(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20220202BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
B60C11/03 300E
B60C11/03 300B
B60C11/03 300C
B60C11/03 300D
B60C11/12 A
B60C11/12 C
(21)【出願番号】P 2018028820
(22)【出願日】2018-02-21
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】谷口 二朗
【審査官】弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222205(JP,A)
【文献】特開2016-222207(JP,A)
【文献】特開平10-044718(JP,A)
【文献】中国実用新案第204820968(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向へ延びる凸部を有する形状の第1ブロックと、前記第1ブロックとは別形状の第2ブロックとが、タイヤ周方向へ交互に並んでブロック列を形成し、
前記ブロック列が2列形成され、
前記第1ブロックの前記凸部のタイヤ幅方向両側に2つの前記第2ブロックが配置され、
前記第1ブロックが前記第2ブロックよりもタイヤ幅方向に長く、
前記の2列のブロック列のタイヤ幅方向両側において、タイヤ幅方向端部を有する第3ブロックと第4ブロックとがタイヤ周方向へ交互に並び、
前記第3ブロックが前記第4ブロックよりもタイヤ幅方向に短く、
前記第1ブロックと前記第3ブロックとがタイヤ幅方向に並んだ、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1ブロック及び前記第2ブロックにそれぞれブロックを貫通する1つのサイプが形成され、
各ブロックがそれぞれ前記サイプによって2つのブロック片に分割され、
各ブロック片の面積は、そのブロック片が属するブロックの面積の35%以上65%以下である、
請求項
1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1ブロックの面積と前記第2ブロックの面積との差が、いずれか一方の面積の15%以内である、請求項1
又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1ブロック及び前記第2ブロックにそれぞれブロックを貫通する1つのサイプが形成され、
前記サイプが、その屈曲部又はブロックの端部において他の部分よりも浅くなった、請求項1~
3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3に開示されているように、トレッド部に複数の多角形のブロックが並んだ空気入りタイヤが知られている。このような空気入りタイヤでは多角形のブロックがタイヤ周方向及び幅方向にトラクション性を発揮することが知られている。
【0003】
ところで、空気入りタイヤがさらに多方向へトラクション性を発揮でき、またさらに大きなトラクション性を発揮できるようにするためには、ブロックに異なる方向へ延びる多くの端部(辺)を持たせることが有効である。特に、不足しがちなタイヤ幅方向へのトラクション性を向上させるためには、タイヤ周方向へ延びる凸部をブロックに形成することが有効である。
【0004】
また、空気入りタイヤが多方向へ大きなトラクション性を発揮できるようにするためには、トレッド部の幅方向中央領域に、形状の異なる2種類以上のブロックを設けることも有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6097263号公報
【文献】特許第6114731号公報
