(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220202BHJP
H01L 21/31 20060101ALN20220202BHJP
H01L 21/3065 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/68 P
H01L21/31 F
H01L21/302 101G
(21)【出願番号】P 2018046379
(22)【出願日】2018-03-14
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 育丈
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-216439(JP,A)
【文献】特開昭62-086802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/31
H01L 21/3065
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に略垂直な略平面上の第1の表面を有するセラミックス部材と、
前記セラミックス部材の内部に配置されたヒータ電極であって、前記第1の方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部と、前記ヒータライン部の端部に接続されると共に、前記第1の方向視で前記ヒータライン部より幅の大きいヒータパッド部と、を有するヒータ電極と、
前記セラミックス部材の内部に配置され、前記第1の方向において前記ヒータ電極と異なる位置に配置された第1のドライバ電極と、
前記第1のドライバ電極に電気的に接続されている給電端子と、
前記ヒータ電極の前記ヒータパッド部と前記第1のドライバ電極とに電気的に接続されているビアと、
を備え、前記セラミックス部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
前記第1のドライバ電極は、
前記ビアに電気的に接続され、かつ、前記第1の方向視で前記ヒータパッド部に重なる位置に配置された第1のドライバパッド部と、
前記第1の方向視で線状であり、かつ、前記第1のドライバパッド部より幅の小さい第1のドライバライン部であって、前記第1のドライバライン部の一方の端部が前記第1のドライバパッド部に接続された第1のドライバライン部と、を有し、
前記第1の方向視で、前記ヒータパッド部の中心点と、前記ヒータパッド部の外形線と前記ヒータライン部の外形線との一対の接合点のうちの一方の接合点とを通る仮想直線を第1の仮想直線とし、前記ヒータパッド部の前記中心点と、前記ヒータパッド部の前記外形線と前記ヒータライン部の前記外形線との前記一対の接合点のうちの他方の接合点とを通る仮想直線を第2の仮想直線としたとき、前記第1のドライバライン部は、前記第1の仮想直線および前記第2の仮想直線により区切られた4つの領域の内、前記ヒータライン部を含む領域とは異なる領域内に配置され
、
前記第1のドライバ電極は、前記第1のドライバパッド部の周りを囲み、かつ、前記第1のドライバパッド部から離れた周辺部を有し、
前記第1のドライバライン部の他方の端部は前記周辺部と接続している、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項2】
第1の方向に略垂直な略平面上の第1の表面を有するセラミックス部材と、
前記セラミックス部材の内部に配置されたヒータ電極であって、前記第1の方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部と、前記ヒータライン部の端部に接続されると共に、前記第1の方向視で前記ヒータライン部より幅の大きいヒータパッド部と、を有するヒータ電極と、
前記セラミックス部材の内部に配置され、前記第1の方向において前記ヒータ電極と異なる位置に配置された第1のドライバ電極と、
前記第1のドライバ電極に電気的に接続されている給電端子と、
前記ヒータ電極の前記ヒータパッド部と前記第1のドライバ電極とに電気的に接続されているビアと、
前記セラミックス部材の内部に配置され、前記第1の方向において前記ヒータ電極および前記第1のドライバ電極と異なる位置に配置された第2のドライバ電極と、
を備え、前記セラミックス部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
前記第1のドライバ電極は、
前記ビアに電気的に接続され、かつ、前記第1の方向視で前記ヒータパッド部に重なる位置に配置された第1のドライバパッド部と、
前記第1の方向視で線状であり、かつ、前記第1のドライバパッド部より幅の小さい第1のドライバライン部であって、前記第1のドライバライン部の一方の端部が前記第1のドライバパッド部に接続された第1のドライバライン部と、を有し、
前記第1の方向視で、前記ヒータパッド部の中心点と、前記ヒータパッド部の外形線と前記ヒータライン部の外形線との一対の接合点のうちの一方の接合点とを通る仮想直線を第1の仮想直線とし、前記ヒータパッド部の前記中心点と、前記ヒータパッド部の前記外形線と前記ヒータライン部の前記外形線との前記一対の接合点のうちの他方の接合点とを通る仮想直線を第2の仮想直線としたとき、前記第1のドライバライン部は、前記第1の仮想直線および前記第2の仮想直線により区切られた4つの領域の内、前記ヒータライン部を含む領域とは異なる領域内に配置され
、
前記第2のドライバ電極は、
前記給電端子に電気的に接続された第1の導電部と、
前記第1のドライバ電極を介して、前記ヒータ電極に電気的に接続された第2の導電部と、
前記第1の方向視で線状であり、かつ、前記第1の導電部および前記第2の導電部より幅の小さい第2のドライバライン部であって、前記第2のドライバライン部の一方の端部が前記第1の導電部に接続され、かつ、前記第2のドライバライン部の他方の端部が前記第2の導電部に接続された第2のドライバライン部と、を有し、
前記第2のドライバライン部は、前記第1の方向視で、前記ヒータパッド部の周囲であって、前記第1のドライバライン部および前記ヒータライン部の位置とは異なる位置に配置されている、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の保持装置において、
前記第1のドライバ電極は、複数の前記第1のドライバライン部を有し、
前記第1の方向視で、前記ヒータパッド部の前記外形線と前記ヒータライン部の前記外形線との前記一方の接合点および前記他方の接合点を通る仮想直線を第3の仮想直線とし、前記ヒータパッド部の前記中心点を通り、かつ、前記第3の仮想直線に平行な仮想直線を第4の仮想直線としたとき、前記複数の第1のドライバライン部は、いずれも前記第4の仮想直線により区切られた2つの領域の内、前記ヒータライン部を含む領域とは異なる領域内に配置される、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の保持装置において、
前記第1の方向視で、前記ヒータパッド部の前記外形線と前記ヒータライン部の前記外形線との前記一方の接合点および前記他方の接合点を通る仮想直線を第3の仮想直線とし、前記ヒータパッド部の前記中心点を通り、かつ、前記第3の仮想直線に平行な仮想直線を第4の仮想直線としたとき、前記第1のドライバライン部は、前記第1の方向視で、前記第4の仮想直線に対して、前記ヒータライン部の反対側に配置される、
ことを特徴とする保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体を製造する際にウェハを保持する保持装置として、静電チャックが用いられる。静電チャックは、所定の方向(以下、「第1の方向」という)に略垂直な略平面状の表面(以下、「吸着面」という)を有するセラミックス部材と、セラミックス部材の内部に設けられたチャック電極とを備えており、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、セラミックス部材の吸着面にウェハを吸着して保持する。
【0003】
静電チャックの吸着面に保持されたウェハの温度が所望の温度にならないと、ウェハに対する各処理(成膜、エッチング等)の精度が低下するおそれがあるため、静電チャックにはウェハの温度分布を制御する性能が求められる。そのため、例えば、セラミックス部材の内部に複数のヒータ電極が設けられる。各ヒータ電極に電圧が印加されると、各ヒータ電極が発熱することによってセラミックス部材が加熱され、これにより、セラミックス部材の吸着面の温度分布の制御(ひいては、吸着面に保持されたウェハの温度分布の制御)が実現される。
【0004】
