量の節減を実現することができる。
【0073】
図5は、洗濯パターン、すなわち一連の洗濯工程の一例を示すものであり、具体的には、本発明の実施例1及び比較例1、2における洗濯パターンと、水位の変動、及びドラム
の回転数の変動を示す簡略表である。この例では洗濯パターンは表に挙げた順に進行する一連の10の洗濯工程からなり、大きくは「加工」、「洗い」、「すすぎ」、「脱水」の4つの工程群からなる。
【0074】
「加工」の工程群は、加工前給水工程、加工工程、加工後排水工程の3つの洗濯工程からなり、洗濯工程に要する時間は順に0.5分、9.0分、0.5分である。水位レベルは、加工前給水工程においては0から2まで増加し、加工工程においては2に設定され、加工後排水工程においては2から0まで減少する。
尚、加工工程とは、特殊な薬品を用いた加工など、被洗物の特殊な汚れを除去する等の目的で行われる洗濯工程であり、通常の洗い工程よりも低い水位レベルで実施される場合が多いが、必ずしも低水位レベルの洗濯工程に限定されるわけではない。本件明細書の比較例1、比較例2、実施例1、及び後述する実施例2では、加工工程において、定濃度の漂白剤を用いた漂白加工を行った。
又、図5に示す洗濯パターンの例では「加工」の工程群を「洗い」の工程群の前に設けたが、「加工」の工程群を「洗い」の工程群の直後や「すすぎ」の工程群の後に設けても良く、更に、「加工」の工程群の前、後、又は前後に、追加の「すすぎ」の工程群を設けても良い。
【0075】
「洗い」の工程群は、洗い前給水工程、洗い工程、洗い後排水工程の3つの洗濯工程からなり、洗濯工程に要する時間は順に1.0分、15.0分、1.0分である。水位レベルは、洗い前給水工程においては0から6まで増加し、洗い工程においては6に設定され、洗い後排水工程においては6から0まで減少する。
「すすぎ」の工程群は、すすぎ前給水工程、すすぎ工程、すすぎ後排水工程の3つの洗濯工程からなり、洗濯工程に要する時間は順に1.5分、8.0分、1.5分である。水位レベルは、すすぎ前給水工程においては0から8まで増加し、すすぎ工程においては8に設定され、すすぎ後排水工程においては8から0まで減少する。
「脱水」の工程群は、唯1つの脱水工程からなり、所要時間は2分である。
【0076】
比較例1の洗濯パターンでは、最後の脱水工程以外の、加工前給水工程からすすぎ後排水工程までの9つの洗濯工程を通じて、ドラム20の回転数は一定値27rpmに設定され、ドラム20は常に一定の回転数で回転する。
比較例2の洗濯パターンではドラム20の回転数は、最後の脱水工程以外の、「加工」の工程群に含まれる3つの洗濯工程では一定値19rpmに設定され、「洗い」の工程群に含まれる3つの洗濯工程では一定値27rpmに設定され、「すすぎ」の工程群に含まれる3つの洗濯工程では一定値31rpmに設定される。ここで、19rpmは加工工程の設定水位である水位レベル2に対応した前記最大メカニカルアクション回転数かつ洗濯工程ごとの最適回転数であり、27rpmは洗い工程の設定水位である水位レベル6に対応した前記最大メカニカルアクション回転数かつ洗濯工程ごとの最適回転数であり、31rpmはすすぎ工程の設定水位である水位レベル8に対応した前記最大メカニカルアクション回転数かつ洗濯工程ごとの最適回転数である。
実施例1の洗濯パターンでは、最後の脱水工程以外の、加工前給水工程からすすぎ後排水工程までの9つの洗濯工程を通じて、ドラム20の回転数は、前記水位の関数としての水位連動回転数にリアルタイムで自動的に追随するように制御される。ここで、前記水位の関数としての水位連動回転数として、後述する図9のグラフr1及び表2の洗濯パターン1の関数式で示される水位の1次関数を用いた。
【0077】
図6は、図5の表をより詳細なグラフで示した説明図である。図(6A)は、一連の洗濯工程の進行とともに生じる水位変動の一例を示し、図(6B)は図(6A)の水位変動に伴って生じるドラム20の回転数の変動を、実施例1と比較例1及び比較例2で対比して示したものである。
