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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】既設構造物の支持杭施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 10/32 20060101AFI20220202BHJP
   E21B 3/02 20060101ALI20220202BHJP
   E02D 5/80 20060101ALI20220202BHJP
   B28D 1/14 20060101ALI20220202BHJP
   B28D 7/02 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
E21B10/32
E21B3/02 Z
E02D5/80 102
B28D1/14
B28D7/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018057257
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019167756
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399101337
【氏名又は名称】株式会社ジェイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100104363
【弁理士】
【氏名又は名称】端山 博孝
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 真弥
(72)【発明者】
【氏名】清水 満
(72)【発明者】
【氏名】松田 芳範
(72)【発明者】
【氏名】相沢 文也
(72)【発明者】
【氏名】千葉 太介
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雅春
(72)【発明者】
【氏名】千葉 敬介
(72)【発明者】
【氏名】桑原 清
(72)【発明者】
【氏名】益田 彰久
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-082977(JP,A)
【文献】特開2008-045350(JP,A)
【文献】特開2007-278018(JP,A)
【文献】特開2002-357071(JP,A)
【文献】特開平07-259126(JP,A)
【文献】特開2017-106280(JP,A)
【文献】特開2014-043732(JP,A)
【文献】実開昭57-056882(JP,U)
【文献】特開平11-256571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-49/10
E02D 5/22- 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に直接支持されている既設構造物の下方に杭頭部が拡幅された支持杭を施工する方法であって、
1対を1組とする1方向に整列した多数組の杭設置位置を設定し、
各組の1対の杭設置位置間を移動可能なフレーム上に、ターンテーブル、その上に互いに直交する水平方向にスライドする第1スライドテーブル及び第2スライドテーブルを順に搭載し、
前記第2スライドテーブルにはストレート状の杭孔を掘削するコア掘削装置と、拡幅掘削装置とを搭載し、
前記第1スライドテーブル及び第2スライドテーブルをスライドさせることにより、各組の1対の杭設置位置及び前記コア掘削装置及び前記拡幅掘削装置を同一円周上に位置させ、
前記ターンテーブルを回転させることにより、前記杭設置位置での前記コア掘削装置による掘削及び前記拡幅掘削装置による削孔の拡幅を行うことを特徴とし、
前記拡幅掘削装置は、地盤又はコンクリートに予め掘削された削孔に拡幅部を形成するためのものであって、
外管と、この外管内に昇降可能に設けられた内管とを有する掘削ロッドと、
前記外管を回転させる回転駆動機構と、
前記内管を昇降させる昇降駆動機構と、
前記外管の先端部に周方向に間隔を置いて基部が回転可能に取り付けられ、先端部が下降する縮閉位置と上昇する拡開位置との間を移動可能な複数の拡縮ビット翼と、
前記外管の先端部から突出する前記内管の先端部に設けられた拡縮作動部材と、
前記拡縮ビット翼のそれぞれと前記拡縮作動部材との間を連結するリンクとを備え、
