(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】水素ステーションの運用方法および水素ステーション
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20220202BHJP
F17C 9/02 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
F17C13/00 302D
F17C9/02
(21)【出願番号】P 2018229865
(22)【出願日】2018-12-07
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187908
【氏名又は名称】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】名倉 見治
(72)【発明者】
【氏名】大塚 友裕
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-067274(JP,A)
【文献】特開2012-251606(JP,A)
【文献】特開2007-010058(JP,A)
【文献】特開2007-182918(JP,A)
【文献】特開2017-078448(JP,A)
【文献】特開2006-200563(JP,A)
【文献】米国特許第05243821(US,A)
【文献】独国特許出願公開第10107187(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体水素を貯留する貯槽と、前記貯槽から供給される前記液体水素をガス化する気化器と、前記気化器でガス化した水素を所定の圧力まで昇圧する圧縮機と、前記貯槽から流出した前記液体水素の少なくとも一部を熱交換器でガス化して前記貯槽に戻すガス化経路と、前記貯槽内のガス化した水素を前記気化器と前記圧縮機との間の経
路また
は前記気化器内に送出するためのガス送出経路と、前記圧縮機で昇圧した水素ガスを貯える蓄圧器と、を備え、前記蓄圧器で貯えた水素ガスをディスペンサを介してタンク搭載装置に充填する水素ステーションにおいて、前記貯槽に前記液体水素を補充する方法であって、
前記貯槽に前記液体水素を補充する前であって前記貯槽内の前記液体水素の残量が第1閾値以下になったときに、前記ガス化経路に配置された弁によって前記ガス化経路を流れる前記液体水素の量を減少させ、前記貯槽内における前記液体水素のガス化量を減少させさらに、前記ガス送出経路に配置された弁によって前記貯槽から前記ガス送出経路を通じて送出される水素ガスの量を増加させることによって前記貯槽内の圧力を下げることにより、前記圧縮機の吸込圧力を下げた運転を行
って、前記貯槽内の前記液体水素の残量が前記第1閾値から前記第1閾値よりも小さい第2閾値に到達するまでの間において前記貯槽内の圧力を徐々に下げ、
前記貯槽内の前記液体水素の残量が前記第2閾値に到達したことに基づいて、前記貯槽への前記液体水素の補充を開始することを特徴とする、水素ステーションの運用方法。
【請求項2】
液体水素を貯留する貯槽と、前記貯槽から供給される前記液体水素をガス化する気化器と、前記気化器でガス化した水素を所定の圧力まで昇圧する圧縮機と、前記貯槽内のガス化した水素を前記気化器と前記圧縮機との間の経
路また
は前記気化器内に送出するためのガス送出経路と、前記圧縮機で昇圧した水素ガスを貯える蓄圧器と、を備え、前記蓄圧器で貯えた水素ガスをディスペンサを介してタンク搭載装置に充填する水素ステーションにおいて、前記貯槽に前記液体水素を補充する方法であって、
前記貯槽に前記液体水素を補充する前であって前記貯槽内の前記液体水素の残量が第1閾値以下になったときに、前記ガス送出経路に配置された弁によって前記貯槽から前記ガス送出経路を通じて送出される水素ガスの量を増加させることによって前記貯槽内の圧力を下げることにより、前記圧縮機の吸込圧力を下げた運転を行
って、前記貯槽内の前記液体水素の残量が前記第1閾値から前記第1閾値よりも小さい第2閾値に到達するまでの間において前記貯槽内の圧力を徐々に下げ、
前記貯槽内の前記液体水素の残量が前記第2閾値に到達したことに基づいて、前記貯槽への前記液体水素の補充を開始することを特徴とする、水素ステーションの運用方法。
【請求項3】
前記タンク搭載装置が燃料電池フォークリフト又は燃料電池自動車であることを特徴とする、請求項1
または2に記載の水素ステーションの運用方法。
【請求項4】
前記水素ステーションには、前記燃料電池フォークリフト及び前記燃料電池自動車のそれぞれに水素ガスを充填可能なように複数の前記ディスペンサが設けられていることを特徴とする、請求項
3に記載の水素ステーションの運用方法。
【請求項5】
液体水素を貯留する貯槽と、
前記貯槽から供給される前記液体水素をガス化する気化器と、
前記気化器でガス化した水素を所定の圧力まで昇圧する圧縮機と、
前記貯槽から流出した前記液体水素の少なくとも一部を熱交換器でガス化して前記貯槽に戻すガス化経路と、
前記ガス化経路に配置され、前記ガス化経路を流れる前記液体水素の量を調整するガス化用弁と、
前記貯槽内のガス化した水素を前記気化器と前記圧縮機との間の経路、または、前記気化器内に送出するためのガス送出経路と
前記圧縮機で昇圧した水素ガスを貯える蓄圧器と、
前記貯槽内の前記液体水素の残量を検知する液量検知部と、
前記液量検知部により検知された前記貯槽内の前記液体水素の残量が第1閾値以下になったときに、前記ガス化経路を流れる前記液体水素の量を減少させて前記貯槽内における前記液体水素のガス化量を減少させるように前記ガス化用弁を制御し、さらに、前記貯槽から前記ガス送出経路を通じて送出される水素ガスの量を増加させるように前記ガス送出経路に配置された弁を制御する制御部と、を備えることを特徴とする、水素ステーション。
【請求項6】
液体水素を貯留する貯槽と、
前記貯槽から供給される前記液体水素をガス化する気化器と、
前記気化器でガス化した水素を所定の圧力まで昇圧する圧縮機と、
ガス化用弁が配置され、前記貯槽から流出した前記液体水素の少なくとも一部を熱交換器でガス化して前記貯槽に戻すガス化経路と、
前記貯槽内のガス化した水素を、前記気化器と前記圧縮機との間の経路、または、前記気化器内に送出するためのガス送出経路と、
前記ガス送出経路に配置され、前記ガス送出経路を流れる水素ガスの量を調整するガス送出弁と、
前記圧縮機で昇圧した水素ガスを貯える蓄圧器と、
前記貯槽内の前記液体水素の残量を検知する液量検知部と、