【0078】
図(6A)の水位変動曲線50が示すように、水位レベルは、まず時刻0~Tの「加工」の工程群において、水位レベル2への給水51により0から2へと増加し、加工工程において約2に保たれ、排水54により、0まで減少する。ここで、加工工程における水位レベルは厳密に2に保たれるわけではなく、被洗物保水による水位低下55や水位低下に伴う補充給水57や昇温用蒸気の凝結による水位上昇56等により変動する。
次いで時刻T~Tの「洗い」の工程群において水位レベルは、水位レベル6への給水52により0から6へと増加し、洗い工程において約6に保たれ、排水54により、0まで減少する。ここで、洗い工程における水位レベルは厳密に6に保たれるわけではなく、被洗物保水による水位低下や水位低下に伴う補充給水(いずれも図示せず)や昇温用蒸気の凝結による水位上昇56等により変動する。
次いで時刻T~Tの「すすぎ」の工程群において水位レベルは、水位レベル8への給水53により0から8へと増加し、すすぎ工程において約8に保たれ、排水54により、0まで減少する。ここで、すすぎ工程における水位レベルは厳密に8に保たれるわけではなく、被洗物保水による水位低下や水位低下に伴う補充給水や昇温用蒸気の凝結による水位上昇(いずれも図示せず)等により変動し得る。
【0079】
図(6B)において、比較例1における回転数の変動曲線60(一点鎖線)が示すように、比較例1では、脱水工程以外の9つの洗濯工程において、ドラム20の回転数は、各工程の設定水位によらず、常に一定値27rpmに設定される。
又、比較例2における回転数の変動曲線61(点線)が示すように、比較例2では、脱水工程以外の9つの洗濯工程において、ドラム20の回転数は、給排水や、被洗物保水による水位低下、水位低下に伴う補充給水、昇温用蒸気の凝結、薬品の投入等による水位変動によらず、「加工」の工程群に含まれる3つの洗濯工程においては常に一定値19rpmに、「洗い」の工程群に含まれる3つの洗濯工程においては常に一定値27rpmに、「すすぎ」の工程群に含まれる3つの洗濯工程においては常に一定値31rpmに設定される。
又、実施例1における回転数の変動曲線62(実線)が示すように、実施例1では、脱水工程以外の9つの洗濯工程において、ドラム20の回転数は常に、各工程の設定水位や給排水、被洗物保水による水位低下、水位低下に伴う補充給水、昇温用蒸気の凝結、薬品の投入等による水位変動に応じて、計測水位の関数としての水位連動回転数に自動的にリアルタイムで追随するように制御される。尚、実施例1においては、監視サイクルである時間Twは200ミリ秒、自然数mは5とし、ステップS2で水位の計測回数をリセットすることとしたゆえ、判定周期は1秒である。
【0080】
図7は、本発明に係る洗濯方法及び洗濯装置に使用される、洗濯パターンの選択と実行を制御する制御プログラムのフロー図である。
一連の洗濯工程、即ち洗濯パターンは、どの種類のマットであるかモップであるかといった被洗物の商品種と、タタキ洗いか揉み洗いかといった洗い方により定まる。洗濯パターンは他に、被洗物の投入負荷量によって違っても良い。一連の洗濯工程には、ドラムの回転数を計測水位の関数としての水位連動回転数に自動追随させる制御を行う水位連動洗濯工程と、脱水工程のようにそのような制御を行わない非水位連動洗濯工程がある。
【0081】
ステップS20で、洗濯パターンの選択と実行が開始される。ステップS21で、洗濯装置のスイッチがONであるかどうかが判定され、NOの場合にはステップS21に戻り、YESの場合にはステップS22に進む。ステップS22で洗濯パターンの選択と洗濯パターンを選択済みかどうかの判定が行われ、NOの場合にはステップS22に戻り、YESの場合にはステップS23に進む。ステップS23では、ステップS22で選択済の洗濯パターンに対して水位の関数としての水位連動回転数が設定済かどうかの判定が行われ、YESならばステップS24に進み、NOであれば水位の関数としての水位連動回転
