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特許7017991グリッパ織機における疑似耳部の無い緯糸操作装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】グリッパ織機における疑似耳部の無い緯糸操作装置
(51)【国際特許分類】
   D03D 47/12 20060101AFI20220202BHJP
   D03D 47/38 20060101ALI20220202BHJP
   D03D 47/27 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
D03D47/12
D03D47/38
D03D47/27
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018122814
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2019039122
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】102017000073787
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517257777
【氏名又は名称】イテマ エッセ.ピー.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルリゴーニ マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】ミネット シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】パンツェッティ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ペッツォーニ ダリオ
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-538993(JP,A)
【文献】特開平07-150443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D29/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッパ織機内の緯糸操作装置であって、前記緯糸操作装置は、待機中の緯糸(T)の内のそれぞれに対して対応する締付けグリッパ(P)であって、前記締付けグリッパ(P)は織られている織物の縁部に配置された同一で単一の支持体(S)上に取り付けられている、締付けグリッパ(P)と、杼口の中に挿入される緯糸をもたらす前記締付けグリッパ(P)をワークステーション(L)の中に持ってくるために、前記支持体(S)を移動させる第1のモータ手段(Ms)と、前記締付けグリッパ(P)を閉鎖位置に維持する保持手段とは反対に、前記締付けグリッパ(P)を開放する第2のモータ手段(Mp)と、筬打ちステップ中に、前記緯糸を開放された前記締付けグリッパ(P)の中に運搬する緯糸誘導手段(6、7)と、を備えるタイプであり、
前記支持体(S)は回転軸(C)の周りを旋回し、前記締付けグリッパ(P)は前記回転軸(C)上に中心を持つ円弧に沿って前記支持体(S)上に取り付けられていること、かつ、前記支持体(S)と一体となった糸ガイド手段が更に設けられ、前記締付けグリッパ(P)によって締付けられた前記緯糸(T)の全てを、前記支持体(S)の前記回転軸(C)に近接して配置された収束領域を通過させること、を特徴とする緯糸操作装置。
【請求項2】
前記支持体(S)のシャフト(1)の前記回転軸(C)の周りの回転は、関節式四辺形てこ(2)を介して前記第1のモータ手段(Ms)によって駆動される、請求項1に記載の緯糸操作装置。
【請求項3】
前記締付けグリッパ(P)の内のそれぞれに対して開放制御部(3)が設けられ、前記開放制御部(3)は前記第2のモータ手段(Mp)によって操作され、前記第2のモータ手段(Mp)は前記締付けグリッパ(P)を担持する前記支持体(S)に対して固定して置かれており、それにより前記支持体(S)の回転に伴って任意の前記締付けグリッパ(P)の前記開放制御部(3)上に移動される、請求項1に記載の緯糸操作装置。
