(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】製品設計装置および該方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/27 20200101AFI20220202BHJP
【FI】
G06F30/27
(21)【出願番号】P 2018181509
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】和田 尭
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0095936(US,A1)
【文献】特開2013-050899(JP,A)
【文献】特開2011-187056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品に要求される要求項目を満たすように、前記製品を構成する構成要素の設計値を求める製品設計装置であって、
複数の要求項目を満たすように、複数の構成要素における複数の設計値を、前記要求項目を目的変数とし前記構成要素を説明変数とする多点探索のベイズ最適化を用いることによって求める設計処理部と、
前記設計処理部で求めた複数の設計値を出力する出力部と、
前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値を実績情報として記憶する実績情報記憶部とを備え、
前記設計処理部は、
前記実績情報記憶部に記憶された実績情報に基づいて、前記目的変数の事前分布を生成する事前分布生成処理を行う事前分布生成部と、
前記事前分布生成部で生成された前記目的変数の事前分布からベイズ推定によって前記目的変数の事後分布を生成する事後分布生成処理を行う事後分布生成部と、
前記事後分布生成部で生成された事後分布に基づく獲得関数の大域的最適解を前記複数の設計値として求める最適解演算処理を行う最適解演算部とを備え、
前記最適解演算部は、勾配法で前記獲得関数の大域的最適点を求め、
前記獲得関数q-EHI
MC
(x
(1:q)
)は、次式C1で表され、前記獲得関数の勾配▽q-EHI
MC
(x
(1:q)
)は、次式C2で表される、
製品設計装置。
ただし、Mは、モンテカルロサンプリングのサンプリング数であり、F
m,x(1:q)
(1:df)
は、事後分布p(f
(1:df)
|D
n
)のx
(1:q)
に対するm番目のサンプル点であり、f
(1:df)
は、d
f
個の目的変数{f
(1)
(x)、f
(2)
(x)、・・・f
(df)
(x)}であり、前記式C2における偏微分は、次式C3および式C4で表される。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【請求項2】
製品に要求される要求項目を満たすように、前記製品を構成する構成要素の設計値を求める製品設計装置であって、
複数の要求項目を満たすように、複数の構成要素における複数の設計値を、前記要求項目を目的変数とし前記構成要素を説明変数とする多点探索のベイズ最適化を用いることによって求める設計処理部と、
前記設計処理部で求めた複数の設計値を出力する出力部と、
前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値を実績情報として記憶する実績情報記憶部
とを備え、
前記設計処理部は、
前記実績情報記憶部に記憶された実績情報に基づいて、前記目的変数の事前分布を生成する事前分布生成処理を行う事前分布生成部と、
前記事前分布生成部で生成された前記目的変数の事前分布からベイズ推定によって前記目的変数の事後分布を生成する事後分布生成処理を行う事後分布生成部と、
前記事後分布生成部で生成された事後分布に基づく獲得関数の大域的最適解を前記複数の設計値として求める最適解演算処理を行う最適解演算部とを備え、
前記最適解演算部は、勾配法で前記獲得関数の大域的最適点を求め、
前記獲得関数q-EHIR
MC
(x
(1:q)
)は、次式C5で表され、前記獲得関数の勾配▽q-EHIR
MC
(x
(1:q)
)は、次式C6で表される、
製品設計装置。
ただし、Mは、モンテカルロサンプリングのサンプリング数であり、F
m,x(1:q)
(1:df)
は、事後分布p(f
(1:df)
|D
n
)のx
(1:q)
に対するm番目のサンプル点であり、f
(1:df)
は、d
f
個の目的変数{f
(1)
(x)、f
(2)
(x)、・・・f
(df)
(x)}であり、前記式C6における偏微分は、次式C7および式C8で表され、勾配保証量HVR
MC
(q’)
は、次式C9のように定義され、HVR(F
m,x(q’)
(1:df)
)は、F
m,x(q’)
(1:df)
を基準点とし、非劣解集合D
n
*
と予め設定された限界点(limit point)で支配されるhypervolumeを示す。
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【請求項3】
前記実績情報記憶部に記憶された実績情報に追加する前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値を入力する入力部をさらに備え、
前記設計処理部は、前記入力部から前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値が入力された場合に、前記入力部から入力された前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値を前記実績情報記憶部に記憶された実績情報に追加した後に、前記事前分布生成処理、前記事後分布生成処理および前記最適解演算処理それぞれを、前記事前分布生成部、前記事後分布生成部および前記最適解演算部それぞれに行わせる繰り返し処理部をさらに備える、
請求項1または請求項2に記載の製品設計装置。
【請求項4】
コンピュータによって実行され、製品に要求される要求項目を満たすように、前記製品を構成する構成要素の設計値を求める製品設計方法であって、
複数の要求項目を満たすように、複数の構成要素における複数の設計値を、前記要求項目を目的変数とし前記構成要素を説明変数とする多点探索のベイズ最適化を用いることによって求める設計処理工程と、
前記設計処理工程で求めた複数の設計値を出力する出力工程と、
前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値を実績情報として実績情報記憶部に記憶する記憶工程とを備え、
前記設計処理工程は、
前記実績情報記憶部に記憶された実績情報に基づいて、前記目的変数の事前分布を生成する事前分布生成工程と、
前記事前分布生成工程で生成された前記目的変数の事前分布からベイズ推定によって前記目的変数の事後分布を生成する事後分布生成工程と、
前記事後分布生成工程で生成された事後分布に基づく獲得関数の大域的最適解を前記複数の設計値として求める最適解演算工程とを備え、
前記最適解演算工程は、勾配法で前記獲得関数の大域的最適点を求め、
前記獲得関数q-EHI
MC(x
(1:q))は、次式C1で表され、前記獲得関数の勾配▽q-EHI
MC(x
(1:q))は、次式C2で表される、
製品設計
方法。
ただし、Mは、モンテカルロサンプリングのサンプリング数であり、F
m,x(1:q)
(1:df)は、事後分布p(f
