(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】基板検査装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20220202BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20220202BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01N21/956 A
G01N21/88 J
(21)【出願番号】P 2017236281
(22)【出願日】2017-12-08
【審査請求日】2020-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】梶原 寛生
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/112466(WO,A1)
【文献】特開2013-160687(JP,A)
【文献】特開2008-216054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/00
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な表面及び縁側に形成された傾斜部を有する円盤形状の基板の検査を行う基板検査装置において、
前記基板の縁部の前記表面及び前記傾斜部の画像を撮像する表面撮像器と、
前記表面撮像器で撮像した画像を処理する処理部と、
前記基板を載置し、載置した前記基板を回転させるターンテーブルとを備え、
前記表面撮像器は、
前記ターンテーブルに載置された前記基板よりも上方に配置された撮像センサと、
前記ターンテーブルに載置された前記基板よりも上方に配置された照明と、
前記ターンテーブルに載置された前記基板よりも下方に配置され、前記照明から照射された光を反射するミラーとを有し、
前記処理部は、
前記ターンテーブルによって前記基板を回転させているときに、前記撮像センサによって撮像された前記基板の縁部の前記表面及び前記傾斜部の撮像画像の濃淡に基づいて、最も濃淡変化が大きい位置を前記傾斜部と前記表面との境界として判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づき、前記撮像画像の前記境界よりも縁側を排除する排除処理を行う
ことによって検査対象領域の画像を抽出する排除処理部と、
前記検査対象領域の画像に対して濃淡差を強調する処理を施し、濃度が閾値以下の部分を異常部分として検出する表面異常検出部とを有している基板検査装置。
【請求項2】
前記基板の縁
の異常を検査する縁検査器を更に備え
、
前記縁検査器は、前記ターンテーブルに載置された前記基板よりも上方に配置された照射手段を有し、
前記表面撮像器の照明からの照射と前記縁検査器の前記照射手段からの照射とが互いに影響を受けないように、前記表面撮像器と前記縁検査器とは、前記基板の周方向に離れて配置されている請求項1に記載の基板検査装置。
【請求項3】
前記縁検査器は、前記ターンテーブルに載置された前記基板よりも下方に配置され、前記照射手段から照射された後、前記基板によって減量されて到達する受光量に応じた出力を発生させるセンサを更に有し、
前記ターンテーブルによって前記基板が回転しているときに取得した前記センサの出力に基づいて前記ターンテーブルの回転中心から前記基板の縁までの距離の情報を算出するとともに、前記算出した距離の情報に基づいて前記基板の縁の異常を検査する請求項2に記載の基板検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の検査に係る基板検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、円盤状基板の欠陥を検査する検査装置が広く普及されている。前記検査装置は円盤状基板の縁と所定のパターンが形成される表面とにおける欠陥の有無等を検査する。
【0003】
