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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】車両の駆動力制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20220202BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20220202BHJP
   B60K 6/44 20071001ALI20220202BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20220202BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20220202BHJP
   B60W 20/10 20160101ALI20220202BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20220202BHJP
【FI】
B60L15/20 S ZHV
B60L50/16
B60K6/44
B60K6/52
B60W10/08 900
B60W20/10
B60W20/00 900
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017187444
(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公開番号】P2019062706
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】守屋 史之
(72)【発明者】
【氏名】家永 寛史
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/075812(WO,A1)
【文献】特開2009-273274(JP,A)
【文献】特開2016-222151(JP,A)
【文献】特開2010-158944(JP,A)
【文献】特開2005-204436(JP,A)
【文献】特開2016-088381(JP,A)
【文献】特開平09-284911(JP,A)
【文献】特開2007-276674(JP,A)
【文献】特開2002-227679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 10/30
B60W 20/00 - 20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる駆動系統を駆動する複数の駆動源を備える車両に搭載され、前記複数の駆動源の動作を制御する車両の駆動力制御装置であって、
前記複数の駆動源それぞれの温度情報を取得する温度取得手段と、
前記複数の駆動源それぞれの出力上限値を、当該駆動源の温度情報に基づいて設定する出力上限設定手段と、
前記複数の駆動源に出力させる総駆動力を当該複数の駆動源に配分する配分比率の許可範囲を設定する許可範囲設定手段と、
前記複数の駆動源を前記配分比率の許可範囲内かつ前記出力上限値以下の各駆動力で駆動する駆動制御手段と、
を備え、
前記駆動制御手段は、
前記複数の駆動源のうちの一の駆動源の出力が前記出力上限値により制限されている状態から、当該出力上限値の上昇に伴って前記一の駆動源の出力を増加させるときに、
前記総駆動力が前記車両に与えられる要求駆動力未満であり、かつ、前記一の駆動源の温度が第1温度以下まで低下した場合には、前記一の駆動源の出力を増加させて前記総駆動力を増加させる第1出力制御を実施し、
前記第1出力制御により前記総駆動力が前記要求駆動力に達し、かつ、前記一の駆動源の温度が前記第1温度よりも低い第2温度以下まで低下した場合には、前記一の駆動源の出力を増加させつつ、前記複数の駆動源のうち当該一の駆動源を除く他の駆動源の出力を減少させて、前記総駆動力を維持させる第2出力制御を実施し、
前記第1出力制御では、前記出力上限値の上昇に応じて前記一の駆動源の出力を増加させ、前記第2出力制御では、前記出力上限値の上昇に対して前記一の駆動源の出力の増加を遅延させることを特徴とする車両の駆動力制御装置。
【請求項2】
前記駆動制御手段は、前記第1出力制御では、前記配分比率を前記一の駆動源における前記許可範囲の下限としつつ当該一の駆動源の出力を増加させて、前記総駆動力を増加させることを特徴とする請求項1に記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項3】
前記駆動制御手段は、前記第2出力制御では、前記第1出力制御により前記総駆動力が前記要求駆動力に達してから、所定時間だけ前記配分比率を前記一の駆動源における前記許可範囲の下限に維持させることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項4】