(1:df)|D
n)のx
(1:q)に対するm番目のサンプル点であり、f
(1:df)は、d
f個の目的変数{f
(1)(x)、f
(2)(x)、・・・f
(df)(x)}であり、前記式C2における偏微分は、次式C3および式C4で表される。
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【請求項5】
コンピュータによって実行され、製品に要求される要求項目を満たすように、前記製品を構成する構成要素の設計値を求める製品設計方法であって、
複数の要求項目を満たすように、複数の構成要素における複数の設計値を、前記要求項目を目的変数とし前記構成要素を説明変数とする多点探索のベイズ最適化を用いることによって求める設計処理工程と、
前記設計処理工程で求めた複数の設計値を出力する出力工程と、
前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値を実績情報として実績情報記憶部に記憶する記憶工程とを備え、
前記設計処理工程は、
前記実績情報記憶部に記憶された実績情報に基づいて、前記目的変数の事前分布を生成する事前分布生成工程と、
前記事前分布生成工程で生成された前記目的変数の事前分布からベイズ推定によって前記目的変数の事後分布を生成する事後分布生成工程と、
前記事後分布生成工程で生成された事後分布に基づく獲得関数の大域的最適解を前記複数の設計値として求める最適解演算工程とを備え、
前記最適解演算工程は、勾配法で前記獲得関数の大域的最適点を求め、
前記獲得関数q-EHIR
MC(x
(1:q))は、次式C5で表され、前記獲得関数の勾配▽q-EHIR
MC(x
(1:q))は、次式C6で表される、
製品設計
方法。
ただし、Mは、モンテカルロサンプリングのサンプリング数であり、F
m,x(1:q)
(1:df)は、事後分布p(f
(1:df)|D
n)のx
(1:q)に対するm番目のサンプル点であり、f
(1:df)は、d
f個の目的変数{f
(1)(x)、f
(2)(x)、・・・f
(df)(x)}であり、前記式C6における偏微分は、次式C7および式C8で表され、勾配保証量HVR
MC
(q’)は、次式C9のように定義され、HVR(F
m,x(q’)
(1:df))は、F
m,x(q’)
(1:df)を基準点とし、非劣解集合D
n
*と予め設定された限界点(limit point)で支配されるhypervolumeを示す。
【数14】
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品における複数の設計値を求める製品設計装置および製品設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の設計では、通常、製品を構成する構成要素の値(設計値)が、前記製品に要求される所望の要求項目を満たすように、設計される。この前記構成要素の設計値の決定では、前記構成要素の値を変更しながら試作やシミュレーションが実施され、前記要求項目を所定の許容範囲で満たすか否かが評価され、適当な前記構成要素の設計値が探索される。この試作やシミュレーションには、通常、時間や費用等のコストがかかる。このため、現実的には、試作やシミュレーションの回数が制限され、その中でより適切な構成要素の設計値を求めることが重要となる。
【0003】
このような場合に、少ない評価回数で未知数を最適化する手法として、例えば非特許文献1および非特許文献2等に開示されたベイズ最適化が知られている。このベイス最適化は、目的変数と説明変数との関係を表す未知の目的関数に関し、大域的最適解を効率よく探索する手法である。このベイズ最適化を製品設計に応用する場合、前記構成要素が前記説明変数に当てられ、前記要求項目が前記目的変数に当てられる。
【0004】
このベイス最適化は、事前分布を生成する事前分布生成工程と、この事前分布からベイズ推定(ベイズ定理)により事後分布を生成する事後分布生成工程と、前記事後分布に関する獲得関数の大域的最適解を求める最適解演算工程とを備える。この最適解演算工程では、獲得関数と呼ばれる評価基準に基づき、前記次に評価すべき点が決定される。前記事前分布生成工程では、例えば非特許文献3等に開示された、代表的な手法であるGaussian Process(ガウス過程、GP)が用いられ、使用可能な観測データ(実績値)に基づいてガウス分布に従う確率モデルが前記事前分布として生成される。前記最適解演算工程では、前記事後分布生成工程で生成された事後分布に基づく獲得関数が最大となる点が次に評価すべき点として決定される。この獲得関数には、例えば、非特許文献4に開示されたProbability of Improvement(PI)や、非特許文献5に開示されたExpected Improvement(EI)や、非特許文献6に開示されたUpper Confidence Bound(UCB)や、非特許文献7に開示されたEntoropy Search(ES)や、非特許文献8に開示されたStepwise Uncertainty Reduction(SUR)や、非特許文献9に開示されたKnowledge Grandient(KG)等が知られている。
【0005】
このベイズ最適化において、最も単純なベイズ最適化は、1点ずつ未知の目的関数を評価することによって、1個の目的変数を最適化する場合であるが、例えば非特許文献10および非特許文献11等のように、複数の目的変数を最適化するベイズ最適化(多目的最適化のベイズ最適化)や、例えば非特許文献12および非特許文献13等のように、1点ずつではなく複数点で多点探索を行うベイズ最適化(多点探索のベイズ最適化)も知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】SHAHRIARI,B.,SWERSKY, K., WANG, Z., ADAMS, R. P., AND DE FREITAS, N. , Taking the human out of the loop: A review of Bayesian optimization. Proceedings of the IEEE (2016)
【文献】BROCHU, E., CORA, V. M., AND DE FREITAS, N. A tutorial on Bayesian optimization of expensive cost functions, with application to active user modeling and hierarchical reinforcement learning. arXiv (2010)
【文献】Carl Rasmussen and Chris Williams. Gaussian Processes for Machine Learning. MIT Press, 2006.
【文献】Torn, A. and Zilinskas, A. Global optimization, (1989)
【文献】Jones, Donald R., Matthias Schonlau, and William J. Welch. Efficient global optimization of expensive black-box functions. Journal of Global optimization 13.4 (1998): 455492.
