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  • 特許-核燃料の溶解方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】核燃料の溶解方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/46 20060101AFI20220202BHJP
   G21C 19/34 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
G21C19/46 300
G21C19/34 100
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018566968
(86)(22)【出願日】2017-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-04
(86)【国際出願番号】 FR2017051646
(87)【国際公開番号】W WO2017220928
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】1655871
(32)【優先日】2016-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508313895
【氏名又は名称】オラノ サイクル
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルチューク,ジル
(72)【発明者】
【氏名】デラァイ,ティボー
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-350599(JP,A)
【文献】国際公開第01/033575(WO,A2)
【文献】特開昭61-207999(JP,A)
【文献】特開平04-161888(JP,A)
【文献】特開2009-186399(JP,A)
【文献】特開昭54-000198(JP,A)
【文献】特開2013-011562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/46
G21C 19/44
G21C 19/34
G21C 19/36
G21F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核燃料を硝酸溶液に浸漬することを含む核燃料の溶解プロセスであって、さらに核燃料の機械的粉砕を含み、当該機械的粉砕は前記浸漬の間に硝酸溶液中で行われることを特徴とする溶解プロセス。
【請求項2】
硝酸溶液が90℃~105℃に加熱される請求項1に記載の溶解プロセス。
【請求項3】
硝酸溶液のモル濃度が1mol/L~10mol/Lである請求項1又は2に記載の溶解プロセス。
【請求項4】
硝酸溶液のモル濃度が3mol/L~8mol/Lである請求項3に記載の溶解プロセス。
【請求項5】
硝酸溶液が中性子毒も含む請求項1~のいずれか一項に記載の溶解プロセス。
【請求項6】
前記中性子毒がガドリニウムである請求項5に記載の溶解プロセス。
【請求項7】
機械的粉砕が浸漬の全持続時間にわたって行われる請求項1~のいずれか一項に記載の溶解プロセス。
【請求項8】
核燃料が、少なくとも1つの酸化プルトニウム及び/又はプルトニウムとウラン、トリウム、ネプツニウム、アメリシウム及びキュリウムの中から選択される少なくとも1つの第二の金属との混合酸化物を少なくとも1つ含む請求項1~のいずれか一項に記載の溶解プロセス。
【請求項9】
第二の金属がウランであり、ウランとプルトニウムの混合酸化物を少なくとも1つ含む核燃料がMOX燃料である請求項に記載の溶解プロセス。
【請求項10】
核燃料が照射済核燃料である請求項1~のいずれか一項に記載の溶解プロセス。
【請求項11】
核燃料が未照射核燃料の製造廃棄物を含む請求項1~のいずれか一項に記載の溶解プロセス。
【請求項12】