【文献】特許第6154834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、ブロックに形成されたタイヤ周方向へ延びる凸部は面積が小さく剛性が低いために、空気入りタイヤが路面上で転動してブロックの前記凸部が路面を蹴ると、前記凸部に摩耗が生じやすいという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、トラクション性が良好に発揮され、しかもブロックに局所摩耗が生じにくい空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向へ延びる凸部を有する形状の第1ブロックと、前記第1ブロックとは別形状の第2ブロックとが、タイヤ周方向へ交互に並んでブロック列を形成し、前記ブロック列が2列形成され、前記第1ブロックの前記凸部のタイヤ幅方向両側に2つの前記第2ブロックが配置され、前記第1ブロックが前記第2ブロックよりもタイヤ幅方向に長く、前記の2列のブロック列のタイヤ幅方向両側において、タイヤ幅方向端部を有する第3ブロックと第4ブロックとがタイヤ周方向へ交互に並び、前記第3ブロックが前記第4ブロックよりもタイヤ幅方向に短く、前記第1ブロックと前記第3ブロックとがタイヤ幅方向に並んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように、タイヤ周方向へ延びる凸部を有する形状の第1ブロックと、第1ブロックとは別形状の第2ブロックとが、タイヤ周方向へ交互に並んでいるため、トラクション性が良好に発揮される。しかも、第1ブロックの凸部のタイヤ幅方向両側に2つの第2ブロックが配置されているため、凸部に局所摩耗が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の空気入りタイヤのトレッドパターン。
【
図4】
図1のA-A断面図。
図4においてブロックの上側の面が接地面である。
【
図5】
図1のB-B断面図。
図5においてブロックの上側の面が接地面である。
【
図6】
図1のC-C断面図。
図6においてブロックの上側の面が接地面である。
【
図7】
図1のD-D断面図。
図7においてブロックの上側の面が接地面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態の空気入りタイヤについて図面に基づき説明する。なお以下の説明における空気入りタイヤの特徴は、特に記載が無い場合は、正規リムに装着され正規内圧が充填された空気入りタイヤの無負荷状態での特徴である。ここで、正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」のことである。また、正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」のことである。
【0012】
また本願発明において、サイプとは、幅の狭い溝のことであり、より正確には、正規リムに装着され正規内圧が充填された空気入りタイヤが接地し、そこへ正規荷重が負荷された条件下で、接地面への開口部が閉じる溝のことである。ここで正規荷重とは、JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「LOAD CAPACITY」のことである。また、以下の説明において単に「溝」と言う場合、サイプより幅が広く、前記条件下でも接地面への開口部が閉じない溝のことを意味する。
【0013】
また以下の説明において、接地面とは、正規リムに装着され正規内圧が充填された状態で正規荷重が負荷されたときに空気入りタイヤと路面とが接触する面のことである。
【0014】
また本願発明において、ブロックとは、複数の溝によって区画されて形成された陸部のことである。各ブロックは路面との接地面を有する。
【0015】
実施形態の空気入りタイヤは、例えばライトトラック等の車両に装着されるものである。実施形態の空気入りタイヤの大まかな断面構造は次の通りである。まず、タイヤ幅方向両側にビード部が設けられ、カーカスプライが、タイヤ幅方向内側から外側に折り返されてビード部を包むと共に、空気入りタイヤの骨格を形成している。カーカスプライのタイヤ径方向外側にはベルトが設けられ、ベルトのタイヤ径方向外側に接地面を有するトレッド部が設けられている。またカーカスプライのタイヤ幅方向両側にはサイドウォールが設けられている。これらの部材の他にもタイヤの機能上の必要に応じた複数の部材が設けられている。
【0016】
トレッド部には
図1及び