前記駆動制御手段は、前記第2出力制御では、前記第1出力制御により前記総駆動力が前記要求駆動力に達した場合に、当該総駆動力を維持させつつ、前記出力上限値以下の範囲内で前記一の駆動源の出力を増加させることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項5】
前記駆動制御手段は、前記第2出力制御では、前記第1出力制御により前記総駆動力が前記要求駆動力に達した場合に、前記他の駆動源の温度情報に基づいて、前記配分比率を前記一の駆動源における前記許可範囲の下限に維持させるか、或いは、前記出力上限値以下の範囲内で前記一の駆動源の出力を増加させつつ前記他の駆動源の出力を減少させて前記総駆動力を維持させるかを選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項6】
前記車両の走行状態を検知する検知手段を備え、
前記許可範囲設定手段は、前記走行状態に基づいて、所要の走行安定性が得られる前記配分比率の範囲として前記許可範囲を設定することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項7】
前記複数の駆動源が、前輪の動力を発生させる前輪モータと、後輪の動力を発生させる後輪モータとから構成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項8】
前記複数の駆動源が、前輪の動力を発生させるエンジンと、後輪の動力を発生させるモータとから構成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項9】
前記出力上限設定手段は、モータの出力上限値を設定するMCUであり、
前記駆動制御手段は、前記出力上限設定手段から出力された前記出力上限値に基づいてモータを駆動制御するEVCUであることを特徴とする請求項7又は8に記載の車両の駆動力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の駆動源を有する車両の駆動力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車またはハイブリッド電気自動車の分野において、複数の駆動源から複数の車輪へ個別に動力を伝達して走行する車両(以下、独立駆動車両という。)が提案されている。このような車両では、運転操作に応じた要求駆動力或いは要求トルクを出力する際、複数の駆動源にどのように動力を配分するか自由度が生じる。
【0003】
このような独立駆動車両において、駆動源としてモータ等が採用されている場合、その発熱(温度)などの状態に応じてこの駆動源の出力を制限する必要が生じる。
そして、一の駆動源を出力制限された状態から復帰させる際には、復帰後に再び熱等により出力が制限されないよう、十分に温度が下がってから制限解除を行う必要がある(例えば、特許文献1,2参照)。
そのため、車両の総駆動力を回復させるまでに時間を要するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-247205号公報
【文献】特開2005-204436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、一の駆動源の出力制限を解除する場合に、従来よりも速やかに車両の総駆動力を回復させることができる車両の駆動力制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
それぞれ異なる駆動系統を駆動する複数の駆動源を備える車両に搭載され、前記複数の駆動源の動作を制御する車両の駆動力制御装置であって、
前記複数の駆動源それぞれの温度情報を取得する温度取得手段と、
前記複数の駆動源それぞれの出力上限値を、当該駆動源の温度情報に基づいて設定する出力上限設定手段と、
前記複数の駆動源に出力させる総駆動力を当該複数の駆動源に配分する配分比率の許可範囲を設定する許可範囲設定手段と、
前記複数の駆動源を前記配分比率の許可範囲内かつ前記出力上限値以下の各駆動力で駆動する駆動制御手段と、
を備え、
前記駆動制御手段は、
前記複数の駆動源のうちの一の駆動源の出力が前記出力上限値により制限されている状態から、当該出力上限値の上昇に伴って前記一の駆動源の出力を増加させるときに、
前記総駆動力が前記車両に与えられる要求駆動力未満であり、かつ、前記一の駆動源の温度が第1温度以下まで低下した場合には、前記一の駆動源の出力を増加させて前記総駆動力を増加させる第1出力制御を実施し、
前記第1出力制御により前記総駆動力が前記要求駆動力に達し、かつ、前記一の駆動源の温度が前記第1温度よりも低い第2温度以下まで低下した場合には、前記一の駆動源の出力を増加させつつ、前記複数の駆動源のうち当該一の駆動源を除く他の駆動源の出力を減少させて、前記総駆動力を維持させる第2出力制御を実施し、