核燃料がクラッド内に閉じ込められている場合、核燃料のクラッドを除去する工程をさらに含み、当該クラッド除去工程が浸漬の前に行われる請求項1~11のいずれか一項に記載の溶解プロセス。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の溶解プロセスを実施するための、機械的粉砕手段を備えた粉砕機の使用。
【請求項14】
粉砕機がビーズミル又はペブルミルであり、ビーズ又はペブルが好ましくは二酸化ジルコニウム製である請求項13に記載の使用。
【請求項15】
以下の連続工程を含み、この記載の順序で行う照射済核燃料の溶解プロセス:
(a)照射済核燃料を硝酸溶液に浸漬して溶解した後、溶解微粒子を含む硝酸溶解溶液を得る工程;
(b)硝酸溶解溶液から溶解微粒子を分離する工程;及び、
(c)工程(b)で分離した溶解微粒子を、請求項1~のいずれか一項に記載の溶解プロセスを実施することによって溶解する工程。
【請求項16】
照射済核燃料がクラッド内に閉じ込められている場合、照射済核燃料のクラッドを除去する工程をさらに含み、当該クラッド除去工程が工程(a)の前に行われる請求項15に記載の溶解プロセス。
【請求項17】
照射済核燃料が、少なくとも1つの酸化プルトニウム及び/又はプルトニウムとウラン、トリウム、ネプツニウム、アメリシウム及びキュリウムの中から選択される少なくとも1つの第二の金属との混合酸化物を少なくとも1つ含む請求項15又は16に記載の溶解プロセス。
【請求項18】
第二の金属がウランであり、ウランとプルトニウムの混合酸化物を少なくとも1つ含む核燃料がMOX燃料である請求項17に記載の溶解プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は核燃料の溶解プロセスに関し、当該方法は、特に核燃料がプルトニウム又はウランとプルトニウムの混合物を含む場合、原子炉内で照射済のものであっても、製造廃棄物であっても、現行の溶解プロセスと比較して改善された性能を有する。
【0002】
また本発明は、当該溶解プロセスを実施するための特定の装置の使用に関する。
【0003】
最後に、本発明は、現行の溶解プロセスで生じる溶解微粒子(dissolution fine)に含まれる有用化合物の溶解を改善するための、前述の溶解プロセスを実施する照射済核燃料の溶解プロセスに関する。
【背景技術】
【0004】
放射性廃棄物の管理を最適化するための持続的な探索において、「照射済燃料」又は「使用済燃料」と呼ばれる原子炉から取り出された燃料は、現在リサイクルが不可能と考えられている最終廃棄物(例えば、プラチノイドや、ネプツニウム、アメリシウム、キュリウム等のマイナーアクチニド等の核分裂生成物)からウランやプルトニウム等のリサイクル可能な物質を分離する目的で処理される。
【0005】
処理は一連の物理的及び化学的プロセスを必然的に伴う:核燃料を形成する物質が内部に閉じ込められた密封クラッドから構成される照射済核燃料のアセンブリは、通常、約3cm~5cmの長さの切片に切断される。次に、これらの切片を濃硝酸溶液に浸漬してクラッド内に閉じ込められた核物質を溶解する。これらのクラッドは、ほとんど不溶性である。
【0006】
この浸漬後に得られる硝酸溶解溶液は、液相中に、ウラン、プルトニウム、マイナーアクチニド、可溶性の核分裂生成物及び不溶性の固体生成物を含み、そのうち不溶性核分裂生成物は通常「溶解微粒子」と呼ばれる。これらの溶解微粒子は通常1μm未満の小粒径の固体に相当し、現行の溶解プロセスにおいて、プラチノイド等のいくつかの核分裂生成物の不溶解及び/又はモリブデン、ジルコニウム若しくはテクネチウム等の別のいくつかの部分溶解から生じる。
【0007】
次に、この硝酸溶解溶液を一連の化学的工程に供して有用な及び/又はリサイクル可能な物質を分離してプルトニウム及びウランの溶液を製造し、それらからウラン及びプルトニウムを再生して新しい燃料を製造する。
【0008】
この核燃料に含まれる化学物質の溶液中の通過は最大限可能にすべきであるため、核燃料を硝酸溶液に溶解するプロセスは処理における重要なステップとなる。
【0009】
現在のところ、この核燃料溶解プロセスは、バッチ式又は連続操作で実施できるプロセスである。
