(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法、プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01N 29/36 20060101AFI20220202BHJP
E01C 23/01 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
G01N29/36
E01C23/01
(21)【出願番号】P 2018061220
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 隆真
(72)【発明者】
【氏名】野原 友幸
(72)【発明者】
【氏名】河内 洋人
(72)【発明者】
【氏名】曽我 祐介
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-243535(JP,A)
【文献】特開2013-068986(JP,A)
【文献】特表2016-536596(JP,A)
【文献】特開平08-138187(JP,A)
【文献】特開2007-309832(JP,A)
【文献】特開2008-260337(JP,A)
【文献】特開平09-128697(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0221581(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
E01C 23/01
G01B 7/00-11/30
G01B 17/00-17/08
B62D 6/00-6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の走行時に発生した走行音を含む音声データを取得し、かつ、前記音声データを生成したときの、前記移動体の周囲に位置する他の移動体から前記移動体までの距離を示す距離データを取得する取得部と、
前記距離データに基づいて、前記音声データの解析方法を設定し、設定した前記解析方法を用いて前記音声データを解析することにより走行路の状態を示す状態データを生成する状態判断部と、
を備える解析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の解析装置において、
前記他の移動体は前記移動体の前方を走行している解析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の解析装置において、
前記状態判断部は、前記距離が基準値以下の場合、前記状態データの生成を行わない解析装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の解析装置において、
前記状態判断部は、前記他の移動体の加速度を用いて前記音声データの解析方法を設定する解析装置。
【請求項5】
請求項4に記載の解析装置において、
前記状態判断部は、互いに異なるタイミングにおける前記距離データ、及び前記移動体の加速度を用いて、前記他の移動体の加速度を算出する解析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の解析装置において、
前記他の移動体は対向車線を走行している解析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の解析装置において、
前記状態判断部は、前記距離が基準値以下の場合、前記状態データの生成を行わない解析装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の解析装置において、
前記取得部は、前記他の移動体の属性を特定するための属性情報を取得し、
前記状態判断部は、前記属性情報を用いて前記解析方法を設定する解析装置。
【請求項9】
請求項8に記載の解析装置において、
前記状態判断部は、前記解析方法を設定する際の前記距離の基準値を、前記属性情報を用いて設定する解析装置。
【請求項10】
請求項8に記載の解析装置において、
前記状態判断部は、前記属性情報を用いて、前記解析に用いられるパラメータを設定する解析装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の解析装置において、
前記音声データは、前記移動体に取り付けられている音声データ生成装置が生成したデータである解析装置。
【請求項12】
コンピュータが、
移動体の走行時に発生した走行音を含む音声データを取得し、かつ、前記音声データを生成したときの、前記移動体の周囲に位置する他の移動体から前記移動体までの距離を示す距離データを取得し、
前記距離データに基づいて、前記音声データの解析方法を設定し、設定した前記解析方法を用いて前記音声データを解析することにより走行路の状態を示す状態データを生成する、解析方法。
【請求項13】
コンピュータに、
移動体の走行時に発生した走行音を含む音声データを取得し、かつ、前記音声データを生成したときの、前記移動体の周囲に位置する他の移動体から前記移動体までの距離を示す距離データを取得する機能と、
