(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】カード状媒体計数装置およびカード状媒体計数方法
(51)【国際特許分類】
G06M 9/00 20060101AFI20220202BHJP
【FI】
G06M9/00 Z
(21)【出願番号】P 2017232324
(22)【出願日】2017-12-04
【審査請求日】2020-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 吉治
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-037623(JP,A)
【文献】特開平11-148811(JP,A)
【文献】特開2017-016573(JP,A)
【文献】特開2017-078921(JP,A)
【文献】特開2017-129376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06M 7/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に重なるカード状媒体を収容する媒体収容部と、
前記媒体収容部に収容された前記カード状媒体の枚数を算出するためのセンサと、
前記センサが搭載されるキャリッジと、
前記媒体収容部に収容された前記カード状媒体の端面に沿って前記カード状媒体の計数時に前記カード状媒体の厚さ方向へ前記センサが移動するように前記キャリッジを駆動するキャリッジ駆動機構と、
前記センサの出力信号をデジタルデータに変換して処理するデータ処理部と、を備えたカード状媒体計数装置であって、
前記データ処理部は、
前記センサから出力されるアナログ信号を所定周期でサンプリングしてデジタルデータに変換するA/D変換器と、
サンプリングしたデジタルデータを記憶するデータ記憶部と、
前記デジタルデータを一つ前にサンプリングされたデジタルデータと比較し、検出値が増加傾向から減少したデジタルデータまたは減少傾向から増加したデジタルデータを変化点として、この変化点を含む連続する少なくとも三点のデジタルデータを用いて二次近似式を求める近似式算出部と、
求めた前記二次近似式に基づき、前記変化点近傍のピーク値を算出するピーク値算出部と、
算出したピーク値に基づき、厚さ方向に重なる前記カード状媒体の枚数を計数する媒体計数部と、を有
し、
前記カード状媒体計数装置は、算出された計数値に基づき評価値を求める評価値算出部を備え、
前記評価値算出部は、
算出された計数値の確からしさに基づいて前記計数値をランク付けするランク付け処理部と、
複数の前記計数値のそれぞれを、前記計数値に対する前記ランク付けの結果に基づいて重み付けする重み付け処理部と、を有し、
前記評価値算出部は、
前記重み付けの結果に基づいて、前記複数の前記計数値のいずれかを選択する処理を行うことを特徴とするカード状媒体計数装置。
【請求項2】
前記近似式算出部は、前記変化点の前後の連続する少なくとも三点の前記デジタルデータを用いて二次近似式を求めることを特徴とする請求項1記載のカード状媒体計数装置。
【請求項3】
前記センサは、前記カード状媒体に向かって光を射出する発光素子と、前記カード状媒体で反射された光を受光する受光素子とを備える反射型の光学式センサであることを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載のカード状媒体計数装置。
【請求項4】
前記カード状媒体計数装置は、
前記カード状媒体の厚さ方向の一方を第1方向とすると、
前記カード状媒体の枚数の計測前に、前記キャリッジ駆動機構は、前記媒体収容部内で最も前記第1方向側に配置される前記カード状媒体よりも前記センサが前記第1方向側に配置されるホームポジションで待機しており、
前記キャリッジ駆動機構が前記ホームポジションにあるときの前記センサに対向する位置に設けられた補正用マークと、
前記発光素子から射出され、前記補正用マークで反射された光の前記受光素子での検出結果に基づいて前記センサの感度の自動補正を行う自動補正回路と、を備えたことを特徴とする
請求項3記載のカード状媒体計数装置。
【請求項5】
厚さ方向に重なるカード状媒体を収容する媒体収容部と、
前記媒体収容部に収容された前記カード状媒体の枚数を算出するためのセンサと、
前記センサが搭載されるキャリッジと、
前記媒体収容部に収容された前記カード状媒体の端面に沿って前記カード状媒体の計数時に前記カード状媒体の厚さ方向へ前記センサが移動するように前記キャリッジを駆動するキャリッジ駆動機構と、
前記センサの出力信号を処理するデータ処理部と、を備えたカード状媒体計数装置のカード状媒体枚数計数方法であって、
A/D変換器が光学センサから出力されるアナログ信号を所定周期でサンプリングしてデジタルデータに変換する工程と、
サンプリングしたデジタルデータをデータ記憶部に記憶する工程と、
前記デジタルデータを一つ前にサンプリングされたデジタルデータと比較し、検出値が増加傾向から減少したデジタルデータまたは減少傾向から増加したデジタルデータを変化点として、この変化点を含む連続する少なくとも三点のデジタルデータを用いて、近似式算出部が二次近似式を求める工程と、
求めた二次近似式に基づき、ピーク値算出部が前記変化点近傍のピーク値を算出する工程と、
算出したピーク値に基づき、媒体計数部が、厚さ方向に重なる前記カード状媒体の枚数を計数する工程と
、
前記センサの出力信号に基づいて、前記媒体収容部に収容された前記カード状媒体の枚数を算出する工程と、
算出された計数値の確からしさに基づいて前記計数値をランク付けする工程と、
複数の前記計数値のそれぞれを、前記計数値に対する前記ランク付けの結果に基づいて重み付けする重み付け工程と、
前記重み付けの結果に基づいて、前記複数の前記計数値のいずれかを選択する工程と、を有することを特徴とするカード状媒体計数方法。
【請求項6】
前記近似式算出部は、前記変化点の前後の連続する少なくとも三点の前記デジタルデータを用いて二次近似式を求めることを特徴とする
請求項5記載のカード状媒体計数方法。
【請求項7】
前記センサは、前記カード状媒体に向かって光を射出する発光素子と、前記カード状媒体で反射された光を受光する受光素子とを備える反射型の光学式センサであり、
前記カード状媒体の厚さ方向の一方を第1方向とすると、
前記カード状媒体の枚数の計測前に、前記キャリッジ駆動機構は、前記媒体収容部内で最も前記第1方向側に配置される前記カード状媒体よりも前記センサが前記第1方向側に配置されるホームポジションで待機しており、
前記キャリッジ駆動機構が前記ホームポジションにあるときの前記センサに対向する位置に補正用マークが設けられ、
前記発光素子から射出され、前記補正用マークで反射された光の前記受光素子での検出結果に基づいて前記センサの感度の自動補正を行う工程と、を備えたことを特徴とする
請求項5又は請求項6に記載のカード状媒体計数方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さ方向で重なるカード状媒体の枚数を算出するカード状媒体計数装置、および厚さ方向で重なるカード状媒体の枚数を算出するカード状媒体計数方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層状態で収容部に収容されたカード状媒体の枚数を算出するためのカード状媒体計数装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のカード状媒体計数装置は、発光素子と受光素子とを有する反射型の光学式センサを備えている。光学式センサは、収容部に収容されるカード状媒体の厚さ方向へ移動可能となっている。
このカード状媒体計数装置は、カード枚数を計測するために、カード端面に光を当ててその反射を光学センサで受光し、このときの信号の変化を測定することによりカード枚数を測っている。
【0003】
特許文献1に示すカード状媒体計数装置は、カード状媒体が配置された位置を光学式センサが通過するときの光学式センサの出力信号(すなわち、受光素子の出力信号)のレベル(出力信号のピーク)と、積層されたカード状媒体の間を光学式センサが通過するときの光学式センサの出力信号のレベル(出力信号のボトム)とに基づいて、収容部に収容されたカード状媒体の枚数を算出している。具体的には、光学センサの出力信号はアナログ信号であり、この出力信号は、増幅回路を介してA(Analog)/D(Digital )変換器に入力される。A/D変換器では、アナログ信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてデジタルデータに変換する処理が行われる。そして、得られたデジタルデータはサンプリングデータメモリと呼ばれる記憶装置に一時的に記憶された後、出力信号のピークおよびボトムを求めるなどの波形処理がされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すようなA/D変換器による処理では、アナログ信号のレベル変化とは無関係にサンプリング周波数が決定されるため、サンプリングを行うタイミングがアナログ信号のピーク(またはボトム)に一致するとは限らない。このため、アナログ信号のピークを小さい誤差で検出するために様々な工夫が施されてきた。例えば、上記の例においてサンプリング周波数をより高速にし、単位時間あたりのサンプリングの回数を多くする方法が知られている。この場合、より細かくサンプリングが行われるので、アナログ信号のレベルのピーク(またはボトム)が検出されやすくなる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に示すピークおよびボトムを検出する方法では、サンプリング周波数を高速化するために、サンプリングの回数が飛躍的に大きくなり、サンプリングされたデジタルデータの量が増大する。このため、得られたデジタルデータをもとに各種処理を行う場合には、多量のデータを保持可能な大容量のサンプリングデータメモリが必要であり、サンプリングデータメモリに係るコストが増大してしまう。さらに、この方法では、高速でサンプリングを行うA/D変換器が必要になり、その他の各部も高速なサンプリングに耐えうる構成にするため、コストの増大を招いていた。
