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特許7018020移動させられるワークピースのスケール除去の為の装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】移動させられるワークピースのスケール除去の為の装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 45/08 20060101AFI20220202BHJP
   B05B 1/14 20060101ALI20220202BHJP
   B05B 3/02 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
B21B45/08 F
B05B1/14 Z
B05B3/02 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018548803
(86)(22)【出願日】2017-03-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2017056462
(87)【国際公開番号】W WO2017158191
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2018-11-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】102016204570.9
(32)【優先日】2016-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102016204579.2
(32)【優先日】2016-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102016217562.9
(32)【優先日】2016-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102016217561.0
(32)【優先日】2016-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102016217560.2
(32)【優先日】2016-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】アンテ・アンゲラ
(72)【発明者】
【氏名】フクス・ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】マールブルガー・イェンス
(72)【発明者】
【氏名】シュレーダー・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヤルヒャウ・ミヒャエル
【合議体】
【審判長】河端 賢
【審判官】貞光 大樹
【審判官】大山 健
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-60333(JP,A)
【文献】国際公開第2014/191168(WO,A1)
【文献】特開平8-332514(JP,A)
【文献】特開平11-216513(JP,A)
【文献】特開平11-156424(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0067095(US,A1)
【文献】実開昭62-177484(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B45/00-45/08
B21C51/00
B21B38/00-38/12
B05B 1/14
B05B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置(10)に対して相対的に移動方向(X)を移動させられるワークピース(12)又は熱間圧延品のスケール除去の為の装置(10)であって、回転軸(R)を中心として回転可能な少なくとも一つのローターヘッド(14)を有し、当該ローターヘッドに複数の放射ノズル(16)が取り付けられ、その際、放射ノズル(16)から流体(18)、又は水がワークピース(12)又は熱間圧延品へと、ワークピース(12)又は熱間圧延品の表面(20)上の法線に対して傾斜したアプローチ角度(α)で調達可能であり、制御装置(22)を有する装置(10)において、
制御装置(22)がローターヘッド(14)の駆動手段(M)と信号技術的に接続され、そして当該制御装置は、ローターヘッド(14)が、その回転軸(R)を中心として回転させられる回転数が、ワークピース(12)又は熱間圧延品がその移動方向に移動させられる送り速度と適合可能であるようプログラム技術的に形成されており、及び
制御装置(22)が、閉ループ制御サーキットを有し、そしてこれによって、ローターヘッド(14)の回転数が、ワークピース(12)又は熱間圧延品の送り速度に応じて閉ループ制御され、又は、ワークピース(12)又は熱間圧延品の送り速度が、ローターヘッド(14)の回転数に応じて閉ループ制御され、
第一のローターヘッド装置(14.1)と第二のローターヘッド装置(14.2)が設けられており、これらがワークピース(12)又は熱間圧延品の移動方向(X)に関して相前後して配置されており、及び、通常運転中、第一のローターヘッド装置(14.1)の放射ノズル(16)からのみ流体(18)又は水がワークピース(12)又は熱間圧延品へと流出し、
ワークピース(12)又は熱間圧延品の移動方向(X)に関してローターヘッド(14)の下流に配置された表面調査装置(26)が設けられており、これが、制御装置(22)と信号技術的に接続されており、その際、表面調査装置(26)によってワークピース(12)又は熱間圧延品の表面(20)に残留するスケールが検出可能でありその際、表面調査装置(26)の信号に基づいてワークピース(12)又は熱間圧延品のスケール除去品質を所定の目標基準と比較し、そしてこれに応じて、ローターヘッド(14)の放射ノズル(16)と流体接続している高圧ポンプユニット(24)が制御され、又は閉ループ制御されるよう、制御装置(22)がプログラム技術的に形成されていること、及び
接続可能な第二のローターヘッド装置(14.2)の放射ノズル(16)が、表面調査装置(26)の信号に応じて運転される結果、第二のローターヘッド装置(14.2)の放射ノズル(16)が接続可能であるので、流体(18)又は水が、第二のローターヘッド装置(14.2)の放射ノズル(16)からもワークピース(12)又は熱間圧延品へと流出し、そして相応してワークピース(12)又は熱間圧延品のスケール除去の為、第一のローターヘッド装置(14.1)と第二のローターヘッド装置(14.2)との双方が使用されることを特徴とする装置(10)。
【請求項2】
複数の放射ノズル(16)が、ローターヘッド(14)にその回転軸(R)に対して異なる半径方向の間隔(s1;s2;s3)で取り付けられており、その際、回転軸(R)に対してより小さな間隔を有する放射ノズルと比較して、回転軸(R)に対してより大きな間隔を有する放射ノズル(16.1;16.2:16.3)から、より多くの体積流量(V1;V2;V3)の流体(18)又は水が流出可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
