(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】キリタンポ製造装置
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20220202BHJP
【FI】
A23L7/10 E
(21)【出願番号】P 2018017505
(22)【出願日】2018-02-02
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】518040806
【氏名又は名称】嶋森 円矢
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(72)【発明者】
【氏名】嶋森 円矢
【審査官】茅根 文子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-066526(JP,A)
【文献】特開2005-229908(JP,A)
【文献】特開2005-333900(JP,A)
【文献】特開昭62-232369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23P
A21D
A21C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部と、
前記筒状部内で米飯を練りながら搬送するスクリューと、
前記筒状部と中心軸線を共通にして前記米飯が搬送される側の前記筒状部の端部に固定された外筒と、
前記外筒内から前記スクリューとは反対側の前記外筒の外側へ、前記筒状部の中心軸線と略平行に延びる円柱状のマンドレルと、
前記外筒内で前記マンドレルに外嵌した円筒状の内径調整ダイスと、
前記筒状部の中心軸線方向で前記筒状部とは反対側の前記外筒の端部に内嵌した環状の外径ダイスと、を有し、
前記マンドレルは、前記外径ダイスから前記スクリューとは反対側の先端までの長さが、製造するキリタンポの長さよりも長いキリタンポ製造装置。
【請求項2】
前記マンドレルは熱電対付き棒状ヒーターを内蔵している請求項1に記載のキリタンポ製造装置。
【請求項3】
さらに、前記マンドレル上の前記米飯の位置を検知する米飯到達検知センサを有する請求項1又は2に記載のキリタンポ製造装置。
【請求項4】
さらに、前記マンドレル上の前記米飯の切り出しを行う切り出しチャックを有する請求項1から3のいずれか一項に記載のキリタンポ製造装置。
【請求項5】
さらに、前記マンドレル上の前記米飯の先端を成形する先端R成形機を有する請求項1から4のいずれか一項に記載のキリタンポ製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、秋田県の郷土料理であるキリタンポの製造に用いるキリタンポ製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キリタンポは練った米飯の玉に金属または木からなる串の一部を刺し、円筒状に成形して表面を焼くことで、製造されている。このようなキリタンポの生産効率を向上させるため、ミートチョッパーにキリタンポ用の製造具を取り付けたものを使用してキリタンポを成形するキリタンポの製造方法及び製造具が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
串を使用する従来の製造方法においては、キリタンポを焼いた後、串に米飯のカスがこびり付く。特に、キリタンポが付着していない串の部分に米飯のカスが硬くこびり付く。したがって、串を再利用するためには、串を長時間水に浸けてから洗浄する必要があり、その分の串のストックが必要となる。米飯のカスが串にこびり付かないように、串に水をつけたり、フッ素加工などでコーティングすることも考えられるが、この場合、米飯を串に巻きつけることが困難となる。
【0005】
串に刺したキリタンポを焼くと、内部の水分が蒸発してキリタンポの外に出ようとするが、表面が焼かれた状態では、内側の水分は、キリタンポが付着していない串の部分(キリタンポの外側に延びる串の部分)の側のキリタンポの端部のみからしか外部へ放出されない。これにより、内部の圧力が高まりキリタンポが大きく膨れ上がり、キリタンポの肉厚が薄くなる。キリタンポの肉厚が薄くなると、キリタンポは、鍋で煮込んだ際、煮崩れしやすくなる。