【0007】
そこで、本発明の課題は、高性能なハードウェアや大容量のメモリなどを必要とせず、厚さ方向で重なるように収容されるカード状媒体の枚数の算出精度を高めることが可能なカード状媒体計数装置を提供することにある。また、本発明の課題は、高性能なハードウェアや大容量のメモリなどを必要とせず、厚さ方向で重なるように収容されるカード状媒体の枚数の算出精度を高めることが可能なカード状媒体計数方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のカード状媒体計数装置は、厚さ方向に重なるカード状媒体を収容する媒体収容部と、媒体収容部に収容されたカード状媒体の枚数を算出するためのセンサと、センサが搭載されるキャリッジと、媒体収容部に収容されたカード状媒体の端面に沿ってカード状媒体の計数時にカード状媒体の厚さ方向へセンサが移動するようにキャリッジを駆動するキャリッジ駆動機構と、センサの出力信号をデジタルデータに変換して処理するデータ処理部と、を備えたカード状媒体計数装置であって、このデータ処理部は、センサから出力されるアナログ信号を所定周期でサンプリングしてデジタルデータに変換するA/D変換器と、サンプリングしたデジタルデータを記憶するデータ記憶部と、デジタルデータを一つ前にサンプリングされたデジタルデータと比較し、検出値が増加傾向から減少したデジタルデータまたは減少傾向から増加したデジタルデータを変化点として、この変化点を含む連続する少なくとも三点のデジタルデータを用いて二次近似式を求める近似式算出部と、求めた二次近似式に基づき、変化点近傍のピーク値を算出するピーク値算出部と、算出したピーク値に基づき、厚さ方向に重なるカード状媒体の枚数を計数する媒体計数部と、を有することを特徴とする。また、本発明において、カード状媒体計数装置は、算出された計数値に基づき評価値を求める評価値算出部を備え、この評価値算出部は、算出された計数値の確からしさに基づいて計数値をランク付けするランク付け処理部と、複数の計数値のそれぞれを、計数値に対するランク付けの結果に基づいて重み付けする重み付け処理部と、を有し、評価値算出部は、重み付けの結果に基づいて、複数の前記計数値のいずれかを選択する処理を行う。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明のカード状媒体計数方法は、厚さ方向に重なるカード状媒体を収容する媒体収容部と、媒体収容部に収容されたカード状媒体の枚数を算出するためのセンサと、センサが搭載されるキャリッジと、媒体収容部に収容されたカード状媒体の端面に沿ってカード状媒体の計数時にカード状媒体の厚さ方向へセンサが移動するようにキャリッジを駆動するキャリッジ駆動機構と、センサの出力信号を処理するデータ処理部と、を備えたカード状媒体計数装置のカード状媒体枚数計数方法であって、A/D変換器が光学センサから出力されるアナログ信号を所定周期でサンプリングしてデジタルデータに変換する工程と、サンプリングしたデジタルデータをデータ記憶部に記憶する工程と、デジタルデータを一つ前にサンプリングされたデジタルデータと比較し、検出値が増加傾向から減少したデジタルデータまたは減少傾向から増加したデジタルデータを変化点として、この変化点を含む連続する少なくとも三点のデジタルデータを用いて、近似式算出部が二次近似式を求める工程と、求めた二次近似式に基づき、ピーク値算出部が変化点近傍のピーク値を算出する工程と、算出したピーク値に基づき、媒体計数部が、厚さ方向に重なるカード状媒体の枚数を計数する工程と、を有することを特徴とする。また、本発明のカード状媒体計数方法は、センサの出力信号に基づいて、媒体収容部に収容された前記カード状媒体の枚数を算出する工程と、算出された計数値の確からしさに基づいて計数値をランク付けする工程と、複数の計数値のそれぞれを、計数値に対する前記ランク付けの結果に基づいて重み付けする重み付け工程と、重み付けの結果に基づいて、複数の計数値のいずれかを選択する工程と、を有する。
【0010】
本発明では、センサの出力信号をデジタルデータに変換して処理するデータ処理部は、A/D変換器がセンサから出力されるアナログ信号を所定周期でサンプリングしてデジタルデータに変換し、サンプリングしたデジタルデータをデータ記憶部に記憶し、デジタルデータを一つ前のデジタルデータと比較し増加傾向から減少したデジタルデータまたは減少傾向から増加したデジタルデータを変化点とし、この変化点を含む連続する少なくとも三点のデジタルデータを用いて、近似式算出部が二次近似式を求め、求めた二次近似式に基づき、ピーク値算出部が変化点近傍の極値の位置を算出し、算出したピーク値に基づき、媒体計数部が、厚さ方向に重なるカード状媒体の枚数を計数するので、アナログ信号のサンプリング周期は粗くてよく、高性能なハードウェアや大容量のメモリなどを必要とせず、厚さ方向で重なるように収容されるカード状媒体の枚数の算出精度を高めることが可能になる。また、本発明のカード状媒体計数装置およびカード状媒体計数方法は、センサの出力信号に基づいてカード状媒体の枚数の計数値を算出するとともに、算出された計数値をランク付けし、ランク付けの結果に基づいて計数値を重み付けする。そして、複数の計数値のいずれかを重み付けの結果に基づいて決定する。このようにすれば、複数の計数値の中からランクの高い計数値を選択できる。また、複数の計数値が一致した場合にその計数値が選択される可能性が高い。したがって、正確な枚数値に近い計数値を選択できる可能性が高いので、精度良くカード状媒体の枚数を計数することが可能になる。
【0011】
本発明において、近似式算出部は、変化点を含む連続する少なくとも三点のデジタルデータは変化点の前後の連続する少なくとも三点のデジタルデータを用いて近似式を求めることが好ましい。
【0012】
このように構成すると、変化点の前後の連続する少なくとも三点のデジタルデータを用いて近似式を求めるので、サンプリングデータの極値(極大値、極小値)の位置を効率よく、より小さい誤差で検出することが可能になる。
【0015】
本発明において、センサは、たとえば、カード状媒体に向かって光を射出する発光素子と、カード状媒体で反射された光を受光する受光素子とを備える反射型の光学式センサである。
【0016】
本発明において、センサは、カード状媒体に向かって光を射出する発光素子と、カード状媒体で反射された光を受光する受光素子とを備える反射型の光学式センサであり、カード状媒体の厚さ方向の一方を第1方向とすると、カード状媒体の枚数の計測前に、キャリッジは、カード状媒体収容部内で最も第1方向側に配置されるカード状媒体よりもセンサが第1方向側に配置されるホームポジションで待機しており、キャリッジがホームポジションにあるときのセンサが対向する位置には、補正用マークが設けられ、センサの発光素子から射出され、補正用マークで反射された光の受光素子での検出結果に基づいてセンサの感度が自動補正されることが好ましい。このように構成すると、たとえば、カード状媒体計数装置の環境条件の変動やカード状媒体計数装置の使用時間等の影響で、発光素子の光量や受光素子の出力が変動しても、感度が自動補正された後のセンサの出力信号に基づいて、カード状媒体の枚数を精度良く算出することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明のカード状媒体計数装置は、高性能なハードウェアや大容量のメモリなどを必要とせず、厚さ方向で重なるように収容されるカード状媒体の枚数の算出精度を高めることが可能になる。また、本発明のカード状媒体計数方法によれば、高性能なハードウェアや大容量のメモリなどを必要とせず、厚さ方向で重なるように収容されるカード状媒体の枚数の算出精度を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態にかかるカード状媒体計数装置の斜視図である。
【
図2】
図1のカード状媒体計数装置の部分平面図である。
【
図3】本発明の実施形態にかかるカード状媒体計数機構部の斜視図である。
【
図4】
図3に示すセンサの感度を補正するための補正用マークの取付位置を説明するための概略図である。
【
図5】本発明の実施の形態にかかるカード状媒体計数装置でのカード状媒体の枚数の算出制御および評価値算出制御に関連する構成のブロック図である。
【
図7】