【請求項4】
前記第2のモータ手段(Mp)は、リニアアクチュエータまたは電磁石である、請求項3に記載の緯糸操作装置。
【請求項5】
前記保持手段は、ばね手段または磁気手段である、請求項4に記載の緯糸操作装置。
【請求項6】
前記ワークステーション(L)は、筬打ちライン(B)の後方(リードの前進方向を基準にして)に置かれている、請求項5に記載の緯糸操作装置。
【請求項7】
前記糸ガイド手段は、前記支持体(S)のシャフト(1)と一体であって、かつ前記シャフト(1)と共に回転する櫛状糸ガイド(4)から構成される、請求項1に記載の緯糸操作装置。
【請求項8】
前記櫛状糸ガイド(4)は、複数の平行なバー(5)を備え、前記バー(5)は処理された緯糸の数と同数の間隙を画定し、前記バー(5)は前記支持体(S)の前記回転軸(C)と一致する軸を有する仮想の直円柱の側面に沿って配置される、請求項7に記載の緯糸操作装置。
【請求項9】
前記緯糸誘導手段は、前記櫛状糸ガイド(4)の自由端に置かれ前記緯糸(T)の通過チャネルによって相互に分離されている、隣接する一対のプレート(6、7)を備える、請求項8に記載の緯糸操作装置。
【請求項10】
前記プレート(6、7)は前記バー(5)に対して実質的に直角であり、前記バー(5)の自由端は、前記プレート(6、7)の一方に部分的に形成され、かつ前記プレート(6、7)の他方に部分的に形成された円形溝(8)の内部を摺動し、前記円形溝(8)は前記仮想の直円柱の前記側面に形成される、請求項9に記載の緯糸操作装置。
【請求項11】
前記プレート(7)の内の1つには、前記筬打ちステップ中に前記緯糸(T)の前記櫛状糸ガイド(4)の中への進入をガイドし易いようなランプ(7s)が設けられている、請求項9に記載の緯糸操作装置。
【請求項12】
ネガティブ搬送グリッパが設けられた織機において、前記ネガティブ搬送グリッパ(G)が初期走行中に前進する間に、前記緯糸(T)のための支持体および回転点を形成することを意図した細長いV字形を有するフック(10)が先端に設けられた緯糸レベリングプレート(9)を更に備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の緯糸操作装置。
【請求項13】
織られている前記織物の縁部と、前記ワークステーション(L)に配置された前記締付けグリッパ(P)との間に配置された緯糸切断装置を更に備え、前記緯糸切断装置には、はさみ(K)または回転ブレード(H)の機械的切断ユニットが設けられている、請求項1~12のいずれか一項に記載の緯糸操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機の給糸側に疑似耳部(false selvedge)を形成しない、グリッパ織機の緯糸操作装置に関する。本発明による緯糸操作装置はプロジェクタイル織機においても使用することができ、プロジェクタイルには、移動中のプロジェクタイルに対する緯糸把持・解放機能が設けられ、例えば、同じ出願人による欧州特許出願公開第18176734.4号明細書に開示されているようなものである。
【0002】
当業者には知られているように、疑似耳部という用語は、織物の形成を意図した経糸の両側に配置された追加の経糸のグループを示すことを意味し、そこからある距離を置いて、経糸は、しばしば単純な布織り方によって緯糸と織り合わされ、従ってこの布織り方は織物が作製されている織り方とは異なる。
【0003】
疑似耳部の目的の1つは、正規の経糸と疑似耳部の経糸との間に緯糸が完全に伸びた領域を形成することであり、この領域では、織物が正規に織られた時点で、筬打ちラインから数センチメートルの距離で、疑似耳部を織物から分離する特別な切断装置が作動することができ、それにより、得られた織物の縁部、特に織物の境界となる緯糸の末端縁部が完全に規則的となる。また、疑似耳部の別の目的は、緯入れステップの間に、緯糸の2つの端部を固定するために、独立した、好ましくは通常の経糸閉鎖モードに関連して予想される杼口閉鎖モードの結果、緯糸結束機能を操作し、緯糸が完全に伸張されている間に緯糸の両端を締結させ、それにより織物の中の緯糸のあらゆる欠陥を回避することである。疑似耳部の更に別の目的は、待機中の緯糸の接続点となることであり、以下でより詳細に説明される。最後に、疑似耳部の更なる目的は、織物の経糸とは異なる物理的特性を有する経糸を、すなわち緯糸の強固で安定した結束および、待機中の緯糸への安定した締結を実現するためにより適している経糸を、疑似耳部内で使用できることである。
