(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】体液中の被分析物のレベルを測定するための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 33/52 20060101AFI20220202BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20220202BHJP
G01N 21/78 20060101ALI20220202BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
G01N33/52 B
G01N33/483 C
G01N21/78 A
G01N21/27 B
(21)【出願番号】P 2018554004
(86)(22)【出願日】2017-04-13
(86)【国際出願番号】 EP2017059001
(87)【国際公開番号】W WO2017178621
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2019-01-08
(32)【優先日】2016-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518056520
【氏名又は名称】モーガン イノベーション アンド テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100207136
【氏名又は名称】藤原 有希
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,スーザン エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】クエスト,レベッカ ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】クエスト,ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】マグワイア,パトリック マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトヘッド,キャスリン ローラ
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-536465(JP,A)
【文献】特表2015-510118(JP,A)
【文献】特開2006-226865(JP,A)
【文献】特開2012-037432(JP,A)
【文献】特開2009-109384(JP,A)
【文献】特表2004-537712(JP,A)
【文献】特開2015-010943(JP,A)
【文献】特開2001-337087(JP,A)
【文献】特表2003-532896(JP,A)
【文献】特開2011-196825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0080548(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0350605(US,A1)
【文献】特表2015-501929(JP,A)
【文献】特表2006-527847(JP,A)
【文献】特表2004-534944(JP,A)
【文献】国際公開第2015/040190(WO,A1)
【文献】宮西加寿也ほか,当センターにおける妊娠中毒症の統計と診療の現況,大阪府立母子保健総合医療センター雑誌,1988年03月,Vol. 4, No. 1,pp. 1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における被分析物を試験する方法であって、
第1のサイトで、被分析物試験片上の着色試薬のデジタル画像を捕捉する工程であって、該着色試薬が、試験サンプル中の被分析物にしたがって発生したものであり、該デジタル画像が該着色試薬の画像および個体特異的情報を含む、工程、
第2のサイトである遠隔サイトのモニタリングステーションに該デジタル画像を通信する工程、
該試験片上の該着色試薬の該デジタル画像から得られた色情報を提供する工程、
該画像からの該色情報を被分析物レベルに変換する工程、
該被分析物レベルを該デジタル画像に含まれる該個体特異的情報に伴って記録する工程、
上記工程を繰り返して、異なる時刻で同一の該個体についての被分析物レベルの2つまたはそれ以上の記録を得る工程、および
疾患または状態の発症可能性の予測のために、該記録を集める工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記遠隔サイトのモニタリングステーションに通信される前記デジタル画像がカラーリファレンスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像からの色情報を被分析物レベルに変換する工程が、該画像からの色情報を事前の臨床試験の間に取得した画像から得られた色情報と比較することを含み、そして該事前の臨床試験の間に取得した画像から得られた色情報が、所与の被分析物のレベルにリンクされた、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記デジタル画像を加工して、該デジタル画像からの前記色情報を得る工程を包含する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、前記色情報の輝度、彩度、または輝度と彩度との両方に基づいて個体前記被分析物レベルを決定する工程を包含する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記比較を用いて高尿酸塩レベルの発生を同定する工程を包含する、請求項3
、あるいは、請求項3を引用する請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
胎児仮死のリスクの評価のためである、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
子癇前症のリスクの評価のためである、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記被分析物試験片上の着色試薬のデジタル画像が、唾液サンプルにおける被分析物のレベルを試験するためのデバイスから得られ、該デバイスが、
吸収材料のパッドが載置されている第1のアームと、
試験片を含む第2のアームであって、該試験片が、被分析物の存在にしたがって色を変化させることのできる指示薬を含む試薬部分を備える、アームと、
を備え、
該アームがヒンジによって接続されており、かつ該ヒンジ上で旋回されて該パッドを該試薬部分と接触させることができ、そして
該第2のアームが色較正アイコンを備える、
請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第2のアームがユーザ識別子を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試験片が取り外し可能なカセットに載置されている、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記パッドが交換可能である、請求項9から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記指示薬が被分析物の濃度にしたがって色の変化を発生させることができる、請求項9から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記パッドが、弾性の親水性発泡体で作られており、かつ1000μlまでの容量を有し、
該パッドの寸法が、その表の面の面積が前記試薬部分のものよりも大きくなるように該試薬部分よりも高さおよび幅が大きく、そして前記アームが前記ヒンジ上で旋回されて、該パッドの該表の面の周囲領域が前記試験片の該試薬部分を取り囲むとともに該パッドを該試薬部分と接触させることができ、そして
前記デバイスが平坦かつ細長く、かつ該デバイスを2つのヒンジセグメントに分けてヒンジ付けされており、そして該ヒンジの周囲の動きが、該2つのヒンジセグメントが互いの方に回転される際に該パッドが前記試薬部分と必然的に接触するように制限されている、請求項9から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
個体における被分析物について試験する方法であって、