前記液量検知部により検知された前記貯槽内の前記液体水素の残量が第1閾値以下になったときに、前記ガス送出経路を流れる水素ガスの量が増加するように、前記ガス送出弁を制御する制御部と、を備え
、
前記制御部は、前記液量検知部により検知された前記貯槽内の前記液体水素の残量が、前記第1閾値から前記第1閾値よりも小さい値であって前記液体水素の補充が必要となる第2閾値に到達するまでの間において、前記貯槽内の圧力が徐々に下がるように前記ガス化用弁を制御することを特徴とする、水素ステーション。
【請求項7】
前記制御部は、前記液量検知部により検知された前記貯槽内の前記液体水素の残量が、前記第1閾値から前記第1閾値よりも小さい値であって前記液体水素の補充が必要となる第2閾値に到達するまでの間において、前記貯槽内の圧力が徐々に下がるように前記ガス化用弁を制御することを特徴とする、請求項
5に記載の水素ステーション。
【請求項8】
前記蓄圧器で貯えた水素ガスをタンク搭載装置に充填するディスペンサであって、前記タンク搭載装置である燃料電池フォークリフト及び燃料電池自動車のそれぞれに水素ガスを充填可能なように複数設けられた前記ディスペンサをさらに備えることを特徴とする、請求項
5~
7の何れか1項に記載の水素ステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ステーションの運用方法および水素ステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池車に燃料である水素ガスを充填するための施設である水素ステーションについて知られている。この水素ステーションにおいては、ガス化前の液状態の水素(液体水素)を貯留するための貯槽が設けられており、この貯槽から取り出した液体水素をガス化し、この水素ガスを圧縮機によって所定の圧力まで昇圧した後、ディスペンサから燃料電池車に充填することができる。
【0003】
特許文献1および特許文献2には、上記のような液体水素を貯留するための貯槽について開示されている。これらの公報に開示される貯槽には、貯槽内の水素ガスを外部に放出するための圧力逃がし用経路が設けられており、この経路に設けられた圧力逃がし弁を開くことによって貯槽内の圧力を調整可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-1993号公報
【文献】特開2012-251606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池車への水素ガスの充填に伴って貯槽内の液体水素の量が少なくなると、タンクローリーなどから貯槽に液体水素を補充する必要が出て来る。特許文献1および特許文献2においては、貯槽内の液体水素の残量が少なくなって液体水素の補充が必要となった場合に、貯槽内の水素ガスを圧力逃がし用経路を通じて水素ステーションの外部に放出(パージ)することによって、貯槽内の圧力を液体水素の補充に適した圧力まで下げることがある。この場合、水素ガスのパージによって水素のムダが多くなるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、水素のムダを抑えつつ貯槽内を液体水素の補充に適した圧力に調整することが可能な水素ステーションの運用方法および水素ステーションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る水素ステーションの運用方法は、液体水素を貯留する貯槽と、前記貯槽から供給される前記液体水素をガス化する気化器と、前記気化器でガス化した水素を所定の圧力まで昇圧する圧縮機と、前記貯槽から流出した前記液体水素の少なくとも一部を熱交換器でガス化して前記貯槽に戻すガス化経路と、前記貯槽内のガス化した水素を前記気化器と前記圧縮機との間の経路、または、前記気化器内に送出するためのガス送出経路と、前記圧縮機で昇圧した水素ガスを貯える蓄圧器と、を備え、前記蓄圧器で貯えた水素ガスをディスペンサを介してタンク搭載装置に充填する水素ステーションにおいて、前記貯槽に前記液体水素を補充する方法である。この方法では、前記貯槽に前記液体水素を補充する前であって前記貯槽内の前記液体水素の残量が第1閾値以下になったときに、前記ガス化経路に配置された弁によって前記ガス化経路を流れる前記液体水素の量を減少させ、前記貯槽内における前記液体水素のガス化量を減少させさらに、前記ガス送出経路に配置された弁によって前記貯槽から前記ガス送出経路を通じて送出される水素ガスの量を増加させることによって前記貯槽内の圧力を下げることにより、前記圧縮機の吸込圧力を下げた運転を行って、前記貯槽内の前記液体水素の残量が前記第1閾値から前記第1閾値よりも小さい第2閾値に到達するまでの間において前記貯槽内の圧力を徐々に下げ、前記貯槽内の前記液体水素の残量が前記第2閾値に到達したことに基づいて、前記貯槽への前記液体水素の補充を開始する。
【0008】
この方法では、貯槽内の液体水素の残量が第1閾値以下になったときに、ガス化経路を流れる液体水素の量を弁によって減少させ、貯槽内における液体水素のガス化量を減少させ、さらに貯槽からガス送出経路を通じて気化器と圧縮機との間の経路(または気化器内)に送出する水素ガスの量を弁によって増加させることにより、液体水素の補充前に貯槽内の圧力を下げることができる。このため、貯槽内の水素ガスを外部に放出(パージ)する方法のみによって貯槽内の圧力を下げる方法と異なり、貯槽内の水素量が減少するのを抑制しつつ貯槽内の圧力を液体水素の補充に適した圧力まで下げることができる。つまり、貯槽内の水素を外部に放出する量を抑えつつ貯槽内の圧力を下げることができるため、水素のムダを抑えつつ貯槽に液体水素を効率的に補充することができる。
さらに、貯槽への液体水素の補充が必要となる前(貯槽内の液体水素の残量が第2閾値に到達する前)に、貯槽内の圧力を徐々に下げることができる。これにより、貯槽内の液体水素の残量が第2閾値に到達した時点で、貯槽内の圧力が液体水素の補充を行うために十分に下がった状態とすることができるため、速やかに液体水素の補充を行うことができる。
【0009】