各ヒータ電極は、線状の抵抗発熱体であるヒータライン部と、ヒータライン部の各端部に接続されたヒータパッド部とを有する(例えば、特許文献1参照)。また、各ヒータ電極への給電のため、静電チャックに、ドライバ電極が設けられることがある(例えば、特許文献2参照)。ドライバ電極は、給電側ビアを介して給電端子と電気的に接続されると共に、ヒータ側ビアを介して各ヒータ電極のヒータパッド部と電気的に接続される。このような構成では、各ヒータ電極のヒータパッド部は、ヒータ側ビアとドライバ電極と給電側ビアと給電端子とを介して電源に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-139503号公報
【文献】特開2015-018704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒータ電極において、上記第1の方向視でのヒータパッド部の幅は、ヒータライン部の幅より大きいため、ヒータパッド部での発熱量は、ヒータライン部での発熱量と比較してごく僅かである。そのため、従来の静電チャックでは、セラミックス部材の吸着面の内、第1の方向視でヒータパッド部に重なる領域や、ヒータパッド部に対してヒータライン部の延伸方向とは反対側の領域に重なる領域は、低温の温度特異点となりやすい。従って、従来の静電チャックでは、セラミックス部材の吸着面の温度分布の制御性(ひいては、ウェハの温度分布の制御性)の点で向上の余地がある。
【0007】
なお、このような課題は、静電引力を利用してウェハを保持する静電チャックに限らず、セラミックス部材を備え、セラミックス部材の表面上に対象物を保持する保持装置一般に共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される保持装置は、第1の方向に略垂直な略平面上の第1の表面を有するセラミックス部材と、前記セラミックス部材の内部に配置されたヒータ電極であって、前記第1の方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部と、前記ヒータライン部の端部に接続されると共に、前記第1の方向視で前記ヒータライン部より幅の大きいヒータパッド部と、を有するヒータ電極と、前記セラミックス部材の内部に配置され、前記第1の方向において前記ヒータ電極と異なる位置に配置された第1のドライバ電極と、前記第1のドライバ電極に電気的に接続されている給電端子と、前記ヒータ電極の前記ヒータパッド部と前記第1のドライバ電極とに電気的に接続されているビアと、を備え、前記セラミックス部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、前記第1のドライバ電極は、前記ビアに電気的に接続され、かつ、前記第1の方向視で前記ヒータパッド部に重なる位置に配置された第1のドライバパッド部と、前記第1の方向視で線状であり、かつ、前記第1のドライバパッド部より幅の小さい第1のドライバライン部であって、前記第1のドライバライン部の一方の端部が前記第1のドライバパッド部に接続された第1のドライバライン部と、を有し、前記第1の方向視で、前記ヒータパッド部の中心点と、前記ヒータパッド部の外形線と前記ヒータライン部の外形線との一対の接合点のうちの一方の接合点とを通る仮想直線を第1の仮想直線とし、前記ヒータパッド部の前記中心点と、前記ヒータパッド部の前記外形線と前記ヒータライン部の前記外形線との前記一対の接合点のうちの他方の接合点とを通る仮想直線を第2の仮想直線としたとき、前記第1のドライバライン部は、前記第1の仮想直線および前記第2の仮想直線により区切られた4つの領域の内、前記ヒータライン部を含む領域とは異なる領域内に配置される。ヒータ電極において、第1の方向視で、ヒータパッド部はヒータライン部より幅が大きいため、ヒータパッド部での発熱量はヒータライン部での発熱量と比較してごく僅かである。そのため、セラミックス部材の第1の表面の内、第1の方向視で、ヒータパッド部の周囲やヒータパッド部に重なる領域、ヒータパッド部に対してヒータライン部の延伸方向とは反対側の領域に重なる領域(以下、「特定領域」という)は、低温の温度特異点となりやすい。セラミックス部材の第1の表面に低温の温度特異点が発生すると、第1の表面の温度分布の制御性が低下し、ひいては、保持装置に保持された対象物の温度分布の制御性が低下する。しかしながら、本保持装置では、ドライバライン部が、第1の仮想直線および第2の仮想直線により区切られた4つの領域の内、ヒータライン部を含む領域とは異なる領域内に配置されている。ドライバ電極におけるドライバライン部は、第1の方向視でドライバパッド部より幅が小さいため、ドライバライン部に電流が流れることにより発熱する。そして、第1の仮想直線および第2の仮想直線により区切られた4つの領域の内、ヒータライン部を含む領域とは異なる領域は、上述した低温の温度特異点となりやすい特定領域の大部分を含むような領域である。そのため、ドライバライン部を電流が流れることによる発熱により、上述した特定領域が低温の温度特異点となることを抑制することができる。従って、本保持装置によれば、セラミックス部材の吸着面に低温の温度特異点が発生することを抑制することができ、セラミックス部材の吸着面の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0011】
(2)上記保持装置において、前記第1のドライバ電極は、前記第1のドライバパッド部の周りを囲み、かつ、前記第1のドライバパッド部から離れた周辺部を有し、前記第1のドライバライン部の他方の端部は前記周辺部と接続している構成としてもよい。本保持装置によれば、周辺部とドライバパッド部との間を流れる電流はドライバライン部のみを通過することにより、ドライバライン部が効率的に発熱する。従って、本保持装置によれば、上述した特定領域の内のドライバライン部が配置された部分が低温の温度特異点となることを効果的に抑制することができ、セラミックス部材の吸着面の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0012】
(3)上記保持装置において、前記第1のドライバ電極は、複数の前記第1のドライバライン部を有し、前記第1の方向視で、前記ヒータパッド部の前記外形線と前記ヒータライン部の前記外形線との前記一方の接合点および前記他方の接合点を通る仮想直線を第3の仮想直線とし、前記ヒータパッド部の前記中心点を通り、かつ、前記第3の仮想直線に平行な仮想直線を第4の仮想直線としたとき、前記複数の第1のドライバライン部は、いずれも前記第4の仮想直線により区切られた2つの領域の内、前記ヒータライン部を含む領域とは異なる領域内に配置される構成としてもよい。上述した特定領域において、第4の仮想直線により区切られた2つ領域の内ヒータライン部を含む領域とは異なる領域は、特に低温の温度特異点となりやすい。本保持装置によれば、上述した特定領域の内の特に低温の温度特異点となりやすい複数の部分が低温の温度特異点となることを効果的に抑制することができ、セラミックス部材の吸着面の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0013】
(4)上記保持装置において、前記第1の方向視で、前記ヒータパッド部の前記外形線と前記ヒータライン部の前記外形線との前記一方の接合点および前記他方の接合点を通る仮想直線を第3の仮想直線とし、前記ヒータパッド部の前記中心点を通り、かつ、前記第3の仮想直線に平行な仮想直線を第4の仮想直線としたとき、前記第1のドライバライン部は、前記第1の方向視で、前記第4の仮想直線に対して、前記ヒータライン部の反対側に配置される構成としてもよい。上述した特定領域において、第4の仮想直線に対してヒータライン部の反対側は、極めて低温の温度特異点となりやすい。本保持装置によれば、上述した特定領域の内の極めて低温の温度特異点となりやすい部分が低温の温度特異点となることを効果的に抑制することができ、セラミックス部材の吸着面の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0014】