(a)(i)個体からの唾液サンプルを、(ii)指示薬を含有する試験片から離れた位置にある吸収材料のパッド中に提供する工程であって、該指示薬が、被分析物の存在にしたがって色変化を発生させることができる、工程、
(b)該パッドを該試験片と接触させ、そして該パッド中の該唾液サンプルが該指示薬と組み合わせられかつ存在する場合は被分析物のレベルにしたがって色を発生するのに十分な時間、該パッドを該試験片と接触させて保持する工程、および
(c)該色変化に基づいて被分析物のレベルを決定する工程、
を含み、
該工程(c)が、被分析物のレベルに関する情報を遠隔サイトのモニタリングステーションに通信することを含み、そして
該通信された情報が、該試験片に含まれるかまたは該試験片における該色の画像から得られる色情報を含み、そして
該方法が、異なる時刻から取得された同一のユーザについての少なくとも5つの試験結果を保存し、そして疾患または状態の発症可能性の予測のために、これらを比較する追加の工程をさらに含む、
方法。
【請求項16】
前記指示薬が被分析物の濃度にしたがって色の変化を発生させることができる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、色の輝度、彩度、または輝度と彩度の両方に基づいて前記被分析物のレベルを決定する工程を含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
試験結果を比較して、高尿酸塩レベルの発生を同定する工程を含む、請求項15から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
以下のデバイス:
(a)吸収材料のパッドが載置されている第1のアーム、および
(b)試験片を含む第2のアームであって、該試験片が、被分析物の存在にしたがって色の変化を生じさせることのできる前記指示薬を含む試薬部分を含む、第2のアーム
を備え、
該アームがヒンジによって接続されており、かつ該ヒンジ上で旋回されて該パッドを該試薬部分と接触させることができ、そして
該第2のアームが色較正アイコンをさらに備える、
デバイスを用いて前記試験を行う工程を含む、請求項15から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記第2のアームが、ユーザ識別子を備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
胎児仮死のリスクの評価のためのものである、請求項15から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
子癇前症のリスクの評価のためのものである、請求項15から20のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体における(例えば、唾液中の)被分析物のレベルをモニタリングするための方法およびデバイスに関し、特に、手持ち式の採取および試験デバイス、ならびに被分析物のレベルの定量および試験結果の加工のための関連した方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
疾患の早期検出は、治療計画および予後において重要な役割を果たす。
【0003】
唾液は、生理学的状態のモニタリング、所与の疾患の発症可能性の予測、あるいは疾患の診断用のバイオマーカーとして作用し得る、存在する多くの分子(例えば、ホルモン、タンパク質および塩)のために、診断液として大きな可能性を有する。唾液コルチゾールレベルと副腎皮質の疾患との間の相関は、唾液尿酸レベルと通風および子癇前症(pre-eclampsia)の両方との間での相関を有するものとして留意されてきた。実際、妊娠中の尿酸レベルの上昇は、子癇前症の有用なバイオマーカーであるだけでなく、胎児仮死のバイオマーカーでもあり得る。
【0004】
臨床ツールとしての唾液の利点には、患者の協力のもとに非侵襲的に採取可能であり、しばしば分析に少量のみで足り、管理機関がそれをバイオハザードであると考えないため、容易に保存および輸送が可能であることである。これらの各局面から、診断試験の実施に伴う費用の低減に至る。さらに、唾液中の多くの分子のレベルは、血液中のレベルと十分に相関することが分かっている。
【0005】
唾液中の被分析物のレベルの測定のために、種々のキットが入手可能である。DiagnosTechsは、唾液サンプル中のプロゲステロンおよびエストラジオールのような種々のホルモンのレベルの測定のための家庭用試験キットを提供する。しかし、採取面のみが家庭で完了し、ユーザは、キットに提供されている採取バイアルに唾を出す必要がある。次いで、唾液サンプルが実験室に送付され、ELISAによって分析されるが、結果がユーザに発送される前の完了までに5~10営業日がかかる。
【0006】
ZRTは、唾液試験のための同様の家庭用試験キットを供給するが、このキットもまた、ユーザが採取チューブに唾を出し、唾液サンプルを分析のために送付する。サンプルの分析が完了すると、評価報告は5~7営業日内にユーザおよび/またはヘルスケア提供者に発送されるが、これは、この試験がすべて終わるまでに最大10日間かかることを意味する。唾液サンプルの供給と結果の取得との間の期間が、これらの唾液試験キットの著しい制限となる。
【0007】
採取および分析の両方を家庭で行う試験キットが入手可能である。米国特許第6623698号は、唾液モニタリングバイオセンサ電気歯ブラシを提供し、これは、採取と、唾液中の種々の被分析物のレベルの分析とを行う。歯ブラシのヘッドの毛の振動が、唾液の分泌および試験チャンネルへの蓄積を刺激する。試験チャンネルが唾液で満たされると、チャンネルのカバーが、チャンネルの開口部を横断して動いてチャンネルを閉じる。その時点で、試験試薬がチャンネルに放出され、所定の期間の後、チャンネル内のセンサが光学密度および/または電流レベルで読み取りを行い、これらは、唾液サンプル中の特定の被分析物の濃度を反映する。歯ブラシハンドル内部のマイクロプロセッサは、確立された閾値に対して新規なデータを比較し、そして歯ブラシハンドル上の表示ユニットがデータをユーザに提示する。デバイスが唾液中の種々の被分析物を測定する手段を提供するが、これは複雑な機器であるため、製造および購入ともに高価である。また、1)ユーザが歯肉過敏であって唾液とともにチャンネル内に少量の血液が入ってしまった場合、または2)試験チャンネルが試験間で十分に洗浄されていない場合は、試験中に汚染の危険性がある。
【0008】
欧州特許第1160571号は、体液中の尿酸濃度の検出に用いられる試験キットを提供し、この体液は唾液であり得る。検出方法は、尿酸塩によるリンタングステン酸アンモニウムの還元による青い複合体の生成に基づく。試験キットは、試薬部分を含む試験片と、試薬部分の色変化を決定するための手段(カラーカードまたは光度計の形態であり得る)とで構成される。カラーカードの場合、ユーザは「自己で診断」をする必要があり、これは、多くのユーザが望まないであろう負担をかける。記載のキットはまた、サンプル採取のための手段を提供しない。唾液試験のために、ユーザは、試験片上によだれを垂らす必要があり、これは見苦しく、冴えないものである。また、試験片上によだれを垂らすのに固有の問題があり、すなわち、唾液を試験試薬上に落とすことが困難であり、排出される唾液の容量を調節するのが困難である。最初に試験片上にユーザのよだれから少量のみの唾液が排出された場合、試験の読み出しに影響を与え得る手順の繰り返しを助長し得る。
【0009】
欧州特許第1160571号と同様に、CN102620953、WO2010/008989、WO2009/095826、WO2007/016866およびUS2003/175993は、家庭用の体液中の被分析物レベルの検出のための試験キットを提供し、この体液は唾液であり得る。しかし、それぞれユーザの自己診断に依存し、多くのユーザがそれを快適と感じるものではない。
【0010】
したがって、簡便で感度があり安価であり、かつ家庭での唾液の採取および分析の両方のための手段を提供し、好ましくは臨床医の関与を伴う、唾液試験デバイスの必要性が存在する。
【0011】
同様に、特により簡便な家庭用試験を提供するために、他の体液中の被分析物の試験を改善する、一般的な必要性もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