装置(10)に対して相対的に移動方向(X)を移動させられるワークピース(12)又は熱間圧延品のスケール除去の為の装置(10)であって、回転軸(R)を中心として回転可能な少なくとも一つのローターヘッド(14)を有し、当該ローターヘッドに複数の放射ノズル(16)が取り付けられており、その際、放射ノズル(16)から流体(18)又は水がワークピース(12)又は熱間圧延品へと、ワークピース(12)又は熱間圧延品の表面(20)上の法線に対して傾斜したアプローチ角度(α)で調達可能であり、制御装置を有する装置(10)において、
複数の放射ノズル(16)が、ローターヘッド(14)に対して、その回転軸に対する異なる半径方向の間隔(s1;s2;s3)で取り付けられており、その際、回転軸(R)に対して異なる大きさの半径方向の間隔を有する放射ノズル(16.1;16.2;16.3)から、回転軸(R)に対してより小さな間隔を有する放射ノズルと比較してより多くの体積流量(V1;V2;V3)の流体(18)又は水が流出可能であること、
第一のローターヘッド装置(14.1)と第二のローターヘッド装置(14.2)が設けられており、これらがワークピース(12)又は熱間圧延品の移動方向(X)に関して相前後して配置されており、及び、通常運転中、第一のローターヘッド装置(14.1)の放射ノズル(16)からのみ流体(18)又は水がワークピース(12)又は熱間圧延品へと流出し、
ワークピース(12)又は熱間圧延品の移動方向(X)に関してローターヘッド(14)の下流に配置された表面調査装置(26)が設けられており、これが、制御装置(22)と信号技術的に接続されており、その際、表面調査装置(26)によってワークピース(12)又は熱間圧延品の表面(20)に残留するスケールが検出可能でありその際、表面調査装置(26)の信号に基づいてワークピース(12)又は熱間圧延品のスケール除去品質を所定の目標基準と比較し、そしてこれに応じて、ローターヘッド(14)の放射ノズル(16)と流体接続している高圧ポンプユニット(24)が制御され、又は閉ループ制御されるよう、制御装置(22)がプログラム技術的に形成されていること、及び
接続可能な第二のローターヘッド装置(14.2)の放射ノズル(16)が、表面調査装置(26)の信号に応じて運転される結果、第二のローターヘッド装置(14.2)の放射ノズル(16)が接続可能であるので、流体(18)又は水が、第二のローターヘッド装置(14.2)の放射ノズル(16)からもワークピース(12)又は熱間圧延品へと流出し、そして相応してワークピース(12)又は熱間圧延品のスケール除去の為、第一のローターヘッド装置(14.1)と第二のローターヘッド装置(14.2)との双方が使用されることを特徴とする装置(10)。
【請求項4】
制御装置(22)が、ローターヘッド(14)の駆動手段(M)と信号技術的に接続され、そして、当該制御装置(22)は、ローターヘッド(14)がその回転軸(R)を中心として回転させられる回転数が、ワークピース(12)又は熱間圧延品がその移動方向を移動させられる送り速度に適合可能であるようプログラム技術的に形成されており、及び
制御装置(22)が、閉ループ制御サーキットを有し、そしてこれによって、ローターヘッド(14)の回転数が、ワークピース(12)又は熱間圧延品の送り速度に応じて閉ループ制御され、又は、ワークピース(12)又は熱間圧延品の送り速度が、ローターヘッド(14)の回転数に応じて閉ループ制御されることを特徴とする請求項3に記載の装置(10)。
【請求項5】
ワークピース(12)又は熱間圧延品の送り速度(v)が、制御装置(22)によって制御されて、又は閉ループ制御されて調整可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項6】
回転軸(R)を中心として回転可能な少なくとも一つの、複数の放射ノズル(16)が取り付けられているローターヘッド(14)を有する装置(10)に対して相対的に移動方向(X)を移動させられるワークピース(12)又は熱間圧延品のスケール除去の為の方法であって、その際、ローターヘッド(14)が、その回転軸(R)を中心として回転させられる間、流体(18)又は水がワークピース(12)又は熱間圧延品へと、ワークピース(12)又は熱間圧延品の表面(20)に対して傾斜したアプローチ角度(α)で流出させられる方法において、
少なくとも一つのローターヘッド(14)がその回転軸(R)を中心として回転させられる回転数が、制御装置(22)によってワークピース(12)又は熱間圧延品がその移動方向(X)を移動させられる送り速度に適合させられ、及びローターヘッド(14)の回転数のワークピース(12)又は熱間圧延品の送り速度に対する当該適合が閉ループ制御されて行われること、
第一のローターヘッド装置(14.1)と第二のローターヘッド装置(14.2)が設けられており、これらがワークピース(12)又は熱間圧延品の移動方向(X)に関して相前後して配置されており、及び、通常運転中、第一のローターヘッド装置(14.1)の放射ノズル(16)からのみ流体(18)又は水がワークピース(12)又は熱間圧延品へと流出し、
ワークピース(12)又は熱間圧延品の移動方向(X)に関してローターヘッド(14)の下流に配置された表面調査装置(26)が設けられており、これが、制御装置(22)と信号技術的に接続されており、その際、表面調査装置(26)によってワークピース(12)又は熱間圧延品の表面(20)に残留するスケールが検出可能でありその際、表面調査装置(26)の信号に基づいてワークピース(12)又は熱間圧延品のスケール除去品質を所定の目標基準と比較し、そしてこれに応じて、ローターヘッド(14)の放射ノズル(16)と流体接続している高圧ポンプユニット(24)が制御され、又は閉ループ制御されるよう、制御装置(22)がプログラム技術的に形成されていること、及び
接続可能な第二のローターヘッド装置(14.2)の放射ノズル(16)が、表面調査装置(26)の信号に応じて運転される結果、第二のローターヘッド装置(14.2)の放射ノズル(16)が接続可能であるので、流体(18)又は水が、第二のローターヘッド装置(14.2)の放射ノズル(16)からもワークピース(12)又は熱間圧延品へと流出し、そして相応してワークピース(12)又は熱間圧延品のスケール除去の為、第一のローターヘッド装置(14.1)と第二のローターヘッド装置(14.2)との双方が使用されることを特徴とする方法。
【請求項7】
ローターヘッド(14)に、その回転軸(R)に対して異なる半径方向の間隔(s1;s2;s3)で取り付けられている複数の各放射ノズル(16.1;16.2;16.3)から、異なる量の体積流量(V1;V2;V3)の流体(18)又は水が噴射され、その際、回転軸(R)に対してより大きな半径方向の間隔を有する放射ノズル(16.1;16.2;16.3)から、回転軸(R)に対してより小さい半径方向の間隔を有する放射ノズルに比べ、より多くの体積流量(V1;V2;V3)の流体(18)又は水が噴射されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