【0006】
このような問題に鑑み、本発明は、肉厚なキリタンポを効率的に製造することができるキリタンポ製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は
筒状部と、
前記筒状部内で米飯を練りながら搬送するスクリューと、
前記筒状部と中心軸線を共通にして前記米飯が搬送される側の前記筒状部の端部に固定された外筒と、
前記外筒内から前記スクリューとは反対側の前記外筒の外側へ、前記筒状部の中心軸線と略平行に延びる円柱状のマンドレルと、
前記外筒内で前記マンドレルに外嵌した円筒状の内径調整ダイスと、
前記筒状部の中心軸線方向で前記筒状部とは反対側の前記外筒の端部に内嵌した環状の外径ダイスと、を有し、
前記マンドレルは、前記外径ダイスから前記スクリューとは反対側の先端までの長さが、製造するキリタンポの長さよりも長いキリタンポ製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、肉厚なキリタンポを効率的に製造することができるキリタンポ製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は本願の実施形態に係るキリタンポ製造装置の縦断面図である。
【
図2】
図2は本願の実施形態に係るキリタンポ製造装置の正面図である。
【
図3】
図3は本願の実施形態に係るキリタンポ製造装置の上面図である。
【
図4】
図4は本願の実施形態に係るキリタンポ製造装置の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係るキリタンポ製造装置100の縦断面図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係るキリタンポ製造装置100は、平板状のベース1の上に設けられたスクリュー筐体2を有する。スクリュー筐体2は、筒状部2aと、開口部2bと、基部2cを有する。筒状部2aは、その中心軸線がベース1と略平行になるように配置され、内側に円柱状の空洞を形成している。開口部2bは、筒状部2aの中心軸線方向の中間部の上部を径方向に貫通し、上方に突出している。基部2cは、筒状部2aの中心軸線方向の中間部の下部に配置され、ベース1にネジ止めされている。なお、本願において「中心軸線」と言う場合は、特に記載がない限り、筒状部2aの中心軸線を意味するものとする。
【0012】
筒状部2aの一方の端部近傍には、一対の軸受3が、互いに中心軸線方向に離間して内嵌している。軸受3は円柱状の回転軸4を中心軸線を中心として回転可能に支持している。回転軸4は、中心軸線方向において、軸受3が配置されている側の筒状部2aの端部から外に延びている。筒状部2aから外に延びた回転軸4の部分には、第1のVベルトプーリー5が外嵌している。
【0013】
第1のVベルトプーリー5は、Vベルト6を介して第2のVベルトプーリー7からトルクが伝達されることにより回転する。第1のVベルトプーリー5の外径は第2のVベルトプーリー7の外径よりも大きい。第2のVベルトプーリー7は駆動モーター8の出力軸に外嵌している。第1のVベルトプーリー5が外嵌されたのとは反対側の回転軸4の端部は、筒状部2aの内側で、中心軸線方向で一対の軸受3の外にわずかに延び、スクリュー9の中心軸の端部が固定されている。
【0014】
開口部2bには米飯ホッパー10が取り付けられている。使用者は米飯ホッパー10から筒状部2a内に米飯を投入することができる。スクリュー9は駆動モーター8の駆動により回転し、筒状部2a内に投入された米飯を練りながら、中心軸線方向で回転軸4とは反対側に移動させる。
【0015】
中心軸線方向で回転軸4とは反対側の筒状部2aの端部には外筒11が取り付けられている。外筒11は、筒状部2aと中心軸線を共通とする概略円筒状をしており、中心軸線方向で筒状部2aとは反対側の端部が径方向内側にすぼまった形状をしている。
【0016】
外筒11の内側には、外筒11から径方向内側に延びるアーム12が設けられている。アーム12は、中心軸線方向でスクリュー9側のマンドレル13の端部を支持している。
【0017】
マンドレル13は、概略円柱状をして、外筒11の内側から、中心軸線方向で筒状部2aとは反対側の外筒11の外側へ延びている。外筒11の外に配置されたマンドレル13の部分の長さは、