【0004】
「織機の給糸側」とは、緯入れが行われる側を意味し、織り手が普通に取る位置に対して織機の左側にほぼ常に対応する。
【背景技術】
【0005】
グリッパ織機では、疑似耳部は典型的には、織機の給糸側で用いられ、織られることを待機している緯糸と、それに対応する給糸装置との間の物理的接続を維持し、搬送グリッパが緯糸を把持することを可能にしている。杼口内に挿入されると、緯糸は実際には切断されず、一方の側で、織物の縁部に平行に走り、特別なガイドフックによって縁部の近くに保持されて織物に接続され、かつ他方の側で緯糸セレクタ装置のレバーによって緯糸給糸装置に接続された状態を維持する。次に、緯糸切断が新しい緯糸の選択時に行われ、丁度、緯糸セレクタ装置と織物の縁部との間で伸張されたままの緯糸が搬送グリッパによって把持された後に、かつ搬送グリッパによって杼口の中に導かれる前に行われる。
【0006】
この普及している製織方法は、疑似耳部を構成する経糸と疑似耳部の中に織り込まれている緯糸の部分、および最後に次の緯入れまでに織物に隣接して走る緯糸部分の両方に関して、大幅な材料の無駄を必然的に伴い、最後の部分は、織物の設計に依存して、従ってその緯糸の繰返し頻度に依存して、幾分長くなる場合がある。
【0007】
疑似耳部システムを使用せずに製織するという目的は、先行技術において既に何度か言及されている。しかし、2つ以上の異なる緯糸で製織する場合、繊維ならびに機械的な見地から満足のいく解決策は見出されていない。原則として、実際には、全ての待機中の緯糸を対応する締付けグリッパによって保持し、次いで織物の筬打ち操作中に、締付けグリッパの内の1つから捕捉された緯糸が戻されて、切断される前に織物に締結されるように、緯糸を操作することが必要である。実際、このようにしてのみ、疑似耳部を除去し、依然として緯糸の整った切断を得ることが可能であり、これにより一定の高さを有する緯糸末端の縁部を有する織物の製造が可能となる。先行技術では、空気圧式の解決法も提案されており、その方法では緯糸の次の挿入が行われるまで、挿入された緯糸が空気圧式吸引装置を用いて伸張され所定位置に保持される。しかし、これらの解決法は、もっぱら機械的解決法に向けられている本発明の目的の外にあるので、ここでは言及さえしない。
【0008】
機械的な観点からは、緯糸切断装置を挿入するのに必要な空間を除いて、織物の縁部に可能な限り近くに前述の単一の緯糸の締付けグリッパを配置する必要があるが、織物の緯糸パターンを構成する異なる緯糸の数に等しい数の複数のグリッパが必要となるので、織られる特定の織物に対して毎回提供される緯糸パターンに従ってこの条件を連続的に満たそうとすると、明らかに矛盾する。これまでに提案された解決策のいくつかを以下で簡単に説明するが、解決策ではこれら2つの要求事項の間で妥協が追求されたが、疑似耳部を使用する従来の製織システムの代替として、市場が歓迎するであろう簡単で信頼性の高い技術的解決策に至ることはできなかった。
【0009】
PICANOLの1987年公開の欧州特許第240075号明細書には、織られている織物の縁部からの距離が増加しながら、様々な緯糸締付けグリッパが平行に配置される解決策が開示されている。締付けグリッパは、休止位置と、緯糸セレクタと協働した緯糸提示位置と、リードと一体となった対応するフックを用いて、対応する締付けグリッパ内への筬打ち緯糸の再挿入が起こる織物ラインとの整列位置、との間で移動可能である。従って、フックもまた、織られている織物の縁部からの距離を増やしながら、更に個々の締付けグリッパの異なる締付け位置に適合するように長さを増やしながら、互いに平行に配置される。従って、各締付けグリッパは必ず専用の制御装置を有していなければならなく、加えて織物の縁部に最も近い締付けグリッパに対して問題を完全に解決するだけであるため、次の締付けグリッパに対しては、長さが増加する緯糸の無駄が依然として生じることを考えれば、これは機械的に複雑な解決策である。更に、繊維の観点から、横並びに配置された一連のフックの長さの差によって引き起こされる、緯糸間で異なる把持形状によって、搬送グリッパが緯糸を適切に把持する際に問題が引き起こされる可能性がある。