【文献】Srinivas, N., Krause, A., Seeger, M., and Kakade, S. M. Gaussian process optimization in the bandit setting: No regret and experimental design, ICML (2010)
【文献】Hernandez-Lobato J. M., Hoffman M. W. and Ghahramani Z. Predictive Entropy Search for Efficient Global Optimization of Black-box Functions, NIPS (2014)
【文献】Victor Picheny Multiobjective optimization using Gaussian process emulators via stepwise uncertainty reduction Statistics and Computing (2015)
【文献】P. Frazier, W.B. Powell, and S. Dayanik, The knowledge gradient policy for correlated normal beliefs, INFORMS Journal on Computing (2009)
【文献】Emmerich MT, Deutz AH, Klinkenberg JW Hypervolume-Based Expected Improvement: Monotonicity Properties and Exact Computation Congress of Evolutionary Compu-tation(CEC) (2011)
【文献】Svenson J, Santner T Multiobjective Optimization of Expensive-to-Evaluate Deterministic Computer Simulator Models, Computational Statistics and Data Analysis (2016)
【文献】David Ginsbourger, Rodolphe Le Riche, Laurent Carraro. Kriging Is Well-Suited to Parallelize Optimization. Computational Intelligence in Expensive Optimization Problems (2010)
【文献】J. Wu and P. Frazier. The parallel knowledge gradient method for batch bayesian optimization. NIPS (2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、製品を設計する場合、要求項目(目的変数)が複数である場合が多い。このような場合にベイズ最適化を製品設計に応用しようとすると、従来では、1点ずつ評価することによって、前記複数の目的変数を最適化する必要があるため、時間等のコストがかかってしまう。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、要求項目が複数である場合でも、コストをより低減できる製品設計装置および製品設計方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる製品設計装置は、製品に要求される要求項目を満たすように、前記製品を構成する構成要素の設計値を求める装置であって、複数の要求項目を満たすように、複数の構成要素における複数の設計値を、前記要求項目を目的変数とし前記構成要素を説明変数とする多点探索のベイズ最適化を用いることによって求める設計処理部と、前記設計処理部で求めた複数の設計値を出力する出力部とを備える。
【0010】
このような製品設計装置は、複数の要求項目を満たすように、複数の構成要素における複数の設計値を、前記要求項目を目的変数とし前記構成要素を説明変数とする多点探索のベイズ最適化、すなわち、多点探索での多目的最適化のベイズ最適化を用いることによって求めるので、要求項目が複数である場合でも、コストをより低減できる。
【0011】
そして、上述の製品設計装置において、前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値を実績情報として記憶する実績情報記憶部をさらに備え、前記設計処理部は、前記実績情報記憶部に記憶された実績情報に基づいて、前記目的変数の事前分布を生成する事前分布生成処理を行う事前分布生成部と、前記事前分布生成部で生成された前記目的変数の事前分布からベイズ推定によって前記目的変数の事後分布を生成する事後分布生成処理を行う事後分布生成部と、前記事後分布生成部で生成された事後分布に基づく獲得関数の大域的最適解を前記複数の設計値として求める最適解演算処理を行う最適解演算部とを備え、前記最適解演算部は、勾配法で前記獲得関数の大域的最適点を求める。好ましくは、上述の製品設計装置において、前記事前分布生成部は、Gaussian Process(ガウス過程)を用いて前記事前分布を生成する。ここで、前記獲得関数q-EHI
MC
(x
(1:q)
)は、後述の式6で表され、前記獲得関数の勾配▽q-EHI
MC
(x
(1:q)
)は、後述の式7で表される。これによれば、勾配法で前記獲得関数の大域的最適点を求める製品設計装置が提供できる。このような製品設計装置は、後述の式6および式7により近似的に勾配を計算できる。
【0012】
そして、上述の製品設計装置において、前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値を実績情報として記憶する実績情報記憶部をさらに備え、前記設計処理部は、前記実績情報記憶部に記憶された実績情報に基づいて、前記目的変数の事前分布を生成する事前分布生成処理を行う事前分布生成部と、前記事前分布生成部で生成された前記目的変数の事前分布からベイズ推定によって前記目的変数の事後分布を生成する事後分布生成処理を行う事後分布生成部と、前記事後分布生成部で生成された事後分布に基づく獲得関数の大域的最適解を前記複数の設計値として求める最適解演算処理を行う最適解演算部とを備え、前記最適解演算部は、勾配法で前記獲得関数の大域的最適点を求める。好ましくは、上述の製品設計装置において、前記事前分布生成部は、Gaussian Process(ガウス過程)を用いて前記事前分布を生成する。ここで、前記獲得関数q-EHIR
MC
(x
(1:q)
)は、後述の式16で表され、前記獲得関数の勾配▽q-EHIR
MC
(x
(1:q)
)は、後述の式17で表される。これによれば、勾配法で前記獲得関数の大域的最適点を求める製品設計装置が提供できる。このような製品設計装置は、後述の式16および式17により、勾配の消失を回避できる。
【0013】
他の一態様では、これら上述の製品設計装置において、前記実績情報記憶部に記憶された実績情報に追加する前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値を入力する入力部をさらに備え、前記設計処理部は、前記入力部から前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値が入力された場合に、前記入力部から入力された前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値を前記実績情報記憶部に記憶された実績情報に追加した後に、前記事前分布生成処理、前記事後分布生成処理および前記最適解演算処理それぞれを、前記事前分布生成部、前記事後分布生成部および前記最適解演算部それぞれに行わせる繰り返し処理部をさらに備える。
【0014】
このような製品設計装置は、当該製品設計装置で求められた設計値で例えば試作やシミュレーション等によって製品を試した場合に、これによって新たに得られた各実績値を入力部から入力して新たな実績情報として、前記実績情報記憶部に記憶された実績情報に追加でき、前記新たに得られた実績情報を追加した追加の実績情報で新たな設計値を求めることができる。
