(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】タンディッシュ吊具
(51)【国際特許分類】
B66C 1/10 20060101AFI20220202BHJP
B66C 1/14 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
B66C1/10 A
B66C1/14 C
(21)【出願番号】P 2018173565
(22)【出願日】2018-09-18
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】川口 浩志
(72)【発明者】
【氏名】下山 隆之
(72)【発明者】
【氏名】西岡 智則
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-010383(JP,U)
【文献】特開昭53-078550(JP,A)
【文献】特開平06-144770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/10
B66C 1/14
B66C 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つのタンディッシュ掛部を有するタンディッシュをクレーンのフックに吊り下げるためのタンディッシュ吊具であって、
第1フレームと、
前記第1フレームに固定されていて、前記フックに吊り掛けられるフック掛部と、
水平方向に延びる揺動軸を中心として前記第1フレームに対して揺動可能となるように取り付けられた第2フレームと、
前記第1フレームから下方へ延びるようにその第1フレームに取り付けられて、前記4つのタンディッシュ掛部のうちの2つのタンディッシュ掛部を前記第1フレームの下方で吊る2つの第1吊下部と、
前記第2フレームから下方へ延びるようにその第2フレームに取り付けられて、前記4つのタンディッシュ掛部のうち前記第1吊下部によって吊られるタンディッシュ掛部以外の2つのタンディッシュ掛部を前記第2フレームの下方で吊る2つの第2吊下部と、を備え、
前記2つの第1吊下部と前記2つの第2吊下部は、平面視で四角形の4つの頂点の位置に分かれて配置されていて、前記フック掛部は、平面視で前記四角形の内側に配置され、
前記2つの第2吊下部は、平面視で前記揺動軸を挟んで一方側と他方側とに分かれて配置され、
前記第1フレーム上における前記フック掛部の位置は、前記2つの第1吊下部と前記2つの第2吊下部を前記4つのタンディッシュ掛部に掛けて前記タンディッシュを吊ったときにそのタンディッシュの重心を通る鉛直線上に当該フック掛部が位置するように設定され、
前記2つの第1吊下部は、それぞれ、前記タンディッシュ掛部に掛けられる第1吊掛部と、前記第1吊掛部が任意の水平軸を中心として回動可能となるように前記第1フレームと前記第1吊掛部とを連結する第1連結部とを有し、
前記2つの第2吊下部は、それぞれ、前記タンディッシュ掛部に掛けられる第2吊掛部と、前記第2吊掛部が任意の水平軸を中心として回動可能となるように前記第2フレームと前記第2吊掛部とを連結する第2連結部とを有
し、
前記第1フレームは、前記フック掛部が固定されていて前記揺動軸に沿って延びるメインフレームと、前記揺動軸に沿う方向において前記フック掛部から離れた位置に配置されて前記メインフレームに取り付けられ、平面視で前記メインフレームと交差するように延びるサブフレームと、を有し、
前記2つの第1吊下部は、前記メインフレームを挟んで一方側とその反対側とに分かれて前記サブフレームに取り付けられ、
前記第2フレームは、前記揺動軸に沿う方向において前記フック掛部から前記サブフレームと反対側へ離れた位置に配置されて前記メインフレームに取り付けられ、平面視で前記メインフレームと交差するように延び、
前記2つの第2吊下部は、前記メインフレームを挟んで一方側とその反対側とに分かれて配置されている、タンディッシュ吊具。
【請求項2】
4つのタンディッシュ掛部を有するタンディッシュをクレーンのフックに吊り下げるためのタンディッシュ吊具であって、
第1フレームと、
水平方向に並んで配置されて前記第1フレームに固定された第1フック掛部及び第2フック掛部であって前記フックに吊り掛けられるものと、
前記第1フック掛部と前記第2フック掛部が並ぶ水平方向に延びる揺動軸を中心として前記第1フレームに対して揺動可能となるように取り付けられた第2フレームと、
前記第1フレームから下方へ延びるようにその第1フレームに取り付けられて、前記4つのタンディッシュ掛部のうちの2つのタンディッシュ掛部を前記第1フレームの下方で吊る2つの第1吊下部と、
前記第2フレームから下方へ延びるようにその第2フレームに取り付けられて、前記4つのタンディッシュ掛部のうち前記第1吊下部によって吊られるタンディッシュ掛部以外の2つのタンディッシュ掛部を前記第2フレームの下方で吊る2つの第2吊下部と、を備え、
前記2つの第1吊下部と前記2つの第2吊下部は、平面視で四角形の4つの頂点の位置に分かれて配置され、
前記2つの第2吊下部は、平面視で前記揺動軸を挟んで一方側と他方側とに分かれて配置され、
前記第1フレーム上における前記第1フック掛部及び前記第2フック掛部の位置は、前記2つの第1吊下部と前記2つの第2吊下部を前記4つのタンディッシュ掛部に掛けて前記タンディッシュを吊ったときに前記タンディッシュの重心を通る鉛直線が当該第1フック掛部と当該第2フック掛部とを結ぶ水平線上の任意の点を通るように設定され、
前記2つの第1吊下部は、それぞれ、前記タンディッシュ掛部に掛けられる第1吊掛部と、前記第1吊掛部が任意の水平軸を中心として回動可能となるように前記第1フレームと前記第1吊掛部とを連結する第1連結部とを有し、
前記2つの第2吊下部は、それぞれ、前記タンディッシュ掛部に掛けられる第2吊掛部と、前記第2吊掛部が任意の水平軸を中心として回動可能となるように前記第2フレームと前記第2吊掛部とを連結する第2連結部とを有
し、
前記第1フレームは、前記第1フック掛部及び前記第2フック掛部が固定されていて前記揺動軸に沿って延びるメインフレームと、前記揺動軸に沿う方向において前記第1フック掛部から前記第2フック掛部よりも遠くに離れた位置に配置されて前記メインフレームに取り付けられ、平面視で前記メインフレームと交差するように延びるサブフレームと、を有し、
前記2つの第1吊下部は、前記メインフレームを挟んで一方側とその反対側とに分かれて前記サブフレームに取り付けられ、
前記第2フレームは、前記揺動軸に沿う方向において前記第2フック掛部から前記第1フック掛部よりも遠くに離れた位置に配置されて前記メインフレームに取り付けられ、平面視で前記メインフレームと交差するように延び、
前記2つの第2吊下部は、前記メインフレームを挟んで一方側とその反対側とに分かれて配置されている、タンディッシュ吊具。
【請求項3】
前記第2フレームは、前記揺動軸と直交する方向に延び、
前記メインフレームは、前記揺動軸と直交する方向に当該メインフレームを貫通していて前記第2フレームが挿通された挿通穴であって前記第2フレームの前記揺動軸を中心とした当該メインフレームに対する揺動を許容するように開口したものを有し、
前記挿通穴は、前記メインフレームの高さ方向の中間領域に設けられている、請求項
1又は
2に記載のタンディッシュ吊具。
【請求項4】
前記メインフレームは、前記揺動軸と平行な方向に延び、
前記第2フレームは、前記揺動軸と平行な方向に当該第2フレームを貫通していて前記メインフレームが挿通された挿通穴であって当該第2フレームの前記揺動軸を中心とした前記メインフレームに対する揺動を許容するように開口したものを有し、
前記挿通穴は、前記第2フレームの高さ方向の中間領域に設けられている、請求項
1又は
2に記載のタンディッシュ吊具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンディッシュ吊具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連続鋳造設備において鋳造に用いられるタンディッシュが知られている。タンディッシュは、取鍋から注湯される溶鋼を受けて一時的に滞留させつつ、その溶鋼を鋳型内へ注湯するための容器である。
【0003】
タンディッシュ内には、その内面を覆うように耐火物が施工されている。タンディッシュがある程度の期間鋳造に使用されると、前記耐火物の補修又は改築が必要になるため、タンディッシュは、連続鋳造設備から天井クレーンによって吊り上げられて補修又は改築のための作業場へ搬送される。また、連続鋳造設備において、稀に鋳型から下流側の工程でトラブルが発生する場合があり、この場合には、鋳造を停止してタンディッシュを鋳型上から移動させる必要が生じる。この場合、溶鋼が入った状態のタンディッシュを天井クレーンによって吊り上げて移動させる。以上のような天井クレーンによるタンディッシュの搬送や移動の際、天井クレーンのフックからタンディッシュを吊り下げるためにタンディッシュ吊具が用いられる。下記特許文献1には、このタンディッシュ吊具の一例が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されたタンディッシュ吊具は、平面形状が略X字形状であってその中央から四方へ延びる4本の枝ビームを有する本体と、その本体の中央の上面に設けられた吊り鐶と、本体の4本の枝ビームの先端の下面から下方へそれぞれ突出する4つのフックとを有する。このタンディッシュ吊具は、前記吊り鐶がクレーンのフックに掛けられることによりそのクレーンによって吊られるとともに、前記4つのフックによりタンディッシュの上端部の外側面から突出した4つの吊りピンを引っ掛けてタンディッシュを吊り下げるようになっている。
【0005】
また、特許文献1では、タンディッシュを吊ったときにそのタンディッシュの重心がクレーンのフックの鉛直下方からずれていた場合にタンディッシュに生じる傾きを低減するための技術が開示されている。
【0006】
