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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】プッシュチェーン
(51)【国際特許分類】
   F16G 13/20 20060101AFI20220202BHJP
【FI】
F16G13/20
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018080115
(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公開番号】P2019190486
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000207425
【氏名又は名称】大同工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 純
(72)【発明者】
【氏名】山田 誠
(72)【発明者】
【氏名】大江 正浩
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-314630(JP,A)
【文献】実開平4-129952(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外プレートの両端部をピンで連結した外リンクと、内プレートの両端部をブシュで連結した内リンクと、を前記ピンを前記ブシュに嵌挿して交互に連結し、前記外プレート及び前記内プレートの両端を直線状の当接面とし、前記外プレートの当接面同士及び前記内プレートの当接面同士を当接して直線状とし、かつ上記当接面の屈曲側を切欠いて一方向に屈曲可能としたプッシュチェーンにおいて、
前記外プレートの前記ピンを固定するピン孔の中心間距離である外ピッチをP1’、該ピン孔中心から前記当接面までの距離をE1、前記内プレートのブシュ孔の中心間距離である内ピッチをP2、該ブシュ孔中心から前記当接面までの距離をE2、前記ブシュの内径Dと前記ピンの外径dとの間の隙間(D-d)をクリアランスClとすると、
Cl≧2・E1-P2 ・・・(式1)
Cl≧P1’-2・E2 ・・・(式2)
であり、かつ前記プッシュチェーンが噛合するスプロケットの基準ピッチをPとすると、
P2=P ・・・(式4)
P1’=P+Cl ・・・(式5)
の各式1,2,4,5を満たすことを特徴とするプッシュチェーン。
【請求項2】
前記ブシュは、継ぎ目のないシームレスブシュであり、炭素を0.3~0.5[wt%]、マンガンを0.3~1.0[wt%]、クロムを0.5~1.5[wt%]、モリブデンを0.1~0.5[wt%]含む合金鋼材から形成され、熱処理により1200[MPa]以上の引張り強度を有する、
請求項1記載のプッシュチェーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向に屈曲可能であり、他方向に屈曲不可となるようにプレート端面を当接し、スプロケットの回転運動を直進運動として伝達するプッシュチェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図7に示すように、両端が直線状の当接面からなる外プレート2の両端部をピン3で連結した外リンク5と、同様な形状からなる内プレート6の両端部をブシュ7で連結しかつ該ブシュ7にローラ8を被嵌した内リンク9とを、ブシュ7にピン3を嵌挿することにより交互に連結したプッシュチェーン1は知られている(特許文献1参照)。該プッシュチェーン1は、一方向の屈曲に対しては上記外プレート2同士及び内プレート6同士の当接面2a,6aが当接して屈曲を阻止され、直進状に前進し、他方向の屈曲に対しては上記プレートのアール状の切欠き部2b,6bにより屈曲が可能になり、スプロケットに巻付き得る。
【0003】
特許文献1には、内プレート6及び外プレート2の長さをPl、外リンク5のピン孔中心距離をPo、内リンク9のブシュ孔中心距離をPiとし、ピンとブシュ間のクリアランスをClとすると、Pl-Po>Pi-Clになるように設定することが記載されている。従って、上記プッシュチェーンにおける隣接する各リンクのプレート間距離は、圧縮時(L+)が引張り時(L-)に対して上記クリアランス分小さくなり、圧縮時に内プレート及び外プレートの当接面が確実に当接して、座屈を発生することなく安定して押圧力を作用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-314630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記プッシュチェーン1は、スプロケットに巻付く為に、引張り時のピン間距離がプッシュチェーンとして正規のピッチに規定され、かつ圧縮時と引張り時でのピン及びブシュ中心距離を異にしている。
