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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/16 20060101AFI20220202BHJP
   F16D 3/06 20060101ALI20220202BHJP
   F16D 3/50 20060101ALI20220202BHJP
   F16D 3/74 20060101ALI20220202BHJP
   F16D 3/76 20060101ALI20220202BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
B62D1/16
F16D3/06 Z
F16D3/50 C
F16D3/74 E
F16D3/76 Z
F16F7/00 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018043964
(22)【出願日】2018-03-12
(65)【公開番号】P2019156094
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】関口 暢
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-261424(JP,A)
【文献】特開2007-186014(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0159700(US,A1)
【文献】特開2008-273359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
B62D 7/00-7/22
F16D 3/06
F16D 3/50
F16D 3/74
F16D 3/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成されたメインパイプと、このメインパイプに回転可能に支持され端部にステアリングホイールが固定されるインナシャフトと、このインナシャフトの一部を覆い前記インナシャフトと共に回転可能なアウタシャフトと、を有し、
前記インナシャフト、及び、前記アウタシャフトは、移動機構を介して軸線に沿って相対的に移動可能に設けられ、
前記インナシャフトは、前記軸線に沿って配置された硬さの異なる第1当接部、及び、第2当接部を有し、
前記アウタシャフトは、前記移動機構の操作によって前記第1当接部又は前記第2当接部のいずれか一方にのみ当接すると共に、当接している当接部との間でのみトルクを伝達可能なトルク伝達部を有し、
前記移動機構は、前記メインパイプ上に設けられていると共に、前記軸線に沿って移動する移動機構本体部を備えていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
前記移動機構は、前記トルク伝達部が前記第1当接部又は第2当接部に当接した際に、前記インナシャフト及び前記アウタシャフトの前記軸線方向への相対移動を防止するためのロック機構を有していることを特徴とする請求項1記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記メインパイプには、前記軸線に沿って長円形状に空けられた長穴部が形成され、
前記移動機構は、前記移動機構本体部に設けられ前記アウタシャフトに連結された連結部材をさらに有し、
前記連結部材は、前記長穴部を貫通していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールの操舵トルクを車輪に伝達するステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の乗員は、ステアリングホイールを操舵することにより、車両を操作する。ステアリングホイールの操舵力は、ステアリング装置を介して車輪に伝達される。車輪が左右に転舵されることにより、車両は、進行する方向が決められる。このようなステアリング装置として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示されるような、ステアリング装置は、車体に固定されたステアリングコラムと、このステアリングコラムに支持されていると共に上端にステアリングホイールが固定されたメインシャフトと、このメインシャフトの下端に軸継手を介して接続されたインタミディエイトシャフトと、このインタミディエイトシャフトの下端に軸継手を介して接続されたギヤボックスと、を備えている。
【0004】