本発明の他の局面に係る水素ステーションの運用方法は、液体水素を貯留する貯槽と、前記貯槽から供給される前記液体水素をガス化する気化器と、前記気化器でガス化した水素を所定の圧力まで昇圧する圧縮機と、前記貯槽内のガス化した水素を前記気化器と前記圧縮機との間の経路、または、前記気化器内に送出するためのガス送出経路と、前記圧縮機で昇圧した水素ガスを貯える蓄圧器と、を備え、前記蓄圧器で貯えた水素ガスをディスペンサを介してタンク搭載装置に充填する水素ステーションにおいて、前記貯槽に前記液体水素を補充する方法である。この方法では、前記貯槽に前記液体水素を補充する前であって前記貯槽内の前記液体水素の残量が第1閾値以下になったときに、前記ガス送出経路に配置された弁によって前記貯槽から前記ガス送出経路を通じて送出される水素ガスの量を増加させることによって前記貯槽内の圧力を下げることにより、前記圧縮機の吸込圧力を下げた運転を行って、前記貯槽内の前記液体水素の残量が前記第1閾値から前記第1閾値よりも小さい第2閾値に到達するまでの間において前記貯槽内の圧力を徐々に下げ、前記貯槽内の前記液体水素の残量が前記第2閾値に到達したことに基づいて、前記貯槽への前記液体水素の補充を開始する。
【0010】
この方法では、貯槽内の液体水素の残量が第1閾値以下になったときに、貯槽からガス送出経路を通じて気化器と圧縮機との間の経路(または気化器内)に送出する水素ガスの量を弁によって増加させることにより、液体水素の補充前に貯槽内の圧力を下げることができる。このため、貯槽内の水素ガスを外部に放出(パージ)する方法のみによって貯槽内の圧力を下げる方法と異なり、水素ステーションの外部へ放出される水素ガスの量を抑えつつ、貯槽内の圧力を液体水素の補充に適した圧力まで下げることができる。これにより、水素のムダを抑えつつ、貯槽に液体水素を効率的に補充することができる。
【0012】
さらに、貯槽への液体水素の補充が必要となる前(貯槽内の液体水素の残量が第2閾値に到達する前)に、貯槽内の圧力を徐々に下げることができる。これにより、貯槽内の液体水素の残量が第2閾値に到達した時点で、貯槽内の圧力が液体水素の補充を行うために十分に下がった状態とすることができるため、速やかに液体水素の補充を行うことができる。
【0013】
上記水素ステーションの運用方法において、前記タンク搭載装置が燃料電池フォークリフト又は燃料電池自動車であってもよい。
【0014】
燃料電池フォークリフトや燃料電池自動車に燃料を補給する水素ステーションにおいて、貯槽内の水素ガスを水素ステーションの外部に放出する量を抑えつつ貯槽内の圧力を下げることにより、水素のムダを抑えつつ貯槽に液体水素を効率的に補充することができる。
【0015】
上記水素ステーションの運用方法において、前記水素ステーションには、前記燃料電池フォークリフト及び前記燃料電池自動車のそれぞれに水素ガスを充填可能なように複数の前記ディスペンサが設けられていてもよい。
【0016】
このように、複数の車種に対応して異なるディスペンサが設けられた水素ステーションにおいても、水素のムダを抑えつつ貯槽に液体水素を効率的に補充することができる。
【0017】
本発明のさらに他の局面に係る水素ステーションは、液体水素を貯留する貯槽と、前記貯槽から供給される前記液体水素をガス化する気化器と、前記気化器でガス化した水素を所定の圧力まで昇圧する圧縮機と、前記貯槽から流出した前記液体水素の少なくとも一部を熱交換器でガス化して前記貯槽に戻すガス化経路と、前記ガス化経路に配置され、前記ガス化経路を流れる前記液体水素の量を調整するガス化用弁と、前記貯槽内のガス化した水素を前記気化器と前記圧縮機との間の経路、または、前記気化器内に送出するためのガス送出経路と、前記圧縮機で昇圧した水素ガスを貯える蓄圧器と、前記貯槽内の前記液体水素の残量を検知する液量検知部と、前記液量検知部により検知された前記貯槽内の前記液体水素の残量が第1閾値以下になったときに、前記ガス化経路を流れる前記液体水素の量を減少させて前記貯槽内における前記液体水素のガス化量を減少させるように前記ガス化用弁を制御し、さらに、前記貯槽から前記ガス送出経路を通じて送出される水素ガスの量を増加させるように前記ガス送出経路に配置された弁を制御する制御部と、を備えている。
【0018】
この水素ステーションでは、液量検知部によって貯槽内の液体水素の残量が第1閾値以下になったことが検知されると、ガス化用弁の制御によってガス化経路の熱交換器を流れる液体水素の量を減少させることにより貯槽に戻る水素ガスの量を減少させ、さらに貯槽からガス送出経路を通じて気化器と圧縮機との間の経路(または気化器内)に送出する水素ガスの量を弁によって増加させることにより、貯槽内における液体水素のガス化量を減少させることができる。このため、貯槽内の水素ガスを外部に放出することのみによって貯槽内の圧力を下げる場合と異なり、貯槽内の水素量が減少するのを抑制しつつ貯槽内の圧力を液体水素の補充に適した圧力まで容易に下げることができる。つまり、貯槽内の水素を外部に放出する量を抑えつつ貯槽内の圧力を下げることができるため、水素のムダを抑えつつ貯槽に液体水素を効率的に補充することができる。
【0019】
本発明のさらに他の局面に係る水素ステーションは、液体水素を貯留する貯槽と、前記貯槽から供給される前記液体水素をガス化する気化器と、前記気化器でガス化した水素を所定の圧力まで昇圧する圧縮機と、ガス化用弁が配置され、前記貯槽から流出した前記液体水素の少なくとも一部を熱交換器でガス化して前記貯槽に戻すガス化経路と、前記貯槽内のガス化した水素を、前記気化器と前記圧縮機との間の経路、または、前記気化器内に送出するためのガス送出経路と、前記ガス送出経路に配置され、前記ガス送出経路を流れる水素ガスの量を調整するガス送出弁と、前記圧縮機で昇圧した水素ガスを貯える蓄圧器と、前記貯槽内の前記液体水素の残量を検知する液量検知部と、前記液量検知部により検知された前記貯槽内の前記液体水素の残量が第1閾値以下になったときに、前記ガス送出経路を流れる水素ガスの量が増加するように、前記ガス送出弁を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記液量検知部により検知された前記貯槽内の前記液体水素の残量が、前記第1閾値から前記第1閾値よりも小さい値であって前記液体水素の補充が必要となる第2閾値に到達するまでの間において、前記貯槽内の圧力が徐々に下がるように前記ガス化用弁を制御する。
【0020】
この水素ステーションでは、液量検知部によって貯槽内の液体水素の残量が第1閾値以下になったことが検知されると、ガス送出弁によってガス送出経路を流れる水素ガスの量を増加させることにより、貯槽内における水素ガスの量を減少させることができる。このため、貯槽内の水素ガスを水素ステーションの外部に放出することのみによって貯槽内の圧力を下げる場合と異なり、水素のムダを抑えつつ、貯槽内の圧力を液体水素の補充に適した圧力まで下げることができる。さらに、貯槽内の液体水素の残量が第2閾値に到達した時点で、貯槽内の圧力が液体水素の補充を行うために十分に下がった状態とすることができるため、速やかに液体水素の補充を行うことができる。