例えば、特許文献1には、ウエハを回転させるウエハステージと、該ウエハステージに載置されたウエハが回転する際、斯かるウエハのエッジ部に水平光を照射して該エッジ部を検査するエッジ検査部と、該エッジ検査部を前記水平光の光軸に沿って移動させる移動装置を備え、ウエハの回転中心が斯かるウエハの中心からずれた場合、前記移動装置が前記エッジ検査部を移動させて焦点深度を調整する光学式検査装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、被検査物を保持する保持テーブルと、保持テーブルを回転させる回転機構と、第1の検出ユニット及び第2の検出ユニットを含む検査ユニットとを備え、被検査物を保持した状態の保持テーブルを回転させながら、被検査物の中心を含む直線状の領域に合わせて検査ユニットを直線的に移動させることで、第1の検出ユニットと第2の検出ユニットとで2種類の検査情報を取得するので、検査ユニットの動きを単純化しながら2種類の検査情報を一度に取得できる検査装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、円形基板の位置決めを行うに際して、ターンテーブルの回転中に、円形基板の周縁部分の回転中心からの変位量の変化を表す情報を非接触で検出する非接触型の検出器からの出力情報を用いて、斯かる円形基板の周縁部分の欠陥を検出する位置決め装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-93389号公報
【文献】特開2017-116293号公報
【文献】特開平5-160245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、円盤状基板を検査する基板検査装置は、回転する円盤状基板の表面をセンサで撮像し、撮像画像を用いて円盤状基板の表面に発生した欠陥(凹み、傷等)を検査する。しかし、円盤状基板の回転中心が斯かる円盤状基板の中心からずれて偏心が生じる場合は、円盤状基板の回転の際にセンサ視野に対して円盤状基板の端面の位置が直径方向に変化する。すなわち、センサと該センサによって撮像される円盤状基板の表面との相対的な位置関係が、円盤状基板の端面の真上から円盤状基板の斜め上へ変わる(以下、単に視差と言う。)。また、偏心によって円盤状基板を支持する位置も偏るため、自重によって円盤状基板が変形し円盤状基板が僅かに傾く。
特に、装置の大きさに制約があり、円盤状基板に近い距離で撮像せざるを得ず、十分な光路を確保できないような場合は、前記視差の影響が大きい。具体的には、前記基板検査装置によって撮像された撮像画像において、円盤状基板の端側の研磨された傾斜部(いわゆるベベル部)の幅に違いが生じる。また、背景への影が映る。このような場合、影と円盤状基板との区別が難しくなるおそれもあり、斯かる撮像画像を用いた欠陥検査に妨げになる。
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1~3は何れにおいてもセンサ移動機構、前記視差の影響を抑えるための光学系等を用いる複雑な構成を必要とする。従って、装置サイズ、又はセンサの設置箇所に制約のあるような場合は、特許文献1~3に係る発明は適用できず、この問題は解決できない。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、円盤状基板の回転中心が該円盤状基板の中心からずれることから視差による影が発生した場合でも、精度の高い欠陥検査ができる、基板検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る基板検査装置は、撮像センサを用いて基板の表面検査を行う基板検査装置において、前記撮像センサによって撮像された基板縁部の表面の撮像画像に対して、前記表面検査の対象領域を除く剰余領域を排除する排除処理を行う排除処理部と、前記排除処理後の画像を用いて、前記対象領域における異常の検出を行う検出部とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、前記基板の表面検査の際、前記排除処理部が前記対象領域を除く剰余領域を排除する排除処理を行い、前記排除処理後の前記対象領域のみが残された撮像画像を用いて、前記検出部が前記対象領域における異常の検出を行う。
【0012】
