(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】混練状態判定装置及び混練状態判定方法
(51)【国際特許分類】
B29B 7/28 20060101AFI20220202BHJP
B29B 7/20 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
B29B7/28
B29B7/20
(21)【出願番号】P 2018040345
(22)【出願日】2018-03-07
【審査請求日】2020-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】福田 裕之
【審査官】坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-214661(JP,A)
【文献】特開2014-226910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00- 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練材料を混練する混練部における混練の状態を判定する混練状態判定装置であって、
混錬に要する時間よりも短い時間の範囲を示す第1範囲、及び所定の物性値の範囲を示す第2範囲を含む判定情報を記憶する記憶部と、
前記第1範囲に到達する前の混練材料の温度に応じた補正情報を取得する補正情報取得部と、
前記混練部における前記物性値の時間変化を示す状態情報を取得する状態情報取得部と、
前記状態情報が、前記補正情報に基いて補正された前記第1範囲において前記第2範囲の範囲内であるか否かに基いて混錬の状態が正常か異常かを判定する判定部と、
を有
し、
前記物性値は、電力、前記混練部における混練の実行中の混練材料の材料温度、及びラム位置のうち少なくとも一つである混練状態判定装置。
【請求項2】
前記補正情報は、前記混練部の温度に応じて変化する情報であることを特徴とする請求項1に記載の混練状態判定装置。
【請求項3】
前記補正情報取得部は、混練を開始してから前記混練材料が所定温度に到達するまでの時間に基づいて前記補正情報を取得することを特徴とする請求項1または2に記載の混練状態判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記混練部における混練の実行中に、混練の状態を判定することを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載の混練状態判定装置。
【請求項5】
前記判定部によって前記混練の状態が異常であると判定されたことに応じて作動する報知部を更に有することを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の混練状態判定装置。
【請求項6】
混練材料を混練する混練部における混練の状態を判定する混練状態判定装置であって、
混錬に要する時間よりも短い時間の範囲を示す第1範囲、及び所定の物性値の範囲を示す第2範囲を含む判定情報を記憶する記憶部と、
混錬を開始してからの前記混練材料の温度が前記第1範囲で設定した温度よりも低い所定温度に到達するまでの時間に応じた補正情報を取得する補正情報取得部と、
前記混練部における前記物性値の時間変化示す状態情報を取得する状態情報取得部と、
前記状態情報が、前記補正情報に基いて補正された前記第1範囲において前記第2範囲の範囲内であるか否かに基いて混錬の状態が正常か異常かを判定する判定部と、
を有
し、
前記物性値は、電力、前記混練部における混練の実行中の混練材料の材料温度、及びラム位置のうち少なくとも一つである混練状態判定装置。
【請求項7】
混練材料を混練する混練部における混練の状態を判定する混練状態判定方法であって、
混錬に要する時間よりも短い時間の範囲を示す第1範囲、及び所定の物性値の範囲を示す第2範囲を含む判定情報を取得する工程と、
前記第1範囲に到達する前の混練材料の温度に応じた補正情報を取得する補正情報取得工程と、
前記補正情報によって、前記第1範囲を補正する補正工程と、
前記混練部における混練の状態を示す状態情報であって、前記物性値の時間変化を示す状態情報を取得する状態情報取得工程と、
前記状態情報が、補正された前記第1範囲において前記第2範囲の範囲内であるか否かに基いて混錬の状態が正常か異常かを判定する判定工程と、を有
し、
前記物性値は、電力、前記混練部における混練の実行中の混練材料の材料温度、及びラム位置のうち少なくとも一つである混練状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練状態判定装置及び混練状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック、ゴム等の粘性が高い材料を混練する装置として、密閉式混練機が知られている。例えば特許文献1には、混練材料を収納するチャンバーと、該チャンバーの上部を閉鎖する加圧蓋と、チャンバー内に取付けられた一対のロータとを備えた密閉式混練機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
密閉式混練機における混練の終了条件は、混練の再現性を確保するために、混練時間、混練材料の温度、または積算電力などの所定値への到達とされる場合が多い。発明者は、同じ終了条件を満たす場合であっても、正常に混練が行われる場合と、混練に過不足が生じる場合とがあり、混練の品質にバラツキが存在することを見出した。
【0005】
