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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】ぶれ補正装置及びぶれ補正方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20220202BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20220202BHJP
   G01C 19/00 20130101ALI20220202BHJP
【FI】
H04N5/232 480
G03B5/00 J
G01C19/00 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018051858
(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公開番号】P2019165344
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】321001056
【氏名又は名称】OMデジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 仁司
【審査官】津幡 貴生
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-171043(JP,A)
【文献】特開2013-015571(JP,A)
【文献】特開平08-261761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222-257
G03B 5/00
G01C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を含む装置の第1の回転方向の角速度を検出する第1の角速度センサと、
前記装置の第2の回転方向の角速度を検出する第2の角速度センサと、
前記装置に対する重力方向を検出する重力センサと、
前記重力センサが検出した重力方向に基づいて、前記装置の姿勢を検出する姿勢検出部と、
前記装置の緯度に基づいて、地球の自転に因り前記装置に生じる、鉛直方向の軸を回転軸とする回転運動の角速度を、第1の自転オフセット量として算出する第1の算出部と、
前記装置の緯度と前記光学系の光軸方向の方位とに基づいて、前記自転に因り前記装置に生じる、前記鉛直方向の軸と直交する軸を回転軸とする回転運動の角速度を、第2の自転オフセット量として算出する第2の算出部と、
前記姿勢検出部が検出した姿勢が第1の姿勢である場合は、前記第1の角速度センサが検出した角速度から前記第1の自転オフセット量を減算し、前記姿勢検出部が検出した姿勢が第2の姿勢である場合は、前記第1の角速度センサが検出した角速度から前記第2の自転オフセット量を減算する第1の減算部と、
前記姿勢検出部が検出した姿勢が前記第1の姿勢である場合は、前記第2の角速度センサが検出した角速度から前記第2の自転オフセット量を減算し、前記姿勢検出部が検出した姿勢が前記第2の姿勢である場合は、前記第2の角速度センサが検出した角速度から前記第1の自転オフセット量を減算する第2の減算部と、
を備え、
前記第1の回転方向の回転軸と前記第2の回転方向の回転軸は直交し、
前記第1の姿勢は、前記鉛直方向の軸に対する、前記第1の回転方向の回転軸の傾きが所定の角度範囲内であるときの姿勢であり、
前記第2の姿勢は、前記鉛直方向の軸に対する、前記第2の回転方向の回転軸の傾きが所定の角度範囲内であるときの姿勢である、
ことを特徴とするぶれ補正装置。
【請求項2】
前記第1の角速度センサが検出した角速度に基づいて、前記装置の前記第1の回転方向の姿勢変化が所定期間連続して無かったか否か判定する第1の判定部と、
前記第2の角速度センサが検出した角速度に基づいて、前記装置の前記第2の回転方向の姿勢変化が前記所定期間連続して無かったか否か判定する第2の判定部と、
前記第1の判定部の判定結果に基づいて、前記第1の角速度センサが検出した角速度から減算される第1の基準値を算出する第1の基準値算出部と、
前記第2の判定部の判定結果に基づいて、前記第2の角速度センサが検出した角速度から減算される第2の基準値を算出する第2の基準値算出部と、
を更に備え、
前記第1の基準値算出部は、前記装置の前記第1の回転方向の姿勢変化が前記所定期間連続して無かったと前記第1の判定部が判定した場合に、前記所定期間に前記第1の角速度センサが検出した角速度の各々から前記第1の自転オフセット量又は前記第2の自転オフセット量を減算した結果に基づいて前記第1の基準値を算出し、
前記第2の基準値算出部は、前記装置の前記第2の回転方向の姿勢変化が前記所定期間連続して無かったと前記第2の判定部が判定した場合に、前記所定期間に前記第2の角速度センサが検出した角速度の各々から前記第1の自転オフセット量又は前記第2の自転オフセット量を減算した結果に基づいて前記第2の基準値を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のぶれ補正装置。
【請求項3】
前記装置の緯度を入力する入力部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のぶれ補正装置。
【請求項4】
前記装置の緯度を選択する選択部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のぶれ補正装置。
【請求項5】
前記装置の緯度を検出する緯度検出部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のぶれ補正装置。
【請求項6】
前記緯度検出部は、GPS受信装置である、
ことを特徴とする請求項5記載のぶれ補正装置。
【請求項7】
外部装置と通信を行う通信部を更に備え、
前記通信部は、前記装置の緯度を前記外部装置から受信する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のぶれ補正装置。
【請求項8】
前記光学系の光軸方向の方位を検出する方位センサを更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載のぶれ補正装置。
【請求項9】
前記第1の角速度センサが検出した角速度を補正するための第1の補正係数を算出する第1の補正係数算出部と、
前記第2の角速度センサが検出した角速度を補正するための第2の補正係数を算出する第2の補正係数算出部と、
を更に備え、