本発明に係る基板検査装置は、前記撮像画像の濃淡に基づいて、前記基板縁部に形成された傾斜部と前記表面との境界を判定する判定部を有し、前記判定部の判定結果に基づいて、前記排除処理部は、前記傾斜部が含まれる前記剰余領域の排除処理を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、前記判定部が、前記撮像画像における濃淡の変化に基づいて、前記傾斜部と前記表面との境界を判定する。前記排除処理部は、前記判定部によって判定された境界によって画定される、前記剰余領域の排除処理を行う。
【0014】
本発明に係る基板検査装置は、前記検出部は、前記対象領域に対して、濃淡差を強調する処理を施して前記異常の検出を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、前記検出部は、前記対象領域に対して、濃淡差を強調する処理を施して異常部分と正常部分との差異をより明確にしてから、前記異常の検出を行う。
【0016】
本発明に係る基板検査装置は、前記基板の縁を検査する縁検査器を更に備えることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、前記縁検査器が更に設けられているので、前記基板の縁部の表面検査を行うと共に、斯かる縁の検査を行うことができる。
【0018】
本発明に係る表面検査方法は、撮像センサを有する基板検査装置にて、基板の表面検査を行う表面検査方法において、前記撮像センサによって撮像された基板縁部の表面の撮像画像に対して、前記表面検査の対象領域を除く剰余領域を排除する排除処理を行うステップと、前記排除処理後の画像を用いて、前記対象領域における異常の検出を行うステップとを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明に係るコンピュータプログラムは、撮像センサによって撮像された基板縁部の表面の撮像画像に対して、基板の表面検査の対象領域を除く剰余領域を排除する排除処理を行い、前記排除処理後の画像を用いて、前記対象領域における異常の検出を行う処理をコンピューターに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【0020】
本発明にあっては、前記基板の表面検査の際、前記撮像画像に対して、前記対象領域を除く剰余領域を排除する排除処理が行われ、前記排除処理後の前記対象領域のみが残された撮像画像を用いて、前記対象領域における異常の検出が行われる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、円盤状基板の回転中心が該円盤状基板の中心からずれることによって偏心が生じ、これに起因して円盤状基板とセンサの撮影画像に影が映った場合でも、精度の高い欠陥検査ができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施の形態に係るアライメント装置の要部構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施の形態に係る円盤状基板Wの構成を模式的に例示する断面図である。
【
図3】本実施の形態に係るアライメント装置において、縁測定器及び表面撮像器の配置を説明する概略的平面図である。
【
図4】本実施の形態に係るアライメント装置の処理部の要部構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】距離データを回転角度に対してプロットしたグラフである。
【
図6】本実施の形態に係るアライメント装置における、撮像画像に対する処理を説明するフローチャートである。
【
図7】本実施の形態に係るアライメント装置における、撮像画像に対する処理を説明するフローチャートである。
【
図8】本実施の形態に係るアライメント装置における、撮像画像に対する処理を説明するフローチャートである。
【
図9】本実施の形態に係るアライメント装置において、前記排除処理を実行する前後を表す写真である。
【
図10】本実施の形態に係るアライメント装置において、対象領域に対して前記フィルタ処理を実行する前後を表す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本実施の形態に係る基板検査装置、表面検査方法及びコンピュータプログラムを、いわゆるアライメント装置に適用した場合を例として、図面に基づいて詳述する。