前記内管の昇降に伴って前記拡縮作動部材が昇降することにより、前記リンクを介して前記拡縮ビット翼が拡縮するようになっている、既設構造物の支持杭施工方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、既設構造物の支持杭施工方法に関し、より詳細には杭頭部に拡幅部を有する支持杭を構築する支持杭施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インバートの無いりょう盤構造の鉄道トンネルにおいて、列車走行によって地下水を伴った土砂の細粒分噴出現象(噴泥現象)が発生することがある。この噴泥現象により路盤コンクリート下のりょう盤コンクリート下に空隙が生じ、その結果、路盤の沈下・軌道変状等の発生を招く。
【0003】
このような噴泥、路盤沈下の対策として桁構造化スラブ軌道工法が開発され、適用されている。この桁構造化スラブ軌道工法は、既設スラブ軌道のコンクリート路盤下に、杭頭部を拡幅した小口径の場所打ち杭を構築し、荷重を支持する工法である(特許文献1参照)。なお、この桁構造化スラブ軌道工法に適用される支持杭施工方法は、特許文献1にも記載があるように、地盤に直接支持されているビル等の既設構造物にも適用可能である。
【0004】
掘削した杭孔を拡幅するための拡幅掘削装置として、特許文献2,3に開示されたものが知られている。しかし、これら従来の拡幅掘削装置は、複数の横向きの油圧シリンダを内蔵した拡幅刃具機構を予め掘削した孔に挿入して拡幅するものであるため、圧油の供給経路が複雑となり、全体構造としても複雑とならざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-256571号公報
【文献】特開平11-256969号公報
【文献】特開2001-20648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、既設構造物の下方に杭頭部が拡幅された支持杭のための杭孔を掘削するにあたり、効率良く施工を行うことができる支持杭施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、地盤に直接支持されている既設構造物の下方に杭頭部が拡幅された支持杭を施工する方法であって、
1対を1組とする1方向に整列した多数組の杭設置位置を設定し、
各組の1対の杭設置位置間を移動可能なフレーム上に、ターンテーブル、その上に互いに直交する水平方向にスライドする第1スライドテーブル及び第2スライドテーブルを順に搭載し、
前記第2スライドテーブルにはストレート状の杭孔を掘削するコア掘削装置と、拡幅掘削装置とを搭載し、
前記第1スライドテーブル及び第2スライドテーブルをスライドさせることにより、各組の1対の杭設置位置及び前記コア掘削装置及び前記拡幅掘削装置を同一円周上に位置させ、
前記ターンテーブルを回転させることにより、前記杭設置位置での前記コア掘削装置による掘削及び前記拡幅掘削装置による削孔の拡幅を行うことを特徴とし、
前記拡幅掘削装置は、地盤又はコンクリートに予め掘削された削孔に拡幅部を形成するためのものであって、
外管と、この外管内に昇降可能に設けられた内管とを有する掘削ロッドと、
前記外管を回転させる回転駆動機構と、
前記内管を昇降させる昇降駆動機構と、
前記外管の先端部に周方向に間隔を置いて基部が回転可能に取り付けられ、先端部が下降する縮閉位置と上昇する拡開位置との間を移動可能な複数の拡縮ビット翼と、
前記外管の先端部から突出する前記内管の先端部に設けられた拡縮作動部材と、
前記拡縮ビット翼のそれぞれと前記拡縮作動部材との間を連結するリンクとを備え、
前記内管の昇降に伴って前記拡縮作動部材が昇降することにより、前記リンクを介して前記拡縮ビット翼が拡縮するようになっている、既設構造物の支持杭施工方法にある。
【0008】
上記拡幅掘削装置において、前記回転駆動機構が昇降可能に搭載されるリーダーに設けられ、前記掘削ロッドの回転及び昇降を許すが、水平方向の移動を阻止する上部振れ止め機構と、
前記拡縮作動部材の下部に連結して設けられ、前記拡縮作動部材を回転可能に支持するとともに、前記削孔内を昇降可能ではあるが、外周が前記削孔の孔壁に拘束されることにより前記拡縮作動部材の水平方向移動を阻止する下部振れ止め機構と
を備えている構成を採用することができる。
【0009】