【0021】
上記水素ステーションにおいて、前記制御部は、前記液量検知部により検知された前記貯槽内の前記液体水素の残量が、前記第1閾値から前記第1閾値よりも小さい値であって前記液体水素の補充が必要となる第2閾値に到達するまでの間において、前記貯槽内の圧力が徐々に下がるように前記ガス化用弁を制御してもよい。
【0022】
この構成によれば、貯槽内の液体水素の残量が第2閾値に到達した時点で、貯槽内の圧力が液体水素の補充を行うために十分に下がった状態とすることができるため、速やかに液体水素の補充を行うことができる。
【0023】
上記水素ステーションは、前記蓄圧器で貯えた水素ガスをタンク搭載装置に充填するディスペンサであって、前記タンク搭載装置である燃料電池フォークリフト及び燃料電池自動車のそれぞれに水素ガスを充填可能なように複数設けられた前記ディスペンサをさらに備えていてもよい。
【0024】
この構成によれば、複数の車種に対応して異なるディスペンサが設けられた水素ステーションにおいても、貯槽内の水素を水素ステーションの外部に放出する量を抑えつつ貯槽内の圧力を下げることにより、水素のムダを抑えつつ貯槽に液体水素を効率的に補充することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、水素のムダを抑えつつ貯槽内を液体水素の補充に適した圧力に調整することが可能な水素ステーションの運用方法および水素ステーションを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態1に係る水素ステーションの構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る水素ステーションの運用方法における、貯槽内の液体水素の残量と貯槽内の圧力との関係を示すグラフである。
【
図3】上記水素ステーションの運用方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る水素ステーションおよびその運用方法について詳細に説明する。
【0028】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係る水素ステーション1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、水素ステーション1における主要な構成要素を模式的に示している。
【0029】
この水素ステーション1は、タンク搭載装置である燃料電池(FC;Fuel Cell)フォークリフトやFC自動車に燃料である水素ガスを充填するための施設である。
図1に示すように、水素ステーション1は、貯槽10と、気化器12と、貯槽10と気化器12とを接続する第1経路40と、第1経路40に配置された液体送出弁11と、ガス化経路20と、ガス化経路20に配置されたガス化用弁21と、圧縮機14と、気化器12と圧縮機14とを接続する第2経路41と、第2経路41に設けられたバッファタンク13と、ガス化経路20と第2経路41とを接続するガス送出経路24と、ガス送出経路24に配置されたガス送出弁25と、蓄圧器15と、制御部50と、を主に備えている。以下、これらの構成要素についてそれぞれ説明する。
【0030】
貯槽10は、液体水素L1を貯留するものであり、内部に真空断熱層が形成された二重構造となっている。貯槽10は、液体水素L1を需要先へ流出させるための第1流通口10Aと、貯槽10内を加圧する水素ガスの発生のために液体水素L1を流出させる第2流通口10Bと、ガス化した水素(水素ガス)を貯槽10内に流入させるための第3流通口10Cと、貯槽10内の水素ガスを外部に放出(パージ)するための第4流通口10Dと、をそれぞれ有している。
図1に示すように、第1および第2流通口10A,10Bは貯槽10の底部に設けられており、第3流通口10Cは貯槽10の上側側部(液体水素L1の液面よりも上側)に設けられており、第4流通口10Dは貯槽10の上部(液体水素L1の液面よりも上側)に設けられている。なお、第1~第4流通口10A~10Dの位置は特に限定されない。
【0031】
貯槽10には、貯槽10内の液体水素L1の残量を検知する液量検知部30が設けられている。この液量検知部30は、例えばレベルセンサーによって構成されており、貯槽10内における液体水素L1の液面高さを検知する。液量検知部30は、制御部50と通信可能に構成されており、貯槽10内の液体水素L1の残量に関する検知データを制御部50に送信する。なお、本発明の水素ステーションにおける液量検知部は、貯槽10内の液体水素L1の残量を検知可能な構成であればよく、レベルセンサーには限定されない。
【0032】
また貯槽10には、貯槽10内の圧力を検知する圧力検知部(図示しない)が設けられている。この圧力検知部も、液量検知部30と同様に、制御部50と通信可能に構成されており、貯槽10内の圧力に関する検知データを制御部50に送信する。なお、本発明の水素ステーションにおいて圧力検知部は必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。
【0033】
第1経路40は、貯槽10から需要先へ水素を送出するために、貯槽10(第1流通口10A)から流出した液体水素L1が流通可能な配管によって構成されている。第1経路40には、第1経路40を流れる液体水素L1の量を調整する液体送出弁11が配置されている。第1経路40は、その上流端が第1流通口10Aに接続されるとともに、下流端が気化器12の入口に接続されている。これにより、貯槽10から第1流通口10Aを通じて流出した液体水素L1を、第1経路40を介して気化器12に送出することができる。
【0034】
ガス化経路20は、貯槽10(第2流通口10B)から流出した液体水素L1の少なくとも一部をガス化して貯槽10に戻すための経路である。このガス化経路20は、熱交換器22と、この熱交換器22が配置された熱交換用ライン23と、を含む。
図1に示すように、熱交換用ライン23は、一端(下流端)が貯槽10の第3流通口10Cに接続されている。
【0035】