【0010】
1995年に発行されたSULZERの米国特許第5492153号明細書は、同一の問題に対する改善された解決策を開示しており、締付けグリッパは単一ブロック内に配置され、織られている織物の縁部に隣接する垂直面内で互いに重ね合わされている。第1のモータ制御部は、関連する緯糸の締付けグリッパを織物ラインの方向に動かし、一方、第2のモータ制御部は、関連する緯糸が杼口内に挿入された後に締付けグリッパを開放し、筬打ちリードによって緯糸の締付けグリッパの中への再挿入を可能にする。再挿入操作は、中心ガイドスロットが設けられたガイドプレートによって促進され、その内部で新たに筬打ちされた緯糸がリードの動きによって引き込まれる。この解決策の機械的構造は、前のPicanolの特許のそれよりも明らかにより単純である。加えて、この解決策は、全てのアクティブな締付けグリッパが織物の縁部に隣接した同一位置にもたらされるので、緯糸の無駄の問題を完全に克服することが可能になる。しかし、繊維の観点からは、この解決策は、その経路の長さが締付けグリッパブロックの連続的な移動に応じて変化するので、待機中の緯糸の張力を一定に維持できないという重大な欠点を有する。従って、待機中の緯糸が緩む可能性が頻繁にあり、これにより、搬送グリッパによる緯糸の把持の失敗、および実際に互いに非常に接近した緯糸の相互の絡み合いの両方を引き起こす場合がある。更に、この解決策では、緯糸締付けグリッパは直列に配置され、単一の共通のばねによって閉鎖位置に維持されるので、個々の締付けグリッパすべてに対して締付け力を独立に調整することは、異なる種類の緯糸が存在する場合には多くの場合望ましいのだが、実現できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許第240075号明細書
【文献】米国特許第5492153号明細書
【発明の概要】
【0012】
従って、この従来技術の枠組みの中で本発明が対処する課題は、締付けグリッパが位置を変える際に、結果的に緯糸の緩みを引き起こして織物の欠陥につながり得る、待機中の緯糸経路の長さの変化という欠点を経験することなく、グリッパ織機において待機中の緯糸用の操作装置を提供して、機械的な単純さ、ならびに緯糸末端の切断長の精度および安定性の点で、上述のSulzer特許に示される解決策が提供するのと同じ結果を実現できるようにすることである。
【0013】
この問題の解決策の一環として、本発明の第1の目的は従って、締付けグリッパと、それに関連する緯入れ装置との間の緯糸の長さの経路長にいかなる実質的な変化をもたらすこともなく、織られている織物に隣接し、織物ラインに位置を整合させ、同一のワークステーションの前で異なる締付けグリッパを交替させることを可能にする、緯糸操作装置を提案することである。
【0014】
本発明の別の目的は、待機中の緯糸間の予想されるあらゆる干渉が能動的に回避される緯糸操作装置を提供することである。
【0015】
この問題は、請求項1に記載されるような特徴を有する緯糸操作装置によって解決され、これら目的が実現される。そのような装置の他の好ましい特徴は、2次的請求項に規定されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
しかしながら、本発明による緯糸操作装置の更なる特徴および利点は、本発明の好ましい実施形態についての以下の詳細な説明からより明らかになるであろうが、それは非限定的な一例としてのみ提供され、添付の図面に示されている。
図1】本発明の緯糸操作装置の操作原理を示す図である。
図2】本発明の緯糸操作装置の正面斜視図である。
図3図3の装置の底面および背面の斜視図である。
図4】装置の可動要素の動きを示す図2の詳細を拡大した詳細図であり、より明瞭にするために緯糸の下側ガイドプレートが除去されている。
図5】緯糸を分離しガイドするための櫛状糸ガイドの更に拡大した背面図である。
