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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】ポリゴンカッタユニット及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23C 3/04 20060101AFI20220202BHJP
   B23C 5/12 20060101ALI20220202BHJP
   B23C 5/22 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
B23C3/04
B23C5/12 Z
B23C5/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018080446
(22)【出願日】2018-04-19
(65)【公開番号】P2019188488
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慎也
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-006224(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10104181(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0036851(US,A1)
【文献】特開2011-161542(JP,A)
【文献】特開2009-113139(JP,A)
【文献】米国特許第04141278(US,A)
【文献】実開昭56-147022(JP,U)
【文献】実開昭63-189519(JP,U)
【文献】特開2008-264937(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0116915(US,A1)
【文献】特開2010-036275(JP,A)
【文献】中国実用新案第202934122(CN,U)
【文献】特表2018-513024(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0142582(US,A1)
【文献】特開平08-011010(JP,A)
【文献】中国実用新案第201300216(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00-25/06
B23B 27/00-29/34
B23B 31/00-33/00
B23C 1/00-9/00
B23Q 1/00-1/76
B23Q 9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持しつつ回転させる主軸本体部の外周に刃先が位置し、前記主軸本体部の周方向に沿って配置され、前記主軸本体部と一体で回転する複数のポリゴンカッタと、
前記複数のポリゴンカッタを保持するカッタ保持部と、を備え、
前記主軸本体部は、
円筒状をなし、ワーク回転用モータの駆動力により軸回転する主軸部と、
前記主軸部内に位置し、前記ワークを把持するコレットと、
前記主軸部と前記コレットの間に位置し、前記ワークの回転軸に沿う方向に移動するコレットスリーブと、を備え、
前記コレットは、
外周面に形成され、前記コレットの先端に向かうにつれて前記コレットの径方向外側へ傾斜し、前記コレットスリーブの先端側への移動に伴い前記ワークを把持するように前記コレットを縮径させるための傾斜面と、
前記主軸部及び前記コレットスリーブよりも先端側に突出して形成されるコレット先端部と、を備え、
前記カッタ保持部は、
前記カッタ保持部を前記主軸部に装着するために前記主軸部の外周面に螺合するねじ部と、
前記カッタ保持部が前記主軸部に装着された状態で、前記コレット先端部の周囲に位置し、前記コレット先端部の外周面に対して隙間を持って対向するカッタ保持先端部と、を備え、
前記カッタ保持先端部の先端面には、前記複数のポリゴンカッタが取り付けられている、
ことを特徴とするポリゴンカッタユニット。
【請求項2】
前記ポリゴンカッタユニットは、既存の工作機械におけるチャックナットと交換可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のポリゴンカッタユニット。
【請求項3】