回転軸(R)を中心として回転可能であり、複数の放射ノズル(16)が取り付けられている少なくとも一つのローターヘッド(14)を有する装置(10)に対して相対的に移動方向(X)を移動させられるワークピース(12)又は熱間圧延品のスケール除去のための方法であって、その際、ローターヘッド(14)がその回転軸(R)を中心として回転させられる間、流体(18)又は水が放射ノズル(16)からワークピース(12)又は熱間圧延品へと、ワークピース(12)又は熱間圧延品の表面に対して傾斜したアプローチ角度(α)で流出される方法において、
それぞれローターヘッド(14)に、その回転軸(R)に対して異なる半径方向の間隔(s1;s2;s3)でローターヘッド(14)に取り付けられている複数の放射ノズル(16.1;16.2;16.3)から異なる量の体積流量の流体(18)が噴射され、その際、回転軸(R)に対してより大きな半径方向の間隔を有する放射ノズル(16.1;16.2;16.3)から、回転軸(R)に対してより小さな半径方向の間隔を有する放射ノズルと比較して、より多くの体積流量(V1;V2;V3)の流体(18)が噴射されること、
第一のローターヘッド装置(14.1)と第二のローターヘッド装置(14.2)が設けられており、これらがワークピース(12)又は熱間圧延品の移動方向(X)に関して相前後して配置されており、及び、通常運転中、第一のローターヘッド装置(14.1)の放射ノズル(16)からのみ流体(18)又は水がワークピース(12)又は熱間圧延品へと流出し、
ワークピース(12)又は熱間圧延品の移動方向(X)に関してローターヘッド(14)の下流に配置された表面調査装置(26)が設けられており、これが、制御装置(22)と信号技術的に接続されており、その際、表面調査装置(26)によってワークピース(12)又は熱間圧延品の表面(20)に残留するスケールが検出可能でありその際、表面調査装置(26)の信号に基づいてワークピース(12)又は熱間圧延品のスケール除去品質を所定の目標基準と比較し、そしてこれに応じて、ローターヘッド(14)の放射ノズル(16)と流体接続している高圧ポンプユニット(24)が制御され、又は閉ループ制御されるよう、制御装置(22)がプログラム技術的に形成されていること、及び
接続可能な第二のローターヘッド装置(14.2)の放射ノズル(16)が、表面調査装置(26)の信号に応じて運転される結果、第二のローターヘッド装置(14.2)の放射ノズル(16)が接続可能であるので、流体(18)又は水が、第二のローターヘッド装置(14.2)の放射ノズル(16)からもワークピース(12)又は熱間圧延品へと流出し、そして相応してワークピース(12)又は熱間圧延品のスケール除去の為、第一のローターヘッド装置(14.1)と第二のローターヘッド装置(14.2)との双方が使用されることを特徴とする方法。
【請求項9】
少なくとも一つのローターヘッド(14)がその回転軸(R)を中心として回転させられる回転数が、制御装置(22)によって、ワークピース(12)又は熱間圧延品がその移動方向(X)を移動させられる送り速度に適合させられ、及び
制御装置(22)が、閉ループ制御サーキットを有し、そしてこれによって、ローターヘッド(14)の回転数が、ワークピース(12)又は熱間圧延品の送り速度に応じて閉ループ制御され、又は、ワークピース(12)又は熱間圧延品の送り速度が、ローターヘッド(14)の回転数に応じて閉ループ制御されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ローターヘッド(14)が、その回転軸(R)を中心とした回転の際、放射ノズル(16)から流出する流体(18)又は水の噴射方向(S)が、ワークピース(12)又は熱間圧延品の表面(20)に対して平行な平面への投影に関してワークピース(12)又は熱間圧延品の移動方向(X)に対して永続的に逆、つまり170度から190度の間の噴射角度(β)、又は180度の噴射角度(β)に向けられたままであることを特徴とする請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
高圧ポンプユニット(24)の制御駆動によって、放射ノズル(16)から流体(18)又は水に噴射される圧力が、表面調査装置(26)の信号に応じて調整されることを特徴とする請求項6から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ワークピース(12)又は熱間圧延品の表面(20)に対するローターヘッドの間隔(A)が、表面調査装置(26)の信号に応じて調整可能であるか、又は調整され、つまり表面調査装置(26)の信号に応じて調整されることを特徴とする請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ワークピース(12)又は熱間圧延品のスケール除去品質が所定の目標値を下回るとき、その移動方向(X)におけるワークピース(12)又は熱間圧延品の送り速度(V)が減少させられる、又はワークピース(12)又は熱間圧延品のスケール除去品質が所定の目標値を維持する限り、ワークピースの移動方向(X)における送り速度(v)が高められることを特徴とする請求項6から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも一つのローターヘッド(14)がワークピース(12)又は熱間圧延品の上下に其々配置されているローターヘッド対(28)、又はローターモジュール対(32)が設けられており、その際、流体(18)又は水がワークピース(12)又は熱間圧延品の下に配置されたローターヘッドの放射ノズル(16)によってワークピース(12)又は熱間圧延品に流出する圧力が、ワークピース(12)又は熱間圧延品の上に配置されるローターヘッドの放射ノズルにおけるよりも大きいことを特徴とする請求項6から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも一つのローターヘッド(14)がワークピース(12)又は熱間圧延品の上下に其々配置されているローターヘッド対(28)、又はローターモジュール対(32)が設けられており、その際、流体(18)又は水がワークピース(12)又は熱間圧延品の下に配置されたローターヘッドの放射ノズル(16)によってワークピース(12)又は熱間圧延品に流出する圧力が、ワークピース(12)又は熱間圧延品の上に配置されるローターヘッドの放射ノズルにおけるよりも大きいことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置に対して移動方向を移動させられるワークピースのスケール除去の為の装置及び方法に関する。ワークピースは、特に熱間圧延品である。
【背景技術】
【0002】
ワークピース、特に熱間圧延品のスケール除去の為、ワークピースの表面に水を高圧で噴射することが先行技術から公知である。ワークピースの表面の抜けの無いスケール除去の為、通常は高圧噴射水が、デスケーラーの複数のノズルから噴射される。これと関連して、熱間圧延設備において、スケール、つまり酸化鉄から成る汚染物を圧延品の表面から除去するために設けられる構造群がデスケーラーと称される。
【0003】