図4に示すように製造するキリタンポの長さよりも長い。マンドレル13には熱電対付き棒状ヒーターが内蔵されている。マンドレル13の表面にはフッ素コーティングが施されている。
【0018】
外筒11の内側に配置されたマンドレル13の部分には、筒状の内径調整ダイス14が外嵌している。内径調整ダイス14はマンドレル13にネジ固定されており、中心軸線方向の位置を自由に調整することができる。内径調整ダイス14の外周面は、中心軸線方向でスクリュー9側が円柱面状をしており、スクリュー9とは反対側がテーパー状をしている。中心軸線方向で筒状部2aとは反対側の外筒11の端部の径方向内側には、環状の外径ダイス15が固定されている。
【0019】
筒状部2aの上部には、中心軸線方向において、アーム12とは反対側のマンドレル13の先端の近傍まで延びるセンサー支持部材16が設けられている。センサー支持部材16は、センサー前後調節ネジ17を備え、先端部に米飯到達検知センサー18を保持している。中心軸線方向における米飯到達検知センサー18の位置はセンサー前後調節ネジ17により調節することができる。
【0020】
図2は、本願の実施形態に係るキリタンポ製造装置100の正面図である。本実施形態ではキリタンポ製造装置100を正面から見て右側に切出チャック20が設けられている。
【0021】
切出チャック20は、キリタンポチャックシリンダー21と、一対のキリタンポ切出し爪22、23を有する。キリタンポチャックシリンダー21は、マンドレル13と略同じ高さで、マンドレル13から離隔して配置されている。
【0022】
キリタンポ切出し爪22は、非駆動状態において、キリタンポチャックシリンダー21から上方に延びている。キリタンポ切り出し爪23は、非駆動状態において、キリタンポチャックシリンダー21から下方に延びている。一対のキリタンポ切出し爪22、23は、それぞれ、基端側を中心としてキリタンポチャックシリンダー21によってマンドレル13を挟むように回転する。
【0023】
図3は、本願の実施形態に係るキリタンポ製造装置100の上面図である。キリタンポチャックシリンダー21は、キリタンポ切出しシリンダー24により支持され、中心軸線方向に移動可能である。
【0024】
本実施形態に係るキリタンポ製造装置100は、中心軸線方向において、マンドレル13に対してスクリュー筐体2とは反対側に先端R成形機30を有している。先端R成形機30は、成形前後シリンダー31と、先端R成形チャック32と、先端R成形爪33とを有している。
【0025】
成形前後シリンダー31は、先端R成形チャック32を支持し、先端R成形チャック32を中心軸線方向に垂直かつ水平方向に移動させる。先端R成形チャック32は、中心軸線方向においてマンドレル13側に先端R成形チャック32を保持している。先端R成形チャック32は、中心軸線方向においてマンドレル13側に先端R成形爪33を保持している。先端R成形爪33は、中心軸線方向において、マンドレル13側に、先端R成形チャック32側に向かって凸の半球状の内部空間を形成する凹部を有している。
【0026】
図4は本願の実施形態に係るキリタンポ製造装置100の一部拡大断面図である。マンドレル13周辺を拡大して示している。
図4(a)は米飯50を切り出す前段階の状態を示している。
図4(b)は米飯50を切り出して先端を成形する際の状態を示している。以下、
図1から
図4を参照してキリタンポ製造装置100によりキリタンポを製造する方法及びキリタンポ製造装置100の制御について説明する。
【0027】
米飯ホッパー10から米飯を投入し、キリタンポ製造装置100の不図示のスタートスイッチを入れると、
図1に示す駆動モーター8の駆動によりスクリュー9が中心軸線を中心として回転する。スクリュー9は、米飯を練りながら、中心軸線方向でマンドレル13側へ搬送する。
【0028】
米飯は外径ダイス15と内径調整ダイス14により絞られ、外筒11の外に押し出される。米飯は後続の米飯によって連続して押し出され、マンドレル13によってガイドされ、マンドレル13の先端側に移動しながら、マンドレル13を中心として円筒状に成形される。マンドレル13の表面にはフッ素コーティングが施され、摩擦抵抗が低いため、円筒状の米飯はスムーズに移動することができる。また、マンドレル13に内蔵した熱電対付き棒状ヒーターによってマンドレル13の温度を調整することでも摩擦抵抗を下げることができる。