より具体的には、前記上部振れ止め機構は、前記リーダーに水平方向に回転可能に設けられた1対のアームであって、互いに接近して前記掘削ロッドの外周を包囲する閉鎖位置と互いに離間して開放する開放位置との間を移動する1対のアームと、
前記各アームに水平方向に回転可能に設けられ、前記アームが閉鎖位置にあるとき前記掘削ロッドの外周にその昇降を許すように周接する複数のガイドローラと
を備えている構成を採用することができる。
【0010】
また、前記下部振れ止め機構は、前記拡縮作動部材の下部に軸線を一致させて設けられた軸部材と、
この軸部材の外周に水平方向に相対回転可能に設けられ、前記削孔の孔壁に外周が近接するガイドリングと
を備えている構成を採用することができる。
【0011】
また、前記ガイドリングには鉛直方向に回転可能な複数のガイドローラが周方向に間隔を置いて設けられ、これらのガイドローラは周面の一部が前記ガイドリングの外周から突出して前記削孔の孔壁を鉛直方向に走行回転可能となっている構成を採用することができる。
【0012】
また、前記拡縮ビット翼は、その長さ方向に沿って設けられた複数のビットを有し、
これらのビットは翼先端にゆくにつれて刃先高さが低くなるように設けられている構成を採用することができる。
【0013】
また、前記回転駆動機構は、前記外管の外周に相対回転可能に設けられたケースと、
このケース内に収容され、前記外管の外周に嵌合固定されたギヤと、
前記ケースに搭載され、駆動軸に前記ギヤと噛み合うピニオンが設けられた駆動モータとを備えている構成を採用することができる。
【0014】
また、前記昇降駆動機構は、前記外管の上端部から突出する内管の外周に相対回転可能に設けられたシリンダチューブと、
このシリンダチューブと前記内管との間に摺動可能に配置され、上端部が前記内管に固定された筒状ピストンとを備えている構成を採用することができる。
【0015】
また、前記内管の内部空間は掘削水の供給路を形成している構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の支持杭施工方法によれば、既設構造物の下方に杭頭部が拡幅された支持杭のための杭孔を掘削するにあたり、効率良く施工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明方法に使用する拡幅掘削装置の実施形態を示し、軸線方向断面図である。
図2】拡縮ビット翼の縮閉時の状態を示し、回転駆動機構及び昇降駆動機構を拡大して示す断面図である。
図3】拡縮ビット翼の縮閉時の状態を示し、拡縮ビット翼を拡大して示す断面図である。
図4】拡縮ビット翼の拡開時の状態を示し、回転駆動機構及び昇降駆動機構を拡大して示す断面図である。
図5】拡縮ビット翼の拡開時の状態を示し、拡縮ビット翼を拡大して示す断面図である。
図6】拡幅掘削装置により削孔を拡幅する手順を示す図である。
図7図6に引き続く手順を示す図である。
図8】拡幅された削孔を示す断面図である。
図9】この発明による支持杭施工方法の実施形態を示す平面図である。
図10】同実施形態に使用するターンテーブル等の機器類を示す正面図である。
図11】拡幅掘削装置の別の実施形態を示し、上部振れ止め機構の軸線方向断面図である。
図12】上部振れ止め機構の平面図である。
図13】上部振れ止め機構の一方のアームの正面図である。
図14】下部振れ止め機構の軸線方向断面図である。
図15】下部振れ止め機構の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1はこの発明方法に使用する拡幅掘削装置の実施形態を示し、軸線方向断面図である。図2及び図3は拡縮ビット翼の縮閉時の状態を示し、図2は回転駆動機構及び昇降駆動機構を拡大して示す断面図、図3は拡縮ビット翼を拡大して示す断面図である。図4及び図5は拡縮ビット翼の拡開時の状態を示し、図4は回転駆動機構及び昇降駆動機構を拡大して示す断面図、図5は拡縮ビット翼を拡大して示す断面図である。
【0020】
拡幅掘削装置10は、掘削ロッド11と、回転駆動機構12と、昇降駆動機構13と、複数の拡縮ビット翼14と、拡縮作動部材15と、拡縮ビット翼14と拡縮作動部材との間を連結するリンク16とを備えている。
【0021】
掘削ロッド11は、外管17とその内方に昇降可能に設けられた内管18とを有する二重管からなっている。図3に示すように、内管18の先端部には拡径部19が設けられるとともに、外管17の先端部には縮径部20が設けられ、これら拡径部19及び縮径部20は摺動可能に接している。すなわち、内管18及び外管17の各先端部間は閉鎖されている。