前記距離データに基づいて、前記音声データの解析方法を設定し、設定した前記解析方法を用いて前記音声データを解析することにより走行路の状態を示す状態データを生成する機能と、
を持たせるためのプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析装置、解析方法、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
走行路をメンテナンスするためには、走行路を検査する必要がある。近年は、検査担当となる走行路を移動体で移動しながら、その道路の状態を示すデータを収集することが検討されている。このような検査に関する技術の一つに、特許文献1に記載されて技術がある。特許文献1に記載の技術は、移動体の高さ方向の加速度を取得し、この加速度のピーク情報を用いて走行路の路面状態を評価するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行路を検査する方法の一つに、移動体の走行音を含む音声データを収集し、この音声データを解析する方法がある。しかし、走行路では複数の移動体が走行しているため、解析対象となる音声データに、他の移動体に起因したノイズが含まれる可能性がある。音声データがこのようなノイズを含んでいる場合、解析の精度が低下する恐れがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題としては、音声データを解析して走行路の状態を解析する場合において、解析の精度が低下しないようすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、移動体の走行時に発生した走行音を含む音声データを取得し、かつ、前記音声データを生成したときの、前記移動体の周囲に位置する他の移動体から前記移動体までの距離を示す距離データを取得する取得部と、
前記距離データに基づいて、前記音声データの解析方法を設定し、設定した前記解析方法を用いて前記音声データを解析することにより走行路の状態を示す状態データを生成する状態判断部と、
を備える解析装置である。
【0007】
請求項12に記載の発明は、コンピュータが、
移動体の走行時に発生した走行音を含む音声データを取得し、かつ、前記音声データを生成したときの、前記移動体の周囲に位置する他の移動体から前記移動体までの距離を示す距離データを取得し、
前記距離データに基づいて、前記音声データの解析方法を設定し、設定した前記解析方法を用いて前記音声データを解析することにより走行路の状態を示す状態データを生成する、解析方法である。
【0008】
請求項13に記載の発明は、コンピュータに、
移動体の走行時に発生した走行音を含む音声データを取得し、かつ、前記音声データを生成したときの、前記移動体の周囲に位置する他の移動体から前記移動体までの距離を示す距離データを取得する機能と、
前記距離データに基づいて、前記音声データの解析方法を設定し、設定した前記解析方法を用いて前記音声データを解析することにより走行路の状態を示す状態データを生成する機能と、
を持たせるためのプログラム。
【0009】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のプログラムを記憶した記憶媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る解析装置の使用環境を説明するための図である。
【
図3】解析装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】(A)、(B)、及び(C)は移動体と他の移動体の相対位置の例を示す図である。
【
図6】
図5のステップS40の第1例を示すフローチャートである。
【
図7】
図5のステップS40の第2例を示すフローチャートである。
【
図8】
図5のステップS40の第3例を示すフローチャートである。
【
図9】第2の実施形態に係る解析装置の使用環境を説明するための図である。
【
図10】解析装置が行う処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る解析装置10の使用環境を説明するための図である。解析装置10は、移動体80の走行時に発生した走行音を含む音声データを解析することにより、走行路(例えば道路)の状態を解析する装置である。解析対象となる音声データは、移動体80に搭載された音声データ生成装置30によって生成され、測定位置を特定するための情報(以下、測定位置情報と記載)及び日時情報に紐づけて、移動体80に搭載された通信装置60を介して解析装置10に送信される。送信された音声データは、測定位置情報に紐づけて、記憶部20に記憶されている。なお、記憶部20が解析装置10とは異なる装置によって管理されている場合、通信装置60は、音声データをその装置に送信する。
【0013】
移動体80は、さらに、撮像装置40、画像処理装置42、測定装置50、及び通信装置60を有している。
【0014】