図2に示すトレッドパターンが形成されている。トレッド部には、屈曲しながらタイヤ周方向に延びる2本のタイヤ周方向溝10が形成されている。そして、2本のタイヤ周方向溝10に挟まれたセンター領域と、タイヤ周方向溝10よりもタイヤ幅方向外側のショルダー領域とが形成されている。
【0017】
センター領域には、形状の異なる第1ブロック20と第2ブロック30とがタイヤ周方向へ交互に並んだブロック列が2列形成されている。また、タイヤ幅方向両側のショルダー領域には、それぞれ、形状の異なる第3ブロック40と第4ブロック45とがタイヤ周方向へ交互に並んだブロック列が1列ずつ形成されている。従ってこのトレッド部には4列のブロック列が形成されている。
【0018】
センター領域の第1ブロック20及び第2ブロック30のタイヤ外径側から見たときの形状は、複数の辺を有する多角形である。第1ブロック20は第2ブロック30よりもタイヤ幅方向に長い形状となっている。
図1~
図3では、第1ブロック20の形状は11個の辺を有する多角形で、第2ブロック30の形状は9個の辺を有する多角形だが、各ブロックの形状は他の形状でも良い。
【0019】
図1及び
図3に示すように、第1ブロック20は、その長手方向中央付近に、タイヤ外径側から見て切り欠かれた形状の第1切欠き部21を有する。そして、第1切欠き部21が存在することによって、第1ブロック20にタイヤ外径側から見て鉤状の部分が形成されている。その鉤状の先の部分が、タイヤ周方向へ延びる第1凸部22となっている。第1凸部22は第2ブロック30へ向かって延びている。
【0020】
図1及び
図3に示すように、第2ブロック30は、第1ブロック20の第1凸部22と対向する部分に、タイヤ外径側から見て切り欠かれた形状の第2切欠き部31を有する。そして、第2切欠き部31が存在することによって、第2ブロック30にタイヤ周方向へ延びる第2凸部32が形成されている。第2凸部32は第1ブロック20の第1切欠き部21へ向かって延びている。
【0021】
第1ブロック20の第1凸部22と第2ブロック30の第2凸部32とは、互いに相手の切欠き部21、31へ入り込む形で配置され、タイヤ幅方向に重なりを有している。従って、第1ブロック20の第1凸部22と第2ブロック30の第2切欠き部31とが溝を挟んで対向し、第1ブロック20の第1切欠き部21と第2ブロック30の第2凸部32とが溝を挟んで対向している。
【0022】
第1凸部22と第2切欠き部31との間から第1切欠き部21と第2凸部32との間にかけて横たわる溝は、タイヤ外径側から見て3箇所の屈曲部を有する第1屈曲溝11である。第1屈曲溝11の3箇所の屈曲部が、第1凸部22、第2切欠き部31、第1切欠き部21、及び第2凸部32の形状を形成している。
【0023】
また、第1ブロック20の第1凸部22は、2つの第2ブロック30(すなわちセンター領域の2列のブロック列のそれぞれの第2ブロック30)の間に入り込んでいる。そのため、第1ブロック20の第1凸部22のタイヤ幅方向両側に、2つの第2ブロック30が配置された形になっている。
【0024】
また、センター領域における右側のブロック列の第1ブロック20と、左側のブロック列の第1ブロック20とは、屈曲部を有する第2屈曲溝12を挟んで対向している。第2屈曲溝12は全体としてタイヤ周方向及びタイヤ径方向に対して傾斜する方向に延びている。第2屈曲溝12に面しているのはそれぞれの第1ブロック20における第1切欠き部21とは反対側の部分である。第1ブロック20同士の間隔は、センター領域における他のブロック同士の間隔よりも広い。すなわち、第2屈曲溝12の幅は、センター領域においてブロック同士を分割している他の溝の幅よりも広い。また、第2屈曲溝12の幅はタイヤ周方向溝10の幅よりも広い。
【0025】
第1ブロック20と第2ブロック30とは、それらの面積(正確には各ブロックの接地面の面積)が略均等になるように設計されている。好ましい形態としては、第1ブロック20の面積と第2ブロック30の面積との差が、いずれか一方の面積の15%以内である。また、さらに好ましい形態としては、第1ブロック20の面積と第2ブロック30の面積との差が、面積が小さい方のブロックの面積の15%以内である。
【0026】
図1、
図3及び