【0024】
図1は、本実施の形態に係るアライメント装置100(基板検査装置)の要部構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るアライメント装置100は、円盤状基板Wの向き、位置等を整えると共に、円盤状基板Wの縁部における欠陥を検出する。アライメント装置100は、欠陥検出器3と、欠陥検出器3を制御する制御部1と、欠陥検出器3による検出結果を処理して、円盤状基板Wの縁部及び表面における欠陥を検出する処理部10とを備える。
【0025】
欠陥検出器3は円盤状基板Wの縁部における欠陥を測定・撮像する。詳しくは、欠陥検出器3は、縁測定器4(縁検査器)及び表面撮像器5を備え、縁に形成された切り欠き部及び欠陥を測定し、縁部表面の撮像を行う。
【0026】
円盤状基板Wは、例えば、半導体ウエハ、ガラス基板等である。
図2は、本実施の形態に係る円盤状基板Wの構成を模式的に例示する断面図である。円盤状基板Wは対向する二つの扁平面を有する。以下に、おいては、斯かる二つの扁平面のうち、縁測定器4及び表面撮像器5からの光が照射される面を表面W3と言う。
【0027】
円盤状基板Wの縁W2の付近には、縁W2と表面W3との間に、径方向傾斜部が周設されている。斯かる傾斜部はいわゆるベベルW4である。換言すれば、円盤状基板Wにおいては、境界W5を基準に、表面W3とベベルW4とに分かれる。
【0028】
円盤状基板Wは、例えば、縁W2の一部にオリフラ(オリエンテーションフラット)、ノッチ等の切り欠き部W1を有している。円盤状基板Wはターンテーブル6に載置されて回転し、この際、縁測定器4による縁の測定及び表面撮像器5による表面W3の縁側の撮像が行われる。
【0029】
欠陥検出器3は、円盤状基板Wが載置されるターンテーブル6を回転させるための電動機7を備えており、ターンテーブル6は、電動機7により駆動される。
【0030】
図3は、本実施の形態に係るアライメント装置100において、縁測定器4及び表面撮像器5の配置を説明する概略的平面図である。
縁測定器4及び表面撮像器5は円盤状基板Wの縁W2付近に夫々設けられている。縁測定器4及び表面撮像器5は円盤状基板Wの径方向に沿って設けられ、円盤状基板Wの周方向に離れて配置されている。縁測定器4及び表面撮像器5は、互いの照明の影響受けない、必要最小限の距離を、円盤状基板Wの周方向に離れて配置されている。
【0031】
円盤状基板Wの縁を測定する縁測定器4は、光源41、レンズ42及びセンサ43を有する。光源41は例えば半導体レーザーであり、センサ43は例えば光センサである。センサ43は受光量に応じて出力が特定の関係を保ちながら連続的に変化するものであり、CCD(電荷結合素子)又はPSD(Position Sensitive Detector:商品名)とよばれる入射光量に対して出力が直線的に変化するものが用いられる。センサ43は、光源41から出射され、直下の円盤状基板Wによって減量されて到達する光の量に応じた出力を発生する。この出力が、円盤状基板Wの縁W2を示すものとなる。すなわち、縁測定器4の測定結果に基づいて、縁W2に形成された切り欠き部W1の位置、範囲が検出でき、縁W2におけるバリ、チッピング等の欠陥を検出できる。
【0032】
エンコーダ2は、ターンテーブル6の回転角度に相当する電動機7の回転量を検出してデジタル信号(回転角度)を出力する。
【0033】
表面撮像器5は、撮像センサ51、照明52及びミラー53を有する。撮像センサ51はCCD、CMOS等の撮像素子を含む撮像センサである。表面撮像器5は、ハーフミラー(図示せず)を有し、いわゆる同軸落射照明を採用している。すなわち、表面撮像器5においては、照明52からの光が前記ハーフミラーによって円盤状基板Wに照射され、円盤状基板W及びミラー53から反射された反射光を用いて円盤状基板Wの縁付近の表面W3を撮像する。
【0034】
このように、表面撮像器5では、同軸落射照明を採用しているので、入射光と反射光を可能な限り同軸にすることができ、円盤状基板Wの偏心による視差及び傾きによる影響を少なくすることができる。表面撮像器5は撮像した撮像画像を処理部10に送る。
表面撮像器5からの撮像画像に基づいて、円盤状基板Wの縁部の表面W3における傷、凹み等の異常を検出できる。
【0035】