図6】本発明の緯糸操作装置と組み合わせて使用される緯糸レベリングプレートの平面図である。
図7】はさみ切断装置を装備した図2の装置の図である。
図8】回転ブレード切断装置を装備した図2の装置の図である。
図9】本発明の緯糸操作装置と協働する織機の機能要素の相互配置を示す全体平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によると、上述の課題を簡潔で非常に効果的な形で解決するために、図1に概略的に示されるように、緯糸の独立制御に必要な様々な緯糸締付けグリッパを、その回転軸Cの周りを回転する一般的な扇形形状を有する緯糸スイッチプレートSの外周上に収容することを想定した。この図では、一例として4本の緯糸1~4がプレフィーダFから出発して示されており、各緯糸は緯糸セレクタAの対応するレバーを通過し、最後に、上述のように緯糸スイッチプレートSの外周に沿って配置された単一の締付けグリッパPに到達する。本発明の装置によって管理され得る緯糸の数はスイッチプレートSの大きさによってのみ制限され、スイッチプレートS上には締付けグリッパPが、処理される異なる緯糸の数に等しい数で取り付けられている。従って、説明を分かり易くするために、本発明は4本の緯糸に対して図面に示すが、本装置によって処理される緯糸の数は、2本以上の任意の数であってもよく、処理される緯糸の上限は、機械的な嵩、および緯糸間の適切な分離を維持する必要性によってのみ決定されると理解すべきであり、以下により詳細に説明される。
【0018】
緯糸スイッチプレートSをその回転軸Cの周りで回転させることにより、各締付けグリッパは、ワークステーションLの近くに、織物の縁部に隣接して、筬打ちラインBに対して(リードRの前進方向に対して)後退した位置に置くことができ、そこで緯糸は織られている織物に対してリードRによって筬打ちされる(図9)。実質的に同じ位置において、およびリードRが筬打ちラインBに達する前にはいずれにしろ、緯糸切断も行われる。各緯糸Tは1つの、かつ唯一の締付けグリッパPと関連付けられており、緯糸把持および切断操作が行われるワークステーションLは1つであって全ての締付けグリッパに対して同一であり、緯糸スイッチプレートSが回転して、緯糸セレクタAによる挿入のために選択されている緯糸に関連する締付けグリッパPを横のワークステーションLに置く、という点に留意すべきである。従って、緯糸スイッチプレートSの制御が緯糸セレクタAの制御に論理的に関連していることは前述から明らかである。
【0019】
本発明の基本的な特徴によれば、緯糸の張力が緯糸スイッチプレートSの回転中に変化するのを防止するために、少なくとも理論的には、全ての緯糸がスイッチプレートSの回転軸Cの近くを通過すべきであると想定されたが、実際には、回転軸Cとほぼ一致する収束ゾーンを緯糸が通過しても、緯糸の張力は一定に保たれるべきであるという条件は満たされる。実際には、この配置のおかげで、緯糸スイッチプレートSを交互に回転させて、あらかじめ設定された緯糸の設計に従って、ワークステーションLの前に様々な緯糸の締付けグリッパを連続的に持ってくると、緯糸のいかなる実質的な伸張も短縮も伴わず、これにより本発明の目的が実現される。
【0020】
重要なことに、図示した実施形態では、締付けグリッパPによって把持された待機中の緯糸は十分に間隔を置いて相互に独立しており、従って選択された緯糸(図1の緯糸2)の位置または搬送グリッパGの経路とは干渉しない。緯糸が接近して走行する回転軸Cの周りの収束ゾーンにおいて、個々の緯糸経路の各々は以下に説明する特定の緯糸ガイド装置によって正確に画定される。
【0021】
図2図8の図面は、上述した解決策原理を実装したメカトロニクス装置の好ましい実施形態を示す。この装置は、3つの主な機能グループ、すなわち図2図5に示す緯糸切替えユニット、図7および図8に示す筬打ち前に作動する緯糸切断アセンブリ、および最後に図6に示す挿入工程の間に緯糸を配置し保持するための個別の要素からなる。
【0022】