前記第1の補正係数算出部は、回転装置が備える回転部の回転軸が緯線と平行になるという目的で前記回転装置が設置されると共に、前記回転部の回転軸と前記第1の回転方向の回転軸とが平行になるという目的で前記ぶれ補正装置が前記回転部に固定された後に、前記回転装置が前記回転部を回転させたときの前記第1の角速度センサが検出した角速度に基づいて前記第1の補正係数を算出し、
前記第2の補正係数算出部は、前記回転部の回転軸が緯線と平行になるという目的で前記回転装置が設置されると共に、前記回転部の回転軸と前記第2の回転方向の回転軸とが平行になるという目的で前記ぶれ補正装置が前記回転部に固定された後に、前記回転装置が前記回転部を回転させたときの前記第2の角速度センサが検出した角速度に基づいて前記第2の補正係数を算出する、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載のぶれ補正装置。
【請求項10】
前記装置は、前記ぶれ補正装置を備えた撮像装置である、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1つに記載のぶれ補正装置。
【請求項11】
前記第1の回転方向は、Yaw方向であり、
前記第2の回転方向は、Pitch方向である、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1つに記載のぶれ補正装置。
【請求項12】
光学系を含む装置の第1の回転方向の角速度を検出することと、
前記装置の第2の回転方向の角速度を検出することと、
前記装置に対する重力方向を検出することと、
検出した前記重力方向に基づいて、前記装置の姿勢を検出することと、
前記装置の緯度に基づいて、地球の自転に因り前記装置に生じる、鉛直方向の軸を回転軸とする回転運動の角速度を、第1の自転オフセット量として算出することと、
前記装置の緯度と前記光学系の光軸方向の方位とに基づいて、前記自転に因り前記装置に生じる、前記鉛直方向の軸と直交する軸を回転軸とする回転運動の角速度を、第2の自転オフセット量として算出することと、
検出した前記姿勢が第1の姿勢である場合は、前記第1の回転方向の角速度から前記第1の自転オフセット量を減算し、検出した前記姿勢が第2の姿勢である場合は、前記第1の回転方向の角速度から前記第2の自転オフセット量を減算するここと、
検出した前記姿勢が前記第1の姿勢である場合は、前記第2の回転方向の角速度から前記第2の自転オフセット量を減算し、検出した前記姿勢が前記第2の姿勢である場合は、前記第2の回転方向の角速度から前記第1の自転オフセット量を減算することと、
を含み、
前記第1の回転方向の回転軸と前記第2の回転方向の回転軸は直交し、
前記第1の姿勢は、前記鉛直方向の軸に対する、前記第1の回転方向の回転軸の傾きが所定の角度範囲内であるときの姿勢であり、
前記第2の姿勢は、前記鉛直方向の軸に対する、前記第2の回転方向の回転軸の傾きが所定の角度範囲内であるときの姿勢である、
ことを特徴とするぶれ補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系を含む装置の揺れを検出し、検出した揺れにより生じる像ぶれを補正するぶれ補正装置及びぶれ補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラの手ぶれ補正機能は着実に進歩している。手ぶれ限界となるシャッタースピードに対して、5段分のシャッタースピード段数を超える手ぶれ補正性能を達成したデジタルカメラも登場してきている。以下では、デジタルカメラを単に「カメラ」という。
【0003】
この要因の一つとして、装置の揺れを検出するセンサの性能向上に因る検出精度の向上がある。
一般的に、手ぶれ補正に使用されるジャイロセンサは、様々な要因に因って、ドリフトと呼ばれる検出結果の揺らぎやオフセット変動を生じる。そこで、これを抑制することに依り検出精度を向上させることができる。
【0004】
検出精度を向上させる技術の一例として、特許文献1に開示されたぶれ検出装置が知られている。このぶれ検出装置では、第1の基準値演算部が、ぶれ検出部が出力したぶれ検出信号に含まれるドリフト成分を演算し、このドリフト成分をぶれ検出信号の第1の基準値として出力する。また、第2の基準値演算部は、ぶれ検出部が出力したぶれ検出信号とドリフト成分との差分を演算することに依り、ぶれ検出信号の第2の基準値を演算して出力する。また、基準値選択部は、ぶれ検出部がぶれ検出信号の出力を開始してからの経過時間が所定時間に満たないときには、上記第1の基準値を選択し、その経過時間が所定時間以上であるときには、上記第2の基準値を選択する。そして、基準値選択部が選択した基準値が、ぶれ補正制御の基準値とされる。これに依り、ドリフトの影響に因って基準値の演算誤差が増大するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4051738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、ジャイロセンサは、装置の回転運動を検出するため、検出精度が向上していくと、地球の自転に因る回転運動の影響を無視できなくなる。
手ぶれ補正の場合、カメラ及び被写体双方が地球上にあるため、地球の自転に因る回転運動が生じても、カメラと被写体との相対位置関係は変化しない。そのため、カメラが検出した、地球の自転に因る回転成分を補正してしまうと、誤補正となってしまう。
【0007】
ここで、地球の自転が手ぶれ補正にどの程度の影響を与えるかを考える。
地球の自転は、0.004167dpsであるので、焦点距離100mmの光学系で撮影した場合は、1秒間当たりに約7.3μmの像移動が発生する。その結果、撮像素子の画素ピッチに依っては、1ピクセル以上の像ぶれを生じる。なお、dpsは、degree per secondの略称である。
【0008】