混練材料の性質(粘度や弾性など)は、混練材料の温度に応じて変動する。例えば、夏と冬とでは混練材料の性質は異なるし、混練材料が保管されている環境の温度によっても混練材料の性質は変化する。混練材料の性質が変化すると、混練の品質が変化する場合がある。また、混練装置の温度(機械温度)によっても、混練材料の温度が変化し、混練材料の性質は変化する。このように、混練を開始する前の混練材料の温度に応じて混練材料の性質が変化するため、同じ終了条件を満たしたときに混練を終了する場合であっても、当該温度によって混練を行った際の品質にもバラツキが生じてくる。
【0006】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、混練の状態を適切に判定できる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る混練状態判定装置は、混練材料を混練する混練部における混練の状態を判定する混練状態判定装置であって、混錬に要する時間よりも短い時間の範囲を示す第1範囲、及び所定の物性値の範囲を示す第2範囲を含む判定情報を記憶する記憶部と、前記第1範囲に到達する前の混練材料の温度に応じた補正情報を取得する補正情報取得部と、前記混練部における前記物性値の時間変化を示す状態情報を取得する状態情報取得部と、前記状態情報が、前記補正情報に基いて補正された前記第1範囲において前記第2範囲の範囲内であるか否かに基いて混錬の状態が正常か異常かを判定する判定部と、を有する。前記物性値は、電力、前記混練部における混練の実行中の混練材料の材料温度、及びラム位置のうち少なくとも一つである。
【0008】
上記構成によれば、判定部が、混練材料の温度の違いによって変化する補正情報と、混練の状態を示す状態情報とに基づいて、混練の状態を判定する。その結果、混練の状態を、ユーザの監視や混練後の検査・測定によらず、また、混練材料の温度の違いによって生じる混練材料の性質変化による影響を抑制して、適切に判定することができる。
【0009】
ここで補正情報は、混練材料の温度に応じて変化する情報である。補正情報は、混練材料の温度を直接測定して取得してもよいし、混練材料の周囲の環境温度を測定して取得してもよいし、温度以外の情報から間接的に取得してもよい。
【0010】
上記構成によれば、判定部が、補正情報に基づいて判定情報を補正し、補正後の判定情報と状態情報とに基づいて混練の状態を判定する。その結果、混練の状態を、混練材料の性質変化による影響を抑制して、適切に判定することができる。
【0011】
混練の良否の判定に関し、混練のプロセスの中で熟練作業者が着目するポイントは限られており、混練の開始から終了までの全てのデータを監視する必要はない。例えば混練の初期の噛み込み時は、投入材料の形状や温度条件あるいはローターの位置関係等の諸条件によって噛み込みに要する時間にバラツキが生じやすい。一方で噛み込み時間に多少のバラツキが生じても、混練の品質への影響は大きくない。つまり、噛み込み時間のみが基準から外れた場合、混練の結果としては良品の場合がある。しかし混練の開始から終了までの全ての期間を判定の対象とした場合、そのようなバッチを不良と判断する可能性があり好ましくない。
【0012】
上記構成によれば、判定情報が示す条件は、混練を開始してからの所定の時間範囲である第1範囲における状態情報が示す値に対する閾値である第2範囲である。従って、必要な箇所(時間範囲)で必要なデータ(状態情報)により判定を行う。その結果、効率的な判定を行うことができる。また、混練の品質に対して影響の少ない事象が判定の対象とならないように、判定情報を設定することも可能となる。その結果、安定的な判定を行うことも可能となる。
【0013】
ここで発明者らは、混練開始前の材料温度に変化が生じた際には、混練材料の温度や混練に要する電力の、混練中における時間的推移が時間方向に変化することを見出した。例えば、混練開始前の材料温度が低い場合は、正常な混練における時間的推移に比べて、混練中の材料温度や電力の推移が遅くなる。これに対し、上記構成によれば、判定部は、補正情報に基づいて、判定情報の所定の時間範囲である第1範囲を変更する。従って、上述した温度や電力の推移が遅れたり早まったりすることに対して、判定情報の時間範囲の補正により対応する。その結果、適切な判定を行うことができる。
【0014】
(2) 詳しくは前記補正情報は、前記混練部の温度に応じて変化する情報である。補正情報は、混練開始前(または開始後)の混練部の温度を直接測定して取得してもよいし、混練部の周囲の環境温度を測定して取得してもよいし、温度以外の情報から間接的に取得してもよい。
【0015】
(3) 前記補正情報取得部は、混練を開始してから前記混練材料が所定温度に到達するまでの時間に基づいて前記補正情報を取得する。
【0016】
例えば、混練材料の温度が低い場合、混練を開始してから混練材料が所定温度に到達するまでの時間は、長くなる傾向がある。混練材料の温度が高い場合は、反対に、短くなる傾向がある。これは、混練材料の性質が温度により変動することによると考えられる。上記構成によれば、補正情報取得部は、混練を開始してから混練材料が所定温度に到達するまでの時間に基づいて前記補正情報を取得する。従って、混練材料の温度の違いにより生じる混練の時間的推移の変動が、判定部による判定に反映される。その結果、混練の状態を、混練材料の温度の違いにより生じる混練の時間的推移の変動を補正して、適切に判定することができる。
【0017】
(4) 前記判定部は、前記混練部における混練の実行中に、混練の状態を判定する。
【0018】
上記構成によれば、判定部は、混練の実行中に混練の状態を判定する。従って、ユーザは、混練の状態の判定結果を、混練の実行中に知ることができる。例えば、判定結果に基づいて混練部の運転条件を変更することも可能となる。その結果、混練状態判定装置の利便性が向上する。
【0019】
(5) 前記判定部によって前記混練の状態が異常であると判定されたことに応じて作動する報知部を更に有する。
