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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】ブレーカー及びそれを備えた安全回路
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/04 20060101AFI20220202BHJP
   H01H 37/32 20060101ALI20220202BHJP
   H01H 37/54 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
H01H37/04 A
H01H37/32 A
H01H37/54 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017245524
(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2019114368
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390025140
【氏名又は名称】ボーンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】浪川 勝史
【審査官】北岡 信恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-235913(JP,A)
【文献】特開2016-031917(JP,A)
【文献】特開2016-096119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/00-37/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を有する固定片と、
可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、
温度変化に伴って変形することにより、前記可動片を前記可動接点が前記固定接点に接触する導通状態から前記可動接点が前記固定接点から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子と、
前記可動片が前記遮断状態にあるとき、前記固定片と前記可動片とを導通させる正特性サーミスターと、
前記固定片、前記可動片、前記熱応動素子及び前記正特性サーミスターを収容する樹脂ケースと、を備えたブレーカーにおいて、
前記固定片は、前記正特性サーミスターを支持する支持部と、前記正特性サーミスターと当接する当接部と、を有し、
前記樹脂ケースは、第1底面と、前記第1底面から前記固定片を挟んで前記正特性サーミスターの側へ陥没する凹部と、を有し、
前記凹部は、前記支持部において前記正特性サーミスターを支持する面とは反対側に第2底面を有し、
前記正特性サーミスターから前記固定片を視た平面視で、前記当接部が前記第2底面の内側に配されていることを特徴とするブレーカー。
【請求項2】
前記平面視で、前記正特性サーミスターの全体が前記第2底面の内側に配されている請求項1記載のブレーカー。
【請求項3】
前記固定片は、前記第1底面から露出して外部回路と接続される端子を有する請求項1又は2に記載のブレーカー。
【請求項4】
前記第2底面は、前記端子に対向する領域に隅部を有する矩形状に形成され、前記隅部は、前記端子側に凸な円弧状に形成されている請求項3記載のブレーカー。
【請求項5】
前記可動片が前記遮断状態にあるとき、前記支持部は前記第1底面から突出しない請求項1ないし4のいずれかに記載のブレーカー。
【請求項6】
前記固定片は、複数の前記当接部を有し、
各当接部が前記第2底面の内側に配されている請求項1ないし5のいずれかに記載のブレーカー。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のブレーカーを備えたことを特徴とする電気機器用の安全回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の2次電池パック等に内蔵される小型のブレーカー等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電気機器の2次電池やモーター等の保護装置(安全回路)としてブレーカーが使用されている。ブレーカーは、充放電中の2次電池の温度が過度に上昇した場合、又は自動車、家電製品等の機器に装備されるモーター等に過電流が流れた場合等の異常が生じた際に、2次電池やモーター等を保護するために電流を遮断する。このような保護装置として用いられるブレーカーは、機器の安全を確保するために、温度変化に追従して正確に動作する(良好な温度特性を有する)ことと、通電時の抵抗値が安定していることが求められる。
【0003】