【0006】
このため、外プレート2及び内プレート6を、共にクリアランスを考慮してピッチを設計しなければならず、設計が面倒であると共に、圧縮時と引張り時とのピッチ差が大きくなり過ぎる傾向にあり、騒音の発生、ブシュに衝撃荷重が作用する等の不具合が生じる虞がある。
【0007】
特に、プッシュチェーンがスプロケットに繰込まれる際、騒音を発生することがある。
【0008】
そこで、本発明は、上記不具合を解決したプッシュチェーンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、外プレート(12)の両端部をピン(13)で連結した外リンク(15)と、内プレート(16)の両端部をブシュ(17)で連結した内リンク(19)と、を前記ピン(13)を前記ブシュ(17)に嵌挿して交互に連結し、前記外プレート(12)及び前記内プレート(16)の両端を直線状の当接面(22)(26)とし、前記外プレート(12)の当接面(22)同士及び前記内プレート(16)の当接面(26)同士を当接して直線状とし、かつ上記当接面の屈曲側を切欠いて(23,27)一方向に屈曲可能としたプッシュチェーン(11)において、
前記外プレート(12)の前記ピン(13)を固定するピン孔(21)の中心(O)間距離である外ピッチをP1、該ピン孔(21)中心(O)から前記当接面(22)までの距離をE1、前記内プレート(16)のブシュ孔(25)の中心(O)間距離である内ピッチをP2、該ブシュ孔(25)中心(O)から前記当接面(26)までの距離をE2、前記ブシュ(17)の内径Dと前記ピン(13)の外径dとの間の隙間(D-d)をクリアランスClとすると、
Cl≧2・E1-P2 ・・・(式1)
Cl≧P1-2・E2 ・・・(式2)
を満たすことを前提とする。
【0010】
これにより、隣接する外プレート間隔及び内プレート間隔は、クリアランス分余分があり、直線状態にあるプッシュチェーンは、当接面同士が確実に接触して、真直状態に保持することができる。
【0011】
上記前提のプッシュチェーンにおいて、内プレート(16)のブシュ孔間隔(内ピッチ)P2は、スプロケットの基準ピッチPに合せた状態で(P2=P)、外プレート(12)のピン孔間隔(外ピッチ)P1を変更することにより、各状況に対応することができる。即ち、外プレート(12)を変更するだけで、内プレート(16)等の他の部材をそのままにして、各種状況に対応することができる。
【0012】
例えば、内ピッチP2を基準ピッチPに維持して(P2=P)、外ピッチP1をクリアランス分短くする(P1=P-Cl)。
【0013】
これにより、プッシュチェーン(11)に引張り力が作用した場合、該プッシュチェーン(11)のブシュ間距離は、すべて基準ピッチとなる。
【0014】
内ピッチP2を基準ピッチに維持し、外ピッチP1’をクリアランス分長くする(P1’=P+Cl)。
【0015】
これにより、プッシュチェーン(11’)に圧縮力が作用した場合、該プッシュチェーン(11’)のブシュ間距離は、すべて基準ピッチとなり、プッシュチェーン(11’)をスプロケットに噛込む際の騒音の発生を防止することができる。
【0016】
ブシュ(11)を図6の成分表の合金鋼とし、かつシームレスブシュとすると共に引張り強度を1200[MPa]以上とするので、強度及び靭性の高いブシュにより、衝撃荷重に対する耐性及び耐久性を有する。
【0017】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0018】
ブシュとピンの間のクリアランスにより外プレート同士及び内プレート同士の当接面が確実に当接して真直状態とするプッシュチェーンにあって、内プレートのブシュ孔中心間隔である内ピッチは、スプロケットの基準ピッチに維持して、外プレートピン孔中心間隔である外ピッチをクリアランスを考慮して変更することにより各状況に対応することができる。
【0019】
