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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】ガスケットの装着構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20220202BHJP
【FI】
F16J15/10 T
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018118027
(22)【出願日】2018-06-21
(65)【公開番号】P2019219034
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】中野 篤
(72)【発明者】
【氏名】足立 智大
(72)【発明者】
【氏名】小池 智幸
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 一清
(72)【発明者】
【氏名】成尾 元彰
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-153180(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0176744(US,A1)
【文献】特開2006-153179(JP,A)
【文献】特開2018-096457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J15/00-15/14
F16L17/00-19/14
23/00-25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスケットが流体デバイスに装着されるガスケットの装着構造であって、
前記ガスケットは、軸方向一端部に第1傾斜部を備え、
前記流体デバイスは、前記第1傾斜部を受ける第2傾斜部を備え、
前記第1傾斜部の傾斜度合いと前記第2傾斜部の傾斜度合いとは、互いに異なるように設定され、
前記第1傾斜部が、少なくとも前記軸方向一端部を前記第2傾斜部に沿って変形させることができるように構成され、
前記第1傾斜部と前記第2傾斜部との間がシールされるように、前記第1傾斜部は、傾斜度合いを前記第2傾斜部の傾斜度合いに応じて変化させた状態で前記第2傾斜部に圧接し、
前記第1傾斜部は、環状湾曲面からなる第1傾斜面を有し、
前記第2傾斜部は、前記第1傾斜面と圧接可能に形成された環状湾曲面からなる第2傾斜面を有し、
前記第1傾斜部の傾斜度合いが、前記第1傾斜面の曲率により定められ、
前記第2傾斜部の傾斜度合いが、前記第2傾斜面の曲率により定められている
ことを特徴とするガスケットの装着構造
【請求項2】
ガスケットが流体デバイスに装着されるガスケットの装着構造であって、
前記ガスケットは、
軸方向一端部に第1傾斜部を有する第1筒状部と、
前記第1筒状部の径方向外方に設けられた第3筒状部と
を備え、
前記流体デバイスは、
前記第1傾斜部を受ける第2傾斜部を有する第2筒状部と、
前記第2筒状部の径方向外方に設けられた第4筒状部
を備え、
前記第1傾斜部の傾斜度合いと前記第2傾斜部の傾斜度合いとは、互いに異なるように設定され、
前記第1傾斜部が、少なくとも前記第1筒状部の軸方向一端部を前記第2傾斜部に沿って変形させることができるように構成され、
前記第1傾斜部と前記第2傾斜部との間がシールされるように、前記第1傾斜部は、傾斜度合いを前記第2傾斜部の傾斜度合いに応じて変化させた状態で前記第2傾斜部に圧接し、
前記第4筒状部は、前記第1筒状部と前記第3筒状部との間に挿入され、前記第1筒状部の軸方向他端部には圧接し、前記第1筒状部の軸方向一端部からは径方向へ離間している
ことを特徴とするガスケットの装着構造。
【請求項3】
前記第1傾斜部は、テーパー形状の第1傾斜面を有し、
前記第2傾斜部は、前記第1傾斜面と圧接可能に形成されたテーパー形状の第2傾斜面を有し、
前記第1傾斜部の傾斜度合いが、前記ガスケットの軸心に対する前記第1傾斜面の傾斜角度により定められ、
前記第2傾斜部の傾斜度合いが、前記流体デバイスのうち前記ガスケットを装着する部分の軸心に対する前記第2傾斜面の傾斜角度により定められている、
請求項2に記載のガスケットの装着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットの装着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1のようなガスケットの装着構造が知られている。このガスケット装着構造は、ガスケットを流体デバイスとしての第1フランジ配管に、ガスケットとフランジ配管との間がシールされるように装着するためのものである。