数を設定する工程(図示せず。図8参照)を実行した後に、ステップS23に戻る。ステップS24で洗濯パターンの実行がスタートし、ステップS25でタイマーがスタートする。ステップS26で次の洗濯工程が水位連動洗濯工程か否かが判定され、YESであればステップS27に進み、NOであればステップS28に進む。ステップS27では水位連動洗濯工程が実行され、ステップS28では非水位連動洗濯工程が実行される。ステップS29では洗濯パターンの実行が完了したか否かが判定され、NOであればステップS26に戻り、YESであればステップS30に進み、ステップS30で洗濯パターンの選択と実行が終了する。
上記のフロー図に従った制御により、1工程以上の水位連動洗濯工程を含む任意の洗濯パターンの選択と実行を完遂することができる。
【0082】
図8は、水位の関数としての水位連動回転数を設定・保存するための副プログラムのフロー図である。ステップS40で水位の関数としての水位連動回転数を設定・保存する工程がスタートする。ステップS41で水位連動回転数yが水位レベルxの1次関数か否かが判断される。CPU41はyがxの1次関数か否かを問う質問を出力装置43に表示し、操作者(図示せず)は入力装置42にその答を入力する。答がYESであればステップS42に進み、NOであればステップS44に進む。ステップS42では操作者(図示せず)は入力装置42に2つの水位レベルx,xにおける水位連動回転数y,yを入力する。ステップS43では2点を通る1次関数y=ax+bを計算する。
ステップS44では水位連動回転数yが水位レベルxの2次関数か否かが判断される。CPU41はyがxの2次関数か否かを問う質問を出力装置43に表示し、操作者(図示せず)は入力装置42にその答を入力する。答がYESであればステップS45に進み、NOであればステップS47に進む。ステップS45では操作者(図示せず)は入力装置42に3つの水位レベルx,x,xにおける水位連動回転数y,y,yを入力する。ステップS46では3点を通る2次関数y=ax+bx+cを計算する。
ステップS47では、関数f(x)の具体的な表式の入力処理が行われる。CPU41はyがxのどのような関数y=f(x)であるかを問う質問を出力装置43に表示し、操作者(図示せず)は入力装置42にその答を予め決められた書式で入力する。
ステップS48でCPU41は、関数y=f(x)を洗濯パターンに対応させて水位連動回転数記憶手段に保存し、ステップS49で水位の関数としての水位連動回転数を設定・保存する工程が終了する。
【0083】
【表1】
【0084】
表1は、本発明の着想のきっかけとなった発見を説明するための表であり、4つの洗濯パターンの各々に含まれる、加工工程、洗い工程、及びすすぎ工程の各洗濯工程ごとの最適回転数である従来の設定回転数を示す。表1で水位レベル2、6、8の列はそれぞれ順に、加工工程、洗い工程、すすぎ工程における設定回転数を示す。これら従来の設定回転数は、各洗濯パターンにおいて、各水位レベルに対応した最大メカニカルアクション回転数でもある。
洗濯パターン1は、被洗物の商品種がモップ1で洗い方がタタキ洗いの場合の洗濯パタ
ーンであり、従来の設定回転数は上記3つの洗濯工程について順に19rpm、27rpm、31rpmである。洗濯パターン2は、マット1をタタキ洗いする場合の洗濯パターンであり、従来の設定回転数は同じく順に17rpm、24rpm、29rpmである。洗濯パターン3は、モップ2を揉み洗いする場合の洗濯パターンであり、従来の設定回転数は同じく順に11rpm、19rpm、23rpmである。洗濯パターン4は、マット2を揉み洗いする場合の洗濯パターンであり、従来の設定回転数は同じく順に9rpm、16rpm、21rpmである。