唾液試験のための代替のデバイス、特に、改善されたデバイスを提供することが本発明の目的である。関連した目的は、個人の健康のモニタリングおよび診断に有用な情報を提供するために、試験データの捕捉および加工のための代替の方法およびシステムを提供することである。関連した目的は、一般に体液分析のための代替の(好ましくは、改善された)方法およびデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、個体における被分析物について試験する方法を提供し、この方法は、以下を包含する:
被分析物試験片上の着色試薬のデジタル画像から得られた色情報を提供する工程であって、該着色試薬が、試験サンプル中の被分析物にしたがって生じたものである、工程、
該画像からの該色情報を被分析物レベルに変換する工程、
ユーザ特異的情報(例えば、QRコード)に伴って該被分析物レベルを記録する工程、
上記工程を繰り返し、異なる時刻での同一のユーザについての被分析物レベルの2つまたはそれ以上の記録を得る工程、および
個人の健康のモニタリングあるいは疾患または状態の発症可能性の予測あるいは疾患または状態の診断あるいは唾液中の被分析物の変動に伴う治療レジームのモニタリングのために、該記録を用いる工程。
【0014】
本発明はさらに、必要に応じて上記方法と合わせて用いられる、唾液サンプル中の被分析物のレベルを試験するためのデバイスを提供する。このデバイスは、以下:
吸収材料のパッドが載置されている第1のアーム、および
試験片を含む第2のアームであって、該試験片が、被分析物の存在にしたがって色を変化させることのできる指示薬を含む試薬部分を含む、第2のアーム、
を備え、
該アームは、ヒンジによって接続され、かつ該ヒンジ上で旋回されて該パッドを該試薬部分と接触させることができる。
【0015】
本発明のさらなる方法は、必要に応じて上記デバイスおよび方法と合わせて使用され、個体における被分析物について試験するための方法であり、以下を包含する:
(a)(i)個体からの唾液サンプルを、(ii)指示薬を含む試験片から離れた位置にある吸収材料のパッド中に提供する工程であって、該指示薬が、被分析物の存在にしたがって色変化を発生し得る、工程、
(b)該パッドを該試験片と接触させ、そして該パッド中の唾液が該指示薬と組み合わされて、存在する場合は被分析物のレベルにしたがって色を発生するのに十分な時間、該パッドを該試験片と接触させて保持する工程、および
(c)該色変化に基づいて被分析物のレベルを決定する工程。
【0016】
本デバイスおよび方法は、個人の健康のモニタリングあるいは疾患の発症可能性の予測あるいは疾患または状態の診断(唾液中に存在する被分析物のレベルの変動に伴う)において、あるいは唾液中に存在する被分析物のレベルの変動に伴う治療レジームのモニタリングにおいて、適切に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1のデバイスの正面の模式図である。
【
図4】閉じた位置での
図1のデバイスの模式図である。
【
図5】
図1のデバイスが閉じた位置にあるとき、パッドと試験片との間の相互作用の模式拡大図である。
【
図6】本発明の第2のデバイスの正面の模式図である。
【
図7】閉じた位置での
図6のデバイスの模式図である。
【
図8】試験片を保有する
図6のデバイスの第2のアームの背面の模式図である。
【
図9】本発明の第3のデバイスの第1のアームの模式図である。
【
図10】
図9のデバイスの第2のアームの背面の模式図である。
【
図11】デジタル画像捕捉および通信プロセスに関与する工程、すなわち、ユーザのスマートフォン上のアプリ実行により完了する工程を示す決定ツリーである。
【
図12】試験片中の着色試薬のデジタル画像の加工に関与する工程を示す決定ツリーである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書中、必要に応じたおよび好ましい特徴と共に、そして以下に記載の3つの特定の実施形態において記載のように、唾液被分析物のレベルを試験するための本発明のデバイスは、以下:
吸収材料のパッドが載置されている第1のアーム、および
試験片を含む第2のアームであって、該試験片が、被分析物の存在にしたがって色を変化させることのできる指示薬を含む試薬部分を含む、第2のアーム、
を備え、
該アームがヒンジによって接続されており、かつ該ヒンジ上で旋回されて該パッドを該試薬部分と接触させることができる。
【0019】
これは、パッド中の唾液と反応部分中の化学試薬との間の反応を可能にする。典型的には、アームは、ヒンジによって接続されており、そして該ヒンジ上で旋回または回転されて該パッドを反応部分と接触させることができる。
【0020】
したがって、パッド(使用中に唾液を染み込ませる)および試薬部分は間隔をあけて分けられ、試験を行うのに十分な容量の唾液があるとユーザが決定するときにのみ一緒にされる。試験の実施は、接触時間が測定されることを要する。この場合、アームが引き離され、次いでユーザがタイマーの準備ができた際に接触がなされ得る。本明細書中の他の部分に記載のデバイスの使用の際に、1~20秒単位の接触時間が有効であり、またいくつかの特定の例では、約3~5秒である。
【0021】
好ましいデバイスでは、ヒンジ周囲の動きは、2つのアームが互いに対して回転される際にパッドが必然的に試薬部分と接触するように制限されている。このことによりデバイスの取り扱いを容易にし、試験の際の患者のエラーの減少に役立つ。一般には、デバイスは平坦かつ細長く、デバイスを2つのセグメントに分けてヒンジ付けされており、いくつかの実施形態では、2つのセグメントは長さが等しいが、別の実施形態では非対称である。2つのセグメントは、一緒に折りたたまれてまとまった1つのユニットを形成し、片手で容易に一緒に保持される。
【0022】
第2のアームは半透明窓を含み得、試験片が、この窓と一直線に並んで第2のアームの表の面上に配置される。次いで、試薬部分における色変化は、第2のアームの裏の面から窓を通じて視認可能である。したがって、色の点検は、折りたたんだデバイスを再度開くことなく行われ得る。窓は、好ましくは、実質的に透明であり、透明なプラスチックまたはガラスが適切な材料である。第2のアームは、半透明(好ましくは実質的に透明)の材料から作られ得、これにより、裏からの観察を可能とする。
【0023】
好ましい実施形態では、試験片は薄くかつ平坦である。通常、実質的に平面状である。約0.5mmまでの厚さの細片が特に適しており、好ましくは約0.3mmまでである。唾液中の尿酸塩の濃度を我々が試験した例では、我々は、約0.15mmの厚さの細片を用いて、発生した色が、その細片材料中の新らに形成した化学物質によって、試験片の全面で急速に視認可能であることを見出した。したがって、試験片の色のアウトプットを表(パッドと接触する表面を意味する)または裏(例えば、オプションの窓を通じて、または第2のアームが半透明または透明の場合)から迅速かつ容易に読み取ることができる。吸収紙(例えば、セルロース濾紙)を細片に用いたが、この材料は重要ではない。試薬の化学物質は他のところで取り扱うが、唾液に存在する所与の被分析物の濃度と相関する色変化が生じれば、このような化学物質は重要ではない。この文脈において、色変化は、検出可能な色の発生、色の獲得および色の喪失を包含する。試験片は、種々の寸法であり得る。以下に記載の実施形態1のデバイスは、約10mm×5mm(すなわち、50mm2面積)の試験片を有し、そして以下に記載の実施形態2および3のデバイスは、約10mm×10mm(すなわち、100mm2面積)の試験片を有する。
【0024】
パッドは、一般に、任意の適した吸収材料から作られる。使用時、我々は弾性発泡体、好ましくは親水性発泡体を用いて良好な結果を見出した。材料は、唾液を吸収し、試薬部分に対してプレスされたときにそれを放出すべきである。オープンセル発泡体もまた好ましく、特に小セル発泡体が好ましい。以下により詳細に記載の実施形態1では、Capu-Cell(登録商標)中密度発泡体を用いた。これは、半閉鎖式セル(すなわち、部分的に開放したセル)の親水性ウレタン発泡体である。以下により詳細に記載の実施形態2および3では、PureSorbTM Foam Wiperを用いた。これは、親水性ポリウレタン発泡体である。
【0025】