本発明は、上記実状に鑑み、手ぶれ補正に使用されるセンサの検出精度が極限まで向上した場合に問題となる、地球の自転に因る影響を除去し、手ぶれ補正性能を向上させることができるぶれ補正装置及びぶれ補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、ぶれ補正装置であって、光学系を含む装置の第1の回転方向の角速度を検出する第1の角速度センサと、前記装置の第2の回転方向の角速度を検出する第2の角速度センサと、前記装置に対する重力方向を検出する重力センサと、前記重力センサが検出した重力方向に基づいて、前記装置の姿勢を検出する姿勢検出部と、前記装置の緯度に基づいて、地球の自転に因り前記装置に生じる、鉛直方向の軸を回転軸とする回転運動の角速度を、第1の自転オフセット量として算出する第1の算出部と、前記装置の緯度と前記光学系の光軸方向の方位とに基づいて、前記自転に因り前記装置に生じる、前記鉛直方向の軸と直交する軸を回転軸とする回転運動の角速度を、第2の自転オフセット量として算出する第2の算出部と、前記姿勢検出部が検出した姿勢が第1の姿勢である場合は、前記第1の角速度センサが検出した角速度から前記第1の自転オフセット量を減算し、前記姿勢検出部が検出した姿勢が第2の姿勢である場合は、前記第1の角速度センサが検出した角速度から前記第2の自転オフセット量を減算する第1の減算部と、前記姿勢検出部が検出した姿勢が前記第1の姿勢である場合は、前記第2の角速度センサが検出した角速度から前記第2の自転オフセット量を減算し、前記姿勢検出部が検出した姿勢が前記第2の姿勢である場合は、前記第2の角速度センサが検出した角速度から前記第1の自転オフセット量を減算する第2の減算部と、を備え、前記第1の回転方向の回転軸と前記第2の回転方向の回転軸は直交し、前記第1の姿勢は、前記鉛直方向の軸に対する、前記第1の回転方向の回転軸の傾きが所定の角度範囲内であるときの姿勢であり、前記第2の姿勢は、前記鉛直方向の軸に対する、前記第2の回転方向の回転軸の傾きが所定の角度範囲内であるときの姿勢である、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記第1の角速度センサが検出した角速度に基づいて、前記装置の前記第1の回転方向の姿勢変化が所定期間連続して無かったか否か判定する第1の判定部と、前記第2の角速度センサが検出した角速度に基づいて、前記装置の前記第2の回転方向の姿勢変化が前記所定期間連続して無かったか否か判定する第2の判定部と、前記第1の判定部の判定結果に基づいて、前記第1の角速度センサが検出した角速度から減算される第1の基準値を算出する第1の基準値算出部と、前記第2の判定部の判定結果に基づいて、前記第2の角速度センサが検出した角速度から減算される第2の基準値を算出する第2の基準値算出部と、を更に備え、前記第1の基準値算出部は、前記装置の前記第1の回転方向の姿勢変化が前記所定期間連続して無かったと前記第1の判定部が判定した場合に、前記所定期間に前記第1の角速度センサが検出した角速度の各々から前記第1の自転オフセット量又は前記第2の自転オフセット量を減算した結果に基づいて前記第1の基準値を算出し、前記第2の基準値算出部は、前記装置の前記第2の回転方向の姿勢変化が前記所定期間連続して無かったと前記第2の判定部が判定した場合に、前記所定期間に前記第2の角速度センサが検出した角速度の各々から前記第1の自転オフセット量又は前記第2の自転オフセット量を減算した結果に基づいて前記第2の基準値を算出する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記装置の緯度を入力する入力部を更に備える、ことを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第1又は2の態様において、前記装置の緯度を選択する選択部を更に備える、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1又は2の態様において、前記装置の緯度を検出する緯度検出部を更に備える、ことを特徴とする。
本発明の第6の態様は、第5の態様において、前記緯度検出部は、GPS受信装置である、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の第7の態様は、第1又は2の態様において、外部装置と通信を行う通信部を更に備え、前記通信部は、前記装置の緯度を前記外部装置から受信する、ことを特徴とする。
本発明の第8の態様は、第1乃至7のいずれか1つの態様において、前記光学系の光軸方向の方位を検出する方位センサを更に備える、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第9の態様は、第1乃至8のいずれか1つの態様において、前記第1の角速度センサが検出した角速度を補正するための第1の補正係数を算出する第1の補正係数算出部と、前記第2の角速度センサが検出した角速度を補正するための第2の補正係数を算出する第2の補正係数算出部と、を更に備え、前記第1の補正係数算出部は、回転装置が備える回転部の回転軸が緯線と平行になるという目的で前記回転装置が設置されると共に、前記回転部の回転軸と前記第1の回転方向の回転軸とが平行になるという目的で前記ぶれ補正装置が前記回転部に固定された後に、前記回転装置が前記回転部を回転させたときの前記第1の角速度センサが検出した角速度に基づいて前記第1の補正係数を算出し、前記第2の補正係数算出部は、前記回転部の回転軸が緯線と平行になるという目的で前記回転装置が設置されると共に、前記回転部の回転軸と前記第2の回転方向の回転軸とが平行になるという目的で前記ぶれ補正装置が前記回転部に固定された後に、前記回転装置が前記回転部を回転させたときの前記第2の角速度センサが検出した角速度に基づいて前記第2の補正係数を算出する、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の第10の態様は、第1乃至9のいずれか1つの態様において、前記装置は、前記ぶれ補正装置を備えた撮像装置である、ことを特徴とする。
本発明の第11の態様は、第1乃至10のいずれか1つの態様において、前記第1の回転方向は、Yaw方向であり、前記第2の回転方向は、Pitch方向である、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第12の態様は、ぶれ補正方法であって、光学系を含む装置の第1の回転方向の角速度を検出することと、前記装置の第2の回転方向の角速度を検出することと、前記装置に対する重力方向を検出することと、検出した前記重力方向に基づいて、前記装置の姿勢を検出することと、前記装置の緯度に基づいて、地球の自転に因り前記装置に生じる、鉛直方向の軸を回転軸とする回転運動の角速度を、第1の自転オフセット量として算出することと、前記装置の緯度と前記光学系の光軸方向の方位とに基づいて、前記自転に因り前記装置に生じる、前記鉛直方向の軸と直交する軸を回転軸とする回転運動の角速度を、第2の自転オフセット量として算出することと、検出した前記姿勢が第1の姿勢である場合は、前記第1の回転方向の角速度から前記第1の自転オフセット量を減算し、検出した前記姿勢が第2の姿勢である場合は、前記第1の回転方向の角速度から前記第2の自転オフセット量を