緯糸切替えユニットは、上述の扇形形状を有しシャフト1にヒンジ結合された緯糸スイッチプレートSを備え、緯糸スイッチプレートSは軸Cに対して回転し、関節式四辺形2を介して主モータMsによって回転駆動される。既に述べたように、好ましくは位置制御電気モータである主モータMsの回転は織機の中央制御ユニットによって制御され、織機セレクタAによって適宜アクティブにされた緯糸に関連する締付けグリッパPをワークステーションLの中に持ってくる。締付けグリッパPは、その中心が厳密に回転軸C上にある、緯糸スイッチプレートSの外周円弧に沿って緯糸スイッチプレートS上に置かれる。
【0023】
緯糸スイッチプレートSの外周円弧に沿って、締付けグリッパは垂直姿勢で下方に突出して横並びに取り付けられる。締付けグリッパPの開放制御部3が緯糸セレクタSの上部に配置され、普通は締付けグリッパPを押しつけて閉鎖位置に維持する保持手段(例えばばね手段または磁気手段)とは対照的に作用する。開放制御部3は、単一のアクチュエータMp、好ましくは力制御または位置制御のリニアモータ、または緯糸スイッチプレートSに対して固定位置に設けられた単純な電磁石によってさえ作動される。この固定位置は、緯糸セレクタSの回転に従って締付けグリッパPがワークステーションLの中に移動して来たときに、アクチュエータMpがこの締付けグリッパPの開放制御部3を操作しやすいように選択される。
【0024】
締付けグリッパPの操作時間に対してより正確な制御を有することに加えて、制御されたリニアモータをアクチュエータMpに使用することによって、例えばその内部で締付けている特定の緯糸の特徴に応じて締付けグリッパの操作モードを変更することにより、締付けグリッパPを操作するより綿密な方法を用いることも可能である。これは、個々の締付けグリッパ上でアクチュエータだけが画一的な形で独占的に作用できるという点で、前述の以前のSulzerの解決策に対する大幅な改善である。
【0025】
従って、装置操作時に、緯糸切替えユニットの以下の操作ステップを識別することが可能であり、そのステップが図4の対応する矢印によって表される。
【0026】
A-主モータMsが正しいタイミングで、正しい作業位置に(すなわち、ワークステーションLにおいて)実際に挿入されている緯糸を保持する締付けグリッパPを移動させるために、緯糸スイッチプレートSを回転させる。
【0027】
B-緯入れされるべき緯糸が搬送グリッパGによって把持されると、アクチュエータMpは開放制御部3を作動させ、それによってあらかじめワークステーションLの中に置かれていた締付けグリッパPを開放し、次いで搬送グリッパGは締付けグリッパPから緯糸を引きちぎることなく引き出すことができる。ワークステーションLにおける締付けグリッパPとリードの幾何学的な相対的配置のおかげで、リードで前方に移動された緯糸Tが締付けグリッパPの内部に戻される瞬間に至るまで、締付けグリッパPはこの開放位置に留まっており、すなわち緯糸Tが杼口の中に挿入されている全期間にわたってアクチュエータMpが起動されている。代替として、アクチュエータMpの動作を調整して、保持バネ手段によって提供されるものと比較して低減された締付けグリッパPの締付け力を実現してもよく、その結果、緯糸Tがあらかじめ設定された張力に達したときにのみ、搬送グリッパGによってもたらされるドラフトの結果として、緯糸Tの解放が可能になり、一方で、緯糸Tが杼口の中に挿入されている間に、リードRの動作によって緯糸が締付けグリッパPの中に戻される前に適時、締付けグリッパPの完全な開放が実施される。
【0028】
C-アクチュエータMpの可動部分が引き戻され、締付けグリッパPのばね手段が締付けグリッパの可動部分をその閉鎖位置に戻し、従って締付けグリッパ内の緯糸Tを締め付ける。
【0029】
次いで、切替えユニットの作業サイクルが再開され、緯糸スイッチプレートSは、回転して次の所望の緯糸および対応する締付けグリッパPをワークステーションLの中に置くか、または最後に挿入された緯糸の新たな緯入れが予想される場合には現在の位置に留まる。
【0030】
既に上述したように、本発明の基本的な特徴によれば、全ての緯糸はスイッチプレートSの回転軸Cに可能な限り近い収束ゾーンを通過する必要があり、その結果、スイッチプレートSを上述の仕方で回転させるとき緯糸経路の長さは変化せず、それにより待機中の緯糸は一定の張力に維持される。この装置の実際の実施形態に関しては、全ての待機中の緯糸を単一の通過点の中に通すことは幾何学的に望ましいであろうが、緯糸の選択と緯入れのステップにおいて、緯糸間の相対的な擦れおよび望ましくない絡み合いの問題を生じさせることなく行うことは明らかに不可能である。