前記カッタ保持先端部の前記先端面には、前記複数のポリゴンカッタのみが取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリゴンカッタユニット。
【請求項4】
前記ポリゴンカッタは、菱形板状をなし、鋭角をなす2つの前記刃先を有し、
前記2つの刃先の一方は、前記カッタ保持部の外周面よりも外側に位置し、
前記2つの刃先の他方は、前記先端面に位置する、
請求項1から3の何れか一項に記載のポリゴンカッタユニット。
【請求項5】
ワークを把持しつつ回転させる第1の主軸と、
請求項1からの何れか一項に記載のポリゴンカッタユニット及び前記主軸本体部を含み、前記第1の主軸に向き合うように位置する第2の主軸と、
前記第2の主軸の位置を移動させる移動機構と、
前記第1の主軸を介して前記第1の主軸により把持された前記ワークを回転させつつ、前記第2の主軸を介して前記第2の主軸と一体で前記ポリゴンカッタユニットを前記ワークと同一方向に回転させた状態で、前記複数のポリゴンカッタの前記刃先が前記ワークの外周面に接するように前記移動機構を通じて前記第2の主軸の位置を移動させる制御部と、を備える、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項6】
前記第1の主軸により回転させられる前記ワークに接することで前記ワークを加工する工具ユニットを備え、
前記制御部は、前記第1の主軸により把持された前記ワークを回転させた状態で、前記工具ユニットにて前記ワークを加工しつつ、前記第2の主軸を回転させることにより前記複数のポリゴンカッタにて前記ワークを切削する、
ことを特徴とする請求項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリゴンカッタユニット及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークの外周面を多角形に加工するポリゴン加工が知られている。例えば、特許文献1に記載のポリゴン加工装置は、ワークを把持しつつ軸回転させる主軸と、ワークを切削する複数の刃物が周方向に沿って配置されるポリゴンカッタと、ポリゴンカッタを軸回転させるモータを有する回転工具台と、を備える。主軸とポリゴンカッタの回転比が所定の比率に設定されることにより、ワークについてポリゴン加工を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-264937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のポリゴン加工装置においては、回転工具台のモータは、ドリル等の小径の工具を回転させてワークを加工する出力しか持たない。このため、このモータは、ドリル等の工具よりもサイズが大きいポリゴンカッタを回転させるのに十分な出力を持たず、このような状況下で加工を行った場合にはワークの加工精度が低くなる一因となっていた。一方、このモータとして、ポリゴンカッタを回転させるのに十分な出力を持つ高出力のモータを採用した場合には、モータ、ひいては装置が大型化するため好ましくなかった。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、大型化を抑制しつつ、高出力でポリゴン加工を行うことができるポリゴンカッタユニット及び工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るポリゴンカッタユニットは、ワークを把持しつつ回転させる主軸本体部の外周に刃先が位置し、前記主軸本体部の周方向に沿って配置され、前記主軸本体部と一体で回転する複数のポリゴンカッタと、前記複数のポリゴンカッタを保持するカッタ保持部と、を備え、前記主軸本体部は、円筒状をなし、ワーク回転用モータの駆動力により軸回転する主軸部と、前記主軸部内に位置し、前記ワークを把持するコレットと、前記主軸部と前記コレットの間に位置し、前記ワークの回転軸に沿う方向に移動するコレットスリーブと、を備え、前記コレットは、外周面に形成され、前記コレットの先端に向かうにつれて前記コレットの径方向外側へ傾斜し、前記コレットスリーブの先端側への移動に伴い前記ワークを把持するように前記コレットを縮径させるための傾斜面と、前記主軸部及び前記コレットスリーブよりも先端側に突出して形成されるコレット先端部と、を備え、前記カッタ保持部は、前記カッタ保持部を前記主軸部に装着するために前記主軸部の外周面に螺合するねじ部と、前記カッタ保持部が前記主軸部に装着された状態で、前記コレット先端部の周囲に位置し、前記コレット先端部の外周面に対して隙間を持って対向するカッタ保持先端部と、を備え、前記カッタ保持先端部の先端面には、前記複数のポリゴンカッタが取り付けられている。