特許文献1から、デスケーラーが公知である。このデスケーラーによっては、デスケーラーに対して相対的に移動させられる圧延品が、高圧噴射水の放射によってスケール除去される。このデスケーラーは、圧延品幅をカバーする少なくとも一つのノズル列を有する。ノズル列は複数のノズルヘッドを有するものである。その際、各ノズルヘッドは、圧延品表面に対して垂直な回転軸を中心としてモーターにより回転駆動されている。更に、各ノズルヘッドにおいては、回転軸に対して中心を外して配置された少なくとも二つのノズルが設けられている。これらは、構造上、ノズルヘッドの周囲にできる限り近く配置されている。そのようなデスケーラーは、圧延品の幅に亘るエネルギー入力が不均一である可能性があるので温度筋が残るかもしれないというデメリットを有する。更に、ノズルは各ノズルヘッドにおいて、あるアプローチ角度だけ外側に向かって傾けて配置されている。この為、これらノズルの噴射方向はノズルヘッドがその回転軸を中心として回転する際にも、圧延品の送られる方向に向けられることとなる。ノズルから搬出される高圧噴射水の向きは、ここで噴射水の放射が非効率的であり、よって圧延品の表面のスケール除去に貢献しない限り不利である。
【0004】
特許文献2からは、圧延品のスケール除去の為の方法が公知である。この方法においては、ロータースケール除去装置が設けられている。この装置によって、流体放射が、スケール除去すべき圧延品の表面へと噴射される。圧延品が僅かのみ冷却されるということを保証する為、及び低い運転流体圧力で高い放射圧力を発生させるため、流体放射は間欠的に、つまり時間的に間をあけて形成される。流体放射が一回、又は複数回中断されることに基づいて、圧力ピークが生じる。これは、放射圧力上昇として作用する。これによって、圧延品のスケール除去作用の改善が図られる。この目的の為に設けられる制御ディスク(この制御ディスクは圧力媒体供給部と流体接続状態で設けられている)は、しかし不利益として、このスケール除去技術の為の構造的なコストを拡大する。更に、圧力ピークの形成の際、特にキャビテーションによって材料要求が高くなるという危険性がある。
【0005】
特許文献3から、装置に対して相対的に移動方向に移動させるワークピースをスケール除去するためのある種の装置、及びある種の方法が公知である。この目的の為、複数の放射ノズルが、ノズルホルダーの形式の回転するローターヘッドに設けられている。その際、流体は、高圧で放射ノズルから、圧延品の表面へと搬出、又は噴射される。その際、搬出、又は噴射は、流体が放射ノズルから噴射される放射方向が、圧延品の移動方向に対して常に傾斜した角度で延びているよう行われる。放射方向のそのような傾斜した向きによって、圧延品の表面から取り除かれるスケールが、圧延品から離れる方へと搬送させる。これによって設備、又はその周囲面の不利な著しい汚染が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2005/082555 A1号
【文献】国際公開第1997/27955 A1号
【文献】ドイツ連邦共和国特許出願公開DE 10 2014 109 160 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ワークピースのスケール除去を簡単な手段で最適化することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1及び請求項3に定義される特徴を有する装置によって、及び請求項6及び請求項8に定義される特徴を有する方法によって解決される。本発明の有利な発展形は、従属請求項に定義されている。
【0009】
本発明に係る装置は、移動方向において装置に対して相対的に移動させられるワークピース、好ましくは熱間圧延品のスケール除去の為に使用され、そして、回転軸を中心として回転可能な少なくとも一つのローターヘッドを有し、ローターヘッドには、複数の放射ノズルが取り付けられており、その際、放射ノズルから流体、特に水がワークピースへと、ワークピースの表面に対して傾斜したアプローチ角度で流出させられることが可能である。更に、装置は制御装置を有する。この制御装置は、ローターヘッドと信号技術的に接続され、そして、ローターヘッドが回転軸を中心として回転させられる回転数が、ワークピースがその移動方向を移動させられる送り速度に適合されることが可能であるよう、前記制御装置はプログラム技術的に形成されている。好ましくは制御装置はこの目的で、制御サーキットを有している。これによって上述したローターヘッドの回転数のワークピースの送り速度に対する適合を行うためである。逆に言うと、ワークピースの送り速度もまたローターヘッドの回転数に適合されることが可能である。
【0010】
補足的及び/又は代替的に、この装置においては、複数の放射ノズルが、回転軸に対して異なる大きさの半径方向間隔で取り付けられていることが意図されている。その際、回転軸に対してより大きな半径方向の間隔を有する放射ノズルからは、回転軸に対してより小さい半径方向の間隔を有する放射ノズルと比較してより多くの体積流量の流体が流出されることが可能である。
【0011】
同様に、本発明はワークピース、好ましくは熱間圧延品のスケール除去を行うための方法に関する。ここでワークピースは、装置に対して相対的に移動方向を移動させられ、その際、この装置は、回転軸を中心として回転可能な少なくとも一つのローターヘッドを有する。このローターヘッドには、複数の放射ノズルが取り付けられている。ローターヘッドが回転軸を中心として回転させられる間、流体、特に水が放射ノズルからワークピースへと、ワークピースの表面に対して傾斜したアプローチ角度で流出、又は噴射される。当該方法の為に、少なくとも一つのローターヘッドがその回転軸を中心として回転させられる回転数が、制御装置によって、ワークピースがその移動方向を移動させられる送り速度に適合されるということが意図されている。好ましくは、ローターヘッドの回転数をワークピースの送り速度に適合するのは、閉ループ制御されて、つまり(閉ループ)制御サーキットを使用することにより行われる。この制御サーキットは制御装置に設けられている。すでに装置に対して上述したように、逆に言うとワークピースの送り速度もローターヘッドの回転数に適合されることが可能である。
【0012】
補足的に、又は代替として、ローターヘッドに其々、その回転軸に対して異なる大きさの半径方向の間隔で取り付けられている複数の放射ノズルから、異なる多さの体積流量の流体が噴射されることが意図されている。その際、回転軸に対してより大きな間隔を有する放射ノズルから、回転軸に対してより小さい間隔を有する放射ノズルと比較してより多くの体積流量の流体が噴射される。
【0013】
本発明は、以下の本質的知見に基づいている、つまり、ワークピースの表面のつまりこれに高圧で噴射される流体による特有エネルギー入力を最適化し、そして一様にすること、つまりワークピースの移動方向においてローターヘッドの回転数をワークピースの送り速度に適合することによって最適化することは可能であるという知見に基づいている。
【0014】