減算するここと、検出した前記姿勢が前記第1の姿勢である場合は、前記第2の回転方向の角速度から前記第2の自転オフセット量を減算し、検出した前記姿勢が前記第2の姿勢である場合は、前記第2の回転方向の角速度から前記第1の自転オフセット量を減算することと、を含み、前記第1の回転方向の回転軸と前記第2の回転方向の回転軸は直交し、前記第1の姿勢は、前記鉛直方向の軸に対する、前記第1の回転方向の回転軸の傾きが所定の角度範囲内であるときの姿勢であり、前記第2の姿勢は、前記鉛直方向の軸に対する、前記第2の回転方向の回転軸の傾きが所定の角度範囲内であるときの姿勢である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、手ぶれ補正に使用されるセンサの検出精度が極限まで向上した場合に問題となる、地球の自転に因る影響を除去し、手ぶれ補正性能を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】地軸を含む、地球の断面を模式的に示す図である。
図2】カメラ光軸の方位と、地球の自転に因る、カメラのPitch方向及びRoll方向への影響の一例を示す図である。
図3】第1の実施形態に係るぶれ補正装置を備えた撮像装置であるカメラの構成例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係るぶれ補正マイコンの機能構成例を示す図である。
図5】自転オフセット算出部の機能構成例を示す図である。
図6】選択ルールの一例を示す図である。
図7】基準値算出部の機能構成例を示す図である。
図8】第1の実施形態の変形例に係るカメラの構成例を示す図である。
図9】第1の実施形態の他の変形例に係るカメラの構成例を示す図である。
図10A】設置方法の一例を示す図(その1)である。
図10B】設置方法の一例を示す図(その2)である。
図11】第2の実施形態に係るぶれ補正マイコンの機能構成例を示す図である。
図12】第2の実施形態に係るカメラの調整の流れを示すフローチャートである。
図13】設置方法の一例を示す図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
はじめに、本発明の実施形態の理解を容易にするため、地球の自転が及ぼす影響について、カメラを例に説明する。
【0020】
図1は、地軸を含む、地球の断面を模式的に示す図である。
図1において、緯度θlatitudeにおける自転の影響は、水平面に対してθlatitudeの傾きを持った回転軸周りの回転運動として現れる。この回転運動の回転ベクトルをRotationとして定義する。なお、図1では、図面スペースの都合から、θlatitudeを単に「θ」と記している。
【0021】
この回転ベクトルRotationは、垂直軸周りの回転ベクトルRot_vと、水平軸周りの回転ベクトルRot_hとに分解することができる。ここで、垂直軸周りとは、鉛直方向の軸を回転軸とする回転方向と言うこともできる。また、水平軸周りとは、鉛直方向の軸と垂直な軸を回転軸とする回転方向と言うこともできる。
【0022】
例えば、横構図の写真を撮影するためにカメラを水平に構えた場合、カメラのYaw方向の回転は一定の角速度となり、カメラのPitch方向及びRoll方向の回転は、カメラの光軸の方位に因って変動する。なお、この場合、カメラのYaw方向は、垂直軸周りでもあり、カメラのPitch方向及びRoll方向は、水平軸周りでもある。以下では、カメラの光軸を「カメラ光軸」ともいう。
【0023】
図2は、カメラ光軸の方位と、地球の自転に因る、カメラのPitch方向及びRoll方向への影響の一例を示す図である。
図2において、北を0°とした場合、子午線とカメラ光軸とのなす角度θdirectionから、水平軸周りの回転ベクトルRot_hを、カメラのPitch方向の回転ベクトルRot_pitchと、カメラのRoll方向の回転ベクトルRot_rollとに分解することができる。
【0024】
なお、カメラ光軸が北方向又は南方向を向いた場合は、水平軸周りの回転ベクトルRot_hの全成分が、カメラのRoll方向に影響し、カメラ光軸が東方向又は西方向を向いた場合は、水平軸周りの回転ベクトルRot_hの全成分が、カメラのPitch方向に影響する。
以上が、地球の自転がカメラに及ぼす影響である。
【0025】
ここで、実際の撮影において問題となるケースを考察する。
カメラにおいて、検出した角速度から精度良く像ぶれ量を検出するためには、基準値の算出精度が重要になる。以下では、検出した角速度を「検出角速度」ともいう。基準値は、カメラ静止時の検出角速度である。
【0026】
仮に、緯度とカメラ光軸の方位が一定であるとすると、地球の自転の影響が有る検出角速度から基準値を求め、地球の自転の影響が有る検出角速度から基準値を減算すれば、地球の自転の影響が除去され、問題とならない。
【0027】
一方、緯度は変化しないが、基準値を算出した時のカメラ光軸の方位と、手ぶれ補正を行う時のカメラ光軸の方位とが異なる場合は、カメラのPitch方向及びRoll方向への影響が異なるため、オフセット誤差を生じる。
【0028】
例えば、カメラ光軸が西向きの時に算出した基準値のまま、カメラ光軸を東向きにして撮影をした場合、カメラのPitch方向の回転ベクトルRot_pitchに対して、2倍の誤差が生じる。
【0029】
さらに、基準値を算出した地点の緯度に対し、撮影地点の緯度が大きく変化した場合も同様に誤差が生じる。
例えば、北緯30度の位置で基準値を算出した後、南緯30度に移動すると、カメラのYaw方向の回転ベクトルRot_yawに対して、約2倍の誤差を生じる。
【0030】
なお、この場合に、カメラのRoll方向の回転ベクトルRot_rollに関しては、撮影画像に像ぶれとして見えるほどの影響が無いため、特に問題とならない。
以上を踏まえ、以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
【0031】
図3は、第1の実施形態に係るぶれ補正装置を備えた撮像装置であるカメラの構成例を示す図である。但し、図3では、手ぶれ補正に関係する主な構成のみを図示し、その他の構成については図示を省略している。
【0032】
図3において、本実施形態に係るカメラ1は、光学系2、撮像素子3、駆動部4、システムコントローラ5、ぶれ補正マイコン6、角速度センサ7、加速度センサ8、方位センサ9、メモリ10、EVF11、及びSW12を備える。ここで、EVFは、electronic viewfinderの略称である。
【0033】