熱交換器22は、例えば大気などの熱源流体の熱によって液体水素L1をガス化するものである。具体的には、この熱交換器22は、液体水素L1に対してプレートフィンなどによって外部から入熱し易い構造の流路22Aを有している。この熱交換器22によれば、流路22Aを流れる液体水素L1と大気(空気)とを熱交換させることによって、液体水素L1の少なくとも一部をガス化することができる。熱交換器22に流入した液体水素L1は、その全てがガス化されてもよいし、一部は液状態のまま熱交換器22から流出してもよい。さらに熱交換器22は、二重管式やプレート熱交換器など、空気以外のガスや液体を熱源とする熱源流体の流路を備えるもの(図示しない)であってもよく、特に限定されない。
【0036】
ガス化経路20によれば、貯槽10(第2流通口10B)から流出した液体水素L1を熱交換器22に通過させてガス化した後、第3流通口10Cから貯槽10内に戻すことができる。上記の通り、本実施形態においては第3流通口10Cが貯槽10内における液体水素L1の液面よりも上側に位置しているため、貯槽10内の上部空間(気体空間)に向かって第3流通口10Cから水素ガスが放出される。なお、ガス化経路20は、熱交換器22によって液体水素L1をガス化する態様に限定されない。
【0037】
ガス化用弁21は、ガス化経路20を流れる液体水素L1の流量を調整するためのものであって、
図1に示すように水素の流れ方向において熱交換器22よりも上流側に配置されている。ガス化用弁21は、制御部50によってその開度を調整可能に構成されており、当該開度によってガス化経路20を流れる液体水素L1の流量を調整する。つまり、ガス化用弁21を閉じることによってガス化経路20への液体水素L1の流入を阻止し、ガス化用弁21を開くことによってガス化経路20への液体水素L1の流入を許容することができる。そして、ガス化経路20への液体水素L1の流入量は、ガス化用弁21の開度によって調整することができる。
【0038】
ガス送出経路24は、貯槽10内のガス化した水素(貯槽10内の上部空間に溜まった水素ガス)及び熱交換器22でガス化した水素を、気化器12と圧縮機14との間の経路(第2経路41)に送出するためのものである。
図1に示すように、ガス送出経路24は、熱交換用ライン23における熱交換器22よりも下流側の部位P1から分岐し、第2経路41(気化器12の下流側の経路)における部位P2に合流している。ガス送出経路24の途中には、ガス送出弁25が配置されており、これを開くことによって、貯槽10内の上部空間に溜まった水素ガスを需要先へ送出することができる。また当該ガス送出弁25の開度によって、ガス送出経路24を流れる水素ガスの量が調整される。なお、ガス送出経路24の上流端は、パージ用経路31に接続されていてもよい。また、P2は気化器12の第1流路12Aの途中に合流させてもよい。
【0039】
貯槽10の第4流通口10Dには、貯槽10内の水素ガスを外部に放出するためのパージ用経路31が接続されている。
図1に示すように、このパージ用経路31には、水素ガスの流通および遮断を切り替えるパージ用弁32が配置されている。このパージ用弁32は、制御部50によって開閉が制御される。パージ用弁32を開くことによって、貯槽10内の水素ガスを外部に抜くことができる。
【0040】
気化器12は、貯槽10の後段に配置されており、貯槽10から供給される液体水素L1をガス化するためのものである。
図1に示すように、この気化器12は、第1経路40に接続されると共にプレートフィンなどによって外部から入熱し易い構造の第1流路12Aを有し、第1流路12Aを流れる液体水素L1と大気(空気)などの熱源流体とを熱交換させることによって、液体水素L1をガス化することができる。なお、気化器12は、熱交換器22と同様に、二重管式やプレート熱交換器など、空気以外のガスや液体を熱源とする熱源流体の流路を備えるもの(図示しない)であってもよく、特に限定されない。
【0041】
気化器12においてガス化された水素(水素ガス)は、第2経路41を通じて圧縮機14に導かれる。つまり、第2経路41は、気化器12から圧縮機14に水素ガスを送出するためのものであって、圧縮機14による昇圧前の水素ガスが流れる低圧ガス経路である。また
図1に示すように、第2経路41には、ガス送出経路24の下流端が接続されている。
【0042】
第2経路41にはバッファタンク13が設けられており、水素ガスを圧縮機14への供給前に一時的に貯めることができる。このバッファタンク13によって、例えば、貯槽10側から送出される水素ガスの量と圧縮機14が吸入する水素ガスの量とが一時的に釣り合わない場合であっても、圧縮機14への水素ガスの供給圧力の変動を緩和することができる。
【0043】
圧縮機14は、気化器12およびバッファタンク13の後段に配置されており、気化器12でガス化した水素を所定の圧力(例えば40MPa)まで昇圧する。
図1に示すように、本実施形態においては、複数台(2台)の圧縮機14(第1圧縮機14A、第2圧縮機14B)がそれぞれ設けられている。第2経路41は、バッファタンク13よりも下流側の部位P3において圧縮機14の台数に応じた数(本実施形態では2つ)の経路に分岐しており、各分岐経路が圧縮機14の吸入口にそれぞれ接続されている。これにより、バッファタンク13から流出した後、部位P3において分流した水素ガスを、第1圧縮機14Aおよび第2圧縮機14Bのそれぞれに供給することができる。なお、本発明の水素ステーションは、圧縮機が昇圧する圧力は、80MPaを超えるものであってもよい。複数台の圧縮機が配置されるものに限定されず、1台の圧縮機のみが配置されるものであってもよい。
【0044】
圧縮機14は、例えば往復動式の圧縮機(レシプロコンプレッサー)であって、シリンダ内に吸入された水素ガスをピストンの往復運動によって昇圧し、昇圧した水素ガスを吐出する。ここで、本実施形態に係る水素ステーション1においては、後述するように貯槽10から圧縮機14の吸入口までの範囲において圧力が略一定になる。したがって、貯槽10内の圧力が圧縮機14の吸込圧力に略相当する。なお、圧縮機14は、往復動式のものに限定されず、例えばスクリュー式の圧縮機であってもよい。さらに圧縮機14は、それらの任意の組み合わせによって2段以上で昇圧するように構成されていてもよい(例えば、低段側がスクリュー式圧縮機であり、高段側がレシプロ圧縮機)。
【0045】
蓄圧器15は、圧縮機14の後段に配置されており、圧縮機14で昇圧した水素ガスを一時的に貯える。