ステアリングホイールを操舵することにより、ギヤボックスを介してタイロッドが左右に変位し、これにより車輪が転舵される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-322688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両の運転中には、路面の凹凸を原因とする振動等が車輪からステアリングホイールに伝達されることがある。ステアリングホイールを操舵する際に乗員に伝わる感覚は、乗員によって好みが異なる。例えば、路面の凹凸等の感覚がより伝わるものを好む乗員もいるし、逆に、路面の凹凸等の感覚が伝わりにくいものを好む乗員もいる。ステアリングホイールを操舵した際に乗員に伝わる感覚を選択することができれば、より多くの乗員が快適に運転を行うことができ、好ましい。加えて、操舵フィーリングを選択する際の操作を容易に行うことができれば、さらに好ましい。
【0007】
本発明は、操舵フィーリングを選択することができると共に、操舵フィーリングを選択する際の操作を容易に行うことができるステアリング装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1による発明によれば、筒状に形成されたメインパイプと、このメインパイプに回転可能に支持され端部にステアリングホイールが固定されるインナシャフトと、このインナシャフトの一部を覆い前記インナシャフトと共に回転可能なアウタシャフトと、を有し、
前記インナシャフト、及び、前記アウタシャフトは、移動機構を介して軸線に沿って相対的に移動可能に設けられ、
前記インナシャフトは、前記軸線に沿って配置された硬さの異なる第1当接部、及び、第2当接部を有し、
前記アウタシャフトは、前記移動機構の操作によって前記第1当接部又は前記第2当接部のいずれか一方にのみ当接すると共に、当接している当接部との間でのみトルクを伝達可能なトルク伝達部を有し、
前記移動機構は、前記メインパイプ上に設けられていると共に、前記軸線に沿って移動する移動機構本体部を備えていることを特徴とするステアリング装置が提供される。
【0009】
請求項2に記載のごとく、好ましくは、前記第1当接部、及び、前記第2当接部は、前記軸線に垂直な断面を基準として略X字状に形成されていると共に、
前記トルク伝達部は、前記第1当接部、及び、前記第2当接部が嵌合可能に略X字穴状に形成されている。
【0010】
請求項3に記載のごとく、好ましくは、前記メインパイプには、前記軸線に沿って長円形状に空けられた長穴部が形成され、
前記移動機構は、前記移動機構本体部に設けられ前記アウタシャフトに連結された連結部材をさらに有し、
前記連結部材は、前記長穴部を貫通している。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、移動機構の操作によって第1当接部又は第2当接部のいずれか一方の当接部にのみ当接すると共に、当接している当接部との間でのみトルクを伝達可能なトルク伝達部を有している。移動機構を操作することにより、トルク伝達部を第1当接部又は第2当接部のいずれかに当接させる。このとき、当接している方の当接部のみがトルク伝達部との間でトルクを伝達可能である。即ち、当接していない方の当接部は、トルク伝達部との間でトルクを伝達することができない。そして、第1当接部及び第2当接部は、それぞれ硬さが異なる。第1当接部を介してトルクを伝達させた場合と、第2当接部を介してトルクを伝達させた場合とにおいて、ステアリングホイールを操作した際に乗員に伝わる感覚が異なる。これらの感覚の選択は、移動機構を操作することによって行うことができる。操舵フィーリングを選択することができるステアリング装置を提供することができる。
【0012】
加えて、移動機構は、ステアリングホイールを支持するメインパイプによって支持されている。ステアリングホイールは、操作者の近傍に配置される。このため、移動機構をステアリングホイールの近傍に配置することにより、操作者は、容易に移動機構の操作も行うことができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、第1当接部、及び、第2当接部は、軸線に垂直な断面を基準として略X字状に形成されていると共に、トルク伝達部は、第1当接部、及び、第2当接部が嵌合可能に略X字穴状に形成されている。又は、トルク伝達部は、軸線に垂直な断面を基準として略X字状に形成されていると共に、第1当接部、及び、第2当接部は、トルク伝達部が嵌合可能に略X字穴状に形成されている。これにより、軸線方向への移動を許容しつつ、トルクを確実に伝達することができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、移動機構は、移動機構本体部に設けられアウタシャフトに連結された連結部材をさらに有している。連結部材は、長穴部を貫通している。連結部材が長穴部の縁に接触することにより、移動機構の移動を規制することができる。これにより、アウタシャフトは、長穴部によって移動可能な範囲を規制されている。簡便な構成によってアウタシャフトが過剰に移動することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例によるステアリング装置の斜視図である。