【0003】
前記ガスケット装着構造においては、前記第1フランジ配管の第1接合端部の先端内周側に、先拡がりテーパ状のテーパ内周面が形成されている。一方、前記ガスケットの第2接合端部の先端部の外周面に、前記第1接合端部のテーパ内周面に当接するテーパ外周面が先窄まりテーパ状に形成される。
【0004】
そして、前記ガスケット装着構造は、前記第1フランジ配管への前記ガスケットの装着時に、前記第1フランジ配管側のテーパ内周面と、前記ガスケット側のテーパ外周面とを強く圧接させて、これらのテーパ内周面とテーパ外周面との間にシール部を形成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-153180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のようなガスケット装着構造は、流体デバイス(フランジ配管)側のテーパ内周面と、ガスケット側のテーパ外周面とをそれぞれ略平行な面(各々が断面視直線状に延びる面)に形成して、これらの面をシール部の形成のために圧接させるようになっている。
【0007】
したがって、前記ガスケット装着構造は、前記流体デバイスへの前記ガスケットの装着時に、前記ガスケット側のテーパ外周面を前記流体デバイス側のテーパ内周面に全体的に圧接するように、外力を前記ガスケットに大きな力で加える必要があった。
【0008】
このとき、前記シール部を確実に形成するためには、前記ガスケット側のテーパ外周面が前記流体デバイス側のテーパ内周面に全体的に強く圧接されるように、前記ガスケットを前記流体デバイスに注意深く装着しなければならなかった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、前記ガスケットの装着時に、このガスケットと前記流体デバイスとの間を容易にかつ安定してシールすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
ガスケットが流体デバイスに装着されるガスケットの装着構造であって、
前記ガスケットは、軸方向一端部に第1傾斜部を備え、
前記流体デバイスは、前記第1傾斜部を受ける第2傾斜部を備え、
前記第1傾斜部の傾斜度合いと前記第2傾斜部の傾斜度合いとは、互いに異なるように設定され、
前記第1傾斜部が、前記第2傾斜部に沿って少なくとも前記軸方向一端部を変形させることができるように構成され、
前記第1傾斜部と前記第2傾斜部との間がシールされるように、前記第1傾斜部の傾斜度合いを前記第2傾斜部の傾斜度合いに応じて変化させた状態で前記第1傾斜部を前記第2傾斜部に圧接させているものである。
【0011】
この構成によれば、前記第1傾斜部を前記第2傾斜部に圧接することになる。そのため、圧接作業のために必要な荷重を低減させることが可能となる。したがって、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部との間を容易にシールすることができる。
【0012】
また、前記第2傾斜部に対する前記第1傾斜部の圧接時には、前記第1傾斜部を前記第2傾斜部に圧接した状態に保ちやすくなる。したがって、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部との間のシールの安定性を向上させることができる。
【0013】
本発明の別の態様によれば、
前記第1傾斜部は、テーパ―形状の第1傾斜面を有し、
前記第2傾斜部は、前記第1傾斜面と圧接可能に形成されたテーパ―形状の第2傾斜面を有し、
前記第1傾斜部の傾斜度合いが、前記ガスケットの軸心に対する前記第1傾斜面の傾斜角度により定められ、
前記第2傾斜部の傾斜度合いが、前記流体デバイスのうち前記ガスケットを装着する部分の軸心に対する前記第2傾斜面の傾斜角度により定められる。
【0014】
本発明の更なる態様によれば、
前記第1傾斜部は、環状湾曲面からなる第1傾斜面を有し、
前記第2傾斜部は、前記第1傾斜面と圧接可能に形成された、環状湾曲面からなる第2傾斜面を有し、
前記第1傾斜部の傾斜度合いが、前記第1傾斜面の曲率により定められ、
前記第2傾斜部の傾斜度合いが、前記第2傾斜面の曲率により定められる。
【0015】
本発明のまた別の態様によれば、
前記ガスケットは、前記第1傾斜部を有する第1筒状部と、当該第1筒状部の径方向外方に設けられた第3筒状部とを備え、
前記流体デバイスは、前記第2傾斜部を有する第2筒状部の径方向外方に設けられた第4筒状部を備え、
前記第4筒状部は、前記第1筒状部の軸方向他端部側の部分と圧接されかつ前記第1筒状部の軸方向一端部側の部分と径方向に離間した状態で、前記第1筒状部と前記第3筒状部との間に挿入される。
【0016】