【0010】
連続操作では、溶解プロセスは、90℃~105℃に加熱した硝酸溶液を含むタンク内で回転するバケットホイールを備えた回転式溶解装置を用いて実施される。ホイールが停止しているときにバケットに直接供給することにより、切片化したアセンブリをバケットに投入する。その後、ホイールを回転させて次のバケットに供給する。ホイールの回転速度は、浸漬した切片化アセンブリの滞留時間を2時間よりも長い時間、保証するように選択し、硝酸溶液中への照射済燃料の溶解を最適化する。
【0011】
この現行の溶解プロセスの性能レベルは、溶解しようとする核燃料の構成物質に相関して変化する。
【0012】
前記回転式溶解装置を使用する現行のプロセスは、特に「UOX燃料」として知られる酸化ウランを含有するウラン系核燃料の溶解には十分に満足できるものであるが、これは必ずしも全てのウラン及びプルトニウム核燃料、特に「MOX燃料」と呼ばれるウランとプルトニウムの混合酸化物を含む燃料についてはそうとは限らない。
【0013】
これらのMOX燃料の一部は照射済であってもなくても、多かれ少なかれ島の形で化学的不均質を含む場合があり、残りの燃料と比較して高いプルトニウム含有量を特徴とする。特に島のプルトニウム含有量がウランとプルトニウムの全含有量の約35%に達すると、硝酸中の不溶性プルトニウムの割合が増加し始め、ウランとプルトニウムの全含有量と比べて100%に達すると、プルトニウム含有量は、5Mと10Mの硝酸中でそれぞれ60%と70%の範囲となる。
【0014】
部分的に高いプルトニウム含有量を有するMOX燃料において直面するこの溶解の問題を克服する試みでは、核燃料の切片と硝酸溶液によって形成された混合物を攪拌下に置くことが提案されてきた。しかしながら、回転式溶解装置内で機械的攪拌の実施を想定することは困難である。
【0015】
従って、溶解プロセスが回転式溶解装置内で行われる場合、硝酸溶液を連続的に新しいものと交換することが提案されており、この溶液の循環ができるようにバケットには穴が開いている。しかしながら、前記提案は使用する硝酸溶液の量に影響がないわけではない。
【0016】
また現行の溶解プロセスでは、硝酸溶解溶液中に含まれる溶解微粒子は、固液分離操作(例えば遠心分離による)に供され、次いで溶融プロセスにおいて溶融される材料の流れへの融合により処理することができる。
【0017】
しかしながら、これらの溶解微粒子は、プルトニウム、ウラン及び/又は可溶性核分裂生成物等の再生可能な化合物の粒子と結合又は融合しているので、硝酸溶液中のそれらの溶解を最適化してこれらの有用な化合物を回収する手段を見出し、新しい燃料の製造のためにそれらをリサイクルできるようにすることが望ましい。本明細書の以下の部分では、溶解微粒子と結合しているか又はこれらの溶解微粒子の粒子と融合しているこれらの再生可能な化合物は、これら溶解微粒子中に「含有される」と表す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って本発明の目的は、照射済か否かに関わりなく、核燃料の処理に現在用いられている溶解プロセスにおける様々な前述のこれらの欠点を克服し、その結果、この燃料の溶解を改善できるプロセス、特に部分的に高いプルトニウム含有量を有するMOX燃料の溶解を改善できるプロセスを提案することである。
【0019】
また本発明の目的は、現行の溶解プロセスで生じる溶解微粒子に含まれる再生可能な化合物の最適な溶解を可能にし、前記化合物のリサイクルを目的とする照射済核燃料の溶解プロセスを提供することである。
【0020】
本発明のさらなる目的は、十分な量の硝酸溶液を使用し、最適な安全性の条件下で、バッチ式又は連続操作で実施することができ、任意のタイプの処理される照射済核燃料の溶解を改善できる溶解プロセスを提供することである。
【0021】
特に当該溶解プロセスは、それが最初はUOXタイプの未使用燃料であってもMOXタイプの未使用燃料であっても照射済核燃料の組成とは無関係に、そして該MOX燃料に含まれうる任意の島のプルトニウム含有量(ウランとプルトニウムの合計含有量に対する)とは無関係に、実行可能でなければならない。