【0031】
本発明によれば、この問題は、緯糸を分離するための櫛状糸ガイド4を使用することで特に効果的に解決され、櫛状糸ガイド4は、図4に明確に示すように、緯糸スイッチプレートSのシャフト1と一体であり下方に突出している。櫛状糸ガイド4は、処理された緯糸と同数の間隙を画定するのに十分な数の円筒状の断面を有する複数の平行なバー5からなり、その目的は緯糸を互いに十分に分離された状態に維持し、従って緯糸間のあらゆる絡み合いまたは相対的な擦れを回避し、一方で同じ緯糸に対して直線運動の完全な自由度を残すことである。バー5は円形の円筒状構成で配置され、緯糸スイッチプレートSの回転軸Cと一致する軸線と、緯糸スイッチプレートSの、従って櫛状糸ガイド4の回転中に、待機中の緯糸の経路長のあらゆる変化が無視できる程度に小さい半径とを有し、それにより緯糸のあらゆる可能な対応する緩みを許容範囲内に制御する。
【0032】
図5の拡大詳細図に示すように、櫛状糸ガイド4は次いで、一対のプレート6および7(図4ではより明瞭にするために除去されている)と協働して作動する。プレート6および7は、緯糸通過チャネルによって互いに分離され、具体的には以下の異なる機能を果たす。
・杼口の中への連続的な挿入のために、選択された緯糸のみが通過チャネルに入ることを可能にする。
・スイッチプレートSの回転中に、および緯糸セレクタAのレバーの移動中に、非選択の緯糸が通過チャネルに入ることを防止する。
・筬打ちステップ中に、通過チャネルに隣接するプレート7の領域に形成されたランプ7sを用いて、緯糸が櫛状糸ガイド4の中に入るように方向付ける。
【0033】
この目的のために、バー5の自由端は、プレート6内の一部とプレート7内の一部とに形成され、バー5の円形の円筒状構成と同じ半径と軸を有する円形溝8の中を摺動する。従って、本発明の装置の下の領域、すなわち搬送グリッパGが移動している領域における緯糸の降下は、2つの条件を同時に満たした場合にのみ発生し得る。すなわち、一方では緯糸セレクタAの緯糸搬送レバーが下降することであり、他方では緯糸セレクタAによってアクティブにされたのと同じ緯糸を収容するギャップを画定する2つの隣接するバー5が、プレート6と7との間に形成された通過チャネルの対向する2つの縁部に位置するような場所において、櫛状糸ガイド4の回転が停止することである。
【0034】
実際、この位置では、緯糸セレクタAの動作下で櫛状糸ガイド4を放棄するときに、関係のある緯糸は何ら拘束されることはないので、その挿入サイクルは正規に開始され得る。緯糸の挿入が確実に行われると、プレート6および7の幾何学的形状および配置により、ならびにその間に緯糸セレクタAのレバーがその休止位置に戻ったという事実により、リードの筬打ち動作によって、プレート7の傾斜した端子ランプ7sが、最後に挿入された緯糸が櫛状糸ガイド4の対応するバー5の間へ再進入することを促進するまで、緯糸はプレート6の下で、かつプレート7に向かって摺動し、このように緯糸挿入サイクルが閉じられる。緯糸スイッチプレートSを更に回転させるか、または緯糸スイッチプレートSをその最後の位置に依然として保持することにより、次の緯糸挿入のために、それぞれ、別の緯糸に切り替えるか、または最後の緯糸を維持することが可能になる。このようにして、本発明の第2の目的も実現される。
【0035】
上述の緯糸への操作が正しく完了すると、すなわち、
・搬送グリッパへの提示
・杼口への挿入
・櫛状糸ガイド4への収容
・対応する締付けグリッパPにおける締付け
が完了すると、緯糸切断が、織られている織物の境界において、ワークステーションL内に置かれた締付けグリッパPをリードRの左端部から分離している間隙内において、リードRが筬打ちストロークを終了する直前に行われる。切断は、それ自体既知の方法により、図7に示すように2つのブレードKが上下にあって摺動する相対的移動による(はさみ切断)か、または図8に示すように一定速度で回転させたブレードHによる(回転ブレード切断)かのいずれかにより機械的に行うことができる。これら切断装置の構造は当業者には周知であり、従って、ここでは更により詳細には記載されない。