【0029】
円筒状の米飯の先端が米飯到達検知センサー18の下まで到達すると、米飯到達検知センサー18から駆動モーター8に電気信号が送られ、駆動モーター8は停止する。また、それと略同時に、米飯到達検知センサー18から、
図2に示すキリタンポチャックシリンダー21に電気信号が送られ、一対のキリタンポ切出し爪22、23がマンドレル13を挟むように回転する。その後、
図3に示すキリタンポ切出しシリンダー24が、キリタンポチャックシリンダー21を、中心軸線方向で先端R成形機30側に移動させることで、
図4(a)に示す円筒状の米飯50を、
図4(b)に示すように切り出す。
【0030】
先端R成形機30は、成形前後シリンダー31によって、米飯50の先端に先端R成形爪33を対向させる。米飯50が
図4(b)に示すように切り出されると、先端R成形チャック32により先端R成形爪33の凹部が米飯50の先端に押し当てられる。この時、切り出しを行った一対のキリタンポ切出し爪22、23は、米飯50を切り出した時の位置を維持することで、米飯50が先端R成形爪33に押されて中心軸線方向でスクリュー9側に移動するのを防ぐ。これにより、先端R成形爪33が押し当てられた米飯50の端部は、半球状に成形され、キリタンポが完成する。
【0031】
以上に説明したキリタンポ製造装置100によれば、肉厚なキリタンポを効率的に製造することができる。具体的には、マンドレル13が、製造するキリタンポの長さよりも長く外筒11から延びていることで、マンドレル13に米飯が巻き付いた状態で容易に切り出しと先端成形を行うことができる。また、串を使用する必要がなく、串の搬送、準備、洗浄などが必要ないため、スペース効率が良く、省エネにもつながる。
【0032】
また、上記キリタンポ製造装置100により製造したキリタンポは、最初から穴が開いているため、キリタンポを焼いた際、膨張、割れ、局所コブ等の製造上の問題が出ないことにより、肉厚なキリタンポができる。また、キリタンポを焼く際の火力管理も従来と比較してシビアではない。
【0033】
さらに、一般的なキリタンポは、外周を円滑な状態にする方法として、固定板へ押し付けながら転がす方法で、米飯を延ばしながら円筒形状に成形しているため、内部応力が小さく、締まったキリタンポにはならない。これに対し、上記キリタンポ製造装置100は、米飯の入力側と出口側で大きな圧力差を発生させることができるスクリュー9を用いることにより、排出時の米飯圧力を一般的なキリタンポよりも数倍高くすることができ、キリタンポの内の密度を高めることができる。結果として、煮崩れがし難いキリタンポとなる。
【0034】
加えて、上記キリタンポ製造装置100は、外径ダイス15の変更により、キリタンポ外径を自由に設定することができる。また、内径調整ダイス14の中心軸線方向の位置を調整することにより、キリタンポ内径を自由に設定できる。さらに、米飯到達検知センサー18の位置を調整することにより、キリタンポの長さを自由に設定できる。
【0035】
なお、本願発明は上記実施形態に限らず、種々の変更、改良が可能である。例えば、米飯到達検知センサー18、切出チャック20、先端R成形機30を有さないこととしても良い。この場合、例えば、使用者が、外筒11から絞り出された米飯の長さを目視により確認して、手作業により米飯を切り出し、先端を成形しても良い。また、マンドレル13には電対付き棒状ヒーターが内蔵されていなくても良い。
【符号の説明】
【0036】
100 キリタンポ製造装置
1 ベース
2 スクリュー筐体
2a 筒状部
2b 開口部
2c 基部
3 軸受
4 回転軸
5 第1のVベルトプーリー
6 Vベルト
7 第2のVベルトプーリー
8 駆動モーター
9 スクリュー
10 米飯ホッパー
11 外筒
12 アーム
13 マンドレル
14 内径調整ダイス
15 外径ダイス
16 センサー支持部材
17 センサー前後調節ネジ
18 米飯到達検知センサー
20 切り出しチャック
21 キリタンポチャックシリンダー
22、23 キリタンポ切り出し爪
24 キリタンポ切出しシリンダー
30 先端R成形機
31 成形前後シリンダー
32 先端R成形チャック
33 先端R成形爪
50 米飯