図5に示すカード状媒体計数装置において、カード状媒体の枚数の算出および評価値を算出するときのカード状媒体計数装置の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【
図8】(a)
図5に示すA/D変換器により実行されるサンプリングの一例を示すグラフである。(b)従来のA/D変換器により実行されるサンプリングの一例を示すグラフである。
【
図9】出力信号のピーク(極大値)およびピーク位置を特定する処理のフローチャートである。
【
図10】出力信号のボトム(極小値)およびボトム位置を特定する処理のフローチャートである。
【
図11】
図8に示すサンプリングデータを用いて近似式を説明するグラフである。
【
図12】
図7のランク付け/重み付けステップでの処理フローの一例を示すフローチャートである。
【
図13】出力信号の波形を模式的に示す説明図である。
【
図15】ランク付けの結果に基づいて計数値を選択する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(カード状媒体計数装置の全体構成)
図1は本発明の実施形態に係るカード状媒体計数装置1の斜視図である。
図2は
図1に示すカード状媒体計数装置1の一部の平面図である。
【0021】
本形態のカード状媒体計数装置1は、カード状媒体2の厚さ方向で重なる複数のカード状媒体2の枚数を数えるための装置である。本形態のカード状媒体2は、厚さが0.7~0.8mm程度の長方形状の塩化ビニール製のカードである。したがって、以下では、カード状媒体2を「カード2」とし、カード状媒体計数装置1を「カード計数装置1」とする。カード計数装置1は、カード2を発行するためのカード発行装置(図示省略)に搭載されて使用される。このカード発行装置は、たとえば、銀行等に設置されており、新規の顧客に渡される新規のカード2(キャッシュカード)を発行する。
【0022】
カード計数装置1は、複数枚のカード2がカード2の厚さ方向で重なるように収容される媒体収容部としてのカード収容部3と、カード収容部3に収容されたカード2の枚数を算出するカード状媒体計数機構としてのカード計数機構部4と、カード収容部3に収容されたカード2を1枚ずつ送り出すカード送出機構部5とを備えている。
【0023】
以下の説明では、鉛直方向(
図1等のZ方向)を上下方向とし、上下方向に直交する
図1等のX方向を前後方向とし、上下方向と前後方向とに直交する
図1等のY方向を左右方向とする。また、前後方向のうちのX1方向側を「後(後ろ)」側とし、その反対側であるX2方向側を「前」側とし、左右方向のうちのY1方向側を「左」側とし、その反対側であるY2方向側を「右」側とする。本形態では、上下方向(Z方向)は、カード2の厚さ方向である。より具体的には、上下方向は、カード収容部3に収容されたカード2の厚さ方向である。
【0024】
(カード収容部の構成) カード収容部3は、
図1に示すように、上下方向から見たときのカード収容部3の外形が前後方向を長手方向とする略長方形状となるように形成されている。このカード収容部3は、複数枚のカード2が積層されて収容される箱状のカードホルダ3aと、カードホルダ3aを下側から支持する支持部3bとから構成されている。カードホルダ3aは、カードホルダ3aの右側面部分を構成する右側壁部3cと、カードホルダ3aの左側面部分を構成する左側壁部3dと、カードホルダ3aの前面部分を構成する前壁部3eと、カードホルダ3aの後面部分を構成する後壁部3fと、カードホルダ3aの下面部分を構成する底面部3gとによって構成されており、上面および後端側が開口する箱状に形成されている。
【0025】
図1に示すように、カード収容部3には、錘9が取り付けられている。錘9は、上下方向へのスライドが可能となるように右側壁部3cに取り付けられており、カードホルダ3aの内部に積層されて収容された複数のカード2の上に載っている。
【0026】
図2に示すように、カードホルダ3aには、カード2の短手方向の一端面2b側が右側に配置されるようにカード2が収容されており、カード計数機構部4は、カードホルダ3aに収容されたカード2の一端面2bに後述のセンサ16~18が臨むようにカード収容部3に取り付けられている。 また、本形態では、左端面と右端面との左右方向の距離Lは、カード2の短手方向の幅よりも長くなっている。また、距離Lは、カード2の短手方向の幅と、カード計数機構4を構成する後述のセンサ16~18の合焦距離との和よりも短くなっている。
【0027】
(カード送出機構部の構成)
カード送出機構部5は、
図1に示すように、支持部3bの内部に配置されている。カード送出機構部5は、カードホルダ3aに収容された複数のカード2の中で一番下に収容されているカード2(最下位のカード2)の後端に係合してカード収容部3からカード2を1枚ずつ送り出す送出爪5a(
図1参照)と、送出爪5aを駆動する爪駆動機構(図示省略)とを備えている。カードホルダ3aの前壁部3eの下端には、前側に向かってカード2が通過するゲート3h(
図2参照)が形成されている。カード送出機構5は、カードカホルダ3aに収容された最下位のカード2をカード収容部3の前側へ送り出す。
【0028】
(カード)
本形態のカード2は、磁気カードであり、
図2において二点鎖線で示すように、磁気データが記録される磁気ストライプ2aを備えている。磁気ストライプ2aは、細長い帯状に形成されている。この磁気ストライプ2aは、長方形状に形成されるカード2の長手方向に沿って形成されている。また、磁気ストライプ2aは、カード2の短手方向の中心よりもカード2の短手方向の一端面2b側に形成されている。なお、カード2には、ICチップが内蔵されていても良い。
【0029】
(カード計数機構部の構成)
図3は本発明の実施形態にかかるカード計数機構部4の斜視図である。
図4は
図3に示すセンサ16~18の感度を補正するための補正用マーク39、40の取付位置を説明するための概略図である。
【0030】
カード計数機構部4は、カード収容部3に収容されたカード2の枚数を算出するための複数のセンサ16~18と、センサ16~18が搭載されるキャリッジ19と、キャリッジ19を上下方向へ移動させるキャリッジ駆動機構20とを備えている。具体的には、本形態のカード計数機構部4は、3個のセンサ16~18を備えている。また、カード計数機構4は、キャリッジ19を移動可能に保持するとともにキャリッジ駆動機構20が取り付けられるフレーム部21と、キャリッジ19に固定される回路基板22と、フレーム部21に固定される回路基板23とを備えている。
【0031】
キャリッジ駆動機構20は、モータ32と、モータ32の動力で回転するリードスクリュー33とを備えている。モータ32は、下フレーム27に固定されている。リードスクリュー33は、リードスクリュー33の軸方向と上下方向とが一致するようにフレーム部21に回転可能に保持されている。具体的には、リードスクリュー33の上端側が上フレーム26に回転可能に保持され、リードスクリュー33の下端側が下フレーム27に回転可能に保持されている。リードスクリュー33の下端側は、図示しないプーリおよびベルトを介してモータ32に連結されている。また、リードスクリュー33には、ナット部材(図示せず)が係合しており、ナット部材は、キャリッジ19に保持されている。モータ32が駆動すると、キャリッジ19は、ガイド軸28に沿って上下方向へ移動する。
【0032】
キャリッジ19は、略長方形の平板状に形成されており、キャリッジ19の厚さ方向と左右方向とが一致するように配置されている。キャリッジ19には、センサ16~18が配置される配置孔19aが左右方向に貫通するように配置されている。また、キャリッジ19には、ガイド軸28が挿通される円筒状のガイドブッシュ30が取り付けられている。回路基板22は、回路基板22の厚さ方向と左右方向とが一致するように、キャリッジ19の右面に固定されている。
【0033】
(センサ)
センサ16~18は、カード2に向かって光を射出する発光素子とカード2で反射された光を受光する受光素子とを備える反射型の光学式センサである。このセンサ16~18は、受光素子の受光量に応じて信号レベルが変動する出力信号SG(
図13参照)を出力する。具体的には、センサ16~18の受光部は、受光量が大きいと信号レベルが高くなり、受光量が小さいと信号レベルが低くなる出力信号SGを出力する。センサ16~18は、回路基板22に実装されている。すなわち、センサ16~18は、回路基板22を介してキャリッジ19に搭載されている。また、センサ16~18は、回路基板22の左面に実装されており、発光素子の発光面と受光素子の受光面とが左側を向くように配置されている。センサ16~18は、キャリッジ19の配置孔19aの中に配置されている。センサ16~18の左端面は、同一平面上に配置されている。また、センサ16~18の左端面は、キャリッジ19の左面よりも左側に配置されている。
【0034】
センサ17とセンサ18とは、同じ高さで配置されている。また、センサ17とセンサ18とは、前後方向で隣接するように配置されている。センサ16は、センサ17、18の上側に配置されている。すなわち、3個のセンサ16~18のうちの1個のセンサ16と、このセンサ16を除いた他の2個のセンサ17、18とは、上下方向においてずれた状態でキャリッジ19に搭載されている。また、センサ16は、前後方向におけるセンサ17とセンサ18との間の中間位置と、前後方向におけるセンサ16の中心とが略一致するように配置されている。すなわち、3個のセンサ16~18のそれぞれは、前後方向において互いにずれた状態でキャリッジ19に搭載されている。