光学系2は、被写体からの光束を撮像素子3に結像する。被写体からの光束は、被写体像ともいう。図3では、説明の便宜上、光学系2を簡略化して示すが、実際には、フォーカスレンズやズームレンズを含む複数のレンズから光学系2が構成されている。
【0034】
撮像素子3は、光学系2に依り撮像面に結像された被写体像を電気信号に変換する。撮像素子3は、例えばCCD又はCMOS等のイメージセンサである。なお、CCDは、charge coupled deviceの略称であり、CMOSは、complementary metal oxide semiconductorの略称である。
【0035】
角速度センサ7は、カメラ1のYaw方向及びPitch方向の角速度を検出する。
加速度センサ8は、カメラ1のX軸、Y軸、及びZ軸の加速度を検出する。
ここで、X軸は、Yaw方向の回転軸でもあり、カメラ1の垂直方向の軸でもある。Y軸は、Pitch方向の回転軸でもあり、カメラ1の水平方向の軸でもある。Z軸は、光学系2の光軸でもある。
【0036】
方位センサ9は、地磁気を検出し、検出した地磁気に基づいて、光学系2の光軸の被写体側の向きの方位を検出する。
ぶれ補正マイコン6は、角速度センサ7、加速度センサ8、及び方位センサ9の各センサから検出結果を取得すると共に、システムコントローラ5から光学系2の焦点距離情報やカメラ1の緯度情報を取得する。そして、ぶれ補正マイコン6は、撮像素子3の撮像面に結像された被写体像のぶれを打ち消す方向に撮像素子3を移動させるために駆動部4を制御する。ぶれ補正マイコン6の詳細は、図4を用いて後述する。
【0037】
駆動部4は、ぶれ補正マイコン6の制御の下、撮像素子3を、光学系2の光軸に直交する面上において移動させる。駆動部4は、例えば、複数のアクチュエータ等から構成される。アクチュエータは、例えばVCMである。VCMは、Voice Coil Motorの略称である。
【0038】
EVF11は、撮影した静止画像や動画像、ライブビュー画像、各種のカメラ設定画面等を表示する。例えば、EVF11は、カメラ設定画面の1つとして、国設定画面を表示する。この国設定画面には、ユーザがカメラ1を使用する国として選択できる国が複数表示される。
【0039】
SW12は、ボタン操作等のユーザの各種の入力操作を検出し、システムコントローラ5へ通知する操作部である。例えば、SW12は、国設定画面における国の選択、決定の指示操作を検出し、システムコントローラへ通知する。
【0040】
メモリ10は、不揮発性のメモリであり、光学系2の特性情報や国別の緯度情報が予め記録されている。ここで、国別の緯度情報は、国別の標準緯度に関する情報である。
【0041】
システムコントローラ5は、カメラ1の全体動作を制御する。例えば、システムコントローラ5は、撮像素子3に依り変換された電気信号を映像データとして読み出し、その映像データをEVF11に表示すための画像処理を行う。また、例えば、システムコントローラ5は、光学系2の状態とメモリ10に記録されている光学系2の特性情報とに基づいて、焦点距離に相当する値を焦点距離情報としてぶれ補正マイコン6に通知する。また、例えば、システムコントローラ5は、メモリ10に記録されている国別の緯度情報に基づき、国設定画面においてユーザが選択、決定した国の標準緯度を、カメラ1の緯度情報としてぶれ補正マイコン6へ通知する。この場合、SW12の操作に依りユーザが選択、決定した国の標準緯度がカメラ1の緯度情報となることから、SW12は、カメラ1の緯度を選択する選択部の機能も担う、ということもできる。
【0042】
カメラ1において、システムコントローラ5及びぶれ補正マイコン6の各々は、例えば、CPU等のプロセッサとメモリを含み、プロセッサがメモリに記録されたプログラムを実行することに依り、システムコントローラ5及びぶれ補正マイコン6の各機能が実現される。あるいは、システムコントローラ5及びぶれ補正マイコン6の各々は、ASIC又はFPGA等の専用回路から構成されてもよい。なお、ASICは、application specific integrated circuitの略称であり、FPGAは、field-programmable gate arrayの略称である。
【0043】
図4は、ぶれ補正マイコン6の機能構成例を示す図である。
但し、図4では、角速度センサ7が検出した角速度に対する処理を行う機能構成として、角速度センサ7が検出したYaw方向及びPitch方向の一方の角速度に対する処理を行う機能構成のみを図示し、他方の角速度に対する処理を行う機能構成については、同様の機能構成となることから、図示を省略している。従って、実際には、図4に示した基準値算出部61、減算部62、減算部63、乗算部64、積算部65、及び補正量算出部からなる機能構成が2つ設けられている。
【0044】
また、角速度センサ7、加速度センサ8、及び方位センサ9の各センサの検出結果をぶれ補正マイコン6が取得する方法として、各センサが検出結果として出力したアナログ信号をぶれ補正マイコン6内にてAD変換する方法と、各センサ内にて検出結果をデジタル信号化した値を、ぶれ補正マイコン6がシリアル通信を用いて読み出す方法の2つがある。本実施形態では、この2つの方法のいずれを採用してもよく、また、いずれの方法も公知であるので、図示を省略している。
【0045】
図4において、ぶれ補正マイコン6は、基準値算出部61、減算部62、減算部63、乗算部64、積算部65、補正量算出部66、通信部67、方位検出部68、姿勢判定部69、及び自転オフセット算出部6Aを含む。
【0046】
通信部67は、システムコントローラ5と通信を行い、システムコントローラ5から焦点距離情報や緯度情報を取得する。そして、焦点距離情報を乗算部64へ出力し、緯度情報を自転オフセット算出部6Aへ出力する。
【0047】
方位検出部68は、方位センサ9が検出した方位を取得し、北を0°とした場合の、その方位を示す角度を算出する。
姿勢判定部69は、加速度センサ8から取得したX軸、Y軸、及びZ軸の加速度から1Gを検出し、カメラ1の姿勢が、「横構図」、「縦構図」、「上下」、及び「傾きあり」の4つの姿勢パターンのいずれであるかを、次の(1)乃至(4)の判定基準に従って判定する。ここで、1Gは、重力である。姿勢判定部69は、カメラ1の姿勢を検出する姿勢検出部の一例である。
(1)Y軸方向に1Gがあり、カメラ1の垂直方向の軸と1G方向の傾きが20°以内である場合は「横構図」とする。なお、この場合は、鉛直方向の軸に対する、カメラ1のYaw方向の回転軸の傾きが20°以内である場合でもある。