図1に示すように、本実施形態においては、複数台(3台)の蓄圧器15(第1蓄圧器15A、第2蓄圧器15B、第3蓄圧器15C)がそれぞれ設けられている。各蓄圧器15は、圧縮機14による昇圧後の水素ガスの圧力に耐えるように設計されている。なお、本発明の水素ステーションは、複数台の蓄圧器が供給先に応じて異なる圧力で蓄圧されるものでもよく、また複数台の蓄圧器が配置されるものに限定されず、1台の蓄圧器のみが配置されるものであってもよい。
【0046】
蓄圧器15は、第3経路42によって圧縮機14に接続されている。
図1に示すように、第3経路42は、第1圧縮機14Aの吐出口と第1蓄圧器15Aの入口とを接続する第1経路部分42Aと、第2圧縮機14Bの吐出口と第3蓄圧器15Cの入口とを接続する第2経路部分42Bと、第1経路部分42Aと第2経路部分42Bとを接続するとともに第2蓄圧器15Bの入口に接続された第3経路部分42Cと、を有している。この経路構成により、第1圧縮機14Aによって昇圧した水素ガスを第1~第3蓄圧器15A~15Cのそれぞれに流入させるとともに、第2圧縮機14Bによって昇圧した水素ガスを第1~第3蓄圧器15A~15Cのそれぞれに流入させることができる。なお、圧縮機14および蓄圧器15は、1つのユニット筐体内に収容されていてもよい。
【0047】
蓄圧器15の後段には、当該蓄圧器15で貯えた高圧の水素ガスを、例えばFCフォークリフトやFC自動車などの燃料電池搭載車(タンク搭載装置)に充填するためのディスペンサ16が配置されている。
図1に示すように、本実施形態においては、蓄圧器15と同数のディスペンサ16(第1ディスペンサ16A、第2ディスペンサ16B、第3ディスペンサ16C)がそれぞれ設けられている。なお、複数台のディスペンサ16が配置される場合に限定されず、1台のディスペンサ16のみが配置されてもよい。
【0048】
ディスペンサ16は、第4経路43によって蓄圧器15に接続されている。具体的には、第4経路43は、第1蓄圧器15Aの出口と第1ディスペンサ16Aの入口とを接続する第1経路部分43Aと、第2蓄圧器15Bの出口と第2ディスペンサ16Bの入口とを接続する第2経路部分43Bと、第3蓄圧器15Cの出口と第3ディスペンサ16Cの入口とを接続する第3経路部分43Cと、を有している。これにより、1つの蓄圧器15から流出した水素ガスを、1つのディスペンサ16に供給することができる。
【0049】
ディスペンサ16は、例えばFCフォークリフトやFC自動車の補給口に差し込み可能なノズルを有している。ここで、ノズルのタイプは、FCフォークリフトやFC自動車などの車種に応じて、第1~第3ディスペンサ16A~16C毎にそれぞれ異なっていてもよい。
【0050】
制御部50は、例えばパーソナルコンピュータによって構成されており、液量検知部30による検知データおよび上記圧力検知部(図示しない)による検知データを受け付けるとともに、液体送出弁11、ガス化用弁21、ガス送出弁25およびパージ用弁32の開度をそれぞれ制御するように構成されている。具体的には、制御部50は、液体送出弁11、ガス化用弁21、ガス送出弁25およびパージ用弁32の開度をそれぞれ制御する開度制御部51と、液量検知部30および上記圧力検知部から検知データを受け付ける受付部52と、貯槽10内の液体水素L1の残量に関して予め定められた閾値および貯槽10からの液体水素L1の送出圧力(貯槽10内の上部空間の圧力)に関する設定値を記憶する記憶部53と、受付部52で受け付けた検知データと記憶部53に記憶された閾値および設定値とを比較する比較部54と、を有している。記憶部53は、貯槽10への液体水素L1の補充が必要となる閾値(第2閾値)と、この閾値よりも大きい閾値(第1閾値)と、貯槽10からの液体水素L1の送出圧力の設定値と、をそれぞれ記憶している。なお、これらの開度制御部51、受付部52、記憶部53および比較部54は、それぞれ、制御部50を構成するパーソナルコンピュータのCPU(Central Processing Unit)の一機能である。
【0051】
制御部50は、液量検知部30により検知された貯槽10内の液体水素L1の残量が第1閾値以下になったときに、ガス化経路20を流れる液体水素L1の量を減少させて貯槽10内における液体水素L1のガス化量を減少させるように、ガス化用弁21を制御する(ガス化用弁21の開度を小さくする)。さらに制御部50は、液量検知部30により検知された貯槽10内の液体水素L1の残量が第1閾値以下になったときに、ガス送出経路24を流れる水素ガスの量が増加するように、ガス送出弁25を制御する(ガス送出弁25の開度を大きくする)。この場合、貯槽10内からガス送出経路24を通じて第2経路41に送出される水素ガスの量が増加するため、貯槽10からの液体水素L1の送出圧力(貯槽10内の上部空間の圧力)が低下する。
【0052】
このようにすることで、パージ用経路31を通じて貯槽10から外部に放出する水素量を抑えつつ、貯槽10内の圧力を下げることができる。本実施形態では、制御部50は、液量検知部30により検知された貯槽10内の液体水素L1の残量が第1閾値から第2閾値に到達するまでの間において、貯槽10内の圧力が徐々に下がるように、ガス化用弁21およびガス送出弁25の開度を制御する。液量検知部30により検知された貯槽10内の液体水素L1の残量が第1閾値以下になったときに、第2経路41を流れる水素ガスのうちガス送出経路24から流入する水素ガスの割合が気化器12から流入する水素ガスの割合に比べて大きくなる場合がある。
【0053】
本実施形態に係る水素ステーション1においては、上記の通り、貯槽10内の液体水素L1の残量と関連して、ガス化用弁21、ガス送出弁25および液体送出弁11によって貯槽10内の圧力を制御する点が重要であり、この詳細については後述の本実施形態に係る水素ステーションの運用方法において説明する。
【0054】
次に、本実施形態に係る水素ステーションの運用方法について説明する。この方法は、上記の通り説明した水素ステーション1において、貯槽10に液体水素L1を補充する方法である。この方法においては、以下に説明する通り、貯槽10内の圧力を一定に保持する定圧運転と、この定圧運転後に貯槽10内の圧力を徐々に下げる減圧運転と、この減圧運転後における液体水素の補充と、が順に行われる。
【0055】
図2は、この方法の実施中における、貯槽10内の液体水素L1の残量(横軸)と、貯槽10内の圧力(縦軸)と、の関係を示している。