図4に示すように、第1ブロック20の第1凸部22のうち第2ブロック30と対向する端部(辺部)には、2段テーパー部50が形成されている。
図4に示すように、2段テーパー部50は、第1ブロック20の接地面に連結され溝底側(すなわち第1屈曲溝11の底部側)に向かって延びる第1テーパー面51と、第1テーパー面51に連結されさらに溝底側に向かって延びる第2テーパー面52とからなる。すなわち、2段テーパー部50は、タイヤ外径側の第1テーパー面51と、タイヤ内径側の第2テーパー面52とからなる。
【0027】
第1テーパー面51及び第2テーパー面52はそれぞれタイヤ径方向に対して傾斜している。第1テーパー面51のタイヤ径方向に対する傾斜角度θ1は、第2テーパー面52のタイヤ径方向に対する傾斜角度θ2よりも大きい。θ1は例えば10°以上25°以下であり、θ2は例えば3°以上8°以下である。
【0028】
第2テーパー面52より溝底側には、第2テーパー面52と第1屈曲溝11の底部とを連結するR面53が形成されている。なお、第2テーパー面52とR面53との間にタイヤ径方向に延びる壁面が形成されていても良い。
【0029】
また、
図1、
図3及び
図5に示すように、第1ブロック20の第1屈曲溝11側の端部における2段テーパー部50と隣接する場所(すなわち第2ブロック30の第2凸部32と対向する場所)には、第1ブロック20の接地面に連結され溝底側に向かって延びる第3テーパー面54が形成されている。第3テーパー面54のタイヤ径方向に対する傾斜角度θ3は、第1テーパー面51のタイヤ径方向に対する傾斜角度θ1よりも小さい。θ3は例えば3°以上8°以下である。
【0030】
第3テーパー面54より溝底側には、第3テーパー面54と第1屈曲溝11の底部とを連結するR面53が形成されている。なお、第3テーパー面54とR面53との間にタイヤ径方向に延びる壁面が形成されていても良い。
【0031】
また、
図1、
図3及び
図5に示すように、第2ブロック30の第2凸部32のうち第1ブロック20と対向する端部(辺部)にも、前記2段テーパー部50と同様の2段テーパー部60が形成されている。すなわち、2段テーパー部60は、第2ブロック30の接地面に連結され溝底側(すなわち第1屈曲溝11の底部側)に向かって延びる第1テーパー面61と、第1テーパー面61に連結されさらに溝底側に向かって延びる第2テーパー面62とからなる。すなわち、2段テーパー部60は、タイヤ外径側の第1テーパー面61と、タイヤ内径側の第2テーパー面62とからなる。
【0032】
前記2段テーパー部50の場合と同様に、第1テーパー面61及び第2テーパー面62はそれぞれタイヤ径方向に対して傾斜している。第1テーパー面61のタイヤ径方向に対する傾斜角度θ1は、第2テーパー面62のタイヤ径方向に対する傾斜角度θ2よりも大きい。θ1は例えば10°以上25°以下であり、θ2は例えば3°以上8°以下である。
【0033】
第2テーパー面62より溝底側には、第2テーパー面62と第1屈曲溝11の底部とを連結するR面63が形成されている。なお、第2テーパー面62とR面63との間にタイヤ径方向に延びる壁面が形成されていても良い。
【0034】
また、
図1、
図3及び
図4に示すように、第2ブロック30の第1屈曲溝11側の端部における2段テーパー部60と隣接する場所(すなわち第1ブロック20の第1凸部22と対向する場所)にも、前記第3テーパー面54と同様の第3テーパー面64が形成されている。すなわち、第2ブロック30の接地面に連結され溝底側に向かって延びる第3テーパー面64が形成されている。第3テーパー面64のタイヤ径方向に対する傾斜角度θ3は、第1テーパー面61のタイヤ径方向に対する傾斜角度θ1よりも小さい。θ3は例えば3°以上8°以下である。
【0035】
第3テーパー面64より溝底側には、第3テーパー面64と第1屈曲溝11の底部とを連結するR面63が形成されている。なお、第3テーパー面64とR面63との間にタイヤ径方向に延びる壁面が形成されていても良い。
【0036】
また
図6に示すように、第1ブロック20及び第2ブロック30の端部(辺部)のうち2段テーパー部50、60及び第3テーパー面54、64が設けられている端部を除く部分の側壁は、タイヤ径方向へ延びる壁面13となっている。