図2図1に示されたステアリング装置の分解斜視図である。
図3図1の3-3線断面図である。
図4図1に示されたステアリング装置の要部斜視図である。
図5図4の5-5線断面図である。
図6図4の6-6線断面図である。
図7図1の7-7線断面図である。
図8図7に示されたロック機構の作用について説明する図である。
図9図1に示されたステアリング装置の作用について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
<実施例>
【0017】
図1を参照する。ステアリング装置10は、車両の前部に搭載される。なお、説明中、左右とは車両の乗員を基準として左右、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Leは乗員から見て左、Riは乗員から見て右、Upは上、Dnは下を示している。
【0018】
図2及び図3を参照する。ステアリング装置10は、筒状に形成されたメインパイプ11と、このメインパイプ11の前後両端にそれぞれ設けられた樹脂リング製の軸受12、13と、これらの軸受12、13を介してメインパイプ11に回転可能に支持されたインナシャフト14と、このインナシャフト14を覆っている筒状のアウタシャフト30と、このアウタシャフト30の外周に設けられアウタシャフト30を軸線CLに沿って前後に移動させるため移動機構50と、を有している。
【0019】
金属製のメインパイプ11は、アウタシャフト30を覆う部位に長円形状に空けられた長穴部11aと、長穴部11aの前方に2つ空けられ移動機構50を移動不能にロックするためのロック穴部11b、11cと、を有する。メインパイプ11の両端は、他の部位に比べて径が小さく形成されている。
【0020】
長穴部11aは、軸線CLに沿った長円形状を呈し、周方向の90°毎に4つ形成されている。
【0021】
ロック穴部11b、11cは、それぞれ円形状を呈し、周方向の180°毎2箇所に形成されている。ロック穴部11b、11cは、2箇所とも長穴部11aの前方に位置している。
【0022】
インナシャフト14は、メインパイプ11の一端(前端)に設けられている第1のインナシャフト20と、メインパイプ11の他端(後端)に設けられ端部に操作者が操舵するステアリングホイールShが固定された第2のインナシャフト40と、を有している。第1のインナシャフト20及び第2のインナシャフト40は、互いに離間している。
【0023】
第1のインナシャフト20は、筒状に形成されていると共に前部の軸受12に嵌め込まれた第1のインナシャフト筒部21と、この第1のインナシャフト筒部21の後端に嵌め込まれた第1のインナシャフト軸部22と、この第1のインナシャフト軸部22に嵌め込まれ軸線CLに沿って交互に3つずつ並べられた第1当接部23及び第2当接部24と、を有する。
【0024】
第1のインナシャフト筒部21は、前部から後部に向かって段階的に径が大きくなるよう形成されている。
【0025】
金属製の第1のインナシャフト軸部22は、第1のインナシャフト筒部21に嵌め込まれ円板形状を呈する基部22aと、この基部22aに一体的に形成され軸線CLに垂直な断面を基準として略X字状に形成された当接部支持部22bと、を有する。
【0026】
図4を参照する。第1当接部23、及び、第2当接部24は、少なくとも1つずつ配置される。第1当接部23、及び、第2当接部24は、第1当接部23から配置することもできるし、第2当接部24から配置することもできる。即ち、第1当接部23と、第2当接部24とは、図に示されるのと逆の順序で配置されてもよい。
【0027】
図5及び図6を参照する。第1当接部23、及び、第2当接部24は、それぞれ同じ形状に形成されている。
【0028】
第1当接部23は、硬質樹脂によって構成され、当接部支持部22bの外周に沿って略X字状に形成されている。
【0029】
第2当接部24は、ゴムによって構成され、当接部支持部22bの外周に沿って略X字状に形成されている。
【0030】
図2及び図3を参照する。第2のインナシャフト40は、筒状に形成されていると共に後部の軸受13に嵌め込まれた第2のインナシャフト筒部41と、この第2のインナシャフト筒部41の前端に嵌め込まれた第2のインナシャフト軸部42と、この第2のインナシャフト軸部42に嵌め込まれ軸線CLに沿って延びる第2のインナシャフト当接部43と、を有する。