パッドが大きすぎないことおよび/またはそれが保持する唾液の容量が多すぎないこともまた、好ましい。先行技術の試験は、高い唾液容量が必要なことに起因して失敗しているので、本発明は、その問題および関連した問題を回避することを求める。適切には、パッドの表の面は、約600mm2までの面積、より適切には、約500mm2までの面積、より適切には、約400mm2または300mm2までの面積を有する。実施形態1のデバイスは、10mm×20mm、すなわち200mm2の面積のパッドを有する。以下により詳細に記載の実施形態2および3のデバイスは、200~300mm2の間の面積の六角形のパッドを有する。パッドは、限定された容量、特に約1000μlまで、または約500μlまで、好ましくは350μlまで、より好ましくは250μlまでまたは200μlまでの容量を有することが好ましい。我々が見出したのは、より小さなパッドであることにより、患者のコンプライアンスがより良好となり、より信頼性のある試験となり失敗が少なくなることである。試験において、いくつかのより大きなパッド(約400μlのパッド)が首尾よく用いられた。それとは別に、パッドは、最小容量、必要に応じて約50~100μlの最小容量を有するべきである。
【0026】
パッドは交換可能であり得る。パッドは、デバイスの第1のアームに開放可能に取り付けられ得るか、または代替的に、第1のアームは、パッドを含む取り外し可能なヘッド部分を含み得る。以下に詳細に記載の実施例1において、パッドを含むヘッド部分は、使用毎に交換される。
【0027】
デバイスは、クリップまたはロック配置(必要に応じて開放可能である)を備え得る。これは、第1のアームと第2のアームとを接触させる際に係合され、かつパッドが試薬部分上にプレスされるとともにこれらのアームを一緒に保持することができる。一旦パッドが試薬部分に触れると、クリップがそれをそこで留めるために用いられ得る(例えば、ユーザが、色を評価する準備ができるまで反応時間を計る間)。クリップは、典型的には、表からの試薬部分の点検を可能とするために、パッドを試薬部分から分離するように開放することができる。窓がある場合、または第2のアームが半透明または透明である場合、裏から点検ができるのでこれは必要ではない。
【0028】
試験片上のパッドおよび試薬部分のそれぞれのサイズに注意して、改善された結果が得られる。したがって、好ましい実施形態では、パッドおよび試薬部分のそれぞれは、アームがヒンジ上で旋回されて試薬部分の前方面全体をパッドと接触させることができるような寸法である。これは、試薬部分中の実質的に全ての試薬が、唾液に直接接触することを確実にする。唾液は、いかなる程度も試薬部分の材料を通り抜けて脇に流れることなく、試験片の平面に直行して流れる。
【0029】
さらに好ましくは、パッドの表の面の面積が試薬部分のものよりも少なくともわずかに大きく、そしてアームがヒンジ上で旋回されて、パッドの表の面が試薬部分と接触しかつ試薬部分を取り囲むとともにパッドを試薬部分と接触させることができる。
【0030】
パッドの寸法が、その表の面の面積が試薬部分の面積より大きくなるように試薬部分のものよりも高さおよび幅が大きいデバイスがより好ましく、そしてアームがヒンジ上で旋回されて、パッドの表の周囲領域が試験片の試薬部分を取り囲むとともにパッドを試薬部分と接触させることができる。パッド材料は弾性であり、したがって、浅いチャンネル内に(例えば、第2のアーム内に組み込まれるか、または第2のアーム上の受容ソケットに挿入されるカセット中に組み込まれる)、または実質的に平坦なデバイス表面の上にあってこれと並んで、またはわずかにずれて(proud of)設けられた薄い試験片に対してプレスされると、表のパッド表面のインナー部分が圧縮されるのに対し、周辺のパッド材料はほとんどまたは全く圧縮されずに試験片の周囲のデバイス表面と接触する。これは、実施例の第1の特定の実施形態に示される。実施例の第1の実施形態では、パッドおよび試験片の両方とも長方形であるが、パッドが試験片の試薬部分の周囲にあることができる限り、この局面において形状は重要ではない(どんな形状でもよい)。例えば、円形または楕円のパッドおよび試薬部分、あるいは六角形のパッドもまた適切である。唾液含有パッドによる試薬部分の「周囲」の係合は、信頼性のあるエラーのない試験となる助けとなる。
【0031】
デバイスは、試験片に近接して色較正アイコン(例えば、CMYK(シアン、マゼンダ、イエローおよびブラック)アイコン)を適切に備える。窓があるか、または第2のアームが半透明もしくは透明である場合、色較正アイコンは、デバイスの第2のアームの背面から見られ得る。色較正アイコンが存在することにより、色較正アイコンの隣の試験片上の着色試薬の画像を評価することができ、異なる照明条件で行うことおよびそれによりエラーまたは他の変動が生じることを減じることを可能とする。カメラ(例えば、スマートフォン上)が用いられる場合(必要に応じてフラッシュとともに)、したがって、捕捉した画像は、比較目的の色較正アイコンの隣に試験から新たに発生した色を含み得る。デバイスは、別途または追加して、1つまたはそれ以上の事前印刷した色標準を含み、これは、異なる被分析物(例えば、尿酸塩)レベルを示し、試験片に隣接して配置される。試験の評価は、次いで、1つまたはそれ以上の標準の隣の色変化を評価することを包含する。窓があるか、または第2のアームが半透明もしくは透明である場合、色標準は、デバイスの第2のアームの背面から見られ得る。
【0032】
唾液サンプル中尿酸のレベルを試験するためにつくられた一連のデバイスには、3つの色標準が提供され、これらは、唾液中尿酸の低レベル、中レベルおよび高レベルを各々示す。
【0033】
デバイスは、ユーザ識別子(例えば、QRコード)を適切に含む。窓があるか、または第2のアームが半透明もしくは透明である場合、ユーザ識別子は、デバイスの第2のアームの背面から見られ得る。ユーザ識別子があることにより、試験片上の着色試薬が、試験片のデジタル画像を取得し、そしてそれを分析のための遠隔モニタリングステーションに送信することにより分析されるとき、試験結果はユーザ識別子とともに保存され得る。特に、ユーザ識別子は好ましくは個人情報を含まず、よって、画像は秘匿下で遠隔モニタリングステーションに送信され得る。
【0034】
試験片を構成する試薬の化学物質は、特に、本発明の特徴ではない。それにもかかわらず、指示薬が、唾液中に存在する所与の被分析物の濃度にしたがって色変化を発生することができることが好ましい。本発明に用いるのに適した化学物質の具体例は、US6699720に記載されている。
【0035】
本発明の特定の好ましい例において、デバイスは、携帯可能でありかつ手持ち式である。このことは、このデバイスの家庭での使用を容易にする。以下の実施例により詳細に記載する第1の特定の実施形態では、以下のようなデバイスが提供される:パッドが、弾性の親水性発泡体で作られており、かつ約600μlまでの体積を有し、当該パッドの寸法は、その表の面の面積が試薬部分のものよりも大きくなるように試薬部分よりも高さおよび幅が大きく、そしてアームがヒンジ上で旋回され、パッドの表の周辺領域が試験片上の試薬部分を取り囲むとともにパッドを試薬部分と接触させることができ、そしてデバイスは平坦かつ細長く、そしてデバイスを2つのセグメントに分けてヒンジ付けされており、そしてヒンジ周囲の動きは、これらの2つのセグメントが互いの方に回転される際にパッドが試薬部分と必然的に接触するように制限されている。
【0036】
また、本発明によって、必要に応じてデバイスを用いる、試験方法が提供される。したがって、唾液のサンプル中の所与の被分析物についての試験方法は、以下を包含する:
(a)(i)唾液サンプルを、(ii)指示薬を含む試験片から離れた位置にある吸収材料のパッド中に提供する工程であって、該指示薬が、所与の被分析物の存在にしたがって色変化を発生させることができる、工程、
(b)該パッドを該試験片と接触させ、そして該パッド中の唾液が該指示薬と組み合わせられかつ所与の被分析物の濃度にしたがって色変化を発生するのに十分な時間、該パッドを該試験片と接触させて保持する工程、および
(c)該色変化に基づいて所与の被分析物のレベルを決定する工程。
【0037】
この方法は、種々のモニタリングおよび診断用途において用いられ得る。典型的な方法は、異なる時刻で取得した同一のユーザについての複数の試験結果を保存する工程、および、個人の健康のモニタリングあるいは状態の発症可能性の予測あるいは唾液中に存在する所与の被分析物のレベルの変動に伴う治療レジームのモニタリングあるいは疾患または状態の診断のために、これらを比較する工程を含む。例として、被分析物が尿酸である場合、この方法は、胎児仮死の診断、子癇前症の発症可能性の予測、または治療(例えば、通風の治療)に対する患者応答のモニタリングのために用いられ得る。
【0038】
