(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】鋼橋拡幅架設装置および鋼橋拡幅架設工法
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20220202BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E01D22/00 Z
(21)【出願番号】P 2017250016
(22)【出願日】2017-12-26
【審査請求日】2020-10-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名 :公益社団法人土木学会 刊行物名 :平成29年度土木学会全国大会第72回年次学術講演会予稿集 発行年月日:2017年8月10日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 施工を行った者:JFEエンジニアリング株式会社 施工場所:首都高速道路 中央環状線(内回り)堀切JCT-小菅JCT間(綾瀬川左岸 東京都葛飾区堀切四丁目~東京都葛飾区小菅三丁目)施工日:2017年7月22日~2017年9月13日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名 :株式会社日経BP 刊行物名 :日経コンストラクション 第672号 発行年月日:2017年9月25日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 集会名:平成29年度土木学会全国大会第72回年次学術講演会 開催場所:九州大学伊都キャンパス(福岡県福岡市西区元岡744) 開催日:2017年9月12日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 取材場所:JFEエンジニアリング堀切小菅JCT堀切作業所(東京都葛飾区小菅一丁目1番) 取材日:2017年8月2日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの公開者:株式会社鋼構造出版 ウェブサイトの掲載アドレス: http://www.kozobutsu-hozen-journal.net/walks/detail.php?id=134&page=1 http://www.kozobutsu-hozen-journal.net/walks/detail.php?id=134&page=2 http://www.kozobutsu-hozen-journal.net/walks/detail.php?id=134&page=3 ウェブサイトの掲載年月日:2017年9月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 取材場所:JFEエンジニアリング堀切小菅JCT堀切作業所(東京都葛飾区小菅一丁目1番) 取材日:2017年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】特許業務法人MTS国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【氏名又は名称】藤田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100150223
【氏名又は名称】須藤 修三
(72)【発明者】
【氏名】岩川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 健治
(72)【発明者】
【氏名】豊住 次郎
(72)【発明者】
【氏名】深谷 道夫
(72)【発明者】
【氏名】大西 達也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 邦博
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-178922(JP,A)
【文献】特開2001-146718(JP,A)
【文献】特開2009-161949(JP,A)
【文献】特開2001-064915(JP,A)
【文献】実開昭56-158484(JP,U)
【文献】特開2009-242081(JP,A)
【文献】特開2016-166453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設鋼橋の拡幅工事に用いる鋼橋拡幅架設装置であって、
前記既設鋼橋の拡幅に用いる拡幅部材の吊り上げおよび吊り下げを行って所定の位置に配置する吊りフレームと、
前記既設鋼橋から前記拡幅工事を行う側に突出するように前記既設鋼橋の既設桁に取り付けられた受け横梁と、
を備え、
前記吊りフレームは、その骨格を形作るフレーム部と、前記拡幅部材の吊り上げおよび吊り下げを行うとともに前記既設鋼橋の橋軸直角方向に移動可能な吊り昇降手段と、を有し、
前記フレーム部は略鉛直方向に延びる脚部と略橋軸直角方向に延びる梁部を有してなり、前記梁部は前記フレーム部の天井部となっており、
前記脚部のうち前記既設鋼橋から遠い側の脚部である第1の脚部は、前記受け横梁に支持されており、前記既設鋼橋に近い側の脚部である第2の脚部は、前記既設鋼橋の車道よりも前記既設鋼橋の橋軸直角方向に外側で前記拡幅工事を行う側の前記既設鋼橋の部位に支持されて
おり、
前記吊りフレームは、前記既設鋼橋の橋軸方向に移動するための移動手段を前記第1の脚部および前記第2の脚部にさらに有していることを特徴とする鋼橋拡幅架設装置。
【請求項2】
前記受け横梁に設けられた第1の軌条と、前記既設鋼橋の車道よりも前記既設鋼橋の橋軸直角方向に外側で前記拡幅工事を行う側の前記既設鋼橋の部位に設けられた第2の軌条とをさらに備え、
前記第1の軌条および前記第2の軌条は、どちらも既設鋼橋の略橋軸方向に延びており、
前記第1の脚部は、前記既設鋼橋の橋軸方向に移動可能なように前記第1の軌条に支持されており、前記第2の脚部は、前記既設鋼橋の橋軸方向に移動可能なように前記第2の軌条に支持されていることを特徴とする請求項