【0035】
また、センサ16~18は、カードホルダ3aに収容されるカード2の一端面2bに沿ってカード2の厚さ方向である上下方向へ移動する。具体的には、
図3に示す下限位置H1と上限位置H2との間で、センサ16~18は、カード2の一端面2bに沿って上下方向へ移動する。すなわち、キャリッジ19は、
図3に示す下限位置H1と上限位置H2との間で上下方向へ移動する。
【0036】
(補正マーク) 本形態では、カードホルダ3aに収容されるカード2の枚数の計測前に、キャリッジ19は、
図3に示す下限位置H1で待機している。すなわち、カード2の枚数の計測前には、キャリッジ19は、センサ16~18が最下位のカード2よりも下側に配置されるホームポジションHPで待機している。本形態の下方向は、カード2の厚さ方向の一方である第1方向となっている。
【0037】
本形態では、キャリッジ19がホームポジションHPにあるときに、センサ16~18の発光素子は、補正用マーク39、40に向かって光を射出する。また、センサ16~18の発光素子から射出され、補正用マーク39、40で反射された光の、センサ16~18の受光素子での検出結果に基づいてセンサ16~18の感度が自動補正される。具体的には、センサ16~18の発光素子の発光量や、増幅器55のゲイン等が調整される。
【0038】
(回路基板) カード計数装置1は、装置全体の動作を制御する制御部を有しており、制御部は、装置内部の複数の回路基板上に設けられ、それぞれ信号線で接続されている。本形態では、回路基板22,回路基板23、回路基板44と備えている。回路基板22は、回路基板23にケーブル43を介して接続されている。回路基板23は、回路基板44にケーブル(図示せず)を介して接続されている。たとえば、回路基板22から出力される信号は、ケーブル43、回路基板23およびケーブルを介して回路基板44に入力される。
【0039】
回路基板22は、回路基板22の厚さ方向と左右方向とが一致するように、キャリッジ19の右面に固定されている。回路基板22は、センサ16~18が搭載されており、さらに、A/D変換器および増幅器が実装されている。また、回路基板22には、センサ16~18の感度を自動補正するための自動補正回路が実装されている。
【0040】
回路基板23は、回路基板23の厚さ方向と左右方向とが一致するように、フレーム29に固定されている。また、回路基板23は、前後方向においてキャリッジ19と隣り合うように配置されており、回路基板22は、回路基板23よりも右側に配置されている。回路基板23は、キャリッジ駆動機構20の駆動回路等が実装されている。回路基板44は、カード計数機構部4の制御回路およびカード送出機構部5の制御回路が実装されている。回路基板22と回路基板23とは、ケーブル43を介して接続されている。
【0041】
回路基板44は、カード収容部3の支持部3bの左側面に固定されている。回路基板44には、カード計数機構部4の制御回路およびカード送出機構部5の制御回路が実装されている。また、回路基板23は、カード収容部3に固定される回路基板44(
図1参照)にケーブル(図示せず)を介して接続されている。
【0042】
(制御系)
図5は、本発明の実施の形態にかかるカード状媒体計数装置でのカード状媒体の枚数の算出制御および評価値算出制御に関連する構成のブロック図である。
図6は、
図5に示す演算部の要部の構成図である。
【0043】
カード計数装置1は、装置1全体の動作を制御する制御部50を有しており、制御部50は、装置1内部に設けられた回路基板22、回路基板23、回路基板44に実装され、それぞれケーブル43などで接続されている。このカード計数装置1は、制御部50、記憶部51、演算部52を主な構成とし、さらに、本実施形態では、クロック発生部53、モータ駆動回路54、センサ16、17、18、増幅器55、フィルタ56、A/D変換器57、自動補正回路58、データ記憶部59、データ処理部60、評価値算出部61を備えている。
【0044】
制御部50は、カード計数装置1全体の動作を制御し、各構成要素と接続され制御信号やデータをやりとりする。具体的には、制御部50は、記憶部51に格納されている制御プログラムや各種データに基づき、カード計数装置1の各部を制御する。センサ16~18から出力されるセンサ信号SGに基づいて、カードホルダ3aに収容されたカード2の枚数を算出する。また、制御部50は、上位装置70(カード発行装置)に接続されている。すなわち、制御部50は、図示しない通信インタフェースを通じて上位装置70から入力される指令にしたがって、カード計数装置1全体を制御する。
【0045】
記憶部51は、装置全体の動作制御に必要なプログラムや各種のデータを記録する。さらに、本形態では、データ記憶部59を有している。データ記憶部59は、センサ16~18から出力された出力信号(アナログ信号)をA/D変換器57によってサンプリングしたデジタル信号をサンプリングデータとして格納している。
【0046】
演算部52は、データ記憶部59に記憶されたデータに基づき各種演算処理を行う。本形態では、データ処理部60および評価値算出部61を有している。
【0047】
データ処理部60は、センサ16~18の出力信号に基づきA/D変換されたサンプリングデータを処理する。本形態では、データ処理部60は、変化点検出部62、近似式算出部63、ピーク(極値)算出部64、カード計数部65を備えている。
【0048】
変化点検出部62は、サンプリングデータに基づき連続する二点のデータを比較し、増加傾向から減少したデータ、同様に、減少傾向から増加したデータを検出し、これらの点を変化点としている。
【0049】
近似式算出部63は、変化点を含めた連続する三点のデータを用いて近似式を算出する。近似式の係数を算出し、近似式を求める。具体的には、センサ16~18からの出力信号SGを、二次関数波形とみなす。このような二次関数波形の近似式の算出方法としては従来から知られている各種の方法を利用することができ、本形態では、最小二乗法による近似を用いている。すなわち、三点を用いて二次関数近似式(y=ax2+bx+c)の係数a、b、cを求める。具体的には、各点での最小二乗法による連立一次方程式を作成する。三つの連立方程式を行列に変換して解を求める。本形態では、行列をガウスの消去法を用いて、二次関数の係数a、b、cを求める。さらに、求めた二次関数近似式(y=ax2+bx+c)の係数a、b、cを用いて、ピークの位置xとピークyおよびボトムの位置xとボトムyを求める。なお、近似は、最小二乗法以外の2次以上の高次関数近似、スプライン関数を用いた近似、標本化(sinc)関数による近似、などを用いてもよい。
【0050】
極値算出部64は、二次関数近似式からピーク(極大値)およびピーク位置、ボトム(極小値)およびボトム位置を算出する。すなわち、ピークは配置されたカード2の端面をセンサ16(17、18)が通過するときのセンサ16(17、18)の出力信号(すなわち、受光素子の出力信号)の極大レベルを示している。また、ボトムは積層されたカード2の間をセンサ16(17、18)が通過するときのセンサ16(17、18)の出力信号の極小レベルを示している。本形態では、三点のデータを用いて二次関数近似式を求め、その二次関数近似式からピーク、ボトムおよびピーク位置、ボトム位置を算出する。算出に使用する三点のデータは、上述した変化点の前後のデータである。また、サンプリングデータ順にピーク(極大値)およびピーク位置を求め、つぎに、ボトム(極小値)およびボトム位置と求めていく。求めたピークとピーク位置、ボトムとボトム位置とを関係付けて記憶部51に保存する。
【0051】
カード計数部65は、極値算出部64で求めたピークの数を計数する。本形態では、センサ16、17、18ごとに、カードホルダ3a内の積層されているカード2の枚数を算出する。なお、ピークの数を計数する代わりに、ボトムの数に基づいて、カードホルダ3aに収容されたカード2の枚数を算出するようにしてもよい。さらに、ピークの数およびボトムの数を計数するようにしてもよい。
【0052】
評価値算出部61は、各センサ16、17、18で算出された計数値について評価する。本形態では、ランク付け処理部66、重み付け処理部67を備えている。
ランク付け処理部66は、算出された計数値の「確からしさ」に基づき、算出された計数値をAランク~Dランクの4段階にランク付けする。また、重み付け処理部67は、1回の計測動作によって得られた複数の計数値を、各計数値のランク情報に基づいて重み付けする。さらに、この重み付けの結果に基づいてどの計数値を選択するかを決定する。
【0053】
クロック発生部53は、カード計数装置1内の時間基準となるクロック信号を供給する。本形態では、クロック発生部53は、A/D変換器57に入力するサンプリング時間基準となるサンプリングクロック信号を供給する。さらにモータ32の駆動パルスとなる基準クロックも供給する。
【0054】
モータ駆動回路54は、制御部50から入力されるモータ制御パルスに基づき駆動パルスをモータ32に入力して、モータ32を駆動する。
【0055】