前記第1出力制御では、前記出力上限値の上昇に応じて前記一の駆動源の出力を増加させ、前記第2出力制御では、前記出力上限値の上昇に対して前記一の駆動源の出力の増加を遅延させることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の駆動力制御装置において、
前記駆動制御手段は、前記第1出力制御では、前記配分比率を前記一の駆動源における前記許可範囲の下限としつつ当該一の駆動源の出力を増加させて、前記総駆動力を増加させることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両の駆動力制御装置において、
前記駆動制御手段は、前記第2出力制御では、前記第1出力制御により前記総駆動力が前記要求駆動力に達してから、所定時間だけ前記配分比率を前記一の駆動源における前記許可範囲の下限に維持させることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両の駆動力制御装置において、
前記駆動制御手段は、前記第2出力制御では、前記第1出力制御により前記総駆動力が前記要求駆動力に達した場合に、当該総駆動力を維持させつつ、前記出力上限値以下の範囲内で前記一の駆動源の出力を増加させることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両の駆動力制御装置において、
前記駆動制御手段は、前記第2出力制御では、前記第1出力制御により前記総駆動力が前記要求駆動力に達した場合に、前記他の駆動源の温度情報に基づいて、前記配分比率を前記一の駆動源における前記許可範囲の下限に維持させるか、或いは、前記出力上限値以下の範囲内で前記一の駆動源の出力を増加させつつ前記他の駆動源の出力を減少させて前記総駆動力を維持させるかを選択することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の車両の駆動力制御装置において、
前記車両の走行状態を検知する検知手段を備え、
前記許可範囲設定手段は、前記走行状態に基づいて、所要の走行安定性が得られる前記配分比率の範囲として前記許可範囲を設定することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載の車両の駆動力制御装置において、
前記複数の駆動源が、前輪の動力を発生させる前輪モータと、後輪の動力を発生させる後輪モータとから構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載の車両の駆動力制御装置において、
前記複数の駆動源が、前輪の動力を発生させるエンジンと、後輪の動力を発生させるモータとから構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の車両の駆動力制御装置において、
前記出力上限設定手段は、モータの出力上限値を設定するMCUであり、
前記駆動制御手段は、前記出力上限設定手段から出力された前記出力上限値に基づいてモータを駆動制御するEVCUであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、一の駆動源の出力が制限されている状態から、出力上限値の上昇に伴って当該一の駆動源の出力を増加させるときに、車両の総駆動力が要求駆動力未満であった場合には、一の駆動源の出力を増加させて総駆動力を増加させる第1出力制御が実施される。そして、この第1出力制御により総駆動力が要求駆動力に達したら、一の駆動源の出力を増加させつつ他の駆動源の出力を減少させて総駆動力を維持させる第2出力制御が実施される。このとき、第1出力制御では、出力上限値の上昇に応じて一の駆動源の出力を増加させ、第2出力制御では、出力上限値の上昇に対して一の駆動源の出力の増加を遅延させる。
このように、総駆動力を優先的に回復させるように段階的に出力制限を解除することにより、単に十分な温度低下を確認してから一時に出力制限を解除していた従来に比べ、速やかに車両の総駆動力を回復させることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、一の駆動源の出力を増加させて総駆動力を増加させるときに、配分比率が一の駆動源における許可範囲の下限とされるので、一の駆動源の出力を極力抑えつつ車両の総駆動力を回復させることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、増加させた総駆動力が要求駆動力に達したときに、配分比率が一の駆動源における許可範囲の下限に所定時間だけ維持される。
これにより、一の駆動源の出力を極力抑えることでき、当該一の駆動源の温度低下を促進させることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、増加させた総駆動力が要求駆動力に達した場合に、当該総駆動力が維持されつつ、出力上限値以下の範囲内で一の駆動源の出力が増加される。