1に記載の鋼橋拡幅架設装置。
【請求項3】
前記第1の軌条に取り付けられた第1の牽引装置と、前記第2の軌条に取り付けられた第2の牽引装置とをさらに備え、
前記吊りフレームは、前記第1の牽引装置および前記第2の牽引装置によって牽引されることにより、前記既設鋼橋の橋軸方向に移動できることを特徴とする請求項
2に記載の鋼橋拡幅架設装置。
【請求項4】
前記吊り昇降手段は、前記既設鋼橋の橋軸直角方向に移動可能なように前記フレーム部に取り付けられていることを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載の鋼橋拡幅架設装置。
【請求項5】
前記フレーム部は、前記既設鋼橋の車線側への突き出しおよびその引き戻しが可能な可動梁を備えており、
前記吊り昇降手段は、前記可動梁に、前記可動梁の長手方向に移動可能なように取り付けられていることを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載の鋼橋拡幅架設装置。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれかに記載の鋼橋拡幅架設装置を用いて行う鋼橋拡幅架設工法であ
って、
前記吊り昇降手段によって前記既設鋼橋の拡幅に用いる拡幅部材を所定の位置に配置する配置工程と、
前記配置工程で前記所定の位置に配置した前記拡幅部材を前記既設鋼橋に連結する連結工程と、
を備えることを特徴とする鋼橋拡幅架設工法。
【請求項7】
請求項
1~
5のいずれかに記載の鋼橋拡幅架設装置を用いて行う鋼橋拡幅架設工法であって、
前記移動手段および前記吊り昇降手段によって前記既設鋼橋の拡幅に用いる拡幅部材を所定の位置に配置する配置工程と、
前記配置工程で前記所定の位置に配置した前記拡幅部材を前記既設鋼橋に連結する連結工程と、
を備えることを特徴とする鋼橋拡幅架設工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼橋拡幅架設装置および鋼橋拡幅架設工法に関し、詳細には、ベントを用いずに、かつ、1車線規制で、既設鋼橋の拡幅工事を可能とする鋼橋拡幅架設装置および鋼橋拡幅架設工法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設鋼橋の拡幅工事を行う場合、現状では、拡幅する空間の下方にベントを構築し、構築したベントによって、拡幅に用いる部材(以下、拡幅部材と記すことがある。)を支持して工事を行っている(例えば、非特許文献1、2参照)。
【0003】
その工事において拡幅部材を所定の位置に配置する際には、工事対象の既設鋼橋の側方にクレーンを配置して、該クレーンによって拡幅部材を吊り上げて所定の位置に配置することが多く行われており(例えば、非特許文献1、2参照)、また、工事対象の既設鋼橋の道路面にクレーンを配置して、該クレーンによって拡幅部材を吊り上げて所定の位置に配置することも多く行われている(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、工事対象の既設鋼橋の周辺環境によっては、ベントを構築することが困難となる場合やベントを設置できる時期に制約が生じることがある。
【0005】
また、工事対象の既設鋼橋の道路面に配置したクレーンで拡幅部材を吊り上げて工事を行う場合、50tクラスのクレーンが必要となるため、2車線の規制が必要となり、交通への影響が大きくなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】新小田拓也、有村英樹、「一般国道1号藤枝BP拡幅鋼桁架設と既設鋼桁補強」、駒井ハルテック技報、株式会社駒井ハルテック、2012年10月、Vol.2、p.76-79
【文献】梅本喜久、佐々木隆太、小原洋介、「トラス橋の3車線化拡幅工事の設計 ― 中央自動車道 小原第二橋 ―」、宮地技報、宮地エンジニアリング株式会社、2004年3月、No.19、p.52-58
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、ベントを用いずに、かつ、1車線規制で、既設鋼橋の拡幅工事を可能とする鋼橋拡幅架設装置および鋼橋拡幅架設工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の鋼橋拡幅架設装置および鋼橋拡幅架設工法により、前記課題を解決したものである。
【0009】
即ち、本発明に係る鋼橋拡幅架設装置は、既設鋼橋の拡幅工事に用いる鋼橋拡幅架設装置であって、前記既設鋼橋の拡幅に用いる拡幅部材の吊り上げおよび吊り下げを行って所定の位置に配置する吊りフレームと、前記既設鋼橋から前記拡幅工事を行う側に突出するように前記既設鋼橋の既設桁に取り付けられた受け横梁と、を備え、前記吊りフレームは、その骨格を形作るフレーム部と、前記拡幅部材の吊り上げおよび吊り下げを行うとともに前記既設鋼橋の橋軸直角方向に移動可能な吊り昇降手段と、を有し、前記フレーム部は略鉛直方向に延びる脚部と略橋軸直角方向に延びる梁部を有してなり、前記梁部は前記フレーム部の天井部となっており、前記脚部のうち前記既設鋼橋から遠い側の脚部である第1の脚部は、前記受け横梁に支持されており、前記既設鋼橋に近い側の脚部である第2の脚部は、前記既設鋼橋の車道よりも前記既設鋼橋の橋軸直角方向に外側で前記拡幅工事を行う側の前記既設鋼橋の部位に支持されていることを特徴とする鋼橋拡幅架設装置である。
【0010】
ここで、「前記受け横梁に支持されており」とは、前記受け横梁に直接支持されている場合だけでなく、他の部材を介して前記受け横梁に支持されている場合も含む概念であり、「前記既設鋼橋の車道よりも前記既設鋼橋の橋軸直角方向に外側で前記拡幅工事を行う側の前記既設鋼橋の部位に支持されている」とは、前記既設鋼橋の車道よりも前記既設鋼橋の橋軸直角方向に外側で前記拡幅工事を行う側の前記既設鋼橋の部位に直接支持されている場合だけでなく、前記既設鋼橋の車道よりも前記既設鋼橋の橋軸直角方向に外側で前記拡幅工事を行う側の前記既設鋼橋の部位に他の部材を介して支持されている場合も含む概念である。以下、本願において、同様の記載は前記記載と同様に解釈するものとする。