【0031】
第2のインナシャフト筒部41は、後部から前部に向かって段階的に径が大きくなるよう形成されている。
【0032】
金属製の第2のインナシャフト軸部42は、第1のインナシャフト軸部22と同じものを用いることができる。金属製の第2のインナシャフト軸部42は、第2のインナシャフト筒部41に嵌め込まれ円板形状を呈する基部42aと、この基部42aに一体的に形成され軸線CLに垂直な断面を基準として略X字状に形成された当接部支持部42bと、を有する。
【0033】
第2のインナシャフト当接部43は、硬質樹脂によって構成され、当接部支持部42bの外周に沿って略X字状に形成されている。第2のインナシャフト当接部43は、軸線CLに垂直な断面を基準として、第1当接部23、及び、第2当接部24と同じ形状をしている。第2のインナシャフト当接部43は、第2のインナシャフト当接部43に沿った形状に形成されたアウタシャフト30の内周面に当接している。このため、第2のインナシャフト当接部43のトルクをアウタシャフト30に伝達することができる。
【0034】
なお、第2のインナシャフト当接部43は、第2のインナシャフト軸部42に対して着脱可能に設けられても良いし、インサート成形によって第2のインナシャフト軸部42に一体的に形成されていてもよい。
【0035】
アウタシャフト30は、第1当接部23及び第2当接部24の周縁を囲っているアウタシャフト本体部31と、このアウタシャフト本体部31の後端に一体的に形成されアウタシャフト本体部31よりも径の大きなアウタシャフト大径部32と、を有する。
【0036】
図4乃至図6を参照する。アウタシャフト本体部31は、第2当接部24の外周に沿った形状に形成され第2当接部24へトルクを伝達可能なトルク伝達部31aと、このトルク伝達部31aに隣接した位置に形成され第1当接部23へトルクの伝達を行わないよう空けられたアウタシャフト穴部31bと、を有している。トルク伝達部31aと、アウタシャフト穴部31bとは、軸線CLに沿って交互に形成されている。
【0037】
トルク伝達部31aは、第2当接部24が嵌合可能に略X字穴状に形成されている、ということもできる。
【0038】
ステアリングホイールSh(図3参照)を回転させると、第2のインナシャフト40(図3)を介してアウタシャフト30が回転される。このトルクは、トルク伝達部31aを介して第2当接部24に伝達され、第1のインナシャフト20が回転する。一方、トルクは、第1当接部23には伝達されない。
【0039】
図2及び図3を参照する。アウタシャフト大径部32は、周方向に1周連続して溝状に形成されたアウタシャフト溝部32aを有する。
【0040】
図2及び図7を参照する。移動機構50は、メインパイプ11の外周に設けられ軸線CLに沿って移動可能な移動機構本体部60と、この移動機構本体部60に差し込まれていると共に先端がアウタシャフト溝部32aに差し込まれた連結部材52と、インナシャフト20及びアウタシャフト30の軸線CL方向への相対移動を防止するためのロック機構70と、を有している。
【0041】
移動機構本体部60は、筒状に形成された移動機構筒状体61と、この移動機構筒状体61から左右に延びる平板状の移動機構延出部62、62と、を有する。
【0042】
移動機構筒状体61は、前部且つ左右の部位に軸線CLに向かって凹んだ凹部61aがそれぞれ形成されている。凹部61aの底には、前端から軸線CLにそってスリット状のスリット部61bが形成されている。
【0043】
連結部材52は、移動機構本体部60、及び、ロック穴部11bを貫通して、先端がアウタシャフト溝部32aまで達している。連結部材52は、移動機構筒状体61に対して周方向の90°毎に4つ取り付けられている。
【0044】
ロック機構70は、左右の移動機構延出部62のそれぞれに差し込まれ軸線CLに沿って延びる支持ピン71、71と、これらの支持ピン71、71のそれぞれに設けられたばね72、72と、これらのばね72、72によって移動機構本体部60から離れる方向に付勢されロック状態及びアンロック状態を切り替えるためのロック操作部73と、このロック操作部73に当接しロック操作部73の操作によってロック穴部11bへの進入及び後退が切り替えられる左右のロック部材74、74と、を有する。
【0045】
ロック操作部73は、移動機構筒状体61の外周に沿って移動可能なロック操作部本体73aと、このロック操作部本体73aから左右に延びばね72、72を受けているロック操作部延出部73b、73bと、を有する。
【0046】