【0020】
上記構成によれば、混練の状態が異常であるときに報知部が作動する。従って、ユーザは、報知部により混練の異常を知ることができる。その結果、混練状態判定装置の利便性が向上する。
【0021】
(6) 本発明に係る混練状態判定装置は、混練材料を混練する混練部における混練の状態を判定する混練状態判定装置であって、混錬に要する時間よりも短い時間の範囲を示す第1範囲、及び所定の物性値の範囲を示す第2範囲を含む判定情報を記憶する記憶部と、混錬を開始してからの前記混練材料の温度が前記第1範囲で設定した温度よりも低い所定温度に到達するまでの時間に応じた補正情報を取得する補正情報取得部と、前記混練部における前記物性値の時間変化示す状態情報を取得する状態情報取得部と、前記状態情報が、前記補正情報に基いて補正された前記第1範囲において前記第2範囲の範囲内であるか否かに基いて混錬の状態が正常か異常かを判定する判定部と、を有する。前記物性値は、電力、前記混練部における混練の実行中の混練材料の材料温度、及びラム位置のうち少なくとも一つである。
【0022】
上記構成によれば、判定部が、補正情報と、混練の状態を示す状態情報とに基づいて、混練の状態を判定する。補正情報取得部は、混練を開始してから混練材料が所定温度に到達するまでの時間に基づいて前記補正情報を取得する。その結果、混練の状態を、ユーザの監視や混練後の検査・測定によらず、また混練材料の性質変化による影響を抑制して、適切に判定することができる。
【0023】
(7) 本発明に係る混練状態判定方法は、混練材料を混練する混練部における混練の状態を判定する混練状態判定方法であって、混錬に要する時間よりも短い時間の範囲を示す第1範囲、及び所定の物性値の範囲を示す第2範囲を含む判定情報を取得する工程と、前記第1範囲に到達する前の混練材料の温度に応じた補正情報を取得する補正情報取得工程と、前記補正情報によって、前記第1範囲を補正する補正工程と、前記混練部における混練の状態を示す状態情報であって、前記物性値の時間変化を示す状態情報を取得する状態情報取得工程と、前記状態情報が、補正された前記第1範囲において前記第2範囲の範囲内であるか否かに基いて混錬の状態が正常か異常かを判定する判定工程と、を有する。前記物性値は、電力、前記混練部における混練の実行中の混練材料の材料温度、及びラム位置のうち少なくとも一つである。
【0024】
上記構成によれば、混練材料の温度違いによって変化する補正情報と、混練の状態を示す状態情報とに基づいて、混練の状態を判定する。その結果、混練の状態を、ユーザの監視や混練後の検査・測定によらず、また、混練材料の温度の違いによって生じる混練材料の性質変化による影響を抑制して、適切に判定することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、混練の状態を適切に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】基準混練チャートと判定条件の例を示す図である。
【
図5】第2実施形態の混練処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態に係る混練機100ついて説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0028】
図1に示される混練機100は、混練部10、及び制御装置Cを有する。本実施形態の特徴とするところは、制御装置Cにより、混練部10における混練の状態が判定される点である。制御装置Cは、特許請求の範囲に記載された混練状態判定装置の一例である。
【0029】
混練部10は、プラスチック、ゴム等の混練材料を混練する。混練部10は、チャンバー11、ラム12(加圧蓋)、ロータ13、モータ14、位置センサ15、モータ16、及び温度センサ17を有する。
【0030】
チャンバー11は、内部に混練材料を収納して混練する槽状の部材である。チャンバー11の上部は開放されており、ラム12が上方から挿入される。ラム12により、混練材料がチャンバー11の内部に密閉される。混練機100は、いわゆる密閉式二軸混練機である。
【0031】
ラム12は、上下に移動可能な状態で、チャンバー11に対して配置される。ラム12を上方に移動してチャンバー11の上部を開放した状態にて、混練材料がチャンバー11に投入される。その後、ラム12を下方に移動させ、投入された混練材料を上方から加圧しながら、ロータ13が回転して混練材料の混練が行われる。
【0032】
チャンバー11の内部の空間は、中心軸が平行な一対の円柱を、その側面が一部重なり合う状態で配置した形状をしている。そして一対のロータ13が、その中心軸を円柱の中心軸と一致した状態で、チャンバー11の内部に回転可能に配置される。ロータ13の表面には、螺旋状のロータ翼が形成されている。ロータ13は、モータ16により回転駆動される。なお、ここではチャンバー11の内部空間が上記形状のものを説明したが、他の形状でもよく、例えば中心軸が平行な一対の円柱が重なりあわないような形状であってもよい。
【0033】
本実施形態に係る混練部10は、混練の状態を示す状態情報を制御装置Cへ送信する。詳しくは混練部10は、ロータ13の回転駆動で消費される電力と、混練部10における混練の実行中の混練材料の温度である材料温度と、ラム12の位置であるラム位置とを、制御装置Cへ送信する。
【0034】