【0011】
また、本願において、「車道」とは、車線により構成され、専ら車両の通行の用に供することを目的とした道路の部分のことである。
【0012】
前記既設鋼橋の車道よりも前記既設鋼橋の橋軸直角方向に外側で前記拡幅工事を行う側の前記既設鋼橋の部位としては、具体的には例えば、前記既設鋼橋の前記拡幅工事を行う側の路肩を挙げることができる。
【0013】
前記吊りフレームは、前記既設鋼橋の橋軸方向に移動するための移動手段を前記第1の脚部および前記第2の脚部にさらに有しており、前記第1の脚部は前記既設鋼橋の橋軸方向に移動可能なように前記受け横梁に支持されており、前記第2の脚部は前記既設鋼橋の橋軸方向に移動可能なように前記既設鋼橋の車道よりも前記既設鋼橋の橋軸直角方向に外側で前記拡幅工事を行う側の前記既設鋼橋の部位に支持されているように構成してもよい。
【0014】
ここで、「前記既設鋼橋の橋軸方向に移動可能なように前記受け横梁に支持されており」とは、前記既設鋼橋の橋軸方向に移動可能なように前記受け横梁に直接支持されている場合だけでなく、前記既設鋼橋の橋軸方向に移動可能なように前記受け横梁に他の部材を介して支持されている場合も含む概念であり、「前記既設鋼橋の橋軸方向に移動可能なように前記既設鋼橋の車道よりも前記既設鋼橋の橋軸直角方向に外側で前記拡幅工事を行う側の前記既設鋼橋の部位に支持されている」とは、前記既設鋼橋の橋軸方向に移動可能なように前記既設鋼橋の車道よりも前記既設鋼橋の橋軸直角方向に外側で前記拡幅工事を行う側の前記既設鋼橋の部位に直接支持されている場合だけでなく、前記既設鋼橋の橋軸方向に移動可能なように前記既設鋼橋の車道よりも前記既設鋼橋の橋軸直角方向に外側で前記拡幅工事を行う側の前記既設鋼橋の部位に他の部材を介して支持されている場合も含む概念である。以下、本願において、同様の記載は前記記載と同様に解釈するものとする。
【0015】
前記受け横梁に設けられた第1の軌条と、前記既設鋼橋の車道よりも前記既設鋼橋の橋軸直角方向に外側で前記拡幅工事を行う側の前記既設鋼橋の部位に設けられた第2の軌条とをさらに備え、前記第1の軌条および前記第2の軌条は、どちらも既設鋼橋の略橋軸方向に延びており、前記第1の脚部は、前記既設鋼橋の橋軸方向に移動可能なように前記第1の軌条に支持されており、前記第2の脚部は、前記既設鋼橋の橋軸方向に移動可能なように前記第2の軌条に支持されているように構成してもよい。
【0016】
前記第1の軌条に取り付けられた第1の牽引装置と、前記第2の軌条に取り付けられた第2の牽引装置とをさらに備え、前記吊りフレームは、前記第1の牽引装置および前記第2の牽引装置によって牽引されることにより、前記既設鋼橋の橋軸方向に移動できるように構成してもよい。
【0017】
前記吊り昇降手段は、前記既設鋼橋の橋軸直角方向に移動可能なように前記フレーム部に取り付けられているように構成してもよい。
【0018】
ここで、「前記フレーム部に取り付けられている」とは、前記フレーム部に直接取り付けられている場合だけでなく、他の部材を介して前記フレーム部に取り付けられている場合も含む概念である。以下、本願において、同様の記載は前記記載と同様に解釈するものとする。
【0019】
前記フレーム部は、前記既設鋼橋の車線側への突き出しおよびその引き戻しが可能な可動梁を備えており、前記吊り昇降手段は、前記可動梁に、前記可動梁の長手方向に移動可能なように取り付けられているように構成してもよい。
【0020】
ここで、「前記可動梁の長手方向に移動可能なように取り付けられている」とは、前記可動梁の長手方向に移動可能なように直接取り付けられている場合だけでなく、他の部材を介して前記可動梁の長手方向に移動可能なように取り付けられている場合も含む概念である。以下、本願において、同様の記載は前記記載と同様に解釈するものとする。
【0021】
本発明に係る鋼橋拡幅架設工法の第1の態様は、前記鋼橋拡幅架設装置を用いて行う鋼橋拡幅架設工法であって、前記吊り昇降手段によって前記既設鋼橋の拡幅に用いる拡幅部材を所定の位置に配置する配置工程と、前記配置工程で前記所定の位置に配置した前記拡幅部材を前記既設鋼橋に連結する連結工程と、を備えることを特徴とする鋼橋拡幅架設工法である。
【0022】
ここで、「前記既設鋼橋に連結する」とは、前記既設鋼橋に直接連結する場合だけでなく、他の部材を介して前記既設鋼橋に連結する場合も含む概念である。以下、本願において、同様の記載は前記記載と同様に解釈するものとする。
【0023】
本発明に係る鋼橋拡幅架設工法の第2の態様は、前記鋼橋拡幅架設装置を用いて行う鋼橋拡幅架設工法であって、前記移動手段および前記吊り昇降手段によって前記既設鋼橋の拡幅に用いる拡幅部材を所定の位置に配置する配置工程と、前記配置工程で前記所定の位置に配置した前記拡幅部材を前記既設鋼橋に連結する連結工程と、を備えることを特徴とする鋼橋拡幅架設工法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る鋼橋拡幅架設装置および鋼橋拡幅架設工法によれば、ベントを用いずに、かつ、1車線規制で、既設鋼橋の拡幅工事を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置および鋼橋拡幅架設工法を適用する既設鋼橋100の拡幅工事前後の状態を示す横断面図であり、(A)は既設鋼橋100の拡幅工事前の状態を示す横断面図、(B)は既設鋼橋100に拡幅工事を施した後の状態(拡幅鋼橋200)を示す横断面図
【
図2】本拡幅工事に用いる主たる拡幅部材82を拡大して示す正面図であり、(A)は、主たる拡幅部材82が連結されて組み立てられた状態を橋軸方向から見た正面図、(B)は、主たる拡幅部材82の組み立て前の状態を橋軸方向から見た分解正面図
【