ロック操作部本体73aは、略リング状に形成され、左右の内周面が平坦面状に形成されている。この平坦面状に形成された部位は、ロック部材74に当接するロック部材当接部73cである。
【0047】
ロック部材74は、凹部61aに収納され円弧形状を呈するロック部材本体74aと、このロック部材本体74aからアウタシャフト30に向かって突出しロック穴部11bへ差し込み可能なロック部材突出部74bと、ロック部材本体74aの前端及び後端から立ち上げられロック操作部73の移動量を規制している操作部ストッパ74c、74dと、を有する。
【0048】
以下に、ステアリング装置10の作用について説明する。乗員は、アウタシャフト30を前後させることにより、操舵フィーリングを変更することができる。
【0049】
図7を参照する。図7に示される状態において、トルク伝達部31aは、第2当接部24に当接している。即ち、アウタシャフト30のトルクは、トルク伝達部31aを介して第2当接部24(第1のインナシャフト20)に伝達される。
【0050】
一方、路面の凹凸から車輪に入力された振動等は、第2当接部24を介してトルク伝達部31aに伝達される。トルク伝達部31aに伝達された振動等は、アウタシャフト30及び第2のインナシャフト40を介して、ステアリングホイールSh(図3参照)に伝達される。乗員がステアリングホイールShを操舵した際に感じる操舵フィーリングは、第2当接部24の影響を受ける。
【0051】
乗員は、ステアリングホイールSh(図3参照)を介して伝わる操舵フィーリングを変更することができる。乗員は、トルク伝達部31aを第1当接部23に接触するよう操作を行う。まず、乗員は、ばね72の付勢力に抗して、ロック操作部73を移動機構延出部62に向かって押す。
【0052】
図8(a)を参照する。ロック部材本体74aは、円弧状に形成されている。ロック操作部73は、ロック部材本体74aに当接している。ロック操作部73を後方に変位させることにより、ロック部材本体74aの後端は、凹部61aの底に押しつけられ、前端は浮き上がる。ロック部材本体74aの前端が浮き上がることにより、ロック部材突出部74bが後のロック穴部11cから抜ける。これにより、ロック状態が解除され、アンロック状態となる。
【0053】
図8(b)を参照する。乗員は、ロック操作部73を移動機構延出部62に向かって押した状態のまま、ロック操作部73及び移動機構延出部62を前方に向かって押し出す。乗員は、連結部材25が長穴部11aの前端に接触するまで、ロック操作部73及び移動機構延出部62を前方に向かって押し出す。即ち、長穴部11aの前端は、アウタシャフト30の前進限を規定している。また、長穴部11aの後端は、アウタシャフト30の後退限を規定している。
【0054】
図8(c)を参照する。乗員は、連結部材25が長穴部11aの前端に接触したら、ロック操作部73から手を離す。ロック操作部73は、ばね72の付勢力によって前方に変位する。ロック操作部73を前方に変位させることにより、ロック部材本体74aの前端は、メインパイプ11に向かって押しつけられ、後端は浮き上がる。ロック部材本体74aの前端がメインパイプ11に向かって押しつけられることにより、ロック部材突出部74bが前のロック穴部11bに入る。これにより、アウタシャフト30の前後方向への移動を規制するロック状態となる。
【0055】
図9を参照する。アウタシャフト30を前方に変位させることにより、トルク伝達部31aは、第1当接部23に当接する。この場合、アウタシャフト30のトルクは、第1当接部23に伝達され、第2当接部24には伝達されない。
【0056】
一方、路面の凹凸から車輪に入力された振動等は、第1当接部23を介してトルク伝達部31aに伝達される。トルク伝達部31aに伝達された振動等は、アウタシャフト30及び第2のインナシャフト40を介して、ステアリングホイールSh(図3参照)に伝達される。乗員がステアリングホイールShを操舵した際に感じる操舵フィーリングは、第1当接部23の影響を受ける。
【0057】
第1当接部23(例えば、硬質樹脂)及び第2当接部24(例えば、ゴム)には、それぞれ異なる素材が採用されているため、トルク伝達部31aの当接している部位によって操舵フィーリングが変化する。
【0058】
以上に説明した本発明は、以下の効果を奏する。
【0059】