これにより、配分比率を早期に理想配分に近づけることができ、ひいては、速やかに走行安定性を回復させることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、増加させた総駆動力が要求駆動力に達した場合に、複数の駆動源のうちの一の駆動源を除く他の駆動源の温度情報に基づいて、配分比率を一の駆動源における許可範囲の下限に維持させるか、或いは、出力上限値以下の範囲内で一の駆動源の出力を増加させつつ他の駆動源の出力を減少させて総駆動力を維持させるかが選択される。
これにより、例えば他の駆動源の温度を抑制したい場合には後者の処理を選択するなどして、他の駆動源の温度を制御することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、検知手段に検知された車両の走行状態に基づいて、所要の走行安定性が得られる配分比率の範囲としてその許可範囲が設定されるので、配分比率を許可範囲内に保持することで、より確実に走行安定性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態における車両の概略構成を示す構成図である。
図2】実施形態における駆動力配分処理の流れを示すフローチャートである。
図3】駆動力配分処理における駆動力の配分比率の一例を示すグラフである。
図4】駆動力配分処理における後輪モータの温度チャートの一例である。
図5】駆動力配分処理における駆動力の配分比率の一例を示すグラフである。
図6】駆動力配分処理における駆動力の配分比率の一例を示すグラフである。
図7】駆動力配分処理における駆動力の配分比率の一例を示すグラフである。
図8】駆動力配分処理における総駆動力、各モータ駆動力及び駆動力配分率のタイムチャートの一例である。
図9】実施形態における車両の概略構成の一変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
<構成>
まず、本実施形態に係る車両1の構成について説明する。図1は、車両1の概略構成を示す構成図である。
【0024】
この図に示すように、車両1は、前輪2と後輪3とを互いに独立してモータ駆動させる電気自動車(EV:Electric Vehicle)である。具体的に、車両1は、左右の前輪2、左右の後輪3、前輪モータ11、後輪モータ12、前輪トランスミッション13、後輪トランスミッション14、ラジエータ15、EVCU(Electric Vehicles Control Unit)20、及びセンサ群(31~39)を備える。これらのうち、前輪モータ11及び後輪モータ12は、本発明に係る複数の駆動源の一例に相当する。また、前輪2及び前輪トランスミッション13と、後輪3及び後輪トランスミッション14とは、本発明に係る複数の駆動系統の一例に相当する。
【0025】
本実施形態に係る車両1の駆動力制御装置(以下、単に「駆動力制御装置」という。)100は、車両1に搭載されて前輪モータ11及び後輪モータ12の動作を制御する装置であり、特に、これら前輪モータ11及び後輪モータ12の一方が出力を制限された場合に、その制限解除に伴う駆動力復帰を好適に行えるものである。この駆動力制御装置100は、上述した構成のうち、EVCU20とセンサ群(31~39)とを含んだ部分に相当する。
【0026】
前輪モータ11及び後輪モータ12は、EVCU20からの指令に基づいて前後輪の駆動系統を個別に駆動する。具体的には、前輪モータ11が前輪トランスミッション13を介して左右の前輪2を駆動させ、後輪モータ12が後輪トランスミッション14を介して左右の後輪3を駆動させる。より詳しくは、前輪モータ11及び後輪モータ12の各々に対応した図示しない駆動回路が、EVCU20からの指令に応じてバッテリの電力を変換して前輪モータ11及び後輪モータ12へ出力し、前輪モータ11及び後輪モータ12が、この電力に基づいて動力を発生させる。
【0027】
ラジエータ15は、車両1の各種機器を冷却するためのものであり、本実施形態においては、前輪モータ11及び後輪モータ12を冷却する。このラジエータ15と前輪モータ11及び後輪モータ12とは、図示しない循環ポンプが設けられた配管を介して連結されており、この配管に冷却水を循環させることで前輪モータ11及び後輪モータ12が水冷される。
【0028】
EVCU20は、車両1を統合制御するものである。具体的に、EVCU20は、本実施形態においては、車両1に与えられる要求駆動力が、左右の前輪2の駆動力と、左右の後輪3の駆動力とに適切に配分されるように、指令を出力する。要求駆動力は、例えば乗員の運転操作(例えばアクセル操作量を表すアクセルセンサ35のセンサ信号)によって車両1に与えられる。EVCU20は、駆動力の配分が実現されるように、前輪モータ11及び後輪モータ12の各々に目標出力(目標トルク)の指令を出力する。
【0029】