図4は、本実施の形態に係るアライメント装置100の処理部10の要部構成を示す機能ブロック図である。処理部10は、補正値算出部11、判定部12、欠陥検出部13、排除部14(排除処理部)、切り欠き検出部15、表面異常検出部16(検出部)、記憶部17、出力部18等を有している。
【0036】
処理部10においてはセンサ43からの出力とエンコーダ2からの出力とが1対のデータとしてターンテーブル6の一定回転角度毎に蓄積される。なお、処理部10においてはセンサ43の出力を、円盤状基板Wの回転中心から縁W2までの距離に換算される。この具体例としては、センサ43の出力を円盤状基板Wの回転中心から縁W2までの距離に換算した距離データと、該距離データに対応する回転角度とが対応付けられて記憶部17に記憶される。
また、処理部10においては、撮像センサ51からの撮像画像と、対応する回転角度とが対応付けられて記憶部17に記憶される。
【0037】
記憶部17は、例えば、フラッシュメモリ、EEPROM(登録商標)、HDD、MRAM(磁気抵抗メモリ)、FeRAM(強誘電体メモリ)、又は、OUM等の不揮発性の記憶媒体により構成されている。
また、記憶部17には、欠陥検出部13及び切り欠き検出部15にて用いられる、閾値1及び閾値2を記憶している。更に、記憶部17には、表面異常検出部16にて用いられる閾値を記憶している。
【0038】
補正値算出部11は、縁測定器4の測定結果に基づいて、円盤状基板Wの位置及び方向を特定して偏心量を求め、希望する位置への補正のための補正値を算出する。
【0039】
詳しくは、補正値算出部11は縁測定器4の測定結果に基づいて円盤状基板Wの縁W2を表す縁ラインを生成し、生成された縁ラインを用いて、円盤状基板Wの位置及び方向を特定し、特定された位置及び方向に基づいて補正値を求める。
【0040】
例えば、縁測定器4は、円盤状基板Wを一回転させながら、0.036度毎に順次縁W2を測定する。すなわち、円盤状基板Wの一回転において10000レコードの回転角度及び前記距離データが得られる。
【0041】
このように得られた前記距離データを回転角度の昇順又は降順に応じて連続的に繋ぐと縁W2を表す連続したデータが得られる。得られたデータを回転角度と距離データとの関係でプロットすると、
図5に示すような曲線が得られる。
図5において、縦軸は距離データを示し、横軸は回転角度を示す。以下、
図5に示す曲線又は該曲線に係る前記連続したデータを縁ラインと言う。
【0042】
円盤状基板Wの回転中心が円盤状基板Wの中心からずれている場合、
図5に示しているように、グラフ全体は、例えば、360度を一周期とした曲線状の波形を描いたものとなる。
図5において、L2は、円盤状基板Wの切り欠き部W1に対応する部分である。また、L1及びL3は、円盤状基板Wのチッピングに対応する部分である。また、L4は、円盤状基板Wのバリに対応する部分である。
【0043】
補正値算出部11は、前記縁ラインからL1~L4の夫々に係る最小回転角度及び最大回転角度を求める。斯かる最小回転角度及び最大回転角度がL1~L4の夫々の形成範囲を示す。
【0044】
以上の処理結果から、円盤状基板Wの回転中心(位置)及び切り欠き部W1(方向)が分かる。補正値算出部11は、前記距離データ及び各距離データに対応する回転角度を用いて円盤状基板Wの位置及び方向を補正するための補正値を算出する。すなわち、補正値算出部11は、円盤状基板Wの回転中心を、円盤状基板Wの中心に移動させるための、移動方向と、移動量とを算出する。斯かる算出方法は公知技術であり、ここでは詳しい説明を省略する。以下、算出された前記移動方向及び移動量を補正値と言う。
【0045】
補正値算出部11は、出力部18を介して、算出された補正値を、制御部1に出力する。また、補正値算出部11は、算出された補正値を、例えば円盤状基板Wの位置を移動させる機構(図示せず)に出力しても良い。
【0046】
切り欠き検出部15は、前記縁ラインからL1~L4のような切り欠き部W1及び欠陥に係る距離データを削除して、切り欠き部W1及び欠陥のない状態の理想的な縁ラインを生成する。すなわち、斯かる理想的な縁ラインは、切り欠き部W1及び欠陥部分の影響の少ない円盤状基板Wの回転中心から縁W2までの距離である。
切り欠き検出部15は補正値算出部11が求めた補正値を用いて斯かる理想的な縁ラインを求める。斯かる求めの方法は、公知技術であり、ここでは詳しい説明を省略する。