増幅器55は、各センサ16~18の出力信号を増幅している。
【0056】
A/D変換器57は、クロック発生部53により生成されるモータ制御パルスに同期してサンプリングを行う。そのためセンサ位置に対応したアナログ信号値がA/D変換器57においてデジタルデータに変換される。サンプリング間隔(周波数)は、特に限定されるものではないが、たとえば、従来のサンプリング数の1/3程度、カード2の一枚分の間に5個程度のサンプリングデータを取得すれば良い。
【0057】
自動補正回路58は、各センサ16~18の感度を補正する。具体的には、各センサ16~18の発光素子の発光量や増幅器55のゲイン等が調整される。なお、自動補正回路58は、センサ16~18が搭載されている回路基板22に実装されている。
【0058】
(カード計数装置の制御フロー)
図7は、
図5に示すカード計数装置1において、カード2の枚数の算出および評価値を算出するときのカード計数装置1の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【0059】
カード計数装置1において、カード2の枚数を算出および評価値を算出するときには、まず、制御部50は、ホームポジションHPで、センサ16~18の出力を調整する(ステップS1)。センサ16~18の発光素子の発光量や増幅器55のゲイン等が調整される。調整後、キャリッジ駆動機構20のモータ32を起動し(ステップS2)、最下位のカード2よりも下側(下限位置H1)に配置されているセンサ16~18の上昇とセンサ16~18の出力信号SGの取得(ステップS3)は、センサ16~18が所定の上限位置H2に到達するまで行われ(すなわち、ステップS4で“Yes”となるまで行われ)、センサ16~18が上限位置H2に到達すると、制御部50は、キャリッジ駆動機構20のモータ32を停止させる(ステップS5)。このように、ホームポジションHPにあるキャリッジ19が上限位置H2まで移動すると、たとえば、
図13に示すような出力信号SG(アナログ信号)がセンサ16~18から出力される。その後、演算部52のデータ処理部60は、ステップS3で取得したA/D変換値に基づいてピーク、ピーク位置およびボトム、ボトム位置を算出する(ステップS6)。算出されたピーク、ピーク位置(またはボトム、ボトム位置)に基づいてカード2の枚数の算出を行い(ステップS7)、カード2の枚数を算出後、評価値算出部61において算出された枚数(値)について、評価値を算出する(ステップS8)。具体的には、計測値に対してランク付けを行い、さらに、重み付けを行い、算出されたカード2の枚数情報とランク付けされたランク情報を上位装置70へ送信する(ステップS9)。以下、ステップS6におけるピーク、ピーク位置およびボトム、ボトム位置の算出方法、ステップS7におけるカード2の枚数の算出方向方法、ステップS8におけるランク付け方法およびステップS9における重み付け方法を具体的に説明する。
【0060】
(出力信号SGのピーク位置Pvよびボトム位置Bvを特定する処理)
図8(a)は、
図5に示すA/D変換器により実行されるサンプリングの一例を示すグラフである。
図8(b)は、従来のA/D変換器により実行されるサンプリングの一例を示すグラフである。
図9は、出力信号のピーク(極大値)およびピーク位置を特定する処理のフローチャートである。
図10は、出力信号のボトム(極小値)およびボトム位置を特定する処理のフローチャートである。
図11は、
図8に示すサンプリングデータを用いて近似式を説明するグラフである。なお、
図8および
図11のグラフにおいて、縦軸yは、センサの出力を示し、横軸xは、センサの位置を示している。なお、
図8(b)に示す矢印は従来の細かなサンプリング間隔を使ってピーク(極大値)、ボトム(極小値)としていた個所である。
【0061】
データ処理部62は、センサ16~18のそれぞれから得られた出力信号SGに基づき、カードホルダ3aに収容されたカード2の枚数を計数する処理を行う。すなわち、センサ16~18のそれぞれから得られたA/D変換値に基づきピーク位置Pv、ボトム位置Bvを特定する処理を行い、特定されたピーク位置Pv、ボトム位置Bvに基づいてカード枚数の計数値を算出し、センサ16~18毎に計数値を算出する。
【0062】
(極大値を求める)
センサ16~18の各出力信号SGがA/D変換器に入力される。設定されたサンプリング周期でアナログ信号がデジタルデータに変換される(ステップS51)。具体的には、A/D変換器57のサンプリング周期で決まる時間間隔毎に1つずつデジタルデータがサンプリングデータとして得られ、データ記憶部59に保存される。
【0063】
変換されたデジタル信号は、ディジタルフィルタ56を介して、ノイズ除去された後、サンプリングデータとしてデータ記憶部59にサンプリング時の位置とともに格納される(ステップS52)。ディジタルフィルタ56の換わりにアナログフィルタをセンサ16~18の出力信号SGとA/D変換器57の間に入れてもよい。
【0064】
データ処理部60はデータ記憶部59に格納されているサンプリングデータを処理する。具体的には、変化点検出部62は、サンプリングデータを一つ前のサンプリングデータと比較し、増加している場合にはつぎのサンプリングデータを読み出す(ステップS53のNO)。もし、サンプリングデータが一つ前のサンプリングデータよりも減少している場合、サンプリングデータを変化点とする(ステップS53のYES)。
【0065】
近似式演算部63は、変化点としてのサンプリングデータとその変化点の前後のサンプリングデータの三点を用いて二次曲線関数近似式(y=ax2+bx+c)の係数a、b、cを求める。具体的には、各点での最小二乗法による連立一次方程式を作成する。三つの連立方程式を行列に変換して解を求める。本形態では、行列をガウスの消去法を用いて、二次関数の係数a、b、cを求める(ステップS54)。
【0066】
極値算出部64は、求めた係数a、b、cを用いて、ピーク(極大値)およびピーク位置を求める。二次関数近似式(y=ax
2+bx+c)において、y=0の場合が極大値となる。すなわち、2ax+b=0であり、x=-b/2aとなる。たとえば、
図11において、式(1)はa=-4.8333、b=212.17となる。この場合のピーク(極大値)のピーク位置xは、X=21.948となる(ステップS55)。なお、
図11には、式(3)で示すように、つぎのピーク位置、x=31.5776が示めされている。つぎに、ボトム(極小値)およびボトム位置Bvを求める。
【0067】
上述したように、データ処理部60は、ピーク(極大値)およびピーク位置Pvを特定すると、続いて、ボトム(極小値)およびボトム位置Bvを特定する処理へ進む。以下、
図9および
図10に示す処理を繰り返すことにより、ピーク位置Pv、ボトム位置Bvが交互に特定される。
【0068】
(極小値を求める)
センサ16~18の各出力信号SGがA/D変換器に入力される。設定されたサンプリング周期でアナログ信号がデジタルデータに変換される(ステップS61)。具体的には、A/D変換器57によりサンプリング周期で決まる時間間隔毎に1つずつデジタルデータがサンプリングデータとして得られ、データ記憶部59に保存される。
【0069】
変換されたデジタル信号は、ディジタルフィルタ56を介して、ノイズ除去された後、サンプリングデータとしてデータ記憶部59にサンプリング時の位置とともに格納される(ステップS62)。
【0070】
データ処理部60はデータ記憶部59に格納されているサンプリングデータを処理する。具体的には、変化点検出部62は、サンプリングデータを一つ前のサンプリングデータと比較し、減少している場合にはつぎのサンプリングデータを読み出す(ステップS63のNO)。もし、サンプリングデータが一つ前のサンプリングデータよりも増加している場合、サンプリングデータを変化点とする(ステップS63のYES)。
【0071】
近似式演算部63は、変化点としてのサンプリングデータとその変化点の前後のサンプリングデータの三点を用いて二次曲線関数近似式(y=ax2+bx+c)の係数a、b、cを求める。具体的には、各点での最小二乗法による連立一次方程式を作成する。三つの連立方程式を行列に変換して解を求める。本形態では、行列をガウスの消去法を用いて、二次関数の係数a、b、cを求める(ステップS64)。
【0072】
極値算出部64は、求めた係数a、b、cを用いて、ボトム(極小値)およびボトム位置を求める。二次関数近似式(y=ax
2+bx+c)において、y=0の場合が極小値となる。すなわち、2ax+b=0であり、x=-b/2aとなる。たとえば、
図11において、式(2)はa=3.4444、b=176.89となる。この場合の極小値の位置xは、x=25.6779となる(ステップS65)。つぎに、ピーク(極大値)およびピーク位置Pvを求める。以下、サンプリングデータを最後まで処理した後、求めた極大値とピーク位置Pv、極小値とボトム位置Bvからカード2の枚数を計数する。具体的には、出力信号SGのピークPvの数やボトムBvの数に基づいて、カードホルダ3aに収容されたカード2の枚数を算出する。つぎに、評価値算出部61は、各センサ16、17、18で算出された計数値について評価する。具体的には、ランク付け処理部66においてランク付けの処理が行われ、続いて重み付け処理部67において重み付けの処理が行われる。