(5)上記保持装置において、前記セラミックス部材は、第1の方向において、前記セラミックス部材の前記第1の表面とは反対側の第2の表面、を有し、前記セラミックス部材の内部に配置され、前記第1の方向において前記ヒータ電極および前記第1のドライバ電極と異なる位置に配置された前記第1のドライバ電極と前記セラミックス部材の前記第1の表面との間または前記第1のドライバ電極と前記セラミックス部材の前記第2の表面との間の少なくとも一方に配置され、かつ、前記第1のドライバ電極および前記給電端子に電気的に接続されている第2のドライバ電極、を備え、前記第2のドライバ電極は、前記給電端子に電気的に接続された第1の導電部と、前記第1のドライバ電極を介して、前記ヒータ電極に電気的に接続された第2の導電部と、前記第1の方向視で線状であり、かつ、前記第1の導電部および前記第2の導電部より幅の小さい第2のドライバライン部であって、前記第2のドライバライン部の一方の端部が前記第1の導電部に接続され、かつ、前記第2のドライバライン部の他方の端部が前記第2の導電部に接続された第2のドライバライン部と、を有し、前記第2のドライバライン部は、前記第1の方向視で、前記ヒータパッド部の周囲であって、前記第1のドライバライン部および前記ヒータライン部の位置とは異なる位置に配置されている、ことを特徴とする構成としてもよい。本保持装置によれば、第1のドライバ電極に加え、第2のドライバライン部を有する第2のドライバ電極を更に備えている。第2のドライバ電極における第1の導電部と第2の導電部との間を流れる電流は第2のドライバライン部のみを流れる。このため、第2のドライバライン部は、第1のドライバライン部と同様に効果的に発熱する。このような第2のドライバライン部が、第1の方向視で、ヒータパッドの周囲であって、第1のドライバライン部およびヒータライン部とは異なる位置に配置されている。従って、本保持装置によれば、上述した特定領域の内の低温の温度特異点となりやすい複数の部分が低温の温度特異点となることを効果的に抑制することができ、セラミックス部材の吸着面の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を効果的に向上させることができる。
【0015】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、静電チャック、真空チャック、CVDヒータ等の保持装置、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図3】第1実施形態における静電チャック100のXY平面(上面)構成を概略的に示す説明図である。
【
図4】1つのセグメントSEに配置された1つのヒータ電極50のXY断面構成を模式的に示す説明図である。
【
図5】第1実施形態の静電チャック100における第1のヒータパッド部521とヒータライン部511を示す説明図である。
【
図6】第1実施形態の静電チャック100における第1のヒータパッド部521とドライバライン部611との位置関係を示す説明図である。
【
図7】第1実施形態の静電チャック100におけるヒータ電極50およびドライバ電極60の位置関係を示す説明図である。
【
図8】第1実施形態の変形例の静電チャック100における第1のヒータパッド部521とドライバライン部611との位置関係を示す説明図である。
【
図9】第2実施形態の静電チャック100Aにおけるヒータ電極50およびドライバ電極60A,60Bの位置関係を示す説明図である。
【
図10】第2実施形態の静電チャック100Aにおける第1のヒータパッド部521とドライバライン部611A,611Bとの位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.第1実施形態:
A-1.静電チャック100の構成:
図1は、第1実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、
図2は、第1実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図であり、
図3は、第1実施形態における静電チャック100のXY平面(上面)構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
【0018】
静電チャック100は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(第1実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置されたセラミックス部材10およびベース部材20を備える。セラミックス部材10とベース部材20とは、セラミックス部材10の下面S2(
図2参照)とベース部材20の上面S3とが上記配列方向に対向するように配置される。
【0019】
セラミックス部材10は、上述した配列方向(Z軸方向)に略直交する略円形平面状の上面(以下、「吸着面」という)S1を有する板状部材であり、セラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。セラミックス部材10の直径は例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、セラミックス部材10の厚さは例えば1mm~10mm程度である。セラミックス部材10の吸着面S1は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を「面方向」といい、
図3に示すように、面方向の内、吸着面S1の中心点Pxを中心とする円周方向を「円周方向CD」といい、面方向の内、円周方向CDに直交する方向を「径方向RD」という。
【0020】
図2に示すように、セラミックス部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40に電源(図示しない)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWがセラミックス部材10の吸着面S1に吸着固定される。
【0021】
セラミックス部材10の内部には、また、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御(すなわち、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御)のための複数のヒータ電極50と、複数のヒータ電極50への給電のための構成とが配置されている。これらの構成については、後に詳述する。なお、このような構成のセラミックス部材10は、例えば、セラミックスグリーンシートを複数枚作製し、所定のセラミックスグリーンシートにビア孔の形成やメタライズペーストの充填および印刷等の加工を行い、これらのセラミックスグリーンシートを熱圧着し、切断等の加工を行った上で焼成することにより作製することができる。
【0022】
ベース部材20は、例えばセラミックス部材10と同径の、または、セラミックス部材10より径が大きい円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。ベース部材20の直径は例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、ベース部材20の厚さは例えば20mm~40mm程度である。
【0023】
ベース部材20は、セラミックス部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置された接合部30によって、セラミックス部材10に接合されている。接合部30は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。接合部30の厚さは、例えば0.1mm~1mm程度である。なお、接合部30は、セラミックス部材10の下面S2の全面に配置されていてもよく、または、下面S2の一部のみに配置されていてもよい。
【0024】
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接合部30を介したベース部材20とセラミックス部材10との間の伝熱(熱引き)によりセラミックス部材10が冷却され、セラミックス部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
【0025】
A-2.ヒータ電極50の構成:
次に、ヒータ電極50の構成について詳述する。
【0026】
上述したように、静電チャック100は、複数のヒータ電極50を備える(
図2および
図4参照)。第1実施形態において、複数のヒータ電極50は、Z軸方向において、チャック電極40とセラミックス部材10の下面S2との間に備えられている。また、複数のヒータ電極50は、Z軸方向において、略同じ位置に配置されている。複数のヒータ電極50は、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。
【0027】
ここで、
図3に示すように、第1実施形態では、セラミックス部材10に複数の仮想的な領域であるセグメントSEが設定されている。より詳細には、Z軸方向視で、セラミックス部材10が、吸着面S1の中心点Pxを中心とする同心円状の複数の第1の境界線BL1によって複数の仮想的な環状領域(ただし、中心点Pxを含む領域のみは円状領域)に分割され、さらに各環状領域が、径方向RDに延びる複数の第2の境界線BL2によって円周方向CDに並ぶ複数の仮想的な領域であるセグメントSEに分割されている。複数のヒータ電極50のそれぞれは、セラミックス部材10に設定された複数のセグメントSEの1つに配置されている。すなわち、第1実施形態の静電チャック100では、複数のセグメントSEのそれぞれに、1つのヒータ電極50が配置されている。