【0015】
本発明の他の一態様にかかる製品設計方法は、コンピュータによって実行され、製品に要求される要求項目を満たすように、前記製品を構成する構成要素の設計値を求める方法であって、複数の要求項目を満たすように、複数の構成要素における複数の設計値を、前記要求項目を目的変数とし前記構成要素を説明変数とする多点探索のベイズ最適化を用いることによって求める設計処理工程と、前記設計処理工程で求めた複数の設計値を出力する出力工程と、前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値を実績情報として実績情報記憶部に記憶する記憶工程とを備え、前記設計処理工程は、前記実績情報記憶部に記憶された実績情報に基づいて、前記目的変数の事前分布を生成する事前分布生成工程と、前記事前分布生成工程で生成された前記目的変数の事前分布からベイズ推定によって前記目的変数の事後分布を生成する事後分布生成工程と、前記事後分布生成工程で生成された事後分布に基づく獲得関数の大域的最適解を前記複数の設計値として求める最適解演算工程とを備え、前記最適解演算工程は、勾配法で前記獲得関数の大域的最適点を求める。ここで、前記獲得関数q-EHIMC(x(1:q))は、後述の式6で表され、前記獲得関数の勾配▽q-EHIMC(x(1:q))は、後述の式7で表される。
【0016】
このような製品設計方法は、複数の要求項目を満たすように、複数の構成要素における複数の設計値を、多点探索での多目的最適化のベイズ最適化を用いることによって求めるので、要求項目が複数である場合でも、コストをより低減できる。これによれば、勾配法で前記獲得関数の大域的最適点を求める製品設計方法が提供できる。このような製品設計方法は、後述の式6および式7により近似的に勾配を計算できる。
【0017】
本発明の他の一態様にかかる製品設計方法は、コンピュータによって実行され、製品に要求される要求項目を満たすように、前記製品を構成する構成要素の設計値を求める方法であって、複数の要求項目を満たすように、複数の構成要素における複数の設計値を、前記要求項目を目的変数とし前記構成要素を説明変数とする多点探索のベイズ最適化を用いることによって求める設計処理工程と、前記設計処理工程で求めた複数の設計値を出力する出力工程と、前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値を実績情報として実績情報記憶部に記憶する記憶工程とを備え、前記設計処理工程は、前記実績情報記憶部に記憶された実績情報に基づいて、前記目的変数の事前分布を生成する事前分布生成工程と、前記事前分布生成工程で生成された前記目的変数の事前分布からベイズ推定によって前記目的変数の事後分布を生成する事後分布生成工程と、前記事後分布生成工程で生成された事後分布に基づく獲得関数の大域的最適解を前記複数の設計値として求める最適解演算工程とを備え、前記最適解演算工程は、勾配法で前記獲得関数の大域的最適点を求める。ここで、前記獲得関数q-EHIRMC(x(1:q))は、後述の式16で表され、前記獲得関数の勾配▽q-EHIRMC(x(1:q))は、後述の式17で表される。
【0018】
このような製品設計方法は、複数の要求項目を満たすように、複数の構成要素における複数の設計値を、多点探索での多目的最適化のベイズ最適化を用いることによって求めるので、要求項目が複数である場合でも、コストをより低減できる。これによれば、勾配法で前記獲得関数の大域的最適点を求める製品設計方法が提供できる。このような製品設計方法は、後述の式16および式17により、勾配の消失を回避できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる製品設計装置および製品設計方法は、要求項目が複数である場合でも、コストをより低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態における製品設計装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】2個の目的変数y
(1)、y
(2)の場合における、hypervolume improvementの改善しろを説明するための図である。
【
図3】2個の目的変数y
(1)、y
(2)の場合における、獲得関数に対するモンテカルロサンプリングによる近似計算を説明するための図である。
【
図4】実施形態における製品設計装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図4に示す獲得関数の最適化の動作を示すフローチャートである。
【
図6】2個の目的変数y
(1)、y
(2)の場合における、hypervolume improvementの勾配保証量を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
(第1実施形態)
図1は、実施形態における製品設計装置の構成を示すブロック図である。
図1には、第1および第2実施形態における製品設計装置Da、Dbが図示されており、
図1では、第1実施形態の製品設計装置Daにおける構成には、添え字「a」を備えた符号が付され、第2実施形態の製品設計装置Dbにおける構成には、添え字「b」を備えた符号が付され、第1および第2実施形態の製品設計装置Da、Dbにおける共通な構成には、添え字の無い符号が付されている。
図2は、2個の目的変数y
(1)、y
(2)の場合における、hypervolume improvementの改善しろを説明するための図である。
図3は、2個の目的変数y
(1)、y
(2)の場合における、獲得関数に対するモンテカルロサンプリングによる近似計算を説明するための図である。
図2および
図3における各横軸は、目的変数y
(1)であり、それら各縦軸は、目的変数y
(2)である。
【0024】
第1実施形態における製品設計装置Daは、製品に要求される要求項目を満たすように、前記製品を構成する構成要素の設計値を求める装置であり、例えば、
図1に示すように、制御処理部1aと、入力部2と、出力部3と、インターフェース部(IF部)4と、記憶部5とを備える。
【0025】
入力部2は、制御処理部1aに接続され、例えば、設計値の演算開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、例えば、設計する製品の名称(例えば開発コード等)や後述の実績情報等の、前記設計値の演算を行う上で必要な各種データを製品設計装置Daに入力する装置であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチ、キーボードおよびマウス等である。出力部3は、制御処理部1aに接続され、制御処理部1aの制御に従って、入力部2から入力されたコマンドやデータ、および、当該製品設計装置Daによって演算された設計値等を出力する装置であり、例えばCRTディスプレイ、LCD(液晶表示装置)および有機ELディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
【0026】
IF部4は、制御処理部1aに接続され、制御処理部1aの制御に従って、外部機器との間でデータの入出力を行う回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS-232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、IrDA(Infrared Data Asscoiation)規格等の赤外線通信を行うインターフェース回路、および、USB(Universal Serial Bus)規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部4は、外部機器との間で通信を行う回路であり、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等であっても良い。
【0027】