【0037】
図1及び
図3に示すように、第1ブロック20及び第2ブロック30には、それぞれ1本のサイプ23、33が形成されている。第1ブロック20は、サイプ23によって2つのブロック片20a、20bに分割されている。サイプ23は、各ブロック片20a、20bの面積(正確には各ブロック片の接地面の面積)を略均等に分割するように設けられている。好ましい形態としては、各ブロック片20a、20bの面積は、第1ブロック20の面積の35%以上65%以下である。
【0038】
同様に、第2ブロック30は、サイプ33によって2つのブロック片30a、30bに分割されている。サイプ33は、各ブロック片30a、30bの面積(正確には各ブロック片の接地面の面積)を略均等に分割するように設けられている。好ましい形態としては、各ブロック片30a、30bの面積は、第2ブロック30の面積の35%以上65%以下である。
【0039】
これらのサイプ23、33の一方の端部はタイヤ周方向溝10へ開口し、他方の端部は第1ブロック20と第2ブロック30とを分割する溝(例えば第1屈曲溝11)へ開口している。また、これらのサイプ23、33はタイヤ外径側からみて屈曲した屈曲部を有している。
【0040】
これらのサイプ23、33は、その端部(すなわち溝への開口端)及び屈曲部の少なくともいずれか一方において浅くなっている。例えば
図7に示すサイプ23のように、端部23a、23b及び屈曲部23cの両方においてサイプが浅くなっていても良い。
【0041】
サイプ23、33の深さは、第1ブロック20及び第2ブロック30を囲む溝の深さの70%以上85%以下であることが好ましい。ただし、上記のようにサイプ23、33が浅くなっている所では、サイプ23、33の深さは、第1ブロック20及び第2ブロック30を囲む溝の深さの15%以上25%以下であることが好ましい。なお、第1ブロック20及び第2ブロック30を囲む溝の深さは、例えば12mm以上14mm以下である。
【0042】
図1及び
図2に示すように、ショルダー領域の第3ブロック40及び第4ブロック45のタイヤ外径側から見たときの形状は、複数の辺を有する多角形である。
【0043】
図2に示すように、第4ブロック45のタイヤ幅方向外側の部分には、接地面とタイヤ幅方向外側の側壁46とが交わって角部47が形成されている。これに対して、第3ブロック40のタイヤ幅方向外側の部分には、第4ブロック45の角部47に相当する部分がえぐり取られた形状の凹部41が形成されている。この凹部41が存在するため、第3ブロック40の接地端(接地面のタイヤ幅方向外側の端部)E1は第4ブロック45の接地端(接地面のタイヤ幅方向外側の端部)E2よりもタイヤ幅方向内側に存在している。そして、第3ブロック40が第4ブロック45よりもタイヤ幅方向に短くなっている。
【0044】
そして、タイヤ幅方向に短い第3ブロック40は、タイヤ幅方向に長い第1ブロック20とタイヤ幅方向に並んでいる。
【0045】
また、第3ブロック40及び第4ブロック45には、それぞれ1本のサイプ42、48が形成されている。これらのサイプ42、48は、その一端がタイヤ周方向溝10に開口し、その他端がブロック内で閉塞している。これらのサイプ42、48はタイヤ外径側から見て屈曲部を有する。これらのサイプ42、48は、タイヤ周方向溝10への開口端(すなわちブロックの端部)及び屈曲部の少なくともいずれか一方において浅くなっていても良い。
【0046】
また、第3ブロック40と第4ブロック45とを分割する横溝の溝底にはブロックよりも高さの低い突起44が形成されている。
【0047】
以上の構造の空気入りタイヤは次のような効果を奏する。まず、形状の異なる第1ブロック20と第2ブロック30とがタイヤ周方向へ交互に並んでブロック列を形成し、またそのようなブロック列が2列あるので、空気入りタイヤが多方向へ大きなトラクション性を発揮することができる。特に、第1ブロック20がタイヤ周方向へ延びる第1凸部22を有するので、不足しがちなタイヤ幅方向へのトラクション性が発揮される。
【0048】