図3】本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10を用いて拡幅工事を行っている状況を既設鋼橋100の本線側から見た斜視図
【
図4】本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10を用いて拡幅工事を行っている状況を拡幅工事を行っている側から見た斜視図
【
図5】本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10を橋軸方向から見た正面図
【
図6】本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10を拡幅工事側(本線とは反対側)の橋軸直角方向から見た側面図
【
図7】本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10を用いて増設主桁86の配置作業を行っている状況を模式的に示す正面図
【
図8】本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10および既設鋼橋100を橋軸方向から見た正面図であり、(A)は、1車線規制を行って、拡幅工事を行っているときの可動横梁50の配置状態を模式的に示す正面図、(B)は、車線規制を解除して全面交通開放をしたときの可動横梁50の配置状態を模式的に示す正面図
【
図9】直交する平面で可動横梁50を切断した断面の断面図
【
図10】鋼橋拡幅架設装置10を用いて、増設主桁86の設置を行っている状況を示す正面図(トラック300から増設主桁86を吊り上げた段階の正面図)
【
図11】鋼橋拡幅架設装置10を用いて、増設主桁86の設置を行っている状況を示す正面図(所定の位置で増設主桁86をやや下方に吊り下げた段階の正面図)
【
図12】鋼橋拡幅架設装置10を用いて、増設主桁86の設置を行っている状況を示す正面図(増設主桁86を増設横桁84の側方の所定の位置に配置した段階の正面図)
【
図13】鋼橋拡幅架設装置10を用いて、増設主桁86の設置を行っている状況を示す正面図(増設主桁86の増設横桁84への連結が完了した段階の正面図)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置および鋼橋拡幅架設工法を詳細に説明する。
【0027】
(1)本実施形態の適用対象例
図1は、本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置および鋼橋拡幅架設工法を適用する既設鋼橋100の拡幅工事前後の状態を示す横断面図であり、
図1(A)は既設鋼橋100の拡幅工事前の状態を示す横断面図であり、
図1(B)は既設鋼橋100に拡幅工事を施した後の状態(拡幅鋼橋200)を示す横断面図である。本願では、既設鋼橋100に拡幅工事を施した後の橋梁を、拡幅鋼橋200と称することとする。
【0028】
本実施形態の適用対象例である既設鋼橋100は、橋軸直角方向の両端部に箱桁102、104を備え、橋軸直角方向の中央部には縦桁106を備えた構造になっている。
図1(A)、(B)において符号G1、G3で示す縦線は、箱桁102、104がそれぞれ備える2つのウェブの中間位置を示している。符号G2で示す縦線は、縦桁106のウェブの位置を示している。
図1(B)において符号G0で示す縦線は、増設主桁86(
図2参照)のウェブの位置を示している。また、符号102A、104Aは、箱桁102、104の外側面を形成するウェブであり、符号102B、104Bは、箱桁102、104の内部に設けられたダイヤフラムである。
【0029】
図2は、本拡幅工事に用いる主たる拡幅部材82を拡大して示す正面図であり、
図2(A)は、主たる拡幅部材82が連結されて組み立てられた状態を橋軸方向から見た正面図であり、
図2(B)は、主たる拡幅部材82の組み立て前の状態を橋軸方向から見た分解正面図である。
【0030】
以下においては、
図1(A)に示す片側3車線の既設鋼橋100を、
図1(B)に示す片側4車線の拡幅鋼橋200に拡幅する拡幅工事に、本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置および鋼橋拡幅架設工法を適用する場合を取り上げて説明する。
【0031】
本工事によって拡幅される領域は、具体的には、
図1(B)に示す拡幅領域80であり、拡幅領域80に配置される主たる拡幅部材82(以下、単に拡幅部材82と記すことがある。)は、
図2(A)、(B)に示すように、増設横桁84と、増設主桁86と、増設縦桁88と、中床版90とからなり、これらの部材は、本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置および鋼橋拡幅架設工法を用いて、1車線を規制するのみで架設することができる。これに対して、道路面に配置したクレーンで増設主桁86および中床版90の配置作業を行う場合には、増設主桁86および中床版90は重量が大きいため、25tクラスのクレーンが必要となり、2車線を規制することが必要となる。
【0032】
(2)本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置の構成
図3は、本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10を用いて拡幅工事を行っている状況を既設鋼橋100の本線側から見た斜視図である。
図4は、本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10を用いて拡幅工事を行っている状況を、拡幅工事を行っている側から見た斜視図である。本願明細書においては、「拡幅工事を行っている側」を「拡幅工事側」と記すことがある。また、本願明細書においては、既設鋼橋100の本線を単に「本線」と記すことがある。
【0033】
図3および