【0007】
また、前記ポリゴンカッタユニットは、既存の工作機械におけるチャックナットと交換可能に構成される、ようにしてもよい。
【0008】
また、上記ポリゴンカッタユニットにおいて、前記カッタ保持先端部の前記先端面には、前記複数のポリゴンカッタのみが取り付けられている、ようにしてもよい。
【0009】
また、上記ポリゴンカッタユニットにおいて、前記ポリゴンカッタは、菱形板状をなし、鋭角をなす2つの前記刃先を有し、前記2つの刃先の一方は、前記カッタ保持部の外周面よりも外側に位置し、前記2つの刃先の他方は、前記先端面に位置する、ようにしてもよい。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る工作機械は、ワークを把持しつつ回転させる第1の主軸と、前記ポリゴンカッタユニット及び前記主軸本体部を含み、前記第1の主軸に向き合うように位置する第2の主軸と、前記第2の主軸の位置を移動させる移動機構と、前記第1の主軸を介して前記第1の主軸により把持された前記ワークを回転させつつ、前記第2の主軸を介して前記第2の主軸と一体で前記ポリゴンカッタユニットを前記ワークと同一方向に回転させた状態で、前記複数のポリゴンカッタの前記刃先が前記ワークの外周面に接するように前記移動機構を通じて前記第2の主軸の位置を移動させる制御部と、を備える。
【0012】
また、上記工作機械において、前記第1の主軸により回転させられる前記ワークに接することで前記ワークを加工する工具ユニットを備え、前記制御部は、前記第1の主軸により把持された前記ワークを回転させた状態で、前記工具ユニットにて前記ワークを加工しつつ、前記第2の主軸を回転させることにより前記複数のポリゴンカッタにて前記ワークを切削する、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大型化を抑制しつつ、高出力でポリゴン加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械を模式的に示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る工作機械を模式的に示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る背面主軸の断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る背面主軸の側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る工作機械を模式的に示す平面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る工作機械を模式的に示す平面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る加工処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るポリゴンカッタユニット及び工作機械について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、工作機械1は、円柱状の被加工物であるワークWの前面及び背面を加工する旋盤である。以下では、加工中のワークWの回転軸に沿った方向を「Z軸方向」といい、そのZ軸方向に直交する鉛直方向を「Y軸方向」といい、Y軸及びZ軸方向に垂直な方向を「X軸方向」という。
【0016】
図1に示すように、工作機械1は、工作機械1全体の台であるベッドSと、第1の主軸ユニットである主軸ユニット10と、第1の工具ユニット55を有する工具移動機構40と、第2の主軸ユニットである背面主軸ユニット70と、制御部300と、図2に示すように、第2の工具ユニット20と、を備える。
【0017】
図1に示すように、主軸ユニット10は、ワークWを把持しつつ回転させる。具体的には、主軸ユニット10は、主軸11と、主軸11を回転可能に支持する主軸台12と、主軸台12をZ軸方向に移動させる第1Z軸スライド機構15と、を備える。
【0018】
主軸11は、ワークWをその外周面から把持するチャック11aを備える。主軸台12には、ワーク回転用モータ12aが内蔵されている。このワーク回転用モータ12aは、制御部300による制御のもと、主軸11及び主軸11に把持されるワークWを一体で軸回転させる。
【0019】