【0085】
図9は、表1をグラフ化したものであり、本発明の着想のきっかけとなった発見の説明図である。1つの洗濯パターンを構成する一連の洗濯工程に含まれる、加工工程、洗い工程、及びすすぎ工程の各洗濯工程ごとの従来の設定回転数を、横軸に水位レベル、縦軸に回転数をとってグラフにプロットすると、表1に示した4つの洗濯パターンのいずれについても、ほぼ直線の上に乗ることがわかる。したがって、従来の設定回転数、すなわち洗濯工程ごとの最適回転数は、洗濯工程ごとの設定水位の1次関数又は略1次関数でよく近似できる。この1次関数又は略1次関数が前記水位xの関数としての水位連動回転数y=f(x)である。
さらに本発明者は、これらの1次関数又は略1次関数f(x)を直線近似する1次関数(式をy=a・x+bとする)は、商品種やドラムの形状によってそのy切片bは異なるものの、すべて共通の傾きa又は相互に近似する傾きを有していることを発見した。すなわち、ドラム20の半径15及び被洗物の投入負荷量が同じであれば、洗濯パターンによらず、言い換えれば商品種や洗い方によらず、設定水位で決まる洗濯工程ごとの最適回転数を近似する、前記水位の1次関数又は略1次関数の、1次関数の傾きa又は略1次関数を直線近似する1次関数の傾きaは、ほぼ同じである。上記の傾きのバラツキは5%以内に収まる。
更に、上記の傾きaを単位「rpm/LEVEL」を用いて表した場合、洗濯機の機種が違っても、洗濯機のドラム20の半径15が同じであれば、ドラム20の内面に凸設されたビータ21の形状や個数、内外胴間クリアランス(隙間距離)18によらず、上記の傾きaを表す数値がほぼ同一となること、より正確には、上記の傾きaを表す数値のバラツキが5%以内に収まることも見出した。
尚、n個の正の数値c、c、…、cのバラツキが5%以内であるとは、c、c、…、cのうち最大のものが、最小のものの1.00倍以上1.05倍以下の範囲に含まれることをいう。
【0086】
【表2】
【0087】
表2は、表1に示した4つの洗濯パターンのそれぞれについて、上記の水位の1次関数を、水位レベル2及び水位レベル8における従来の設定回転数を表す2点を通るように決めた場合の、その1次関数のグラフと式を示す。図9に示したように、洗濯パターン1、2、3、4についての前記水位の1次関数のグラフが順に、グラフr1、r2、r3、r
4である。図9から読み取れるように、これら4つのグラフは互いに平行な直線であり、どの直線の傾きも約2rpm/LEVELである。すなわち、洗濯パターンが異なると前記水位の関数としての水位連動回転数も異なるが、それらが1次関数である場合には、洗濯パターンが違ってもそれらの傾きはほぼ同一である。
【0088】
ここでは例として、上記の水位の1次関数は、水位レベル2及び8に対応した2点を通るように決めたが、水位レベル2、4、8等に対応した最大メカニカルアクション回転数若しくは水位連動回転数を表す3点以上のn点をもとに、最小2乗法等の方法で上記の1次関数を決めても良い。この場合には、決定された1次関数、すなわち水位の関数としての水位連動回転数のグラフは上記のn点を通るとは限らず、一般にはこれらの点のごく近くを通る直線となる。
また、上記n点を通るn-1次の多項式として上記の略1次関数を決定しても良い。或いは、2以上の実パラメータを含む変分関数をとり、それらの実パラメータを上記のn点をもとに、最小2乗法や最尤法や他の最大最小法の手法で決定して、上記の1次関数又は略1次関数を決め、水位の関数としての水位連動回転数として用いても良い。
【0089】
図10は、本発明の水位の関数としての水位連動回転数を示す、1次関数又は略1次関数の説明図である。横軸に水位レベル、縦軸に回転数をとっている。図中の3つの黒丸は、水位レベル2に対応した最大メカニカルアクション回転数(又は水位連動回転数)f2を示す点74、水位レベル6に対応した最大メカニカルアクション回転数(又は水位連動回転数)f6を示す点75、及び水位レベル8に対応した最大メカニカルアクション回転数(又は水位連動回転数)f8を示す点76である。