記憶部5は、制御処理部1aに接続され、制御処理部1aの制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、製品設計装置Daの各部2~5を制御する制御プログラムや、製品に要求される複数の要求項目を満たすように、前記製品を構成する複数の構成要素における複数の設計値を、前記要求項目を目的変数とし前記構成要素を説明変数とする多点探索のベイズ最適化を用いることによって求める設計処理プログラム等の制御処理プログラムが含まれる。前記設計処理プログラムは、後述の実績情報記憶部51に記憶された実績情報に基づいて、前記目的変数の事前分布を生成する事前分布生成処理を行う事前分布生成プログラムと、前記事前分布生成プログラムで生成された前記目的変数の事前分布からベイズ推定によって前記目的変数の事後分布を生成する事後分布生成処理を行う事後分布生成プログラムと、前記事後分布生成プログラムで生成された事後分布に基づく獲得関数の大域的最適解を前記複数の設計値として求める最適解演算処理を行う最適解演算プログラムと、入力部2から前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値が入力された場合に、入力部2から入力された前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値を実績情報記憶部51に記憶された実績情報に追加した後に、前記事前分布生成処理、前記事後分布生成処理および前記最適解演算処理それぞれを、前記事前分布生成プログラム、前記事後分布生成プログラムおよび前記最適解演算プログラムそれぞれに行わせる繰り返し処理プログラムとを含む。前記各種の所定のデータには、製品の名称や実績情報等の、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。このような記憶部5は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。記憶部5は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部1aのワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。また、記憶部5は、比較的記憶容量の大きいハードディスク装置を備えて構成されても良い。そして、記憶部5は、実績情報記憶部51を機能的に備える。
【0028】
実績情報記憶部51は、実績情報を記憶するものである。前記実績情報は、製造、試作およびシミュレート等された複数の製品それぞれにおける、前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値(各観測データ)Dn(Dn={(x1、y1)、(x2、y2)、・・・・、(xn、yn)}(説明変数xi、目的変数yi))である。
【0029】
例えば、機械設計では、軽量でありながら、振動を抑制するために高い剛性が機械に求められ、前記機械の使用条件下で損傷しないように応力集中を避けるように、前記機械を設計する必要がある。このような場合に、前記機械の形状を決定したうえで、前記複数の要求項目は、前記機械の重量、剛性および最大応力を含み、前記複数の構成要素は、前記機械の各部材の各寸法を含む。
【0030】
また例えば、機械の動作を制御する制御装置のパラメータ設計では、前記制御装置が様々な複数の使用条件下で利用される場合、各使用条件下で前記機械の性能を最大にするように前記パラメータを設計する必要がある。例えば、前記機械が6軸多関節のロボットである場合、前記ロボットが比較的重い物体を持つ高負荷の使用条件下の場合、および、前記ロボットが比較的軽い物体を持つ低負荷の使用条件下の場合の両方の使用条件下で、前記ロボットの動作軌跡のへの追従性能が要求される。このような場合に、前記複数の要求項目は、各使用条件下の各性能を含み、前記複数の構成要素は、前記制御装置の各パラメータ(例えばPID制御のPIDゲイン等)を含む。
【0031】
より詳しくは、例えば、前記製品が鋼板である場合には、高強度で伸び易い鋼板が求められ、それを実現する鋼板の各組成成分を設計する必要がある。このような場合に、前記複数の要求項目は、強度および伸び易さを含み、前記複数の構成要素は、鋼板の各組成成分を含む。
【0032】
このような実績情報は、例えば、入力部2から入力されて実績情報記憶部51に記憶されて良く、また例えば、実績情報を記録した記録媒体(例えばCD-ROM、DVD-ROMおよびUSBメモリ等)から、IF部4を介して入力されて実績情報記憶部51に記憶されて良く、また例えば、実績情報を記憶した、ネットワークのサーバ装置から、前記ネットワークおよびIF部4を介して入力されて実績情報記憶部51に記憶されて良い。
【0033】
制御処理部1aは、製品設計装置Daの各部2~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、後述の多点探索での多目的最適化のベイズ最適化を用いることによって、製品に要求される要求項目を満たすように、前記製品を構成する構成要素の設計値を求めるための回路である。制御処理部1aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部1aは、制御処理プログラムが実行されることによって、制御部11および設計処理部12aを機能的に備える。
【0034】
制御部11は、当該製品設計装置Daの各部2~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、製品設計装置Daの全体制御を司るものである。
【0035】
設計処理部12aは、複数の要求項目を満たすように、複数の構成要素における複数の設計値を、前記要求項目を目的変数とし前記構成要素を説明変数とする多点探索のベイズ最適化、すなわち、多点探索での多目的最適化のベイズ最適化を用いることによって求めるものである。設計処理部12aは、本実施形態では、事前分布生成部121と、事後分布生成部122と、最適解演算部123aと、繰り返し処理部124とを機能的に備える。
【0036】
事前分布生成部121は、実績情報記憶部51に記憶された実績情報に基づいて、前記目的変数の事前分布を生成する事前分布生成処理を行うものである。
【0037】
より具体的には、本実施形態では、例えば、複数の目的変数それぞれに対して、事前分布生成部121は、いわゆるGaussian Process(ガウス過程、GP)を用いることによって前記目的変数の事前分布を確率モデルとして生成する。前記GPは、正定値カーネル関数k(x、x’)で定義される事前分布p(f(x))=N(0、Kn)に従う確率過程である。ここで、関数fは、説明変数xと目的変数y=f(x)とを関係づける目的関数(未知の目的関数)であり、Knは、[Kn]i,j=k(xi、xj)の要素を持つi行j列の共分散行列である。前記カーネル関数は、種々、提案されており、例えば、本実施形態では、次式1で定義されるAutomatic Relevance Determination(ARD)型のGaussianカーネル関数が利用される。
【0038】
なお、xiは、i番目の製品の設計値(ベクトル)を表し、xiは、製品の設計値xのi番目の要素(スカラー)を表す。
【0039】
【0040】
ここで、σk、liは、カーネル関数の形状(プロファイル)を調整する0より大きな値のハイパーパラメータである。このため、本実施形態では、事前分布生成部121は、実績情報記憶部51に記憶された実績情報(実測データ)Dnに基づいて、例えば最尤推定により、これらハイパーパラメータσk、liを求め、前記目的変数の事前分布p(f(x))を生成する。
【0041】
事後分布生成部122は、事前分布生成部121で生成された事前分布からベイズ推定(ベイズの定理)によって事後分布を生成する事後分布生成処理を行うものである。より具体的には、事後分布生成部122は、事前分布生成部121で求められた式1で表されるカーネル関数を用いた事前分布p(f(x))=N(0、Kn)から、次式2ないし式4で表される事後分布p(f(x)|Dn)を求める。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