センサ群は、車両1の走行状態を検出するセンサとして、例えば、前後加速度センサ31と、左右加速度センサ32と、ヨーレートセンサ33と、車輪速センサ34とを含む。前後加速度センサ31は、車両1の前後方向の加速度を検出する。左右加速度センサ32は、車両1の左右方向の加速度を検出する。ヨーレートセンサ33は、車両1のヨーレートを検出する。車輪速センサ34は、左右の前輪2及び左右の後輪3の各々の車輪速(回転速度)を検出する。
【0030】
また、センサ群は、乗員の運転操作を検出するセンサとして、アクセルセンサ35と、操舵角センサ36と、ブレーキセンサ37とを含む。アクセルセンサ35は、乗員のアクセル操作量を検出する。操舵角センサ36は、乗員のハンドル操作量を検出する。ブレーキセンサ37は、乗員のブレーキ操作量を検出する。
さらに、センサ群は、前輪モータ11及び後輪モータ12の出力制限を検知するセンサとして、前輪モータ11の温度計38と、後輪モータ12の温度計39と、上述した車輪速センサ34とを含む。
【0031】
<駆動力配分処理>
続いて、駆動力制御装置100が駆動力を前輪モータ11及び後輪モータ12に配分する駆動力配分処理について説明する。
図2は、この駆動力配分処理の流れを示すフローチャートであり、図3図5図7は、駆動力配分処理における前輪モータ11及び後輪モータ12への駆動力の配分比率の一例を示すグラフであり、図4は、駆動力配分処理における後輪モータ温度Trmの温度チャートの一例である。また、図8は、駆動力配分処理における総駆動力、各モータ駆動力及び駆動力配分率のタイムチャートの一例である。
【0032】
駆動力配分処理は、車両1が走行モードの際に、数ミリ秒など短い周期で繰り返し実行される。
この駆動力配分処理が開始されると、図2に示すように、まずEVCU20は、前輪モータ温度計38及び後輪モータ温度計39を含むセンサ群(31~39)の各センサ値を取得する(ステップS1)。これらのうち、例えばアクセルセンサ35のセンサ値は、前輪モータ11及び後輪モータ12が出力すべき駆動力の総計である要求駆動力として入力される。
【0033】
次に、EVCU20は、要求駆動力の配分比率(要求駆動力を前輪モータ11及び後輪モータ12に配分するその比率)の基準となる基準比率を決定する(ステップS2)。基準比率は、例えば車両1の走行状態に応じて、高い走行安定性が得られる要求駆動力の配分比率として決定される。
【0034】
具体的に、このステップS2では、まずEVCU20は、車両1の荷重配分に応じたベース基準比率を算出する。ベース基準比率は、例えば勾配のない道路を直進して走行する際に、走行安定性が最も高くなる理想的な駆動力の配分比率である。車両1の荷重配分は、取得された複数のセンサ値のうち、前後加速度と左右加速度の値に基づいて算出される。
次に、EVCU20は、操舵角に対応した基準比率の変化量と、道路勾配に対応した基準比率の変化量とを各々算出する。操舵角は、操舵角センサ36の出力値から取得され、道路勾配は、例えばアクセル操作量と車速の変化量との関係から推定される。EVCU20は、操舵角及び道路勾配の各々と基準比率の変化量との関係を示すデータテーブルを予め記憶しており、これらのデータテーブルを用いて操舵角及び道路勾配から基準比率の変化量を算出する。
そして、EVCU20は、操舵角及び道路勾配に対応した基準比率の各変化量をベース基準比率に統合させて、基準比率を算出する。
【0035】
こうして求められた基準比率は、車両の荷重配分と、走行状態を表す個々の補正パラメータ(操舵角および道路勾配)とに対応して、高い走行安定性を実現する理想的な配分比率となる。ただし、走行状態を表す補正パラメータは操舵角と道路勾配に限定されず、理想的な駆動力の配分比率に影響を与えるパラメータであれば、他のパラメータを用いて同様の補正処理を行ってもよい。
【0036】
次に、EVCU20は、車両1の走行状態に基づいて、要求駆動力の配分比率の許可範囲を設定する(ステップS3)。許可範囲は、要求駆動力の配分比率として選択可能な比率の範囲を示すものであり、車両の走行安定性を妨げない配分比率の範囲として設定される。
【0037】
具体的に、このステップS3では、まずEVCU20は、取得された複数のセンサ値に基づいて、車両1の走行状態を表す複数のパラメータの値を算出する。複数のパラメータとしては、例えば、車速、スリップ率、前後加速度、横加速度、アンダーステア度合、オーバーステア度合、ブレーキ操作量などが含まれる。これら複数のパラメータは、走行安定性の必要度に影響を与えるパラメータである。
次に、EVCU20は、算出された複数のパラメータの各値と個別に対応した上限側許容幅および下限側許容幅の幅長を算出する。ここで、上限側許容幅とは、走行安定性を妨げない範囲で前輪2への駆動力の配分比率を高くできる許容幅であり、下限側許容幅とは、走行安定性を妨げない範囲で後輪3への駆動力の配分比率を高くできる許容幅である。個々のパラメータの値と、上限側許容幅及び下限側許容幅との関係は、これらが互いに対応付けられたデータテーブル又は関数の形式で予め記憶されている。これらの関係は、走行安定性の必要度が高くなれば許容幅が小さくなり、走行安定性の必要度が低くなれば許容幅が大きくなるような対応関係である。EVCU20は、これらのデータテーブル又は関数を用い、複数のパラメータの各々について上限側許容幅と下限側許容幅とを算出する。