水位の1次関数のグラフ70は、水位の関数としての水位連動回転数を、水位レベル2及び8における2点74及び76を通る1次関数として定めた場合の、その1次関数のグラフである。水位の略1次関数のグラフ71は、水位の関数としての水位連動回転数を、水位レベル2、6及び8における3点74、75及び76を通る2次関数として定めた場合の、その2次関数である略1次関数のグラフである。
【0090】
水位の略1次関数とは、水位のある正値1次関数が存在して、水位レベルが0以上8以下の範囲においてその略1次関数の関数値が常に、上記の正値1次関数の関数値の0.97倍以上1.03倍以下の範囲内にあるか、又は、0.95倍以上1.05倍以下の範囲内にある連続関数のことをいう。このとき、上記の水位の正値1次関数は、上記の水位の略1次関数を直線近似する1次関数であるという。
上限直線72は、水位の1次関数のグラフ70において、その縦軸の値(回転数)を5%増、又は3%増にしたグラフであり、下限直線73は、水位の1次関数のグラフ70において、その縦軸の値(回転数)を5%減、又は3%減にしたグラフである。5%又は3%の幅を示す両矢印77は、回転数の5%又は3%の幅を示す。水位の略1次関数のグラフ71は、水位レベルが0以上8以下の範囲において常に、上限直線と下限直線の間に存在するから、確かに、上記の略1次関数の定義を満たしている。上記グラフ71で表される水位の略1次関数を直線近似する1次関数のグラフがグラフ70である。なお、与えられた水位の略1次関数を直線近似する水位の1次関数は一般に、複数個存在する場合もあり、無数に存在する場合もあり得る。
【0091】
図11は、2パターン以上の洗濯パターンから1つの洗濯パターンを選択して実行することのできる本発明の一実施形態において、例えば、選択実行可能な3つの洗濯パターンA、B、Cがある場合に、各洗濯パターンにおける前記水位の関数としての水位連動回転数のグラフr、r、rどうしの相互の関係を示す説明図である。
洗濯パターンAにおける前記水位の関数としての水位連動回転数は、上記グラフrで表される、前記水位の略1次関数であり、5%又は3%の幅を示す両矢印77、上限直線72、及び下限直線73が示すように、グラフ70で示される水位の1次関数で直線近似
され、近似の誤差は5%以内又は3%以内である。上記グラフrで表される、前記水位の略1次関数を直線近似する、水位の1次関数は1つに限られず、一般には無数に存在し得るが、図11の例では上記グラフ70が示すように、グラフrを直線近似する水位の1次関数を、その1次関数の傾きが後述のグラフr、rの傾きの少なくとも一方と一致するように選ぶことができる。
【0092】
図11の例では、洗濯パターンB、Cにおける前記水位の関数としての水位連動回転数はそれぞれ、上記グラフr、rで表される、前記水位の1次関数であり、いずれのグラフも直線である。図11においては、上記グラフr、r及び70のy切片は順にfoB、foC、及びfoAで異なるものの、いずれの直線の傾きもすべて共通で同一である。なお、一般には、上記グラフr、r及び70の、3つの傾きのうち、少なくとも2つが同一であれば本発明に該当する。
【0093】
いま仮に、洗濯パターンA及びBにおいてそれぞれ、ある与えられた条件のもとで1つ又は複数の課題を達成するために最適な、前記水位の関数としての水位連動回転数が既知であるが、洗濯パターンCにおいてはそのように最適な前記水位の関数としての水位連動回転数がまだ知られていないとする。そして、洗濯パターンA,Bにおいて、前記水位の関数としての水位連動回転数が順に、グラフr、rで示され、グラフrを直線近似する水位の1次関数のグラフ70の傾きと、直線であるグラフrの傾きが同一であるとし、その傾きをkとする。更に、洗濯パターンCにおいて、水位レベル2における最大メカニカルアクション回転数若しくは水位連動回転数がf2Cであることが知られているが、他の水位レベルにおける最大メカニカルアクション回転数若しくは水位連動回転数はまだ知られていないとする。