【0022】
さらに、新しいプルトニウム含有核燃料の製造は製造廃棄物の発生につながる可能性がある。特に前記製造廃棄物は、アメリシウムを含有する可能性があるプルトニウム混合酸化物粉末、ウランとプルトニウムの混合酸化物粉末(U、Pu)O及び/又はMOXタイプの混合燃料のペレットによって形成されうる。これらの粉末及び/又はペレットは、規格に適合していないと考えられ、「ロッド」と呼ばれる鞘に閉じ込められることもある。これらの未照射物質は、照射済燃料中に存在する場合、これらの同じ物質よりも硝酸による溶解時に難溶性の挙動を示すことが知られている。
【0023】
従ってより一般的には、当該プロセスは、酸化プルトニウム粉末又はウランとプルトニウムの混合酸化物粉末、MOX燃料のペレット又は新しいMOX燃料のロッド等の新しい(未照射)燃料の組成に含まれるこれらの製造廃棄物と物質の溶解についても、これらの様々な製造廃棄物に含まれるリサイクル可能な物質をリサイクルするという観点から、可能にすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
これらの目的及び別の目的は、照射済のものでも新しいものでも、核燃料を硝酸溶液中に浸漬することを含む核燃料溶解プロセスによって最初に達成される。
【0025】
本発明においては、当該溶解プロセスは核燃料の機械的粉砕も含み、この機械的粉砕は前記浸漬の間に硝酸溶液中で行われる。
【0026】
従って本発明のプロセスは、核燃料の浸漬と機械的粉砕とを同時に実施して、該燃料の構成物質の硝酸溶液への溶解を最適化し、それによって液相を有する硝酸溶解溶液を得ることを必然的に伴う。該硝酸溶解溶液は、現行の溶解プロセスを用いて少なくとも部分的に溶解する化合物、特にプルトニウムや場合によりウラン、マイナーアクチニド及び可溶性核分裂生成物だけではなく、現行の溶解プロセスでは溶解できない溶解微粒子に含まれる再生可能な化合物、例えばプルトニウム、ウラン及び/又は可溶性核分裂生成物をも含む。
【0027】
核燃料の浸漬中に前記機械的粉砕を適用することによって、溶解する核燃料の粒子又は粗粒のサイズを徐々に小さくすることができ、これにより比表面積を徐々に大きくすることができる。そうすることによって、液浸に伴う機械的粉砕は、核燃料粒子の表面上において、溶解反応が起こる反応部分の数だけでなく、構造的欠損及び/又は結晶的欠損の数も増加させることができる。これらは硝酸溶液中の前記核燃料粒子の潜在的な浸食部分、すなわち潜在的な溶解部分に相当する。
【0028】
上記の全ての現象は、本発明の溶解プロセスが核燃料粒子の表面の連続的な活性化を得ることを可能にし、硝酸溶液中へのそれらの溶解を促進するプロセスであると考えることを可能にする。
【0029】
また核燃料の浸漬中に機械的粉砕を実施することは、過剰量の硝酸溶液及び/又はさらなる攪拌システム自体に頼る必要なく、固液界面(核燃料粒子/硝酸溶液)で硝酸溶液を攪拌することを介して新しいものと交換することも確実にする。従って本発明の溶解プロセスの実施は、バッチ式又は連続操作について完全に想定することができる。
【0030】
浸漬前に粉砕を行う核燃料溶解プロセスは、浸漬の開始時には核燃料の比表面積が明らかに高くなるが、これを用いて得られるものよりも、本発明のプロセスを用いて達成される溶解の性能レベルははるかに高いというこの発見は、いっそう意外で驚くべきものである。
【0031】
さらに溶解する燃料の核の性質を考慮すると、機械的粉砕が硝酸溶液に燃料を浸漬する前の「乾式」粉砕である溶解プロセスと比較して、本発明のプロセスでは硝酸溶液中で機械的粉砕を行うことにより、核燃料の粉砕粒子の撒き散らし、すなわち結果として生じる汚染が制限されるという別の大きな利点を有する。
【0032】
本発明のプロセスの有利な一形態では、核燃料が浸漬されて同時に粉砕される硝酸溶液は90℃~105℃に加熱される。
【0033】
硝酸溶液が加熱されるという事実は、核燃料の溶解反応速度の増大、すなわち本発明のプロセスの溶解性能のさらなる改善を可能にする。
【0034】