具体的には、ロータ13の回転駆動で消費される電力は、ロータ13を回転駆動するモータ16の消費電力であって、モータ16の駆動電源回路にてモニタされ、制御装置Cへ送信される。換言すれば、モータ16の駆動電源回路は、ロータ13の回転駆動で消費される電力を示す情報を、制御装置Cへ出力する。混練材料の温度である材料温度は、チャンバー11に配置された温度センサ17によって測定され、制御装置Cへ送信される。換言すれば、温度センサ17は、混練材料の温度に応じた信号を制御装置Cへ出力する。ラム12の位置であるラム位置は、ラム12の位置を検出する位置センサ15によってモニタされ、制御装置Cへ送信される。換言すれば、位置センサ15は、ラム12の位置に応じた信号を制御装置Cへ出力する。
【0035】
制御装置Cは、
図2に示されるように、制御部20、記憶部28、表示部30、及び入力部40を有する。表示部30は、特許請求の範囲に記載された報知部の一例である。
【0036】
制御部20は、混練機100の動作を制御する。制御部20は、補正情報取得部21、状態情報取得部22、及び判定部23を有する。なお実際には、補正情報取得部21等に対応するプログラムが図示しないROMや不揮発性メモリに記憶されており、それらプログラムをCPUにロードして実行することにより、補正情報取得部21等に対応するプロセスが実行される。
【0037】
補正情報取得部21は、補正情報を取得する。ここで、補正情報は、混練材料の温度に応じて変化する情報であり、混練開始前の混練材料の温度によって変化する情報である。このような補正情報を用いて後述するような補正を行うことにより、混練開始前の混錬物の温度が通常よりも高い/低い場合であっても、混練状態を適切に判定することができる。本実施形態では、補正情報取得部21は、混練部10にて混練を開始してから混練材料が基準温度Ts(所定温度の一例)に到達するまでの時間を測定し、測定された時間の長さに基づいて、補正情報を取得する。
【0038】
状態情報取得部22は、混練部10における混練の状態を示す状態情報を取得する。本実施形態では、状態情報取得部22は、ロータ13の回転駆動で消費される電力を示す情報を、モータ16の駆動電源回路から取得して、記憶部28へ記憶させる。状態情報取得部22は、混練材料の温度に応じた信号を温度センサ17から取得して、混練材料の温度を示す情報を記憶部28へ記憶させる。状態情報取得部22は、ラム12の位置に応じた信号を位置センサ15から取得して、ラム12の位置を示す情報を記憶部28へ記憶させる。
【0039】
判定部23は、補正情報取得部21が取得した補正情報と、状態情報取得部22が取得した状態情報とに基づいて、混練部10における混練の実行中に、混練の状態が正常であるか異常であるかを判定する。
【0040】
記憶部28は、判定情報と、基準混練チャートGと、補正基準情報と、終了条件情報を記憶している。また、記憶部28は、制御部20の動作に必要なデータ或いは情報等を記憶する。なお、本明細書では、「ある情報Aを示すデータBを記憶部28に記憶させる」ことを、「ある情報Aを記憶部28に記憶させる」と記載する場合がある。記憶部28は、例えば、RAM、ROM、EEPROM、HDD、制御装置Cに着脱されるUSBメモリ等の可搬記憶媒体、CPUが備えるバッファ等、或いはそれらの組み合わせによって構成される。
【0041】
判定情報は、判定部23が混練の状態を判定するために用いる条件を示す情報である。判定情報は、入力部40を通じて受け付けたユーザによる操作入力に基づいて、混練部10における混練の前に、予め記憶部28へ記憶される。判定情報は、混練を開始してからの所定の時間範囲における状態情報が示す値の許容範囲を示す情報である。判定情報は、ユーザによって決定され、入力部40を通じて受け付けた操作入力に基づいて、予め記憶部28に記憶されている。
【0042】
基準混練チャートGは、正常な混練が行われた場合の混練部10における混練の開始から終了までの期間の電力、材料温度、及びラム位置の推移を示す情報を含むデータである。
【0043】
補正基準情報は、補正情報取得部21が補正情報を取得する際に基準として用いる情報である。本実施形態では、補正基準情報は、基準温度Tsと、基準時間tsと、を含む。補正基準情報は、ユーザによって決定され、入力部40を通じて受け付けた操作入力に基づいて、予め記憶部28に記憶されている。なお、基準時間tsは、基準混練チャートGにおいて、混練を開始してから材料温度が基準温度Tsに到達するまでの時間であってもよい。
【0044】
終了条件情報は、混練部10での混練を終了する条件を示す情報である。本実施形態では、混練の終了条件は、混練を開始してから所定の混練時間を経過することである。なお、混練の終了条件は、所定時間の経過の他、温度の所定値への到達、積算電力の所定値への到達、またはこれらの組合せとしてもよい。
【0045】
表示部30は、制御部20に制御されて、後述する基準混練チャートGの表示の他、混練部10の運転条件や、現在の運転状況(電力、材料温度、ラム位置等の混練状態値)、混練の正常・異常等の表示を行うデバイスである。表示部30は具体的には、液晶ディスプレイ等の表示装置により構成される。例えば、判定部23は、混練部10における混練の状態が異常であると判定したことに応じて、表示部30に混練の異常を示す画面を表示させる。表示部30は、特許請求の範囲に記載された報知部の一例である。なお、混練の異常の報知は、警告音や警告灯などによって行われてもよい。異常の報知は、報知部を作動させることの一例である。
【0046】
入力部40は、混練部10の運転条件・設定値や、上述の判定情報等のユーザからの入力を受け付けるデバイスである。入力部40は具体的には、キーボードやテンキー等の入力手段である。表示部30と入力部40とを兼ねるデバイスとしてタッチパネル式液晶ディスプレイを用いてもよい。
【0047】
混練部10で行われる、一般的な混練材料の混練プロセスについて、
図2を参照しながら説明する。
図2は、ある混練材料についての基準混練チャートGを示している。
【0048】