【0036】
本発明の緯糸操作装置の更なる要素であって、ネガティブ型搬送締付けグリッパが織機に使用されているときに装置の適切な操作に有用な要素は、いわゆる緯糸レベリングプレートである。この要素は、本発明の緯糸操作装置とは物理的に異なるが、機能的な観点から密接に関連しており、以下の説明からより良く理解されるであろう。
【0037】
「レベリングプレート」は、この定義は関連分野で理解されているように、杼口において織機に固定された機械的要素を意味し、これには緯糸摺動面が設けられ、緯糸セレクタレバーAによって選択され下げられた緯糸を、適切かつ一定の高さに維持することを確保するように適合されており、緯糸セレクタのどのレバーが下降しているかどうかに関わらず、搬送グリッパGによる緯糸の正しい把持を可能にすること適している。従って、実際、緯糸レベリングプレート上に横たわっている緯糸は、緯糸の張力が搬送グリッパGによるネガティブクランプを可能にするようになるまで、搬送グリッパGの初期走行中に緯糸レベリングプレート上を摺動する。
【0038】
疑似耳部システムを使用する公知のタイプの織機では、把持操作中の搬送グリッパGに対する緯糸の正確な鋭角配置は、従来の切断装置の存在によって決定される。実際、この装置の織機への普通の取り付け位置、すなわち搬送グリッパGの軌道に近い位置は、グリッパの初期走行中に緯糸支持点を提供し、あらかじめ設定された正しい角度位置に従って緯糸がグリッパの中に挿入されることを可能にする。
【0039】
これに対して、本発明の装置では、緯糸の自由端が既に布地から分離されており、ワークステーションLにおいて締付けグリッパP内に締め付けられており、従って搬送グリッパGの経路から更に離れた位置にあるので、同様の配置はもはや不可能である。従って、本発明に従って、把持ステップ中に搬送グリッパGの軌道の近くに緯糸支持体および回転点の幾何学的条件を提供するために、緯糸レベリングプレート9の前端部には細長いV字型のフック10が設けられている。搬送グリッパGが前進するにつれて、緯糸はフック10の中に引っ掛かるまで緯糸レベリングプレート上を摺動し、それによって緯糸の角度方向への正確な配置のための適切な支持体および回転点が、従ってネガティブ搬送グリッパGによる緯糸の効果的な把持が実現される。
【0040】
緯糸レベリングプレート9の位置および/またはフック10の形状を変更することにより、緯糸把持タイミングを変更することが可能であり、従って搬送グリッパ内への緯糸の挿入および把持された緯糸の自由端部の長さを調整することが可能である。
【0041】
一方、もし織機がポジティブ搬送グリッパを備えている場合は、明らかに、レベリングプレート9上にフック10を有する必要はない。というのは、その場合、把持のタイミングは同じポジティブ搬送グリッパによって決定されるからである。
【0042】
前述の説明から明らかなように、疑似耳部を必要とせず、加えて特にコンパクトであり、このタイプの従来技術の装置の欠点が全く無い装置を提供することにより、本発明の緯糸操作装置はあらかじめ設定した目的を完全に実現し、本発明の根底にある問題を解決した。従って、この装置を使用することにより、繊維材料の大幅なコスト節約を実現することが可能であり、これにはもちろん、疑似耳部を製造するために必要な全てのもの、すなわち機械的要素、耳部の経糸、耳部の経糸ビーム、および後者の準備に関連するコスト、を削除することの節約を加えなければならない。
【0043】
最後に、上述したように、織機の到着側での緯糸の無駄の更なる低減が、ポジティブ把持モードを使用した場合に実現することができ、これにより搬送グリッパ内で把持された緯糸の自由末端部分の長さを低減させることができる、という点に留意すべきである。
【0044】
しかし、本発明は、上述の配置に限定されると解釈すべきではなく、本発明の例示的な実施形態を示すに過ぎず、しかし当業者が実現できる範囲内にあって、本発明の範囲から逸脱することのない、あらゆる様々な変形形態が可能であり、以下の特許請求の範囲によってのみ規定される、と理解される。
図1
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図9