撮像装置40は移動体80の周囲(例えば前方、横、及び後方の少なくとも一つを含む)を撮像して動画を生成する。画像処理装置42は、撮像装置40が生成した動画を構成するフレーム画像を解析する。この解析結果を示す画像解析データは、測定位置情報に紐づけて、通信装置60を介して記憶部20を管理する装置に送信され、記憶部20に記憶される。
【0015】
測定装置50は、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging)を有しており、移動体80の側面、前方及び後方の少なくとも一つを向いている。測定装置50は、測定装置50が搭載されている移動体80から、移動体80の周囲に位置する他の移動体82までの距離を測定する。測定装置50の測定結果を示す距離データは、測定位置情報に紐づけて、記憶部20を管理する装置に通信装置60を介して送信され、記憶部20に記憶される。
【0016】
なお、撮像装置40が撮像したフレーム画像に他の移動体82が含まれている場合、画像処理装置42は、フレーム画像を解析することにより、この他の移動体82から移動体80までの距離を算出してもよい。この場合、移動体80は測定装置50を有していなくてもよい。
【0017】
また、通信装置60は、移動体80に関する情報のうち、解析装置10の解析に必要な他の情報も、測定位置情報及び日時情報に紐づけて記憶部20を管理する装置に送信し、記憶部20に記憶させる。ここで送信される情報には、移動体80の速度を示す速度データが含まれる。
【0018】
図2は、解析装置10の機能構成を示す図である。解析装置10は、取得部110及び状態判断部120を有している。取得部110は、音声データ及び距離データを取得する。本実施形態において、取得部110は、記憶部20から音声データ及びこの音声データに対応する距離データを読み出す。例えば取得部110は、測定位置情報が同一の位置を示す音声データ及び距離データを読み出す。状態判断部120は、読み出した音声データを解析することにより、その音声データに対応する位置における走行路の状態を示すデータ(以下、状態データと記載)を生成する。この解析の際、状態判断部120は、距離データに基づいて、すなわち他の移動体82と移動体80の距離に基づいて、音声データの解析方法を設定する。この具体例については後述する。
【0019】
図3は、解析装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。解析装置10の主な構成は、集積回路を用いて実現される。この集積回路は、バス402、プロセッサ404、メモリ406、ストレージデバイス408、入出力インタフェース410、及びネットワークインタフェース412を有する。バス402は、プロセッサ404、メモリ406、ストレージデバイス408、入出力インタフェース410、及びネットワークインタフェース412が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ404などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ404は、マイクロプロセッサなどを用いて実現される演算処理装置である。メモリ406は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現されるメモリである。ストレージデバイス408は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどを用いて実現されるストレージデバイスである。
【0020】
入出力インタフェース410は、解析装置10を周辺デバイスと接続するためのインタフェースである。ネットワークインタフェース412は、解析装置10を通信網に接続するためのインタフェースである。この通信網は、例えばCAN(Controller Area Network)通信網、及び移動体80の外部の通信網である。そして、入出力インタフェース410及びネットワークインタフェース412の一方は、解析装置10の取得部110の一例であり、記憶部20と通信を行う。
【0021】
ストレージデバイス408は、解析装置10の各機能要素を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ404は、このプログラムモジュールをメモリ406に読み出して実行することで、解析装置10の各機能を実現する。
【0022】
なお、上記した集積回路のハードウェア構成は本図に示した構成に限定されない。例えば、プログラムモジュールはメモリ406に格納されてもよい。この場合、集積回路は、ストレージデバイス408を備えていなくてもよい。
【0023】
また、音声データ生成装置30、画像処理装置42、及び通信装置60のハードウェア構成も、
図3に示した解析装置10のハードウェア構成と同様である。なお、通信装置60の入出力インタフェース410は、音声データ生成装置30、画像処理装置42、及び測定装置50と接続する。
【0024】
図4の各図は、移動体80と他の移動体82の相対位置の例を示す図である。いずれの例においても、解析装置10の状態判断部120は、移動体80と他の移動体82の距離Lを用いて音声データの解析方法を決定する。