まずチャンバー11にゴムポリマー、カーボン等のフィラー、およびオイル等の配合材を投入し、ラム12を下降させて加圧し、ロータ13を回転させる。そしてロータ13のロータ翼の間に混練材料を噛み込ませて混練を行う(混練開始)。
【0049】
混練開始の直後は、ロータ13に混練材料が噛み込まれて、ゴムポリマーが解砕されていく(噛み込み段階)。これに伴い、ラム12が下降してラム位置の値が小さくなり、電力が上昇する。これに続く、ゴム表面にフィラーが付着するプロセスでは、電力が極小値をとる。その後のゴムとフィラーとが一体化するプロセスでは、電力が再び上昇し、それに伴って材料温度も上昇する(一体化段階)。その後、電力は最大に達し(電力ピーク)、その後に低下する。これに伴い、温度上昇は緩やかになる。この段階では、フィラーが均一に分散する(分散段階)。
【0050】
混練の終了条件を満たした後、混練は終了する。
【0051】
混練の良否の判定に関し、混練のプロセスの中で熟練作業者が着目するポイントは限られており、混練の開始から終了までの全てのデータを監視する必要はない。本実施形態に係る混練機100では、判定部23が混練状態の判定に用いる条件(以下「判定条件」と記載する。)は、混練を開始してからの所定の時間範囲における状態情報が示す値の許容範囲である。所定の時間範囲は、混練部10における混練の開始から終了までの期間のうちの一部の期間である。許容範囲は、状態情報が示す値に対する閾値の一例である。
【0052】
本実施形態に係る判定条件について、
図2を参照して説明する。
図2に示すC1~C5の5つの長方形はそれぞれ、第1判定条件C1、第2判定条件C2、第3判定条件C3、第4判定条件C4、および第5判定条件C5を示している。以下の説明における「時刻」とは、混練を開始した時点の時刻を0として計時した時刻をいう。
【0053】
第1判定条件C1は、<ラム位置の値が、時刻t1A~時刻t1B(時間範囲)において、値x1A以上値x1B以下(許容範囲)の値を含むこと>である。
図2に示す長方形C1の横軸方向の位置・幅が、第1判定条件C1の時間範囲を示し、縦軸方向の位置・幅が、第1判定条件C1のラム位置の値の許容範囲を示している。
【0054】
第2判定条件C2は、<ラム位置の値が、時刻t2A~時刻t2B(時間範囲)において、値x2A以上値x2B以下(許容範囲)の値を含むこと>である。
図2に示す長方形C2の横軸方向の位置・幅が、第2判定条件C2の時間範囲を示し、縦軸方向の位置・幅が、第2判定条件C2のラム位置の値の許容範囲を示している。
【0055】
第3判定条件C3は、<電力の値が、時刻t3A~時刻t3B(時間範囲)において、値x3A以上値x3B以下(許容範囲)の値を含むこと>である。
図2に示す長方形C3の横軸方向の位置・幅が、第3判定条件C3の時間範囲を示し、縦軸方向の位置・幅が、第3判定条件C3の電力の値の許容範囲を示している。
【0056】
第4判定条件C4は、<時刻t4A~時刻t4B(時間範囲)において、電力の値の最大値が値x4A以上値x4B以下(許容範囲)であること>である。
図2に示す長方形C4の横軸方向の位置・幅が、第4判定条件C4の時間範囲を示し、縦軸方向の位置・幅が、第4判定条件C4の電力の値の許容範囲を示している。
【0057】
第5判定条件C5は、<材料温度の値が、時刻t5A~時刻t5B(時間範囲)において、値x5A以上値x5B以下(許容範囲)の値を含むこと>である。
図2に示す長方形C5の横軸方向の位置・幅が、第5判定条件C5の時間範囲を示し、縦軸方向の位置・幅が、第5判定条件C5の材料温度の値の許容範囲を示している。
【0058】
本実施形態に係る混練機100では、第1判定条件C1~第5判定条件C5の時間範囲を、上述のように混練の開始から終了までの期間のうちの一部の期間としたことによって、必要な箇所(時間範囲)で必要なデータ(許容範囲)により判定を行い、効率的な判定を行うことができる。また、混練の品質に対して影響の少ない事象が判定の対象とならないように判定条件を設定することも可能となり、安定的な判定を行うことも可能となる。以下、
図2を参照しながら説明する。
【0059】
加圧開始直後の噛み込み段階では、混練材料を正常に噛み込んでいるかが重要であり、正常に噛み込みされていればラム12は低下する。よって第1判定条件C1により、ラム位置の値が正常範囲内であるかを監視して判定を行う。
【0060】
第1判定条件C1に不合格の場合は、混練材料の噛み込みが正常に行われていない可能性が高い。このとき制御部20が、ラム12による混練材料への加圧力を上昇させたり、あるいはロータ13の回転速度を低下させる等の修正制御を行うよう、制御部20を構成してもよい。
【0061】
続く一体化段階にて、電力上昇の立ち上がりが遅い場合にはロータ13と混練材料との間で滑りが生じて混練が進んでいない可能性がある。よって第3判定条件C3により、電力の値が正常範囲にあるかを監視して判定を行う。
【0062】
第3判定条件C3に不合格の場合は、混練が進んでいない可能性がある。このとき制御部20が、ラム12による混練材料への加圧力を上昇させたり、あるいはロータ13の回転速度を一時的に低下させる等の修正制御を行うよう、制御部20を構成してもよい。
【0063】
続く電力ピークでは、分散において重要とされるロータ13のせん断力の大きさが正常であることを確認するため、第4判定条件C4により、せん断力の大きさを示していると考えられる電力の値が正常範囲にあるかを監視して判定を行う。このとき併せて、第2判定条件C2によりラム位置の値が正常範囲にあるかを監視して判定を行う。
【0064】
そして分散段階では、混練の終了に際して混練材料の温度には適正な温度範囲がある。よって第5判定条件C5により、材料温度の値が正常範囲内であるかを監視して判定を行う。
【0065】