高圧でワークピースの表面に噴射される流体の為の特有エネルギー入力の別の最適化は、複数の放射ノズルが、ローターヘッドに、その回転軸に対して其々異なる大きさの半径方向間隔で取り付けられており、その際、回転軸に対してより大きな半径方向の間隔を有する放射ノズルから、回転軸に対してより小さい半径方向間隔をウゆする放射ノズルと比較してより多くの体積流量の流体が流出されることによって達成される。これは、適切なノズルの選択によって簡単に達成されることができるので、更なるノズルはローターヘッドの回転軸から離れて配置され、相応してより多くの量の流体が、つまりより多くの体積流量が噴射される。よって、複数の放射ノズルをローターヘッドに配置するそのような態様によって、流体の為のエネルギー入力は、ワークピースの移動方向に対して横断する方向において、つまりその幅に亘って最適化される。
【0015】
特有エネルギー入力は、本発明に従い、流体がワークピースの表面にあたる衝突圧力(英語:Impact)と、ワークピースの幅毎の特有体積流量、つまりワークピースに噴射される流体の体積流量を、ワークピースの移動方向に関する噴射幅でわったものから求められる。衝突圧力は、流体が放射ノズルに供給される圧力、噴射される体積流量、及びワークピースの表面からの放射ノズルの間隔に依存する。更に、特有エネルギー入力は、ワークピースがその移動方向を移動させられる送り速度に依存する。特有エネルギー入力の変更は、表面調査装置の信号に応じて、上述したパラメーターの適合によって、つまり制御装置によって以下に詳細に説明するように行われる。
【0016】
本発明の有利な発展形においては、第一のローターヘッド装置と第二の放射ノズル装置が設けられていることが可能である。これらは、ワークピースの移動方向に関して相前後して、特に互いに隣接して配置されている。ローターヘッド装置は、本発明においては、ローターヘッドがワークピースの其々上下に、つまりその上側と下側に設けられているローターヘッド対であるか、又はワークピースの上下に、其々複数のローターヘッドが相並んで、ワークピースの移動方向に対して横断する方向にまとめられているローターモジュール対である。通常運転においては、流体が、第一のローターヘッド装置の放射ノズルのみからワークピース上へと噴射されることが意図されていることが可能である。特別運転においては、第二の放射ノズル装置の放射ノズルが接続されることができるので、流体は、第二の放射ノズル装置からもワークピースへと流出、又は噴射される。この場合、ワークピースのスケール除去の為に放射ノズルは、第一のローターヘッド装置のものも第二の放射ノズル装置のものも使用される。特別運転における両方の装置の使用は、例えばスケール除去が困難である箇所の為や、又は例えば炉ローラー載置面によって発生する可能性があるしつこいスケール残りにおいて推奨される。通常運転において第一のローターヘッド装置の放射ノズルのみが使用されるそのような実施形においては、運転消費が、有利に減少されることが可能である。
【0017】
これは、複数のローターヘッドが、上述したように一つのローターヘッドモジュールにまとめられている場合にも当てはまる。ここではつまりその際、通常運転中、一つのみのローターモジュール対が使用されており、その際、ワークピースの移動方向において例えば下流に配置されている別の放射ノズル対が、必要に応じて接続される。これは、第一のローターヘッド装置と第二の放射ノズル装置が構造的に異なる、つまり第二の装置がスプラッシュビームとして形成されている場合にも同様に当てはまる。
【0018】
本発明の有利な発展形においては、制御装置と信号技術的に接続される表面調査装置が設けられている。この表面調査装置は、ワークピースの移動方向に関してローターヘッドの下流に、これに対して近くに設けられており、これにってワークピースの表面に残るスケールを検出することが可能である。この表面調査装置の信号に基づいて、ワークピースのスケール除去品質が、制御装置によって所定の目標基準と比較され、そしてそれに応じて高圧ポンプユニットが適当に制御されるか、又は閉ループ制御される。高圧ポンプユニットはローターヘッドの放射ノズルと流体接続している。ローターヘッドの放射ノズルと流体接続している高圧ポンプユニットの制御駆動は、流体が放射ノズルからワークピースの表面に噴射される圧力が、表面調査装置の信号に応じて調整されるよう行われることが可能である。これは、噴射される流体の圧力は、未だ十分である程度のワークピースのスケール除去品質が達成されるくらいの、まさにそのような高さに調整されるということを意味する。ワークピースの移動方向で見て、少なくとも二つの放射ノズル装置が相前後して配置されている場合、上述した制御駆動は、接続可能な放射ノズル装置が、表面調査装置の信号に応じて適切に接続されること(これは本発明に従う上述した特別運転に相当する)によって達成されることが可能である。ローターヘッド、又はスプラッシュビームの通常の二列の配置と比較して、そのような一列の配置によって、つまり通常運転で使用される唯一のローターヘッド装置、又は放射ノズル装置によって、運転媒体の本質的な節約が達成される。
【0019】
上述したような圧力の適合によって、つまり圧力を減少させることによって、あらゆる周囲材料、又は設備部材において流体の摩耗作用が減少するということとなる。これによってメンテナンスコストは下がりるし、放射ノズル自体の摩耗も減らされる。
【0020】
表面調査装置の設けることと、制御装置、又は閉ループ制御装置へとこれを結びつけることよって、ワークピースの完全なスケール除去のために必要な水量が、圧力及び/又は体積流量の変更によって適切に減少されることが可能である。これは、高圧水の提供の為に必要なエネルギーの節約に通じるし、ワークピースに噴射される流体の量が減少する結果、ワークピースの冷却が行われにくくなることにも同様に通じる。
【0021】
補足的に、ワークピースの表面に対するローターヘッドの間隔が調整されることが可能であることが付言されよう。これによって、異なる高さを有するワークピースの異なるチャージに適合するということが可能である。補足的に、ワークピースの表面に対するローターヘッドのこの間隔を、表面調査装置の信号に応じて調整することも可能である。例えば、このようにして、不十分なスケール除去品質の場合に、ワークピースの表面に対するローターヘッドの間隔が減少させられるので、これによってワークピースの表面により大きな衝突圧力が、これに対して噴射される流体に関して生ずるということが意図されることが可能である。逆に言うと、これは反対に、ワークピースの表面に対するローターヘッドの間隔は、スケール除去品質が所定の目標値を上回っている場合、少なくともわずかに拡大されることが可能であると言える。
【0022】
本発明の有利な発展形においては、流体が、ワークピースの下に配置されているローターヘッド装置への圧力が、ワークピースの上に配置されているローターヘッド装置の為よりも高く選択されていることが可能である。これによって、ワークピースの下側からもしつこいスケール(そこで例えばガイドローラーの接触によって形成されたもの)が確実に除去されることが可能である。相応して、ワークピースのスケールの無い完全な表面が、比較的低い水量消費で達成され、これによって、高圧水の発生の為の膨大なエネルギーが節約される。
【0023】