ブレーカーには、温度変化に応じて作動し、電流を導通又は遮断する熱応動素子が備えられている。特許文献1には、熱応動素子としてバイメタルを適用したブレーカーが示されている。バイメタルとは、熱膨張率の異なる2種類の板状の金属材料が積層されてなり、温度変化に応じて形状を変えることにより、接点の導通状態を制御する素子である。同文献に示されたブレーカーは、固定片、端子片、可動片、熱応動素子、PTCサーミスター等の部品が、ケースに収納されてなり、固定片及び端子片の端子がケースから突出し、電気機器の電気回路に接続されて使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-62729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、ブレーカーが、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型携帯情報端末機器又はスマートフォンと称される薄型の多機能携帯電話機等の電気機器に装備される2次電池等の保護装置として用いられる場合、上述した安全性の確保に加えて、小型化が要求される。特に、近年の携帯情報端末機器にあっては、ユーザーの小型化(薄型化)の志向が強く、各社から新規に発売される機器は、デザイン上の優位性を確保するために、小型に設計される傾向が顕著である。こうした背景の下、携帯情報端末機器を構成する一部品として、2次電池と共に実装されるブレーカーもまた、さらなる小型化が強く要求されている。
【0006】
図8は、上記特許文献1に開示されているブレーカーと同等な構成のブレーカー100を示している。同図において、(a)は、高温環境下に晒されたブレーカー100の断面図であり、(b)は、その後常温環境で冷却されたブレーカー100の断面図である。
【0007】
図8(a)に示されるように、高温環境の熱によって逆反り変形した熱応動素子5が、PTCサーミスター6を樹脂製のケース本体7の底面側に押すことにより、固定片2の支持部26及びケース本体7の底壁75が外側に膨張する。このとき、ケース本体7の底壁75は、温度上昇に伴い軟化しているため、塑性変形する。
【0008】
このような底壁75は、図8(b)に示されるように、冷却された後にあっても膨張した形状を維持するため、ブレーカー100の厚さ寸法が肥大し、電気機器の薄型化を妨げる。
【0009】
また、近年、生産効率の向上を狙って、ブレーカーを回路基板に直接的に実装する形態が検討されており、さらには、ブレーカーの端子と回路基板のリードとの接続にリフロー方式のはんだ付けを用いることが検討されている。このようなリフロー工程では、ブレーカー100が高温環境下に晒されるため、上述した底壁75の膨張が顕著となる。特に、上述した底壁75の膨張は、底壁75の厚さが薄いブレーカー100において発生しやすいため、電気機器のさらなる薄型化を図ることが困難であった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、温度上昇に伴うケースの膨張を抑制し、容易に小型化を図ることができるブレーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、固定接点を有する固定片と、可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより、前記可動片を前記可動接点が前記固定接点に接触する導通状態から前記可動接点が前記固定接点から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子と、前記可動片が前記遮断状態にあるとき、前記固定片と前記可動片とを導通させる正特性サーミスターと、前記固定片、前記可動片、前記熱応動素子及び前記正特性サーミスターを収容する樹脂ケースと、を備えたブレーカーにおいて、前記固定片は、前記正特性サーミスターと当接する当接部を有し、前記樹脂ケースは、底面と、前記底面から前記固定片を挟んで前記正特性サーミスターの側へ陥没する凹部と、を有し、前記正特性サーミスターから前記固定片を視た平面視で、前記当接部が前記凹部の内側に配されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記平面視で、前記正特性サーミスターの全体が前記凹部の内側に配されている、ことが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記凹部から前記固定片が露出している、ことが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記固定片は、前記底面から露出して外部回路と接続される端子を有する、ことが望ましい。
【0015】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記凹部は、前記端子に対向する領域に隅部を有する矩形状に形成され、前記隅部は、前記端子側に凸な円弧状に形成されている、ことが望ましい。