【0073】
(カード枚数の計数値の評価値算出)
図12は、
図7のランク付け/重み付けステップでの処理フローの一例を示すフローチャートである。
図13は、出力信号の波形を模式的に示す説明図である。
図14は、計数値に対する重み付けの説明図である。
図15は、ランク付けの結果に基づいて計数値を選択する処理のフローチャートである。また、
図13は
図8(a)に示すサンプリングデータに基づき近似した出力信号SGの波形を模式的に示す説明図である。制御部50は、センサ16~18の各センサの計数値およびその評価値(ランク付けおよび重み付け)を算出する。また、演算部52内のデータ処理部60および評価値算出部61が、データ記憶部59に記憶されたデータに基づき各種演算処理を行うが、以下の説明では簡単に演算部52として説明している。
【0074】
(ランク付けの判定基準)
本形態では、算出されたカード2の枚数の確からしさを「第1確からしさ」とし、カードホルダ3aに収容されたカード2の種類および形状が正しいことの確からしさを「第2確からしさ」とし、カードホルダ3aに収容されたカード2が正しい状態で収容されていることの確からしさを「第3確からしさ」とすると、制御部50は、センサ信号SGに基づいて、第1確からしさと第2確からしさと第3確からしさとが比較的高い「Aランク」と、第1確からしさがAランクと同程度でかつ第2確からしさと第3確からしさとの少なくともいずれか一方がAランクよりも低い「Bランク」と、第1確からしさがAランクよりも低くかつ第2確からしさと第3確からしさとの少なくともいずれか一方がAランクよりも低い「Cランク」と、第1確からしさと第2確からしさと第3確からしさとがCランクよりも低い「Dランク」の4つのランクにランク分けをしてランク付けを行う。以下、ランク付け方法について説明する。なお、本形態のAランクは第1ランクであり、Bランクは第2ランクであり、Cランクは第3ランクであり、Dランクは第4ランクである。
【0075】
(ランク付け処理)
以下、
図12、
図13を参照して、ランク付け処理について説明する。演算部52は、まず、データ記憶部59に格納されているサンプリングデータが所定の閾値th0を超えているか否かを判定する(ステップST11)。閾値th0は、出力信号SGの最大値の0.3~0.6程度に設定される。これにより、カードホルダ3aにカード2が収容されているか否かが判定される。
【0076】
次に、演算部52は、センサ16の出力信号SGのピーク位置Pvおよびボトム位置Bvを特定する(ステップST12)。本形態では、ピーク位置Pv、ボトム位置Bvに基づいてカード2の枚数を計数する処理を行う。つまり、ピーク位置Pv、Bvは計数対象となる位置である。ステップST12の処理の具体的内容は、既に説明したように、出力信号SGからサンプリングデータを抽出し、三点のサンプリングデータから二次関数近似式の計数を求め、さらに、ピーク位置Pv、ボトム位置Bvを特定する処理である。
【0077】
ステップST12に続いて、演算部52は、閾値th0よりも大きい所定の閾値th1を超える極大側のピーク位置Pvの有無を判定する(ステップST13)。閾値th1を超えるピーク位置Pvが存在する場合は(ステップST13:Yes)、閾値th1を超えるピーク位置Pvは1個か否かを判定する(ステップST14)。閾値th1を超えるピーク位置Pvが2個以上の場合は(ステップST14:No)、その間隔tiを算出する(ステップST15)。
図12に示す例では、間隔tiとしてt1~t9が算出される。
【0078】
また、演算部52は、閾値th1を超える極大側のピーク位置Pvが2個以上であって(ステップST14:No)、且つ、閾値th1より小さい所定の閾値th2を下回る極小側のピーク位置Bv(すなわち、ボトム位置)の数が2個以上である場合、ステップST15において、閾値th2を下回る極小側のピーク位置Bv(ボトム位置)の間隔Tiを算出する。
図12に示す例では、間隔TiとしてT1~T8が算出される。
【0079】
演算部52は、ステップST15で算出された間隔ti、Tiが正常であるか否かを基準値RVに基づいて判定する(ステップST16)。例えば、基準値RVとして、計数対象であるカード2の厚さをセンサ16~18の移動速度で割った値が用いられる。演算部52は、間隔tiが第1基準範囲内(例えば、0.8RV~1.2RV)であれば、間隔tiが正常であると判定する。また、間隔Tiが第2基準範囲内(例えば、0.8RV~1.2RV)であれば、間隔Tiが正常であると判定する。
【0080】
(Aランクの判定)
演算部52は、ステップST16で間隔ti、Tiが正常であると判定された場合
(ステップST16:Yes)、総時間間隔Wおよび平均間隔Waを算出する(ステップST17)。総時間間隔Wは、出力信号SGが閾値th1を超えてから閾値th1以下となるまでの時間間隔であり、平均間隔Waは閾値th1を超える極大側のピーク位置Pvの数で総時間間隔Wを割った値である。そして、演算部52は、平均間隔Waが正常であるか否かを基準値RVに基づいて判定する(ステップST18)。ステップST18では、平均間隔Waが第3基準範囲内(例えば、0.8RV~1.2RV)であれば、平均間隔Waが正常であると判定する。
【0081】
演算部52は、ステップST18で平均間隔Waが正常であると判定された場合(ステップST18:Yes)、閾値th1を超える極大側のピーク位置Pvの数をカードホルダ3aに収容されたカード2の計数値(枚数)として、この計数値をAランクと判定する処理を行う(ステップST19)。
図13に示す例では、閾値th1を超えるピーク位置Pvは10箇所存在する。従って、カード2の枚数の計数値は10であり、そのランク情報はAランクである。
【0082】
(Bランクの判定)
演算部52は、ステップST16において、極大側のピーク間隔tiの少なくとも1つが第1基準範囲内から外れている場合、および、極小側のピーク間隔Ti(ボトム間隔)の少なくとも1つが第2基準範囲から外れている場合のどちらかまたは両方の場合には、第1基準範囲内から外れているピーク間隔tiが所定の第1基準値RV1以下であり、且つ、第2基準範囲内から外れているピーク間隔Ti(ボトム間隔)が所定の第2基準値RV2以下であるか否かを判定する(ステップST21)。例えば、第1基準値RV1は1.6RV~1.7RVの範囲内であり、第2基準値RV2は1.6RV~1.7RVの範囲内である。
【0083】
ステップST21において、第1基準範囲内から外れている極大側のピーク間隔tiが第1基準値RV1以下であり、且つ、第2基準範囲内から外れている極小側のボトム間隔Tiが所定の第2基準値RV2以下である場合は(ステップST21:Yes)、演算部52は、閾値th1を超える極大側のピーク位置Pvの数をカードホルダ3aに収容されたカード2の計数値(枚数)として、この計数値をBランクと判定する処理を行う(ステップST22)。
【0084】
つまり、演算部52は、この場合は、第1確からしさ(カード2の枚数の確からしさ)は、Aランクと同程度であるが、例えば、カードホルダ3aに収容されたカード2の中に種類や計数の違うカードが混ざっており、第2確からしさ(カード2の種類や形状の確からしさ)がAランクよりも低いと判断して、Bランクとランク付けする。あるいは、演算部52は、この場合は、第1確からしさはAランクと同程度であるが、例えば、カードホルダ3aに収容されたカード2が斜めに傾いた状態で収容されていたり、カード2の間にごみが挟まれていたりして、第3確からしさ(カード2の収容状態の確からしさ)がAランクよりも低いと判断して、Bランクとランク付けする。
【0085】
また、演算部52は、ステップST18において、平均間隔Waが第3基準範囲から外れている場合にも(ステップST18:No)、ステップS22に進む。そして、上述したように、閾値th1を超える極大側のピーク位置Pvの数をカードホルダ3aに収容されたカード2の計数値(枚数)として、この計数値をBランクと判定する処理を行う(ステップST22)。
【0086】
つまり、この場合は、演算部52は、第1確からしさ(カード2の枚数の確からしさ)は、Aランクと同程度であるが、カードホルダ3aに収容されたカード2の中に種類や形状の異なるカード2が多数混ざっており、第2確からしさがAランクよりも低いと判断して、Bランクとランク付けする。
【0087】
(Cランクの判定)
演算部52は、ステップST21において、第1基準範囲内から外れている極大側のピーク間隔tiが第1基準値RV1を超えている場合、および、第2基準範囲内から外れている極小側のボトム隔Tiが第2基準値RV2を超えている場合の少なくともいずれかの場合は、演算部52は、極大側のピーク間隔tiが第1基準値RV1を超えるのか否かを判定する(ステップST23)。
【0088】
ステップST23において、極大側のピーク間隔tiが第1基準値RV1以下であり、且つ、極小側のボトム間隔Tiが第2基準値RV2を超えている場合は、ステップST24に進み、補正値を算出する。すなわち、極小側のボトム間隔Tiを基準値RVで割った値から1を引いた値に最も近い整数を補正値として算出する。そして、閾値th1を超える極大側のピーク位置Pvの数に補正値を加えた数をカードホルダ3aに収容されたカード2の計数値(枚数)とするとともに、この計数値をCランクと判定する(ステップST25)。