具体的に、この特許文献1では、クレーンのフックが一対のフック部を両側に有する両フック型吊り金具であり、タンディッシュ吊具は、前記一対のフック部にそれぞれ掛けられるように当該タンディッシュ吊具の本体の上面に並んで設置された2つの吊り鐶を有する。タンディッシュを吊ったときにそのタンディッシュの重心がクレーンのフックの鉛直下方からずれていた場合には、タンディッシュが傾こうとするが、クレーンのフックに対するタンディッシュの傾動は一対のフック部が2つの吊り鐶を拘束することによって阻止される。そのため、タンディッシュの傾動(揺動)の支点がクレーンのフックよりも上方の位置になり、その結果、タンディッシュに生じる傾きが低減されるようになっている。
【0007】
また、特許文献1のタンディッシュ吊具では、タンディッシュ及びタンディッシュ吊具に存在する製作誤差や、各種要因によって生じるタンディッシュの変形によりタンディッシュの4つの吊りピンの相対的な位置関係とタンディッシュ吊具の4つのフックの相対的な位置関係との間にずれが生じた場合であっても、タンディッシュ吊具の4つのフックをタンディッシュの4つの吊りピンに掛けることが可能となっている。具体的には、タンディッシュ吊具の各フックは、前後左右各方向に揺動自在に前記枝ビームに連結されており、それらのフックを揺動させることで前記位置関係のずれを吸収してタンディッシュ吊具の4つのフックをタンディッシュの4つの吊りピンに掛けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のタンディシュ吊具によると、タンディッシュが3点吊りの状態、極端な例では2点吊りの状態になり、それに起因して漏鋼やタンディッシュ吊具及びタンディッシュの構成部材の大型化等の問題が発生する虞がある。
【0010】
具体的に、特許文献1では、タンディッシュの4つの吊りピンの相対的な位置関係とタンディッシュ吊具の4つのフックの相対的な位置関係との間にずれがある場合、4つのフックのいくつかを揺動させることで対応する4つの吊りピンに掛けることができ、見かけ上は、タンディッシュが4点吊りの状態になるが、荷重の偏りまでは解消できない。例えば、平面視で4つのフックのうちの3つのフックを頂点とする三角形の内側にタンディッシュの重心が位置する場合に、その3つのフックにタンディッシュ及びそれに貯留された溶鋼の全荷重が掛かるようになる場合があり、その場合には、残りの1つのフックは見かけ上はタンディッシュの吊りピンに掛かっていたとしても荷重は負担していない。また、極端な例として、平面視で4つのフックを頂点とする四角形の2つの対角線のうちいずれか一方の対角線上にタンディッシュの重心が位置する場合には、その一方の対角線で結ばれる2つのフックにタンディッシュ及びそれに貯留された溶鋼の全荷重が掛かるようになる。この場合には、残りの2つのフックは見かけ上はタンディッシュの吊りピンに掛かっていたとしても荷重は負担していない。そして、特許文献1のタンディッシュ吊具ではこれらの場合の荷重の偏りを解消できないことから、そのタンディッシュ吊具によって吊られたタンディッシュは、前者の例では実質上3点吊りの状態になり、後者の極端な例では実質上2点吊りの状態になる。
【0011】
連続鋳造設備の中には長大で非常に大重量のタンディッシュが用いられる場合があり、そのタンディッシュに溶鋼が貯留された状態では、タンディッシュと溶鋼の総重量は極めて大きな重量となる。稀なケースではあるが、連続鋳造設備において鋳型よりも下流側でトラブルが発生し、タンディッシュから鋳型への注湯を続行できなくなる場合がある。この場合、溶鋼を貯留した状態のタンディッシュを天井クレーンによりタンディッシュ吊具を介して吊り上げる場合があるが、タンディッシュは上面が全体的に開口した容器状をなすため、そのタンディッシュの外周部に設けられた吊りピンにタンディッシュ吊具を掛けて当該タンディッシュを吊り上げたときにその上面の開口部が内側へ狭まるようにもともと変形しやすく、さらにタンディッシュと溶鋼の総重量は前記のように極めて大きいことから、吊り上げたタンディッシュの変形は大きくなりやすい。その上、前記のようにタンディッシュが3点吊りや2点吊りの状態になり、荷重が局所的に集中すると、このタンディッシュの変形はより一層大きくなる。
【0012】
また、タンディッシュは、その外壁を構成する鉄皮を有し、その鉄皮の内面を覆うように耐火物が施工されているが、前記のタンディッシュの変形、すなわち鉄皮の変形が大きくなると、耐火物にまで変形が生じ、当該耐火物に亀裂が発生することがある。耐火物に亀裂が発生すると、その亀裂内に溶鋼が入り込み、当該溶鋼が鉄皮に到達して鉄皮を溶損させ、その結果、タンディッシュからの漏鋼が発生することになる。
【0013】
また、3点吊りや2点吊りの状態では、4点吊りの状態に比べて、タンディッシュ吊具において荷重を負担する3つ又は2つのフックのそれぞれが受ける負荷が大きいため、それらのフック及びタンディッシュ吊具のうちそれらのフックを支える部材の強度及び剛性を上げる必要があり、その結果、タンディッシュ吊具の構成部材が大型化する。また、同様に、3点吊りや2点吊りの状態では、4点吊りの状態に比べて、前記の荷重を負担する3つ又は2つのフックによって吊られるタンディッシュの3つ又は2つの吊りピンのそれぞれに掛かる負荷が大きいため、それらの吊りピン周辺の部材の強度及び剛性を上げる必要があり、その結果、タンディッシュの構成部材が大型化する。
【0014】
本発明の目的は、タンディッシュ及びタンディッシュ吊具の転倒及び傾きを防ぎつつ、タンディッシュ及びタンディッシュ吊具に製作誤差があったり、タンディッシュに変形が生じたりした場合であってもタンディッシュを吊ることができ、且つ、タンディッシュが3点吊りや極端な場合に2点吊りの状態になるのを回避して漏鋼の発生やタンディッシュ吊具及びタンディッシュの構成部材の大型化を防ぐことが可能なタンディッシュ吊具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一局面により提供されるのは、4つのタンディッシュ掛部を有するタンディッシュをクレーンのフックに吊り下げるためのタンディッシュ吊具である。このタンディッシュ吊具は、第1フレームと、前記第1フレームに固定されていて、前記フックに吊り掛けられるフック掛部と、水平方向に延びる揺動軸を中心として前記第1フレームに対して揺動可能となるように取り付けられた第2フレームと、前記第1フレームから下方へ延びるようにその第1フレームに取り付けられて、前記4つのタンディッシュ掛部のうちの2つのタンディッシュ掛部を前記第1フレームの下方で吊る2つの第1吊下部と、前記第2フレームから下方へ延びるようにその第2フレームに取り付けられて、前記4つのタンディッシュ掛部のうち前記第1吊下部によって吊られるタンディッシュ掛部以外の2つのタンディッシュ掛部を前記第2フレームの下方で吊る2つの第2吊下部と、を備えている。前記2つの第1吊下部と前記2つの第2吊下部は、平面視で四角形の4つの頂点の位置に分かれて配置されていて、前記フック掛部は、平面視で前記四角形の内側に配置され、前記2つの第2吊下部は、平面視で前記揺動軸を挟んで一方側と他方側とに分かれて配置され、前記第1フレーム上における前記フック掛部の位置は、前記2つの第1吊下部と前記2つの第2吊下部を前記4つのタンディッシュ掛部に掛けて前記タンディッシュを吊ったときにそのタンディッシュの重心を通る鉛直線上に当該フック掛部が位置するように設定され、前記2つの第1吊下部は、それぞれ、前記タンディッシュ掛部に掛けられる第1吊掛部と、前記第1吊掛部が任意の水平軸を中心として回動可能となるように前記第1フレームと前記第1吊掛部とを連結する第1連結部とを有し、前記2つの第2吊下部は、それぞれ、前記タンディッシュ掛部に掛けられる第2吊掛部と、前記第2吊掛部が任意の水平軸を中心として回動可能となるように前記第2フレームと前記第2吊掛部とを連結する第2連結部とを有する。
【0016】
このタンディッシュ吊具では、2つの第1吊下部と2つの第2吊下部が平面視で四角形の4つの頂点の位置に分かれて配置されていて、フック掛部が前記四角形の内側に配置されているため、クレーンのフックをフック掛部に掛けるとともに2つの第1吊下部及び2つの第2吊下部を4つのタンディッシュ掛部に掛けてタンディッシュを吊ったときにタンディッシュ及びタンディッシュ吊具が転倒するのを防ぐことができる。さらに、このタンディッシュ吊具では、第1フレーム上におけるフック掛部の位置が2つの第1吊下部と2つの第2吊下部を4つのタンディッシュ掛部に掛けてタンディッシュを吊ったときにそのタンディッシュの重心を通る鉛直線上にフック掛部が位置するように設定されているため、クレーンのフックをフック掛部に掛けるとともに2つの第1吊下部と2つの第2吊下部をそれぞれ対応するタンディッシュ掛部に掛けてタンディッシュを吊ったときにクレーンのフックの鉛直下方にタンディッシュの重心が位置する。このため、タンディッシュ吊具及びそのタンディッシュ吊具によって吊ったタンディッシュが傾くのを防止できる。
【0017】
また、このタンディッシュ吊具では、2つの第1吊下部は、それぞれ、タンディッシュ掛部に掛けられる第1吊掛部と、第1吊掛部が任意の水平軸を中心として回動可能となるように第1フレームと第1吊掛部とを連結する第1連結部とを有し、2つの第2吊下部は、それぞれ、タンディッシュ掛部に掛けられる第2吊掛部と、第2吊掛部が任意の水平軸を中心として回動可能となるように第2フレームと第2吊掛部とを連結する第2連結部とを有する。このため、タンディッシュ及びタンディッシュ吊具の製作誤差やタンディッシュに生じる変形により、4つのタンディッシュ掛部の相対的な位置関係がタンディッシュ吊具の2つの第1吊下部と2つの第2吊下部の相対的な位置関係に対してずれている場合であっても、2つの第1吊下部の第1吊掛部と2つの第2吊下部の第2吊掛部のうちのいくつかを任意の水平軸回りに回動させることにより前記位置関係のずれを吸収して各第1吊下部の第1吊掛部及び各第2吊下部の第2吊掛部を全て対応するタンディッシュ掛部に掛けることができ、タンディッシュを吊ることができる。
【0018】