なお、車両1の挙動に乱れのない走行状態においては、上限側許容幅と下限側許容幅とは同じ大きさになる。しかし、アンダーステア傾向時或いはオーバーステア傾向時などの車両1の挙動に乱れが生じた走行状態においては、上限側許容幅と下限側許容幅とは同じ大きさにならない。例えばアンダーステア傾向が弱く現れた場合、前輪2の駆動力の比率を高めるとアンダーステア傾向を助長してしまう。そのため、前輪2への駆動力の配分比率を高くできる許容幅は、後輪3への駆動力の配分比率を高くできる許容幅よりも小さくなる。したがって、アンダーステア度合に応じた上限側許容幅は下限側許容幅よりも小さく設定される。一方、オーバーステア度合に応じた上限側許容幅は、アンダーステア度合の場合とは反対に、下限側許容幅よりも大きく設定される。
【0038】
複数のパラメータの各々に対応した複数の上限側許容幅と複数の下限側許容幅とを算出したら、EVCU20は、これらの中から最小の上限側許容幅と、最小の下限側許容幅とを抽出する。そして、EVCU20は、これら最小の上限側許容幅及び下限側許容幅を基準比率に付加して、配分比率の許可範囲を算出する。これにより、複数のパラメータの全てに関して所要の走行安定性が得られる配分比率の許容幅を求めることができる。
【0039】
次に、EVCU20は、前輪モータ温度計38及び後輪モータ温度計39から取得した前輪モータ11及び後輪モータ12の各温度や車速等に基づいて、これら前輪モータ11及び後輪モータ12それぞれの出力上限値を設定する(ステップS4)。
【0040】
次に、EVCU20は、配分比率の許可範囲内かつ出力上限値以下の各駆動力となるように、前輪モータ11及び後輪モータ12に駆動力を配分する(ステップS5)。
【0041】
次に、EVCU20は、前輪モータ11及び後輪モータ12のいずれかが出力を制限されているか否かを判定する(ステップS6)。
本実施形態においては、図3及び図4に示すように、後輪モータ温度Trmが通常時(出力制限されていないとき)の後輪モータ12の出力制限温度Tsを超えるまで上昇したことに伴って(図4のf1)、後輪モータ12の出力上限値Fが低下し、後輪モータ12が出力を制限されているものとする。そして、この出力上限値Fの低下に応じて後輪モータ12の出力値が減少されつつ前輪モータ11の出力値もやや減少されて、配分比率Rが所定の理想配分比率DRi(例えば上述の基準比率)から上限側許容限界PL1上に変更されたものとする。ただし、このときの配分比率Rは、許可範囲DR内であればよく、上限側許容限界PL1上でなくともよい。ここで、上限側許容限界PL1とは、許可範囲DRにおける配分比率Rの許容限界のうち、前輪2への駆動力の配分比率が高い方であり、下限側許容限界PL2とは、後輪3への駆動力の配分比率が高い方である。
こうして後輪モータ12の出力値を減少させることで、後輪モータ温度Trmが低下していき、これに伴って出力上限値Fが上昇する。
【0042】
ステップS6において、前輪モータ11及び後輪モータ12のいずれも出力制限されていないと判定した場合(ステップS6;No)、EVCU20は、上述のステップS1へ処理を移行する。
【0043】
一方、ステップS6において、前輪モータ11及び後輪モータ12のいずれかが出力を制限されていると判定した場合には(ステップS6;Yes)、EVCU20は、車両1の総駆動力(前輪モータ11及び後輪モータ12の合計出力)が要求駆動力未満か否かを判定する(ステップS7)。
そして、総駆動力が要求駆動力に達していた場合(ステップS7;No)、EVCU20は、後述のステップS9へ処理を移行する。なお、ここでは、総駆動力が要求駆動力を超える場合はないものとする。
【0044】
また、ステップS7において、総駆動力が要求駆動力未満であった場合には(ステップS7;Yes)、EVCU20は、出力制限された一方のモータの出力をその出力上限値の回復(上昇)に応じて増加させ、総駆動力を要求駆動力まで増加させる第1出力制御を実施する(ステップS8)。
本実施形態では、後輪モータ温度Trmが第1温度T1以下まで低下した場合に(図4のf2)、EVCU20は、図5及び図8に示すように、出力上限値Fの上昇に伴って後輪モータ12の出力を増加させつつ前輪モータ11の出力も増加させる(図8の(I))。そして、EVCU20は、配分比率Rを上限側許容限界PL1(後輪モータ12における許可範囲DRの下限)上に維持させつつ、総駆動力を要求駆動力まで増加させる。ここで、第1温度T1とは、特に限定はされないが、例えば、この第1温度T1の状態での一方のモータに所定の負荷(例えば一定時間の最大出力など)を与えた場合でも、当該一方のモータの温度が出力制限温度Tsを超えないような温度である(図4の二点鎖線参照)。この第1温度T1は、当該一方のモータを冷却するラジエータ15の冷却能力等に基づいて予め設定されている。