子癇前症の発症可能性の予測に関して、1つの臨床上重要な事象は、高尿酸レベルである。特に、中または低の読み取り値の期間の後に高尿酸レベルの読み取り値が繰り返されることである。反復した試験を伴う方法の使用は、尿酸レベルにおけるこのような変動のモニタリングを可能とする。治療モニタリングに関して、通風の治療を例にとると、より低い尿酸レベルへの治療は異なる患者で異なる効果を有し得、そして家庭で実施し得る迅速かつ簡便な試験が患者の自己試験を可能とする。投薬する医薬を増大するかまたは減らす必要がある場合、これは、反復した試験の結果から明らかとなる。
【0039】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、方法は、唾液中に存在する所与の被分析物のレベルに関する情報を、遠隔サイトのモニタリングステーションに通信する工程を包含する。適切には、通信される情報は、試験片上の色変化の画像に含まれるかまたは画像から得られる色情報を含む。カメラ(例えば、スマートフォンのカメラ)で撮影された試薬部分の単純な写真が、例えば、電子メールまたはメッセージサービスによって、遠隔モニタリングステーションに電子的に通信され得る。
【0040】
唾液中に存在する所与の被分析物の濃度の評価は、好ましくは、色の輝度、彩度または輝度と彩度との両方に基づいてレベルを決定することを包含する。これは、施設が存在する場所(すなわち、ユーザの典型的な家庭での試験地から離れた場所)で、より良好に実施される。特定の読み取りの発生を同定するために複数の試験結果を比較することが好ましく、そしてこれは、局所的に行われ得る方法と、試験のデジタル情報が通信されると遠隔で実施され得る分析との組み合わせにより促進される。
【0041】
本発明の試験方法は、好ましくは、本発明のデバイスを用いて実施される。したがって、これらの方法は、以下の試験デバイスを用いて試験を実施する工程を包含する。この試験デバイスは、以下:
(a)吸収材料のパッドが載置されている第1のアーム、および
(b)試験片を含む第2のアームであって、該試験片が、被分析物の存在にしたがって色を変化させることができる指示薬を含む試薬部分を含む、第2のアーム、
を備え、
該アームがヒンジによって接続されており、かつ該ヒンジ上で旋回されて該パッドを該試薬部分と接触させることができる。
【0042】
他に記載のように、第2のアームは透明な窓を備え得、試験片は、第2のアームの表の面の上に第2のアームの表面と並んでかまたはわずかにずれて、あるいは、第2のアームに組み込まれ得るかまたは第2のアーム内の受容ソケットに挿入されるカセット内に保持され得る浅いチャンネル内に配置され得、そして試薬部分で発生した色は、窓を通じて裏の面から視認可能であり、そしてこの方法は、次いで窓を通じて色を点検する工程を包含し得る。
【0043】
実施形態では、パッドは、親水性の弾性発泡体を含み得、パッドの表の面の面積は、試薬部分のものよりも少なくともわずかに大きく、そしてこの方法は、アームを旋回させて、パッドの表が試薬部分と接触しかつ該試薬部分を取り囲むとともにパッドを試薬部分と接触させる工程を包含する。
【0044】
デバイスは、必要に応じて開放可能であるクリップまたはロック配置を備え得、これは、該パッドが試薬部分上でプレスされるとともに、これらのアームを一緒に保持することができる;この方法は、クリップがこれらのアームを係合して一緒に保持するまで、第1のアームおよび第2のアームを一緒にすることを包含し得る。デバイスは平坦かつ細長いものであり得、そしてデバイスを2つのセグメントに分けてヒンジ付けられ得、そしてヒンジ周囲の動きは、この2つのセグメントが互いに対して回転される際にパッドが試薬部分と必然的に接触するように制限され得る。デバイスの第2のアームは、1つまたはそれ以上の事前印刷した色標準を含み得、これは、唾液中に存在する所与の被分析物の異なるレベルを示し、試験片に隣接して配置される。第2のアームはまた、色較正アイコン(例えば、CMYKアイコン)および/またはユーザ識別子を備え得る。デバイスが窓を備える場合、この方法は、窓を通じて色の画像を取得する工程を包含し得る。デバイスが、色較正アイコンおよび/またはユーザ識別子を備える場合、この方法は、窓を通じて色較正アイコンおよび/またはユーザ識別子と組み合わせて色試薬の画像を取得する工程を包含し得る。
【0045】
必要に応じて上記ユーザ試験方法および/またはデバイスと組み合わせて用いられる、関連した方法は、色分析を実施する。この方法は、相応してプログラムされたコンピュータによって実施され得、そして、必要に応じて、ある位置にあるコンピュータ(特に、スマートフォンのような)と遠隔位置にある第2のデバイス(典型的はコンピュータを含む)との組み合わせにより実施され得る。
【0046】
このような唾液のサンプル中の所与の被分析物のレベルを試験する方法は、以下を包含する:
被分析物試験片上の着色試薬のデジタル画像から得られた色情報を提供する工程であって、該着色試薬が、試験サンプル中の被分析物に従って発生したものである、工程、
該画像からの該色情報を被分析物レベルに変換する工程、
ユーザ特異的情報(例えば、QRコード)に伴って該被分析物レベルを記録する工程、
上記工程を繰り返し、異なる時刻での同一のユーザについての被分析物レベルの2つまたはそれ以上の記録を得る工程、および
個人の健康のモニタリングあるいは疾患または状態の発症可能性の予測あるいは疾患または状態の診断あるいは唾液中の被分析物の変動に伴う治療レジームのモニタリングのために、該記録を用いる工程。
【0047】
好ましくは、この方法は、異なる試験時刻の同一のユーザについての所与の被分析物の濃度の2つまたはそれ以上の記録、より好ましくは3つまたはそれ以上、より好ましくは5つまたはそれ以上の記録を得ることを含む。これは、経時的な被分析物レベルの傾向のモニタリングを可能とする。
【0048】
色情報は、デジタルカメラ(特に、スマートフォンのカメラ)を用いて容易に取得される。デジタル画像中のデータ(すなわち、色情報)は、例えば、アプリ(直接に被分析物測定を生じる)を用いて、スマートフォンにより加工され得る。あるいは、データは、遠隔加工のために、必要に応じてユーザのスマートフォンで実行されるアプリを介して、通信され得る。好ましい方法は、試験後の試験片のデジタル画像を捕捉する工程(例えば、スマートフォンを用いて被分析物試験片上の着色試薬の写真を撮影することにより)、デジタル画像を第2の遠隔サイトのモニタリングステーションに通信する工程、および色情報をモニタリングステーションで読み取り値(例えば、濃度)に変換する工程を包含する。これは、アップデートされなかったスマートフォンによるデータ加工におけるエラーを回避する。デジタル画像は、色情報を取得するために加工されてもよく、または色情報は、デジタル画像から直接取得されてもよい。
【0049】
実施形態では、方法は、手持ち式のコンピュータデバイス(特に、スマートフォン)上で実行されるプログラムによって実施される。このプログラムを、アプリと称する。アプリは、いったん起動されると、種々の他の工程を含み得る。このような工程は以下の1つまたはそれ以上または全てである:
1.パッドが試薬部分と接触する適切な時間の間隔をカウントし、この間隔が満了するとアラームを鳴らす;
2.手持ち式デバイスカメラが試薬部分から適切な距離にあるか(すなわち、近すぎず遠すぎず)を評価する;
3.照明条件(lighting conditions)が受容可能な境界内にあることを確実にする(例えば、画像の捕捉のためにフラッシュのスイッチを入れる);
4.試薬部分または試験片または試験デバイス上の表面または他の特徴を同定する(試薬部分の画像が捕捉されつつあることを確認する);
5.色情報を含むか、そこから色情報が導き出され得る画像中の領域を同定する;
6.色情報をユーザ識別子とリンクする;
7.ユーザ識別子に伴って色情報を遠隔モニタリングステーションに通信する。
【0050】