そして、このタンディッシュ吊具では、第2フレームが水平方向に延びる揺動軸を中心として第1フレームに対して揺動可能となるように取り付けられているため、タンディッシュが3点吊りの状態や、極端な例において2点吊りの状態になるのを防ぐことができる。具体的には、このタンディッシュ吊具では、2つの第1吊下部及び2つの第2吊下部をそれぞれ対応するタンディッシュ掛部に掛けてタンディッシュを吊ったときに、第2フレームが揺動軸を中心として第1フレームに対して揺動可能であることにより、2つの第1吊下部及び2つの第2吊下部のうち前記揺動軸に対して直交する水平方向において一方側に位置する吊下部と他方側に位置する吊下部とに荷重を分散させることができる。このため、タンディッシュが3点吊りや2点吊りの状態になるのを防ぐことができ、荷重が局所的に集中するのを防ぐことができる。その結果、当該タンディッシュ吊具によって吊ったときのタンディッシュの鉄皮の変形及びその鉄皮の内側の耐火物の変形を抑制でき、前記耐火物に亀裂が発生するのを防ぐことができる。このため、耐火物の亀裂に入り込んだ溶鋼がタンディッシュの鉄皮に到達することによる鉄皮の溶損を防ぐことができ、タンディッシュからの漏鋼を防ぐことができる。
【0019】
また、タンディッシュが3点吊りや2点吊りの状態になるのを防ぐことができることにより、タンディッシュ吊具の2つの第1吊下部及び2つの第2吊下部のうち荷重が掛かる各吊下部の荷重負担が増大するのを防ぐことができる。そのため、第1及び第2吊下部の強度や剛性、及び、タンディッシュ吊具のうちそれらの吊下部を支える部材の強度及び剛性を必要以上に上げなくてもよく、その結果、タンディッシュ吊具の構成部材が大型化するのを防ぐことができる。また、タンディッシュが3点吊りや2点吊りの状態になるのを防ぐことができることにより、各タンディッシュ掛部に掛かる負荷が増大するのを防ぐことができる。そのため、タンディッシュの各タンディッシュ掛部及びその周辺の部材の強度及び剛性を必要以上に上げなくてもよく、その結果、タンディッシュの構成部材が大型化するのを防ぐことができる。
【0020】
前記一局面によるタンディッシュ吊具において、前記第1フレームは、前記フック掛部が固定されていて前記揺動軸に沿って延びるメインフレームと、前記揺動軸に沿う方向において前記フック掛部から離れた位置に配置されて前記メインフレームに取り付けられ、平面視で前記メインフレームと交差するように延びるサブフレームと、を有し、前記2つの第1吊下部は、前記メインフレームを挟んで一方側とその反対側とに分かれて前記サブフレームに取り付けられ、前記第2フレームは、前記揺動軸に沿う方向において前記フック掛部から前記サブフレームと反対側へ離れた位置に配置されて前記メインフレームに取り付けられ、平面視で前記メインフレームと交差するように延び、前記2つの第2吊下部は、前記メインフレームを挟んで一方側とその反対側とに分かれて配置されている。
【0021】
このようにすれば、2つの第1吊下部と2つの第2吊下部が平面視で四角形の4つの頂点の位置に分かれて配置されるとともに、フック掛部が平面視で前記四角形の内側に配置されたタンディッシュ吊具を具体的に構成できる。
【0022】
また、本発明の別の局面により提供されるのは、4つのタンディッシュ掛部を有するタンディッシュをクレーンのフックに吊り下げるためのタンディッシュ吊具である。このタンディッシュ吊具は、第1フレームと、水平方向に並んで配置されて前記第1フレームに固定された第1フック掛部及び第2フック掛部であって前記フックに吊り掛けられるものと、前記第1フック掛部と前記第2フック掛部が並ぶ水平方向に延びる揺動軸を中心として前記第1フレームに対して揺動可能となるように取り付けられた第2フレームと、前記第1フレームから下方へ延びるようにその第1フレームに取り付けられて、前記4つのタンディッシュ掛部のうちの2つのタンディッシュ掛部を前記第1フレームの下方で吊る2つの第1吊下部と、前記第2フレームから下方へ延びるようにその第2フレームに取り付けられて、前記4つのタンディッシュ掛部のうち前記第1吊下部によって吊られるタンディッシュ掛部以外の2つのタンディッシュ掛部を前記第2フレームの下方で吊る2つの第2吊下部と、を備えている。前記2つの第1吊下部と前記2つの第2吊下部は、平面視で四角形の4つの頂点の位置に分かれて配置され、前記2つの第2吊下部は、平面視で前記揺動軸を挟んで一方側と他方側とに分かれて配置され、前記第1フレーム上における前記第1フック掛部及び前記第2フック掛部の位置は、前記2つの第1吊下部と前記2つの第2吊下部を前記4つのタンディッシュ掛部に掛けて前記タンディッシュを吊ったときに前記タンディッシュの重心を通る鉛直線が当該第1フック掛部と当該第2フック掛部とを結ぶ水平線上の任意の点を通るように設定され、前記2つの第1吊下部は、それぞれ、前記タンディッシュ掛部に掛けられる第1吊掛部と、前記第1吊掛部が任意の水平軸を中心として回動可能となるように前記第1フレームと前記第1吊掛部とを連結する第1連結部とを有し、前記2つの第2吊下部は、それぞれ、前記タンディッシュ掛部に掛けられる第2吊掛部と、前記第2吊掛部が任意の水平軸を中心として回動可能となるように前記第2フレームと前記第2吊掛部とを連結する第2連結部とを有する。
【0023】
このタンディッシュ吊具では、第1フレーム上における第1フック掛部及び第2フック掛部の位置が2つの第1吊下部と2つの第2吊下部を4つのタンディッシュ掛部に掛けてタンディッシュを吊ったときにそのタンディッシュの重心を通る鉛直線が第1フック掛部と第2フック掛部とを結ぶ水平線上の任意の点を通るように設定されているため、クレーンのフックを第1フック掛部と第2フック掛部に掛けるとともに2つの第1吊下部と2つの第2吊下部をそれぞれ対応するタンディッシュ掛部に掛けてタンディッシュを吊ったときに、クレーンのフックによって吊られている第1フック掛部と第2フック掛部との間の位置の鉛直下方にタンディッシュの重心が位置する。このため、タンディッシュ吊具及びそのタンディッシュ吊具によって吊ったタンディッシュが転倒するのを防ぐことができる。
【0024】
また、このタンディッシュ吊具では、前記一局面によるタンディッシュ吊具と同様、タンディッシュ及びタンディッシュ吊具の製作誤差やタンディッシュに生じる変形により、4つのタンディッシュ掛部の相対的な位置関係がタンディッシュ吊具の2つの第1吊下部と2つの第2吊下部の相対的な位置関係に対してずれている場合であっても、2つの第1吊下部の第1吊掛部と2つの第2吊下部の第2吊掛部のうちのいくつかを任意の水平軸回りに回動させることにより前記位置関係のずれを吸収して各第1吊下部の第1吊掛部及び各第2吊下部の第2吊掛部を全て対応するタンディッシュ掛部に掛けることができ、タンディッシュを吊ることができる。
【0025】
また、このタンディッシュ吊具では、前記一局面によるタンディッシュ吊具と同様の理由により、タンディッシュが3点吊りや2点吊りの状態になるのを防ぐことができ、その結果、タンディッシュを吊ったときの当該タンディッシュの変形に起因する漏鋼の発生やタンディッシュ吊具及びタンディッシュの構成部材の大型化を防ぐことができる。
【0026】
さらに、このタンディッシュ吊具は第1フック掛部及び第2フック掛部を有するため、当該第1フック掛部及び当該第2フック掛部をクレーンのフックに吊り掛けることにより、タンディッシュが非常に大型のものであっても、当該タンディッシュ吊具を介してそのタンディッシュをより安定的に吊ることができる。
【0027】
前記別の局面によるタンディッシュ吊具において、前記第1フレームは、前記第1フック掛部及び前記第2フック掛部が固定されていて前記揺動軸に沿って延びるメインフレームと、前記揺動軸に沿う方向において前記第1フック掛部から前記第2フック掛部よりも遠くに離れた位置に配置されて前記メインフレームに取り付けられ、平面視で前記メインフレームと交差するように延びるサブフレームと、を有し、前記2つの第1吊下部は、前記メインフレームを挟んで一方側とその反対側とに分かれて前記サブフレームに取り付けられ、前記第2フレームは、前記揺動軸に沿う方向において前記第2フック掛部から前記第1フック掛部よりも遠くに離れた位置に配置されて前記メインフレームに取り付けられ、平面視で前記メインフレームと交差するように延び、前記2つの第2吊下部は、前記メインフレームを挟んで一方側とその反対側とに分かれて配置されている。
【0028】
このようにすれば、2つの第1吊下部と2つの第2吊下部が平面視で四角形の4つの頂点の位置に分かれて配置されるとともに、第1フック掛部及び第2フック掛部が平面視で前記四角形の内側に配置されたタンディッシュ吊具を具体的に構成できる。
【0029】
前記第2フレームは、前記揺動軸と直交する方向に延び、前記メインフレームは、前記揺動軸と直交する方向に当該メインフレームを貫通していて前記第2フレームが挿通された挿通穴であって前記第2フレームの前記揺動軸を中心とした当該メインフレームに対する揺動を許容するように開口したものを有し、前記挿通穴は、前記メインフレームの高さ方向の中間領域に設けられていてもよい。
【0030】
この構成によれば、第2フレームが揺動軸を中心として揺動できるようにするとともに、メインフレームの強度及び剛性が大幅に低下するのを防ぐことができる。具体的に、本構成では、第2フレームが挿通された挿通穴が当該第2フレームの揺動軸を中心としたメインフレームに対する揺動を許容するように開口しているので、第2フレームは、メインフレームの挿通穴に挿通されていても、揺動軸を中心として揺動することが可能である。さらに、本構成では、前記挿通穴がメインフレームの高さ方向の中間領域に設けられているため、メインフレームのうちこの貫通穴が設けられた部分の断面係数及び断面二次モーメントが大きく低下するのを防ぐことができる。このため、この貫通穴が設けられた部分において、メインフレームの強度及び剛性が大幅に低下するのを防ぐことができる。
【0031】
また、前記メインフレームは、前記揺動軸と平行な方向に延び、前記第2フレームは、前記揺動軸と平行な方向に当該第2フレームを貫通していて前記メインフレームが挿通された挿通穴であって当該第2フレームの前記揺動軸を中心とした前記メインフレームに対する揺動を許容するように開口したものを有し、前記挿通穴は、前記第2フレームの高さ方向の中間領域に設けられていてもよい。