【0022】
外管17の先端部外周には拡縮ビット翼14の取付部材21が設けられている。取付部材21の上部には嵌合凹部27が形成され、この嵌合凹部27に外管17の先端部が嵌合されることにより、両者が固定されている。この取付部材21は外管17の一部を構成する要素である。
【0023】
取付部材21の外周には軸線方向及び下部で半径方向を向く凹部22が形成され、拡縮ビット翼14はその基部が下部側の凹部22に収容されてピン23により回転可能に取り付けられている。これにより、拡縮ビット翼14は先端部が下降する縮閉位置(図3)と、先端部が上昇してほぼ水平状態となる拡開位置(図5)との間を移動可能となっている。この拡縮ビット翼14は、外管17の周方向に間隔を置いて複数設けられている。
【0024】
拡縮作動部材15は上部に軸部24を有している。軸部24は取付部材21に設けられた貫通孔25にキー26を介して軸線方向に摺動可能ではあるが、取付部材21に対しては相対回転不能に嵌合されている。また軸部24の上端部は筒状部24aとなっていて、この筒状部24aは内管18の下部の拡径部19内周に嵌合され、内管18と連通するように固定されている。以上より、外管17の回転は軸部24を介して拡縮作動部材15及び内管18に伝達されるとともに、内管18の昇降移動は軸部24を介して拡縮作動部材15に伝達される。
【0025】
軸部24の筒状部24aには内管18と嵌合凹部27とを連通する孔28が設けられている。嵌合凹部27は図示しない流路を介して、取付部材21に設けられた掘削水の複数の注出孔29と連通している。これにより、内管18に供給された掘削水は、筒状部24a、嵌合凹部27等を通って注出孔29から外部に注出される。内管18に掘削水を供給するために、その上端部にはスイベル56が設けられている(図2)。
【0026】
拡縮作動部材15には外周に複数の凹部30が形成され、この凹部30にリンク16が収容されている。リンク16は一端が凹部30の下部で拡縮作動部材15にピン31により回転可能に連結され、他端が拡縮ビット翼1の中間部にピン32により回転可能に連結されている。
【0027】
これにより、内管18が下降するとそれに伴って拡縮作動部材15も下降することから、拡縮ビット翼14はリンク16を介して縮閉位置にもたらされる(図3)。また、内管18が上昇するとそれに伴って拡縮作動部材15も上昇することから、拡縮ビット翼14はリンク16を介して拡開位置にもたらされる(図5)。なお、拡縮作動部材15の外周には掘削ロッド11を削孔45内中心に保持するためのセンタリング部材46が設けられている。
【0028】
拡縮ビット翼14にはその長さ方向に沿って複数のビット33が設けられている。これらのビット33は翼先端にゆくにつれて刃先高さが低くなるように設けられている。
【0029】
図2に示すように、外管17の上端部には筒状の被駆動軸17aが連結固定されている。回転駆動機構12は、この被駆動軸17aの外周に相対回転可能に設けられたケース34を備えている。このケース34は、後述するリーダーに昇降可能に搭載される。ケース34内にはギヤ35が収容され、このギヤ35は被駆動軸17aに嵌合固定されている。
【0030】
ケース34上には油圧による駆動モータ36が搭載され、ケース34内に突出する駆動モータ36の駆動軸にはギヤ35と噛み合うピニオン37が設けられている。これにより、駆動モータ36の回転がピニオン37、ギヤ35及び被駆動軸17aを介して外管17に伝達される。すなわち、拡縮ビット翼14が回転する。
【0031】
内管18は外管17から上方に突出していて、昇降駆動機構13はこの突出した内管18の外周に設けられている。昇降駆動機構13は油圧等の液圧により駆動するシリンダ機構であり、内管18の外周に相対回転可能に設けられたシリンダチューブ38を備えている。シリンダチューブ38は下端がケース34に固定されている。
【0032】
内管18の外周にはカラー39が嵌合され、このカラー39とシリンダチューブ38との間に筒状のピストン40が摺動可能に配置されている。ピストンロッド41は上端部が内管18の上端部に相対回転可能に連結されている。シリンダチューブ38には上下2つの圧油供給口42、43が設けられている。
【0033】