これにより、走行安定性を維持できる範囲内で後輪モータ12の出力を極力抑えつつ、総駆動力を優先して回復させることができる。
ただし、このときには、出力上限値F以下の範囲で後輪モータ12の出力を増加させつつ総駆動力を増加させればよく、配分比率Rを上限側許容限界PL1上に維持させなくともよい。
【0045】
総駆動力が要求駆動力に達したら、EVCU20は、出力制限された一方のモータの出力を増加させつつ、出力制限されていない他方のモータの出力を減少させて、総駆動力を維持させる第2出力制御を実施する(ステップS9)。
本実施形態では、後輪モータ温度Trmが第2温度T2以下まで低下した場合に(図4のf3)、EVCU20は、図6に示すように、後輪モータ12の出力制限をさらに解除して総駆動力を維持させつつ出力を増加させ、配分比率Rを理想配分比率DRiに復帰させる。ここで、第2温度T2とは、第1温度T1よりも低い温度であって、例えば一方のモータが出力制限を完全に解除できる程度に十分に冷却されたと判断できる温度である。この第2温度T2は、当該一方のモータを冷却するラジエータ15の冷却能力等に基づいて予め設定されている。
【0046】
このステップS9の第2出力制御では、EVCU20は、出力上限値の上昇に対して一方のモータの出力の増加を遅延させる。この場合の遅延態様は特に限定されない。
例えば、図7(a)及び図8に示すように、総駆動力が要求駆動力に達してから、所定時間だけ配分比率Rを上限側許容限界PL1に維持させたままとしてもよい(図8の(II)~(III))。これにより、後輪モータ12の出力を抑えて、その冷却を促進させることができる。
ただし、この場合には、図7(b)に示すように、要求駆動力を維持させつつ出力上限値F以下の範囲で後輪モータ12の出力を増加させて、配分比率Rを理想配分比率DRiに近づけてもよい。これにより、総駆動力の回復とともに、走行安定性も回復させることができる。
なお、これらいずれの処理を選択するかは、特に限定はされないが、前輪モータ11(つまり、出力制限されていない他方のモータ)のモータ温度に基づいて決めてもよい。例えば、前輪モータ11のモータ温度がさほど上昇していないときには、図7(a)に示す前者の処理を選択しておき、前輪モータ11のモータ温度が上昇してきたら、図7(b)に示す後者の処理に切り替えて前輪モータ11の出力を抑えるなどとしてもよい。
【0047】
次に、EVCU20は、駆動力配分処理を終了させるか否かを判定し(ステップS10)、終了させないと判定した場合には(ステップS10;No)、上述のステップS1へ処理を移行する。そして、車両1の走行状態の検出とそれに基づく駆動力の配分等とが順次繰り返される。
一方、例えば車両1が停止するなどにより駆動力配分処理を終了させると判定した場合には(ステップS10;Yes)、EVCU20は、駆動力配分処理を終了させる。
【0048】
<効果>
以上のように、本実施形態の駆動力制御装置100によれば、後輪モータ12の出力が制限されている状態から、出力上限値Fの上昇に伴って当該後輪モータ12の出力を増加させるときに、車両1の総駆動力が要求駆動力未満であった場合には、後輪モータ12の出力を増加させて総駆動力を増加させる第1出力制御が実施される。そして、この第1出力制御により総駆動力が要求駆動力に達したら、後輪モータ12の出力を増加させつつ前輪モータ11の出力を減少させて総駆動力を維持させる第2出力制御が実施される。このとき、第1出力制御では、出力上限値Fの上昇に応じて後輪モータ12の出力を増加させ、第2出力制御では、出力上限値Fの上昇に対して後輪モータ12の出力の増加を遅延させる。
このように、総駆動力を優先的に回復させるように段階的に出力制限を解除することにより、単に十分な温度低下を確認してから一時に出力制限を解除していた従来に比べ、速やかに車両1の総駆動力を回復させることができる。
【0049】
また、後輪モータ12の出力を増加させて総駆動力を増加させるときに、配分比率Rが上限側許容限界PL1(すなわち後輪モータ12における許可範囲DRの下限)とされるので、後輪モータ12の出力を極力抑えつつ車両1の総駆動力を回復させることができる。
【0050】
また、総駆動力が要求駆動力に達したときに、配分比率Rを上限側許容限界PL1に所定時間だけ維持させてもよい。
これにより、後輪モータ12の出力を極力抑えることでき、当該後輪モータ12の温度低下を促進させることができる。
【0051】
また、総駆動力が要求駆動力に達した場合に、当該総駆動力を維持させつつ、出力上限値F以下の範囲内で後輪モータ12の出力を増加させてもよい。
これにより、配分比率Rを早期に理想配分比率DRiに近づけることができ、ひいては、速やかに走行安定性を回復させることができる。
【0052】
また、この場合に、前輪モータ11の温度に基づいて、配分比率Rを上限側許容限界PL1に維持させるか、或いは、出力上限値F以下の範囲内で後輪モータ12の出力を増加させつつ前輪モータ11の出力を減少させて総駆動力を維持させるかを選択してもよい。