このとき、水位レベル2において最大メカニカルアクション回転数若しくは水位連動回転数がf2Cであることを示す点74Cを通り、上記の傾きkを有する直線のグラフrによって、洗濯パターンCにおける前記水位の関数としての水位連動回転数(この例では水位の1次関数)を定めれば、洗濯パターンCに従って洗濯を行う際に、ドラムの回転数を常に、ある与えられた条件のもとで1つ又は複数の課題を達成するために最適な、前記水位の関数としての水位連動回転数又はそれに近い回転数に追随させて洗濯を行うことができるから、上記の1つ又は複数の課題をよりよく達成することができる。
【0094】
【表3】
【0095】
表3は、表1及び表2における洗濯パターン1、すなわち商品種がモップ1の場合のタタキ洗いについて、本発明の実施例1における洗浄率、及び後述する実施例2における洗浄率を、従来の比較例1及び比較例2における洗浄率と比較したものである。実施例1、実施例2、比較例1、比較例2のいずれにおいても、洗濯装置として後述する洗濯装置Mを用いた。
【0096】
ここで洗浄率は次のようにして測定した。本発明の洗濯装置1のドラム20の内部に被洗物27として商品種がモップ1のモップを200kg投入する。200kgのモップ1は全て新品のモップであり、この中から30枚のモップ1を無作為に選んで、30枚のモ
ップ1の夫々に1枚ずつ人工汚染布を張り付けてある。この人工汚染布は鉱物油を含浸させ且つススで汚染された基準となる汚染布である。鉱物油も含浸せず全く汚染されていない布を白布と呼ぶ。
上記200kgのモップ1を実施例1の洗濯パターンで洗濯する。30枚の人工汚染布の洗濯前反射率と洗濯後反射率を光学的に測定し、同時に洗濯していない1枚の白布の反射率を光学的に測定した。その結果、30枚の人口汚染布の各々について洗浄率を次の(式2)に従って導出した。
(式2)洗浄率=(人工汚染布の洗濯後反射率―人工汚染布の洗濯前反射率)
/(白布の反射率―人工汚染布の洗濯前反射率)
こうして30枚の人工汚染布についての洗浄率の平均値と標準偏差(不偏分散の平方根)を求めた。
比較例1、比較例2、及び後述する実施例2についても、同様にモップ1のタタキ洗いを実施して、30枚の人工汚染布についての洗浄率の平均値と標準偏差(不偏分散の平方根)を求めた。
【0097】
表3が示すように、比較例1における洗浄率は(8.8±0.41)%、比較例2における洗浄率は(10.0±0.50)%、実施例1における洗浄率は(11.6±0.46)%であった。
脱水工程以外の9工程の洗濯工程のすべてを同一の設定回転数で洗濯する比較例1に比べて、脱水工程以外の9工程の洗濯工程を3つの設定回転数を使い分けて洗濯する比較例2では、洗浄率が割合にして約14%向上している。そして、脱水工程以外の9工程の洗濯工程のすべてを、ドラムの回転数を、水位の関数としての水位連動回転数にリアルタイムで自動追随させて洗濯する実施例1では更に、比較例2と比べて、洗浄率が割合にして約16%向上していることがわかる。給排水や被洗物による保水、水位低下に伴う補充給水、昇温用蒸気の凝結、薬品の投入等による水位変動に応じて、ドラムの回転数を常に、最大の洗浄効率を与える最大メカニカルアクション回転数でもある水位連動回転数にリアルタイムで自動的に追随させることにより、実施例1では洗浄率の大幅な向上を実現している。
【0098】
【表4】
【0099】