図4に示すように、本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10を用いて拡幅工事を行う対象である既設鋼橋100は、河川400に沿って設けられているが、本発明に係る鋼橋拡幅架設装置を適用可能な鋼橋はこれに限定されず、本発明に係る鋼橋拡幅架設装置は、対象とする橋梁が鋼橋であれば、山間部や都市部の橋梁、跨線橋、跨道橋なども含め鋼橋一般に広く適用可能である。ここでは、既設鋼橋100を車両進行方向左側(河川400側)に1車線分拡幅する工事を例に取り上げて説明する。
【0034】
図5は、本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10を橋軸方向から見た正面図であり、
図6は、本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10を拡幅工事側(本線とは反対側)の橋軸直角方向から見た側面図である。
図5においては、鋼橋拡幅架設装置10がトラック300から増設主桁86を吊り上げた状態を示している。
【0035】
図7は、本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10を用いて増設主桁86の配置作業を行っている状況を模式的に示す正面図である。
図7に示すように、既設鋼橋100の3車線のうち、拡幅工事側の1車線のみを工事使用のために規制するだけで、主たる拡幅部材82(
図7では増設主桁86)の配置作業を行うことができ、3車線のうちの2車線は拡幅工事の作業中であっても供用を続けることができる。
図7では、3車線のうち、工事使用のために規制する拡幅工事側の1車線を除く残りの2車線に、車両302、304が走行している状況を模式的に示している。なお、
図7においては、図示の都合上、第2の脚部22および補強横梁26は破線で記載している。
【0036】
本実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10は、
図5および
図6に示すように、吊りフレーム12と、受け横梁14とを有してなる。
【0037】
受け横梁14は、吊りフレーム12の第1の脚部20を下方から支持する鋼製の梁部材であり、長手方向が略橋軸直角方向となるように、かつ、拡幅工事側(
図3および
図4においては河川400側)に突出するように、既設鋼橋100の箱桁102の下面に取り付けられている。受け横梁14の橋軸方向の配置位置は、箱桁102の内部に設けられたダイヤフラム102Bの配置位置と対応する位置である。受け横梁14の箱桁102下面への取り付けは、ボルト等による機械的な接合手段によってなすことができる。
【0038】
吊りフレーム12は、その骨格を形作るフレーム部16と、拡幅部材82の吊り上げおよび吊り下げを行うとともに既設鋼橋100の橋軸直角方向に移動可能な吊り昇降手段70と、移動手段(第1の移動手段40および第2の移動手段42)と、を有する。
【0039】
フレーム部16は、吊りフレーム12の全体の骨格を形作る部位であり、第1の脚部20と、第2の脚部22と、天井横梁24と、補強横梁26と、縦梁28、30、32、34と、ブレース36、38と、可動横梁50と、を有してなり、それらの部材はいずれも鋼製である。ただし、必要な性能を満たす素材であれば、鋼材以外の素材を用いることも可能である。また、フレーム部16を構成する前記各部材は、単一の部材で構成されていなくてもよく、複数の部材を適切な連結手段(例えば添え板を介してボルトで連結するような連結手段)によって連結して、必要な長さとした部材を用いてもよい。
【0040】
フレーム部16を橋軸方向から見ると、
図5に示すように、第1の脚部20と、第2の脚部22と、天井横梁24と、補強横梁26とによって長方形が形成されており、その形成された長方形の下辺から下方に、第1の脚部20の下部および第2の脚部22の下部が突出した形状になっている。
【0041】
第1の脚部20は、拡幅工事側(本線とは反対側)に位置する脚部であり、略鉛直方向に延びている。第1の脚部20の下端部には、第1の移動手段40が設けられており、第1の脚部20は、受け横梁14の拡幅工事側(本線とは反対側)先端部14Aの上部に設けられた第1の軌条44の上に、第1の移動手段40を介して配置されている。
【0042】
第2の脚部22は、本線側に位置する脚部であり、略鉛直方向に延びている。第2の脚部22の下端部には、第2の移動手段42が設けられており、第2の脚部22は、既設鋼橋100の拡幅工事側の路肩の上に設けられた第2の軌条46の上に、第2の移動手段42を介して配置されている。
【0043】
第1の軌条44は、
図5に示すように、第2の軌条46よりも低い高さに位置しているため、その高さの差の分だけ、第1の脚部20は、第2の脚部22よりも長くなっており、下方への突出長さが長くなっている。
【0044】
第2の脚部22および補強横梁26は、
図3、
図4および
図7に示すように、吊りフレーム12のフレーム部16の橋軸方向両端部に設けられているのみであり、フレーム部16の橋軸方向中間部(橋軸方向両端部以外の部位)には設けられていない。これは、拡幅部材82を、既設鋼橋100の道路上からフレーム部16の本線側の側部を通過させて、フレーム部16の内部に送り込み、所定の位置に配置する際に干渉しないようにするためである。
【0045】
天井横梁24は、長手方向が略橋軸直角方向となるように橋軸方向に所定の間隔を開けて複数配置されており、フレーム部16の橋軸方向両端部に配置された天井横梁24は、その両端部が、略橋軸直角方向に隣り合う第1の脚部20および第2の脚部22の上端部にそれぞれ連結されている。フレーム部16の橋軸方向中間部(橋軸方向両端部以外の部位)に配置された天井横梁24は、その両端部が、略橋軸直角方向に隣り合う最上部の縦梁28(
図6参照)にそれぞれ連結されている。
【0046】