唾液中の所与の被分析物のレベルを試験するための本発明の特定の方法は、以下のようにアプリを用いて行われる。ユーザはアプリを起動し、アプリは、ユーザが試験の実施を望むことを示す入力を待つ。デバイスが、ユーザ識別子(例えば、QRコード)を備える場合、入力は、ユーザ識別子の読み取りの成功であり得る。これが完了すると、アプリは、ユーザに対し、デバイスの第1のアームのパッドを含む部分を口内に入れるように指示する。ユーザの入力の際にタイマーが開始し、所定の期限(通常、30秒)の満了時に、アプリは、ユーザに対し、口からパッドを取り出して、唾液を含んだパッドが試験片と接触するようにデバイスを閉めるよう、指示を発する。ユーザの入力の際に時間が開始し、所定の期限(通常、3~5秒)の満了時に、アプリは、ユーザに対し、デバイスを開けるように指示を発する。この時点でカメラビューが出現し、アプリは、ユーザに対し、試験片と存在する場合はユーザ識別子および/または色較正アイコンとが見えるように試験片上の着色試薬の上にカメラを配置するよう、指示を発する。次いで、アプリは、ユーザに対し、写真を撮るよう指示する。写真が撮影されると、アプリは、色情報が被分析物レベルに変換される遠隔モニタリングステーション(遠隔サイトとも称される)にそれを通信する。他の中間工程もまた含まれ得る(例えば、ユーザに対し、失敗したと思われる工程を繰り返すよう促す)。唾液サンプルは、好ましくは、ユーザ識別子および/または色較正アイコンをそれらが試験片のデジタル画像内に含まれ得るように備えるデバイスを用いて取得される。また、プログラムが、試験成功の既定の基準(例えば、色が発生した)に合うことを確実にするように画像を加工する中間工程を実施し得ると、ユーザ識別情報が画像から読み取られ得る。画像がこの工程を失敗した場合、プログラムは再試験を指示し得る。
【0051】
被分析物の濃度を決定するために、方法は、色の輝度、彩度または輝度と彩度との両方に基づいてそれを行い得る。臨床試験から取得されたデータは、参照テーブルを事前入力されることを可能とし、そして入ってくる結果が即時にレベルに変換され得る。レベルは、アッセイの特性に基づき、バイナリー(例えば、あり/なし)、半定量(例えば、低、中および高)または定量式で報告され得る。あるいは、結果は、1つより多い手段で報告され得る(すなわち、絶対測定値とこの絶対測定値が入るバンド)。ユーザの方法と同様に、被分析物は、典型的には、複数の試験結果(例えば、同一のユーザについての異なる時刻で取得された少なくとも5つの試験結果)を保存して、これらを比較することを包含する。上記方法の明らかな利点は、間接的ではあるが診断が臨床医からの入力で行われることである。
【0052】
典型的には、デジタル画像は、アプリを介して受容され、そしてデータノイズの除去ために前処理される。次いで、色空間の特徴抽出が行われる。種々の色モデルが用いられ得、これらには、HSV(色相、彩度、明度)、L*A*B(輝度(L)および二色チャンネル(a&b)、YCbCr(輝度成分(Y)およびクロミナンス-ブルー(Cb)およびクロミナンス-レッド(Cr))、ならびにCIE1931が含まれる。色空間の特徴抽出の結果は、特定被分析物レベルとリンクされた、臨床試験中に取得された画像に由来するデータポイントを用いて事前入力された特徴空間プロット上にプロットされる。被分析物レベルは、低、中または高のようなカテゴリーにグループ分けされたものであり得る。次いで、サンプルを分類するためにk近傍法(k-NN)が用いられる。サンプルが分類されると、結果が、ユーザ識別子および日時と一緒に保存される。傾向(trending)アルゴリズムは、増加した被分析物レベルの事例(instances)についてモニタリングする。事例が発生すると、モニタリングプラットフォームは臨床医にアラートを送信し、臨床医は、患者の記録を用いてユーザ識別子を患者とリンクし、そして慣行に従って行動し得る。
【0053】
唾液中の所与の被分析物のレベルを試験するための本発明のさらなる特定の方法は、以下に記載のような近位および遠位の工程を含む:診断に有用な被分析物レベルの評価を生じ、そして好ましくは、被分析物レベルが経時的にそのアラート基準(例えば、患者に危険性があることを示す)に合う場合にアラートを発生する。これらの工程は、以下を包含する:
色変化が唾液サンプル中の被分析物の濃度に応じて生じた場合に、試験片のデジタル画像から得られた色情報を提供する工程、
該デジタル画像からの該色情報を濃度に変換する工程、
試験時間での濃度の新たな記録を保存し、そして以前の記録が保存されている場合はこの新たな記録をその以前に保存した記録、または2つまたはそれ以上の記録のセットの中の記録と合わせる工程、および
生理状態または所与の疾患発症可能性の予測あるいは疾患または状態の診断あるいは唾液中に存在する被分析物のレベルの変動に伴う治療レジームのモニタリングのために、該記録を用いる工程。
【0054】
デジタル画像は、好都合には、患者にとって近位で、かつ好ましくは患者自身によって(例えば、試験片のデジタル写真の撮影により)獲得される。近位のデバイス(例えば、スマートフォンまたはコンピュータ(ラップトップ、デスクトップ、タブレットなどを含む))上でのコンピュータプログラムの実行は、デジタル画像を捕捉し、そしてこのデジタル画像または色情報を遠位サイトに送信するのに有利に用いられ得る。
【0055】
有利には、色情報の加工(例えば、色情報の被分析物濃度への変換)が、遠位で実施される。
【0056】
プログラムが用いられる場合、ユーザは、プログラムを開始するかまたは他の方法で起動させ得る。そしてプログラムは、ユーザが試験を実行することを望むことを示す入力を待つ。ポジティブな入力を受容した後、プログラムは、所定期間の間タイマーを実行し、満了時には、期間が満了したことを警告するアラートを発する。この期間の間、ユーザは、唾液サンプルを入手中であることが意図される。次いで、プログラムは、ユーザが試験の次の部に進むことを望むことを示すさらなる入力を待つ。ポジティブな入力を受容した後、プログラムは、第2の所定期間の間第2のタイマーを実行し、満了時には、期間が満了したことを警告するアラートを発する。この期間の間、ユーザは、試験片に唾液サンプルを移す(それにより色変化がサンプル中の被分析物に応じて生じ得る)ことが意図される。次いで、プログラムは、試験片のデジタル画像が捕捉され得ることを示すさらなる入力を待ち、そしてポジティブな入力が受容されたら画像を捕捉する。ユーザは、試験片画像(存在する場合、ユーザに特異的な情報、およびさらに存在する場合、カラーリファレンス情報を含む)を捕捉するのに適した位置にカメラを配置することが意図される-1つのデジタル画像が、少なくとも試験片およびユーザ識別子を含むことが好ましく、カラーリファレンスもまた含むことがより好ましい。プログラムは、画像を捕捉し、加工のためにそれを遠隔位置(また遠隔サイトともいう)に通信する。他の中間工程もまた含まれてもよく、例えば、ユーザがその所与の時間にとることが意図される動作に関するユーザへの明確な指示、および失敗したと思われる工程を繰り返すことを促すことを含む。唾液サンプルは、好ましくは、ユーザ識別子および/またはカラーリファレンス(これらは、試験片のデジタル画像に含まれ得る)を含むデバイスを用いて取得される。
【0057】
プログラムは、それが試験成功の所定の基準(例えば、色が生じたこと)を満たすことを確実にするように画像の加工の中間工程を実施し得る。そしてユーザ識別情報は、画像から読み取られ得る。画像がこの工程を失敗した場合、プログラムは再試験を指示し得る。
【0058】
遠位サイトでの加工は、好ましくは、所定のシリーズの可能性のある試験結果に従って試験を分類すること、および異なる時刻での同一のユーザについての試験結果がモニタリング目的に用いられ得るように、ユーザ識別情報および時間情報に伴って出力結果を保存することを含む。デジタル画像中のカラーリファレンスの存在は、分類の助けとなる。代表的には、出力結果は、被分析物の濃度レベル、例えば2つのバンドの一方:例えば、高または低濃度、あるいは3つのバンドの1つ:例えば、高、中または低濃度、である。バンドの数はより多くてもよい。それらは、その結果の臨床医の使用の助けとなる所与のラベル(例えば、リスクバンド、低リスクバンドおよび同様)であり得る。出力結果は、絶対測定を含み得、またそバンドへのその分類もまた含み得る。
【0059】
このデジタル加工は、好ましくは、デジタル画像の受容を留意すること、および色情報(例えば、試験が実行されたことを確認するため)およびユーザ識別情報を含む画像を確認する工程を実施することを含む。一般に、ユーザ識別子がなければ、その画像は用いることができず、却下される。加工は、好ましくは、被分析物濃度を決定すること、これをユーザ識別情報に伴って保存すること、異なる時点で同一のユーザについての異なる濃度を検討すること、およびそれに基づく診断工程を実施することを含む。診断は、適切には、アラートを発生させるかどうかを決定する。特定の実施形態では、アラートを発生させるか、その場合どのアラートを発生させるかを決定するために、結果に対してアルゴリズムが適用される。
【0060】
次いで、このアラートは、一般には、臨床医に向けられ、ユーザ識別情報を含む。臨床医は、アラートを患者にリンクし(典型的には患者記録によって)、そして局所の臨床実務に従って患者のアラートを加工するために、その識別情報を使用し得る。デジタル加工サイトで、ユーザ識別子を患者と接続するのに不十分なデータがあることが好ましく、これにより、遠隔加工サイトでは患者の秘匿性を維持する。