【0016】
本発明の電気機器用の安全回路は、前記ブレーカーを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のブレーカーでは、固定片は、正特性サーミスターと当接する当接部を有し、樹脂ケースは、底面と、底面から固定片を挟んで正特性サーミスターの側へ陥没する凹部と、を有している。そして、正特性サーミスターから固定片を視た平面視で、当接部が凹部の内側に配されている。従って、本発明のブレーカーが高温環境下に晒され、逆反り変形した熱応動素子が正特性サーミスターを樹脂ケースの底面側に押す場合であっても、固定片及び樹脂ケースは、当接部が設けられた領域すなわち当初より陥没している凹部で外側に膨張する。従って、樹脂ケースひいてはブレーカー全体での厚さ寸法の肥大が抑制され、容易に小型化を図ることが可能となる。
【0018】
また、ケースの膨張を抑制する作用は、ブレーカーが高温に晒されるリフロー工程において、顕著に発揮される。これにより、リフロー工程で、回路基板に対するブレーカーの姿勢が安定し、回路基板のランドとブレーカーの端子との接触状態が安定し、容易に良好なはんだ付けがなされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態によるブレーカーの概略構成を示す組み立て前の斜視図。
図2】通常の充電又は放電状態における上記ブレーカーを示す断面図。
図3】過充電状態又は異常時などにおける上記ブレーカーを示す断面図。
図4】上記ブレーカーの底面側から視た斜視図。
図5】上記ブレーカーの底面図。
図6】上記ブレーカーの固定片及び端子片の斜視図。
図7】本発明の上記ブレーカーを備えた安全回路の回路図。
図8】従来のブレーカーを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態によるブレーカーについて図面を参照して説明する。図1乃至図3は、ブレーカーの構成を示している。ブレーカー1は、一部がケース10から外部に露出する固定片2及び端子片3を備える。固定片2及び端子片3の露出部が外部回路(図示せず)と電気的に接続されることにより、ブレーカー1は、電気機器の安全回路の主要部を構成する。
【0021】
図1に示されるように、ブレーカー1は、固定接点20及び端子22を有する固定片2と、端子32を有する端子片3と、先端部に可動接点41を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、固定片2、端子片3、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容するケース10等によって構成されている。ケース10は、ケース本体(第1ケース)7とケース本体7の上面に装着される蓋部材(第2ケース)8等によって構成されている。
【0022】
固定片2は、例えば、銅等を主成分とする金属板(この他、銅-チタニウム合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、ケース本体7にインサート成形により埋め込まれている。
【0023】
固定接点20は、銀、ニッケル、ニッケル-銀合金の他、銅-銀合金、金-銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により、形成されている。固定接点20は、可動接点41に対向する接点部21に形成され、ケース本体7の内部に形成されている開口73aの一部からケース本体7の収容凹部73に露出されている。
【0024】
本出願においては、特に断りのない限り、固定片2において、固定接点20が形成されている側の面(すなわち図1において上側の面)を第1面、その反対側の底面を第2面として説明している。他の部品、例えば、端子片3、可動片4及び熱応動素子5、ケース10、金属プレート9等についても同様である。
【0025】
図2に示されるように、固定片2は、階段状(側面視でクランク状)に曲げられた段曲げ部25と、PTCサーミスター6を支持する支持部26とを有する。段曲げ部25は、固定接点20と支持部26とを繋ぎ、固定接点20と支持部26とを高さ違いに配置する。段曲げ部25は、ケース本体7に埋設されている。PTCサーミスター6は、支持部26に3箇所形成された凸状の突起(ダボ)26aの上に載置されて、突起26aに支持される。
【0026】
端子片3は、固定片2と同様に、銅等を主成分とする金属板をプレス加工することにより形成され、ケース本体7にインサート成形により埋め込まれている。端子片3は、可動片4と接続される接続部31と、端子32とを有している。
【0027】
接続部31は、ケース本体7の内部に形成されている開口73bの一部からケース本体7の収容凹部73に露出し、可動片4と電気的に接続される。
【0028】