図1に示すように、第1Z軸スライド機構15は、ベッドS上に取り付けられた軸受部15aと、軸受部15aに軸支されてZ軸方向に伸びるボールねじ15bと、ボールねじ15bを回転させる第1Z軸モータ15cと、ボールねじ15bに螺合する第1Z軸スライド部15dと、を備える。第1Z軸スライド部15dには、主軸台12が連結されている。
第1Z軸モータ15cが駆動することで、ボールねじ15bが回転し、これにより、第1Z軸スライド部15dは主軸ユニット10とともにZ軸方向に移動する。従って、主軸ユニット10及び第1Z軸スライド機構15により、ワークWを軸回転させながら、ワークWをZ軸方向に移動させることができる。
【0020】
図1に示すように、工具移動機構40は、ワークWを加工するための工具群55a1,55a2をX軸方向及びY軸方向に移動させるための機構である。具体的には、工具移動機構40は、ベッドSに固定された固定台41と、固定台41に取り付けられたX軸移動部42と、X軸移動部42に取り付けられたY軸移動部43と、を備える。固定台41には、Z軸方向に貫通する空洞部41hが設けられている。空洞部41hには、主軸11に把持されたワークWが挿通可能である。
【0021】
図1に示すように、Y軸移動部43は、X軸移動部42のX軸スライド部42dの内部に設けられた軸受部43aと、軸受部43aに軸支されてY軸方向に伸びるボールねじ43bと、ボールねじ43bを回転させるY軸モータ43cと、ボールねじ43bに螺合するとともに第1の工具ユニット55が固定されるY軸スライド部43dと、を備える。Y軸モータ43cが駆動することで、ボールねじ43bが軸回転し、これにより、Y軸スライド部43dは第1の工具ユニット55とともにY軸方向に移動する。
【0022】
X軸移動部42は、Y軸移動部43と同様に構成され、Y軸移動部43と異なってX軸方向に沿って延びる。X軸移動部42は、X軸スライド部42dをY軸移動部43及び第1の工具ユニット55とともにX軸方向に移動させる。
【0023】
第1の工具ユニット55は、工具保持部55bと、工具保持部55bに保持される工具群55a1,55a2と、を備える。工具群55a1は、複数のバイトから構成され、工具群55a2は、複数のドリルから構成されている。工具群55a1は、X軸方向に沿い、かつ、その刃先が主軸11に把持されるワークWの外周面に向かうように工具保持部55bによって保持される。工具群55a2は、Z軸方向に沿い、その先端が主軸11に把持されるワークWの端面に向かうように工具保持部55bによって保持される。X軸移動部42及びY軸移動部43により、工具群55a1,55a2を回転するワークWに接触させることでワークWを加工することができる。
例えば、図2に示すように、工具群55a1は、ワークWの外周面を切削する切削バイト55a3と、ワークWを切断する突切りバイト55a4と、を備える。
第2の工具ユニット20は、工具保持部21と、工具保持部21に固定される工具群22と、を備える。工具群22は、バイト又はドリルから構成され、その刃先が背面主軸71に把持されるワークWの背面に向かうように工具保持部21によって保持される。
【0024】
図1に示すように、背面主軸ユニット70は、Z軸方向に主軸ユニット10と向かい合う位置に設けられている。背面主軸ユニット70は、背面主軸71と、背面主軸71を回転可能に支持する背面主軸台72と、第2Z軸スライド機構75と、X軸スライド機構76と、を備える。
第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76は、それぞれ上述した第1Z軸スライド機構15と同様に構成される。X軸スライド機構76は、第2Z軸スライド機構75及び背面主軸ユニット70をX軸方向に移動させる。第2Z軸スライド機構75は、背面主軸ユニット70をZ軸方向に移動させる。従って、第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76により、背面主軸ユニット70をZ軸方向及びX軸方向に沿う水平方向に移動させることができる。
【0025】
背面主軸台72には、ワーク回転用モータ72aが内蔵されている。ワーク回転用モータ72aは、制御部300による制御のもと、後述するポリゴンカッタユニット74を含む背面主軸71及び背面主軸71に把持されるワークWを一体で軸回転させる。ワーク回転用モータ72aは、工具群55a2のドリルを回転させる図示しないモータよりも高出力である。
【0026】