【0032】
この構成によれば、第2フレームが揺動軸を中心として揺動できるようにするとともに、第2フレームの強度及び剛性が大幅に低下するのを防ぐことができる。具体的に、本構成では、メインフレームが挿通された挿通穴が第2フレームの揺動軸を中心としたメインフレームに対する揺動を許容するように開口しているので、第2フレームの挿通穴にメインフレームが挿通されていても、第2フレームは揺動軸を中心として揺動することが可能である。さらに、本構成では、挿通穴が第2フレームの高さ方向の中間領域に設けられているため、第2フレームのうちこの挿通穴が設けられた部分の断面係数及び断面二次モーメントが大きく低下するのを防ぐことができる。このため、この挿通穴が設けられた部分において、第2フレームの強度及び剛性が大幅に低下するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明によれば、タンディッシュの転倒及び傾きを防ぎつつ、タンディッシュ及びタンディッシュ吊具に製作誤差があったり、タンディッシュに変形が生じたりした場合であってもタンディッシュを吊ることができ、且つ、タンディッシュが3点吊りや極端な場合に2点吊りの状態になるのを回避して漏鋼の発生やタンディッシュ吊具及びタンディッシュの構成部材の大型化を防ぐことが可能なタンディッシュ吊具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1実施形態によるタンディッシュ吊具がクレーンフックで吊られた状態でのタンディッシュ吊具の斜視図である。
【
図2】タンディッシュとそのタンディッシュを吊っている状態の第1実施形態によるタンディッシュ吊具の正面図である。
【
図3】
図2に示したタンディッシュ及びタンディッシュ吊具を
図2中の矢印III方向から見た図である。
【
図4】第1実施形態によるタンディッシュ吊具の正面図である。
【
図5】第1実施形態によるタンディッシュ吊具を下方から見た図である。
【
図6】第1実施形態によるタンディッシュ吊具を
図4中の矢印VI方向から見た図である。
【
図7】
図4中のVII-VII線に沿った第1実施形態によるタンディッシュ吊具の断面図である。
【
図8】第1実施形態によるタンディッシュ吊具の第2フレーム側の端部近傍の部分の
図7中のVIII-VIIIに沿った断面を示す図である。
【
図9】第1実施形態によるタンディッシュ吊具の第2フレームの揺動動作を表す図である。
【
図10】本発明の第2実施形態によるタンディッシュ吊具の正面図である。
【
図11】第2実施形態によるタンディッシュ吊具を下方から見た図である。
【
図12】第2実施形態によるタンディッシュ吊具を
図10中の矢印XII方向から見た図である。
【
図13】第2実施形態によるタンディッシュ吊具を
図10中の矢印XIII方向から見た図であって第2フレームの揺動動作を表す図である。
【
図14】第2実施形態によるタンディッシュ吊具における第1フレームの第1取付部に対する第1吊下部の取り付け箇所近傍の縦断面を示す図である。
【
図15】本発明の第3実施形態によるタンディッシュ吊具の平面図(上面図)である。
【
図16】第3実施形態によるタンディッシュ吊具を
図17中の矢印XVI方向から見た図である。
【
図17】第3実施形態によるタンディッシュ吊具のメインフレームに対する第2フレームの取り付け箇所近傍を部分的に
図16中のXVII-XVII線に沿って破断させて示す図である。
【
図18】第3実施形態によるタンディッシュ吊具を
図17中の矢印XVIII方向から見た図である。
【
図19】第3実施形態の一変形例によるタンディッシュ吊具の正面図である。
【
図20】
図19に示した変形例によるタンディッシュ吊具の平面図(上面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0036】
(第1実施形態)
図1~
図9を参照して、本発明の第1実施形態によるタンディッシュ吊具1の構成について説明する。タンディッシュ吊具1は、天井クレーンのフック100(以下、クレーンフック100と称する)にタンディッシュ101を吊り下げるためのものである。なお、天井クレーンは、クレーンフック100と、可撓性を有するワイヤを介してクレーンフック100を吊り下げるとともに当該クレーンフック100を昇降させる図略のクレーン本体とを有する。タンディッシュ吊具1は、
図1に示すように、クレーンフック100に掛けられ、その状態で
図2及び
図3に示すようにタンディッシュ101を吊り下げる。以下、タンディッシュ吊具1のことを単に吊具1と称する。
【0037】
タンディッシュ101は、連続鋳造設備において取鍋から注湯される溶鋼を受けて一時的に滞留させつつ、その溶鋼を鋳型内の空間へ注湯するためのものである。タンディッシュ101は、溶鋼を受けて滞留させるタンディッシュ本体102と、そのタンディッシュ本体102に設けられた4つのタンディッシュ掛部104とを有する。
【0038】
タンディッシュ本体102は、上面が全体的に開口した容器状である。このタンディッシュ本体102は、その外壁を構成する鉄皮とその鉄皮の内面を覆うように施工された耐火物とを有し、その耐火物によって囲われた当該タンディッシュ本体102の内部空間に溶鋼が貯留されるようになっている。
【0039】
4つのタンディッシュ掛部104は、タンディッシュ101が吊具1によって吊られるときに当該吊具1に引っ掛けられて支持される部分である。4つのタンディッシュ掛部104は、タンディッシュ本体102の上部の外側面から外側へ突出している。この4つのタンディッシュ掛部104は、平面視(上面視)で四方に分散して配設されている。各タンディッシュ掛部104は、フック状に構成されている。
【0040】
当該第1実施形態による吊具1は、フック掛部2と、第1フレーム4と、第2フレーム6と、角度制限部7と、2つの第1吊下部8と、2つの第2吊下部9と、バランスウェイト12とを有する。
【0041】
フック掛部2は、クレーンフック100に吊り掛けられるものである。このフック掛部2は、
図2及び
図3に示すように、クレーンフック100と当該フック掛部2との接点を中心としてクレーンフック100に対して揺動可能となるようにクレーンフック100に吊り掛けられる。具体的には、フック掛部2は、丸棒状であり、クレーンフック100に吊り掛けられた状態で水平方向に延びる。この丸棒状のフック掛部2は、当該フック掛部2の外周面と接触するクレーンフック100の内側面に対してそれらの間の接点を中心として回動可能(転動可能)となっている。
【0042】
また、第1フレーム4上において、フック掛部2の位置が、吊具1によってタンディッシュ101を吊ったときにそのタンディッシュ101の重心Gを通る鉛直線上に当該フック掛部2が位置するように設定されている。
【0043】
第1フレーム4は、フック掛部2に固定されたフレームである。この第1フレーム4は、メインフレーム22と、サブフレーム24とを有する。
【0044】
メインフレーム22は、吊具1のベースとなる部分であり、フック掛部2に固定されている。このメインフレーム22は、一対のフレームプレート25(
図5及び
図6参照)と、支持部26(
図4及び
図5参照)と、ウェイト取付部33とを有する。
【0045】
一対のフレームプレート25は、一対の同形の金属板であり、フック掛部2の軸心に対して垂直に配置されている。この一対のフレームプレート25は、互いに間隔をあけて互いに平行に配置されている。この一対のフレームプレート25は、それらの間にフック掛部2を挟み込んだ状態でそのフック掛部2に固定されている。
【0046】
具体的には、一方のフレームプレート25がフック掛部2の軸心方向の一端に溶接されることによって固定され、もう一方のフレームプレート25がフック掛部2の軸心方向の他端に溶接されることによって固定されている。一対のフレームプレート25は、クレーンフック100にフック掛部2が吊り掛けられた状態で上下方向に沿うように配置される。また、各フレームプレート25は、フック掛部2の軸心方向及び上下方向に対して直交する方向(以下、長手方向と称する)に延び、その方向の両端から中央部へ向かうに従って高さが漸増するように構成されている。そして、このフレームプレート25の最も高さが大きくなった中央部の上端部にフック掛部2が固定されている。第1フレーム4上におけるフック掛部2の位置は、吊具1によってタンディッシュ101を吊ったときにそのタンディッシュ101の重心Gがフック掛部2を通る鉛直線上に位置するように設定されている。
【0047】
また、メインフレーム22は、各フレームプレート25の長手方向の一端寄りの部位に設けられた挿通穴22a(
図4、
図7及び
図8参照)を有する。
【0048】
挿通穴22aは、第2フレーム6が挿通される穴であり、各フレームプレート25を後述の揺動軸Aと直交する方向に貫通している。この挿通穴22aは、四隅が丸みを帯びた矩形状の穴であり、第2フレーム6の後述する揺動軸Aを中心とした揺動を許容するように開口している。具体的には、挿通穴22aは、第2フレーム6が当該挿通穴22a内で上下方向に変位するのを許容するような上下方向の開口寸法を有する。具体的に、挿通穴22aの上下方向の開口寸法は、当該挿通穴22aの上縁と第2フレーム6の上面との間及び当該挿通穴22aの下縁と第2フレーム6の下面との間にそれぞれ隙間があく程度に第2フレーム6の上下方向の寸法よりも大きくなっている。
【0049】
また、挿通穴22aは、フレームプレート25の長手方向の一端寄りの部位においてその高さ方向の中間領域に設けられている。換言すれば、フレームプレート25は、挿通穴22aの上側に位置してその挿通穴22aの上端を閉じる部分と、挿通穴22aの下側に位置してその挿通穴22aの下端を閉じる部分とを有する。
【0050】