【0047】
切り欠き検出部15は、各回転速度における、前記縁ラインに係る距離データ(以下、第1距離データと言う。)と、前記理想的な縁ラインに係る距離データ(以下、第2距離データと言う。)との差を順次取得する。上述したように、理想的な縁ラインは、切り欠き部W1及び欠陥のない状態における距離データであるので、前記第1距離データ及び前記第2距離データの差は、円盤状基板Wの径方向における、切り欠き部W1及び欠陥の大きさを表す。
【0048】
切り欠き検出部15は、前記第1距離データ及び前記第2距離データの差を用いて、切り欠き部W1の検出を行う。例えば、切り欠き検出部15は、記憶部17に記憶されている閾値1を読み出し、前記第1距離データ及び前記第2距離データの差のうち、閾値1より大きい値に対応する部分を切り欠き部W1として検出する。これによって、円盤状基板Wの切り欠き部W1(
図5のL2)が検出でき、且つ斯かる切り欠き部W1の径方向における大きさも検出できる。
【0049】
次いで、欠陥検出部13は、前記第1距離データ及び前記第2距離データの差を用いて、縁W2の欠陥の検出を行う。例えば、欠陥検出部13は、前記閾値1より小さい閾値2を記憶部17から読み出し、前記第1距離データ及び前記第2距離データの差のうち、前記閾値2より大きい値に対応する部分を欠陥として検出する。これによって、円盤状基板Wの縁W2の欠陥(L1、L3、L4)が検出できる。なお、前記第1距離データ及び前記第2距離データの差において、その値が正か負かによって、バリ又はチッピングとして判定される。
【0050】
判定部12は、表面撮像器5によって撮像された、各回転角度での縁部の表面W3の撮像画像を記憶部17から取得し、ベベルW4と表面W3との境界W5を判定する。例えば、判定部12には、前記撮像画像の濃淡に基づいて、斯かる判定を行う。
【0051】
ベベルW4で反射された表面撮像器5からの光は反射角度が大きいので、表面撮像器5で集光出来ない。従って、前記撮像画像においては、ベベルW4部分が最も黒く映るので、表面W3とベベルW4との間では濃淡の差が大きい。
【0052】
斯かる事実を用いて、表面撮像器5は前記撮像画像に対する濃淡変化において、最も濃淡変化が大きい位置を境界W5として判定する。また、これに限るものでなく、濃淡変化を微分して最もピークが高いところを境界W5として判定しても良く、前記微分結果に対していわゆるサブピクセル処理を行っても良い。
【0053】
排除部14は、前記撮像画像に対して、円盤状基板Wの表面検査の対象領域を除く剰余領域を排除する排除処理を行う。
【0054】
本実施の形態に係るアライメント装置100においては、表面撮像器5によって撮像された撮像画像に基づいて、円盤状基板Wの縁W2付近の表面W3における凹み、傷等を検出する表面検査を行う。前記撮像画像には円盤状基板Wの縁部以外に、背景の一部が映るが、前記表面検査の対象領域は、境界W5から表面W3側の部分である。一方、前記撮像画像において、前記剰余領域は、前記対象領域を除く領域である。
【0055】
排除部14は、判定部12の結果に基づいて、各回転角度に対応する撮像画像に対して、境界W5から表面W3側の対象領域を除く部分(剰余領域)を排除する排除処理を行う。斯かる排除処理が施された撮像画像は、前記表面検査の対象領域のみが存在する。
【0056】
表面異常検出部16は前記排除処理後の撮像画像を用いて、前記対象領域における異常の検出を行う。表面異常検出部16は、例えば濃度差を強調する処理を行ったうえ、濃度(階調)が所定の閾値以下の部分を異常部分として検出する。表面異常検出部16は、例えば、ラベリング処理によって、前記異常部分の範囲を検出する。これらの検出結果に基づいて表面異常検出部16は欠陥であるか否かを判定する。
【0057】
欠陥検出部13、切り欠き検出部15及び表面異常検出部16による検出結果は出力部18を介して、例えば制御部1に出力される。
【0058】
制御部1は、CPU、ROM、RAM等を備えている。ROMには各種の制御プログラム、演算用のパラメータのうちの基本的に固定のデータ等が予め格納されており、RAMはデータを一時的に記憶し、記憶順、記憶位置等に関係なく読み出すことが可能である。また、RAMは、例えば、ROMから読み出されたプログラム、斯かるプログラムを実行することによって発生する各種データ、前記実行の際適宜変化するパラメータ等を記憶する。