図3及び図4に示すように、背面主軸71は、ポリゴンカッタユニット74と、ポリゴンカッタユニット74が装着される本体部71dと、を備える。本体部71dは、主軸部71aと、コレットスリーブ71bと、コレット71cと、を備える。
【0027】
主軸部71aは、円筒状をなし、ワーク回転用モータ72aの駆動力により軸回転する。主軸部71aの外周面には、ポリゴンカッタユニット74が螺合するねじ部71a1が形成されている。
【0028】
コレット71cは、主軸部71a内に位置し、ワークWの外周面を把持可能に、周方向に沿って複数に分割された円筒状をなす。コレット71cは、主軸部71aよりも先端側に突出する。コレット71cの外周面には、コレット71cの先端に向かうにつれて径方向外側へ傾斜する傾斜面71c1が形成されている。
【0029】
コレットスリーブ71bは、主軸部71aとコレット71cの間に位置し、円筒状をなす。コレットスリーブ71bは、制御部300による制御のもと、図示しないエアシリンダ等の駆動源により、自身の中心軸に沿うZ軸方向に移動する。コレットスリーブ71bは、コレット71cの先端側に移動することにより、コレット71cの傾斜面71c1を介して、コレット71cを縮径させる。コレット71cは縮径することによりコレット71c内のワークWを把持する。
【0030】
図3及び図4に示すように、ポリゴンカッタユニット74は、背面主軸71の本体部71dに装着され、背面主軸71と一体で回転することにより、ワークWについてポリゴン加工を行うための部材である。詳しくは、ポリゴンカッタユニット74は、複数のポリゴンカッタ74aと、カッタ保持部74bと、を備える。
カッタ保持部74bは、背面主軸71の本体部71dの先端側に装着されるチャックナットである。カッタ保持部74bは、円環状に形成され、複数のポリゴンカッタ74aを保持した状態で主軸部71aに装着される。具体的には、カッタ保持部74bは、側周部74b1と、先端部74b2と、を備える。側周部74b1は、主軸部71aの外周を囲み、Z軸方向に延びる円筒状をなす。側周部74b1の内周面には、主軸部71aのねじ部71a1に螺合するねじ部74b3が形成されている。ポリゴンカッタユニット74のねじ部74b3が主軸部71aのねじ部71a1に螺合することにより、ポリゴンカッタユニット74は背面主軸71の本体部71dに固定される。
先端部74b2は、側周部74b1の先端から側周部74b1の径方向内側に向けて延びる円環状をなす。先端部74b2は、コレット71cの先端側の外周面に隙間を持って対向する。先端部74b2の先端面には、複数のカッタ収容凹部74b4が形成されている。複数のカッタ収容凹部74b4は、ポリゴンカッタユニット74の周方向に沿って等角度間隔で配置されている。本例では、6つのカッタ収容凹部74b4が60°間隔で配置されている。カッタ収容凹部74b4は、ポリゴンカッタ74aの位置決め用の穴であり、Z軸方向から見て、略菱形をなし、ポリゴンカッタユニット74の外周面に到達している。
【0031】
ポリゴンカッタ74aは、菱形板状をなし、ワークWを切削する鋭角をなす刃先74pを有する。複数のポリゴンカッタ74aは、それぞれ複数のカッタ収容凹部74b4に嵌め込まれる。ポリゴンカッタ74aは、カッタ収容凹部74b4内においてカッタ保持部74bの先端面に沿う。各ポリゴンカッタ74aの刃先74pは、カッタ保持部74bの外周面よりも外側に位置する。ポリゴンカッタ74aは、カッタ収容凹部74b4に嵌め込まれた状態で、ねじ74dによりカッタ保持部74bに固定される。ねじ74dは、ポリゴンカッタ74aの中心に位置する図示しない孔を通過して、カッタ収容凹部74b4の底面に形成される図示しないねじ穴に螺合する。本例では、6つのポリゴンカッタ74aがポリゴンカッタユニット74の周方向に沿って60°間隔で配置されている。
【0032】
例えば、複数のポリゴンカッタ74aのうち何れかが摩耗した場合に、その摩耗したポリゴンカッタ74aを新しいポリゴンカッタ74aに付け替えてもよいし、その摩耗したポリゴンカッタ74aをZ軸方向に延びる回転中心軸として180°回転させて摩耗していない刃先74pを外周側に向けてもよい。
【0033】
制御部300は、工作機械1の各部の動作を制御するものであり、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)、CPUによる後述する加工処理等の手順を定義したプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)等を備える。制御部300は、数値制御(NC(Numerical Control))によって、主軸11及び背面主軸71を軸回転させ、主軸ユニット10をZ軸方向に移動させ、工具移動機構40をX軸方向及びY軸方向に移動させ、背面主軸ユニット70をX軸方向及びZ軸方向に移動させる。