本発明のプロセスの一形態では、硝酸溶液のモル濃度は、1mol/L~10mol/Lとすることができる。
【0035】
硝酸溶液のモル濃度は、溶解する核燃料を形成する物質の組成に特に適合させることができる。
【0036】
硝酸溶液のモル濃度は、有利には3mol/L~8mol/Lである。
【0037】
本発明のプロセスの別の有利な形態においては、硝酸溶液は中性子毒も含み得る。
【0038】
核燃料と硝酸溶液によって形成された混合物中の中性子毒の存在は、亜臨界と呼ばれるこの混合物の中性子の状態の条件を最適化することを可能とする。
【0039】
中性子毒の例として、ガドリニウムを挙げることができる。
【0040】
本発明のプロセスの別の形態において、硝酸溶液中の核燃料の浸漬は、少なくとも30分間維持することができる。
【0041】
硝酸溶液中の核燃料の浸漬時間は、特に溶解する当該核燃料の組成に適合させることができる。
【0042】
本発明のプロセスにおいては、インラインで溶解のモニタリングを確実にすることができ、検討中の溶解反応の進行状態に相関させた溶解の試験的停止、従って溶解反応器の排液を可能にする。
【0043】
上記のように、従来技術の溶解プロセスとは異なり、本発明のプロセスは、核燃料の浸漬中に硝酸溶液中で行われる核燃料の機械的粉砕を含む。
【0044】
明らかに当該機械的粉砕は、核燃料の浸漬時間の一部の間に実施することができる。
【0045】
しかしながら、本発明のプロセスの特に好ましい一形態においては、硝酸溶液中の核燃料の溶解をさらに最適化するために、機械的粉砕は浸漬の全持続時間にわたって行われる。
【0046】
核燃料がクラッド内に閉じ込められている場合、有利には、本発明の溶解プロセスは核燃料のクラッドを除去する工程をさらに含むことができる。このクラッド除去工程は浸漬の前に行われる。
【0047】
前記クラッド除去工程は、硝酸溶液と核燃料の構成物質の間の接触を、該物質が粉末であってもペレットの形態であっても促進する。
【0048】
通常、当該クラッド除去工程は機械的なクラッド除去によって確実にされる。
【0049】
前記機械的クラッド除去工程は、例えばせん断によって又はEP2345041の明細書に提案された技術的手段によって行うことができ、これらのクラッドは「楕円化(ovalisation)」によって空にすることができる。
【0050】
核燃料の構成物質が、場合によってはウラン若しくはアメリシウムも含む未照射の酸化プルトニウム粉末である場合、又は、酸化プルトニウム若しくは酸化ウランと酸化プルトニウムの混合物を含有する未照射ペレット(製造廃棄物)である場合、本発明の溶解プロセスは、前記の事前のクラッド除去工程を明らかに必要とはせず、未照射粉末及びペレットを直接粉砕することができる。
【0051】
溶解する核燃料は、照射又は未照射に関わらず、少なくとも1つの酸化プルトニウム及び/又はプルトニウムと少なくとも1つのプルトニウム以外の第二の金属との混合酸化物を少なくとも1つ含むことができる。以下に示すように、当該第二の金属は、特に、ウラン、トリウム、ネプツニウム、アメリシウム及びキュリウムの中から選択することができる。
【0052】
溶解する核燃料が照射済燃料である場合、間違いなく、該燃料はUOX燃料とも呼ばれる二酸化ウランUO燃料等の少なくとも1つの酸化ウランを含む新しい燃料由来であってもよい。プルトニウムと少なくとも1つの第二の金属との混合酸化物を少なくとも1つ含む場合、この核燃料は、照射の有無に関わらず、プルトニウムとウラン、トリウム及びマイナーアクチニドの中から選択される少なくとも1つの元素との混合酸化物の燃料とすることができる。
【0053】
「マイナーアクチニド」とは、ウラン、プルトニウム及びトリウムを除く、アクチニド族の化学元素を意味する。前記マイナーアクチニドは、核燃料のウラン核による中性子の連続捕獲によって原子炉内で形成される。主なマイナーアクチニドはネプツニウム、アメリシウム及びキュリウムである。
【0054】
プルトニウムと少なくとも1つの第二の金属との混合酸化物を少なくとも1つ含む核燃料は、特に、MOX燃料とも呼ばれるウランとプルトニウムとの混合酸化物(U,Pu)Oの燃料であってもよい。