【0059】
CPUは、ROMに予め格納されている制御プログラムをRAM上にロードして実行する。例えば、CPUは、ターンテーブル6(電動機7)、縁測定器4及び表面撮像器5の駆動を適宜制御する。また、CPUは、欠陥検出部13、切り欠き検出部15及び表面異常検出部16の検出結果を統合して、円盤状基板W全体における欠陥の有無を判定する。更に、CPUは、補正値算出部11によって算出された補正値に基づいて、円盤状基板Wを移動又は回転させる。
【0060】
一方、円盤状基板Wがターンテーブル6に載置される際、円盤状基板Wの中心とターンテーブル6の中心とが一致しない場合が生じる。このまま、円盤状基板Wが回転すると、円盤状基板Wの回転中心と、円盤状基板Wの中心とが一致しなくなり、偏心及び視差が生じる。
【0061】
偏心量が大きい場合は、ターンテーブル6において円盤状基板Wを支持する位置も偏るため、円盤状基板Wの自重によって円盤状基板Wが変形し円盤状基板Wが僅かに傾くことがある。この場合、円盤状基板Wは傾いたまま回転する。
また、視差が生じている状態で、表面撮像器5による撮像が行われると、円盤状基板Wの影が撮像画像に映ってしまい、斯かる撮像画像に基づく欠陥検出において妨げになる。
【0062】
本実施の形態に係るアライメント装置100はこのような問題を解決できるように構成されている。以下、詳しく説明する。
【0063】
図6~8は、本実施の形態に係るアライメント装置100における、撮像画像に対する処理を説明するフローチャートである。以下、説明の便宜上、円盤状基板Wは0.036°ずつ回転するとし、回転角度0.036°毎に縁測定器4により測定及び表面撮像器5による撮像が行われる。
【0064】
先ず、制御部1は、電動機7に適宜指示を行い、ターンテーブル6の回転を開始させる(ステップS101)。この際、制御部1は、縁測定器4に対して縁測定の開始を指示し、表面撮像器5に対して円盤状基板Wの縁部の表面W3(以下、単に縁部の表面W3と言う。)の撮像開始を指示する。制御部1からの指示に応じて、縁測定器4は縁測定を開始し、表面撮像器5は、縁W2、ベベルW4、境界W5及び縁部の表面W3の撮像を開始する(ステップS102)。
【0065】
円盤状基板Wの一回転が終了した場合、制御部1は、電動機7に適宜指示を行い、ターンテーブル6の回転を終了させる(ステップS103)。
以降、処理部10では、縁W2における欠陥検出及び縁部の表面W3における欠陥検出が行われる(ステップS104)。
【0066】
まず、
図7を用いて、縁W2における欠陥検出について説明する。
【0067】
円盤状基板Wが一回転する間、縁測定器4によって測定された結果(距離データ)を回転角度の昇順又は降順に応じて連続的に繋ぐことによって、縁ラインが生成される(ステップS201)。(
図5参照)縁ラインの生成については、既に説明しており、ここでは詳しい説明を省略する。
【0068】
次いで、切り欠き検出部15は、前記縁ラインから切り欠き部W1及び欠陥に対応する距離データを削除して理想的な縁ラインを生成する。また、切り欠き検出部15は、各回転速度における、前記縁ラインに係る距離データ(第1距離データ)と、前記理想的な縁ラインに係る距離データ(第2距離データ)との差を取得する。そして、切り欠き検出部15は、前記第1距離データ及び前記第2距離データの差のうち、閾値1より大きい値に対応する部分を切り欠き部W1として検出する(ステップS202)。切り欠き部W1の詳細については既に説明しており、ここでは詳しい説明を省略する。
【0069】
次いで、欠陥検出部13は、前記第1距離データ及び前記第2距離データの差のうち、前記閾値1より小さい閾値2より大きい値に対応する部分を縁W2の欠陥として検出する(ステップS203)。
【0070】
補正値算出部11は、前記距離データ及び各距離データに対応する回転角度を用いて円盤状基板Wの位置及び方向を補正するための補正値を算出する(ステップS204)。斯かる算出方法は公知技術であり、ここでは詳しい説明を省略する。
【0071】
次に、
図8を用いて、縁部の表面W3における欠陥検出について説明する。
【0072】