第5判定条件C5に不合格の場合は、混練が不十分である可能性がある。このとき制御部20が、混練の時間を延長して、材料温度が正常範囲となるまでロータ13による混練を更に行う等の修正制御を行うよう、制御部20を構成してもよい。
【0066】
図2を参照して、判定部23による混練の状態の判定について具体例で説明する。判定部23は、状態情報取得部22が混練の開始から刻々取得する状態情報と、記憶部28に記憶された判定条件とを対比して、判定を行う。混練を開始してから時刻t1Aとなるまでは、いずれの判定条件の時間範囲にも該当しないため、判定は行われない。時刻t1Aからt1Bの間、判定部23は、ラム位置が値x1A以上値x1B以下(許容範囲)の値を含むか否かを判断する。図示例では、時刻t1Aのラム位置の値は値x1A以上値x1B以下であるから、第1判定条件C1に合致する。判定部23は、混練の状態が正常であると判断する。以降同様に、判定部23は、時刻が判定条件の時間範囲に含まれるときに、状態情報が示す電力、混練材料の温度、又はラム位置と、判定条件が示す許容範囲とを照合して、判定条件に合致するか否かを判断する。判定部23は、判定条件に合致することに応じて、混練の状態が正常であると判断し、判定条件に合致しないことに応じて、混練の状態が異常であると判断する。
【0067】
図3を参照して、補正情報取得部21による補正情報の取得と、判定部23による判定情報の補正について説明する。
図3に示される混練では、
図2の混練に比べて、材料温度が早く上昇し、混練が早く進行している。補正情報取得部21は、状態情報取得部22が混練の開始から刻々取得する混練材料の温度を監視して、混練を開始してから混練材料の温度が基準温度Tsに到達するまでの時間taを取得する。補正情報取得部21は、時間taと基準時間tsとの差Δt(=ta-ts)を補正時間として決定し、記憶部28へ記憶させる。図示例では、材料温度が基準混練チャートG(
図3中の点線)よりも早く上昇し、taがtsよりも小さい。従って、Δtは負の値である。補正時間は、補正情報の一例である。
【0068】
判定部23は、補正情報取得部21が補正時間Δtを決定したことに応じて、記憶部28に記憶されている判定情報を補正する。具体的には、判定部23は、第1~第5の各判定条件の時間範囲を規定する時刻t1A、t1B等に、補正時間Δtを加算する。すなわち、補正後の第1判定条件C1は、<ラム位置の値が、時刻t1A+Δt~時刻t1B+Δt(時間範囲)において、値x1A以上値x1B以下(許容範囲)の値を含むこと>である。ここで図示例ではΔtは負の値であるから、補正により、時間範囲は早い時刻へ移動する。
図3では、補正前の判定条件C1~C5が破線で示され、補正後の判定条件C1~C5が実線で示されている。判定部23は、判定条件の補正を行った後は、補正後の判定条件に基づいて混練の状態の判定を行う。
【0069】
なお、
図3では、混練材料の温度が基準混練チャートGよりも早く上昇した例を説明した。材料温度が基準混練チャートGよりも遅く上昇した場合には、混練材料の温度が基準温度Tsに到達するまでの時間taが、基準時間tsより長くなる。補正時間Δtは、正の値となる。補正により、判定条件の時間範囲は遅い時刻へ移動する。
【0070】
以下、
図4のフローチャートを参照しながら、混練機100で行われる混練処理について説明する。混練処理は、特許請求の範囲に記載された混練状態判定方法の一例である。
【0071】
本明細書のフローチャートは、基本的に、プログラムに記述された命令に従った制御部20のCPUの処理を示す。すなわち、以下の説明における「判断」、「抽出」、「選択」、「算出」、「決定」、「特定」、「制御」等の処理は、CPUの処理を表している。CPUによる処理は、制御部20のOSを介したハードウェア制御も含む。なお、「取得」は要求を必須とはしない概念で用いる。すなわち、CPUが要求することなくデータを受信するという処理も、「CPUがデータを取得する」という概念に含まれる。また、本明細書中の「データ」とは、コンピュータに読取可能なビット列で表される。そして、実質的な意味内容が同じでフォーマットが異なるデータは、同一のデータとして扱われるものとする。本明細書中の「情報」についても同様である。また、「命令」「応答」「要求」等の処理は、「命令」「応答」「要求」等を示す情報を通信することにより行われる。また、「命令」「応答」「要求」等の文言を、「命令」「応答」「要求」等を示す情報そのものという意味で記載してもよい。
【0072】
また、プログラムに記述された命令に従ったCPUの処理を、省略した文言で記載することがある。例えば、「制御部20が行う」「判定部23が行う」のように記載することがある。
【0073】
また、CPUによる、情報Aは事柄Bであることを示しているか否かを判断する処理を、「情報Aから、事柄Bであるか否かを判断する」のように概念的に記載することがある。CPUによる、情報Aが事柄Bであることを示しているか、事柄Cであるかを示しているかを判断する処理を、「情報Aから、事柄Bであるか事柄Cであるかを判断する」のように概念的に記載することがある。
【0074】
混練部10のチャンバー11に混練材料が投入され、混練を開始する旨の操作入力を入力部40を介して受け付けると、制御部20は、混練を開始する(S11)。制御部20は、モータ14を動作させてラム12を下方に移動させ、混練材料の加圧を開始する。制御部20は、モータ16を動作させてロータ13を回転させる。制御部20は、混練を開始した時刻を記憶部28に記憶させる。
【0075】
次に、制御部20は、混練部10から状態情報を取得し、現在の時刻と共に記憶部28へ記憶させる(S12)。詳しくは、制御部20は、ロータ13の回転駆動で消費される電力の値をモータ16の駆動電源回路から取得して、当該電力の値を示す情報を含むデータを記憶部28へ記憶させる。制御部20は、混練材料の温度を示す信号を温度センサ17から取得して、当該温度の値を示す情報を含むデータを記憶部28へ記憶させる。制御部20は、ラム12の位置を示す信号を位置センサ15から取得して、当該位置の値を示す情報を含むデータを記憶部28へ記憶させる。S12の処理は、特許請求の範囲に記載された状態情報取得工程の一例である。