表4は、実施例2の洗濯パターンにおける各洗濯工程における所要時間を、実施例1等と比較した表である。実施例2の洗濯パターンは、図5に示す実施例1の洗濯パターンと同じ、一連の10工程の洗濯工程からなり、実施例1と同様に、最後の脱水工程以外の9工程の洗濯工程は水位連動洗濯工程である。実施例1と実施例2の洗濯パターンの違いは各洗濯工程の所要時間にある。実施例1に比べて実施例2では、10工程の洗濯工程のうち、加工工程の所要時間を9.0分から7.5分に、洗い工程の所要時間を15.0分から12.0分に、すすぎ工程の所要時間を8.0分から6.5分にそれぞれ短縮し、他の洗濯工程の所要時間は実施例1と同じとして、洗濯パターンの実行に要する合計所要時間を、実施例1の40分から実施例2では34分と、15%短縮している。
【0100】
表3が示すように、実施例2における洗浄率は(10.4±0.39)%であった。この洗浄率は、比較例2における洗浄率(10.0±0.50)%とほぼ同等である。従って、給排水や被洗物による保水、水位低下に伴う補充給水、昇温用蒸気の凝結、薬品の投入等による水位変動に応じて、ドラムの回転数を常に、最大の洗浄効率を与える最大メカニカルアクション回転数でもある水位連動回転数にリアルタイムで自動的に追随させることにより、実施例2では15%短い合計所要時間で、脱水工程以外の9工程の洗濯工程を3つの設定回転数を使い分けて洗濯する比較例2と同等の洗浄性を確保できることがわかる。
【0101】
実施例1及び実施例2は、モップ1のタタキ洗いの場合の洗浄率を、従来の洗濯方法である比較例1及び比較例2と比較したものであるが、商品種がモップ1を含む各種のモップの場合や各種のマットの場合についても、洗い方がタタキ洗いか揉み洗いかを問わず、本発明の、ドラムの回転数を常に、最大の洗浄効率を与える最大メカニカルアクション回転数でもある水位連動回転数にリアルタイムで自動的に追随させる洗濯方法により、従来の、一連の洗濯工程を通じて一定の設定回転数を用いる洗濯方法や、脱水工程以外の9工程の洗濯工程を3つの設定回転数を使い分けて洗濯する洗濯方法に比べて、洗浄率を約10~15%向上させることができ、又、約10~15%短い合計所要時間で、従来の上記3つの設定回転数を使い分けて洗濯する洗濯方法と同等の洗浄性を確保することができる。
【0102】
図12は、本発明の洗濯装置における被洗物の軌跡の特徴や電流値の洗濯装置依存性を説明するための説明図である。本発明の洗濯装置N又はMに200kgのモップ1を投入し、水位レベルを6又は8に固定してモップ1のタタキ洗いを行い、ドラム20の回転数を表5に示すいくつかの値の1つに固定して、被洗物27の軌跡を観察し、又、モータ31を駆動する電流値を測定した。
【0103】
【表5】

【表6】
【0104】
洗濯装置Nについて述べれば、表5の実施例3に示すように、水位レベルが6ならば回転数29rpmが最大メカニカルアクション回転数となる。図12の被洗物の軌跡80aが示すように、この回転数29rpmで落下高さが最大となり、落下角度は55°である。本発明者は、一般にタタキ洗いの場合に、ドラム20が最大メカニカルアクション回転数で回転している状態では、水位や被洗物の投入負荷量、ドラムの形状に依らず、被洗物の落下角度が約55°(誤差は±2°以内)となることを経験則として知っている。
表5の比較例3及び図12が示すように、水位レベルが6で回転数27rpmの場合には、落下高さは実施例3よりも小さく、被洗物の軌跡80bが示すように落下角度は50°である。比較例3は最大メカニカルアクションが被洗物に作用する状態ではない。
表5の比較例4が示すように、ドラム20の回転数が実施例3と同じ29rpmであっても、水位レベルが8になると、回転数29rpmは最大メカニカルアクション回転数ではなくなる。実際、落下角度は50°であり、55°とは異なっている。
【0105】
洗濯装置Mについて述べれば、表5の実施例4、5に示すように、水位レベルが6ならば回転数29rpmが最大メカニカルアクション回転数となり、水位レベルが8ならば回転数31rpmが最大メカニカルアクション回転数となる。実施例4、5のいずれにおいても、落下角度は55°である。