【0025】
図4(A)に示す例において、移動体80及び他の移動体82が走行している走行路は、複数の車線を有している。これら複数の車線は、同一の方向に進むためのものである。そして、移動体80及び他の移動体82は、互いに異なる車線を走行している。
【0026】
図4(B)に示す例において、移動体80及び他の移動体82は、同一の車線を走行している。そして、他の移動体82は、移動体80の前方(例えば一台前)を走行している。ただし、他の移動体82は、移動体80の一台後ろを走行している場合もある。
【0027】
図4(C)に示す例において、他の移動体82は、移動体80の対向車線を走行している。
【0028】
図5は、解析装置10が行う処理の一例を示す図である。まず、解析装置10の取得部110は、記憶部20から必要な情報を読み出す。必要な情報の一例は、音声データ及び距離データである。この際、取得部110は、測定位置情報が同一の位置を示す音声データ及び距離データを読み出す(ステップS20)。次いで、状態判断部120は、読み出した距離データを用いて、音声データの解析方法を設定する(ステップS40)。次いで、設定した解析方法に従って音声データを解析し、測定位置情報が示す位置における走行路の状態データを生成する。この状態データは、例えば路面の状態を特定する情報を含んでいる。この音声データの解析方法には様々な方法があるが、例えば音声データに含まれる特徴量を抽出し、この特徴量を、走行路の状態別に定められた基準データと比較することにより、状態データを生成してもよい。
【0029】
図6は、
図5のステップS40の第1例を示すフローチャートである。本図に示す例において、状態判断部120は、距離Lが基準以下の場合、他の移動体82に起因したノイズが大きいと推定されるため、そのタイミングで生成された音声データを解析対象から除く(ステップS402)。言い換えると、状態判断部120は、距離Lが基準値以下の場合、状態データの生成を行わない。ここで用いられる基準は、例えば固定値であるが、対象となっている走行路の種類(例えば一般道、有料道路、及び高速道路のいずれか)によって変えられてもよい。具体的には、走行路が高速道路の場合、一般道の場合と比較して距離Lの基準値を大きくする。本図に示す例は、移動体80と他の移動体82が
図4(A)~(C)のいずれの場合にも適用される。
【0030】
図7は、
図5のステップS40の第2例を示すフローチャートである。本図に示す例において、状態判断部120は、距離Lに応じて、解析アルゴリズムに含まれるパラメータの値を変える(ステップS412)。パラメータの例は、例えばノイズ除去用のフィルタの定数である。このフィルタの一例としては、周波数フィルタがある。本図に示す例も、移動体80と他の移動体82が
図4(A)~(C)のいずれの場合にも適用されが、特に
図4(A)及び(B)の場合、すなわち他の移動体82が移動体80と同一方向に走行している場合に好適である。
【0031】
図8は、
図5のステップS40の第3例を示すフローチャートである。本図に示す例において、状態判断部120は、他の移動体82の加速度を用いて音声データの解析方法を設定する。具体的には、状態判断部120は、距離Lが基準以下の場合、その音声データを解析対象から除く。
【0032】
まず、状態判断部120は他の移動体82の加速度を算出する(ステップS422)。この加速度は、例えば以下のようにして算出される。まず、状態判断部120は、互いに異なるタイミングにおける、移動体80と他の移動体82の距離データ、例えば時系列的に連続する距離データを取得する。この際、状態判断部120は、距離データの生成間隔を、例えば記憶部20に記憶されている日時情報を用いて認識する。この距離データは、例えば取得部110が記憶部20から読み出される。そして、状態判断部120は、この距離データが示す距離の変化を用いて、移動体80を基準とした他の移動体82の相対加速度を算出する。また、状態判断部120は、移動体80の加速度を取得する。この加速度は、例えば移動体80の速度の変化を用いて算出される。この算出処理は状態判断部120が行ってもよい。移動体80の速度は、例えば取得部110が記憶部20から読み出す。そして、状態判断部120は、この相対加速度と、移動体80の加速度を用いて、他の移動体82の加速度を算出する。
【0033】
次いで、状態判断部120は、他の移動体82の加速度を用いて、音声データを削除するための距離の基準を設定する(ステップS424)。例えば他の移動体82の加速度が正方向に大きい場合、他の移動体82のエンジン音に起因したノイズが大きい可能性が高いため、距離の基準を大きくする。一方、他の移動体82の加速度が正方向に大きい場合、他の移動体82のエンジン音に起因したノイズが大きい可能性が高いため、距離の基準を小さくする。そして、状態判断部120は、移動体80から他の移動体82までの距離Lが基準以下の場合、その音声データを解析対象から除く(ステップS426)。
【0034】