【0061】
さらなる関連した局面では、本発明は、より一般的には、体液中の被分析物レベルの試験に拡張する。これらは、例えば、血液、血清、尿および唾液を含み得る。したがって、本発明はまた、体液サンプル中の被分析物のレベルの試験のためのデバイスを提供し、これは、以下:
吸収材料のパッドが載置されている第1のアーム、および
試験片を含む第2のアームであって、該試験片が、被分析物の存在にしたがって色を変化させることができる指示薬を含む試薬部分を含む、第2のアーム、
を備え、
該アームがヒンジによって接続されており、かつ該ヒンジ上で旋回されて該パッドを該試薬部分と接触させることができる。
【0062】
本発明のこの局面の方法(必要に応じて上記デバイスを用いる)は、体液サンプル中の被分析物のレベルを試験するための方法であり、この方法は、以下を包含する:
(a)(i)体液サンプルを、(ii)指示薬を含む試験片から離れた位置にある吸収材料のパッド中に提供する工程であって、該指示薬が、所与の被分析物の存在にしたがって色変化を発生することができる、工程、
(b)該パッドを該試験片と接触させ、そして該パッド中の体液が該指示薬と組み合わされて所与の被分析物の存在にしたがって色変化を発生するのに十分な時間、該パッドを該試験片と接触させて保持する工程、および
(c)該色変化に基づいて体液中の所与の被分析物のレベルを決定する工程。
【0063】
体液サンプル中の所与の被分析物のレベルを試験するための、本発明のこの局面のさらなる方法は、必要に応じて、上記方法から生じた情報を用いて、以下の工程を包含する:
被分析物試験片上の着色試薬のデジタル画像から取得された色情報を提供する工程であって、該着色試薬が、試験サンプル中の被分析物に従って発生したものである、工程、
該画像からの色情報を被分析物レベルに変換する工程、
ユーザ特異的情報(例えば、QRコード)に伴って被分析物レベルを記録する工程、
上記工程を繰り返し、異なる時刻での同一のユーザについての被分析物レベルの2つまたはそれ以上の記録を取得する工程、および
個人の健康のモニタリングあるいは疾患または状態の発症可能性の予測あるいは疾患または状態の診断あるいは体液中に存在する被分析物のレベルの変動に伴う治療レジームのモニタリングのために、該記録を用いる工程。
【0064】
デバイスおよび方法は、個人の健康のモニタリングあるいは疾患の発症可能性の予測あるいは疾患または状態の診断(体液中に存在する被分析物のレベルの変動に伴う)において、あるいは体液中に存在する被分析物のレベルの変動に伴う治療レジームのモニタリングにおいて適切に適用される。
【0065】
唾液の試験に関する本発明の選択的および好ましい特徴は、一般に体液の試験に関するすぐ上の局面の対応する選択的および好ましい特徴を提供する。
【0066】
本発明を、特定の実施形態および添付の図面を参照して、より詳細に記載する。
【0067】
図1~5を参照すると、唾液中に存在する所与の被分析物のレベルを試験するためのデバイスの第1の実施形態(10として大まかに示す)は、2つのアーム(第1のアーム12および第2のアーム14)を備え、これらのアームは、ヒンジ15を介して一方の端部で接続され、このヒンジにより、これらの2つのアームが一緒に折りたたまれる。これらのアームの各々のヒンジの周囲の回転は、180°に限定される。完全に開いた平坦なデバイスが
図1および2に示される。2つのアームは、その他方の端部にクリップまたは開放可能なロック配置が提供され、この配置は、第1のアーム上のループ20および第2のアーム上の突起21とで構成され、これによって、2つのアームは一緒にロックされ得る。
【0068】
ヒンジに関して、第1のアーム12の遠位端部に、吸収材料(Capu-cell発泡体、深さ3mm)のパッド13があり、そして第2のアーム14の近位端部に、試験片16がある。吸収材料のパッド13の面積は、約200mm2(20mm×10mm)であり、試験片16の面積(これは、約50mm2(10mm×5mm))より大きく、これらの2つのアームが一緒にされたときに、試験片16の全体が、吸収材料のパッド13により接触されることを確実にする。試験片16に隣接して色較正アイコン17がある。第2のアーム14の背面側に透明な窓18があり、これを通じて試験片16および色較正アイコン17が視認可能である。
【0069】
デバイスの使用の間、ユーザは、所定期間(通常約30秒)の間、口の中にパッドを置き、パッドを唾液で湿らせ、次いで、第1のアーム12および第2のアーム14を、吸収材料のパッド13が試験片16と接触するようにヒンジ15上で旋回することにより互いに対して回転させる。第1のアーム12を第2のアーム14と整列させると、ロック機構20、21が係合され、これらの2つのアームが一緒にロックされ、試験片16上に吸収材料のパッド13を圧迫させる。窓18を通じて、試験片16は視認可能であり、そして試験片中の試薬と唾液との反応により発生した色変化が見られ、記録され、そして濃度に変換され得る。
【0070】
図3には、デバイスが平坦であり、細長い開いた位置にある場合のデバイスの側面が示される。この位置で、第1のアーム12上の吸収材料のパッド13の深さを示し、これは約3mmであり、そして第2のアーム14上の試験片(実物大ではない)16の深さ(これは約0.15mm)に対して比較され得る。ヒンジ15の端部(デバイス10のほぼ中間部に位置する)は、視認可能である。試験片16は、透明窓18を通じて後方から見られ得る。デバイスの反対側の端部に、ロック機構の構成要素(第1のアーム上20および第2のアーム上21)が示される。
【0071】
図4には、閉じられた位置にあるデバイス10が示される。第1のアーム12および第2のアーム14は、第1のアーム12上の吸収材料のパッド13が第2のアーム14上の試験片16と直接接触するように、平行に配置される。第1および第2のアーム上のそれぞれのロック機構(20および21)は、これらのアームが一緒にロックされて、吸収材料のパッド13が試験片16に対してプレスされるように係合される。
【0072】
図5には、第1のアーム12上の吸収材料のパッド13と第2のアーム14上の試験片16との間の相互作用のより詳細が、見られ得る。第1のアーム12上の吸収材料パッド13は、第2のアーム14上の試験片16の全体と接触し、そして第2のアームの面の試験片を取り囲む領域と接触する。色較正アイコン17は、第2のアーム14上で試験片16に隣接して見られ得る。
【0073】
図6~8を参照すると、本発明のデバイスの第2の実施形態(100として大まかに示す)は、2つの非対称のアーム(第1のアーム112および第2のアーム114)を備え、これらのアームは、ヒンジ15を介して一方の端部で接続され、このヒンジにより、これらの2つのアームが一緒に折りたたまれる。これらのアームの各々のヒンジの周囲の回転は、180°に限定される。完全に開いた平坦なデバイスが
図6に示される。
【0074】
ヒンジに関して、第1のアーム112の遠位端部に、吸収材料(PureSorb
TM Foam Wiper)のパッド113があり、約200~300mm
2の面積を有する。第2のアーム114の中間部に、試薬部分を含む試験片(図示せず)について浅いチャンネル116がある。
図8は、カセット119(その中に試験片が含まれる)を示し、試験片が第2のアームの背面にどうやって(すなわち、クリップによって)取り付けられているかを示す。浅いチャンネル116(試験片が中にある)に隣接して、色較正アイコン(すなわち、CMYKアイコン117)とユーザ識別子(すなわちQRコード118)がある。チャンネル116の面積は、試験片のサイズによって決定され、これは約100mm
2(10mm×10mm)である。
【0075】
デバイス100の使用の間、ユーザは、所定期間(通常約30秒)の間、口の中にパッドを置き、パッドを唾液で湿らせ、次いで、第1のアーム112および第2のアーム114を、吸収材料のパッド113が試験片と接触するようにヒンジ115上で旋回することにより互いに対して回転させる。2つのアームは、指の圧力によって所定期間(例えば3~5秒)一緒に保持され、その後、ヒンジ115上で旋回させることにより第1のアーム112および第2のアーム114を互いから離れるように回転させることにより、デバイスが開かれる。この位置で、試験片は視認可能であり、そして試験片中の試薬と唾液との反応により発生した色変化が見られ、記録され、そして濃度に変換され得る。