図4及び図9を参照する。ステアリング装置10は、移動機構50(図3参照)の操作によって第1当接部23又は第2当接部24のいずれかにのみ当接するトルク伝達部31aを有している。トルク伝達部31aは、一方の当接部(例えば、図4における第2当接部24)との間でのみトルクを伝達可能である。移動機構50を操作することにより、トルク伝達部31aを第1当接部23又は第2当接部24のいずれかに当接させる。このとき、当接している方の当接部のみがトルク伝達部31aとの間でトルクを伝達可能である。即ち、他方の当接部(例えば、図4における第1当接部23)は、トルク伝達部31aとの間でトルクを伝達することができない。そして、第1当接部23及び第2当接部24は、それぞれ硬さが異なる。第1当接部23を介してトルクを伝達させた場合(図9)と、第2当接部24を介してトルクを伝達させた場合(図4)とにおいて、ステアリングホイールSh(図1参照)を操作した際に乗員に伝わる感覚が異なる。これらの感覚の選択は、移動機構50を操作することによって行うことができる。操舵フィーリングを選択することができるステアリング装置10を提供することができる。
【0060】
特に、操舵フィーリングを機械的な簡便な構成によって選択可能とした。モータや制御部等の高価な部品を必要としない安価なステアリング装置10でありながら、操舵フィーリングを適宜選択することができ、好ましい。
【0061】
図1を参照する。移動機構50は、ステアリングホイールShを支持するメインパイプ11によって支持されている。ステアリングホイールShは、操作者の近傍に配置される。このため、移動機構50をステアリングホイールShの近傍に配置することにより、操作者は、容易に移動機構50の操作も行うことができる。
【0062】
図2を参照する。第1当接部23、及び、第2当接部24は、軸線CLに垂直な断面を基準として略X字状に形成されていると共に、トルク伝達部31aは、第1当接部23、及び、第2当接部24が嵌合可能に略X字穴状に形成されている。これにより、軸線CL方向への移動を許容しつつ、トルクを確実に伝達することができる。
【0063】
移動機構50は、移動機構本体部60に設けられアウタシャフト30に連結された連結部材52をさらに有している。連結部材52は、長穴部11aを貫通している。連結部材52が長穴部11aの縁に接触することにより、移動機構50の移動を規制することができる。これにより、アウタシャフト30は、長穴部11aによって移動可能な範囲を規制されている。簡便な構成によってアウタシャフト30が過剰に移動することを防止できる。
【0064】
図7を参照する。移動機構50は、トルク伝達部31aが第1当接部23又は第2当接部24に当接した際に、インナシャフト20及びアウタシャフト30の軸線CL方向への相対移動を防止するためのロック機構70を有している。ステアリングホイールSh(図3参照)を操作する際には、インナシャフト20及びアウタシャフト30は、ロック機構70によってロックされる。ステアリングホイールShの操作中に操舵フィーリングが変化することを防止できる。
【0065】
図3を参照する。移動機構50は、アウタシャフト30のみに接続されている。アウタシャフト30は、軸線CLに沿って移動可能に設けられ、インナシャフト14は、軸線CLに沿った移動が不能とされている。ステアリングホイールShを支持しているインナシャフト14を移動不能とし、アウタシャフト30のみを移動させることとした。これにより、ステアリングホイールShの位置を変位させることなく、操舵フィーリングを変更することができる。
【0066】
図2を併せて参照する。アウタシャフト30は、外周の周方向に亘って溝状に形成されたアウタシャフト溝部32aを有し、移動機構50は、メインパイプ11を貫通しアウタシャフト溝部32aに臨むと共に、アウタシャフト溝部32aに当接可能な連結部材52を有している。簡単な機構によって操舵フィーリングを変更することができる。
【0067】
図4及び図9を参照する。トルク伝達部31aに隣接して、他方の当接部(例えば、図4における第1当接部23)に対応させた位置にアウタシャフト穴部31bが空けられている。アウタシャフト穴部31bが空けられていることにより、他方の当接部は、アウタシャフト30に当接しない。このため、他方の当接部は、トルクの伝達が不能である。穴を空ける簡便な構成によって、他方の当接部とアウタシャフト30との間でのトルク伝達を不能としている。簡単な構成によって、一方の当接部(例えば、図4における第2当接部24)のみとの間で、操舵トルクを伝達することができる。
【0068】
尚、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のステアリング装置は、乗用車両に好適である。
【符号の説明】
【0070】
10…ステアリング装置
11…メインパイプ
11a…長穴部
14…インナシャフト
23…第1当接部
24…第2当接部
30…アウタシャフト
31a…トルク伝達部
50…移動機構
52…連結部材
60…移動機構本体部
70…ロック機構
CL…軸線
Sh…ステアリングホイール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9