上側の圧油供給口42はピストン40の上側でシリンダ室44に開口し、下側の圧油供給口43はピストン40の下側でシリンダ室44に開口している。これにより、上側の圧油供給口42に圧油を供給するとピストン40が下降し、これに伴って内管18が下降する(図2図3)。すなわち、拡縮ビット翼14が縮閉する。また、下側の圧油供給口43に圧油を供給するとピストン40が上昇し、これに伴って内管18が上昇する(図4図5)。すなわち、拡縮ビット翼14が拡開する。
【0034】
図6図7は上記拡幅掘削装置10による削孔の拡幅動作を示している。拡幅掘削装置10は前述のように、リーダーに搭載されて昇降することが可能である。図において被切削物50は例えば、路盤コンクリート、その下のりょう盤コンクリート、その下の地盤からなっている。この被切削物50にはストレート状の孔を掘削する周知のコア掘削装置により、予め削孔45が形成されている。
【0035】
まず、図6(a)に示すように、拡縮ビット翼14を縮閉させた状態で掘削ロッド11を削孔45内の所定深度位置まで挿入する。次に、同図(b)に示すように、その深度位置で昇降駆動機構13により内管18を上昇させながら、すなわち拡縮作動部材15を上昇させながら、回転駆動機構12により外管17を回転させる。これにより、拡縮ビット翼14が拡開しながら回転することから、拡縮ビット翼14により削孔45の孔壁が切削されて削孔45が徐々に拡幅される。
【0036】
そして、拡縮ビット翼14がほぼ水平状態となる拡開位置(拡縮ビット翼14の先端が図8に示すりょう盤コンクリート54の直下となる深度位置)に達したら、同図(c)に示すように、拡幅掘削装置10全体を所定の深度位置まで下降させる。これにより、削孔45は拡幅されて所定長さのストレート状の拡幅部51が形成される。
【0037】
次に、図7(d)に示すように、拡幅部51内で拡縮ビット翼14を縮閉させる。すなわち、拡縮ビット翼14が拡幅部51内の所要深度位置に達するまで拡幅掘削装置10全体を上昇させた後、昇降駆動機構13により内管18を下降させる。これにより拡縮作動部材15が下降し、拡縮ビット翼14が縮閉する。
【0038】
そして、同図(e)に示すように、拡幅掘削装置10全体を上昇させ、削孔45から引き上げ回収する。
【0039】
上記拡幅掘削装置10によれば、拡縮ビット翼14は内管18の昇降によって拡縮し、その駆動機構である昇降駆動機構13は削孔内に入ることがないので、簡単な構造で削孔を拡幅することができる。
【0040】
また、拡縮ビット翼14に設けられるビット33は翼先端にゆくにつれて刃先高さが低くなっている。その結果、拡幅部51の上端孔壁は、図8に示すように、半径方向外方にゆくにつれて下方に下がる傾斜面52となる。削孔45への杭コンクリート打設時に発生するエアは、この傾斜面52に沿って上昇して逃げることから、品質の良い杭を構築することができる。なお、図8において符号53、54、55は、それぞれ路盤コンクリート、りょう盤コンクリート及び地盤を示している。
【0041】
また、仮に拡幅部51の上端孔壁が水平面であるとすると、りょう盤コンクリート54と地盤55の接合面に拡幅部51の上端孔壁が位置することになる。りょう盤コンクリート54と地盤55との接合面すなわちりょう盤コンクリート54の下面はコンクリート打設時に不陸や品質低下をきたしているおそれがある。これに対し、拡幅部51の上端孔壁を傾斜面52とすることにより、傾斜面52がりょう盤コンクリート54に食い込んで切削された面となる。その結果、切削された傾斜面52が杭コンクリートとの接合面となることから、りょう盤コンクリート54と杭コンクリートとの密着性を高めることができる。
【0042】
図9図10は、既設構造物の支持杭施工方法の実施形態を示している。この実施形態は、この発明方法を鉄道トンネルの桁構造化スラブ軌道工法に適用した例であり、図9は平面図であり、図10は線路方向にみた正面図である。線路60は地盤55上に敷設されるりょう盤コンクリート54、その上に順に敷設される路盤コンクリート53及び軌道スラブ61、さらに軌道スラブ61の上に敷設されるレール62、62等で構成される。この実施形態では、りょう盤コンクリート54、路盤コンクリート53及び軌道スラブ61等が、この発明方法でいう地盤55に直接支持されている既設構造物に該当する。
【0043】
桁構造化スラブ軌道工法での杭設置位置P1、P2は、図9に示す軌道スラブ61の線路60の横断方向両外側にある、路盤コンクリート53及びりょう盤コンクリート54からなるコンクリート層に設定され、線路中心線に対して対称位置にある1対を1組としている。各組の杭設置位置P1、P2は線路方向に所定間隔で離間している。
【0044】