可動片4は、銅等を主成分とする板状の金属材料をプレス加工することにより形成されている。可動片4は、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。
【0029】
可動片4の一端部には、可動接点41が形成されている。可動接点41は、固定接点20と同等の材料によって可動片4の第2面に形成され、溶接の他、クラッド、かしめ(crimping)等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。
【0030】
可動片4の他端部には、端子片3の接続部31と電気的に接続される接続部42が形成されている。端子片3の接続部31の第1面と可動片4の接続部42の第2面とは、レーザー溶接によって固着されている。レーザー溶接とは、レーザー光をワーク(本実施形態では、端子片3及び可動片4が相当)に照射し、ワークを局部的に溶融及び凝固させることによってワーク同士を接合する溶接手法である。レーザー光が照射されたワークの表面には、他の溶接手法(例えば、ジュール熱を利用する抵抗溶接)による溶接痕とは異なる形態のレーザー溶接痕が形成される。
【0031】
可動片4は、可動接点41と接続部42との間に、弾性部43を有している。弾性部43は、接続部42から可動接点41の側に延出されている。これにより、接続部42は、弾性部43を挟んで可動接点41とは反対側に設けられる。
【0032】
接続部42において端子片3の接続部31と固着されることにより可動片4が固定され、弾性部43が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点41が固定接点20の側に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。可動片4と端子片3とは、接続部31及び接続部42において電気的に接続されているので、固定片2と端子片3とが通電可能となる。
【0033】
可動片4は、弾性部43において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、作動温度及び復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。また、弾性部43の第2面には、熱応動素子5に対向して一対の突起(接触部)44a,44bが形成されている。突起44a,44bと熱応動素子5とは接触して、突起44a,44bを介して熱応動素子5の変形が弾性部43に伝達される(図1及び図3参照)。
【0034】
熱応動素子5は、可動接点41が固定接点20に接触する導通状態から可動接点41が固定接点20から離隔する遮断状態に移行させる。熱応動素子5は、円弧状に湾曲した初期形状をなし、熱膨張率の異なる薄板材を積層することにより形成される。過熱により作動温度に達すると、熱応動素子5の湾曲形状は、スナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の弾性部43が押し上げられ、かつ弾性部43の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形状が望ましく、小型でありながら弾性部43を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。
【0035】
熱応動素子5の材料としては、洋白、黄銅、ステンレス鋼等の各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。例えば、安定した作動温度及び復帰温度が得られる熱応動素子5の材料としては、高膨脹側に銅-ニッケル-マンガン合金、低膨脹側に鉄-ニッケル合金を組み合わせたものが望ましい。また、化学的安定性の観点からさらに望ましい材料として、高膨脹側に鉄-ニッケル-クロム合金、低膨脹側に鉄-ニッケル合金を組み合わせたものが挙げられる。さらにまた、化学的安定性及び加工性の観点からさらに望ましい材料として、高膨脹側に鉄-ニッケル-クロム合金、低膨脹側に鉄-ニッケル-コバルト合金を組み合わせたものが挙げられる。
【0036】
PTCサーミスター6は、可動片4が遮断状態にあるとき、固定片2と可動片4とを導通させる。PTCサーミスター6は、固定片2の支持部26と熱応動素子5との間に配設されている。すなわち、PTCサーミスター6を挟んで、支持部26は熱応動素子5の直下に位置している。熱応動素子5の逆反り動作により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、作動電流、作動電圧、作動温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その材料及び形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。本実施形態では、チタニウム酸バリウム、チタニウム酸ストロンチウム又はチタニウム酸カルシウムを含むセラミック焼結体が用いられる。セラミック焼結体の他、ポリマーにカーボン等の導電性粒子を含有させたいわゆるポリマーPTCを用いてもよい。