【0028】
図4は、1つのセグメントSEに配置された1つのヒータ電極50のXY断面構成を模式的に示す説明図である。
図5は、第1実施形態の静電チャック100における第1のヒータパッド部521とヒータライン部511を示す説明図である。
図5には、
図4のX2部の拡大図が示されている。
図4および
図5に示すように、ヒータ電極50は、ヒータライン部511とヒータパッド部(第1のヒータパッド部521および第2のヒータパッド部522)とを有する。ヒータライン部511は、Z軸方向視で線状の抵抗発熱体である。ヒータパッド部521,522は、それぞれ、ヒータライン部511の両端部に接続されている。ヒータパッド部521,522の形状は、例えば、Z軸方向視で略円形である。また、Z軸方向視において、ヒータパッド部521,522の幅は、ヒータライン部511の幅より大きい。ここで、ヒータライン部511の幅は、ヒータライン部511の軸線に略直交する方向の幅であり、ヒータパッド部521,522の幅は、ヒータライン部511の軸線の延長線に略直交する方向の幅である(
図4参照)。他のセグメントSEに配置されたヒータ電極50の構成も同様である。
【0029】
A-3.ドライバ電極60の詳細構成:
次に、ドライバ電極60の構成について詳述する。
【0030】
図6は、第1実施形態の静電チャック100における第1のヒータパッド部521とドライバライン部611との位置関係を示す説明図である。
図6(A)には、
図7のVIA-VIAの位置におけるヒータ電極50のX3部(
図5参照)のXY断面構成が示されている。
図6(B)には、
図7のVIB-VIBの位置におけるドライバ電極60のZ軸方向視でのX3部(
図5参照)のXY断面構成が示されている。また、
図7は、第1実施形態の静電チャック100におけるヒータ電極50およびドライバ電極60の位置関係を示す説明図である。
図7には、
図2のX1部における静電チャック100のXZ断面構成が示されている。
【0031】
静電チャック100は、ドライバ電極60を備える(
図2参照)。第1実施形態において、ドライバ電極60は、Z軸方向において、ヒータ電極50と異なる位置に備えられている。具体的には、ドライバ電極60は、ヒータ電極50とセラミックス部材10の下面S2との間に備えられている。ドライバ電極60は、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。
【0032】
図6(B)に示すように、ドライバ電極60は、ドライバライン部611とドライバパッド部621と周辺部631とを有する。ドライバライン部611は、Z軸方向視で線状である。ドライバパッド部621は、ドライバライン部611の一方の端部である端部E1に接続されており、Z軸方向視で第1のヒータパッド部521に重なる位置に配置されている。なお、ドライバパッド部621がZ軸方向視で第1のヒータパッド部521に重なる位置に配置されているとは、Z軸方向視でドライバパッド部621の少なくとも一部が第1のヒータパッド部521に含まれていることを意味する。ドライバパッド部621の形状は、例えば、Z軸方向視で略円形である。第1実施形態において、ドライバパッド部621は、Z軸方向視において、第1のヒータパッド部521と略同一の直径を有しており、ドライバパッド部621の中心点は第1のヒータパッド部521の中心点と一致している。また、Z軸方向視において、ドライバライン部611の幅は、ドライバパッド部621の幅より小さい。ここで、ドライバライン部611の幅は、ドライバライン部611の軸線に略直交する方向の幅であり、ドライバパッド部621の幅は、ドライバライン部611の軸線の延長線に略直交する方向の幅である(
図6(B)参照)。
【0033】
周辺部631は、ドライバパッド部621の周りを囲み、かつ、ドライバパッド部621から離れて配置されており、ドライバライン部611の他方の端部である端部E2と接続している。第1実施形態において、ドライバパッド部621と周辺部631との間のうち、ドライバライン部611が配置された部分を除く部分に離隔部651が形成されている。すなわち、ドライバパッド部621は、ドライバライン部611が接続された部分以外の部分において周辺部631と接していない。なお、周辺部631は、
図6(B)に示すように、所定の面積を有する面状に形成されている。
【0034】
A-4.ヒータ電極50への給電のための詳細構成:
次に、ヒータ電極50への給電のための構成について詳述する。
【0035】
図2に示すように、静電チャック100は、第1の給電端子741、第1の電極パッド731、第1の給電側ビア711、ドライバ電極60、第1のヒータ側ビア721、第2のヒータ側ビア722、第2の給電側ビア712、第2の電極パッド732および第2の給電端子742を備えている。
【0036】
図2、
図4および
図7に示すように、ヒータ電極50の第1のヒータパッド部521は、第1のヒータ側ビア721の一方の端部に接合されている。第1のヒータ側ビア721の他方の端部は、ドライバ電極60のドライバパッド部621に接合されている。第1の給電側ビア711の一方の端部は、ドライバ電極60の周辺部631に接合されている。ヒータ電極50の第2のヒータパッド部522は、第2のヒータ側ビア722の一方の端部に接合されている。第2のヒータ側ビア722の他方の端部は、他のドライバ電極60に接合されている。第2の給電側ビア712の一方の端部は、他のドライバ電極60に接合されている。また、ヒータ側ビア721,722および給電側ビア711,712は、導電性材料により形成されている。ヒータ側ビア721,722および給電側ビア711,712は、それぞれ、単数のビアで構成されている(
図2および
図7参照)。他のセグメントSEに配置されたヒータ電極50についても、ヒータ電極50と同様であるため、説明を省略する。
【0037】
また、
図2に示すように、静電チャック100には、ベース部材20の下面S4からセラミックス部材10の内部に至る第1の端子用孔110および第2の端子用孔120が形成されている。第1の端子用孔110および第2の端子用孔120は、ベース部材20を上下方向に貫通する貫通孔22と、接合部30を上下方向に貫通する貫通孔32と、セラミックス部材10の下面S2側に形成された凹部12とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。
【0038】
第1の端子用孔110には、柱状の第1の給電端子741が収容されている。また、第1の端子用孔110を構成するセラミックス部材10の凹部12の底面には、第1の電極パッド731が設けられている。第1の給電端子741は、第1の電極パッド731に接合されている。また、第1の電極パッド731は、第1の給電側ビア711の他方の端部に接合されている。同様に、第2の端子用孔120には、柱状の第2の給電端子742が収容されている。また、第2の端子用孔120を構成するセラミックス部材10の凹部12の底面には、第2の電極パッド732が設けられている。第2の給電端子742は、第2の電極パッド732に接合されている。また、第2の電極パッド732は、第2の給電側ビア712の他方の端部に接合されている。第2の給電側ビア712の他方の端部は、他のドライバ電極60に接合されている。電極パッド731,732と給電端子741,742との接合は、例えば、ろう付け等により行われる。また、電極パッド731,732、および、給電端子741,742は、導電性材料により形成されている。電極パッド731,732の形状は、例えば、Z軸方向視で略円形である。
【0039】
第1の給電端子741は、第1の電極パッド731および第1の給電側ビア711を介して、ドライバ電極60に電気的に接続される。ドライバ電極60は、第1のヒータ側ビア721および第1のヒータパッド部521を介して、ヒータ電極50に電気的に接続される。また、第2の給電端子742は、第2の電極パッド732および第2の給電側ビア712を介して、他のドライバ電極60に電気的に接続される。他のドライバ電極60は、第2のヒータ側ビア722および第2のヒータパッド部522を介して、ヒータ電極50に電気的に接続される。このような構成において、第1の給電端子741および第2の給電端子742が、電源(図示せず)に接続されると、電源からの電圧がヒータ電極50に印加される。ヒータ電極50に電圧が印加されると、ヒータ電極50が発熱する。例えば、第1の給電端子741が電源の正極に接続される場合には、第1の給電側ビア711を介してドライバ電極60の周辺部631に電流が供給される。周辺部631に供給された電流は、ドライバライン部611、ドライバパッド部621、第1のヒータ側ビア721を介してヒータ電極50へ供給される。なお、第1の給電端子741が電源の負極に接続される場合には、上記第1の給電端子741とヒータ電極50との間を流れる電流の向きは逆向きとなる。いずれの場合においても、ヒータ電極50が発熱し、ヒータ電極50が配置されたセグメントSEが加熱される。セラミックス部材10の各セグメントSEに配置されたヒータ電極50への印加電圧を個別に制御することにより、各セグメントSEの温度を個別に制御することができる。これにより、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御(すなわち、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御)が実現される。このとき、ドライバライン部611は、周辺部631およびドライバパッド部621に比べて電気抵抗が高いため発熱する(ドライバパッド部621および周辺部631に比べて発熱量が多い)。