線路60上を、具体的にはレール62、62上を走行する台車79の、走行方向の一方の端部にフレーム63が設けられ、このフレーム63にターンテーブル64が設けられている。このターンテーブル64の上にはスライドシリンダ65によって水平方向にスライドする第1スライドテーブル66が設けられている。さらに、この第1スライドテーブル66の上にはスライドシリンダ67によって、第1スライドテーブル66と直交する水平方向にスライドする第2スライドテーブル68が設けられている。符号69、70は、それぞれ走行角度調整シリンダ及びレベリングジャッキを示している。
【0045】
第2スライドテーブル68には起倒シリンダ73によって倒伏位置と起立位置との間を移動する2つのリーダー71、72が設けられている(図10には一方のリーダー71のみが示されている)。一方のリーダー71にはコア掘削装置74が搭載され、他方のリーダー72には上記拡幅掘削装置10が搭載されている。図10にはコア掘削装置74が示されている。コア掘削装置74自体は周知のもので、リーダー71に昇降可能に搭載される回転駆動機構75と、先端にビット77を有し回転駆動機構75に接続される掘削ロッド76とを有している。
【0046】
リーダー71にはワイヤー式のフィードシリンダ78が設けられ、コア掘削装置74はフィードシリンダ78の作動により昇降する。図10には示されていないが、拡幅掘削装置10が搭載されるリーダー72もリーダー71と同様のものであり、上記したように回転駆動装置12がリーダー72に搭載されて拡幅掘削装置10が昇降する。
【0047】
杭孔の掘削時には第1、第2スライドテーブル66、68をスライド作動させることにより、図9に示すように、各組の1対の杭設置位置P1、P2、コア掘削装置74及び拡幅掘削装置10を同一円周上に位置させる。そして、まずコア掘削装置74により一方の杭設置位置P1で路盤コンクリート53及びりょう盤コンクリート54を貫通し、地盤55の所定深度に達するストレート状の孔を掘削する。掘削後、ターンテーブル64を回転させて拡幅掘削装置10を杭設置位置P1に移動させ、この拡幅掘削装置10により図8に示したように削孔を拡幅する。
【0048】
杭設置位置P1での掘削・拡幅後、ターンテーブル64をほぼ180度回転させて、上記と同様にして杭設置位置P2での掘削・拡幅を行う。このようにして1組の杭設置位置P1、P2での掘削・拡幅が終了したら、台車79を移動させて隣接する1組の杭設置位置P1、P2での掘削・拡幅を行い、以下これを繰り返す。上記のようにして掘削・拡幅された杭孔には、スライム処理を施した後、コンクリート(例えば、鋼繊維補強水中不分離性コンクリート)を打設する。
【0049】
上記のような施工方法によれば、第1、第2スライドテーブル66、68をスライドさせて、1対の杭設置位置P1、P2、コア掘削装置74及び拡幅掘削装置10を同一円周上に位置させるので、ターンテーブル64を回転させるだけでコア掘削装置74及び拡幅掘削装置10を順に杭設置位置P1、P2にもたらすことができ、効率の良い杭孔施工を行うことができる。
【0050】
図11図15は、この発明方法に使用する拡幅掘削装置の別の実施形態を示している。この実施形態は掘削ロッドの振れ止め機構を備えた形態である。振れ止め機構は、上部振れ止め機構と下部振れ止め機構とからなり、図11図12図13は上部振れ止め機構80を示し、図11は軸線方向断面図、図12は平面図、図13は一方のアームを示す正面図である。図14図15は下部振れ止め機構81を示し、図14は軸線方向断面図、図15は下面図である。
【0051】
図11図12に示すように、上部振れ止め機構80は、拡幅掘削装置10の回転駆動機構12が昇降可能に搭載されるリーダー72の下部に設けられている。リーダー72の下部には取付部材82が固定されている。この取付部材82に1対のアーム83a、83bの各基部がピン84を介して取り付けられ、アーム83a、83bは水平方向に回転可能となっている。アーム83a、83bは回転させることにより、互いに接近して閉じる閉鎖位置と、離間して開放する開放位置との間を移動する。アーム83a、83bには、これらを手動回転させるためのハンドル100が設けられている。
【0052】
アーム83a、83bの中間部には湾曲部85がそれぞれ形成され、アーム83a、83bが閉じたとき、掘削ロッド11はアーム83a、83bによって包囲されるようになっている。アーム83a、83bの自由端部は互いに嵌合し、この嵌合部に設けられた孔86、87にストッパピン88を挿入することにより、アーム83a、83bは閉鎖位置に保持される。