【0089】
つまり、この場合は、演算部52は、求めたカード2の枚数の計数値に補正値が含まれているため、第1確からしさ(カード2の枚数の確からしさ)がAランクよりも低いと判断するとともに、例えば、カードホルダ3aに収容されたカード2の中に種類や形状の異なるカード2が混ざっており、第2確からしさがAランクよりも低いと判断するか、あるいは、カードホルダ3aに収容されたカード2が斜めに傾いた状態で収容されており、第3確からしさがAランクよりも低いと判断して、Cランクとランク付けする。
【0090】
一方、ステップST23において、極大側のピーク間隔tiが第1基準値RV1を超えている場合は、ステップST26に進み、極小側のボトム位置Bvが閾値th0以下であるか否かを判定する。そして、ステップST26で極小側のボトム位置Bvが閾値th0を超えると判定した場合は、ステップST24、25へ進む。従って、閾値th1を超える極大側のピーク位置Pvの数に補正値を加えた数をカードホルダ3aに収容されたカード2の計数値(枚数)とするとともに、この計数値をCランクと判定する。
【0091】
ステップST26で極小側のボトム位置Bvが閾値th0以下である場合は、例えば、カードホルダ3aに収納されるカード2の間に隙間が形成されたと判断して、ステップST27へ進み、閾値th1を超える極大側のピーク位置Pvの数をカードホルダ3aに収容されたカード2の計数値(枚数)とするとともに、この計数値をCランクと判定する。
【0092】
つまり、この場合は、演算部52は、第1確からしさがAランクよりも低いと判断するとともに、第2確からしさと第3確からしさの少なくとも一方がAランクよりも低いと判断して、Cランクとランク付けする。
【0093】
以上のように、演算部52は、基準値RVに基づいて算出される第1基準範囲および第1基準値RV1と、極大側のピーク間隔tiとの比較結果や、基準値RVに基づいて算出される第2基準範囲および第2基準値RV2と、極小側のボトム間隔Tiとの比較結果に基づいて、カードホルダ3aに収容されるカード2の枚数を計数するとともに、Aランク、Bランク、Cランクの3種類のランクにランク付けする。
【0094】
すなわち、演算部52は、出力信号SGの極大側のピーク間隔tiの全てが第1基準範囲内であり、且つ、極小側のボトム間隔Tiの全てが第2基準範囲内であり、さらに、平均間隔Waが第3基準範囲内である場合に、出力信号SGのピーク位置Pvから求めた計数値をAランクと判定する。
【0095】
また、演算部52は、極大側のピーク間隔tiのうちの少なくとも1つが第1基準範囲から外れるとともに第1基準範囲内から外れているピーク間隔tiが第1基準値RV1以下である場合、極小側のボトム間隔Tiのうちの少なくとも1つが第2基準範囲から外れるとともに第2基準範囲内から外れているピーク間隔Tiが第2基準値RV2以下である場合、および、平均間隔Waが第3基準範囲から外れている場合、の少なくともいずれかの場合に、出力信号SGのピーク位置Pvから求めた計数値をBランクと判定する。
【0096】
そして、演算部52は、極大側のピーク間隔tiが第1基準範囲から外れるとともに第1基準範囲内から外れている極大側のピーク間隔tiが第1基準値RV1を超えている場合、および、極小側のボトム間隔Tiが第2基準範囲から外れるとともに第2基準範囲内から外れている極小側のピーク間隔Tiが第2基準値RV2を超えている場合の少なくともいずれかの場合に、出力信号SGのピーク位置Pvから求めた計数値をCランクとランクづけする。
【0097】
(上記以外のAランクおよびDランクの判定)
ステップST14において、閾値th1を超える極大側のピーク位置Pvの数が「1」である場合(ステップST14:Yes)、総時間間隔Wが所定の第3基準値RV3以下であるか否かを判定する(ステップST29)。ステップST29で、総時間間隔Wが第3基準値RV3以下である場合(ステップST29:Yes)、演算部52は、カードホルダ3aに収容されるカード2の枚数を「1」とし、Aランクにランク付けする(ステップST30)。
【0098】
一方、総時間間隔Wが第3基準値RV3を超えている場合(ステップST29:No)、制御部50は、総時間間隔Wを基準値RVで割った値を算出し(ステップST31)、この値をカードホルダ3aに収容されるカード2の枚数とするとともに、Dランクとランク付けする(ステップST32)。すなわち、この場合は、演算部52は、算出されたカード2の枚数が総時間間隔Wと基準値RVに基づく全くの推定値であるため、第1確からしさがCランクよりも低いと判断するとともに、第2確からしさと第3確からしさの少なくとも一方がCランクよりも低いと判断して、Dランクとランク付けする。例えば、カード2の反射率が低くて出力信号SGのピーク位置Pv、ボトム位置Bvがはっきりしない場合などに、Dランクとランク付けする。
【0099】
また、ステップST13において、出力信号SGの全てのピーク位置Pvが閾値th1を超えない場合(ステップST13:No)、演算部52は、総時間間隔Wを基準値RVで割った値を算出し(ステップST33)、この値をカードホルダ3aに収容されるカード2の枚数とするとともに、Dランクとランク付けする(ステップST34)。すなわち、この場合は、演算部52は、算出されたカード2の枚数が総時間間隔Wと基準値RVに基づく全くの推定値であるため、第1確からしさがCランクよりも低いと判断するとともに、第2確からしさと第3確からしさの少なくとも一方がCランクよりも低いと判断して、Dランクとランク付けする。
【0100】
また、ステップST11において、出力信号SGが閾値th0を超えない場合(ステップST11:No)、演算部52は、カードホルダ3aに収容されるカード2の枚数を「0」とするとともに、この値をAランクとランク付けする(ステップST36)。例えば、出力信号SGが全く変化しない場合に、カード2の枚数を0枚と判定し、Aランクとランク付けする。
【0101】
(複数のセンサから得られた計数値に対する重み付け)
本形態では、カード計数機構部4は複数のセンサ16~18を備える。制御部50は、カード計数機構部4を駆動して、センサ16~18を下限位置H1から上限位置H2まで移動させる第1計測動作である上昇動作、および、センサ16~18を上限位置H2から下限位置H1まで移動させる第2計測動作である下降動作を行う。1回の計測動作(上昇動作あるいは下降動作)により、センサ16~18の各センサの計数値が得られ、且つ、各計数値に対するランク情報が得られる。
【0102】
演算部52は、1回の計測動作によって得られた複数の計数値を、各計数値のランク情報に基づいて重み付けする処理を行い、重み付けの結果に基づいてどの計数値を選択するかを決定する処理を行う。そして、選択した計数値を上位装置70へ出力する処理を行う。例えば、演算部52は、カード計数装置1が搭載される上位装置70(カード発行装置)に対して、重みづけの結果に基づいて選択した計数値を出力する処理を行う。なお、制御部50から上位装置70に対して、センサ16~18の各計数値とそのランク情報を出力し、上位装置70がその情報を基に独自の重みづけを行いどの計数値を選択するかを決定する処理を行うこともできる。
【0103】
図14は計数値に対する重み付けの説明図である。
図14(a)に示すように、Aランク~Dランクのそれぞれには、重み付け用の点数NA、NB、NC、NDが対応付けられている。この点数は予め決定され、制御部50に記憶されている。また、
図15はランク付けの結果に基づいて計数値を選択する処理のフローチャートである。演算部52は、1回の計測動作(センサ16~18の上昇動作あるいは下降動作)を行う毎に、
図15の処理を行う。まず、ステップST41において、センサ16~18の出力信号SGに基づいてカード2の枚数の計数値をセンサ毎に算出するとともに、算出された計数値の確からしさに基づいて計数値をランク付けする処理を行う。ステップST41の処理の詳細は既に説明したとおりである。
【0104】
演算部52は、ステップST42において、それぞれの計数値に対して、ランク付けの結果に基づいて重み付け用の点数を対応づける処理を行う。例えば、
図14(b)に示す例では、センサ16、17、18の計数値はそれぞれ、ランクA、B、Dにランク付けされているので、これらの計数値に対する重み付けの点数はNA、NB、NDとなる。次に、ステップST43~ST44において、重み付けの結果に基づいて複数の計数値のいずれかを選択する処理を行う。そして、ステップST45に進み、選択した計数値を上位の制御部へ出力する処理を行う。
【0105】
ステップST43では、演算部52は、計数値ごとに点数を合計する処理を行う。例えば、
図14(b)に示すように、センサ16、17の計数値がN1であり、センサ18の計数値がN2である場合、計数値N1、N2のそれぞれについて、重み付け用の点数の合計値を算出する。計数値N1、N2に対する合計点は、
図14(c)のように算出される。すなわち、計数値N1に対する重み付け用の点数の合計値はNA+NBであり、計数値N2に対する重み付け用の点数の合計値はNDである。演算部52は、ステップST44において、重み付け点数の合計値が最も大きい計数値を選択する。例えば、NA+NBとNDの大小を判定し、NA+NB>NDである場合には、計数値N1を選択する。
【0106】