この構成によれば、前記第4筒状部の圧入方向の奥側領域と前記第1筒状部との間をシールすることが可能となる。すなわち、前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部によるシール部に加えて、別のシール部を形成することが可能となる。したがって、シール構造を得て、シールの信頼性を高めることができる。
【0017】
また、前記第4筒状部の圧入時、前記第4筒状部の圧入方向の手前側領域が前記第1筒状部に荷重を与えることがなくなる。すなわち、前記第4筒状部の圧入に伴って前記第1筒状部にかかる荷重を低減させることが可能となる。したがって、前記第4筒状部の圧入作業を容易化して、前記多重シール構造(複数個所でシールする構造)を簡単に得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガスケットの装着時に、このガスケットと流体デバイスとの間を容易にかつ安定してシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るガスケットの装着構造を示す断面図である。
図2図1におけるガスケット装着状態の一部拡大図である。
図3図2におけるガスケット装着解除状態を示す図である。
図4図3の一部拡大図である。
図5図3図4のガスケット装着解除状態から図2のガスケット装着状態への移行状態を示す図である。
図6図5の移行状態からの移行完了後のガスケット装着状態を示す図である。
図7】本発明の別の実施形態に係るガスケットの装着構造における、ガスケット装着前の状態を示す一部拡大図である。
図8】本発明の別の実施形態に係るガスケットの装着構造における、ガスケット装着状態を示す一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1図4に示すように、本実施形態に係るガスケットの装着構造は、ガスケット1を流体デバイス3に装着するために用いられている。本実施形態におけるガスケットの装着構造は、ガスケット1を別の流体デバイス5に装着するためにも用いられている。
【0022】
前記ガスケットの装着構造は、流体デバイス3と別の流体デバイス5とを一方が流体の流れ方向上流側に位置しかつ他方が流体の流れ方向下流側に位置するように接続し、ガスケット1を流体デバイス3と別の流体デバイス5との間に介在させるようになっている。
【0023】
なお、ガスケット1が装着される流体デバイス3及び別の流体デバイス5の一例としては、それぞれ、集積パネル、バルブ、ポンプ、アキュムレータ、流体貯留容器、熱交換器、レギュレータ、圧力計、流量計、ヒーター又はフランジ配管等の流体に関係するものであるが、上記例に限定されるものではない。
【0024】
ガスケット1は、第1傾斜部11を軸方向一端部に有する第1筒状部(後述の内側突部63)を含む装着部13を備えている。本実施形態において、ガスケット1は、略一定の内径を有する筒状体であり、当該ガスケット1の軸方向一方側に装着部13を備え、かつ、軸方向他方側に装着部13を備えている。
【0025】
ガスケット1は、当該ガスケット1の軸心15を含む断面において、この軸心15に対して線対称となる断面形状を有している。ガスケット1のうちの筒孔を定義する環状部分は、略H状の断面形状を有している。そして、この略H状の断面形状に基づいて装着部13が形成されている。
【0026】
前記略H状の断面形状を有する前記環状部分は、図3に示すように、ガスケット1の軸心15に沿って延びる第1仮想線17に対して線対称となるように形成されている。また、前記環状部分は、第1仮想線17と直交する方向に延びる第2仮想線19に対して線対称となるように形成されている。
【0027】
なお、ガスケット1は、前述の略H状の断面形状を有する前記環状部分を備える筒状体に限定するものではない。
【0028】
流体デバイス3は、第1傾斜部11を受ける第2傾斜部21を有する第2筒状部(後述の突起43)を含む、筒状の被装着部23を備えている。本実施形態においては、別の流体デバイス5も、対応する第1傾斜部11を受ける第2傾斜部21を有する第2筒状部(後述の突起43)を含む、筒状の被装着部23を備えている。本実施形態においては、この被装着部23が、流体デバイス3の、ガスケット1を装着する部分となっている。
【0029】
流体デバイス3の被装着部23は、別の流体デバイス5の被装着部23の側方(軸方向一方)に設けられ、互いに隣り合った状態である。流体デバイス3の被装着部23と別の流体デバイス5の被装着部23とは、ガスケット1を介して対向し得るように、略同軸上に配置されている。
【0030】
本実施形態においては、ガスケット1がその軸方向一方側(図1の左側)で流体デバイス3に装着される構造と、ガスケット1がその軸方向他方側(図1の右側)で別の流体デバイス5に装着される構造とが実質的に同じであるので、以下では主として流体デバイス3側について説明する。