これにより、例えば前輪モータ11の温度を抑制したい場合には後者の処理を選択するなどして、前輪モータ11の温度を制御することができる。
【0053】
また、センサ群に検知された車両1の走行状態に基づいて、所要の走行安定性が得られる配分比率Rの範囲としてその許可範囲DRが設定されるので、配分比率Rを許可範囲DR内に保持することで、より確実に走行安定性を維持することができる。
【0054】
<変形例>
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態では、複数の駆動源として前輪モータ11と後輪モータ12とを適用した例を示した。しかし、複数の駆動源は、モータに限られず、例えば前輪の動力をエンジン(内燃機関)が発生させ、後輪の動力をモータが発生させるなどのように、エンジンを含んでいてもよい。すなわち、車両は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)としてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、前輪2と後輪3とで駆動力を配分する例を示した。しかし、前後左右の個々の車輪ごと、或いは、2つの後輪と、左前輪と、右前輪との3組の車輪ごとなど、駆動力を配分する車輪の組み合わせは適宜変更可能である。
さらに、複数の駆動系統に対応する駆動源の数量の組合せも特に限定されない。例えば、前輪モータ11を1つ、後輪モータ12を2つとしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、駆動系統として前輪トランスミッション13及び後輪トランスミッション14を含むものを示したが、トランスミッションは無くても良く、例えばトランスミッションに代わる動力伝達機構が設けられていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、前輪モータ温度計38及び後輪モータ温度計39により前輪モータ11及び後輪モータ12の各モータ温度を検知し、このモータ温度を用いて出力上限値の設定などの各種制御を行うこととした。
しかし、この各種制御に用いるパラメータは、前輪モータ11及び後輪モータ12のモータ温度に関する情報を有するものであれば、当該モータ温度自体でなくともよい。例えば、前輪モータ11及び後輪モータ12を冷却する冷却水の温度を検知する温度計を設け、この冷却水温度を用いて各種制御を行ったり、この冷却水温度からモータ温度を間接的に取得したりすることとしてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、基準比率に影響する複数種類のパラメータとして、操舵角と道路勾配とを示したが、これらに限られず、他の走行状態を表わすパラメータが含まれていてもよい。また、上記実施形態では、許可範囲の許容幅に影響する複数種類のパラメータとして、車速、スリップ率、前後加速度、等々のパラメータを示したが、他の走行状態を表わすパラメータが含まれていてもよい。また、これらのうち2つのパラメータをまとめた関数値を1つのパラメータとして扱ってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、駆動力の配分比率Rの許可範囲DRを、基準比率に許容幅を加えて計算した例を示したが、許可範囲の計算の仕方は、この方法に限られない。例えば、走行状態に応じて走行安定性が高まる配分比率Rの範囲を、許可範囲として直接求めるようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、EVCU20が各種制御を行うこととしたが、この制御主体はEVCUに限定されない。例えば、他のECU(Electric Control Unit)が各種制御を行うこととしてもよいし、センサ群からの出力が他のECUに入力されて当該他のECUがセンサ値をEVCU20に出力することなどとしてもよい。
具体的には、図9に示すように、MCU(Motor Control Unit)21が、前輪モータ温度計38及び後輪モータ温度計39から取得した前輪モータ11及び後輪モータ12の各温度等に基づいて、前輪モータ11及び後輪モータ12それぞれの出力上限値を設定することとしてもよい。そして、このMCU21から出力される各モータの出力上限値に基づいて、EVCU20が各モータを駆動制御することとすればよい。
【符号の説明】
【0062】
1 車両
2 前輪
3 後輪
11 前輪モータ
12 後輪モータ
20 EVCU
21 MCU
38 前輪モータ温度計
39 後輪モータ温度計
100 駆動力制御装置
R 配分比率
DR 許可範囲
DRi 理想配分比率
PL1 上限側許容限界
PL2 下限側許容限界
F 出力上限値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9