【0040】
A-5.第1のヒータパッド部521とドライバライン部611との位置関係:
次に、第1のヒータパッド部521とドライバライン部611との位置関係について詳述すると共に、セラミックス部材10の吸着面S1において低温の温度特異点となりやすい領域について説明する。
【0041】
図5に示すように、以下の説明では、Z軸方向視で、第1のヒータパッド部521の中心点P0を通り、かつ、第1のヒータパッド部521の外形線とヒータライン部511の外形線との一対の接合点P1,P2とを通る2つの仮想直線を、それぞれ第1の仮想直線VL1および第2の仮想直線VL2という。また、Z軸方向視で、第1のヒータパッド部521の外形線とヒータライン部511の外形線との一対の接合点P1,P2を通る仮想直線を、第3の仮想直線VL3という。さらに、Z軸方向視で、第1のヒータパッド部521の中心点P0を通り、かつ、第3の仮想直線VL3に平行な仮想直線を、第4の仮想直線VL4という。
【0042】
なお、第1のヒータパッド部521の外形線とヒータライン部511の外形線との一対の接合点P1,P2が一見して明らかでない場合には、第1のヒータパッド部521の外形線に近似する仮想円を特定し、当該仮想円と第1のヒータパッド部521の外形線との2つの交点を一対の接合点P1,P2として特定する。また、第1のヒータパッド部521の中心点P0が一見して明らかではない場合には、第1のヒータパッド部521の外形線に近似する仮想円の中心点を第1のヒータパッド部521の中心点P0として特定する。
【0043】
図5に示される特定領域Rxは、セラミックス部材10の吸着面S1において低温の温度特異点となりやすい領域である。すなわち、特定領域Rxは、Z軸方向視で、第1のヒータパッド部521の周囲や第1のヒータパッド部521に重なる領域、第1のヒータパッド部521に対してヒータライン部511の延伸方向とは反対側の領域に重なる領域である。また、第1の領域R1は、Z軸方向視で、第1の仮想直線VL1および第2の仮想直線VL2により区切られた4つの領域の内、ヒータライン部511を含む領域とは異なる領域であり、上述した低温の温度特異点となりやすい特定領域Rxの大部分を含むような領域である。第2の領域R2は、Z軸方向視で、第4の仮想直線VL4により区切られた2つの領域の内、ヒータライン部511を含む領域とは異なる領域であり、特定領域Rxの内、より低温の温度特異点となりやすい領域を含むような領域である。
【0044】
図6(B)に示すように、ドライバライン部611は、Z軸方向視で、第1の領域R1内に配置されている。具体的には、ドライバライン部611は、Z軸方向視で、第4の仮想直線VL4に対して、ヒータライン部511の反対側に配置されている。なお、ドライバライン部611がZ軸方向視である領域(第1の領域R1等)内に配置されているとは、ドライバライン部611の軸線がある領域内またはある領域を形成する仮想直線上に位置していることを意味する。また、ドライバライン部611がZ軸方向視で第4の仮想直線VL4に対してヒータライン部511の反対側に配置されているとは、ドライバライン部611の軸線がヒータライン部511の軸線の延長線上に位置していることを意味する。なお、第1実施形態において、ドライバライン部611は、Z軸方向視で、第1のヒータパッド部521周辺のヒータライン部511に重ならないよう配置される。具体的には、ドライバライン部611は、Z軸方向視で、ドライバライン部611の端部E2が、
図5に示す領域Ra内に位置するヒータライン部511に含まれないよう配置される。
【0045】
A-6.第1実施形態の効果:
以上説明したように、第1実施形態の静電チャック100は、Z軸方向に略垂直な略平面上の吸着面S1を有するセラミックス部材10を備え、セラミックス部材10の吸着面S1上に対象物(例えばウェハW)を保持する保持装置である。静電チャック100は、セラミックス部材10の内部に配置されたヒータ電極50を備える。ヒータ電極50は、Z軸方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部511と、ヒータライン部511の端部に接続されると共に、Z軸方向視でヒータライン部511より幅の大きい第1のヒータパッド部521とを有する。また、静電チャック100は、セラミックス部材の内部に配置され、Z軸方向においてヒータ電極50と異なる位置に配置されたドライバ電極60を備える。さらに、静電チャック100は、ドライバ電極60に電気的に接続されている第1の給電端子741と、ヒータ電極50の第1のヒータパッド部521とドライバ電極60とに電気的に接続されている第1のヒータ側ビア721とを備える。また、第1実施形態の静電チャック100において、ドライバ電極60は、ドライバパッド部621とドライバライン部611とを有する。ドライバパッド部621は、第1のヒータ側ビア721に電気的に接続され、かつ、Z軸方向視で第1のヒータパッド部521に重なる位置に配置されている。ドライバライン部611は、Z軸方向視で線状であり、かつ、ドライバパッド部621より幅の小さく、かつ、ドライバライン部611の端部E1はドライバパッド部621に接続されている。第1実施形態の静電チャック100において、Z軸方向視で、ドライバライン部611は、第1の仮想直線VL1および第2の仮想直線VL2により区切られた4つの領域の内、ヒータライン部を含む領域とは異なる領域R1内に配置される。第1実施形態の静電チャック100は、このような構成を有しているため、以下に説明するように、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0046】
ヒータ電極50において、Z軸方向視で、第1のヒータパッド部521は、ヒータライン部511より幅が大きいため、第1のヒータパッド部521での発熱量は、ヒータライン部511での発熱量と比較してごく僅かである。そのため、セラミックス部材10の吸着面S1の内、特定領域Rxは低温の温度特異点となりやすい。セラミックス部材10の吸着面S1に低温の温度特異点が発生すると、吸着面S1の温度分布の制御性が低下し、ひいては、ウェハWの温度分布の制御性が低下する。
【0047】
しかしながら、上述したように、本実施形態の静電チャック100では、ドライバライン部611が、第1の仮想直線VL1および第2の仮想直線VL2により区切られた4つの領域の内、ヒータライン部を含む領域とは異なる領域R1内に配置されている(
図5および
図6参照)。ドライバ電極60におけるドライバライン部611は、Z軸方向視でドライバパッド部621より幅が小さいため、ドライバライン部611に電流I1が流れることにより発熱する。そして、第1の領域R1は、上述した低温の温度特異点となりやすい特定領域Rxの大部分を含むような領域である。そのため、ドライバライン部611を電流I1(
図7参照)が流れることによる発熱により、上述した特定領域Rxが低温の温度特異点となることを抑制することができる。従って、第1実施形態の静電チャック100によれば、セラミックス部材10の吸着面S1に低温の温度特異点が発生することを抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。なお、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性が高いとは、吸着面S1全体の温度分布が均一に近いことと、セグメントSE毎に吸着面S1の温度分布が均一に近いこととの少なくとも一方の意味を含む。
【0048】