【0034】
次に、工作機械1の加工処理の手順について図7のフローチャート及び図2図5及び図6の平面図を参照しつつ説明する。制御部300は、ROMに記憶されたプログラムに従って当該フローチャートに係る加工処理を繰り返し実行する。
【0035】
まず、制御部300は、図2に示すように、主軸ユニット10を介して、ワークWを把持しつつワークWを軸回転させる(ステップS101)。
次に、制御部300は、主軸ユニット10にてワークWを軸回転させた状態で、第1の工具ユニット55の切削バイト55a3にてワークWの外周面を切削する(ステップS102)。
詳しくは、このステップS102においては、制御部300は、ワークWの回転中に、工具移動機構40を介して第1の工具ユニット55の切削バイト55a3をワークWの外周面に接触させつつ第1Z軸スライド機構15を介してワークWをZ軸方向に送る。これにより、ワークWに円柱状部W1が形成される。
【0036】
このステップS102と同時進行で、制御部300は、背面主軸ユニット70を介して複数のポリゴンカッタ74aにてワークWの外周面についてポリゴン加工を行う(ステップS103)。
詳しくは、このステップS103においては、制御部300は、背面主軸71とともにポリゴンカッタユニット74をワークWと同一方向に回転させつつ、第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76を介してポリゴンカッタユニット74のポリゴンカッタ74aの刃先74pをワークWの外周面に接する位置まで背面主軸71を移動させる。この際、制御部300は、第2Z軸スライド機構75を介して、ポリゴンカッタ74aの刃先74pをZ軸方向に送る。これにより、ワークWの円柱状部W1よりも主軸11から遠い位置に角柱状部W2が形成される。例えば、ポリゴンカッタユニット74の回転数と主軸11の回転数の比率は、1:1に設定されている。
なお、本例では、ステップS102,S103の処理は同時に実行される。しかしながら、これに限らず、ステップS102の終了後にステップS103が実行されてもよいし、反対に、ステップS103の終了後にステップS102が実行されてもよい。
【0037】
ステップS102,S103の終了後、制御部300は、主軸11と同期回転するように背面主軸71を回転させたうえで、図5に示すように、背面主軸ユニット70を介してワークWの角柱状部W2を把持する(ステップS104)。そして、制御部300は、突切りバイト55a4にてワークWを切断する(ステップS105)。
詳しくは、このステップS105においては、制御部300は、主軸ユニット10及び背面主軸ユニット70を介してワークWを軸回転させた状態で、工具移動機構40を介して突切りバイト55a4をワークWを横切るように移動させる。これにより、主軸11及び背面主軸71の間に位置するワークWから円柱状部W1及び角柱状部W2からなるワークWa(図6参照)が切り取られる。切り取られたワークWaは背面主軸71により把持された状態となる。
【0038】
次に、制御部300は、図6に示すように、第2の工具ユニット20にて背面主軸71に把持されたワークWaの背面を加工する(ステップS106)。
詳しくは、このステップS106においては、制御部300は、背面主軸71を通じてワークWaを回転させた状態で、第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76を介して、工具群22の何れかのドリルがワークWaの背面から進入するように背面主軸71を移動させる。これにより、ワークWaの背面には穴Whが形成され、ワークWaの加工が完了となる。
【0039】
最後に、制御部300は、加工完了したワークWaを背面主軸71から離し、具体的には、図3に示すコレットスリーブ71bを背面主軸71の基端側に移動させることによりコレット71cを拡径させ、加工完了したワークWaを図示しないシュートボックスに排出する(ステップS107)。
以上で、当該フローチャートに係る処理が終了となる。当該フローチャートが繰り返されることにより、連続的にワークWaを生産することができる。
【0040】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0041】