このように、演算部52は、1回の計測動作(上昇動作あるいは下降動作)を行う毎に、得られた計数値の中から採用する計数値を選択する処理を行うことができるが、複数回の計測動作を行って得られた計数値の中から採用する計数値を選択する処理を行うこともできる。例えば、カード計数機構部4を駆動して、センサ16~18を下限位置H1と上限位置H2の間で往復移動させる場合には、センサ16~18の出力信号SGから、各センサについてそれぞれ2個ずつの計数値が得られる。したがって、演算部52は、合計6個の計数値をそれぞれ、上記のAランク~Dランクのいずれかにランク付けし、それぞれの計数値をランク情報に基づいて重み付け用の点数NA、NB、NC、NDによって重み付けし、重み付けの結果に基づいて、採用する計数値を選択する処理を行うこともできる。
【0107】
重み付け用の点数を計数値ごとに合計した結果、複数の計数値に対する合計値が同一になってしまうと、採用する計数値を決定することができない。このような場合には、例えば、もう一度計測動作を行い、追加で行った計測動作で得られた計数値を加えて、あるいは、追加で行った計測動作で得られた計数値に対して重み付けの結果を集計し、採用する計数値を決定することができる。
【0108】
また、本形態は複数のセンサを備えているが、センサの数は3に限定されるものではなく、2あるいは4以上であってもよい。また、センサの個数が1つであってもよい。センサの個数が1つである場合は、複数回の計測動作を行い、得られた複数回の計数値に対してランク付けを行って計数値を重み付けし、重み付け用の点数を計数値毎に合計して、採用する計数値を選択する処理を行うこともできる。また、ランク付けのランク数およびランク付けの基準は上記の形態に限定されるものでなく、適宜変更可能である。
【0109】
本形態では、計数値のランク付けを計数値の確からしさに基づいて行う。計数値の確からしさは、枚数の確からしさ、カード2の種類や形状の確からしさ、および、カード2の収容状態の確からしさを含む。これにより、計数値に対して適切な重み付けを行うことができる。したがって、精度良くカード状媒体の枚数を計数することができる。
なお、本形態では、上述のとおり、計数値のランク付けを計数値の確からしさに基づいて行ったが、これに限定されるものではない。たとえば、複数の計数値が一致する場合は、その計数値を選択すると決定するようにしてもよい。
【0110】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、センサ16~18ごとの出力信号をデジタルデータに変換して処理するデータ処理部60は、A/D変換器57がセンサ16~18から出力されるアナログ信号を所定周期でサンプリングしてデジタルデータに変換し、サンプリングしたデジタルデータをデータ記憶部59に記憶し、デジタルデータが一つ前のデジタルデータと比較し増加傾向から減少したデジタルデータまたは減少傾向から増加したデジタルデータを変化点とし、この変化点を含む連続する少なくとも三点のデジタルデータを用いて、近似式算出部63が二次関数近似式(y=ax2+bx+c)を求め、求めた二次関数近似式に基づき、極値算出部64が変化点近傍のピーク(またはボトム)を算出し、算出したピーク(またはボトム)に基づき、カード計数部65が、厚さ方向に重なるカード2の枚数を計数するので、高性能なハードウェアや大容量のメモリなどを必要とせず、厚さ方向で重なるように収容されるカード2の枚数(計数値)の算出精度を高めることが可能になる。本形態では、サンプリングデータ数を従来の1/3程度にすることができ、センサ16~18から出力される出力信号(アナログ信号)のピークおよびボトムを検出する際に、サンプリング周波数を高速化することなく、短時間で効率よく、処理することが可能になる。
【0111】
また、本形態では、近似式算出部63は、変化点の前後の連続する少なくとも三点のデジタルデータを用いて二次関数近似式(y=ax2+bx+c)を求めるので、サンプリングデータのピーク(極大値)およびピーク位置、ボトム(極小値)およびボトム位置を効率よく、より小さい誤差で検出することが可能になる。すなわち、これら三点間、変化点の近傍にピーク(ピーク位置)またはボトム(ボトム位置)が確実に存在するので、効率良く算出することが可能になる。ただし近似式算出に使う三点は必ずしも変化点を含む三点である必要はない。理論的には単調増加中、または単調減少中の三点でも二次関数近似は可能である。
【0112】
さらに、本形態では、ランク情報に基づいて、カード発行装置側で、カードホルダ3aに収容されたカード2を実際に取り出して確認する必要があるのか否かを判断することが可能になる。たとえば、Cランク、Dランクのランク情報が送信されてきた場合には、カードホルダ3aに収容されたカード2を直接確認するが、Bランクのランク情報が送信された場合には、カードホルダ3aに収容されたカード2を直接確認しないといった判断を上位装置70(カード発行装置)側ですることが可能になる。また、本形態では、Aランク~Dランクのいずれのランクにランク付けされても、算出されたカード2の枚数情報がランク情報と一緒に上位装置70に送信されるため、カードホルダ3aに収容されたカード2を確認しないと上位装置70(カード発行装置)側で判断した場合に、そのまま、上位装置70(カード発行装置)の処理を実行することが可能になる。したがって、本形態では、カード計数装置1が搭載される上位装置70(カード発行装置)の使い勝手を高めることが可能になる。
【0113】
本形態では、演算部52は、ピーク間隔tiの全てが第1基準範囲内にあり、ボトム間隔Tiの全てが第2基準範囲内にあり、かつ、平均間隔Waが第3基準範囲内にある場合に、Aランクとランク付けしている。すなわち、本形態では、演算部52は、ピーク間隔tiの全て、ボトム間隔Tiの全ておよび平均間隔Waが正常である場合に、Aランクとランク付けしている。そのため、本形態では、Aランクのランク情報がカード発行装置3に送信されてきたときの第1確からしさ、第2確からしさおよび第3確からしさがより高くなる。したがって、Aランクのランク情報が送信されてきたときには、カードホルダ3aに収容されたカード2を確認しなくても、その後の上位装置70(カード発行装置)の処理を安心して実行することが可能になる。
【0114】
また、本形態では、センサ16~18が搭載されるキャリッジ19を上下方向へ移動させる計測動作を行い、センサ16~18の出力信号SGから抽出されたサンプリングデータに基づき、カード2の枚数を計数した計数値をセンサ毎に算出する。そして、算出した計数値をその「確からしさ」に基づいてAランク~Dランクのいずれかにランク付けし、ランク付けの結果に基づいて複数の計数値を重み付けし、重み付けの結果に基づいて、複数の計数値のいずれかを選択する処理を行う。これにより、全ての計数値のランクを考慮して採用する計数値を決定できる。したがって、ランクが高い計数値が採用される可能性が高い。また、複数のセンサで計数値が一致した場合にその計数値が採用される可能性が高い。よって、正確な枚数値に近い計数値を選択できる可能性が高いので、精度良くカード状媒体の枚数を計数することが可能になる。
【0115】
(他の実施の形態) 上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0116】
上述した形態では、センサ12は、反射型の光学式センサであるが、センサ12は、光学式センサで有る必要はなく、カード2端面の状態や距離を測定できればよい。また、上述した形態では、カード状媒体2は、厚さが0.7~0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードであるが、カード状媒体2は、厚さが0.18~0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードや、所定の厚さの紙カード等であっても良い。また、本発明が適用されるカード状媒体2は、カード以外の媒体であっても良い。
【0117】
本形態では、センサ16~18が搭載されるキャリッジ19を下限位置H1から上限位置H2まで移動させる上昇動作(第1計測動作)、および、上限位置H2から下限位置H1までセンサ16~18を移動させる下降動作(第2計測動作)の一方もしくは両方を行い、1回もしくは複数回の計測動作によって得られた計数値の中から採用する計数値を決定する処理を行う。複数回の計測動作を行った場合は、多数の計数値に対する重み付けの結果を集計できる。したがって、正確な枚数値に近い計数値を採用できる可能性が高いので、精度良くカード状媒体の枚数を計数することができる。
【符号の説明】
【0118】
1…カード状媒体計数装置(カード計数装置)
2…カード状媒体(カード)
3…カード収容部
3a…カードホルダ
4…カード計数機構部
5…カード送出機構部
16~18…センサ
19…キャリッジ
20…キャリッジ駆動機構
22、23、44…回路基板
32…モータ
33…リードスクリュー
50…制御部
51…記憶部
52…演算部
53…クロック発生部
55…増幅器
57…A/D変換器
58…自動補正回路
59…データ記憶部
60…データ処理部
61…評価値算出部
62…変化点検出部
63…近似式算出部
64…ピーク算出部
65…カード計数部
66…ランク付け処理部
67…重み付け処理部