ワークピースのスケール除去の為に使用される特有水量が減少されることによって、炉の為、及び/又は誘導加熱部の為に必要な加熱エネルギー、又はワークピースの引き続いての圧延の為に必要な圧延エネルギーが相当量減少されることが可能である。温度節約に基づいて、よってより薄い最終厚さがワークピース、又は熱間圧延品に対して達成されることが可能であるので、プロダクトミックス(独語:Produktmix)は拡大されることができる。この為、減少された炉温度において、炉ローラーの寿命も著しく延長されることとなる。
【0024】
以下に本発明を下略的な図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】原理的に簡略化された本発明に係る装置の側面図
図2】別の実施形に従う本発明に係る装置の原理的に簡略化された上面図
図3a図1又は図2の装置の放射ノズルの噴射方向と、ワークピースがこの装置を通過させられる移動方向の間の原理的な各関係の図
図3b図1又は図2の装置の放射ノズルの噴射方向と、ワークピースがこの装置を通過させられる移動方向の間の原理的な各関係の図
図3c図1又は図2の装置の放射ノズルの噴射方向と、ワークピースがこの装置を通過させられる移動方向の間の原理的な各関係の図
図4図2の装置の部分であることが可能であるローターモジュール対の簡略正面図
図5図1または図2の装置における使用の為のローターヘッドの放射ノズルの可能な配置の図
図6】本発明の実施のためのフローチャート
図7a】ワークピースの表面にワークピースに噴射された流体によって形成される各噴射図
図7b】ワークピースの表面にワークピースに噴射された流体によって形成される各噴射図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に図1から6を参照しつつ本発明の異なる実施形を説明する。図では、同じ技術的特徴は其々同じ参照符号が付されている。更に、図の表現は、原理的に簡易化されており、特にスケール無しで示されている点、注意されたい。幾つかの図には、カルテシアン座標系が記入されている。スケール除去すべき、かつ移動されるワークピースに関して発明に係る装置のために空間的な方向付けをする目的である。
【0027】
発明に係る装置10は、ワークピース12のスケール除去の為に使用される。ワークピースは装置10に対して移動方向Xを移動させられるものである。ワークピースは熱間圧延品であることが可能である。これは装置10を通過する。
【0028】
発明に係る装置10は、複数の放射ノズルを有する放射ノズル装置を有する。放射ノズルからは流体、特に水がワークピースの表面に高圧で噴射される。放射ノズル装置は、回転軸Rを中心として回転可能なローターヘッド14(図1)から形成されている。回転軸Rを中心としたローターヘッド14の回転は、駆動手段によって行われる。この駆動手段は図1においては「M」と称されており、例えば電気モーターから形成されていることが可能である。ワークピース12の方に向けられているローターヘッド14の正面には、放射ノズル16が取り付けられている。放射ノズル16から流体18(図1においては簡略化されて破線で表されている)が高圧でワークピース12の表面20に噴射され、ワークピース12を適切にスケール除去する。
【0029】
放射ノズル16は、図1の実施形においてローターヘッド14に堅固に取り付けられている。ここで放射ノズル16の長手方向Lはローターヘッド14の回転軸Rに対して平行に向けられている。相応して、流体が放射ノズル16から噴射される噴射方向Sは、ローターヘッドの回転軸Rに対して平行に延びている。回転軸Rは、ワークピースの表面20上の法線に対して角度γだけ傾けられて配置されている。これより放射ノズル16に対してアプローチ角度αが生ずる。このアプローチ角度でもって放射ノズル16から噴射される流体18がワークピース12の表面20にあたる。回転軸Rに対して長手方向軸Lが平行であることによって、示された例においては、アプローチ角度αは回転軸Rの傾斜角度γと同じであり、その際、アプローチ角度αは、ローターヘッド14がその回転軸Rを中心として回転する間、一定で同じままである。この実施形は、本発明の機能を特別有利な方法でサポートする。しかしまた、ローターヘッド・放射ノズル装置の他の構造も使用可能である。
【0030】
例えば高さ調整可能なホルダーにとる付けられることによって、ローターヘッド14は高さ調整可能に形成されている。これは、図1では簡略的に両矢印「H」によって表されている。ホルダーHは、調整駆動部を有する(図示されていない)。これによって回転軸Rとローターヘッド14の正面の交差点がワークピース12の表面20に対して有する間隔が、必要な場合、調整駆動部の制御駆動によって調整されることが可能である。本発明の意味において、この間隔Aは噴射間隔として解されよう。この間隔Aが減少すると、ワークピース12の表面20に対して流体18があたると生じる衝突圧力は増加する。
【0031】
装置10は、制御装置22と高圧ポンプユニット24を有する。高圧ポンプユニットは制御装置22と信号技術的に接続されている。ローターヘッド14は、接続配管を介して高圧ポンプユニット24に接続されている。接続は、放射ノズル16が高圧ポンプユニット24と流体接続し、それによって高圧ポンプユニット24から流体を高圧で供給されるように行われている。放射ノズル16からワークピースに高圧で噴射される流体18は、好ましくは水であるが、当該媒体、つまり水のみに限定されることは無いと解される。
【0032】
高圧ポンプユニット24の少なくとも一つのポンプには、周波数コントローラー25が設けられている。これによって、高圧ポンプユニット24を制御装置22によって可能な限り無段階に制御駆動することが可能である。放射ノズル16に流体18を供給する圧力をも小さな段階で変化させることが可能とするためである。そのような高圧ポンプユニット24の制御駆動の更なる詳細は、以下に詳細に説明される。
【0033】
装置10は、表面調査装置26を有する。この装置は、ワークピース12の移動方向Xにおいてローターヘッド14の下流に配置され、そしてこれの近くに配置されている。表面調査装置26は、光学的な測定原理に基づいていることが可能である。この原理では、ワークピース12の表面20に対して3D測定が行われ、そしてそれからワークピース12の表面20の高さプロフィールが導出される。代替として表面調査装置26によって、ワークピース12の表面20のスペクトル分析が実施される。表面調査装置26は、信号技術的に制御装置22と接続されている。よって、表面調査装置26によって、及び相応する制御装置22内の評価によって、ワークピース12の表面20上のスケール、又は残留スケールが検出されることが可能である。よって表面調査装置26はスケール検出装置に相当する。この目的の為、表面調査装置26は、ワークピース12の上面も下面も監視されるように形成されている。
【0034】
ローターヘッド14の駆動手段Mは、制御装置22と信号技術的に接続されている。これによって、ローターヘッド14がその回転軸14を中心として回転する回転数を調整することが可能である。同様に、(図示されていない)手段(この手段によってワークピース12の送り速度が調整される、又は変更されることが可能である)と、高さ調整可能なホルダーHが、以下に更に詳細に説明されるように、其々制御装置と制御技術的に接続されている。
【0035】