同じ水位レベル6で洗濯装置NとMを比較すると、洗濯装置Nでは最大メカニカルアクション回転数が29rpm、電流値が31~33Aであるのに対し(実施例3)、洗濯装置Mでは同じく27rpmと15~17Aである(実施例4)。表6に示すように、洗濯装置NとMではドラム20の半径は同一であるから、同じ最大落下距離を実現するために、洗濯装置Mでは洗濯装置Nに比べて、より小さい回転数と電流値(及び消費電力)しか必要としないことがわかる。これには、表6に示す、洗濯装置NとMの特性の違い、すなわち、ビータ21の個数、ビータ21の頂角、及び内外胴間クリアランス18の違いが影響している。
一般に、ドラム20の半径が同一であっても、ビータ21の個数が多いほど、又、ビータ21の頂角が小さいほど被洗物27が効率的に掻きあげられ、更に、内外胴間クリアランス18が小さいほどドラム20や被洗物27と共に回転する洗濯水24の量が少なくて済むから消費電力が少なくて済み、結果として、より少ない回転数と消費電力で、被洗物27に対する大きなメカニカルアクションを確保できるのである。
【0106】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明に係る水位連動回転数自動追随型の洗濯方法及び洗濯装置は、水位を計測して、ドラムの回転数を、水位の関数としての水位連動回転数に自動的に追随させて洗濯を行うから、常に洗浄効率が最大となる最大メカニカルアクション回転数若しくはその回転数に近い回転数で洗濯が行われるため、被洗物の洗浄性を格段に向上させることに成功した。又、大幅に短い所要時間で、従来と同等の洗浄性を確保することが可能になった。
当該洗濯方法及び洗濯装置は、洗浄性の向上のみならず、洗濯所要時間の削減、洗濯水量や洗剤・薬品の使用量の節減、洗濯温度の低温化、使用電力量の節減を達成し、モップやマットのレンタル業界に画期的な洗濯技術を導入するものである。
【符号の説明】
【0108】
1 水位連動回転数自動追随型の洗濯装置
10 洗濯機
11 ケーシング(外胴)
12 給水管
13 排水管
14 直径
15 半径
16 LEVEL
17 最下点
18 内外胴間クリアランス
20 ドラム(内胴)
21 ビータ
22 回転軸
23 矢印
24 洗濯水
25 水面
26 水位
27 被洗物
28 被洗物表面
30 回転数制御手段
31 モータ
32 回転数指令
33 水位計測手段
34 水位センサ
35 水位調節手段
36 給水弁
37 排水弁
40 制御部
41 CPU
42 入力装置
43 出力装置
44 記憶部
45 RAM
46 ROM
47 記憶媒体
50 水位変動曲線
51 水位レベル2への給水
52 水位レベル6への給水
53 水位レベル8への給水
54 排水
55 被洗物保水による水位低下
56 昇温用蒸気の凝結による水位上昇
57 水位低下に伴う補充給水
60 比較例1における回転数の変動曲線
61 比較例2における回転数の変動曲線
62 実施例1における回転数の変動曲線
洗濯パターン1における水位連動回転数のグラフ
洗濯パターン2における水位連動回転数のグラフ
洗濯パターン3における水位連動回転数のグラフ
洗濯パターン4における水位連動回転数のグラフ
洗濯パターンAにおける水位連動回転数のグラフ
洗濯パターンBにおける水位連動回転数のグラフ
洗濯パターンCにおける水位連動回転数のグラフ
70 水位の1次関数のグラフ
71 水位の略1次関数のグラフ
72 上限直線
73 下限直線
74 水位レベル2に対応した最大メカニカルアクション回転数f2を示す点
75 水位レベル6に対応した最大メカニカルアクション回転数f6を示す点
76 水位レベル8に対応した最大メカニカルアクション回転数f8を示す点
77 5%又は3%の幅を示す両矢印
80 被洗物の軌跡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12