【0037】
ケース10は、可動片4の弾性部43の厚さ方向から視て、弾性部43の長手方向(すなわち、接続部42側から可動接点側に向う方向)を長辺とする矩形状に形成されている。
【0038】
ケース10を構成するケース本体7及び蓋部材8は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性樹脂により成形されている。上述した樹脂と同等以上の特性が得られるのであれば、樹脂以外の材料を適用してもよい。
【0039】
ケース本体7には、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収容するための内部空間である収容凹部73が形成されている。収容凹部73は、可動片4を収容するための開口73a,73b、可動片4及び熱応動素子5を収容するための開口73c、並びに、PTCサーミスター6を収容するための開口73d等を有している。なお、ケース本体7に組み込まれた可動片4、熱応動素子5の端縁は、収容凹部73の内部に形成されている枠によってそれぞれ当接され、熱応動素子5の逆反り時に案内される。
【0040】
蓋部材8には、金属プレート9がインサート成形によって埋め込まれている。金属プレート9は、上述した銅等を主成分とする金属板又はステンレス鋼等の金属板をプレス加工することにより形成される。金属プレート9は、図2及び図3に示すように、可動片4の第1面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、蓋部材8ひいては筐体としてのケース10の剛性・強度を高めつつブレーカー1の小型化に貢献する。
【0041】
図1が示すように、固定片2、端子片3、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容したケース本体7の開口73a、73b、73c等を塞ぐように、蓋部材8が、ケース本体7に装着される。ケース本体7と蓋部材8とは、例えば超音波溶着によって接合される。このとき、ケース本体7と蓋部材8とは、それぞれの外縁部の全周にわたって連続的に接合され、ケース10の気密性が向上する。これにより、収容凹部73がもたらすケース10の内部空間は密閉され、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等の部品がケース10の外部の雰囲気から遮断され、保護されうる。本実施形態では、金属プレート9の第1面側には、樹脂が全体的に配されているので、収容凹部73の気密性がより一層高められる。
【0042】
図2は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は初期形状を維持(逆反り前)している。金属プレート9には、可動片4の頂部43aと当接し、頂部43aを熱応動素子5の側に押圧する突出部91が設けられている。突出部91が頂部43aを押圧することにより、弾性部43は弾性変形し、その先端に形成されている可動接点41が固定接点20の側に押圧されて接触する。これにより、可動片4の弾性部43などを通じてブレーカー1の固定片2と端子片3との間は導通している。可動片4の弾性部43と熱応動素子5とが接触し、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6及び固定片2は、回路として導通していてもよい。しかしながら、PTCサーミスター6の抵抗は、可動片4の抵抗に比べて圧倒的に大きいため、PTCサーミスター6を流れる電流は、固定接点20及び可動接点41を流れる量に比して実質的に無視できる程度である。
【0043】
図3は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、作動温度に達した熱応動素子5は逆反りし、可動片4の弾性部43が押し上げられて固定接点20と可動接点41とが離隔する。ブレーカー1の内部で熱応動素子5が変形し、可動片4を押し上げるときの熱応動素子5の作動温度は、例えば、70℃~90℃である。このとき、固定接点20と可動接点41の間を流れていた電流は遮断され、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点20と可動接点41の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
【0044】
固定片2は、PTCサーミスター6と当接する当接部27を有している。本実施形態では、支持部26に形成されている突起26aの頂部が当接部27に相当する。突起26aが形成されていない形態では、支持部26のうち、PTCサーミスター6と当接する領域が当接部となる。例えば、PTCサーミスター6の第2面及び支持部26の第1面が平面状に形成されている場合、支持部26の第1面の大部分が当接部となる。