【0076】
次に、制御部20は、ステップS12で取得した状態情報に基づいて、材料温度が基準温度Tsに到達したか否かを判断する(S13)。
【0077】
制御部20は、ステップS13にて材料温度が基準温度Tsに到達したと判断したことに応じて(S13:Yes)、補正情報を取得する(S14)。詳しくは、制御部20は、記憶部28に記憶されている混練処理を開始した時刻と、現在時刻から、時間taを算出する。時間taは混練を開始してから混練材料の温度が基準温度Tsに到達するまでの時間である。制御部20は、時間taと基準時間tsとの差Δt(=ta-ts)を補正時間として決定し、記憶部28へ記憶させる。S13及びS14の処理は、特許請求の範囲に記載された補正情報取得工程の一例である。
【0078】
次に、制御部20は、ステップS13にて決定した補正時間Δtに基づいて、判定条件を補正する(S15)。詳しくは、制御部20は、記憶部28に記憶されている各判定条件C1~C5の時間範囲を規定する時刻t1A、t1B等に補正時間Δtが加算されるように、記憶部28に記憶されている判定情報を更新する。
【0079】
制御部20は、ステップS13にて材料温度が基準温度Tsに到達していないと判断したことに応じて(S12:No)、又は、ステップS15を実行した後に、記憶部28に記憶されている判定情報を取得する(S16)。制御部20は、S15の判定情報の補正が行われる前では、補正前の判定情報を取得する。制御部20は、S15の判定情報の補正が行われた後では、補正後の判定情報を取得する。
【0080】
制御部20は、続くステップS17及びS18にて、ステップS12で取得した状態情報と、ステップS16で取得した判定情報とに基づいて、混練部10における混練の状態を判定する。まず、制御部20は、制御部20は、状態情報を取得した時刻が判定条件の時間範囲に含まれるか否かを判断する(S17)。
【0081】
制御部20は、時間範囲に含まれると判断したことに応じて(S17:Yes)、状態情報が判定条件に合致するか否かを判断する(S18)。判定条件に合致するか否かの判断は、判定条件の態様に応じて行われる。S15~S18の処理は、特許請求の範囲に記載された判定工程の一例である。
【0082】
例えば、第1判定条件C1は、<ラム位置の値が、時刻t1A~時刻t1B(時間範囲)において、値x1A以上値x1B以下(許容範囲)の値を含むこと>である。制御部20は、時刻t1A~時刻t1Bの間、ラム位置の値を監視する。制御部20は、時刻t1A~時刻t1Bの間のラム位置の値が、値x1A以上値x1B以下の値を含むか否かを判断する。制御部20は、値を含むと判断したことに応じて、判定条件に合致すると判断する(S18:Yes)。制御部20は、値を含まないと判断したことに応じて、判定条件に合致しないと判断する(S18:No)。第1判定条件C1の判定においては、制御部20は、ラム値が許容範囲内となったことに応じて、判定条件に合致すると判断する。制御部20は、時刻t1Bとなるまでの間に、ラム値が許容範囲内とならなかったことに応じて、判定条件に合致しないと判断する。制御部20は、S18の判断を行う間に、S11~S20の処理を平行して行ってもよいし、他の判定条件についてS18の処理を行ってもよい。
【0083】
制御部20は、S18の処理にて判定条件に合致しないと判断したことに応じて(S18:No)、混練の異常を報知する(S19)。例えば、制御部20は、表示部30に混練の異常を示す画面を表示させる。
【0084】
制御部20は、S17にて時間範囲に含まれないと判断したことに応じて(S17:No)、又は、S18にて判定条件に合致すると判断したことに応じて(S18:Yes)、又は、S19の処理を実行したことに応じて、記憶部28へ記憶された終了条件情報に基づいて、混練の終了条件を満たすか否かを判断する(S20)。例えば、制御部20は、混練を開始してからの経過時間が、終了条件情報が示す混練時間を越えたとき、終了条件を満たすと判断し、混練時間を越えないとき、終了条件を満たさないと判断する。制御部20は、終了条件を満たさないと判断したことに応じて(S20:No)、S11~S20の処理を繰り返す。制御部20は、終了条件を満たすと判断したことに応じて(S20:Yes)、混練処理を終了する。
【0085】
[第1実施形態の変形例]
上記の実施形態では、補正情報取得部21が、混練を開始してから混練材料の温度が基準温度Tsに到達するまでの時間taを測定し、時間taと基準時間tsとの差Δt(=ta-ts)を補正時間として決定する例が説明された。補正時間は、他の態様により決定されてもよい。例えば、補正情報取得部21が、記憶部28へ記憶された関数やテーブルを参照して、時間taと基準時間tsとに基づいて補正時間を決定してもよい。
【0086】
[第2実施形態]
上記の実施形態では、補正情報取得部21が、混練を開始してから混練材料の温度が基準温度Tsに到達するまでの時間taに基づいて補正情報を取得する例が説明された。本実施形態では、補正情報取得部21が、混練を開始したときの混練材料の温度Taに基づいて補正情報を取得する例が説明される。
【0087】
以下の説明では、実施形態と同様の構成については同一の符号が付され、説明が省略される。また、以下で説明する処理以外の処理は、第1実施形態で説明した処理と同じである。
図5に示される処理において、第1実施形態と同じ処理については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0088】