外ピッチP1’=P+Clとすると、プッシュチェーンに圧縮力が作用している状態で、全てのブシュ間距離を基準ピッチとすることができる。
【0020】
ブシュを高い張度、靭性及び耐久性を有するものとして、クリアランスに基づき負荷の方向変化に伴ってピンがブシュに衝突しても、充分に耐えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】プッシュチェーンの正面図であり、(a)は、外プレート、(b)は、内プレート、(c)は、プッシュチェーンを示す。
図2】プッシュチェーンの正面図であり、(a)は引張り状態、(b)は圧縮状態を示す。
図3】プッシュチェーンをスプロケットに繰込む状態を示し、(a)と(b)とは異なる状態を示す。
図4】圧縮状態におけるプッシュチェーンを示す正面図。
図5】プッシュチェーンがスプロケットに噛合う状態を示す正面図で、(a)と(b)は、チェーンの進行状態の異なる状態を示す。
図6】ブシュ材料の化学成分を示す図。
図7】一般のプッシュチェーンを示し、(a)は平面図、(b)は正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の基礎となるプッシュチェーンを説明する。プッシュチェーン11は、図1に示すように、1対の外プレート12の両端部をピン13で連結した外リンク15と、1対の内プレート16の両端部をブシュ17で連結した内リンク19と、を有し、左右1対の外プレート12を外側にして、ピン13をブシュ17に嵌挿して外リンク15と内リンク19とを交互に連結して構成される。外プレート12は、ピン13を圧入・固定する1対のピン孔21,21と、その前後方向両端面にあって直線状からなる当接面22,22と、その下方(屈曲方向)に位置するアール状の切欠き部23,23とを有する。内プレート16は、ブシュ17を圧入・固定する1対のブシュ孔25,25と、その前後方向両端面にあって直線状からなる当接面26,26と、その下方(屈曲側)に位置するアール状の切欠き部27,27とを有する。なお、図1では見えないが、図7(a)に示すように、ブシュ17にはローラが遊嵌している。なお、該ローラはなくてもよい。
【0023】
ピン13にブシュ17が相対回転自在に嵌合して、上記プッシュチェーン11は、屈曲してスプロケットと噛合し得るが、このためピン13とブシュ17との間には所定クリアランスClが存在する。即ち、ピン13の直径をd、ブシュ17の内径をDとすると、クリアランスClは、Cl=(D-d)となる。ピン13及びブシュ17の中心O,Oを結ぶ線が各リンク15,19に力を伝達するピッチラインL-Lとなるが、上記当接面22,26は、外プレート12及び内プレート16の両端面における上記ピッチラインL-Lの上方に配置され、該ピッチラインL-Lの下方には上記切欠き部23,27が形成される。当接面22,26は、上記ピッチラインL-Lに直交する中心線v-vと平行になっている。
【0024】
外プレート12のピン孔21の中心間距離O-Oである外ピッチをP1、該ピン孔21の中心Oから外プレート端の当接面22までの距離をE1、内プレート16のブシュ孔25の中心間距離O-Oである内ピッチをP2、該ブシュ孔の中心Oから内プレート端の当接面26までの距離をE2とすると、上記クリアランスClは、下記の式1、式2を満たすように設定される。
Cl≧2・E1-P2 ・・・(式1)
Cl≧P1-2・E2 ・・・(式2)
【0025】
これにより、プッシュチェーン11は、図1(c)に示すように、両端から圧縮力F1が作用する圧縮状態では、外リンク15にあっては、隣接する外プレート12の当接面22同士が確実に当接し(式1)、かつ内リンク19にあっては、隣接する内プレート16の当接面26同士が確実に当接して(式2)、正確な真直状態を保持する。
【0026】
上記プッシュチェーン11は、内プレート16の両ブシュ孔25,25の中心O-Oの間隔(内ピッチ)P2が、該プッシュチェーンが噛合するスプロケットのピッチ(基準ピッチ)Pと同一寸法からなり(P2=P)、外プレート12の両ピン孔21,21の中心O-O間の間隔(外ピッチ)P1が、上記基準ピッチPより上記クリアランスCl(=D-d)だけ短く設定される(P1=P-Cl)。
【0027】
即ち、外プレート12のピッチ(外ピッチ)をP1、内プレート16のピッチ(内ピッチ)をP2、スプロケットの基準ピッチをPとすると、本プッシュチェーン11は、下記の式3、式4を満たすように設定される。