【0045】
図4及び図5は、底面側から視たブレーカー1を示している。ケース本体7は、底壁75を有している。底壁75は、ブレーカー1の外底を形成する底面76と、底面76から固定片2を挟んでPTCサーミスター6の側へ陥没する凹部77と、を有している。
【0046】
本ブレーカー1では、PTCサーミスター6から固定片2を視た平面視で、当接部27が凹部77の内側に配されている。すなわち、図5に示される底面視においても、当接部27が凹部77の内側に配されている。
【0047】
従って、図3に示すように、ブレーカー1が高温環境下に晒され、逆反り変形した熱応動素子5がPTCサーミスター6をケース本体7の底面76側に押す場合であっても、固定片2は、当接部27が設けられた領域すなわち当初より陥没している凹部77で外側(図3中下方)に膨張する。このとき、凹部77の外周を構成する底壁75は、ほとんど変形することなく、図2に示される当初の形状が維持される。従って、ケース10ひいてはブレーカー1全体での厚さ寸法の肥大が抑制され、容易に小型化を図ることが可能となる。
【0048】
上述したケース本体7の底壁75の膨張を抑制する作用は、ブレーカー1が高温に晒されるリフロー工程において、顕著に発揮される。これにより、リフロー工程で、回路基板に対するブレーカー1の姿勢が安定し、回路基板のランドとブレーカー1の端子22及び32との接触状態が安定し、容易に良好なはんだ付けがなされる。
【0049】
本ブレーカー1では、上記平面視で、PTCサーミスター6の全体が凹部77の内側に配されているのが望ましい。すなわち、図5に示される底面視においても、PTCサーミスター6の全体が凹部77の内側に配されているのが望ましい。このような形態では、熱応動素子5が逆反り変形したとき、PTCサーミスター6が固定片2を押す領域が限定され、固定片2の変形が抑制される。従って、ケース本体7の塑性変形がより一層抑制される。
【0050】
本ブレーカー1では、凹部77から固定片2の支持部26が露出しているのが望ましい。すなわち、凹部77は、底壁75を厚さ方向に貫通する貫通穴によって構成される。このような形態では、支持部26の第2面が凹部77の底面となる。従って、固定片2の変形に伴うブレーカー1の膨張がより一層抑制される。なお、凹部77は、樹脂によって、有底に形成されていてもよい。この場合、熱応動素子5の逆反り変形時に、凹部77の底部がケース本体7の底面から外側に突出しないように、凹部77の底部の高さが設定されるのが望ましい。このような凹部によれば、ケース10の膨張を抑制しつつ、密閉性を高めることが可能となる。また、上述したリフロー工程において、凹部77へのはんだの浸透が抑制される。
【0051】
固定片2は、底面76から露出して外部回路と接続される端子22及び32を有している。端子22が底面76から露出する構成により、端子22を集約して配置することが可能となり、外部回路のランド部の占有範囲が縮小され、パターン設計の自由度が高められる。端子22は、底壁75と面一すなわち底面76と同一平面上に配されている。これにより、容易にブレーカー1の薄型化を図ることができる。端子32についても同様である。さらに、端子22及び32は、底面視で矩形状のケース本体7の4角部に配されている。これにより、上述したリフロー工程において、ブレーカー1の位置及び姿勢が安定し、回路基板上にブレーカー1を精度よく実装できる。
【0052】
本ブレーカー1では、端子22及び32は、ケース本体7の短手方向にのびて形成されている。このような形態では、図8に示されるブレーカー100と比較して、ブレーカー1の長手方向の長さを抑制できる。端子22及び32は、長辺側の側壁78から突出する突出部28及び38を有している。側壁78からの突出部28及び38の突出長さは任意である。突出部28及び38は、例えば、ケース本体7に蓋部材8を接合した後、側壁78と面一で又は側壁78から僅かに突出する長さで、切断されていてもよい。
【0053】
図4及び図5に示されるように、本ブレーカー1では、凹部77は、ケース本体7の底面視で矩形状に形成されている。そして、凹部77は、2対の端子22及び32に対向する領域に隅部77aを有している。隅部77aは、端子22及び32側に凸な円弧状に形成されている。これにより、金型に固定片2をインサートしてケース本体7を成形する際、樹脂材料の流れが良好となり、ケース本体7の成形精度が高められる。また、上述したリフロー工程において、凹部77へのはんだの浸透が抑制される。なお、凹部77は、ケース本体7の底面視で、円形又は楕円形に形成されていてもよい。
【0054】