【0053】
図13に一方のアーム83aのみを示すように、アーム83a、83bの湾曲部85には水平向きの長孔89が形成されている。この長孔89を通ってを鉛直方向に貫通する複数(実施形態では2つ)のローラ軸90がアーム83a、83bに設けられている。これらのローラ軸90には、長孔89に収容されたガイドローラ91がベアリング92を介して回転可能に軸支されている。
【0054】
ガイドローラ91はその周面の一部が長孔89から突出し、アーム83a、83bを閉じたとき掘削ロッド11の昇降を許すようにその外周に軽く周接するようになっている。これにより、ガイドローラー91は掘削ロッド11の回転に伴って回転するので、掘削ロッド11は回転を阻害されることなくアーム83a、83bによって水平方向の移動を阻止され、拡幅掘削時の掘削ロッド11の振れが防止される。
【0055】
図14図15に示すように、下部振れ止め機構81は、拡縮作動部材15の下端部に連結して設けられている。拡縮作動部材15の下端部には、拡縮作動部材15とともに回転する回転軸93が軸線を一致させて固定されている。この回転軸93の外周にベアリング94を介してガイドリング95が相対回転可能に軸支されている。
【0056】
ガイドリング95は削孔45の孔径(例えば、実施形態ではφ183)よりも直径が僅かに小さく(例えば、実施形態ではφ181)作られている。ガイドリング95の下面には外周に開口する複数の凹部96が周方向に間隔を置いて設けられ、ガイドリング95にはこれらの凹部96を横切るように水平向きの軸ボルト97が固定されている。この軸ボルト97にはガイドローラ98が凹部96に収容された状態で軸支されている。
【0057】
ガイドローラ98はガイドリング95の外周から僅かに突出し、削孔45の孔壁を鉛直方向に走行回転可能となっている。以上の構成により、ガイドリング95は掘削ロッド11を削孔45の中心に保持するセンタリング作用をなすとともに、ガイドリング95によって拡幅掘削時における掘削ロッド11の振れが防止される。そして、掘削ロッド11は、上部振れ止め機構80と下部振れ止め機構81との2つの機構により上下2箇所で拘束されるので、振れが確実に防止される。
【0058】
また、下部振れ止め機構81においてはガイドローラ98を設けることにより、ガイドローラ98が削孔45の孔壁を走行するので、掘削ロッド11の昇降を円滑にすることができるとともに、ガイドローラ98は水平方向にはガイドリング95の回転を阻害するように作用するので、ガイドリング95の供回りを防止することができる。なお、図3図5に示した実施形態と同様の部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
上記各実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の態様を採ることができる。例えば、上記各実施形態では、拡縮ビット翼14の拡開位置をほぼ水平位置になるようにしたが(図5図14)、拡開位置は水平位置よりも下降した位置、すなわち図5図14に示した拡開位置と図3に示した縮閉位置との間の中間位置になるようにしてもよい。このようにすると、拡幅部51の径は小さくなるが、拡幅部を形成する被切削部が軟弱地盤ではなくコンクリートのように強固な場合には、強度に応じた拡幅量とすることで支持杭の性能を満足できる。
【0060】
また、この発明による支持杭施工方法は、地盤に直接支持されているビル等の既設構造物にも適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
10:拡幅掘削装置
11:掘削ロッド
12:回転駆動機構
13:昇降駆動機構
14:拡縮ビット翼
15:拡縮作動部材
16:リンク
17:外管
18:内管
33:ビット
45:削孔
51:拡幅部
52:傾斜面
53:路盤コンクリート
54:りょう盤コンクリート
55:地盤
61:軌道スラブ
60:線路
63:フレーム
64:ターンテーブル
66:第1スライドテーブル
68:第2スライドテーブル
74:コア掘削装置
79:台車
80:上部振れ止め機構
81:下部振れ止め機構
83a、83b:アーム
91:ガイドローラ
93:回転軸
95:ガイドリング
98:ガイドローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図15