P1=P-Cl ・・・(式3)
P2=P ・・・(式4)
【0028】
上記プッシュチェーン11がスプロケットに噛合する際、該プッシュチェーン11は、引張り状態となってスプロケットに噛込む。該引張り状態のプッシュチェーン11は、図2(a)に示すように、引張り方向の力F2が作用し、ピン13とブシュ17とのクリアランスClは、該力F2方向に寄る。従って、内プレート16に嵌合する1対のブシュ17,17(従ってローラ)の中心の間隔である上記内ピッチP2は、基準ピッチPであるスプロケットピッチと同じである。隣接する内プレートの1対のブシュ、即ち1個の外プレート12の1対のピン13,13に嵌挿しているブシュ17,17(従ってローラ)の中心の間隔は、上記隣接している内プレート16,16同士がクリアランスCl分離れているため、上記外ピッチP1から該離間長さS1(=Cl)だけ長くなり、P1+S1=P-Cl+Cl=P、即ち基準ピッチPとなる。
【0029】
これにより、本プッシュチェーン11は、引張り力F2が作用する状態にあっては、外プレート12及び内プレート16の各当接面22,26間に充分な隙間S1を有し、外リンク15及び内リンク19を矢印M1方向に確実に屈曲し得、かつスプロケットピッチ(基準ピッチ)Pに対応するピッチにて、図示しないローラがスプロケットに噛込んで、正確に直進方向に押出し又は引込むことができる。
【0030】
スプロケットから送出された上記プッシュチェーン11は、直進状態となって被作動体に押圧力を作用する。この状態では、本プッシュチェーン11は、図2(b)に示すように、圧縮力F1が作用する。この状態では、上記ブシュ17とピン13との間のクリアランスClにより、各外プレート12間及び内プレート16間は移動し得、隣接する外プレート12及び内プレート16の当接面22,26同士が当接し、矢印M2方向の屈曲が阻止されて、スプロケットの回転に伴って直進状に押される。この際、本プッシュチェーン11は、当接面同士の当接により長さ方向が規定され、ピン13とブシュ17とはクリアランスClにより自由状態となっているが、設計上は、隣接する外プレート12間のピッチは、内ピッチP2即ち基準ピッチ(スプロケットピッチ)Pとなり(P2=P)、隣接する内プレート16間のピッチは、外ピッチP1(=P-Cl)となる。
【0031】
図3は、真直状態にあるプッシュチェーン11が、矢印Sに示す方向に引込まれて、スプロケットに噛合する状態を示す。駆動スプロケット30は、図3(a)において、プッシュチェーン11のローラにスプロケット30の歯30aが噛込み、スプロケットの矢印T方向の回転に伴ってプッシュチェーン11は、屈曲して巻付く。この際、プッシュチェーン11は、被作動体から圧縮方向の負荷が作用した状態にあり、スプロケット30の回転に伴って、矢印S方向に引込まれる。
【0032】
矢印S方向に引込まれるプッシュチェーン11は、図2(b)に示すように、圧縮状態にあり、各リンク15,19の外プレート12及び内プレート16同士の当接面22,26が当接して真直状態にあり、被作動体を移動するが、歯30aに噛込まれてスプロケット30に巻付く際には、上記当接面22,26の当接が外れる。この際、内リンク19の内ピッチP2、従ってブシュ孔25に嵌合しているブシュ17(及びローラ)の中心の間隔P2は、基準ピッチPである。外リンク15の外ピッチP1は、上述した通り、P1=P-Clであるが、該外ピッチのピン13に遊嵌しているブシュ17の中心間隔は、左右両方のピン13及びブシュ17のクリアランスClが詰ることになり、外リンク15のブシュ17(従ってローラ)間隔は、基準ピッチPに比しクリアランスClの2倍分短くなる(P-2Cl)。このため、図3(a)に示すように、スプロケット30に繰込まれる直前の外プレート12及び内プレート16は、各ピン13(ブシュ及びローラ)の中心を結ぶピッチライン軌跡Lが、正規のピッチライン(スプロケットのピッチ円の接線状に延びるライン)から内側に入り込み、外プレート12の各当接面22,22の外側部分(切欠き部23の反対側)が僅かに離れる。即ち、スプロケット30は、隣接する歯に各ローラが噛合している各プレートが多角形状になることに起因して、プレートの軸方向中央部分がスプロケットピッチ円の内側を通ることになり、外リンクのブシュ間隔(ローラ間距離)が上述したように短いことと相俟って、上記正規のピッチラインの内側に入り込む。ついで、図3(b)に示すように、プッシュチェーン11の進行に伴い、上記離れた当接面22が当接し、正規の真直状態になるが、この際、上記当接面22同士が接触することによる異音が発生する。