【0031】
流体デバイス3は、その一端部(図1の右端部)に被装着部23を備えている。流体デバイス3は、被装着部23に流体デバイス側流体流路31を有している。この流体デバイス側流体流路31は、その軸心と直交する断面で円形状を有し、流体デバイス3におけるガスケット1の装着方向(本実施形態においては左右方向)に延在している。
【0032】
流体デバイス側流体流路31は、筒状である被装着部23の筒孔(内部空間)から構成されている。流体デバイス側流体流路31は、ガスケット1側(右方)に向かって開口している。ここで、流体デバイス側流体流路31の開口部分33は、被装着部23の端面(図1の右端面)45よりも内側に設けられている。
【0033】
本実施形態において、被装着部23は、所定の熱可塑性樹脂から構成されている。被装着部23を構成する樹脂としては、例えば、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等を含むフッ素樹脂を挙げることができる。また、フッ素樹脂としては、PFAやPTFE以外にもPCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等であっても良い。さらに、使用分野(用途)に応じて、PP(ポリプロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、または、POM(ポリオキシメチレン)樹脂等の樹脂材料から構成することも可能である。
【0034】
被装着部23は、ガスケット1の装着時にその装着部13を受けることができるように、流体デバイス側流体流路31の開口部分33を囲む環状の内側凹部35と、内側凹部35を囲む、第4筒状部としての環状の凸部37と、当該凸部37を囲む環状の外側凹部39とを備えている。
【0035】
内側凹部35、凸部37及び外側凹部39は、それぞれ、ガスケット1の装着方向である軸方向(左右方向)に延在している。内側凹部35、凸部37及び外側凹部39は、同軸上に配置されるとともに、それぞれ流体デバイス側流体流路31と略同軸上に配置されている。
【0036】
内側凹部35は、後述のガスケット1の内側突部63と嵌合可能な形状を有している。内側凹部35は、ガスケット1側(右方)に開口し、流体デバイス側流体流路31の開口部分33の径方向外方において開口部分33に沿って被装着部23の周方向に延在している。
【0037】
凸部37は、後述のガスケット1の溝部65と嵌合可能な形状を有している。凸部37は、流体デバイス3の本体側部分41からガスケット1側(右方)へ突出し、内側凹部35の径方向外方において内側凹部35に沿って被装着部23の周方向に延在している。
【0038】
外側凹部39は、後述のガスケット1の外側突部(第3筒状部)67と嵌合可能な形状を有している。外側凹部39は、ガスケット1側(右方)に開口し、凸部37の径方向外方において凸部37に沿って被装着部23の周方向に延在している。
【0039】
詳しくは、内側凹部35は、凸部37と環状の突起43との間に設けられている。内側凹部35は、凸部37と突起43とによって形成されており、突起43の形状に対応して開口面積が内側凹部35の開口部分から底部側(右側から左側)へ向かうにつれて小さくなるように形成されている。
【0040】
突起43は、被装着部23の径方向において、流体デバイス側流体流路31の開口部分33と凸部37との間に設けられている。突起43の突出方向は、ガスケット1に向かう方向(右方向)である。突起43は、流体デバイス3の本体側部分41から前記突出方向へ突出している。
【0041】
突起43は、被装着部23の軸方向に沿って延在するとともに、流体デバイス側流体流路31の開口部分33付近においてこの開口部分33に沿って被装着部23の周方向に延在している。突起43は、凸部37の径方向内方において凸部37に沿って被装着部23の周方向に延在している。
【0042】
突起43は、略一定の内径を有する環形状を有し、被装着部23の端面(右端面)45に向かって先細るようにテーパ状に形成されている。突起43は、環状の第2傾斜部21を有する外周部と、流体デバイス側流体流路31に臨む内周部とを備えている。
【0043】
第2傾斜部21は、突起43の周方向に延在している。第2傾斜部21は、突起43の突出端部47側(右側)が凸部37に対して被装着部23の径方向に所定間隔を隔て、突起43の突出基部49側(左側)が凸部37の突出基部51につながるようになっている。
【0044】
外側凹部39は、凸部37に対して内側凹部35と略対称に構成されている。外側凹部39は、内側凹部35が凸部37と第2傾斜部21を用いて画定されるのと同様に、凸部37と対応する第2傾斜部21を用いて画定されている。