補強横梁26は、長手方向が略橋軸直角方向となるように、既設鋼橋100の道路面からの高さが1m程度の位置に、吊りフレーム12のフレーム部16の橋軸方向両端部に、設けられている。補強横梁26は、フレーム部16の橋軸方向中間部(橋軸方向両端部以外の部位)には設けていない。これは、フレーム部16の内部に送り込んだ拡幅部材82を、所定の位置に配置する際に干渉しないようにするためである。補強横梁26は、フレーム部16の強度および剛性を補うための補強部材であり、補強横梁26を設けなくてもフレーム部16の強度および剛性が十分な場合は、省略してもよい。
【0047】
縦梁28、30、32、34は、長手方向が略橋軸方向になるように配置された梁部材である。縦梁28は第1の脚部20および第2の脚部22の上端部と連結されており、縦梁28、30、32、34のうち、最も高い位置に配置されている。また、縦梁28は、拡幅工事側(本線とは反対側)および本線側の両方に設けられている。
【0048】
縦梁30は、補強横梁26に対応する高さ位置に配置されており、縦梁28、30、32、34のうち、2番目に高い位置に配置されている。縦梁30は、拡幅工事側(本線とは反対側)および本線側の両方に設けられている。
【0049】
縦梁32、34は、長手方向が略橋軸方向になるように配置された梁部材であり、拡幅工事側(本線とは反対側)のみに設けられており、本線側には設けられていない。縦梁34は、拡幅工事側(本線とは反対側)の第1の脚部20の下端部と連結しており、縦梁28、30、32、34のうち、最も低い位置に配置されている。縦梁32は、縦梁30と縦梁34との間の中間位置よりもやや下方の位置に配置されていて、拡幅工事側(本線とは反対側)の第1の脚部20の下部と連結している。
【0050】
縦梁28、30、32、34のうち、縦梁30、32、34については、それらを設けなくてもフレーム部16の強度および剛性が十分な場合は、適宜に省略してもよい。
【0051】
ブレース36、38は、フレーム部16の拡幅工事側(本線とは反対側)のみに配置されており、橋軸方向と略平行なフレーム部16の拡幅工事側(本線とは反対側)の面内を補強および補剛するための部材である。ブレース36、38を設けなくても、橋軸方向と略平行なフレーム部16の拡幅工事側(本線とは反対側)の面内の強度および剛性が十分な場合は、ブレース36、38を適宜に省略してもよい。
【0052】
前述したように、第1の脚部20の下端部には、第1の移動手段40が設けられており、第1の脚部20は、受け横梁14の拡幅工事側(本線とは反対側)先端部14Aの上部に設けられた第1の軌条44の上に、第1の移動手段40を介して配置されている。また、第2の脚部22の下端部には、第2の移動手段42が設けられており、第2の脚部22は、既設鋼橋100の拡幅工事側の路肩の上に設けられた第2の軌条46の上に、第2の移動手段42を介して配置されている。
【0053】
このため、吊りフレーム12は、第1の移動手段40および第2の移動手段42によって、既設鋼橋100の橋軸方向に移動できるようになっている。吊りフレーム12は、第1の移動手段40および第2の移動手段42を備えているので、吊りフレーム12を既設鋼橋100の橋軸方向に移動させる際には大きな力を加えることは不要であり、例えば、
図6に示すように、吊りフレーム12の第1の脚部20の下端部に連結されたワイヤ68を、第1の軌条44の上に設置された牽引装置66によって牽引することにより、吊りフレーム12を既設鋼橋100の橋軸方向に移動させることができる。なお、図示は省略しているが、吊りフレーム12の第2の脚部22の下端部にもワイヤが連結されているとともに、第2の軌条46の上にも牽引装置が設置されており、吊りフレーム12を既設鋼橋100の橋軸方向に移動させる際には、この牽引装置も同時に用いて牽引を行う。
【0054】
第1の移動手段40および第2の移動手段42の具体的な構成は、必要な性能および安全性が確保できるものであれば特には限定されず、具体的には例えば、コロ装置であるチルタンク(登録商標)を用いることができる。
【0055】
なお、例えば、拡幅する領域が極めて限定的な場合や拡幅した箇所を修理する場合のように、吊りフレーム12を橋軸方向に移動させる必要のないときは、吊りフレーム12に、第1の移動手段40および第2の移動手段42を備えさせなくてもよい。
【0056】
図8は、本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10および既設鋼橋100を橋軸方向から見た正面図であり、
図8(A)は、1車線規制を行って、拡幅工事を行っているときの可動横梁50の配置状態を模式的に示す正面図であり、
図8(B)は、車線規制を解除して全面交通開放をしたときの可動横梁50の配置状態を模式的に示す正面図である。また、
図8(A)では、3車線のうち、工事使用のために規制する拡幅工事側(車両進行方向に対して最も左側)の1車線を除く残りの2車線に、車両302、304が走行している状況を模式的に示しており、
図8(B)では、全面交通開放をされている3車線に、車両302、304、306が走行している状況を模式的に示している。
【0057】
可動横梁50は、縦梁28、30、32、34のうち、最も高い位置に配置された縦梁28の下面に、略橋軸直角方向に移動可能なように連結されている。
【0058】
本実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10を用いて拡幅工事を行う際には、
図8(A)に示すように、工事対象の既設鋼橋100の本線方向に可動横梁50を突き出した状態にすることができ、車線規制を解除して全面交通開放をする際には、
図8(B)に示すように、拡幅工事側(本線とは反対側)に引き戻した状態にすることができる。渋滞を防ぐ観点から、拡幅工事は交通量の少ない夜間の時間帯に行って、交通量の多い日中の時間帯は拡幅工事を行わずに、
図8(B)に示すように、可動横梁50を拡幅工事側(本線とは反対側)に引き戻した状態にして全面交通開放をするようにすることが好ましい。本実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10を用いて拡幅工事を行う場合は、3車線のうち、拡幅工事側(車両進行方向に対して最も左側)の1車線のみを規制するので、可動横梁50の突き出し先端が拡幅工事側(車両進行方向に対して最も左側)の1車線の上方の範囲に収まるようにする。