ここで、kn(x)=[k(x、x1)、k(x、x2)、・・・、k(x、xn)]Tであり、Y=[y1、y2、・・・、yn]Tである。なお、yは、或る1つの設計値xに対応する目的変数を表し、Yは、複数の製品の目的関数を纏めたベクトルを表す。
【0046】
最適解演算部123aは、事後分布生成部122で生成された事後分布に基づく獲得関数の大域的最適解を前記複数の設計値として求める最適解演算処理を行うものである。
【0047】
上述のように、従来、多目的最適化のベイズ最適化は、種々、提案されている。例えば、前記非特許文献10に開示された手法は、上述のEIの考え方をいわゆるhypervolume improvement(HVI)へ拡張した手法(Expected hypervolume improvement(EHI))であり、獲得関数J(x)として、次式Aが用いられ、HVIは、次式Bで定義される。
【0048】
【0049】
【0050】
ここで、E(a)は、aの期待値であり、p(f(1:df)|Dn)は、1からdfまでのdf個の目的変数f(1:df)の事後分布を表し、k番目の目的変数と説明変数とを関係付けるk番目の目的関数をf(k)とする場合に、目的変数f(1:df)={f(1)(x)、f(2)(x)、・・・、f(df)(x)}である。
【0051】
d
f個の目的変数f
(1:df)を最小化する多目的最適化のベイズ最適化では、唯一の解が存在せず、いわゆるパレート解となる。このパレート解の集合により形成される目的変数空間上の面であるパレートフロントの解を探索することが目的となる。この探索では、観測データD
nに基づく非劣解集合D
*
nによって形成される面(パレートフロント)に対し、新たな点を追加したD
n+1(={D
n、(x
n+1、f
n+1
(1:df))際に改善される改善しろに基づいて解が探索される。この改善しろを求める指標は、例えば前記hypervolume improvementやadditive epsilon等があり、前記hypervolume improvementでは、例えば、
図2に示すように、基準点(reference point)★を上限とし、非劣解集合D
n
*によって支配される領域のLebesgure測度(hypervolumeと呼ばれる)をHV(D
n
*)とする場合、前記改善しろを求める指標は、上述の式Aのように獲得関数J(x)として表される。
【0052】
一方、本実施形態では、このようなEHIによる多目的最適化のベイズ最適化をさらに多点探索のベイズ最適化に拡張することによって、多点探索での多目的最適化のベイズ最適化が実現される。すなわち、本実施形態における多点探索での多目的最適化のベイズ最適化では、獲得関数q-EHI(x(1:q))として、次式5が用いられる。
【0053】
【0054】
ここで、HVI(f(1:df)(x(1:q)))は、HV(Dn
*)に対してq個の候補点f(1:df)(x(1:q))を追加した場合のHypervolumeの改善量(改善しろ)である。p(f(1:df))は、観測データDnが得られた下でのx(1:q)におけるf(1:df)の事後分布である。各目的変数f(k)は、独立したGPに従うものとし、p(f(1:df))=p(f(1)(x(1:q))|Dn)×p(f(2)(x(1:q))|Dn)×・・・×p(f(df)(x(1:q))|Dn)とする。
【0055】
この式5は、多変量ガウス分布に関する積分計算を必要とするため、解析的に解くことが難しい。このため、例えば
図3に示すように、モンテカルロサンプリングにより、式5は、次式6のように近似される。
【0056】
【0057】
ここで、Mは、サンプリング数であり、式6におけるHVIの括弧内の文字変数は、確率分布p(f(1:df)|Dn)のx(1:q)に対するm番目のサンプル点である。
【0058】
この式6の獲得関数q-EHIMC(x(1:q))に基づき候補点を決定するためには、獲得関数q-EHIMC(x(1:q))が最大となる点を探索する必要がある。多点探索の場合には、qdxの次元となるため、従来の1点探索のベイズ最適化と比較して、q倍の高次元空間での探索となる。このため、本実施形態では、獲得関数の効率的な最適化を行うために、勾配法に基づき式6の獲得関数q-EHIMC(x(1:q))が最適化される。
【0059】
より具体的には、式6の獲得関数q-EHIMC(x(1:q))の勾配▽q-EHIMC(x(1:q))は、次式7で表され、この式7における偏微分は、次の式8および式9で表される。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
この式9より、式7の獲得関数の勾配▽q-EHIMC(x(1:q))を計算するためには、HVIの目的変数に関する偏微分∂HVI(Fm
(1:df))/∂Fm
(k)(式9における乗算の前半部分)と、前記目的変数の説明変数に関する偏微分∂Fm
(k)/∂x(i)(式9における乗算の後半部分)とを計算する必要がある。
【0064】
HVIの目的変数に関する偏微分∂HVI(Fm
(1:df))/∂Fm
(k)は、基準となるHVI(Fm
(1:df))と、Fm
(1:df)の各要素に微小変動δfを加えたHVI(・・・、Fm
(k)+δf、・・・)のdf+1回のHVI計算による数値微分で計算される。
【0065】
前記目的変数の説明変数に関する偏微分∂Fm
(k)/∂x(i)も、HVIの目的変数に関する偏微分∂HVI(Fm
(1:df))/∂Fm
(k)と同様に、数値微分で計算されて良い。しかしながら、x(1:q)の或る要素xi(q’)に微小変動δxを与えた点に関する確率分布p(f(1:df)(・・・、xi(q’)+δx、・・・)|Dn)を求める計算コストは、O(n2)となり、観測データ数nに依存するため、ベイズ最適化による繰り返し探索が進むに従って大きくなる。このため、本実施形態では、確率分布p(f(1:df)|Dn)に従うFm
(1:df)の勾配が計算される。
【0066】
より具体的には、不変カーネルk(x、x’)に関して、Bochner’s定理(S. Bochner. Lectures on Fourier Integrals. Princeton University Press, 1959.参照)により、不変カーネルk(x、x’)のスペクトル密度に等しいフーリエ双対s(w)が存在し、正規化した確率密度関数をp(w)=s(w)/α、一様分布に従う確率変数をb~U[0、2π]とする場合に、不変カーネルk(x、x’)は、次式10で表される。そして、p(w、b)からサンプリングしたr個の点を纏めたW∈Rr×dx、b∈Rrを用いて次式11の基底関数を定義すると、不変カーネルk(x、x’)は、基底関数の内積で近似できる(k(x、x’)≒φ(x)Tφ(x’))。これにより、確率分布p(f(k)|Dn)に従うサンプルは、線形モデルの次式12および次式13で表される。ここで、A=ΦTΦ+σ2I,ΦT=[φ(x1)、φ(x2)、・・・、φ(xn)]である。実際に、limr→∞g(k)は、p(f(k)|Dn)に従う真のサンプルに一致する(R. M. Neal. Bayesian Learning for Neural Networks. PhD thesis, University of Toronto, 1995.参照)。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
この式12は、xの関数であるため、その勾配は、次式14で表される。ここで、[W]:,iは、Wのi列目のベクトルを示す。この式14を用いることにより、前記目的変数の説明変数に関する偏微分が求められる。
【0072】
【0073】
以上より、式7の勾配が求められるから、勾配法により、式6、すなわち、式5の大域的最適解が前記構成要素の設計値として求められる。
【0074】
そして、制御処理部1aは、その制御部11によって、設計処理部12aの最適解演算部123aで求められた大域的最適解を前記構成要素の設計値として出力部3から出力する。
【0075】