【0045】
凸部37は、被装着部23の端面(右端面)45よりも右方には突出しないように、すなわち当該凸部37の突出端部53が被装着部23の軸方向において被装着部23の端面45よりも流体デバイス3の本体側部分41側(左方)に位置するように設けられている。
【0046】
また、本実施形態において、ガスケット1(装着部13)は、所定の熱可塑性樹脂から構成されている。ガスケット1を構成する樹脂としては、例えば、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等を含むフッ素樹脂を挙げることができる。また、フッ素樹脂としては、PFAやPTFE以外にもPCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等であっても良い。さらに、使用分野(用途)に応じて、PP(ポリプロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、または、POM(ポリオキシメチレン)樹脂等の樹脂材料から構成することも可能である。
【0047】
ガスケット1は、ガスケット側流体流路61を有している。ガスケット側流体流路61は、筒状体であるガスケット1の軸方向に沿う貫通孔から形成されている。ガスケット側流体流路61は、軸方向から見たときに円形状を有し、ガスケット1の軸心方向(本実施形態においては左右方向)に延在している。
【0048】
ガスケット側流体流路61は、略一定である直径(ガスケット1の内径に相当)であって、流体デバイス3における流体デバイス側流体流路31の直径(被装着部23の内径に相当)と略同じ直径を有している。ガスケット側流体流路61は、流体デバイス側流体流路31と略同軸上に配置されている。
【0049】
ガスケット側流体流路61は、ガスケット1(装着部13)の軸方向一方側の端部(左端部)において流体デバイス3側(左方)に向かって開口し、その開口部分を介して流体デバイス3における流体デバイス側流体流路31と接続されている。
【0050】
ガスケット1の軸方向一方側の装着部13は、流体デバイス3の被装着部23への装着のために、ガスケット側流体流路61を囲む環状の内側突部(第1筒状部)63と、内側突部63を囲む環状の溝部65と、溝部65を囲む、第3筒状部としての環状の外側突部67とを備えている。
【0051】
内側突部63、溝部65及び外側突部67は、それぞれ、ガスケット1の軸心15方向(左右方向)に延在している。内側突部63、溝部65及び外側突部67は、同軸上に配置されるとともに、それぞれガスケット側流体流路61と略同軸上に配置されている。
【0052】
内側突部63は、流体デバイス3における内側凹部35と嵌合可能な形状を有している。内側突部63は、ガスケット1の軸方向中央部69から軸方向一方(左方)へ突出し、ガスケット側流体流路61の径方向外方においてガスケット側流体流路61に沿って装着部13の周方向に延在している。
【0053】
溝部65は、流体デバイス3における凸部37と嵌合可能な形状を有している。溝部65は、ガスケット1の軸方向一方(左方)に開口し、内側突部63の径方向外方において内側突部63に沿って装着部13の周方向に延在している。
【0054】
詳しくは、溝部65は、内側突部63と外側突部67との間に設けられている。溝部65は、装着部13が被装着部23に装着された場合に当該溝部65が凸部37と嵌合したときに、当該溝部65の内周側で凸部37と圧接するように凸部37を圧入する構成となっている。
【0055】
溝部65は、内側突部63と、外側突部67と、ガスケット1の軸方向中央部69とによって、凸部37に対応するように画定されている。溝部65の開口部分71は、ガスケット1の軸方向において、内側突部63の突出端部73と外側突部67の突出端部75と略同じ位置に配置されている。
【0056】
外側突部67は、流体デバイス3における外側凹部39と嵌合可能な形状を有している。外側突部67は、ガスケット1の軸方向中央部69から軸方向一方(左方)へ突出し、溝部65の径方向外方において溝部65に沿って装着部13の周方向に延在している。
【0057】
図4に示すように、内側突部63は、突出端部73側の部分(左側部分)が内側突部63の突出端面(左端面)81に向かって先細るように形成されている。内側突部63の突出端部73側の部分は、環状の第1傾斜部11を有する内周部と、溝部65に臨む外周部とを有している。
【0058】
第1傾斜部11は、内側突部63の周方向に延在している。第1傾斜部11は、被装着部23における環状の第2傾斜部21と全周にわたって接触(圧接)することができるように、ガスケット1の軸心15に対して傾斜する形状を有している。なお、被装着部23の軸心とガスケット1(装着部13)の軸心15とは略同一直線上にある。