支持部26は、メインフレーム22に取り付けられ、第2フレーム6がメインフレーム22の長手方向(フレームプレート25の長手方向)に延びる揺動軸Aを中心として揺動可能(回動可能)となるようにその第2フレーム6を支持するものである。支持部26は、一対のフレームプレート25間において前記挿通穴22a付近に配置され、一対のフレームプレート25に固定されている。支持部26は、
図8に示すように、一対の固定板27と、軸部28とを有する。
【0051】
一対の固定板27は、一対のフレームプレート25間に配置されてそれらのフレームプレート25に固定され、軸部28を支持するものである。具体的に、一方の固定板27は、メインフレーム22の長手方向において挿通穴22aに対して一方側でその挿通穴22aに近接した位置に配置され、一対のフレームプレート25間でそれらのフレームプレート25に対して垂直に且つ上下方向に沿うように配置されている。また、もう一方の固定板27は、メインフレーム22の長手方向において挿通穴22aを挟んで前記一方の固定板27と反対側で挿通穴22aに近接した位置に配置され、前記一方の固定板27と平行に配置されている。一対の固定板27は、各フレームプレート25に溶接されることによって固定されている。各固定板27は、その固定板27をその板厚方向に貫通する穴27a(
図8参照)を有する。この穴27aは、各固定板27の中央に設けられている。
【0052】
軸部28は、第2フレーム6が揺動可能(回動可能)となるようにその第2フレーム6を支持する部分である。この軸部28の一端部は、一方の固定板27の穴27aに挿嵌された状態で当該一方の固定板27に固定され、この軸部28の他端部は、他方の固定板27の穴27aに挿嵌された状態で当該他方の固定板27に固定されている。これにより、軸部28は、一対の固定板27間に架設されている。この軸部28は、丸棒状をなし、その軸心が一対のフレームプレート25間の中心に位置するとともにメインフレーム22の長手方向(フック掛部2の軸心と直交する方向)に延びるような姿勢で配置されている。
【0053】
ウェイト取付部33は、バランスウェイト12が取り付けられる部分である。このウェイト取付部33は、メインフレーム22の長手方向の両端縁のうち挿通穴22aに近い方の端縁に固定されている。
【0054】
サブフレーム24は、
図5に示すように、メインフレーム22の長手方向と直交する方向においてメインフレーム22から両側へ張り出す梁状のフレームである。サブフレーム24は、メインフレーム22から両側へ均等な長さで張り出している。このサブフレーム24は、
図4に示すように、メインフレーム22の長手方向においてフック掛部2から一方側へ離れ且つフック掛部2よりも低い位置に設けられている。具体的には、サブフレーム24は、メインフレーム22の挿通穴22a側の端部と反対側の端部に設けられている。
【0055】
サブフレーム24は、メインフレーム22の一対のフレームプレート25を貫通している細長い直方体状のサブフレーム本体29と、そのサブフレーム本体29に固定されていてそれぞれ第1吊下部8が取り付けられる2つの第1取付部30とを有する。
【0056】
サブフレーム本体29は、後述の揺動軸Aと直交する方向に延びている。このサブフレーム本体29の長手方向の中心の位置は、一対のフレームプレート25間の中心の位置と一致している。サブフレーム本体29は、一対のフレームプレート25に溶接されることによって固定されている。
【0057】
2つの第1取付部30のうちの一方の第1取付部30は、サブフレーム本体29の長手方向の一端部の下面に固定され、その下面から下方へ突出している。他方の第1取付部30は、サブフレーム本体29の長手方向の他端部の下面に固定され、その下面から下方へ突出している。前記一方の第1取付部30と前記他方の第1取付部30は、サブフレーム本体29の長手方向の中心から等距離に位置している。
【0058】
第2フレーム6は、水平方向に延びる揺動軸Aを中心として揺動可能となるように第1フレーム4に取り付けられている。この第2フレーム6は、メインフレーム22の長手方向と直交する方向においてメインフレーム22から両側へ張り出す梁状のフレームである。この第2フレーム6は、メインフレーム22から両側へ概ね均等な長さで張り出している。この第2フレーム6は、メインフレーム22の長手方向においてフック掛部2から前記サブフレーム24と反対側へ離れ、前記サブフレーム24と概ね同じ高さ位置に設けられている。具体的には、この第2フレーム6は、メインフレーム22の前記挿通穴22aに挿通され、それによってメインフレーム22の両端部のうち挿通穴22aが設けられた方の端部に取り付けられている。
【0059】
第2フレーム6は、前記挿通穴22aを通って一対のフレームプレート25を貫通する細長い直方体状の第2フレーム本体31と、その第2フレーム本体31に固定されていてそれぞれ第2吊下部9が取り付けられる2つの第2取付部32とを有する。
【0060】
第2フレーム本体31は、前記サブフレーム本体29と概ね平行に延びており、当該第2フレーム本体31の長手方向の中心の位置は、一対のフレームプレート25間の中心の位置と一致している。この第2フレーム本体31は、前記軸部28の軸心を中心として揺動可能(回動可能)となるように前記軸部28に取り付けられている。具体的に、この第2フレーム本体31の長手方向の中心には、当該第2フレーム本体31をその長手方向と直交する幅方向に貫通する貫通穴が設けられている。この貫通穴に前記軸部28が挿通され、それにより、第2フレーム本体31が前記軸部28の軸心を中心として揺動可能(回動可能)となるように前記軸部28によって支持されている。従って、第2フレーム6の揺動の中心である揺動軸Aは、前記軸部28の中心と一致している。第2フレーム本体31は、
図9に示すように、前記挿通穴22a内で上下方向の変位が許容されることにより、その挿通穴22aの上下方向の開口寸法の範囲内でシーソーのように揺動可能となっている。
【0061】
2つの第2取付部32のうちの一方の第2取付部32は、第2フレーム本体31の長手方向の一端部の下面に固定され、その下面から下方へ突出している。他方の第2取付部32は、第2フレーム本体31の長手方向の他端部の下面に固定され、その下面から下方へ突出している。前記一方の第2取付部32と前記他方の第2取付部32は、第2フレーム本体31の長手方向の中心、すなわち前記軸部28の軸心から等距離に位置している。
【0062】
角度制限部7は、第2フレーム6の揺動角度(回動角度)を一定の範囲内に制限するものである。この角度制限部7は、第2フレーム6が前記揺動軸Aを中心として一方向きと他方向きとにそれぞれ揺動したときに第2フレーム6に当接してそれ以上の当該第2フレーム6の揺動を阻止し、その一方向きと他方向きの最大の揺動量を規定する一対の当接片7aからなる。各当接片7aは、前記一対のフレームプレート26の互いに反対側を向く板面にそれぞれ取り付けられている。具体的には、各当接片7aは、前記板面のうち挿通穴22aの直上に位置する部分に取り付けられ、挿通穴22aの上縁から僅かに下方へ突出している。この各当接片7aの挿通穴22aの上縁から下方へ突出した部分が、揺動した第2フレーム本体31の上面に当接し、第2フレーム本体31のそれ以上の揺動を阻止する。
【0063】
2つの第1吊下部8及び2つの第2吊下部9は、
図2及び
図3に示すように、4つのタンディッシュ掛部104に掛けられてそれらのタンディッシュ掛部104を第1及び第2フレーム4,6の下方で吊り、それによってタンディッシュ101を吊るものである。2つの第1吊下部8及び2つの第2吊下部9は、平面視で四角形の4つの頂点の位置に分かれて配置され、前記フック掛部2は、平面視で前記四角形の内側に配置されている(
図5参照)。
【0064】
具体的に、2つの第1吊下部8は、第1フレーム4の2つの第1取付部30にそれぞれ取り付けられている。この2つの第1吊下部8は、4つのタンディッシュ掛部104のうちの2つのタンディッシュ掛部104に掛けられ、それらのタンディッシュ掛部104を第1フレーム4のサブフレーム24の下方で吊る。各第1吊下部8は、それが連結された第1取付部30の鉛直下方の位置から全方位へ振り子運動することが可能となっている。
【0065】
各第1吊下部8は、第1吊掛部42aと、第1連結部44aとを有する。
【0066】
第1吊掛部42aは、細長い環状の部材であり、第1吊下部8がタンディッシュ掛部104を吊るときにそのタンディッシュ掛部104に引っ掛けられるものである。
【0067】
第1連結部44aは、第1吊掛部42aが任意の水平軸を中心として回動可能(揺動可能)となるように第1取付部30と第1吊掛部42aとを連結するものである。この第1連結部44aは、第1取付部30に結合された一端部と、第1吊掛部42aに結合された他端部とを有し、第1取付部30から下方に延びている。すなわち、当該第1連結部44aの上端部が第1取付部30に結合されているとともに、当該第1連結部44aの下端部が第1吊掛部42aに連結されている。第1連結部44aは、互いに相対変位可能に連結された複数のリングからなる鎖状の部材である。第1連結部44aは、前記各リングが相対変位することにより、任意の水平軸を中心とした第1吊掛部42aの回動を許容するように変形する。
【0068】
2つの第2吊下部9は、第2フレーム6の2つの第2取付部32にそれぞれ取り付けられている。この2つの第2吊下部9は、4つのタンディッシュ掛部104のうち前記2つの第1吊下部8によって吊られる2つのタンディッシュ掛部104以外の2つのタンディッシュ掛部104に掛けられ、それらのタンディッシュ掛部104を第2フレーム6の下方で吊る。各第2吊下部9は、それが連結された第2取付部32の鉛直下方の位置から全方位へ振り子運動することが可能となっている。
【0069】
各第2吊下部9は、第1吊下部8と同様に構成されている。具体的には、各第2吊下部9は、第1吊下部8の第1吊掛部42a及び第1連結部44aと同様の第2吊掛部42b及び第2連結部44bを有する。第2連結部44bの上端部は、第2取付部32に結合されている。
【0070】