繰り返し処理部124は、入力部2から前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値が入力された場合に、前記入力部2から入力された前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値を実績情報記憶部51に記憶された実績情報に追加した後に、前記事前分布生成処理、前記事後分布生成処理および前記最適解演算処理それぞれを、事前分布生成部121、事後分布生成部122および最適解演算部123aそれぞれに行わせるものである。
【0076】
このような製品設計装置Daは、例えば、デスクトップ型やノード型等のコンピュータによって構成可能である。
【0077】
次に、第1実施形態の動作について説明する。
図4は、実施形態における製品設計装置の動作を示すフローチャートである。
図5は、
図4に示す獲得関数の最適化の動作を示すフローチャートである。
図4および
図5には、第1および第2実施形態の製品設計装置Da、Dbにおける各動作が図示されており、
図4および
図5では、第1実施形態の製品設計装置Daにおける動作には、添え字「a」を備えた符号が付され、第2実施形態の製品設計装置Dbにおける動作には、添え字「b」を備えた符号が付され、第1および第2実施形態の製品設計装置Da、Dbにおける共通な動作には、添え字の無い符号が付されている。
【0078】
このような構成の製品設計装置Daは、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。その制御処理プログラムの実行によって、制御処理部1aには、制御部11および設計処理部12aが機能的に構成され、設計処理部12aには、事前分布生成部121、事後分布生成部122、最適解演算部123aおよび繰り返し処理部124が機能的に構成される。なお、実績情報記憶部51には、入力部2やIF部4を介して実績情報が記憶されているものとする。
【0079】
例えば設計開始の指示を入力部2で受け付けると、
図4において、まず、設計処理部12aの事前分布生成部121は、実績情報記憶部51に記憶された実績情報に基づいて、前記目的変数の事前分布を生成する(S1、事前分布生成処理)。より具体的には、本実施形態では、事前分布生成部121は、例えば、実績情報記憶部51に記憶された実績情報(実測データ)D
nに基づいて、例えば最尤推定により、上述の式1におけるハイパーパラメータσ
k、l
iを求め、前記目的変数の事前分布p(f(x))を生成する。
【0080】
次に、設計処理部12aの事後分布生成部122は、事前分布生成部121で生成された事前分布からベイズ推定(ベイズの定理)によって事後分布を生成する(S2、事後分布生成処理)。より具体的には、本実施形態では、事後分布生成部122は、例えば、事前分布生成部121で求められた式1で表される事前分布p(f(x))=N(0、Kn)から、次式2ないし式4で表される事後分布p(f(x)|Dn)を求める。
【0081】
次に、設計処理部12aの最適解演算部123aは、事後分布生成部122で生成された事後分布に基づく獲得関数の大域的最適解を前記複数の設計値として求める(S3a、最適解演算処理)。本実施形態では、最適解演算部123aは、上述の式5の大域的最適解を、ここでは、近似式の式6の大域的最適解を、例えば勾配法により、前記複数の設計値として求める。より具体的には、最適解演算部123aは、獲得関数の勾配を表す上述の式7ないし式9において、HVIの目的変数に関する偏微分∂HVI(Fm
(1:df))/∂Fm
(k)を数値微分で計算し、前記目的変数の説明変数に関する偏微分∂Fm
(k)/∂x(i)を、上述の式10ないし式14を用いて計算することで、勾配法によって広域的最適解を、前記複数の設計値として求める。
【0082】
より詳しくは、
図5において、まず、最適解演算部123aは、事後分布生成部122で生成された事後分布p(f(x)|D
n)に基づく関数を複数生成し、候補点の初期値をランダム(無作為)に生成する(S31)。前記複数の関数は、本実施形態では、上述の式12および式13を用いて生成される。次に、最適解演算部123aは、これら生成した複数の関数に基づき式6の近似の獲得関数を求める(S32a)。次に、最適解演算部123aは、この近似の獲得関数の勾配を、数値微分や上述の各式を用いて求め(S34)、この求めた勾配から、最急降下法、共役勾配法、準ニュートン法等の勾配法により、処理S32aで求めた近似の獲得関数が最大となる方向へ、次の候補点を求めて更新する(S34)。そして、最適解演算部123aは、勾配法の収束条件を満たすか否かを判定し、この判定の結果、前記収束条件を満たしていない場合(No)には、この更新した候補点を用いて次の候補点を求めるために、処理を処理S32aに戻し、一方、前記判定の結果、前記収束条件を満たしている場合(Yes)には、この更新した候補点を大域的最適解とし、
図5に示す各処理を終了する。すなわち、
図4に示す処理S4が終了する。前記収束条件は、例えば候補点が予め設定された所定の範囲内で収束しているか否かである。
【0083】
図4に戻って、次に、制御処理部1aの制御部11は、設計処理部12aの最適解演算部123aで求められた大域的最適解を前記構成要素の設計値として出力部3から出力する(S4)。なお、必要に応じて、制御部11は、設計処理部12aの最適解演算部123aで求められた大域的最適解を前記構成要素の設計値としてIF部4から出力しても良い。
【0084】
そして、設計処理部12aの繰り返し処理部124は、入力部2から、新たな各実績値の入力があるか否かを判定する(S5)。この判定の結果、入力が無い場合(No)には、繰り返し処理部124は、処理を処理S5に戻し、一方、前記判定の結果、入力が有る場合(Yes)には、繰り返し処理部124は、次に、処理S6を実行する。すなわち、繰り返し処理部124は、入力が有るまで処理S5を繰り返す。
【0085】
ユーザは、この出力された前記構成要素の設計値で例えば試作やシミュレーション等によって製品を試し、この試した製品の要求項目を求める。例えば、上述の機械設計の例では、有限要素解析(FEM)によって機械の剛性や最大応力が求められる。この求めた要求項目が、予め設定された所望の条件(例えば仕様等)を満たしている場合には、前記構成要素の設計値で製品が設計できているので、製品設計装置Daを用いた製品の設計を終了する。この場合では、ユーザは、例えば設計終了の指示を入力部2から入力し、製品設計装置Daは、この設計終了を入力部2で受け付けると、割り込み処理で
図4に示す各処理を終了する。一方、前記求めた要求項目が前記所望の条件を満たしていない場合には、新たな前記構成要素の設計値を求めるために、ユーザは、この試した製品における各要求項目および各設計値を入力部2から入力する。なお、上述のように前記求めた要求項目が、予め設定された所望の条件(例えば仕様等)を満たしている場合でも、より好ましい要求項目を満たす設計値を求めるために、あるいは、予め設定した試行回数を満たすために、新たな前記構成要素の設計値を求めるために、ユーザは、前記試した製品における各要求項目および各設計値を入力部2から入力しても良い。
【0086】
処理S6では、制御処理部1aの繰り返し処理部124は、入力部2から前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値の入力を受け付けると、前記入力部2から入力された前記複数の要求項目および前記複数の構成要素それぞれの各実績値を実績情報記憶部51に記憶された実績情報に追加して実績情報を更新した後に、処理を処理S1に戻し、前記事前分布生成処理S1、前記事後分布生成処理S2および前記最適解演算処理S3aそれぞれを、事前分布生成部121、事後分布生成部122および最適解演算部123aそれぞれに行わせる。これによって新たな前記構成要素の設計値が求められ、ユーザは、新たな製品を試すことができる。
【0087】
以上説明したように、本実施形態における製品設計装置Daおよびこれに実装された製品設計方法は、複数の要求項目を満たすように、複数の構成要素における複数の設計値を、前記要求項目を目的変数とし前記構成要素を説明変数とする多点探索のベイズ最適化、すなわち、多点探索での多目的最適化のベイズ最適化を用いることによって求めるので、要求項目が複数である場合でも、コストをより低減できる。
【0088】