図6は、固定片2及び端子片3を示している。固定片2において、一対の端子22は、接点部21からケース本体7の短手方向に突出する翼状に形成されている。接点部21と端子22との間には、階段状の段曲げ部29が形成されている。段曲げ部29は、ケース本体7に埋設されている。段曲げ部29は、端子22と接点部21とを高さ違いに配置する。段曲げ部29によって、PTCサーミスター6の厚さ及び凹部77の深さに応じて、底面76からの接点部21の高さを設定しつつ、端子22をケース本体7の底面76から容易に露出させることが可能となる。
【0055】
端子片3において、一対の端子32は、接続部31からケース本体7の短手方向に突出する翼状に形成されている。接続部31と端子32との間には、階段状の段曲げ部39が形成されている。段曲げ部39は、ケース本体7に埋設されている。段曲げ部39は、端子32と接続部31とを高さ違いに配置する。段曲げ部39によって、PTCサーミスター6の厚さ及び凹部77の深さに応じて、底面76からの接続部31の高さを設定しつつ、端子32をケース本体7の底面76から容易に露出させることが可能となる。
【0056】
支持部26の長手方向の先端部及び短手方向の両端部には、曲げ部26bが設けられている。曲げ部26bは、支持部26の上記先端部及び両端部が熱応動素子5の側に屈曲又は湾曲されることにより、形成される。曲げ部26bがケース本体7に食い込むことによって、固定片2がケース本体7に強固に接合される。また、支持部26に曲げ部26bが形成されることにより、金型に固定片2をインサートしてケース本体7を成形する際、凹部77の周辺領域への樹脂材料の流れ込みが良好となる。
【0057】
本発明のブレーカー1は、上記実施形態の構成に限られることなく、種々の態様に変更して実施されうる。すなわち、ブレーカー1は、少なくとも、固定接点20を有する固定片2と、可動接点41を有し、可動接点41を固定接点20に押圧して接触させる可動片4と、温度変化に伴って変形することにより、可動片4を可動接点41が固定接点20に接触する導通状態から可動接点41が固定接点20から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子5と、可動片4が遮断状態にあるとき、固定片2と可動片4とを導通させるPTCサーミスター6と、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容する樹脂製のケース10と、を備え、固定片2は、PTCサーミスター6と当接する当接部27を有し、ケース10は、底面76と、底面76から固定片2を挟んでPTCサーミスター6の側へ陥没する凹部77と、を有し、PTCサーミスター6から固定片2を視た平面視で、当接部27が凹部77の内側に配されていればよい。
【0058】
例えば、ケース本体7と蓋部材8との接合手法は、超音波溶着に限られることなく、両者が強固に接合される手法であれば、適宜適用することができる。例えば、液状又はゲル状の接着剤を塗布・充填し、硬化させることにより、両者が接着されてもよい。また、ケース10は、ケース本体7と蓋部材8等によって構成される形態に限られることなく、2個以上の部品によって構成されていればよい。
【0059】
また、ケース10は、端子22、32が露出した状態で、2次的なインサート成形等により、樹脂等で密封されていてもよい。この場合、凹部77に対応する領域がPTCサーミスター6の側へ陥没するのが望ましい。これにより、ケース10の膨張を抑制しつつ、気密性がより一層高められる。
【0060】
また、可動片4をバイメタル又はトリメタル等の積層金属によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5を一体的に形成する構成であってもよい。この場合、ブレーカーの構成が簡素化されて、さらなる小型化を図ることができる。
【0061】
また、WO2011/105175号公報に示されるような、端子片3と可動片4とが一体に形成されている形態に、本発明を適用してもよい。
【0062】
また、本発明のブレーカー1は、2次電池パック、電気機器用の安全回路等にも広く適用できる。図7は電気機器用の安全回路502を示す。安全回路502は2次電池501の出力回路中に直列にブレーカー1を備えている。
【0063】
さらにまた、本発明のブレーカー1は、例えば、特開2016-225142号公報に開示されているコネクタにも適用可能である。この場合、容易にコネクタの小型化を図ることが可能となる。また、ブレーカー1を備えたコネクタを含むケーブルによって安全回路502の一部が構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 :ブレーカー
2 :固定片
4 :可動片
5 :熱応動素子
6 :PTCサーミスター(正特性サーミスター)
10 :ケース
20 :固定接点
27 :当接部
41 :可動接点
76 :底面
77 :凹部
77a :隅部
502 :安全回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8