バランスウェイト12は、タンディッシュ101を吊っていない状態でクレーンフック100に吊り掛けられた吊具1の姿勢を調節するためのものである。このバランスウェイト12は、金属板からなり、前記ウェイト取付部33の外側面(フレームプレート26と反対側を向く面)に重ねられてそのウェイト取付部33に着脱可能に取り付けられる。具体的には、バランスウェイト12は、ボルトとナットにより前記ウェイト取付部33に締結される。バランスウェイト12は、ウェイト取付部33に複数重ねて取り付けることが可能であり、ウェイト取付部33に取り付けるバランスウェイト12の数を増減することが可能となっている。このウェイト取付部33に取り付けられるバランスウェイト12の数の増減によって、メインフレーム22のウェイト取付部33側の端部に付加される重量が変更される。その結果、クレーンフック100とフック掛部2との接点や天井クレーンのワイヤ上の所定の点を中心としたメインフレーム22の揺動姿勢が調節され、ひいては吊具1全体の揺動姿勢(傾き)が調節されるようになっている。
【0071】
吊具1の姿勢は、バランスウェイト12を用いて、第2フレーム6とサブフレーム24とがほぼ同じ高さ位置に配置される水平姿勢になるように調節される。吊具1の第1及び第2吊下部8,9は、吊具1がクレーンフック100に吊り掛けられた状態でタンディッシュ掛部104に掛けられるが、そのとき吊具1が傾いていると、第1及び第2吊下部8,9のうちのいずれかが高い位置にあり、対応するタンディッシュ掛部104に掛けにくくなる。そこで、吊具1を水平姿勢に調節することによって、2つの第1吊下部8及び2つの第2吊下部9が全て同じ高さ位置に配置され、各第1吊下部8の第1吊掛部42a及び各第2吊下部9の第2吊掛部42bを対応するタンディッシュ掛部104に引っ掛ける作業を円滑に行えるようになる。
【0072】
以上のように構成された第1実施形態による吊具1では、2つの第1吊下部8と2つの第2吊下部9が平面視(上面視)で四角形の4つの頂点の位置に分かれて配置されているとともに、フック掛部2が平面視(上面視)で前記四角形の内側に配置されている。このため、クレーンフック100をフック掛部2に掛けるとともに2つの第1吊下部8及び2つの第2吊下部9を4つのタンディッシュ掛部104に掛けてタンディッシュ101を吊ったときにタンディッシュ101及び吊具1が転倒するのを防ぐことができる。
【0073】
そして、
図2及び
図3に示すように、第1フレーム4上におけるフック掛部2の位置は、2つの第1吊下部8と2つの第2吊下部9を4つのタンディッシュ掛部104に掛けてタンディッシュ101を吊ったときにそのタンディッシュ101の重心Gを通る鉛直線上に当該フック掛部2が位置するように設定されている。このため、クレーンフック100をフック掛部2に掛けるとともに2つの第1吊下部8と2つの第2吊下部9をそれぞれ対応するタンディッシュ掛部104に掛けてタンディッシュ101を吊ったときにクレーンフック100の鉛直下方にタンディッシュ101の重心Gが位置する。このため、吊具1及びその吊具1によって吊ったタンディッシュ101が傾くのを防止できる。
【0074】
また、第1実施形態による吊具1では、2つの第1吊下部8の第1連結部44aが、それぞれ、その第1吊下部8の第1吊掛部42aが任意の水平軸を中心として回動可能となるように第1取付部30と第1吊掛部42aとを連結し、2つの第2吊下部9の第2連結部44bが、それぞれ、その第2吊下部9の第2吊掛部42bが任意の水平軸を中心として回動可能となるように第2取付部32と第2吊掛部42bとを連結している。このため、タンディッシュ101及び吊具1の製作誤差やタンディッシュ101に生じる変形により、4つのタンディッシュ掛部104の相対的な位置関係が吊具1の2つの第1吊下部8と2つの第2吊下部9の相対的な位置関係に対してずれている場合であっても、2つの第1吊下部8の第1吊掛部42aと2つの第2吊下部9の第2吊掛部42bのうちのいくつかを任意の水平軸回りに回動させることにより前記位置関係のずれを吸収して各第1吊掛部42a及び各第2吊掛部42bを全て対応するタンディッシュ掛部104に掛けて吊ることができる。また、各第1吊掛部42a及び各第2吊掛部42bがそれぞれ任意の水平軸回りに回動可能であることにより、吊っているタンディッシュ101が振れたときに各第1吊掛部42a及び各第2吊掛部42bが回動することによって、各第1吊下部8及びそれが取り付けられた第1取付部30と、各第2吊下部9及びそれが取り付けられた第2取付部32とに、それらを変形させるような曲げモーメントが発生するのを回避できる。
【0075】
そして、この第1実施形態による吊具1では、第2フレーム6が水平方向に延びる揺動軸Aを中心として第1フレーム4に対して揺動可能となるように取り付けられているため、タンディッシュ101が3点吊りの状態や、極端な例において2点吊りの状態になるのを防ぐことができる。
【0076】
具体的には、この第1実施形態による吊具1では、2つの第1吊下部8と2つの第2吊下部9をそれぞれ対応するタンディッシュ掛部104に掛けてタンディッシュ101を吊ったときに、第2フレーム6が揺動軸Aを中心として第1フレーム4に対して揺動可能であることにより、2つの第1吊下部8及び2つの第2吊下部9のうち揺動軸Aに対して直交する水平方向において一方側に位置する第1及び第2吊下部8,9と他方側に位置する第1及び第2吊下部9とに荷重をより分散させることができる。従って、この第1実施形態による吊具1によれば、吊ったタンディッシュ101が3点吊りの状態や2点吊りの状態になるのを防ぐことができ、荷重が局所的に集中するのを防ぐことができる。
【0077】
タンディッシュ本体102は上面が全体的に開口した容器状(箱状)であるため、タンディッシュ101に吊具1を掛けて当該タンディッシュ101を吊り上げた時には、タンディッシュ本体102の上面の開口部が内側に狭まるように当該タンディッシュ本体102が変形しようとするが、この変形はタンディッシュ101が3点吊りや2点吊りのように荷重が局所的に集中する状態になるとより大きくなる。そして、このタンディッシュ本体102の変形、具体的には鉄皮の変形は、その鉄皮の内面を覆うように施工された耐火物に亀裂を発生させる原因になる。耐火物に発生した亀裂が進展すると、その亀裂に溶鋼が入り込み、ひいては鉄皮に溶鋼が達して鉄皮を溶損させ、その結果、漏鋼が発生する。このように、タンディッシュ101の3点吊りや2点吊りは重大な問題を引き起こす原因となるが、当該第1実施形態の吊具1によれば、前記のようにタンディッシュ101が3点吊り及び2点吊りの状態になるのを防ぐことができ、荷重が局所的に集中するのを防ぐことができるので、タンディッシュ本体102の前記鉄皮の変形を防ぐことができるとともに、前記耐火物に亀裂が発生するのを防ぐことができる。その結果、タンディッシュ本体102の鉄皮の溶損を防ぐことができ、漏鋼を防ぐことができる。
【0078】
また、この第1実施形態による吊具1では、前記のようにタンディッシュ101が3点吊りや2点吊りの状態になるのを防ぐことができることにより、吊具1の2つの第1吊下部8及び2つの第2吊下部9の各々の荷重負担が増大するのを防ぐことができる。そのため、第1及び第2吊下部8,9の強度や剛性、及び、吊具1のうち第1及び第2吊下部8,9を支える部材の強度及び剛性を必要以上に上げなくてもよく、その結果、吊具1の構成部材が大型化するのを防ぐことができる。
【0079】
また、この第1実施形態による吊具1では、タンディッシュ101が3点吊りや2点吊りの状態になるのを防ぐことができることにより、各タンディッシュ掛部104に掛かる負荷が増大するのを防ぐことができる。そのため、タンディッシュ101の各タンディッシュ掛部104及びその周辺の部材の強度及び剛性を必要以上に上げなくてもよく、その結果、タンディッシュ101の構成部材が大型化するのを防ぐことができる。
【0080】
また、この第1実施形態による吊具1では、挿通穴22aが第2フレーム6の揺動軸Aを中心としたメインフレーム22に対する揺動を許容するように開口しているので、第2フレーム6は、挿通穴22aに挿通されていても、揺動軸Aを中心として揺動することが可能である。
【0081】
さらに、この第1実施形態による吊具1では、前記挿通穴22aがメインフレーム22のフレームプレート25の高さ方向の中間領域に設けられているため、フレームプレート25の断面係数及び断面二次モーメントが、挿通穴22aが設けられた部分において大きく低下するのを防ぐことができる。このため、挿通穴22aが設けられた部分において、メインフレーム22の強度及び剛性が大幅に低下するのを防ぐことができる。
【0082】
(第2実施形態)
次に、
図10~
図14を参照して、本発明の第2実施形態による吊具1について説明する。なお、当該第2実施形態の吊具1によって吊られるタンディッシュ101の構成は前記第1実施形態で説明した構成と同様であるが、
図10~
図14ではその図示を省略しているため、タンディッシュ101に係る構成については
図2及び
図3を参照する。
【0083】
この第2実施形態による吊具1では、各第1吊下部8の第1吊掛部42a及び各第2吊下部9の第2吊掛部42bが球面軸受50(
図14参照)により任意の水平軸回りに回動可能に構成されている。
【0084】
具体的には、この第2実施形態では、各第1吊下部8の第1連結部44aが、タンディッシュ101のタンディッシュ掛部104(
図2及び
図3参照)に掛けられる当該第1吊下部8の第1吊掛部42aの上端部に結合した掛部結合部49と、その掛部結合部49と第1フレーム4のサブフレーム24の第1取付部30との間に介在する球面軸受50とを有する。
【0085】
この第2実施形態では、各第1取付部30は、
図10及び
図12に示すように、一対の板体30aと、取付軸30bとを有する。一対の板体30aは、第1取付部30が設けられたサブフレーム本体29の長手方向の端部の下面に取り付けられている。この一対の板体30aは、サブフレーム本体29の長手方向に沿って間隔をあけて配置されている。取付軸30bは、一対の板体30a間に架設され、サブフレーム本体29の長手方向に沿って延びている。この取付軸30bと掛部結合部49との間に前記球面軸受50(