さらに、第1ブロック20の第1凸部22のタイヤタイヤ幅方向両側に2つの第2ブロック30が配置されているので、第1凸部22が路面を蹴るときには必ずその両側の第2ブロック30も接地していることになる。そのため、第1凸部22に過大な圧力がかかったり第1凸部22が路面に対して大きく滑ったりしにくく、その結果、第1凸部22が大きく摩耗する局所摩耗が生じにくい。
【0049】
また、第1ブロック20が第2ブロック30よりもタイヤ幅方向に長く、第3ブロック40が第4ブロック45よりもタイヤ幅方向に短く、第1ブロック20と第3ブロック40とがタイヤ幅方向に並んでいるため、面積変動が小さくなっている。
【0050】
ここで面積変動とは、トレッド部が路面を蹴り出す時や路面に踏み込む時の、蹴り出し位置や踏み込み位置における接地面積のタイヤ周方向の変動のことである。ブロックの表面(接地面)のタイヤ幅方向の長さがタイヤ周方向に均一であるほど、面積変動が小さいとみなして良い。そして面積変動が小さいほどノイズが抑制される等の効果がある。
【0051】
上記のように、タイヤ幅方向に長い第1ブロック20同士が隣り合う場所において、2つの第1ブロック20の間にタイヤ幅方向に対して傾斜して配置された第2屈曲溝12の幅が広く、第1ブロック20同士の間隔が広くなっているが、このような構造も面積変動を小さくする。
【0052】
また、第1ブロック20及び第2ブロック30にはそれぞれブロックを貫通する1つのサイプ23、33が形成されているため、ブロック20、30の路面に対する滑りがサイプ23、33で解消されて局所摩耗が抑制され、またブロック20、30内で接地圧が均一化される。
【0053】
ここで、第1ブロック20がサイプ23によって2つのブロック片20a、20bに分割されているが、各ブロック片20a、20bの面積が第1ブロック20の面積の35%以上65%以下の範囲内であり、2つのブロック片20a、20bの面積の差が小さい。そのため、2つのブロック片20a、20bの間に接地圧の不均一が生じにくく、また両方のブロック片20a、20bが略均等に摩耗する。このことは、2つのブロック片30a、30bに分割された第2ブロック30についても言える。
【0054】
また、第1ブロック20の面積と第2ブロック30の面積との差が、いずれか一方の面積の15%以内であるため、第1ブロック20と第2ブロック30との間に接地圧の不均一が生じにくく、また両方のブロック20、30が略均等に摩耗する。第1ブロック20の面積と第2ブロック30の面積との差が、面積が小さい方のブロックの面積の15%以内であれば、これらの効果がより大きくなる。
【0055】
また、サイプがその屈曲部又は端部において他の部分よりも浅くなることにより、屈曲部又は端部におけるブロック20、30の剛性の低下が抑制されている。
【0056】
また、第1ブロック20及び第2ブロック30のタイヤ外径側から見たときの形状が多角形であれば、これらのブロックが多方向へ延びる複数の辺を有することとなるため、空気入りタイヤがトラクション性に優れたものとなる。
【0057】
以上の実施形態は例示であり、発明の範囲はこれに限定されない。以上の実施形態に対して、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々な変更、置換、省略等を行うことができる。例えば、2段テーパー部は、第1凸部22と第2凸部32とのいずれか一方のみに形成されているだけでも効果を奏する。
【符号の説明】
【0058】
E1…第3ブロックの接地端、E2…第4ブロックの接地端、R…路面、10…タイヤ周方向溝、11…第1屈曲溝、12…第2屈曲溝、13…壁面、20…第1ブロック、20a…ブロック片、20b…ブロック片、21…第1切欠き部、22…第1凸部、23…サイプ、23a…端部、23b…端部、23c…屈曲部、30…第2ブロック、30a…ブロック片、30b…ブロック片、31…第2切欠き部、32…第2凸部、33…サイプ、40…第3ブロック、41…凹部、42…サイプ、44…突起、45…第4ブロック、46…側壁、47…角部、48…サイプ、50…2段テーパー部、51…第1テーパー面、52…第2テーパー面、53…R面、54…第3テーパー面、60…2段テーパー部、61…第1テーパー面、62…第2テーパー面、63…R面、64…第3テーパー面、120…ブロック、122…端部、124…テーパー面、126…溝