(2)X軸方向に1Gがあり、カメラ1の水平方向の軸と1G方向の傾きが20°以内である場合は「縦構図」とする。なお、この場合は、鉛直方向の軸に対する、カメラ1のPitch方向の回転軸の傾きが20°以内である場合でもある。
(3)Z軸方向に1Gがあり、光学系2の光軸と1G方向の傾きが20°以内である場合は「上下」とする。
(4)上記(1)乃至(3)のいずれにも該当しない場合は「傾きあり」とする。
【0048】
自転オフセット算出部6Aは、通信部67から取得した緯度情報が示す緯度、方位検出部68から取得した角度、及び姿勢判定部69が判定した姿勢に基づいて、カメラ1のYaw方向及びPitch方向に生じる自転オフセット量を算出する。自転オフセット算出部6Aの詳細は、図5を用いて後述する。
【0049】
基準値算出部61は、基準値を算出する。基準値算出部61の詳細は、図7を用いて後述する。
減算部62は、角速度センサ7から取得した角速度から、基準値算出部61が算出した基準値を減算する。
【0050】
減算部63は、減算部62の減算結果から、自転オフセット算出部6Aが算出した自転オフセット量を減算する。
乗算部64は、減算部63の減算結果に対し、通信部67が出力した焦点距離情報を乗算する。ここで、焦点距離情報は、焦点距離に相当する値である。
【0051】
積算部65は、乗算部64の乗算結果を時間積分することに依り、撮像素子3の撮像面に結像された被写体像のぶれ量を算出する。ここで、像移動量のぶれ量は、像移動量でもある。
補正量算出部66は、積算部65が算出した像移動量を打ち消す方向に撮像素子を移動させるための駆動部4の駆動量を算出し、駆動部4へ出力する。ここで、駆動部4の駆動量は、補正量でもある。
【0052】
図5は、自転オフセット算出部6Aの機能構成例を示す図である。
図5において、自転オフセット算出部6Aは、垂直軸周りオフセット算出部6A1、水平軸周りオフセット算出部6A2、方位補正部6A3、及びセレクタ6A4を備える。
【0053】
垂直軸周りオフセット算出部6A1は、通信部67が出力した緯度情報が示す緯度に基づいて、地球の自転に因り垂直軸周りに生じる角速度(Rot_v)を、下記式(1)を用いて算出する。
Rot_v = Rotation ×SIN(θlatitude) 式(1)
【0054】
水平軸周りオフセット算出部6A2は、通信部67が出力した緯度情報が示す緯度に基づいて、地球の自転に因り水平軸周りに生じる角速度(Rot_h)を、下記式(2)を用いて算出する。
Rot_h = Rotation ×COS(θlatitude) 式(2)
【0055】
上記式(1)及び(2)において、Rotationは、地球の自転角速度であり、θlatitudeは、緯度である。なお、地球の自転角速度は、0.004167dpsであり、Rot_v、Rot_h、θlatitude及びRotationは、図1に示したとおりである。
【0056】
方位補正部6A3は、水平軸周りオフセット算出部6A2の算出結果と、姿勢情報と、方位情報とに基づいて、Rot_pitchとRot_Rollを、下記式(3)、(4)を用いて算出する。ここで、姿勢情報は、姿勢判定部69の判定結果であり、方位情報は、方位検出部68の算出結果である。
Rot_pitch = Rot_h×SIN(θdirection) 式(3)
Rot_Roll = Rot_h×COS(θdirection) 式(4)
ここで、θdirectionは、姿勢判定部69の判定結果に応じて異なる。詳しくは、姿勢判定部69が判定した姿勢が「横構図」、「縦構図」、及び「傾きあり」のいずれかである場合は、θdirectionを、光学系2の光軸と子午線とがなす角度とする。この場合、「横構図」又は「縦構図」である場合のθdirectionは、方位検出部68が算出した角度ともなる。一方、姿勢判定部69が判定した姿勢が「上下」である場合は、θdirectionを、カメラ1の垂直軸と子午線とのなす角度とする。なお、カメラ1の垂直軸は、カメラ1のY軸でもある。
【0057】
セレクタ6A4は、姿勢情報に基づいて、垂直軸周りオフセット算出部6A1が算出したRot_vと、方位補正部6A3が算出したRot_pitch及びRot_Rollの中から、Yaw方向及びPitch方向の各方向の自転オフセット量とするものを、所定の選択ルールに従って選択し、出力する。ここで、姿勢情報は、姿勢判定部69の判定結果でもある。
【0058】
図6は、所定の選択ルールの一例を示す図である。
図6に示した選択ルールに依れば、姿勢判定部69の判定結果が「横構図」である場合は、セレクタ6A4が、Yaw方向の自転オフセット量としてRot_vを選択し、Pitch方向の自転オフセット量としてRot_pitchを選択する。一方、「縦構図」の姿勢である場合は、反対に、Yaw方向の自転オフセット量としてRot_pitchを選択し、Pitch方向の自転オフセット値としてRot_vを選択する。「上下」の姿勢である場合は、Yaw方向の自転オフセット値としてRot_rollを選択し、Pitch方向の自転オフセット量としてRot_pitchを選択する。「傾きあり」である場合は、カメラ1の傾きが大きいことから、自転オフセット量の減算及び自転オフセット量に基づく基準値算出を行わせないために、セレクタ6A4は、何も選択せずに、Yaw方向及びPitch方向の各方向の自転オフセット量として0を出力する。
【0059】
図7は、基準値算出部61の機能構成例を示す図である。
図7において、基準値算出部61は、減算部611、姿勢変動判定部612、平均値バッファ部613、及び基準値算出部614を備える。
【0060】
減算部611は、角速度センサ7から取得した角速度から、自転オフセット算出部6Aから出力された自転オフセット量を減算する。
平均値バッファ部613は、所定期間毎に、その所定期間における減算部611の減算結果の平均値を算出すると共に、最新の連続する複数の所定期間分の複数の平均値を保持する。ここで、所定期間は、例えば100msである。
【0061】
姿勢変動判定部612は、角速度センサ7から取得した角速度から、カメラ1の姿勢変化の有無を判定し、所定期間姿勢変化が無い場合に、基準値の算出指示を基準値算出部614へ出力する。ここで、所定期間は、例えば1秒以上である。
基準値算出部614は、姿勢変動判定部612からの算出指示の入力に応じて、平均値バッファ部613に保持された複数の平均値を更に平均化し、基準値として算出する。
【0062】
以上に述べてきた第1の実施形態に依れば、算出した基準値から自転に因る影響が除去され、且つ、検出した角速度からも自転に因る影響が除去される。従って、カメラ1の向きを変えたり、カメラ1の緯度が変化したりしても、自転の影響が完全に除去されるので、高精度なぶれ検出性能を維持することができる。