図2は、発明に係る装置10の別の実施形を示す。これはつまり簡略上面図で示している。この実施形においては、二つの放射ノズル装置、又はローターヘッド14.1及び14.2が、ワークピース12の移動方向Xにおいて相前後して配置されている。これらローターヘッド14.1および14.2の何れも、図1を参照しつつ説明されるように、高圧ポンプユニット24に接続されている。図2の実施形においては、表面調査装置26は、ローターヘッド14.2の下流に位置決めされている。明瞭性の為、図2においてはワークピース12の幅は、y方向に延びており、その際、ローターヘッド14.1及び14.2の回転軸Rは其々、図平面に対して垂直に延びている点、付言されよう。下流に位置決めされた第二の放射ノズル装置に対してもまた、他の実施形、例えばスプラッシュビームが使用可能である。
【0036】
一方で制御装置22及び他方で装置10の個々のコンポーネントの間の信号技術的な接続は、図1及び図2において其々点線で図示されている。これに対する詳細は、制御装置22と高圧ポンプユニット24の間の信号技術的な接続が、参照符号23.1によって表されている。制御装置22と表面調査装置26の間の信号技術的な接続は、参照符号23.2で表されている。制御装置22とローターヘッド14の駆動手段Mの間の信号技術的な接続は参照符号23.3で表されている。制御装置22と高さ調整部Hの間の信号技術的な接続は、参照符号23.4で表されている。制御装置22と、ワークピース12の送り速度vを調整する、又は変更することが可能である(図示されない)装置の間の信号技術的な接続は、参照符号23.5で表されている。この接続23.1-23.5は、物理的なライン、又は適当な無線経路等で有り得る。
【0037】
図3は、流体18が放射ノズル16から噴射される噴射方向Sと、ワークピースが装置10又はそのローターヘッド14を通過する移動方向Xの間の関係を明らかにする。詳細には、図3は、ワークピース12の表面20に平行な平面への噴射方向Sの投影を明らかにする。図3a、図3b、及び図3cの例においては、流体18が放射ノズル16のノズル開口部17から流出する噴射方向Sが、移動方向Xに対して逆、つまり移動方向Xに対して約170度から190度の噴射角度βに向けられている。これは、流体の噴射方向18は、これがワークピース12上に高圧で噴射されるとき、ワークピース12の側方の縁部の方向における成分を有さない、又は僅かな成分のみを有するということに通ずる。この作用は、特に本発明の効果を合目的的にサポートする。
【0038】
本発明の特別良好な作用は、噴射方向Sの上述した向きが、図3a、3b及び3cに見て取れるように、ローターヘッド14の回転軸Rを中心とした回転の間、不変、又は一定のままであることから生じる。同じことはアプローチ角度αにも言える。
【0039】
以下に図4を参照しつつ、ローターヘッド14の可能な配置を示し、そして説明する。これは、図2の実施形において使用することができる。
【0040】
図4は、ローターモジュールの正面図を示す。その際、ローターモジュール30.1はワークピース12の上に、ローターモジュール30.2は下に設けられ、そしてこれによってローターモジュール対32が形成される。詳細には、ローターモジュール30.1及び30.2はそれぞれ複数のローターヘッド14から成る。これらは、相並んで、及びワークピースの移動方向Xに対して横切る方向(つまり図4においてy軸の方向)に配置されている。一様な特有エネルギー入力の為に、個々のローターの間隔は、外側の放射ノズルの噴射軌跡が、噴射図においてオーバーラップし、そのような第二のノズルの放射が、しかし同時にはワークピースの同じ箇所にあたらないよう決定される比必要がある。図4においてと異なり、3より少ない、又は多いローターヘッド14が一つのローターモジュール30.1、30.2にまとめられていることが可能である。
【0041】
図4の実施形に関して、個々のローターヘッド14は、一つの共通の高圧水配管Dに接続されていることが可能である。この高圧水配管は、高圧ポンプユニット24に接続されている。これによって、ローターヘッド14に取り付けられた放射ノズル16に高圧水が供給されることが保証される。
【0042】
図5は、ローターヘッド14の下側の正面に複数の放射ノズル16が取り付けられるのが表されている。図5の例では、三つの放射ノズル16.1、16.2及び16.3が設けられている。これらは其々、ローターヘッド14の回転軸Rに対して異なる間隔を有している。図5においては、回転軸Rは図平面に対して直角に延びている。
【0043】
各放射ノズル16.1、16.2及び16.3の異なる間隔は、図5においてはs1、s2及びs3で、s1>s2>s3という条件のもと表されている。ローター軸Rに対して其々異なる半径方向間隔の放射ノズルのそのような配置においては、回転軸Rに対してより大きな半径方向間隔の放射ノズルから、回転軸に対してより小さい間隔の放射ノズルに比べてより多くの体積流量の流体が噴射されることが意図されている。図5の三つのノズル16.1、16.2及び16.3に関して、これらノズルから流出する体積流量は、V1>V2>V3の関係を満たす。ここで放射ノズル16.1からは体積流量V1、放射ノズル16.2からは体積流量V2、及び放射ノズル16.3からは体積流量V3が搬出、又は噴射される。これによって、放射ノズル16.1、16.2及び16.3から流出する流体にとって、一様なエネルギー入力がワークピース12の表面20に、その移動方向Xを横断する方向において図られる。
【0044】
上記図5に関して説明された関係は、3より多くの、又は少なくの数量の放射ノズルが設けられている場合にも、つまりローターヘッド14の回転軸Rに対して其々異なる間隔を有する複数の放射ノズルにも当てはまる。更に、図5の例は、図1-4に示されており、そして説明されている全てのローターヘッド14にも当てはまることが付言される。
【0045】
上述した全ての実施形において、ワークピース12は装置10を通りすぎる。つまり、相応する図においてそれぞれ「v」で表されている送り速度で通りすぎる。
【0046】
高圧で水を噴射することにより、ワークピース12の表面20は、特有エネルギー入力E(又は「スプレーエネルギー」、“Spray Energy”)でもって付勢される。これは、以下のように決定される。
【数1】
【0047】
ここで、
E:特有エネルギー入力[kJ/m
I:衝突圧力[N/mm
spez:ワークピースの幅毎の特有体積流量[I/S・m]
v:ワークピースの送り速度[m/s]
である。
【0048】
ここで流体18がワークピース12の表面20にあたる衝突圧力(英語:Impact)は、流体が放射ノズル16から噴射される圧力及び体積にも依存するし、ワークピースの表面30からの放射ノズル16の間隔にも依存する。
【0049】
送り速度vを考慮せず、スケール除去結果の制御の為に不十分である衝突圧力Iを静的に観察することのみが行われる。
【0050】
更に、特有体積流量Vspezが決定される。
【数2】
【0051】
ここで、
spez:ワークピースの幅毎の特有体積流量[i/s・m]
V:噴射される流体の体積流量[I/S]
b:移動方向Xを横切る方向の噴射幅[m]
である。
【0052】
本発明は、以下のように機能する。
【0053】