【0076】
図9~10は、本発明の第3の実施形態を備えるデバイスの各半分を示す。デバイスは、2つの非対称のアーム(第1のアーム127(
図9)および第2のアーム129(
図10))を備え、これらのアームは、ヒンジ131を介して一方の端部で接続され、このヒンジにより、これらの2つのアームが一緒に折りたたまれる。
図9は、第1のアーム127の表を示し、これに対し
図10は、第2のアーム129の背面を示す。
【0077】
第1のアーム127は、取り外し可能なヘッド部分133およびステム部分135を含む。ヘッド部分133は、吸収材料(PureSorbTM Foam Wiper)のパッド137を備え、それは約200~300mm2の面積を有する。第2のアーム129は、本体部139と、試験片143を備える開放可能なカセット141を備える。試験片は、第2のアーム129の表の面から接近可能である。
【0078】
デバイスの使用の間、ユーザは、吸収材料のパッドを含む新たなヘッド部分133を第1のアーム127のステム部分135に取り付ける。また、新たなカセット141が、第2のアーム129の本体部139に取り付けられる。その時点で、ユーザは、所定の期間(通常30秒)口内にパッド137を置き、パッドに唾液をしみこませ、第1のアーム127および第2のアーム129の両方を、吸収材料のパッド137が試験片と接触するようにヒンジ131上で旋回することにより互いに対して回転させる。2つのアームは、指の圧力によって所定期間(例えば3~5秒)一緒に保持され、その後、ヒンジ131上で旋回させることにより第1のアーム127および第2のアーム129を互いから離れるように回転させることにより、デバイスが開かれる。この位置で、試験片は視認可能であり、そして試験片中の試薬と唾液との反応により発生した色変化が見られ、記録され、そして濃度に変換され得る。
【0079】
(デジタル画像の捕捉と送信)
図11は、モニタリングステーションに対してデジタル画像の捕捉と転送を制御するユーザのスマートフォン上で実行するアプリについての設計ツリーを示す。
【0080】
最初の工程において、ユーザはスマートフォン上のアプリを開く。次いで、アプリは、ユーザ識別子(
図6の118)上にカメラを置くようにユーザに指示し、その結果、アプリ内の内臓QRコードリーダがQRコードを読み込むことができる。QRコードが適切に読み込まれた場合、次いで、ユーザは次の工程に進む。ユーザは、口の中に発泡体パッド(
図6で表示された113)を配置する。ユーザがそのようにすると、ユーザはアプリのタイマーを開始し、アプリはユーザにいつパッドを除去するかについて伝える。パッドが除去されると、カバーが試験片から除去され、そしてパッドが試験片に接触するようにデバイスの2つのアームを互いに回転させる。パッドが試験片と接触すると、ユーザはアプリのタイマーを開始する。このアプリは、デバイスをいつ再び開くか(すなわち、いつ、試験片が視認可能になるように互いから離れてデバイスの2つのアームを回転させるか)を伝える。この時点で、アプリは、ユーザに試験紙、色較正アイコンおよびユーザ識別子(すなわち、QRコード)上にカメラビューを置き、そして写真(=デジタル画像)を撮るように指示する。デジタル画像が表示されると、アプリはユーザに送信を押すように指示する。ユーザが送信を押すと、日時とともに試験片、色較正アイコンおよびユーザ識別子を示す写真(=デジタル画像)が遠隔モニタリングステーションに通信される。ここで、写真の色情報は被分析物濃度に変換される。
【0081】
(デジタル画像処理および濃度への変換)
図12は、デジタル画像を処理して、デジタル画像の試験片部分内に含まれる色情報を被分析物濃度に変換することに含まれる工程を示す。これらの工程は、遠隔モニタリングステーションで行われる。工程1において、遠隔モニタリングステーションは、ユーザのスマートフォンからの日時スタンプも伴って、試薬画像データ、較正データおよびユーザの識別詳細事項を含む複合画像を受信する。この段階で、ユーザはQRコードの手段によてのみ同定され、個人情報は通信されない。そのためデジタル画像は秘匿下で送信される。第2の工程において、デジタル画像の前処理はデータノイズを取り除くためのものである。第3の工程において、色空間の特徴抽出が行われる。様々な色モデルが用いられ得、これらには、HSV(色相、彩度、明度)、L
*A
*B(輝度(L)および2つの色チャンネル(aおよびb))、YCbCr(輝度成分(Y)およびクロミナンス-ブルー(Cb)およびクロミナンス-レッド(Cr)およびCIE 1931)が含まれる。第4の工程において、結果が、低、中、または高尿酸レベルを示すデータポイントを用いてすでに設定された特徴空間プロット内の色空間の特徴抽出からプロットされる。データポイントは、先の臨床治験で得られたものであり、低、中、高のカテゴリーは臨床医によって同意されたものであった。第5の工程において、k近傍法(k-NN)が用いられ、サンプルが高尿酸/中尿酸または低尿酸に分類される。サンプルが分類されると、結果がユーザ識別子および日時と一緒に保存される。傾向アルゴリズムは、増加した尿酸レベルの事例についてモニタリングされる。事例が生じると、モニタリングプラットフォームが、患者とのユーザ識別子にリンクしえる臨床医にアラートを発する。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
(プロトコル:唾液の尿酸塩のモニタリングと診断における使用)
本発明のデバイスの上記第2の実施形態を、上記アプリおよびモニタリングステーションプラットフォームと組み合わせて使用する。
【0083】
(登録)
妊婦をモニタリングおよび診断プログラムに登録する。彼女には固有の識別詳細事項が割り当てられる。この詳細事項は、病院での彼女の記録事項と彼女が与えられるデバイスに対して書き添えられているQRコードにコード化される。
【0084】
(サンプルの取得)
妊婦(ユーザという)は、約30秒間、口に
図6~8のデバイスのスポンジ含有端部を入れる。
【0085】
次いで、ユーザは、口からスポンジを取り出し、ヒンジ周りにデバイスを折り畳み、約3~5秒間、試験片上に、唾液で湿ったスポンジ含有端部をプレスする。
【0086】
(試験画像と較正画像の捕捉)
ユーザは3~5秒後にヒンジを再び開き、スポンジ内の唾液中の尿酸塩と多かれ少なかれ反応した試験片を表に出して、試験片中の試薬の色変化を生じさせる。
【0087】
ユーザのスマートフォンのアプリの実行を介して、ユーザは、試験片のデジタル写真(=デジタル画像)を撮る(この写真は、写真内に試験片に隣接する色較正アイコンおよびQRコードを含む)。これらは、数値の形態で色較正および患者の識別詳細事項を提供する。
【0088】
ユーザは、アプリの送信を押して、遠隔モニタリングステーションに、発色した試薬のデジタル画像、色較正アイコンのデジタル画像、およびQRコードのデジタル画像を含むデジタル画像を通信する。
【0089】
(画像データの加工)
遠隔モニタリングステーションは、日時スタンプも伴って、試薬画像データ、較正データおよびユーザ識別詳細事項を含む複合データを受信する。
【0090】
これがそのユーザについて受領した最初のデータである場合、記録の新たなセットが発生する。
【0091】
そのユーザについて記録のセットが存在する場合、データはそのセットに追加される。
【0092】
画像データは色空間の特徴抽出によって処理され、特徴空間プロット上にプロットされる。次いで、K-NNアルゴリズムが使用され、試薬画像の色内容を、「低」、「中」または「高」尿酸レベルとして分類する。
【0093】
ユーザが1つの「高」の読み取り値を発生させると、アラートが発生する。
【0094】
「高」の読み取り値が3つまたはそれ以上の「低」の読み取り値の後に発生した場合、次いで「一度限り」のアラートが発生する。
【0095】
ユーザが、先の3週間における2つまたはそれ以上の「中」の読み取り値の先行に伴って「高」を発生させる場合、次いで「高傾向」のアラートが発生する。
【0096】
このアラートは病院に通信される。QRコードおよび病院の記録の組み合わせがある場合のみ、適切なスタッフメンバー(例えば、助産婦、臨床医等)によって接触され得るユーザを同定し得る。
【0097】
(リマインダー)
ユーザには、モニタリングの期間中、1週間に一度、別の試験を行うためのリマインダーが送信される。
【0098】
モニタリング期間は妊娠20週であり、その期間継続される。
【0099】
したがって、本発明は、個体における被分析物の試験方法とそれに使用するデバイスを提供する。