【0033】
ついで、上記異音の発生を低減する本発明の実施の形態について説明する。図1(a)に示した外プレート12のピン孔21の中心O-O間隔である外ピッチP1’を、基準ピッチPにクリアランスClを加えた値に設定し、図1(b)に示した内プレート16のブシュ孔25の中心O-O間隔である内ピッチP2は、先の形態と同様に基準ピッチPに設定する。
【0034】
即ち、外プレート12のピッチ(外ピッチ)をP1’、内プレート16のピッチ(内ピッチ)をP2、スプロケットの基準ピッチをPとすると、下記の式4,5を満たすように設定する。
P2=P ・・・(式4)
Pl’=P+Cl ・・・(式5)
【0035】
本実施の形態によるプッシュチェーン11’は、図4に示すように、圧縮状態にある場合、隣接する外プレート12のブシュ17(ローラ)間隔は、1対の内プレートのブシュ17の間隔である内ピッチP2であって基準ピッチPであり、隣接する内プレート16のブシュ(ローラ)間隔は、外プレート12のピッチP1’に、引張り時の各プレート間の隙間S1(=Cl)を引いた値となり、P1’-S1=P+Cl-Cl=Pとなる。即ち、圧縮状態におけるプッシュチェーン11’は、すべてのピッチがスプロケット基準ピッチPとなり、ピッチラインLは、スプロケットピッチ径の接線状となる。これにより、各プレートの当接面上側部が拡がることがなく、上述した異音の発生を防止することができる。
【0036】
なお、クリアランスClは、小さな値であるため、本発明にあって、ピッチ及びクリアランス等の数値は、充分に大きな公差を含むものであって、具体的な数値の実証が不充分であっても、本発明に沿う設計意図があるものは、本発明に含まれる。
【0037】
図5は、プッシュチェーン11(又は11’)がスプロケット30に巻付いた状態を示す。スプロケット30の歯30aにプッシュチェーン11のローラ18が係合して、該プッシュチェーン11をチェーン進行方向Uに送り出す。図5(a)に示すように、スプロケット歯30aにローラ18が係合して、該スプロケット30から動力伝達される状態では、プッシュチェーン11は、ピン13がブシュ17の進行方向後側の面に接触し(接触面gを示す)、クリアランスClは、前側に片寄る。図5(b)に示すように、前方側の外又は内プレート(16と表記)が、スプロケットから外れて、その後方のプレート(16と表記)に当接して押圧されると、該前方プレート16に作用する負荷方向が変わり、ブシュ17は相対移動して、ピン13の上面に接触する(接触面g1)。即ち、該ブシュ17は、ピン13の下面に接触gした状態からピン13の上面に接触g1するように切換わり、これによりプレート12,16後側の各ブシュ17は、クリアランスに帰因する衝撃力が作用する。
【0038】
本実施の形態にあっては、プッシュチェーンの前方側のブシュ若しくは前方側及び後方側の全ブシュを、継ぎ目のないシームレスブシュとし、図6に示す合金鋼を用い、適切な熱処理を施した引張り強度1200Mpa以上の鋼材を用いる。合金鋼は、炭素C;0.3~0.5[wt%]、マンガンMn;0.3~1.0[wt%]、クロムCr;0.5~1.5[wt%]、モリブデンMo;0.1~0.5[wt%]を含む。
【0039】
これにより、上記ブシュ17に衝撃力が作用しても、充分な耐力及び耐久性を備える。
【0040】
上記強い強度及び靭性を有するブシュ17は、上述した外ピッチP1=P-Clからなるプッシュチェーン11に用いて有効であり、上記外ピッチP1’=P+Clからなるプッシュチェーン11’に適用してもよい。
【0041】
本プッシュチェーンは、1対の外プレート及び内プレートからなるチェーンを用いたが、これに限らず、長いピンにより複数のチェーンを並設したものでもよく、また外プレート及び内プレートを複数枚重ねて用いるものでもよい。
【符号の説明】
【0042】
11,11’ プッシュチェーン
12 外プレート
13 ピン
15 外リンク
16 内プレート
17 ブシュ
19 内リンク
21 ピン孔
22 当接面
23 切欠き部
25 ブシュ孔
26 当接面
30 スプロケット
P1,P1’ 外ピッチ
P2 内ピッチ
P 基準ピッチ
Cl クリアランス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7