ワークピース12の表面20の所望のスケール除去の為、これは発明に係る装置10に対して相対的に移動方向Xを移動させられる。ここで放射ノズル16から流体18が高圧でワークピース12の表面20に噴射、つまりその上面にも下面にも噴射される。
【0054】
図6は、発明に係る装置10の運転様式、又は発明に係る方法の実施を見せるためのフローチャートを示す。
【0055】
ワークピース12が装置10において移動方向Xを通過する間、そしてその際スケール除去される間、表面調査装置26によって連続的にスケール除去品質が監視される。これによって、ワークピース12の為の所望の表面品質が、所定の目標値を達成しているかどうかが、放射ノズル装置の近傍で、及び/又は直接これに隣接して確認されることが可能である。そうでないとき、所望の表面品質を可能な限り低いエネルギー入力で達成するため、又は達成された品質においてエネルギー入力を徐々に減らすため、できる限り低いエネルギー入力に対して許容可能で品質を達成するために、適合を行う為の様々な調整要素がある。
【0056】
相応して、高圧ポンプユニット24、又はその為に設けられる一又は複数の周波数コントローラー25を制御装置22によって適当に制御駆動することによって、流体18が放射ノズル16に供給される圧力が高められ、その際、場合によっては高圧ポンプユニット24の別のポンプも接続されることができる。
【0057】
既に上述した圧力の適合に対して補足的、又は代替的に、追加的な放射ノズル装置を接続する、又は切り離すことも可能である。図2の実施形は、放射ノズル装置14.2である。これは、例えばローターヘッド対28の形式、又はローターモジュール対32の形式であり、これは放射ノズル装置14.1の下流に設けられている。これは、ワークピース12の所望の表面品質が維持されるとき、本発明に係る通常運転に従い、唯一の放射ノズル装置が使用されることを意味する。ワークピース12の表面品質が、所定の目標値を下回る場合に対してのみ、本発明に係る特別運転に従い、第二の放射ノズル装置(図2の14.2参照)が接続される。その際、その後、接続されたこの第二の放射ノズル装置の放射ノズル16からワークピースの表面20に同様に高圧で流体が噴射される。もはや必要なくなると、第二の放射ノズル装置14.2の接続は再び逆戻りさせられる。本発明の通常運転においては、唯一の放射ノズル装置のみが使用されるという事実は、エネルギー及び高圧水の節約に貢献する。
【0058】
図6のフローチャートに従い、装置10の運転パラメーターの適合も行われることが可能である。制御装置22による高圧ポンプユニット24の適当な制御駆動によって、流体が放射ノズル16に供給される圧力は、検出可能な残留スケールが、最小の特有エネルギー入力を示すまで下げられることが可能である、そしてその後、この圧力が再び少し上げられる必要がある。ここで放射ノズル16に供給される流体18の為の圧力は、表面品質が所定の目標値を達成する十分大きな値に調整される。換言すると、流体18が放射ノズル16に供給される圧力は、ワークピース12の表面品質、又はスケール除去品質が所定の目標値を維持している限り下げられる。
【0059】
補足的に、及び/又は代替的に、衝突圧力、又はスケール除去圧力の変更が、ローターヘッド装置の高さ調整によって行われることが可能である。この高さ調整は、図1においては矢印「H」で表されており、そして、高さ調整可能なホルダーH(これに放射ノズル装置が取り付けられている)の調整駆動部が、制御装置22によって適切に制御駆動されることによって行われる。
【0060】
図6のフローチャートは、制御ループを示す。これによって、ワークピース12がスケール除去される所望の特有エネルギー入力Eを決定する、又は調整するためのものである。ここで上述した可能性は、ワークピースの表面品質が、所定の目標値(図6において「目標結果」と称されている)を達成する限り実施される、又は適用される。
【0061】
(図示されていない)手段が設けられている。この手段によって制御装置22が、ワークピース12のその移動方向Xにおける現在の送り速度vに関する情報を得る。同じことは、送り速度vが適合された場合、又は変更された場合にも当てはまる。このことは、上述した手段によって、その後同様に制御装置22に知らされる。それに基づいて、制御装置22によってローターヘッド14の為の所望の回転数が調整されることが可能である、つまり、ワークピース12の送り速度への適合において調整されることが可能である。そのような適合は、動いているプロダクション運転中にも可能である。ワークピース12の送り速度vが振動したときや、この送り速度がスケール除去品質の適合の為の必要な調整要素として変更される。制御装置22は、プログラム技術的に、ローターヘッド14の回転数のそのような適合が閉ループ制御されて行われるよう形成されていることが可能である。
【0062】
上述したように、ローターヘッド14の回転数を、ワークピース12の移動方向Xにおける送り速度vに適合させることによって、ワークピース12の表面20に噴射される流体18の為の最適化されたエネルギー入力が、つまり移動方向Xに沿って達成される。そのようなワークピース12の送り速度vに対するローターヘッド14の回転数の最適な適合は、図7aの噴射図に表されている。この噴射図は、ワークピース12の表面20の一部を上面図として示している。これに対して図7bはローターヘッド14の回転がワークピース12の送り速度vに最適に適合されていないものを示す。本発明によって、図7bに表されているような噴射図を避けることが可能である。
【0063】
上に図5と関連して既に説明したように、回転軸Rに対してより大きな半径方向の間隔を有する放射ノズル16から、より多くの体積流量Vの流体18がワークピース12に噴射されることによって、ワークピース12の移動方向Xに対する横断方向、つまりy方向でのエネルギー入力の最適化が図られる。それぞれ回転軸Rに対して異なる大きさの間隔を有する複数の放射ノズル16の異なる大きさの体積流量のそのような調整は、発明に係る装置10の製造において異なるノズルタイプが適切に選択されることによって保証される。
【0064】
補足的に、及び/又は代替的に、ワークピースがその移動方向Xを動かされる送り速度vもまた、制御されて、好ましくは閉ループ制御されて、例えば、ワークピース12の検出された表面、又はスケール除去品質に応じて、及び/又は制御装置22の要求に応じて調整されることが可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 装置
12 ワークピース
14 ローターヘッド
14.1 ローターヘッド装置
14.2 ローターヘッド装置
16 放射ノズル
16.1 放射ノズル
16.2 放射ノズル
16.3 放射ノズル
18 流体
20 表面
22 制御装置
24 高圧ポンプユニット
26 表面調査装置
28 ローターヘッド対
32 ローターモジュール対
α アプローチ角度
β 噴射角度
M 駆動手段
R 回転軸
S 噴射方向
S1 間隔
S2 間隔
S3 間隔
V1 体積流量
V2 体積流量
V3 体積流量
v 送り速度
X 移動方向
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7a-7b】