表面撮像器5によって撮像された、各回転角度での撮像画像に対して、判定部12は、ベベルW4と表面W3との境界W5を判定する(ステップS301)。例えば、判定部12には、前記撮像画像の濃淡に基づいて、最も濃淡変化が大きい位置を境界W5として判定する。
【0073】
次いで、排除部14は、判定部12の結果に基づいて、各回転角度に対応する撮像画像に対して、境界W5から表面W3側の対象領域を除いた剰余領域を排除する排除処理を行う(ステップS302)。
【0074】
図9は本実施の形態に係るアライメント装置100において、前記排除処理を実行する前後を表す写真である。
図9Aは前記排除処理を実行する前を表しており、
図9Bは前記排除処理を実行した後を表している。
図9Aにおいては、円盤状基板Wの偏心(傾き)に起因して、円盤状基板Wの影が映っている。一方、
図9Bにおいては、斯かる影を含む剰余領域が解除されて、表面検査の対象領域のみが存在する。
【0075】
以降、表面異常検出部16は、前記排除処理後の撮像画像に対して、例えば濃度差を強調するフィルタ処理を行う(ステップS303)。これに限るものでなく、コントラスト変換フィルタ処理であっても良く、濃度差を足し合わせた積分値を用いる等の濃度補正であっても良い。
【0076】
図10は本実施の形態に係るアライメント装置100において、対象領域に対して前記フィルタ処理を実行する前後を表す写真である。
図10Aは前記フィルタ処理を実行する前を表しており、
図10Bは前記フィルタ処理を実行した後を表している。
図10Aに比べて、
図10Bにおいては、対象領域における異常部分と正常部分との濃度差が大きくなっている。
【0077】
また、以上のように濃度差強調の処理が施された撮像画像を用いて、表面異常検出部16は縁部の表面W3における異常の検出を行う(ステップS304)。表面異常検出部16は、記憶部17に記憶された閾値を読み出して、濃度(階調)が前記閾値以下の部分を異常部分として検出し、例えば、ラベリング処理によって、前記異常部分の範囲を検出する。表面異常検出部16はこれらの検出結果に基づいて斯かる異常部分が欠陥であるか否かを判定する。
【0078】
再び、
図6に基づいて説明する。
縁W2における欠陥検出及び縁部の表面W3における欠陥検出が行われた後(ステップS104)、処理部10は、これら検出結果に係るデータを制御部1に送る。
【0079】
制御部1は、処理部10から送られた検出結果に係るデータを統合する(ステップS105)。すなわち、制御部1は斯かる検出結果に係るデータに基づいて、縁W2における欠陥の有無及び縁部の表面W3における欠陥の有無を確認し、円盤状基板Wの全体における欠陥の有無を判定する。
【0080】
以降、制御部1は、処理部10にて求められた補正値に基づいて円盤状基板Wのアライメントを行う。すなわち、制御部1は前記補正値に基づいて、円盤状基板Wを特定方向に移動させ、位置及び方向を補正する(ステップS106)。
【0081】
次いで、制御部1は前記アライメントに係るデータを外部に出力する(ステップS107)。例えば、制御部1は前記アライメントに係るデータを表示部に出力し、該表示部は斯かるデータをユーザに表示する。
【0082】
以上のように、本実施の形態に係るアライメント装置100においては、表面検査の対象領域を除く剰余領域を撮像画像から排除してから、縁部の表面W3における異常を検査(表面検査)する。従って、円盤状基板Wが大きく偏心した場合においても表面検査の精度を高めることができる。また、斯かる撮像画像において処理すべき範囲を縮小させるので、処理負担を減らすことができる。
【0083】
なお、上述した補正値算出部11、判定部12、欠陥検出部13、排除部14、切り欠き検出部15及び表面異常検出部16は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、CPUが所定のプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に構築されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
4 縁測定器
5 境界W
12 判定部
14 排除部
16 表面異常検出部
51 撮像センサ
100 アライメント装置
W 円盤状基板
W3 表面
W4 ベベル
W5 境界