図14参照)が介在しており、前記球面軸受50において第1連結部44aが第1取付部30に取り付けられている。
【0086】
具体的に、掛部結合部49は、第1吊掛部42aから上方へ延びて前記一対の板体30a間に配置された部分を有する。この部分には、取付軸30bが通る貫通穴49aが設けられている。この貫通穴49aの内面と取付軸30bの外周面との間に球面軸受50が設けられている。この球面軸受50は、掛部結合部49が任意の水平軸回りに取付軸30bに対して回動するのを許容するように掛部結合部49と取付軸30bとを繋いでいる。
【0087】
また、第2フレーム本体31の長手方向の各端部に設けられた各第2取付部32は、前記各第1取付部30と同様に構成されている。また、各第2吊下部9は、前記各第1吊下部8と同様に構成されている。
【0088】
また、この第2実施形態では、メインフレーム22は、水平方向に延びる箱形のメインフレーム本体22bと、そのメインフレーム本体22bの長手方向の中央部の上面から上方へ延びる一対の板状部22c(
図12及び
図13参照)とを有する。フック掛部2は、前記一対の板状部22bの上端部同士の間に挟み込まれてそれらの上端部に固定されている。このフック掛部2の構成は、前記第1実施形態におけるフック掛部2の構成と同様である。
【0089】
サブフレーム24は、
図11に示すように、メインフレーム22の長手方向の一端に固定され、そのメインフレーム22の長手方向と直交する水平方向に延びている。このサブフレーム24は、メインフレーム本体22bと一体的に形成され、細長い箱形をなしている。
【0090】
また、メインフレーム本体22bのうちサブフレーム24と反対側の端部には、第2フレーム6が挿通される溝22dが設けられている。この溝22dは、メインフレーム本体22の長手方向と直交する方向に当該メインフレーム本体22bを貫通しているとともに下端が開放されている。第2フレーム6は、メインフレーム本体22bの長手方向に対して直交する方向に延び、溝22dを通ってメインフレーム本体22bの両側へ張り出している。この第2フレーム6の長手方向の中央部が溝22d内に配置されている。この第2フレーム6の下端の高さ位置は、メインフレーム本体22bの下端の高さ位置と概ね一致している。
【0091】
また、この第2実施形態では、第2フレーム6を支持する軸部28が、メインフレーム本体22bの長手方向に沿って溝22dを横切って延び、メインフレーム本体22bに固定されている。第2フレーム6の長手方向の中央部には、その長手方向と直交する方向に第2フレーム6を貫通する貫通穴が設けられている。この第2フレーム6の貫通穴に軸部28が挿通され、それによって第2フレーム6が軸部28の軸心(揺動軸A)を中心として揺動可能(回動可能)となるように当該軸部28によって支持されている。
【0092】
また、この第2実施形態では、ウェイト取付部33がメインフレーム22の上面上に設けられている。具体的には、ウェイト取付部33は、メインフレーム22のうち第2フレーム6の真上に位置する部位の上面上に設けられている。このウェイト取付部33上にバランスウェイト12が積載されて取り付けられるようになっている。
【0093】
この第2実施形態による吊具1では、前記第1実施形態の挿通穴22aがメインフレーム22の高さ方向の中間領域に設けられていることによる効果を除き、前記第1実施形態の吊具1によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0094】
(第3実施形態)
次に、
図15~
図18を参照して、本発明の第3実施形態による吊具1について説明する。なお、当該第3実施形態の吊具1によって吊られるタンディッシュ101の構成は前記第1実施形態で説明した構成と同様であるが、
図15~
図18ではその図示を省略しているため、タンディッシュ101に係る構成については
図2及び
図3を参照する。
【0095】
この第3実施形態による吊具1では、前記第1実施形態のように第2フレーム6がメインフレーム22を貫通する代わりに、メインフレーム22が第2フレーム6を貫通し、その状態で第2フレーム6がメインフレーム22に対して揺動可能となるように取り付けられている。また、各第1吊下部8の第1連結部44a及び各第2吊下部9の第2連結部44bが、水平方向に延びる第1水平軸B1回りに回動可能に対応する取付部に対して取り付けられているとともに、第1及び第2吊掛部42a,42bが前記第1水平軸B1と直交し且つ水平方向に延びる第2水平軸B2回りにそれぞれ回動可能となるようにその第1及び第2吊掛部42a,42bの対応するものと結合している。以下、この第3実施形態による吊具1の具体的な構成について説明する。
【0096】
この第3実施形態による吊具1では、第1フレーム4が、略水平方向に延びる細長い直方体状のメインフレーム22を有する(
図15及び
図17参照)。第2フレーム6には、メインフレーム挿通穴60(
図16及び
図17参照)が設けられている。メインフレーム22のうちサブフレーム24と反対側の端部が、このメインフレーム挿通穴60に挿通されている。また、第1フレーム4は、メインフレーム22の第2フレーム6側の端部の上面上に設置された支持部26を有する。この支持部26により、第2フレーム6が揺動可能となるように支持され、前記メインフレーム挿通穴60が許容する範囲内で第2フレーム6が第1フレーム4のメインフレーム22に対して揺動可能となっている。
【0097】
具体的に、第2フレーム6は、
図17に示すように、一対の第2フレームプレート62と、軸受筒64と、2つの第2取付部32とを有する。
【0098】
一対の第2フレームプレート62は、同形の板体であり、メインフレーム22の長手方向に対して垂直に配置され、そのメインフレーム22の長手方向に沿って互いに間隔をあけて互いに平行に配置されている。前記メインフレーム挿通穴60は、各第2フレームプレート62の中央に設けられ、その各第2フレームプレート62を板厚方向に貫通している。メインフレーム挿通穴60は、メインフレーム22の長手方向に直交する当該メインフレーム22の矩形状の断面よりも一回り大きな略矩形状をなしている。このため、メインフレーム挿通穴60の周縁部と当該メインフレーム挿通穴60内に位置するメインフレーム22の外面との間には隙間が設けられている。この隙間により、第2フレーム6がメインフレーム22に対して揺動するのが許容される。
【0099】
軸受筒64は、支持部26の軸部28に支持される部分である。この軸受筒64は、メインフレーム22の長手方向に沿って延びる円筒状をなしている。軸受筒64は、一対の第2フレームプレート62のうちメインフレーム挿通穴60の上側の部位同士の間に挟み込まれた状態でそれらの第2フレームプレート62に固定されている。軸受筒64は、平面視でメインフレーム22の長手方向に直交する方向における第2フレーム6の中心に当該軸受筒64の軸心が一致するように配置されている。
【0100】
2つの第2取付部32は、メインフレーム挿通穴60の両側に分かれて配置されているとともに、メインフレーム挿通穴60よりも下側に配置されている。各第2取付部32は、丸棒状のピンからなる。各第2取付部32は、一対の第2フレームプレート62間においてそれらの第2フレームプレート62が並ぶ方向に沿って延び、それらの第2フレームプレート62に固定されている。
【0101】
第1フレーム4の支持部26は、メインフレーム22の第2フレーム6側の端部の上面上にメインフレーム22の長手方向に沿って間隔をあけて設置された一対のブラケット70と、その一対のブラケット70によって支持された軸部28とを有する。軸部28は、丸棒状をなし、メインフレーム22の長手方向に沿って延びている。
【0102】
第2フレーム6のメインフレーム挿通穴60の上側に位置する部分が、前記一対のブラケット70間に配置されている。その状態で、第2フレーム6の軸受筒64に軸部28が挿通されている。この軸部28により、軸受筒64が当該軸部28の軸心回りに回動可能となるように支持されている。これにより、第2フレーム6が第1フレーム4に対して軸部28の軸心を中心として揺動可能となっている。
【0103】
また、この第3実施形態では、
図15及び
図17に示すように、メインフレーム22の第2フレーム6と反対側の端部に設けられた第1フレーム4のサブフレーム24は、一対のサブフレームプレート66と、2つの第1取付部30とを有する。
【0104】
一対のサブフレームプレート66は、メインフレーム22の長手方向に対して垂直に配置されているとともに、メインフレーム22の長手方向に沿って互いに間隔をあけて配置されている。この一対のサブフレームプレート66は、互いに平行に配置されている。また、この一対のサブフレームプレート66は、メインフレーム22の長手方向に対して直交する方向で且つ水平方向に延びている。各サブフレームプレート66の長手方向における中央領域には、
図18に示すように、その上端縁から下方へ窪む凹部が設けられている。この凹部にメインフレーム22が嵌め込まれ、その状態で各サブフレームプレート66がメインフレーム22に溶接されることによって固定されている。
【0105】
2つの第1取付部30は、前記凹部の両側に分かれて配置されているとともに、前記凹部よりも下側に配置されている。各第1取付部30は、第2取付部32と同様の丸棒状のピンからなる。各第1取付部30は、一対のサブフレームプレート66間においてそれらのサブフレームプレート66が並ぶ方向に沿って延び、それらのサブフレームプレート66に固定されている。
【0106】
また、各第1吊下部8の第1連結部44aは、長円形の環状の部材であり、前記一対のサブフレームプレート66間において前記第1取付部30に掛けられている。これにより、第1連結部44aは、第1取付部30の軸心を通る第1水平軸B1を中心として第1取付部30に対して回動可能となっている。また、各第1吊下部8の第1吊掛部42aは、細長い環状の部材であり、第1連結部44aの下端部に鎖のように結合されている。この第1吊掛部42aは、第1連結部44aの下端部の中心を通り且つ第1水平軸B1と直交する第2水平軸B2を中心として第1連結部44aに対して回動可能となっている。