【0059】
図9は、直交する平面で可動横梁50を切断した断面の断面図である。
【0060】
可動横梁50は、可動横梁保持部材52を介して、縦梁28の下フランジ28Aに、略橋軸直角方向に移動可能なように連結されている。可動横梁50は、
図9に示すように、断面がH形の鋼材であり、その長手方向に所定の間隔(例えば500mm程度の間隔)で板状の補強リブ50Dが設けられている。
図9において、符号50Cは、可動横梁50のウェブを示している。
【0061】
可動横梁保持部材52は、
図9に示すように、所定の間隔を開けて対向するように配置された2つの爪部52Bが板状部52Aにボルト54によって取り付けられて構成されている。また、ボルト54は、可動横梁保持部材52の板状部52Aおよび縦梁28の下フランジ28Aを貫通して下フランジ28Aに取り付けられており、可動横梁保持部材52は、ボルト54によって、縦梁28の下フランジ28Aに取り付けられている。また、可動横梁50が配置される部位と対応する縦梁28の部位には、板状の補強リブ56が取り付けられている。
【0062】
図9に示すように、板状部52Aと爪部52Bとの間の隙間は、可動横梁50の上フランジ50Bの厚さよりも大きく、可動横梁50は、上フランジ50Bの幅方向両端部が爪部52Bに引っ掛かった状態で、既設鋼橋100の橋軸直角方向に可逆的に移動できるようになっている。
【0063】
図8(A)に示すように、工事対象の既設鋼橋100の本線方向に可動横梁50を所定の突き出し状態にした後、および
図8(B)に示すように、拡幅工事側(本線とは反対側)に可動横梁50を所定の引き戻し状態にした後は、可動横梁50が不測の移動をしないように、縦梁28の下フランジ28A、可動横梁保持部材52の板状部52A、および可動横梁50の上フランジ50Bを貫通するボルト58によって、可動横梁50の位置を固定する。
【0064】
図5および
図8に示すように、可動横梁50には、トロリ72を介してチェーンブロック74が、可動横梁50の長手方向に移動可能なように連結されており、トロリ72およびチェーンブロック74によって、本実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10の吊り昇降手段70が構成されている。
【0065】
吊り昇降手段70は、トロリ72を備えることによって、可動横梁50の長手方向(略橋軸直角方向)に移動可能であり、チェーンブロック74を備えることによって、拡幅部材82の吊り上げおよび吊り下げを行うことができるようになっている。詳細には、
図9に示すように、トロリ72の車輪部が、可動横梁50の下フランジ50Aの幅方向両端部に引っ掛けられており、トロリ72は、可動横梁50の長手方向(略橋軸直角方向)に移動可能になっている。
【0066】
可動横梁50の補強リブ50Dは、可動横梁保持部材52の爪部52Bおよびトロリ72の車輪部と干渉しない形状および大きさになっている。
【0067】
なお、本実施形態に係る鋼橋拡幅架設装置10の吊り昇降手段70は、トロリ72およびチェーンブロック74によって構成したが、本発明に係る鋼橋拡幅架設装置の吊り昇降手段としては、拡幅部材の吊り上げおよび吊り下げを行うことができ、かつ、既設鋼橋の橋軸直角方向に移動可能な吊り昇降手段であれば、トロリ72およびチェーンブロック74による吊り昇降手段70以外の構成であっても用いることができる。
【0068】
(3)本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設工法
本発明の実施形態に係る鋼橋拡幅架設工法は、先に説明した鋼橋拡幅架設装置10を用いて既設鋼橋100の拡幅工事を行う鋼橋拡幅架設工法である。
【0069】
図10~
図13は、鋼橋拡幅架設装置10を用いて、増設主桁86の設置を行っている状況を示す正面図である。
図10は、トラック300から増設主桁86を吊り上げた段階であり、
図11は、所定の位置で増設主桁86をやや下方に吊り下げた段階であり、
図12は、増設主桁86を増設横桁84の側方の所定の位置に配置した段階であり、
図13は、増設主桁86の増設横桁84への連結が完了した段階である。なお、
図10~
図13においては、図示の都合上、第2の脚部22および補強横梁26は破線で記載している。
【0070】
以下の説明では、拡幅部材82のうち、増設主桁86を取り上げて説明するが、増設主桁86以外の拡幅部材82(増設横桁84、増設縦桁88、中床版90)の増設についても同様の手順で作業を行うことができる。拡幅部材82の取り付け順序は、増設横桁84→増設主桁86→増設縦桁88→中床版90の順である。
【0071】
本実施形態に係る鋼橋拡幅架設工法は、移動手段(第1の移動手段40および第2の移動手段42)および吊り昇降手段70(トロリ72およびチェーンブロック74)によって、既設鋼橋100の拡幅に用いる拡幅部材82(ここでは増設主桁86)を所定の位置に配置する配置工程と、配置工程で所定の位置に配置した拡幅部材82(ここでは増設主桁86)を既設鋼橋100に連結する連結工程と、を備える。
【0072】
(3-1)配置工程
配置工程では、まず、
図10に示すように、トラック300から拡幅部材82(ここでは増設主桁86)を、吊り昇降手段70のチェーンブロック74によって吊り上げる。この段階では、吊り昇降手段70(トロリ72およびチェーンブロック74)がトラック300の荷台の上方に位置するように、可動横梁50を既設鋼橋100の車線側に突き出した状態にしておく。
【0073】
次に、チェーンブロック74によって増設主桁86を吊り上げた状態のまま、トロリ72を可動横梁50の長手方向に沿って拡幅工事側に移動させ、増設主桁86を吊りフレーム12の内部に引き込み、増設主桁86の橋軸直角方向の位置を所定の位置に合わせる。そして、チェーンブロック74によって増設主桁86を少し下降させて、