【0059】
図4に示すように、第1傾斜部11の傾斜度合いは、第2傾斜部21の傾斜度合いと異なるように設定されている。そして、第1傾斜部11は、当該第1傾斜部11と第2傾斜部21との間がシールされるように、第1傾斜部11の傾斜度合いを第2傾斜部21の傾斜度合いに応じて変化させた状態で第2傾斜部21と圧接するようになっている。
【0060】
本実施形態において、第1傾斜部11は、テーパ―形状の第1傾斜面91を有している。第1傾斜部11の傾斜度合いが、装着部13(ガスケット1)の軸心に対する第1傾斜面91の傾斜角度によって定められている。この装着部13の軸心は、ガスケット1の軸心15に相当する。
【0061】
また、第2傾斜部21は、第1傾斜面91と圧接可能に形成されたテーパ―形状の第2傾斜面93を有している。第2傾斜部21の傾斜度合いが、流体デバイス3の、ガスケット1を装着する部分である被装着部23(突起43)の軸心に対する第2傾斜面93の傾斜角度によって定められている。この被装着部23の軸心は、装着部13の軸心と同軸上に配置されている。
【0062】
詳しくは、第1傾斜部11は、内側突部63の内周部のうちの突出端部73側の部分に設けられている。第1傾斜部11は、図4図5に示すような初期位置に比べて径方向外方に位置するように、突出基部83側の部分付近を支点として径方向外方へ変位することができるように構成されている。
【0063】
ここで、第1傾斜部11を含む内側突部63の突出端部73側の部分は、可撓性を有するものであり、第1傾斜部11を径方向外方へ変位させるときに、流体デバイス3の被装着部23における凸部37と径方向に対向した状態を維持しつつ、全体的に径方向外方へ変位(径変化(拡径))するようになっている。
【0064】
図5に示すように、第1傾斜部11の径方向外方には、第1傾斜部11の径方向外方への変位を許容するため、環状空間部95が設けられている。本実施形態においては、内側突部63の突出端部73側の部分が凸部37に対して離間するように、内側突部63の突出端部73側の部分の周囲に、環状空間部95が設けられている。
【0065】
なお、環状空間部95は、ガスケット1の装着に際し、図5に示すようなガスケット装着状態への移行状態において確保されるものであればよい。また、環状空間部95は、図6に示すような移行完了後の状態であるガスケット装着状態において内側突部63の突出端部73側の部分が凸部37に接触して消失するものであってもよい。
【0066】
第1傾斜部11において、第1傾斜面91は、内側突部63の内周部において全周にわたって延びる環状のテーパ面である。第1傾斜面91は、突出端部73側(左側)に位置する外側端部97を突出端面81に連続させ、突出基部83側(右側)に位置する内側端部99を内周面85に連続させている。
【0067】
そして、第1傾斜面91は、外側端部97が内側端部99に比べて内側突部63の径方向外方に位置するように形成されている。第1傾斜面91は、本実施形態においては、内側端部99から外側端部97に向かうにつれて徐々に径方向外方に位置する傾斜形状を有している。
【0068】
言い換えれば、第1傾斜部11が、突出端部73側の部分(左側部分)において、第1傾斜面91のテーパ―形状に基づき、内側突部63の突出基部83側(右側)の内径に対して内側突部63の突出端部73側(左側)ほど大きな内径を有するようなっている。
【0069】
図4に示すように、第1傾斜面91は、装着部13の軸心を含む断面において、この軸心(内側突部63の軸心)と平行に延びる仮想線100に対して所定の傾斜角度Θ1をなすように設けられている。この傾斜角度Θ1は、内側突部63の全周にわたって略一定に保たれている。
【0070】
一方、第2傾斜部21は、突起43の外周部に設けられている。第2傾斜部21は、図2に示すように、第1傾斜部11と対向し、その第1傾斜部11と対向した状態で第2傾斜面93を第1傾斜部11の第1傾斜面91と圧接させることができるように構成されている。
【0071】
第2傾斜面93は、突起43の外周部において略全周にわたって延びる環状のテーパ面である。第2傾斜面93は、突出端部47側(右側)に位置する内側端部101を突起43の内周面103に連続させ、突出基部49側(左側)に位置する外側端部105を凸部37の内周面107につなげている。
【0072】
そして、第2傾斜面93は、内側端部101が外側端部105に比べて突起43の径方向内方に位置するように形成されている。第2傾斜面93は、本実施形態においては、外側端部105から内側端部101に向かうにつれて徐々に径方向内方に位置する傾斜形状を有している。
【0073】