なお、撮像装置40が生成した動画に他の移動体82が含まれている場合、状態判断部120は、動画を構成するフレーム画像の中における他の移動体82の位置の変化を解析することにより、移動体80を基準とした他の移動体82の相対加速度を算出してもよい。
【0035】
また、
図7に示したように、状態判断部120が距離Lに応じて解析アルゴリズムに含まれるパラメータの値を変えてもよい。この場合、状態判断部120は、パラメータの値を決定するための距離Lの基準値が、他の移動体82の加速度によって変更する。
【0036】
以上、本実施形態によれば、解析装置10は、移動体80の走行音を含む音声データを解析することにより、移動体80が走行している走行路の状態を判断する。この際、音声データには、移動体80の周囲に位置する他の移動体82に起因したノイズが含まれる可能性がある。これに対して解析装置10は、他の移動体82から移動体80までの距離を用いて、音声データの解析方法を設定する。従って、解析装置10は精度よく走行路の状態を判断できる。
【0037】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態に係る解析装置10の使用環境を説明するための図である。本実施形態において、移動体80は第2通信装置70を有している。
【0038】
第2通信装置70は、他の移動体82の第2通信装置70と無線で通信を行い、他の移動体82に関する情報(以下、他車情報と記載)を受信する。ここで受信する他車情報は、他の移動体82の属性を特定するための属性情報、並びに他の移動体82の速度及び加速度の少なくとも一方を含んでいる。他の移動体82の属性情報は、他の移動体82の車種、車名、重量、タイヤ型番、及びタイヤの状態(空気圧、溝等)の少なくとも一つを含んでいる。さらに、他の移動体82の重量は、他の移動体82そのものの重量、乗員数の情報、荷物積載量の情報、他の移動体82そのものの重量に乗員数分の重量及び/又は積載量を加えた走行時の車両総重量、等である。車両総重量に関しては、例えば他の移動体82に搭載された荷重センサの検出値を用いて解析装置10が更新してもよい。そして、第2通信装置70が受信した情報は、通信装置60を介して記憶部20を管理する装置、例えば解析装置10に送信され、記憶部20に記憶される。この際、通信装置60は、移動体80の測定位置情報、すなわち測定位置を特定するための情報を、他車情報に紐づけて送信する。そして記憶部20は、他車情報を測定位置情報に紐づけて記憶する。
【0039】
図10は、本実施形態において解析装置10が行う処理を説明するためのフローチャートである。解析装置10の状態判断部120は、記憶部20に記憶されている他車情報を用いて、音声データの解析方法を設定する。
【0040】
具体的には、解析装置10の取得部110は、記憶部20から、音声データ及び距離データに加えて、他の移動体82の属性情報も読み出す(ステップS22)。この際、取得部110は、測定位置情報が同一の位置を示すデータを読み出す。そして状態判断部120は、距離データ及び属性情報を用いて、音声データの解析方法を設定する(ステップS40)。
【0041】
具体的には、状態判断部120は、移動体80から他の移動体82までの距離Lと、他の移動体82の属性情報の組み合わせに応じて、音声データの解析方法を設定する。例えば状態判断部120は、他の移動体82の属性情報によって、解析方法を設定する際に用いる距離Lの基準を変更する。
【0042】
具体例として、状態判断部120が、距離Lが基準以下の場合、その音声データを解析対象から除く場合について説明する。他の移動体82の属性情報によって、他の移動体82のエンジン音が大きいことを特定できる場合、状態判断部120は距離Lの基準を長くする。
【0043】
また状態判断部120が、距離Lに応じて解析アルゴリズムに含まれるパラメータの値を変える場合、状態判断部120は、このパラメータの値の設定基準を、他の移動体82の属性情報によって変える。例えば他の移動体82の属性情報によって、他の移動体82のエンジン音が大きいことを特定できる場合、状態判断部120は、パラメータの値を、距離Lが、読み出された距離データが示す値よりも小さい場合に用いられる値に設定する。
【0044】
なお、本実施形態において、状態判断部120は、
図7を用いて説明したように、他の移動体82の加速度を用いて音声データの解析方法を設定してもよい。この際、他の移動体82の加速度として、他車情報に含まれている他の移動体82の速度や加速度を用いてもよい。この場合、状態判断部120が行う演算量は少なくなる。
【0045】
以上、本実施形態に係る解析装置10は、第1の実施形態と同様に、精度よく走行路の状態を判断できる。さらに解析装置10は、他の移動体82の属性情報を用いて音声データの解析方法を設定するため、さらに精度よく走行路の状態を判断できる。
【0046】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0047】
10 解析装置
20 記憶部
30 音声データ生成装置
40 撮像装置
42 画像処理装置
50 測定装置
60 通信装置
70 第2通信装置
80 移動体
82 他の移動体
110 取得部
120 状態判断部