【0107】
また、各第2吊下部9の第2連結部44b及び第2吊掛部42bは、第1吊下部8の第1連結部44a及び第1吊掛部42aと同様に構成され、第2連結部44bは、前記一対の第2フレームプレート62間において前記第2取付部32に掛けられている。この第2連結部44bは、第2取付部32の軸心を通る第1水平軸B1を中心として第2取付部32に対して回動可能となっている。また、第2吊掛部42bは、第2連結部44bの下端部の中心を通り且つ第1水平軸B1と直交する第2水平軸B2を中心として第2連結部44bに対して回動可能となっている。
【0108】
また、この第3実施形態では、フック掛部2が逆U字状の金具であり、当該フック掛部2はメインフレーム22の長手方向の中央部の上面に固定されている。フック掛部2は、一対の脚部72と、フック接触部74とを有する。
【0109】
一対の脚部72は、メインフレーム22の上面に固定されてその上面から上方へ延びている。一対の脚部72は、メインフレーム22の長手方向と直交するメインフレーム22の幅方向に並んで配置されている。
【0110】
フック接触部74は、フック掛部2がクレーンフック100に掛けられるときにそのクレーンフック100の内側の曲面上に載せられてその内側の曲面に接触する部分である。このフック接触部74は、一対の脚部72の上端部同士を繋ぐようにそれらの上端部に連続している。フック接触部74は、円形の断面を有しており、当該フック接触部74の外周面がクレーンフック100の内側の曲面に接触した状態でクレーンフック100に対して回動可能となっている。これにより、フック掛部2は、クレーンフック100とフック接触部74との接点を中心としてクレーンフック100に対して揺動可能となっている。
【0111】
この第3実施形態では、前記フック接触部74の位置が、2つの第1吊下部8と2つの第2吊下部9を4つのタンディッシュ掛部104(
図2及び
図3参照)に掛けてタンディッシュ101(
図2及び
図3参照)を吊ったときにそのタンディッシュ101の重心が当該フック接触部74を通る鉛直線上に位置するように設定されている。
【0112】
この第3実施形態による吊具1では、メインフレーム挿通穴60が第2フレーム6の揺動軸Aを中心としたメインフレーム22に対する揺動を許容するように開口している。このため、第2フレーム6に設けられたメインフレーム挿通穴60にメインフレーム22が挿通されていても、第2フレーム6は揺動軸Aを中心として揺動可能である。
【0113】
さらに、この第3実施形態による吊具1では、メインフレーム挿通穴60が第2フレーム6の高さ方向の中間領域に設けられているため、第2フレーム6のうちこのメインフレーム挿通穴60が設けられた部分の断面係数及び断面二次モーメントが大きく低下するのを防ぐことができる。このため、このメインフレーム挿通穴60が設けられた部分において、第2フレーム6の強度及び剛性が大幅に低下するのを防ぐことができる。
【0114】
この第3実施形態による吊具1では、以上のような効果以外に、前記第1実施形態による吊具1と同様の効果を得ることができる。
【0115】
本発明によるタンディッシュ吊具は、前記のような構成のものに必ずしも限定されない。例えば、本発明によるタンディッシュ吊具に以下のような構成を採用可能である。
【0116】
前記実施形態では、吊具が単一のフック掛部を有しているが、吊具は、2つのフック掛部を有していてもよい。
図19及び
図20には、このような変形例による吊具1が示されている。なお、
図19及び
図20に示されているのは、前記第3実施形態による吊具1が2つのフック掛部を有するように構成した場合の前記第3実施形態の一変形例による吊具1である。このため、当該変形例による吊具1のうち前記第3実施形態による吊具1と同じ構成、配置及び機能を有する部材については同じ符号を付し、その部材の説明は省略する。
【0117】
この変形例による吊具1は、水平方向において並んで配置されて第1フレーム4上に固定された第1フック掛部2a及び第2フック掛部2bを有する。当該変形例では、2つの天井クレーンの2つのクレーンフック100a,100bにより、第1フック掛部2aと第2フック掛部2bがそれぞれ吊られるようになっている。
【0118】
第1フック掛部2aと第2フック掛部2bは、具体的には、第1フレーム4のメインフレーム22の長手方向に沿って並んでおり、そのメインフレーム22に固定されている。
第2フレーム6は、この第1フック掛部2aと第2フック掛部2bが並ぶ水平方向に延びる揺動軸Aを中心として第1フレーム4に対して揺動可能となるように取り付けられている。また、第1フレーム4のサブフレーム24は、揺動軸Aに沿う方向において第1フック掛部2aから第2フック掛部2bよりも遠くに離れた位置に配置され、第2フレーム6は、揺動軸Aに沿う方向において第2フック掛部2bから第1フック掛部2aよりも遠くに離れた位置に配置されている。
【0119】
また、第1フレーム4のサブフレーム24に取り付けられた2つの第1吊下部8と第2フレーム6に取り付けられた2つの第2吊下部9は、平面視で四角形の4つの頂点の位置に分かれて配置され、第1フック掛部2a及び第2フック掛部2bは平面視でこの四角形の内側に配置されている。
【0120】
また、第1フレーム4上における第1フック掛部2a及び第2フック掛部2bの位置は、2つの第1吊下部8と2つの第2吊下部9を4つのタンディッシュ掛部104(
図2及び
図3参照)に掛けてタンディッシュ101(
図2及び
図3参照)を吊ったときにタンディッシュ101の重心Gを通る鉛直線が第1フック掛部2aと第2フック掛部2bとを結ぶ水平線L上の任意の点を通るように設定されている。
【0121】
この変形例による吊具1の以上の構成以外の構成は、前記第3実施形態による吊具1と同様である。
【0122】
この変形例では、吊具1が第1フック掛部2a及び第2フック掛部2bを有するため、その第1フック掛部2a及び第2フック掛部2bをクレーンフック100a,100bに吊り掛けることにより、タンディッシュ101が非常に大型のものであっても、当該吊具を介してそのタンディッシュ101をより安定的に吊ることができる。
【0123】
また、この変形例による吊具1では、タンディッシュ101の重心Gを通る鉛直線が第1フック掛部2aと第2フック掛部2bとを結ぶ水平線L上の任意の点を通るため、クレーンフック100a,100bを第1及び第2フック掛部2a,2bに掛けるとともに2つの第1吊下部8及び2つの第2吊下部9を4つのタンディッシュ掛部104に掛けてタンディッシュ101を吊ったときに、タンディッシュ101及び吊具1が転倒するのを防ぐことができる。
【0124】
また、この変形例において、第1フレーム4上における第1フック掛部2a及び第2フック掛部2bの位置が、2つの第1吊下部8と2つの第2吊下部9を4つのタンディッシュ掛部104に掛けてタンディッシュ101を吊ったときにそのタンディッシュ101の重心Gを通る鉛直線が第1フック掛部2aと第2フック掛部2bとを結ぶ水平線L上の当該第1フック掛部2aと当該第2フック掛部2bとの間の中点Mを通るように設定されているとなおよい。この場合、クレーンフック100a,100bを第1及び第2フック掛部2a,2bに掛けるとともに2つの第1吊下部8と2つの第2吊下部9を4つのタンディッシュ掛部104に掛けてタンディッシュ101を吊ったときに、クレーンフック100a,100bによって吊られている第1フック掛部2aと第2フック掛部2bとの間の中点Mの鉛直下方にタンディッシュ101の重心Gが位置する。このため、吊具1及びその吊具1によって吊ったタンディッシュ101が傾くのを防止できる。
【0125】
この変形例による吊具1では、以上の効果以外にも、前記実施形態による吊具1によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0126】
なお、この変形例による吊具1は、前記第3実施形態の吊具1に2つのフック掛部としての第1及び第2フック掛部2a,2bを適用したものであるが、前記第1及び第2実施形態の吊具1に同様に2つのフック掛部を適用してもよい。
【0127】
また、本発明における2つのフック掛部を有する吊具は、その2つのフック掛部がそれぞれ別個のクレーンフックに吊り掛けられるものに必ずしも限定されず、上述の特許文献1に開示された吊り金具のように両フック型の1つのクレーンフックに2つのフック掛部が吊り掛けられるものであってもよい。
【0128】
また、第1フレーム上における第1フック掛部及び第2フック掛部の位置は、2つの第1吊下部と2つの第2吊下部を4つのタンディッシュ掛部に掛けてタンディッシュを吊ったときにそのタンディッシュの重心を通る鉛直線が第1フック掛部と第2フック掛部とを結ぶ水平線上の任意の点を通るように設定されていればよく、必ずしも前記鉛直線が第1フック掛部と第2フック掛部との間の中点を通るように設定されていなくてもよい。
【0129】
また、前記各実施形態では、第1フレームのサブフレームがメインフレームに固定されているが、このサブフレームを第2フレームと同様に揺動可能にメインフレームに取り付けてもよい。すなわち、第2フレームとサブフレームの両方をそれぞれ揺動可能にメインフレームに取り付けてもよい。
【0130】
また、本発明の各第1吊下部の第1連結部及び各第2吊下部の第2連結部の構造として、前記特許文献1に開示されたタンディッシュ吊具のフックを吊具の本体の枝ビームに連結している箇所の構造を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0131】
1 タンディッシュ吊具
2 フック掛部
2a 第1フック掛部
2b 第2フック掛部
4 第1フレーム
6 第2フレーム
8 第1吊下部
9 第2吊下部
22 メインフレーム
24 サブフレーム
42a 第1吊掛部
42b 第2吊掛部
44a 第1連結部
44b 第2連結部
101 タンディッシュ
104 タンディッシュ掛部