言い換えれば、突起43が、第2傾斜面93のテーパ―形状に基づいて、突起43の突出基部49側(右側)の外径に対して突起43の突出端部47側(右側)ほど小さな外径を有するようになっている。
【0074】
図4に示すように、第2傾斜面93は、被装着部23の軸心を含む断面において、この軸心(突起43の軸心)と平行に延びる前述の仮想線100に対して所定の傾斜角度Θ2をなすように設けられている。この傾斜角度Θ2は、突起43の全周にわたって略一定に保たれている。
【0075】
そして、第2傾斜面93の傾斜角度Θ2が、第1傾斜面91の傾斜角度Θ1と異なるように設定されている。詳しくは、第2傾斜面93の傾斜角度Θ2は、第1傾斜面91の傾斜角度Θ1よりも大きく設定されている。すなわち、第2傾斜面93の勾配が、第1傾斜面91の勾配よりも大きく設定されている。
【0076】
なお、外側突部67は、溝部65に対して内側突部63と略対称に構成されている。すなわち、外側突部67は、第2仮想線19に対して線対称に形成されている。そのため、外側突部67については、内側突部63と実質的に同じ構成には同じ符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0077】
このような構成において、本実施形態に係るガスケットの装着構造を得るために、ガスケット1を、流体デバイス3に対して装着前の状態(図3図4参照)から装着後の状態(図2図6参照)に移行させる場合、ガスケット1の軸方向一方側(左側)の装着部13を流体デバイス3の被装着部23に近づける。
【0078】
そして、装着部13の内側突部63を被装着部23の内側凹部35で受け、装着部13の溝部65を被装着部23の凸部37で受け、装着部13の外側突部67を被装着部23の外側凹部39で受ける。同様の作業を別の流体デバイス5についても行う。
【0079】
次に、図示しない締結手段を用いて、流体デバイス3と別の流体デバイス5との締結を、これらが互いに引き寄せられる方向に締め付けられるように開始する。これにより、ガスケット1に外力を加えて、第1傾斜部11の第1傾斜面91の外側端部97を、図5に示すように、第2傾斜部21の第2傾斜面93に接触させる。
【0080】
なお、前記締結手段は、特に限定するものではないが、例えば、流体デバイス3及び別の流体デバイス5の一方に設けられたボルト挿通孔と他方に設けられたナットと、前記ボルト挿通孔に挿通された状態で前記ナットに螺合されるボルトとを備えたものとすることが可能である。
【0081】
次に、前記締結手段による締め付けを続けて、第1傾斜面91の外側端部97が径方向外方(図5の矢印109方向)へ位置変更するように第1傾斜部11を変位(径変化)させながら、第1傾斜面91の内側端部99が第2傾斜面93に近づくように第1傾斜部11を第2傾斜部21に向かって移動させる。
【0082】
こうして、ガスケット1に更に外力を加え、第1傾斜部11の第1傾斜面91の外側端部97のほか、第1傾斜面91における内側端部99側の部位を第2傾斜部21の第2傾斜面93に圧接させる。すなわち、第1傾斜面91を第2傾斜面93に全体的に圧接させる。
【0083】
このときに、装着部13の内側突部63が被装着部23の内側凹部35と嵌合し、装着部13の溝部65が前述の圧接を行いつつ被装着部23の凸部37と嵌合し、装着部13の外側突部67が被装着部23の外側凹部39と嵌合して、装着部13が被装着部23に装着された状態となる。
【0084】
つまり、流体デバイス3及び別の流体デバイス5へのガスケット1の装着が完了することになる。そして、第1傾斜部11及び第2傾斜部21によって軸方向に作用する第1シール部を形成するとともに、凸部37及び溝部65によって径方向に作用する第2シール部を形成することができる。
【0085】
前記第1シール部の形成時には、第2傾斜部21(第2傾斜面93)に対する第1傾斜部11(第1傾斜面91)の圧接範囲を徐々に拡大すればよくなるので、圧接作業のために必要な荷重を低減させることが可能となる。したがって、第1傾斜部11と第2傾斜部21との間を容易にシールすることができる。
【0086】
また、第2傾斜部21に対する第1傾斜部11の圧接時には、第1傾斜部11を第2傾斜部21に案内されたままにして、第1傾斜部11を第2傾斜部21に圧接した状態に保ちやすくなる。したがって、第1傾斜部11と第2傾斜部21との間のシールの安定性を向上させることができる。
【0087】
さらに、第2傾斜部21を突起43の径方向内方に設けられた流体デバイス側流体流路31に向かって変位しにくくすることが可能となる。そのため、第2傾斜部21を径方向内方へ変位させてしまい、変位後の第2傾斜部21によって流体デバイス側流体流路31中の流体の流れを阻害することを回避することができる。
【0088】