【0063】
なお、本実施形態において、システムコントローラ5がぶれ補正マイコン6へ通知する緯度情報は、国設定画面の代わりに設けた地域設定画面においてユーザが選択、決定した地域に基づくものとする構成としてもよい。この場合は、国別の緯度情報の代わりに地域別の緯度情報を予めメモリ10に記録させておけばよい。なお、この場合の地域は、例えば、国の領域を複数に分割したときの1領域とされる。
この構成に依れば、国設定画面において選択、決定する場合よりも、カメラ1の緯度を正確にすることができる。
【0064】
また、本実施形態において、システムコントローラ5がぶれ補正マイコン6へ通知する緯度情報が示す緯度は、SW12の操作に依りユーザが直接入力した緯度とする構成としてもよい。この場合、SW12は、カメラ1の緯度を入力する入力部の機能も担うことになる。
この構成に依れば、カメラ1の緯度をユーザが直接入力することができるので、国設定画面において選択、決定する場合よりも、カメラ1の緯度を正確にすることができる。
【0065】
また、本実施形態において、カメラ1は、図8に示すとおり、GPS受信装置13を更に備える構成としてもよい。なお、GPSは、Global Positioning Systemの略称である。GPS受信装置13は、複数のGPS衛星から発信された電波を受信することに依りカメラ1の現在位置の位置情報を算出し、システムコントローラ5へ通知する。そして、システムコントローラ5がぶれ補正マイコン6へ通知する緯度情報は、GPS受信装置13から通知された位置情報に含まれる緯度情報とする構成としてもよい。この場合、GPS受信装置13は、カメラ1の緯度を検出する緯度検出部の機能も担うことになる。
この構成に依れば、GPS受信装置13に依ってカメラ1の緯度を自動で更新できるので、カメラ1の位置が変わった場合にユーザが国設定をし直す必要がない。また、僅かな緯度の変化も検出できるので、地球の自転に因る影響を高精度に除去できる。
【0066】
また、本実施形態において、カメラ1は、図9に示すとおり、通信部14を更に備える構成としてもよい。通信部14は、WiFiやBluetooth(登録商標)等の無線通信に依り外部装置と通信を行う。例えば、通信部14は、システムコントローラ5の制御の下、緯度情報を取得可能な外部装置と通信を行い、その外部装置から緯度情報を取得し、システムコントローラ5へ通知する。ここで、緯度情報を取得可能な外部装置は、例えば、スマートフォンや位置情報を提供するサーバである。そして、システムコントローラ5がぶれ補正マイコン6へ通知する緯度情報は、通信部14から通知された緯度情報とする構成としてもよい。
この構成によれば、GPS受信装置等の緯度検出手段を設けることなく緯度情報の取得が可能になるので、緯度情報の取得に要するコストを抑えることができる。
<第2の実施形態>
【0067】
次に、第2の実施形態について説明する。この説明では、第1の実施形態に対して異なる点のみを説明する。また、第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
第2の実施形態に係るぶれ補正装置を備えた撮像装置であるカメラ1は、角速度センサ7の検出結果に含まれる感度誤差を解消するための調整機能を備える。
詳しくは、調整機能は、調整対象とする回転軸に対して回転装置に依り所定の回転速度のCW回転及びCCW回転が与えられ、各々の回転時の検出角速度の絶対値を平均化することに依り所定の回転速度に対する平均検出角速度を算出し、この平均検出角速度が所定の回転速度になるという目的で補正係数を算出する。ここで、CWは時計回りのことであり、CCWは反時計回りのことである。
【0069】
このときに、調整対象とする回転軸の設置方向に因っては、回転に因りカメラ1の向きが変動する。その結果、その方位変動に因り地球の自転の影響も変動し、算出する補正係数に誤差が生じることになる。そこで、地球の自転の影響が生じないという目的で設置を行う必要がある。
【0070】
図10A及び図10Bは、このときの設置方法の一例を示す図である。
図10Aは、調整対象とする回転軸をカメラ1のYaw方向の回転軸とする場合の設置方法を示す。図10Bは、調整対象とする回転軸をカメラ1のPitch方向の回転軸とする場合の設置方法を示す。
【0071】
図10A及び図10Bにおいて、回転装置101が備える回転部102の回転軸103が緯線と平行になるという目的で回転装置101が設置されると共に、回転部102の回転軸103がカメラ1の調整対象とする回転軸と平行になるという目的でカメラ1が回転部102に固定される。
【0072】
すなわち、調整対象とする回転軸がYaw方向の回転軸である場合は、図10Aに示したとおり、回転装置101が備える回転部102の回転軸103及びカメラ1の調整対象とするYaw方向の回転軸が緯線と平行になるという目的で設置される。
【0073】
また、調整対象とする回転軸がPitch方向の回転軸である場合は、図10Bに示したとおり、回転装置101が備える回転部102の回転軸103及びカメラ1の調整対象とするPitch方向の回転軸が緯線と平行になるという目的で設置される。
【0074】
図11は、第2の実施形態に係るぶれ補正マイコン6の機能構成例を示す図である。
図11において、第2の実施形態に係るぶれ補正マイコン6は、図4に示した第1の実施形態に係るぶれ補正マイコン6に対し、更に、調整機能に係る構成として、一時記憶部6B、係数算出部6C、係数保持部6D、及び乗算部6Eを備える。
【0075】
一時記憶部6Bは、角速度センサ7から取得した角速度を一時的に保持する。
なお、第2の実施形態では、SW12の操作に依りユーザがカメラ1の動作モードとして調整モードを設定すると、自転オフセット算出部6Aと基準値算出部61の機能が停止し、その各々の出力がゼロとなる。その結果、減算部62と減算部63は、角速度センサ7から取得した角速度をそのまま後段へ出力することになり、一時記憶部6Bが一時的に保持する角速度は、角速度センサ7から取得した角速度になる。
【0076】
係数算出部6Cは、一時記憶部6Bが保持した角速度に基づいて補正係数を算出する。なお、係数算出部6Cは、カメラ1の動作モードとして調整モードが設定されている場合に限り、補正係数の算出を行う。補正係数の算出の詳細は、後述する。
【0077】
係数保持部6Dは、不揮発性のメモリであり、係数算出部6Cが算出した補正係数を保持する。なお、係数保持部6Dは、補正係数を一旦保持すると、その後、係数算出部6Cが補正係数を新たに算出しない限り、その補正係数を保持し続ける。
【0078】