図2に示される通り、貯槽10内の液体水素L1の残量が第1閾値よりも多い状態から第1閾値に到達するまでの間において、定圧運転が行われる。続いて、貯槽10内の液体水素L1の残量が第1閾値から第2閾値に到達するまでの間において、減圧運転が行われる。そして、貯槽10内の液体水素L1の残量が第2閾値に到達したことに基づいて、貯槽10への液体水素L1の補充が開始される。以下、
図2のグラフおよび
図3のフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る水素ステーションの運用方法について説明する。
【0056】
まず、定圧運転においては、制御部50は、貯槽10内における水素ガスの圧力が上記設定値において一定に保持されるように(例えば0.5~0.7MPa)、ガス化用弁21、ガス送出弁25および液体送出弁11の開度をそれぞれ制御する(S10:
図3)。
【0057】
具体的には、蓄圧器15側への水素ガスの供給により貯槽10から液体水素L1が流出し、これに伴って貯槽10内における気体空間(水素ガスが占める空間)の体積が大きくなり、貯槽10内の圧力が下がる。これに対し、ガス化用弁21の開度を大きくすることによって熱交換器22でガス化する水素量を増加させる。その結果、熱交換用ライン23を通じて貯槽10に戻る水素ガスの量が増えるため、貯槽10内の液体水素L1の量が減少しても、貯槽10内の圧力を一定に保持することができる。またこのとき、ガス送出弁25および液体送出弁11の開度も併せて制御してもよい。これにより、需要先へ供給される水素ガスのうち、貯槽10から液体水素L1として送出した後に気化器12で気化したものと、貯槽10から水素ガスとして送出したものとの割合を変化させつつ、貯槽10内の圧力を略一定に保持することができる。また、貯槽10内の圧力が上がり過ぎた場合には、パージ用弁32を開いて貯槽10内の水素ガスを外部に放出することによって、貯槽10内の圧力を一定に保持することもできる。
【0058】
このように、ガス化用弁21、ガス送出弁25、液体送出弁11およびパージ用弁32を制御することによって、貯槽10内の水素ガスの圧力を一定に保持することができる。また上述の通り、圧縮機14の前段にはバッファタンク13が設けられており、当該バッファタンク13により、圧縮機14に吸入される水素ガスの圧力変動が緩和される。
【0059】
定圧運転中においては、液量検知部30によって貯槽10内の液体水素L1の残量を継続的に検知し、その検知データを制御部50(受付部52)に送信する。そして、制御部50(比較部54)において、当該検知データが第1閾値以下であるか否かを判定する(S20:
図3)。当該検知データが第1閾値よりも大きい場合には(S20のNO)、定圧運転が継続される。一方、当該検知データが第1閾値以下になると(S20のYES)、定圧運転から減圧運転に移行する。
【0060】
減圧運転においては、ガス化用弁21によってガス化経路20を流れる液体水素L1の量を減少させて貯槽10内における液体水素L1のガス化量を減少させると共に、ガス送出弁25によって貯槽10からガス送出経路24を通じて送出される水素ガスの量を増加させることによって、貯槽10内の圧力を下げる(S30:
図3)。具体的には、制御部50(開度制御部51)によってガス化用弁21の開度を小さくすることによって貯槽10からガス化経路20に流入する液体水素L1の量を減少させると共に、ガス送出弁25の開度を大きくする。これにより、熱交換器22を流れる液体水素L1の量が減少し、熱交換器22でガス化して貯槽10に戻る水素の量が減少するため、貯槽10内における液体水素L1のガス化量を減少させることができる。また貯槽10内の上部空間からの水素ガスの送出量を増加させることができる。
【0061】
またこのようにガス送出弁25の開度を大きくすると共に、液体送出弁11の開度を小さくする。これにより、貯槽10の上部空間からガス送出経路24を通じてガス状態で送出される水素が増加し、貯槽10内の圧力が低下する。
【0062】
上述のようにして、ガス化用弁21、ガス送出弁25および液体送出弁11の開度をそれぞれ制御することにより、
図2に示すように、減圧運転中において貯槽10内の圧力を徐々に下げることができる。
【0063】
このように、貯槽10への液体水素L1の補充前に減圧運転を行うことにより、貯槽10内における液体水素L1のガス化量を減少させ且つ貯槽10内の上部空間からの水素ガスの送出量を増加させることによって、定圧運転時よりも貯槽10内の圧力を下げることができる。その結果、定圧運転時よりも圧縮機14の吸込圧力を下げることができる。このため、本方法によれば、パージ用経路31を通じて貯槽10から水素ステーション1の外部に放出する水素量を抑えつつ、貯槽10内の圧力を液体水素L1の補充に適した圧力まで下げることができる。したがって、水素のムダが少なくなる。なお、減圧運転中においてパージ用弁32を完全に閉じてもよいし、パージ用弁32を少し開いてもよい。
【0064】
減圧運転中においても、液量検知部30によって貯槽10内の液体水素L1の残量を継続的に検知し、当該検知データを制御部50(受付部52)に送信する。そして、制御部50(比較部54)において、当該検知データが第2閾値に到達したか否かを判定する(S40:
図3)。当該検知データが第2閾値に到達していない場合には(S40のNO)、減圧運転が継続される。一方、当該検知データが第2閾値以下になったときは(S40のYES)、減圧運転を中止し、貯槽10への液体水素L1の補充を開始する(S50:
図3)。具体的には、タンクローリーなどから補給経路(図示しない)を介して貯槽10へ液体水素L1が補充される。これにより、貯槽10内における液体水素L1の液面が上がり、貯槽10内の圧力が上昇する。そして、再び定圧運転および減圧運転が繰り返される。
【0065】
ここで、上記の通り説明した実施形態1に係る水素ステーション1およびその運用方法の特徴および作用効果について列記する。
【0066】
本実施形態に係る水素ステーション1は、液体水素L1を貯留する貯槽10と、貯槽10から供給される液体水素L1をガス化する気化器12と、気化器12でガス化した水素を所定の圧力まで昇圧する圧縮機14と、貯槽10から流出した液体水素L1の少なくとも一部を熱交換器22でガス化して貯槽10に戻すガス化経路20と、ガス化経路20に配置され、ガス化経路20を流れる液体水素L1の量を調整するガス化用弁21と、貯槽10内のガス化した水素を気化器12と圧縮機14との間の経路、または、気化器12内に送出するためのガス送出経路24と、圧縮機14で昇圧した水素ガスを貯える蓄圧器15と、貯槽10内の液体水素L1の残量を検知する液量検知部30と、液量検知部30により検知された貯槽10内の液体水素L1の残量が第1閾値以下になったときに、ガス化経路20を流れる液体水素L1の量を減少させて貯槽10内における液体水素L1のガス化量を減少させるようにガス化用弁21を制御し、さらに、貯槽10からガス送出経路24を通じて送出される水素ガスの量を増加させるようにガス送出経路24に配置されたガス送出弁25を制御する制御部50と、を備えている。第2経路41を流れる水素ガス(需要先へ供給される水素ガス)のうち、ガス送出経路24から流入する水素ガス(貯槽10内の上部空間から送出される水素ガス)の割合が気化器12から流入する水素ガスの割合に比べて大きくなる場合がある。