また、上述したように、第1実施形態の静電チャック100では、ドライバライン部611は、Z軸方向視で、第4の仮想直線VL4に対して、ヒータライン部511の反対側に配置される。上述した特定領域Rxの内、第1のヒータパッド部521に対してヒータライン部511の延伸方向とは反対側、すなわち、Z軸方向視で、第4の仮想直線VL4に対して、ヒータライン部511の反対側では、特に低温の温度特異点となりやすい。第1実施形態の静電チャック100によれば、ドライバ電極60において、Z軸方向視で、第4の仮想直線VL4に対して、ヒータライン部511の反対側に配置されたドライバライン部611に電流I1が流れる。これにより、ドライバライン部611が発熱するため、特定領域Rxが低温の温度特異点となることを効果的に抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を効果的に向上させることができる。
【0049】
また、上述したように、第1実施形態の静電チャック100では、ドライバライン部611の両端部E1,E2の内、ドライバパッド部621に接合された端部E1とは異なる他方の端部E2が、ドライバパッド部621の周りを囲み、かつ、ドライバパッド部621から離れた周辺部631と接合している。そのため、周辺部631とドライバパッド部621との間を流れる電流I1はドライバライン部611のみを通過することにより、ドライバライン部611が効率的に発熱する。従って、第1実施形態の静電チャック100によれば、セラミックス部材10の吸着面S1において、特定領域Rxの内のドライバライン部611が配置された部分が、低温の温度特異点となることを効果的に抑制することができる。
【0050】
A-7.第1実施形態の変形例:
図8は、第1実施形態の変形例の静電チャック100における第1のヒータパッド部521とドライバライン部611との位置関係を示す説明図である。
図8のA欄には、
図6のA欄に示すヒータ電極50のX3部(
図5参照)におけるXY断面構成が示されている。
図8(B)には、第1実施形態の変形例のドライバ電極60のZ軸方向視でのX3部(
図5参照)におけるXY断面構成が示されている。以下では、第1実施形態の変形例の静電チャック100の構成の内、上述した第1実施形態の静電チャック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0051】
図8に示すように、第1実施形態の変形例の静電チャック100は、第1実施形態の静電チャック100と比較して、ドライバ電極60のドライバライン部611の構成が異なっている。第1実施形態の変形例の静電チャック100では、ドライバパッド部621が2つのドライバライン部611を有し、かつ、Z軸方向視で、2つのドライバライン部611は、いずれも第2の領域R2内に配置されている。具体的には、2つのドライバライン部611は、Z軸方向視で、第1のヒータパッド部521の中心点P0を通ると共に第4の仮想直線VL4とのなす角が40度である2つの仮想直線上にそれぞれ配置されている。なお、ドライバライン部611がZ軸方向視である仮想直線上に配置されているとは、ドライバライン部611の軸線がある仮想直線上に位置していることを意味する。第1実施形態の変形例において、2つのドライバライン部611は同一の形状である。
【0052】
以上説明したように、第1実施形態の変形例の静電チャック100では、ドライバ電極60は、2つのドライバライン部611を有し、2つのドライバライン部611は、いずれも第4の仮想直線VL4により区切られた2つの領域の内、ヒータライン部511を含む領域とは異なる領域R2内に配置される。従って、第1実施形態の変形例の静電チャック100は、このような構成を有しているため、セラミックス部材10の吸着面S1において、特定領域Rxの内の特に低温の温度特異点となりやすい2つの部分が低温の温度特異点となることを効果的に抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を効果的に向上させることができる。
【0053】
B.第2実施形態:
B-1.静電チャック100Aの構成
図9は、第2実施形態の静電チャック100Aにおけるヒータ電極50およびドライバ電極60A,60Bの位置関係を示す説明図である。
図9には、
図2のX1部に対応する部分における静電チャック100AのXZ断面構成が示されている。
図10は、第2実施形態の静電チャック100Aにおける第1のヒータパッド部521とドライバライン部611A,611Bとの位置関係を示す説明図である。
図10のA欄には、
図9のXA-XAの位置におけるヒータ電極50のX3部(
図5参照)のXY断面構成が示されている。
図10(B)には、
図9のXB-XBの位置における第1のドライバ電極60AのZ軸方向視でのX3部(
図5参照)のXY断面構成が示されている。
図10(C)には、
図9のXC-XCの位置における第2のドライバ電極60BのZ軸方向視でのX3部(
図5参照)のXY断面構成が示されている。以下では、第2実施形態の静電チャック100Aの構成の内、上述した第1実施形態の静電チャック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0054】
図9に示すように、第2実施形態の静電チャック100Aは、第1実施形態の静電チャック100と比較して、Z軸方向において、互いに位置の異なる2つのドライバ電極60(第1のドライバ電極60Aおよび第2のドライバ電極60B)を備える点が異なっている。
【0055】
B-2.第1のドライバ電極60Aの詳細構成:
図9に示すように、第1のドライバ電極60Aは、Z軸方向において、ヒータ電極50と異なる位置であって、ヒータ電極50とセラミックス部材10の下面S2との間に備えられている。第1のドライバ電極60Aは、第1実施形態のドライバ電極60と比較して、第1のドライバライン部611Aがドライバライン部611と異なる位置に配置されていること、および、第1のドライバ電極60Aが第2のドライバ電極60Bに電気的に接続していること、を除き同一の構成である。具体的には、
図9および
図10(B)に示すように、第1のドライバ電極60Aは、第1のドライバライン部611Aと第1のドライバパッド部621Aと第1の周辺部631Aとを有する。第2実施形態において、第1のドライバライン部611Aは、Z軸方向視で、第2の領域R2内に配置されている。具体的には、第1のドライバライン部611Aは、Z軸方向視で、第1のヒータパッド部521の中心点P0を通ると共に第4の仮想直線VL4とのなす角が40度である2つの仮想直線の内の一の仮想直線上に配置されている。また、第1のドライバ電極60Aは、第1のヒータ側ビア721を介してヒータ電極50に電気的に接続され、かつ、ドライバ電極側ビア751を介して第2のドライバ電極60Bに電気的に接続されている。
【0056】
B-3.第2のドライバ電極60Bの詳細構成:
図9に示すように、第2のドライバ電極60Bは、Z軸方向において、ヒータ電極50および第1のドライバ電極60Aと異なる位置であって、第1のドライバ電極60Aとセラミックス部材10の下面S2との間に備えられている。
図9および
図10(C)に示すように、第2のドライバ電極60Bは、第2のドライバライン部611Bと第1の導電部621B(以下、「第2のドライバパッド部621B」ともいう)と第2の導電部631B(以下、「第2の周辺部631B」ともいう)とを有する。第2のドライバライン部611Bは、Z軸方向視で線状である。第2実施形態において、第2のドライバライン部611Bは、Z軸方向視で、第2の領域R2内における第1のヒータパッド部521の周囲であって、第1のドライバライン部611Aおよびヒータライン部511の位置と異なる位置に配置されている。具体的には、第2のドライバライン部611Bは、Z軸方向視で、第1のヒータパッド部521の中心点P0を通ると共に第4の仮想直線VL4とのなす角が40度である2つの仮想直線の内の第1のドライバライン部611Aが配置されている仮想直線と異なる他方の仮想直線上に配置されている。第2のドライバパッド部621Bは、第2のドライバライン部611Bの一方の端部に接続されており、第2のドライバパッド部621Bの一部が、Z軸方向視で第1のヒータパッド部521および第1のドライバパッド部621Aに重なる位置に配置されている。第2のドライバパッド部621Bの形状は、例えば、Z軸方向視で略円形である。第2実施形態において、第2のドライバパッド部621Bは、Z軸方向視において、第1のヒータパッド部521と略同一の直径を有する略円形であり、第2のドライバパッド部621Bの中心点は第1のヒータパッド部521の中心点および第1のドライバパッド部621Aの中心点から略Y軸正方向にずれた位置に位置している。また、Z軸方向視において、第2のドライバライン部611Bの幅は、第2のドライバパッド部621Bおよび第2の周辺部631Bの幅より小さく、かつ、第1のドライバライン部611Aと略同一である。一方、Z軸方向視において、第2のドライバライン部611Bの長さは、第1のドライバライン部611Aの長さより長い。
【0057】