乗算部6Eは、減算部63の減算結果に対し、係数保持部6Dが保持した補正係数を乗算し、乗算部64へ出力する。
これに伴い、乗算部64は、乗算部6Eの乗算結果に対し、通信部67が出力した焦点距離情報を乗算する。
図11において、その他のぶれ補正マイコン6の機能構成は、第1の実施形態と同様である。
【0079】
図12は、カメラ1の調整の流れを示すフローチャートである。
このフローチャートは、カメラ1の調整機能に係る処理と回転装置101の処理を含む。カメラ1の調整は、SW12の操作に依りユーザがカメラ1の動作モードとして調整モードを設定すると共に、カメラ1の調整対象とする回転軸に応じて、図10A又は図10Bに示したとおりにカメラ1を回転装置101の回転部102に固定した上で、開始される。
【0080】
図12において、カメラ1の調整が開始されると先ず、回転装置101は、所定の回転速度ω_calで回転部102のCW方向の回転を開始する(S1)。
次に、カメラ1は、角速度センサ7から調整対象とする回転軸の角速度を取得し、一時記憶部6Bに保持する(S2)、という処理を1秒間繰り返す(S3がNO)。
【0081】
そして、1秒が経過すると(S3がYES)、カメラ1の係数算出部6Cは、一時記憶部6Bが保持した角速度を平均化してωave_cwを算出し(S4)、カメラ1は、一時記憶部6Bをクリアする。
【0082】
次に、回転装置101は、所定の回転速度ω_calで回転部102のCCW方向の回転を開始する(S5)。すなわち、回転装置101は、同じ回転速度で回転部102の回転方向を反転させる。
【0083】
次に、カメラ1は、角速度センサ7から調整対象とする回転軸の角速度を取得し、一時記憶部6Bに保持する(S6)、という処理を1秒間繰り返す(S7がNO)。
そして、1秒が経過すると(S7がYES)、カメラ1の係数算出部6Cは、一時記憶部6Bが保持した角速度を平均化してωave_ccwを算出し(S8)、カメラ1は、一時記憶部6Bをクリアする。
【0084】
次に、カメラ1の係数算出部6Cは、下記式(5)を用いて、S4において算出したωave_cwとS8において算出したωave_ccwとから、検出角速度の絶対値ωabsを算出する(S9)。
ωabs = (|ωave_cw|+|ωave_ccw|)/2 式(5)
すなわち、ωave_cwの絶対値とωave_ccwの絶対値の平均値をωabsとして算出する。
【0085】
次に、カメラ1の係数算出部6Cは、下記式(6)を用いて、所定の回転速度ω_calと、S9において算出した検出角速度の絶対値ωabsとから、補正係数Kを算出する(S10)。
K = ωcal/ωabs 式(6)
【0086】
そして、S10において算出した補正係数Kを係数保持部6Dが保持し、カメラ1の調整対象とする回転軸に対する調整が終了する。
その後、SW12の操作に依りユーザがカメラ1の動作モードを調整モードから例えば撮影モードへ変更設定すると、カメラ1は、自転オフセット算出部6Aと基準値算出部61の機能停止を解除する。
【0087】
以上に述べてきた第2の実施形態に依れば、地球の自転に因る影響を除去して検出角速度の調整ができるので、検出角速度の精度が向上し、カメラ1の手ぶれ補正性能を高めることができる。
【0088】
なお、本実施形態において、例えば、角速度センサ7が、カメラ1のRoll方向の角速度も検出できる構成とした場合において、調整対象とする回転軸をカメラ1のRoll方向の回転軸とする場合の設置方法は、図13に示したとおりになる。この場合は、図13に示したとおりに、回転装置101が備える回転部102の回転軸103及びカメラ1の調整対象とするRoll方向の回転軸が緯線と平行になるという目的で設置される。
【0089】
ところで、角速度センサ7の検出結果に含まれる感度誤差として、他軸感度がある。
この他軸感度は、角速度センサ自身の検出軸の傾きや、実装傾きに因って生じる。図12に示したカメラ1の調整では、S2及びS6において、調整対象とする回転軸以外の回転軸の角速度を読み出すことに依って検出することができる。
【0090】
S2及びS6において、他軸感度は、回転部の102回転に依り、地球の自転軸に対して傾きを生じる。従って、その傾きの回転量θcalで自転の影響を補正する必要がある。
例えば、カメラ1の垂直方向の軸が、重力方向と一致する状態から回転量θcal回転した場合の地球の自転の影響は、下記式(6)、(7)を用いて算出することができる。
Rot_v = Rotation ×SIN(θlatitude+θcal) 式(6)
Rot_h = Rotation ×COS(θlatitude+θcal) 式(7)
【0091】
例えば、図10Aに示した、調整対象とする回転軸がカメラ1のYaw方向の回転軸である場合、上記式(6)に依り算出されたRot_vはPitch方向が対応し、上記式(7)に依り算出されたRot_hはRoll方向が対応する。
【0092】
第1及び第2の実施形態では、ぶれ補正装置がカメラ1に備えられた構成であったが、ぶれ補正装置がカメラ以外の双眼鏡等の光学機器に備えられた構成としてもよい。この場合、ぶれ補正装置の補正対象は、カメラ1の揺れにより生じる像のぶれ(手ぶれ)に関するものに代わって、光学機器の揺れにより生じる像のぶれに関するものとなる。
【0093】
以上、本発明は、上記実施形態にそのまま限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせに依り、様々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素のいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 カメラ
2 光学系
3 撮像素子
4 駆動部
5 システムコントローラ
6 ぶれ補正マイコン
7 角速度センサ
8 加速度センサ
9 方位センサ
10 メモリ
11 EVF
12 SW
13 GPS受信装置
14 通信部
61 基準値算出部
62、63 減算部
64 乗算部
65 積算部
66 補正量算出部
67 通信部
68 方位検出部
69 姿勢判定部
6A 自転オフセット算出部
6B 一時記憶部
6C 係数算出部
6D 係数保持部
6E 乗算部
6A1 垂直軸周りオフセット算出部
6A2 水平軸周りオフセット算出部
6A3 方位補正部
6A4 セレクタ
101 回転装置
102 回転部
103 回転軸
611 減算部
612 姿勢変動判定部
613 平均値バッファ部
614 基準値算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13