【0067】
本実施形態に係る水素ステーションの運用方法は、上記水素ステーション1において、貯槽10に液体水素L1を補充する方法である。この方法においては、貯槽10に液体水素L1を補充する前であって貯槽10内の液体水素L1の残量が第1閾値以下になったときに、ガス化経路20に配置されたガス化用弁21によってガス化経路20を流れる液体水素L1の量を減少させ、貯槽10内における液体水素L1のガス化量を減少させさらに、ガス送出経路24に配置されたガス送出弁25によって貯槽10からガス送出経路24を通じて送出される水素ガスの量を増加させることによって貯槽10内の圧力を下げることにより、圧縮機14の吸込圧力を下げた運転を行う。
【0068】
この特徴によれば、貯槽10内の液体水素L1の残量が第1閾値以下になったときに、ガス化経路20を流れる液体水素L1の量をガス化用弁21によって減少させて貯槽10内における液体水素L1のガス化量を減少させると共に、貯槽10内の上部空間からの水素ガスの送出量を増加させることにより、液体水素L1の補充前に貯槽10内の圧力を下げることができる。このため、貯槽10内の水素ガスを水素ステーション1の外部に放出することのみによって貯槽10内の圧力を下げる場合と異なり、貯槽10から水素ステーション1の外部に放出される水素ガスの量を抑えつつ、貯槽10内の圧力を液体水素L1の補充に適した圧力まで下げることができる。これにより、水素のムダを抑えつつ、貯槽10に液体水素L1を効率的に補充することができる。
【0069】
上記水素ステーション1において、ガス化経路20は、熱源流体の熱によって液体水素L1をガス化する熱交換器22を含む。上記水素ステーションの運用方法においては、貯槽10に液体水素L1を補充する前であって貯槽10内の液体水素L1の残量が第1閾値以下になったときに、熱交換器22を流れる液体水素L1の量をガス化用弁21によって減少させる。
【0070】
これにより、熱交換器22を流れる液体水素L1の量を減少させることによって、貯槽10に戻る水素ガスの量を減少させることができる。その結果、貯槽10内における液体水素L1のガス化量が減少し、貯槽10内の圧力を液体水素L1の補充に適した圧力まで容易に下げることができる。さらに、貯槽10内の上部空間からの水素ガスの送出量が増加するようにガス送出弁25および液体送出弁11を制御することにより、貯槽10内の圧力をより確実に下げることができる。
【0071】
上記水素ステーション1において、制御部50は、液量検知部30により検知された貯槽10内の液体水素L1の残量が、第1閾値から第1閾値よりも小さい値であって液体水素L1の補充が必要となる第2閾値に到達するまでの間において、貯槽10内の圧力が徐々に下がるようにガス化用弁21、ガス送出弁25および液体送出弁11を制御する。上記水素ステーションの運用方法においては、貯槽10内の液体水素L1の残量が第1閾値から第1閾値よりも小さい第2閾値に到達するまでの間において、貯槽10内における液体水素L1のガス化量を徐々に減少させると共に貯槽10内の上部空間からの水素ガスの送出量を増加させることによって、貯槽10内の圧力を徐々に下げる。そして、貯槽10内の液体水素L1の残量が第2閾値に到達したことに基づいて、貯槽10への液体水素L1の補充を開始する。
【0072】
これにより、貯槽10への液体水素L1の補充が必要となる前(貯槽10内の液体水素L1の残量が第2閾値に到達する前)に、貯槽10内の圧力を徐々に下げることができる。これにより、貯槽10内の液体水素L1の残量が第2閾値に到達した時点で、貯槽10内の圧力が液体水素L1の補充を行うために十分に下がった状態とすることができるため、速やかに液体水素L1の補充を行うことができる。
【0073】
(その他実施形態)
最後に、本発明のその他実施形態について説明する。
【0074】
上記実施形態1では、貯槽10内の液体水素L1の残量をセンサー(液量検知部30)によって検知し、その検知結果と関連付けてガス化用弁21、ガス送出弁25および液体送出弁11の開度を自動制御する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、作業者が貯槽10内の液体水素L1の残量を確認し、その残量が第1閾値以下になったタイミングで、ガス化用弁21、ガス送出弁25および液体送出弁11の開度を手動で制御してもよい。
【0075】
上記実施形態1では、減圧運転中において貯槽10内の圧力を徐々に下げる場合について説明したが、これに限定されない。減圧運転中において貯槽10内の液体水素L1の残量が減少するにも関わらず貯槽10内の圧力が一定に保持される時間があってもよい。
【0076】
上記実施形態1において、FCフォークリフトおよびFC自動車(タンク搭載装置)のそれぞれに水素ガスを充填可能なように複数のディスペンサが設けられていてもよい。例えば、
図1中の第1ディスペンサ16AがFCフォークリフトの燃料補給口に対応したノズルを有し、第2ディスペンサ16BがFC自動車の燃料補給口に対応したノズルを有していてもよい。
【0077】
上記実施形態1において、ガス化経路20およびガス化用弁21が省略されてもよい。
【0078】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
1 水素ステーション
10 貯槽
11 液体送出弁
12 気化器
14 圧縮機
14A 第1圧縮機
14B 第2圧縮機
15 蓄圧器
15A 第1蓄圧器
15B 第2蓄圧器
15C 第3蓄圧器
16 ディスペンサ
16A 第1ディスペンサ
16B 第2ディスペンサ
16C 第3ディスペンサ
20 ガス化経路
21 ガス化用弁
22 熱交換器
23 熱交換用ライン
24 ガス送出経路
25 ガス送出弁
30 液量検知部
40 第1経路
41 第2経路
50 制御部
L1 液体水素