図11に示すように、増設主桁86をやや下方に下降させた位置に保持する。
【0074】
次に、
図11に示す状態のまま(増設主桁86の橋軸直角方向の位置および高さ位置を
図11に示す状態に保持したまま)、吊りフレーム12を、牽引装置66等によって橋軸方向に移動させ、増設主桁86の橋軸方向の位置を所定の位置に合わせる。本実施形態においては、吊りフレーム12を、牽引装置66等によって橋軸方向に移動させる前に、増設主桁86をやや下方に下降させたが、増設主桁86を下降させない状態(トラック300の荷台から増設主桁86を吊り上げて、増設主桁86を橋軸直角方向に吊りフレーム12の内部に引き込んだままの高さ位置の状態)で保持して、吊りフレーム12を、牽引装置66等によって橋軸方向に移動させてもよい。
【0075】
増設主桁86の橋軸方向の位置を所定の位置に合わせたら、増設主桁86を、増設横桁84の側方の所定の高さ位置まで、チェーンブロック74によって下降させて、
図13に示す状態にする。
【0076】
図13に示す増設主桁86の配置位置は、橋軸直角方向の位置、橋軸方向の位置、および高さ位置が、増設横桁84に連結するための位置に合わされた位置であり、増設主桁86をこの位置に配置することにより、配置工程が完了する。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係る鋼橋拡幅架設工法の配置工程では、トロリ72によって拡幅部材82の橋軸直角方向の位置を合わせ、吊りフレーム12を橋軸方向に移動させることにより拡幅部材82の橋軸方向の位置を合わせ、チェーンブロック74によって拡幅部材82の高さ位置を合わせている。
【0078】
(3-2)連結工程
配置工程で増設主桁86を所定の位置へ配置することが完了したら、次に、増設主桁86を増設横桁84に連結する連結工程を行う。
【0079】
増設横桁84への増設主桁86の連結手段は、連結部の強度および剛性が十分に確保できるのであれば特には限定されず、具体的には例えば、添え鋼板92およびボルトによって、増設主桁86を増設横桁84へ連結することができる。
【0080】
増設主桁86の増設横桁84への連結が完了して、連結工程を完了した状態を
図13に示す。
図13では、車線規制を一旦解除することを想定して、可動横梁50を拡幅工事側(本線とは反対側)に引き込んでいる。
【0081】
(3-3)補足
本実施形態に係る鋼橋拡幅架設工法の説明では、拡幅部材82のうち、増設主桁86を取り上げて説明したが、増設主桁86以外の拡幅部材82(増設横桁84、増設縦桁88、中床版90)の増設についても同様の手順で作業を行うことができる。拡幅部材82の取り付け順序は、増設横桁84→増設主桁86→増設縦桁88→中床版90の順である。ただし、拡幅領域の地覆110および壁高欄112(
図5参照)を撤去した後でないと中床版90の取り付けはできないので、中床版90の取り付け作業を行う前に、拡幅領域の地覆110および壁高欄112を撤去することが必要である。
【0082】
図13に示すように増設主桁86の増設横桁84への連結が完了した後、増設縦桁88の取り付け作業に入る場合には、
図10に示すように、可動横梁50を既設鋼橋100の車線側に突き出し、吊り昇降手段70(トロリ72およびチェーンブロック74)をトラック300の荷台の上方に位置させ、増設主桁86の取り付けの場合と同様の手順を繰り返して、増設縦桁88の取り付けを行う。なお、当然のことであるが、増設縦桁88の取り付け位置および連結させる対象は、増設主桁86の取り付けの場合と異なるので、取り付け位置および連結させる対象は、増設縦桁88の取り付け位置および連結させる対象に変更して、増設主桁86と同様の手順を繰り返して、増設縦桁88の取り付けを行う。増設横桁84および中床版90の取り付けの場合も同様である。
【0083】
なお、受け横梁14は、本実施形態に係る鋼橋拡幅架設工法では取り付けることができないので、1車線を規制して、例えば13tラフタークレーンを用いて、既設鋼橋100の箱桁102の下面への取り付けを行う。
【0084】
また、吊りフレーム12は、受け横梁14を既設鋼橋100の箱桁102の下面へ取り付けた後、現場において組み立てて設置するが、吊りフレーム12の現場における組み立ては、1車線を規制して、例えば13tラフタークレーンを用いて行うことができる。
【0085】
また、増設横桁84は、既設鋼橋100の箱桁102のダイヤフラム102Bの位置に合せて、箱桁102のウェブ102Aの外側面に取り付けるが、詳細には、
図2(A)および(B)に示す増設横桁連結部材84Aを介して、箱桁102のウェブ102Aの外側面に取り付ける。
【符号の説明】
【0086】
10…鋼橋拡幅架設装置
12…吊りフレーム
14…受け横梁
14A…拡幅工事側先端部
16…フレーム部
20…第1の脚部
22…第2の脚部
24…天井横梁
26…補強横梁
28、30、32、34…縦梁
28A…下フランジ
36、38…ブレース
40…第1の移動手段
42…第2の移動手段
44…第1の軌条
46…第2の軌条
50…可動横梁
50A…下フランジ
50B…上フランジ
50C…ウェブ
50D、56…補強リブ
52…可動横梁保持部材
52A…板状部
52B…爪部
54、58…ボルト
66…牽引装置
68…ワイヤ
70…吊り昇降手段
72…トロリ
74…チェーンブロック
80…拡幅領域
82…拡幅部材
84…増設横桁
84A…増設横桁連結部材
86…増設主桁
88…増設縦桁
90…中床版
92…添え鋼板
100…既設鋼橋
102、104…箱桁
102A、104A…ウェブ
102B、104B…ダイヤフラム
106…縦桁
110…地覆
112…壁高欄
200…拡幅鋼橋
300…トラック
302、304、306…車両
400…河川
G0…増設主桁86のウェブの位置
G1…箱桁102が備える2つのウェブの中間位置
G2…縦桁106のウェブの位置
G3…箱桁104が備える2つのウェブの中間位置