(1)ポリゴンカッタユニット74は、ワークWを把持しつつ回転させる背面主軸71の外周に刃先74pが位置し、背面主軸71の周方向に沿って配置され、背面主軸71と一体で回転する複数のポリゴンカッタ74aを備える。
この構成によれば、ポリゴンカッタ74aは背面主軸71と一体で回転する。このため、背面主軸71を回転させるワーク回転用モータ72aによりポリゴンカッタ74aを回転させることができる。よって、ポリゴンカッタ74aを高出力のワーク回転用モータ72aにて回転させることができる。これにより、ポリゴン加工の加工精度を高めることができる。また、ポリゴンカッタ74aを回転させるモータとして既存のワーク回転用モータ72aが利用されるため、新たなモータが不要であり工作機械1の大型化を抑制できる。
【0042】
(2)ポリゴンカッタユニット74は、複数のポリゴンカッタ74aを保持し、背面主軸71における本体部71dの外周に螺合されるカッタ保持部74bを備える。
この構成によれば、ポリゴンカッタユニット74を背面主軸71における本体部71dに簡単に着脱することができる。ポリゴンカッタユニット74を既存の工作機械におけるポリゴンカッタを有しない通常のチャックナットと交換することにより、簡単に既存の工作機械にポリゴン加工機能を付加することができる。
【0043】
(3)複数のポリゴンカッタ74aは、それぞれ刃先74pがカッタ保持部74bよりも外周側に位置するように、カッタ保持部74bの先端面に着脱可能にねじ74dによりねじ止めされている。
この構成によれば、複数のポリゴンカッタ74aのうち何れかが摩耗した場合に、その摩耗したポリゴンカッタ74aを新しいポリゴンカッタ74aに簡単に付け替えることができる。
【0044】
(4)背面主軸71は、ワークWを外周から把持するコレット71cを備え、カッタ保持部74bは、コレット71cを外周から囲むように形成される。
この構成によれば、ポリゴンカッタユニット74が背面主軸71の本体部71dに装着された場合であっても、背面主軸71におけるワークWを把持しつつ回転させる機能が損なわれることがない。よって、加工の自由度を高めることができる。
【0045】
(5)カッタ保持部74bの先端面には、ポリゴンカッタ74aが嵌まり、カッタ保持部74bの外周面まで到達するカッタ収容凹部74b4が形成される。
この構成によれば、ポリゴンカッタ74aがカッタ収容凹部74b4に嵌め込まれることにより、ポリゴンカッタ74aがカッタ保持部74bの先端面から大きく突出することが抑制される。よって、ポリゴンカッタ74aが背面主軸71の移動を妨げることが抑制される。また、カッタ収容凹部74b4によりポリゴンカッタ74aの位置が決まるため、カッタ保持部74bへのポリゴンカッタ74aの正しい装着が容易となる。
【0046】
(6)工作機械1は、互いに向き合うように位置する第1の主軸に相当する主軸11及び第2の主軸に相当するポリゴンカッタユニット74を有する背面主軸71と、背面主軸71の位置を移動させる移動機構に相当する第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76と、主軸11を介して主軸11により把持されたワークWを回転させ、背面主軸71を介して背面主軸71と一体でポリゴンカッタユニット74をワークWと同一方向に回転させた状態で、複数のポリゴンカッタ74aの刃先がワークWの外周面に接するように第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76を通じて背面主軸71の位置を移動させる制御部300と、を備える。
この構成によれば、工作機械1において、大型化を抑制しつつ、高出力、かつ高剛性でポリゴン加工を行うことができる。
【0047】
(7)工作機械1は、主軸11により回転させられるワークWに接することでワークWを加工する第1の工具ユニット55を備える。制御部300は、主軸11により把持されたワークWを回転させた状態で、第1の工具ユニット55にてワークWを加工しつつ、背面主軸71を回転させることにより複数のポリゴンカッタユニット74にてワークWを切削する。
この構成によれば、工作機械1は、ワークWに対する第1の工具ユニット55による加工と複数のポリゴンカッタ74aによる加工を同時に行うことができる。よって、1つのワークWaを製造するのに要するサイクルタイムの短縮を図ることができる。
【0048】
(変形例)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
【0049】