第2の周辺部631Bは、第2のドライバパッド部621Bの周りを囲み、かつ、第2のドライバパッド部621Bから離れて配置されており、第2のドライバライン部611Bの他方の端部と接続している。第2実施形態において、第2のドライバパッド部621Bと第2の周辺部631Bとの間のうち、第2のドライバライン部611Bが配置された部分を除く部分に第2の離隔部651Bが形成されている。すなわち、第2のドライバパッド部621Bは、第2のドライバライン部611Bが接続された部分以外の部分において第2の周辺部631Bと接していない。また、第2のドライバ電極60Bは、ドライバ電極側ビア751を介して第1のドライバ電極60Aに電気的に接続され、かつ、第1の給電側ビア711Aを介して第1の給電端子741に電気的に接続されている。
【0058】
B-4.ヒータ電極50への給電のための詳細構成:
次に、ヒータ電極50への給電のための構成について詳述する。
【0059】
図9に示すように、第2実施形態の静電チャック100Aは、ヒータ電極50への給電のための構成として、第1の給電端子741とヒータ電極50との間に、第1の電極パッド731、第1の給電側ビア711A、第2のドライバ電極60B、ドライバ電極側ビア751、第1のドライバ電極60Aおよび第1のヒータ側ビア721を備えている。第2実施形態の静電チャック100Aにおいて、第2の給電端子742とヒータ電極50との間に備えられる各構成は、第1の実施形態の静電チャック100と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
第2実施形態において、具体的に、ヒータ電極50について説明すると、
図4および
図9に示すように、ヒータ電極50の第1のヒータパッド部521は、第1のヒータ側ビア721の一方の端部に接合されている。第1のヒータ側ビア721の他方の端部は、第1のドライバ電極60Aの第1のドライバパッド部621Aに接合されている。ドライバ電極側ビア751の一方の端部は、第1のドライバ電極60Aの第1の周辺部631Aに接合されている。ドライバ電極側ビア751の他方の端部は、第2のドライバ電極60Bの第2の周辺部631Bに接合されている。第1の給電側ビア711Aの一方の端部は、第2のドライバパッド部621Bに接合されている。第1の給電端子741は、第1の電極パッド731に接合されている。また、第1の電極パッド731は、第1の給電側ビア711Aの他方の端部に接合されている。また、ドライバ電極側ビア751は、導電性材料により形成されている。ドライバ電極側ビア751は、単数のビアで構成されている(
図9参照)。他のヒータ電極50についても、ヒータ電極50と同様であるため、説明を省略する。
【0061】
このような構成において、第1の給電端子741および第2の給電端子742が、電源(図示せず)に接続されると、上述の通り、ヒータ電極50が発熱する。例えば、第1の給電端子741が電源の正極に接続される場合には、第1の給電側ビア711Aを介して第2のドライバ電極60Bの第2のドライバパッド部621Bに電流が供給される。第2のドライバパッド部621Bに供給された電流は、第2のドライバライン部611B、第2の周辺部631B、ドライバ電極側ビア751を介して第1のドライバ電極60Aの第1の周辺部631Aに供給される。第1の周辺部631Aに供給された電流は、第1のドライバライン部611A、第1のドライバパッド部621A、第1のヒータ側ビア721を介してヒータ電極50に供給される。すなわち、ヒータ電極50およびドライバライン部611A,611Bが発熱し、ヒータ電極50が配置されたセグメントSEが加熱される。これにより、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御(すなわち、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御)が実現される。このとき、ドライバライン部611A,611Bは、周辺部631A,631Bおよびドライバパッド部621A,621Bに比べて電気抵抗が高いため発熱する。
【0062】
B-5.第2実施形態の効果:
以上説明したように、第2実施形態の静電チャック100は、セラミックス部材10の内部に配置され、Z軸方向においてヒータ電極50および第1のドライバ電極60Aと異なる位置に配置された第2のドライバ電極60Bをさらに備える。第2のドライバ電極60Bは、第1の給電端子741に電気的に接続された第2のドライバパッド部621Bと、第1のドライバ電極60Aを介して、ヒータ電極50に電気的に接続された第2の周辺部631Bとを有する。また、第2のドライバ電極60Bは、Z軸方向視で線状であり、かつ、第2のドライバパッド部621Bおよび第2の周辺部631Bより幅の小さい第2のドライバライン部611Bを有する。第2のドライバライン部611Bの一方の端部は第2のドライバパッド部621Bに接続され、かつ、第2のドライバライン部611Bの他方の端部は第2の周辺部631Bに接続されている。また、第2のドライバライン部611Bは、Z軸方向視で、第1のヒータパッド部521の周囲であって、第1のドライバライン部611Aおよびヒータライン部511の位置とは異なる位置に配置されている。第2のドライバ電極60Bにおける第2のドライバライン部611Bは、上述の第1のドライバライン部611Aと同様に、Z軸方向視で第2のドライバパッド部621Bより幅が小さいため、第2のドライバライン部611Bに電流I1が流れることにより発熱する。また、ドライバパッド部621A,621Bには、それぞれ、一のドライバライン部611A,611Bが接続されている。すなわち、周辺部631A,631Bとドライバパッド部621A,621Bとの間を流れる電流は、分岐することなくドライバライン部611A,611Bのみを流れるため、ドライバライン部611A,611Bは、それぞれ、効果的に発熱する。さらに、第2のドライバライン部611Bは、Z軸方向視で第1のドライバライン部611Aおよびヒータライン部511の位置とは異なる位置、すなわち、第1のドライバライン部611Aおよびヒータライン部511と重ならない位置に配置されている。従って、第2実施形態の静電チャック100Aによれば、セラミックス部材10の吸着面S1において、特定領域Rxの内の低温の温度特異点となりやすい2つの部分が低温の温度特異点となることを効果的に抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を効果的に向上させることができる。
【0063】
B-6.第2実施形態の第1変形例:
第2実施形態の第1変形例の静電チャック100Bは、第2実施形態の静電チャック100Aと比較して、Z軸方向における、ヒータ電極50、第1のドライバ電極60Aおよび第2のドライバ電極60Bの配置が異なっている。具体的には、第2実施形態では、第1のドライバ電極60Aは、Z軸方向において、ヒータ電極50と異なる位置であって、ヒータ電極50とセラミックス部材10の上面S1との間に備えられている。また、第2のドライバ電極60Bは、Z軸方向において、ヒータ電極50および第1のドライバ電極60Aと異なる位置であって、第1のドライバ電極60Aとセラミックス部材10の上面S1との間に備えられている。
【0064】
第2実施形態の第1変形例の静電チャック100Bは、ヒータ電極50への給電のための構成として、第2実施形態と同様に、第1の給電端子741とヒータ電極50との間に、第1の電極パッド731、第1の給電側ビア711A、第2のドライバ電極60B、ドライバ電極側ビア751、第1のドライバ電極60Aおよび第1のヒータ側ビア721を備えている。第2実施形態の第1変形例の静電チャック100Bにおいて、第1の給電端子741とヒータ電極50との間の各構成の接合関係および電流の流れは、第2実施形態の静電チャック100Aと同様であるため、説明を省略する。
【0065】
以上説明したように、第2実施形態の第1変形例の静電チャック100Bでは、第2実施形態の静電チャック100Aと同様に、第2のドライバライン部611Bが、Z軸方向視で、第1のヒータパッド部521の周囲であって、第1のドライバライン部611Aおよびヒータライン部511の位置とは異なる位置に配置されている。従って、第2実施形態の第1変形例の静電チャック100Bによれば、第2実施形態の静電チャック100Aと同様に、セラミックス部材10の吸着面S1において、特定領域Rxの内の低温の温度特異点となりやすい2つの部分が低温の温度特異点となることを効果的に抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を効果的に向上させることができる。
【0066】
B-7.第2実施形態の第2変形例:
第2実施形態の第2変形例の静電チャック100Cは、第2実施形態の静電チャック100Aと比較して、第2のドライバ電極60Bが第1のドライバ電極60Aの電流回路とは異なる電流回路を備える点が異なっている。具体的には、第2実施形態の第2変形例の静電チャック100Cは、第2のドライバ電極60Bに電気的に接続されている第1の給電端子741に加えて、第1の給電端子741と異なる第1の給電端子741Bであって、第1のドライバ電極60Aに電気的に接続されている第1の給電端子741Bをさらに備えている。第1の給電端子741Bは、第1の電極パッド731Bおよび第1の給電側ビア711Bを介して、第1のドライバ電極60Aに電気的に接続されている。また、静電チャック100Cにおいては、第1のドライバ電極60Aと第2のドライバ電極60Bとを電気的に接続するドライバ電極側ビア751は配置されない。
【0067】
以上説明したように、第2実施形態の第2変形例の静電チャック100Cでは、第2実施形態の静電チャック100Aと同様に、第2のドライバライン部611Bが、Z軸方向視で、第1のヒータパッド部521の周囲であって、第1のドライバライン部611Aおよびヒータライン部511の位置とは異なる位置に配置されている。さらに、第2実施形態の第2変形例の静電チャック100Cでは、第2のドライバ電極60Bは、第1のドライバ電極60Aと異なる電流回路を有している。そのため、第1のドライバ電極60Aの第1のドライバライン部611Aと第2のドライバ電極60Bの第2のドライバライン部611Bとを別個に温度制御することができる。従って、第2実施形態の第2変形例の静電チャック100Cによれば、セラミックス部材10の吸着面S1において、特定領域Rxの内の低温の温度特異点となりやすい2つの部分が低温の温度特異点となることを効果的に抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を効果的に向上させることができる。
【0068】
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0069】
静電チャック100を構成する各部材を形成する材料は、あくまで一例であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
【0070】
上記実施形態において、第1の給電側ビア711の一方の端部は、ドライバ電極60の周辺部631に接合されている構成が採用されているが、これに限定されず、周辺部631を介してドライバパッド部621に電気的に接続するドライバ電極60の他の部分に接合される構成であってもよい。
【0071】
上記実施形態において、一のドライバ電極60が本発明のドライバパッド部621およびドライバライン部611を備える構成が採用されているが、これに限定されず、少なくとも一の他のドライバ電極60についても、本発明のドライバパッド部621およびドライバライン部611を備える構成であってもよい。
【0072】
上記実施形態において、各パッドは、略円形で構成されているが、これに限定されず、ビアとの接合のために十分な大きさおよび形状であってもよい。
【0073】
上記実施形態において、各ビアは、単数のビアにより構成されているが、これに限定されず、複数のビアのグループにより構成されてもよい。また、上記実施形態において、各ビアは、ビア部分のみからなる単層構成であってもよいし、複数層構成(例えば、ビア部分とパッド部分とビア部分とが積層された構成)であってもよい。
【0074】
上記実施形態において、一のドライバパッド部621には、1または2のドライバライン部611が接続する構成が採用されているが、これに限定されず、2または3以上のドライバライン部611が接続される構成であってもよい。
【0075】
上記実施形態において、ドライバライン部611は、第2の領域R2内に配置される構成が採用されているが、これに限定されず、第1の領域R1の内、第2の領域R2以外の領域に配置される構成であってもよい。
【0076】
上記実施形態において、ドライバパッド部621の形状は第1のヒータパッド部521と同一であり、ドライバパッド部621は第1のヒータパッド部521に略全面に亘って重なっている構成が採用されているが、これに限定されず、Z軸方向視で、ドライバライン部611が特定領域Rxに配置される構成である限りにおいて、ドライバパッド部621の一部が第1のヒータパッド部521に重なる構成であってもよい。
【0077】
上記実施形態において、一の第1のヒータパッド部521に対して、複数のドライバライン部611が備えられる場合に、当該複数のドライバライン部611の形状は同一であってもよく、または、それぞれが異なっていてもよい。すなわち、複数のドライバライン部611の幅や長さ等がそれぞれ異なっていてもよい。具体的には、セラミックス部材10の吸着面S1のうち特に低温の温度特異点となる部分については、ドライバライン部611がより高温で発熱するよう、ドライバライン部611の幅を小さく(抵抗を高く)することができる。
【0078】
上記第2実施形態において、第2のドライバパッド部621Bの中心点が第1のヒータパッド部521の中心点からずれた位置に位置することにより、第2のドライバライン部611Bの一部が、Z軸方向視で、第1のヒータパッド部521に重なる構成が採用されているが、これに限定されない。例えば、第2のドライバパッド部621Bの中心点を第1のヒータパッド部521の中心点と一致させることにより第2のドライバライン部611Bが第1のヒータパッド部521に重ならない構成としてもよい。
【0079】
上記第2実施形態の第1変形例において、第1のドライバ電極60Aと第2のドライバ電極60Bとは、第1のドライバ電極60Aの第1の周辺部631Aと第2のドライバ電極60Bの第2の周辺部631Bとがドライバ電極側ビア751を介して電気的に接続されている構成が採用されているが、これに限定されない。例えば、第1のドライバ電極60Aの第1のドライバパッド部621Aと第2のドライバ電極60Bの第2のドライバパッド部621Bとがドライバ電極側ビア751を介して電気的に接続される構成であってもよい。
【0080】
上記実施形態において、ヒータ電極50の第1のヒータパッド部521について、Z軸方向視でドライバライン部611が配置されている構成が採用されているが、これに限定されず、第2のヒータパッド部522についても同様の構成となっていてもよい。
【0081】
上記実施形態におけるセグメントSEの設定態様は、任意に変更可能である。例えば、上記実施形態では、各セグメントSEが吸着面S1の円周方向CDに並ぶように複数のセグメントSEが設定されているが、各セグメントSEが格子状に並ぶように複数のセグメントSEが設定されてもよい。また、例えば、上記実施形態では、静電チャック100の全体が複数のセグメントSEに仮想的に分割されているが、静電チャック100の一部分が複数のセグメントSEに仮想的に分割されていてもよい。また、静電チャック100において、必ずしもセグメントSEが設定されている必要はない。
【0082】
上記実施形態において、セラミックス部材10の内部に1つのチャック電極40が設けられた単極方式が採用されているが、セラミックス部材10の内部に一対のチャック電極40が設けられた双極方式が採用されてもよい。また、上記実施形態の静電チャック100における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
【0083】
また、本発明は、セラミックス部材10とベース部材20とを備え、静電引力を利用してウェハWを保持する静電チャック100に限らず、セラミックス部材を備え、セラミックス部材の表面上に対象物を保持する他の保持装置(例えば、CVDヒータ等のヒータ装置や真空チャック等)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
10:セラミックス部材 12:凹部 20:ベース部材 21:冷媒流路 22:貫通孔 30:接合部 32:貫通孔 40:チャック電極 50:ヒータ電極 60:ドライバ電極 60A:第1のドライバ電極 60B:第2のドライバ電極 100:静電チャック 100A:静電チャック 100B:静電チャック 100C:静電チャック 110:第1の端子用孔 120:第2の端子用孔 511:ヒータライン部 521:第1のヒータパッド部 522:第2のヒータパッド部 611:ドライバライン部 611A:第1のドライバライン部 611B:第2のドライバライン部 621:ドライバパッド部 621A:第1のドライバパッド部 621B:第2のドライバパッド部(第1の導電部) 631:周辺部 631A:第1の周辺部 631B:第2の周辺部(第2の導電部) 651:離隔部 651B:第2の離隔部 711:第1の給電側ビア 711A:第1の給電側ビア 711B:第1の給電側ビア 712:第2の給電側ビア 721:第1のヒータ側ビア 722:第2のヒータ側ビア 731:第1の電極パッド 731B:第1の電極パッド 732:第2の電極パッド 741:第1の給電端子(給電端子) 741B:第1の給電端子 742:第2の給電端子 751:ドライバ電極側ビア