本実施形態では、補正基準情報は、補正時間テーブルを含む。補正時間テーブルは、混練を開始したときの混練材料の温度Taと、補正時間との対応を示すテーブルである。例えば、補正時間テーブルは、複数の温度範囲と、温度Taが当該温度範囲内であるときの補正時間とを含む。例えば、補正時間は、温度Taが高くなるほど、小さくなるように決定される。補正時間は、第1実施形態と同様に、負の値であってもよい。
【0089】
本実施形態では、補正情報取得部21は、混練を開始したときの混練材料の温度Taと、記憶部28へ記憶された補正基準情報が含む補正時間テーブルと、に基づいて補正情報を取得する。
【0090】
以下、
図5のフローチャートを参照しながら、本実施形態の混練機100で行われる混練処理について説明する。制御部20は、
図4に示した第1実施形態の混練処理と同様に、ステップS11の処理を実行する。
【0091】
制御部20は、ステップS11の処理の次に、補正情報を取得する(S31)。詳しくは、制御部20は、混練材料の温度を示す信号を温度センサ17から取得して、当該温度を、混練を開始したときの混練材料の温度Taとして、記憶部28へ記憶させる。制御部20は、記憶部28に記憶された補正基準情報が示す補正時間テーブルを参照して、温度Taに対応する補正時間を補正時間Δtとして決定し、記憶部28へ記憶させる。S31の処理は、特許請求の範囲に記載された補正情報取得工程の一例である。
【0092】
次に、制御部20は、ステップS31で決定した補正時間Δtに基づいて、ステップS15にて判定情報を補正し、ステップS16にて補正された判定情報を取得する。
【0093】
次に、制御部20は、
図4に示した第1実施形態の混練処理と同様に、ステップS12の処理と、続けてステップS17~S20の処理と、を実行する。制御部20は、終了条件を満たさないと判断したことに応じて(S20:No)、S12、及びS17~S20の処理を繰り返す。制御部20は、終了条件を満たすと判断したことに応じて(S20:Yes)、混練処理を終了する。
【0094】
[第2実施形態の変形例]
(1) 上記の実施形態では、補正情報取得部21が、混練を開始したときの混練材料の温度Taと、補正時間テーブルと、に基づいて、補正時間を決定する例を説明した。補正時間は、他の態様により決定されてもよい。例えば、補正情報取得部21が、混練を開始したときの混練材料の温度Taと、記憶部28へ記憶された補正基準情報に含まれる関数と、に基づいて、補正時間を決定してもよい。例えば、関数は、次に示す形態であってもよい。
補正時間Δt=a×(b-温度Ta) (a、及びbは定数)
【0095】
(2) 上記の第2実施形態では、補正情報取得部21が、混練を開始したときの混練材料の温度Taに基づいて補正情報を取得する例が説明された。補正情報取得部21が、混練を開始する前の混練材料の温度Taに基づいて補正情報を取得してもよい。具体的には、
図5に示される混練処理において、S11の処理の前に、S31の処理が行われてもよい。
【0096】
(3) また、補正情報取得部21が、混練部10の温度に基づいて補正情報を取得してもよい。混練部10の温度は、混練部10に設けられた温度センサにより取得する。混練部10の温度の取得は、第2実施形態と同様に、混練を開始してから行われてもよいし(
図5のS31)、混練を開始する前に行われてもよいし、混練材料が混練部10へ投入される前に行われてもよい。混練部10での混練が開始される際、混練部10のチャンバー11に投入された混練材料の温度は、混練部10のチャンバー11の内壁と接触することにより、混練部10の温度に近づくことになる。つまり、混練材料の温度(混練開始前の混練材料の温度)は、機械温度(混練部10の温度)や環境温度に依存して変化する。そのため、補正情報は、これら機械温度や環境温度に応じても変化することになる。すなわち、補正情報取得部21が取得する補正情報は、混練材料の温度に応じて変化するものであり、換言すれば、混練部の温度に応じて変化するものである。本変形例によれば、適切な補正情報を取得することができる。
【0097】
[他の変形例]
上記の実施形態では、混練機100が、混練部10と、制御装置Cと、を有する例が説明された。制御装置Cと同様の構成を有し、既設の装置(混練部10)に対して後付けで設置する判定装置(混練状態判定装置の一例)を実現することも可能である。判定装置は、制御部20、記憶部28、表示部30、及び入力部40を有する。
【0098】
上記の実施形態では、判定条件の許容範囲は、上限値と下限値とを有するものとして構成されていた。例えば、第1判定条件C1では、許容範囲は所定の範囲(値x1A~値x1B)とされていた。許容範囲は、上限値のみ、または下限値のみを有してもよい。例えば、許容範囲は、値x1A以上としてもよいし、値x1B以下としてもよい。
【0099】
上述の実施形態では、判定条件が、所定の時間範囲において状態情報の値の最大値および最小値が所定の範囲内であることとして設定される場合があった。判定条件は、最大値(または最小値)が所定の許容範囲内であること、として設定されてもよい。このとき許容範囲は、上限値と下限値とを有するよう設定してもよいし、上限値のみ、または下限値のみを有するよう設定してもよい。
【0100】
判定条件は、状態情報が示す値が最大値(または最小値)を示した時刻が、所定の時間範囲内であること、と設定されてもよい。
【符号の説明】
【0101】
10 :混練部
11 :チャンバー
12 :ラム
13 :ロータ
14 :モータ
15 :位置センサ
16 :モータ
17 :温度センサ
20 :制御部
21 :補正情報取得部
22 :状態情報取得部
23 :判定部
28 :記憶部
30 :表示部
40 :入力部
100:混練機