上記製品品設計装置Daおよび製品設計方法は、前記求められた設計値で例えば試作やシミュレーション等によって製品を試した場合に、これによって新たに得られた各実績値を入力部2から入力して新たな実績情報として、実績情報記憶部51に記憶された実績情報に追加でき、この新たに得られた実績情報を追加した追加の実績情報で新たな設計値を求めることができる。
【0089】
本実施形態によれば、勾配法で前記獲得関数の大域的最適点を求める製品設計装置Daおよび製品設計方法が提供でき、この製品設計装置Daおよび製品設計方法は、上述の式6および式7により近似的に勾配を計算できる。
【0090】
次に、別の実施形態について説明する。
(第2実施形態)
図6は、2個の目的変数y
(1)、y
(2)の場合における、hypervolume improvementの勾配保証量を説明するための図である。
図6における各横軸は、目的変数y
(1)あり、それら各縦軸は、目的変数y
(2)である。
【0091】
第1実施形態における製品設計装置Daは、上述の式5の獲得関数q-EHI(x(1:q))を用いたが、場合によっては勾配が消失する虞があるが、第2実施形態における製品設計装置Dbは、この点を改良した装置である。
【0092】
このような第2実施形態における製品設計装置Dbは、例えば、
図1に示すように、制御処理部1bと、入力部2と、出力部3と、IF部4と、記憶部5とを備える。これら第2実施形態の製品設計装置Dbにおける入力部2、出力部3、IF部4および記憶部5は、それぞれ、第1実施形態の製品設計装置Daにおける入力部2、出力部3、IF部4および記憶部5と同様であるので、その説明を省略する。
【0093】
制御処理部1bは、上述の式6の獲得関数に代え後述の式16の獲得関数を用いる点を除き制御処理部1aと同様であり、製品設計装置Dbの各部2~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、多点探索での多目的最適化のベイズ最適化を用いることによって、製品に要求される要求項目を満たすように、前記製品を構成する構成要素の設計値を求めるための回路である。制御処理部1bは、制御処理プログラムが実行されることによって、制御部11および設計処理部12bを機能的に備える。この第2実施形態の製品設計装置Dbにおける制御部11は、第1実施形態の製品設計装置Daにおける制御部11と同様であるので、その説明を省略する。
【0094】
設計処理部12bは、複数の要求項目を満たすように、複数の構成要素における複数の設計値を、多点探索での多目的最適化のベイズ最適化を用いることによって求めるものである。設計処理部12bは、本実施形態では、事前分布生成部121と、事後分布生成部122と、最適解演算部123bと、繰り返し処理部124とを機能的に備える。これら第2実施形態の製品設計装置Dbにおける事前分布生成部121、事後分布生成部122および繰り返し処理部124は、それぞれ、第1実施形態の製品設計装置Daにおける事前分布生成部121、事後分布生成部122および繰り返し処理部124と同様であるので、その説明を省略する。
【0095】
最適解演算部123bは、事後分布生成部122で生成された事後分布に基づく獲得関数の大域的最適解を前記複数の設計値として求める最適解演算処理を行うものである。
【0096】
上述の式5の獲得関数q-EHI(x
(1:q))は、候補点x
(1:q)の改善しろが小さい値である場合でも、q-EHI>0の小さい値となり、q-EHIの改善方向(すなわち、勾配)が存在する。しかしながら、モンテカルロサンプリングによる式5の近似式である上述の式6の獲得関数q-EHI
MC(x
(1:q))は、このような場合では、q-EHI
MC(x
(1:q))=0となる可能性が高くなり、その勾配▽q-EHI
MC(x
(1:q))=0となってしまう場合がある。勾配が0になってしまうと勾配法では、探索が進まなくなる。そこで、各候補点x
(q’)に対する勾配保証量HVR
MC
(q’)が次式15のように定義され、上述の式6の獲得関数q-EHI
MC(x
(1:q))は、次式16のような獲得関数q-EHIR
MC(x
(1:q))に改良される。ここで、HVR(F
m,x(q’)
(1:df))は、例えば
図6に示すように、F
m,x(q’)
(1:df)を基準点(reference point)★とし、非劣解集合D
n
*と予め設定された限界点(limit point)で支配されるhypervolumeを示す。前記勾配保証量HVR
MC
(q’)は、候補点がどれほど劣解であるかを表す指標であり、改善しろが小さいほど大きな値となる。
【0097】
【0098】
【0099】
HVRMC
(q’)≠0となるq’が存在する場合、すなわち、改善しろが非常に小さい候補点がある場合、この式16の獲得関数q-EHIRMC(x(1:q))は、候補点x(q’)に関し、勾配保証量HVRMC
(q’)によりその値が減少する。このため、式16の獲得関数q-EHIRMC(x(1:q))を最大化する際に、勾配保証量HVRMC
(q’)を減少させる作用が働き、候補点x(q’)が改善方向に向かう。なお、全ての候補点x(q’)において、HVRMC
(q’)=0となれば、式16の獲得関数q-EHIRMC(x(1:q))は、式6の獲得関数q-EHIMC(x(1:q))に一致する。
【0100】
式16の獲得関数の勾配▽q-EHIRMC(x(1:q))は、次式17のように表される。
【0101】
【0102】
この式17の第1項は、第1実施形態で説明した上述の式7と同様であり、第1実施形態と同様に求められる。前記式17の第2項は、第1実施形態で説明した上述の式9と同様に、HVRの目的変数に関する偏微分と、目的変数の説明変数に関する偏微分とに分解でき、このHVRの目的変数に関する偏微分は、第1実施形態で説明した上述のHVIの目的変数に関する偏微分∂HVI(Fm
(1:df))/∂Fm
(k)と同様に、数値微分で計算でき、前記目的変数の説明変数に関する偏微分は、第1実施形態で説明した上述の前記目的変数の説明変数に関する偏微分∂Fm
(k)/∂x(i)と同様に、前記式14で計算できる。
【0103】
以上より、式17の勾配が求められるから、勾配法により、式16の大域的最適解が前記構成要素の設計値として求められる。
【0104】
そして、制御処理部1bは、その制御部11によって、設計処理部12bの最適解演算部123bで求められた大域的最適解を前記構成要素の設計値として出力部3から出力する。
【0105】
第2実施形態における製品設計装置Dbの動作は、上述の式6を用いる最適解演算処理S3aに代え、上述の式16を用いる最適解演算処理S3bを実行する点を除き、
図4を用いて説明した第1実施形態における製品設計装置Daの動作と同様であるので、その説明を省略する。そして、この第2実施形態の製品設計装置Dbにおける最適解演算処理S3bは、式6の獲得関数を求める処理S32aに代えて式16の獲得関数を求める処理S32bを実行し、数値微分や上述の式7ないし式14の各式を用いる処理S33aに代えて数値微分や上述の式7ないし式14の各式に加えて式17を用いる処理S33bを実行する点を除き、
図5を用いて説明した第1実施形態における製品設計装置Daの動作と同様であるので、その説明を省略する。
【0106】
第2実施形態における製品設計装置Dbおよびこれに実装された製品設計方法は、第1実施形態と同様に、複数の要求項目を満たすように、複数の構成要素における複数の設計値を、前記要求項目を目的変数とし前記構成要素を説明変数とする多点探索のベイズ最適化、すなわち、多点探索での多目的最適化のベイズ最適化を用いることによって求めるので、要求項目が複数である場合でも、コストをより低減できる。
【0107】
上記製品品設計装置Daおよび製品設計方法は、式16および式17により、勾配の消失を回避できる。
【0108】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0109】
Da、Db 製品設計装置
1a、1b 制御処理部
2 入力部
3 出力部
4 インターフェース部(IF部)
5 記憶部
12a、12b 設計処理部
121 事前分布生成部
122 事後分布生成部
123a、123b 最適解演算部
124 繰り返し処理部
51 実績情報記憶部