なお、第1傾斜部11の傾斜度合い及び第2傾斜部21の傾斜度合いは、特に限定するものではなく、前述の傾斜角度Θ1、Θ2に代えて、例えば、図7、8に示すように、第1傾斜面91及び第2傾斜面93の各々を環状湾曲面として、それら傾斜面91、93の各々の曲率により定めてもよい。
【0089】
この場合は、第1傾斜面91を第2傾斜面93に向かって突出する凸曲面とし、第2傾斜面93を第1傾斜面91に応じた凹曲面とする。そして、第1傾斜面91を第2傾斜面93によって案内しながら、径方向外方(図7の矢印109方向)へ位置変更するように変位(径変化)させる構成とする。
【0090】
また、本実施形態においては、図2図5に示すように、ガスケット1が、内側突部(第1筒状部)63の径方向外方に設けられた外側突部(第3筒状部)67を備えている。流体デバイス3が、突起(第2筒状部)43の径方向外方に設けられた凸部(第4筒状部)37を備えている。
【0091】
そして、図6に示すように、凸部37が、内側突部63の軸方向他端部側(突出基部83側)の部分131と圧接しかつ内側突部63の軸方向一端部側(突出端部73側)の部分133と径方向に離間した状態で、内側突部63と外側突部67との間(溝部65)に挿入されている。
【0092】
詳しくは、凸部37は、内側突部63と外側突部67との間に圧入された状態において、当該凸部37の圧入方向の奥側領域151を内側突部63の軸方向他端部側の部分131に圧接させ、かつ、当該凸部37の圧入方向の手前側領域153を内側突部63の軸方向一端部側の部分133から環状空間部95を介して離間させている。
【0093】
ここで、凸部37の圧入方向とは、流体デバイス3の被装着部23からガスケット1の装着部13に向かう方向(右方向)である。凸部37の圧入方向の奥側領域151は凸部37の突出端部53側の部分に相当し、凸部37の圧入方向の手前側領域153は凸部37の突出基部51側の部分に相当する。
【0094】
また、流体デバイス3へのガスケット1の装着後(第1傾斜部11の径方向外方への変位後)であっても、凸部37の圧入方向の手前側領域153と内側突部63の軸方向一端部側の部分133との間が離間された状態が保たれるように、環状空間部95が形成されている。
【0095】
具体的には、内側突部63の外周部が段形状を有している。この外周部において、凸部37の圧入方向の奥側領域151に対向する内側突部63の軸方向他端部側の部分131の外径に比べて、凸部37の圧入方向の手前側領域153に対向する内側突部63の軸方向一端部側の部分133の外径が小さく設定されている。
【0096】
そして、凸部37の圧入方向の奥側領域151が内側突部63の軸方向他端部側の部分131に圧接した状態で、凸部37の圧入方向の手前側領域153が内側突部63の軸方向一端部側の部分133に対して全周にわたって径方向に所定間隔隔てられている。なお、凸部37の内径は略一定である。
【0097】
このような構成により、凸部37の圧入方向の奥側領域151と内側突部63の軸方向他端部側の部分131との間をシールすることが可能となる。すなわち、前記第1シール部に加えて、前記第2シール部を形成することが可能となる。したがって、多重シール構造を得て、シールの信頼性を高めることができる。
【0098】
また、凸部37の圧入時、凸部37の圧入方向の手前側領域153が内側突部63の軸方向一端部側の部分133に荷重を与えることがなくなる。すなわち、凸部37の圧入に伴って内側突部63にかかる荷重を低減させることが可能となる。したがって、凸部37の圧入作業を容易化して、前述の多重シール構造を簡単に得ることができる。
【0099】
なお、前述のように、第1傾斜部11及び第2傾斜部21は、それぞれの傾斜面91・93に応じて、直線状に傾斜する傾斜部になり得るし、湾曲状(円弧状)に傾斜する傾斜部になり得る。
【0100】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変位形態をとり得ることは明らかである。したがって、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0101】
1 ガスケット
3 流体デバイス
5 別の流体デバイス
11 第1傾斜部
13 装着部
21 第2傾斜部
23 被装着部(流体デバイスの、ガスケットを装着する部分)
37 凸部(第4筒状部)
43 突起(第2筒状部)
63 内側突部(第1筒状部)
67 外側突部(第3筒状部)
91 第1傾斜面
93 第2傾斜面
131 内側突部(第1筒状部)の軸方向他端部側の部分
133 内側突部(第1筒状部)の軸方向一端部側の部分
151 凸部(第4筒状部)の圧入方向の奥側領域
153 凸部(第4筒状部)の圧入方向の手前側領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8