上記実施形態においては、ポリゴンカッタユニット74は、6つのポリゴンカッタ74aを備えていたが、ポリゴンカッタの数は6つに限らず、6つ以外であってもよい。例えば、3つのポリゴンカッタが120°間隔で配置されていてもよい。この場合、ポリゴンカッタユニット74の回転数と主軸11の回転数の比率は、2:1に設定されてもよい。
【0050】
上記実施形態においては、ポリゴンカッタユニット74は、背面主軸71の先端側に装着されるチャックナットであったが、チャックナットとは別に設けられていてもよい。この場合、ポリゴンカッタユニット74は、例えば、背面主軸71のチャックナットの外周に装着されてもよい。
【0051】
上記実施形態においては、ポリゴンカッタユニット74は、背面主軸71の本体部71dに装着されていたが、背面主軸71ではなく、主軸11に装着されてもよい。この場合、背面主軸71により把持されたワークWが回転されつつ、主軸11がポリゴンカッタユニット74とともに回転されることによりポリゴン加工が行われる。
さらに、ポリゴンカッタユニット74は、主軸11及び背面主軸71の両方に装着されてもよい。これにより、加工の自由度を高めることができる。
【0052】
上記実施形態においては、図3に示すように、ポリゴンカッタユニット74のねじ部74b3が主軸部71aのねじ部71a1に螺合することにより、ポリゴンカッタユニット74が背面主軸71の本体部71dに装着されていた。しかし、ポリゴンカッタユニット74が背面主軸71の本体部71dに装着される方法は、これに限らず、ボルトによりポリゴンカッタユニット74が背面主軸71の本体部71dに固定されてもよい。
【0053】
上記実施形態においては、上記図7のステップS103において、複数のポリゴンカッタ74aにてポリゴン加工が行われる際、背面主軸71はワークW,Waを把持していなかったが、これに限らず、ワークW,Waを把持していてもよい。
【0054】
上記実施形態においては、ポリゴンカッタユニット74は、コレット71cを外周から囲むように形成されていたが、ポリゴンカッタユニット74は、コレット71cの先端を塞ぐように位置していてもよい。この場合、背面主軸71がワークWを把持する機能が損なわれるものの、ポリゴンカッタユニット74による高出力でのポリゴン加工を実現できる。
【0055】
上記実施形態においては、ポリゴンカッタ74aは交換可能にねじ74dによりカッタ保持部74bに固定されていたが、これに限らず、ポリゴンカッタ74aは交換不能にカッタ保持部74bに固定されていてもよい。
【0056】
上記実施形態においては、ポリゴンカッタ74aは菱形板状をなしていたが、ポリゴンカッタ74aの形状はこれに限らず、菱形以外の三角形等の多角形板状をなしていてもよい。また、ポリゴンカッタ74aは板状に限らず、先端に刃先を有する角柱状に形成されてもよい。
【0057】
上記実施形態においては、カッタ収容凹部74b4は、カッタ保持部74bの先端面に形成されていたが、カッタ保持部74bの外周面に形成されていてもよい。この場合、ポリゴンカッタ74aは、カッタ保持部74bの外周面のカッタ収容凹部74b4に挿入される。
また、カッタ収容凹部74b4は省略されてもよい。
【0058】
上記実施形態においては、第1Z軸スライド機構15、工具移動機構40、第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76により、ワークWと第1の工具ユニット55又は第2の工具ユニット20を相対的に移動させていたが、ワークWと第1の工具ユニット55又は第2の工具ユニット20を相対的に移動させることができれば、上記実施形態の構成に限定されない。
【0059】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、実施形態及び図面に変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 工作機械
10 主軸ユニット
11 主軸
12a,72a ワーク回転用モータ
20 第2の工具ユニット
40 工具移動機構
41 固定台
55 第1の工具ユニット
55a3 切削バイト
55a4 突切りバイト
55b 工具保持部
70 背面主軸ユニット
71 背面主軸
71a 主軸部
71b コレットスリーブ
71a1,74b3 ねじ部
71c コレット
71d 本体部
74 ポリゴンカッタユニット
74a ポリゴンカッタ
74b カッタ保持部
74d ねじ
74b4 カッタ収容凹部
74p 刃先
300 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7