【0055】
本発明のプロセスは、現行の溶解プロセスと比べて改善されたその溶解特性により、高いプルトニウム含有量(通常、ウランとプルトニウムの全含有量の35%以上)の部分的な化学的不均質を有するMOX燃料の溶解を特に可能にする。
【0056】
プルトニウムと少なくとも1つの第二の金属との混合酸化物を少なくとも1つ含む燃料は、プルトニウムと1つ以上のマイナーアクチニドとの混合酸化物燃料であってもよく、より具体的には、該マイナーアクチニドは、ネプツニウム、アメリシウム及びキュリウムの中から選択される。
【0057】
本質的に本発明のプロセスは、照射済核燃料から形成された核燃料の溶解に焦点を合わせているが、有利には、硝酸溶液中での溶解が照射済の同じ燃料よりも困難であることが知られている未照射の新しい核燃料の溶解にも適用することができる。
【0058】
特にこの核燃料は、未照射の又は新しい核燃料の製造廃棄物を含み、さらにはそれらから成ることがある。
【0059】
従って、本発明のプロセスを用いて溶解できる核燃料は、照射済燃料及び/又は未照射燃料でありうる。
【0060】
第二に本発明は、上で定義した核燃料を溶解するためのプロセスを実施するための特定の装置の使用に関し、溶解プロセスの有利な特徴は場合により単独で又は組み合わせて利用される。
【0061】
本発明においては、この装置は機械的粉砕手段を備えた粉砕機である。
【0062】
完全に従来通り、前記粉砕機は機械的粉砕手段を備えた粉砕チャンバーを備え、核燃料、硝酸溶液及び任意の中性子毒が供給される。
【0063】
前記粉砕機を使用する利点は、核燃料と硝酸溶液を粉砕チャンバーに投入する供給手段;硝酸溶解溶液、固体の不溶性生成物及び気体を排出する手段;並びに、以下の1つ以上の手段と、容易に且つ安全に接続できるという事実にある。
- 硝酸溶解溶液を濾過する手段;
- 加熱手段;
- 硝酸溶解溶液を再循環させる手段;
- サンプリング手段;及び、
- 温度やpH等の溶解反応パラメータを調整する手段。
【0064】
例としては、加熱手段は、核燃料と硝酸溶液によって形成された混合物を直接加熱するために適合させることができる。或いは、補助タンク等の前記混合物を循環させるための手段を伴うことができる。
【0065】
同様に、pHの調整は、粉砕チャンバーに直接、又は、核燃料と硝酸溶液によって形成された混合物を循環させる補助タンクを介して、適切な溶液を添加することにより行うことができる。
【0066】
粉砕機をサンプリング手段に接続することにより、特に溶解の進行状態のモニターを可能にできる。前記サンプリング手段は、硝酸溶解溶液のpH及び/又は該溶液中のイオン濃度(例えば、比色/UV/可視分光法により、アッセイにより)を測定するために、又は、溶解する核燃料の粒度分布を測定する(例えば、粒度分析)ために、直列又は並列に配置することができる。特に前記サンプリング手段は、milli-fluidセルから構成することができる。
【0067】
本発明の溶解プロセスの実施に使用される粉砕機は、有利にはビーズミル又はペブルミルである。溶解する燃料の核の性質と硝酸溶液によって生じうるあらゆる腐食に耐えるように、確実に該ミルの材質とビーズ又はペブルを適合させる。
【0068】
従って、本発明の有利な一態様では、ビーズやその他のペブルはジルコニアとしても知られる二酸化ジルコニウム製である。これは核燃料及び硝酸溶液によって形成された混合物により生じる腐食に対する耐性を最適化する。
【0069】
第三に本発明は、現行の溶解プロセスで生じる溶解微粒子に含まれる再生可能な化合物の溶解を改良することができる、照射済核燃料の溶解プロセスに関する。
【0070】
本発明においては、当該プロセスは、この順序で行われる以下の連続工程を含む:
(a)照射済核燃料を硝酸溶液に浸漬して溶解した後、溶解微粒子を含む硝酸溶解溶液を得る工程;
(b)硝酸溶解溶液から溶解微粒子を分離する工程;及び、
(c)工程(b)で分離した溶解微粒子を、前述の溶解プロセスを実施することによって溶解する工程(当該プロセスの有利な特徴は場合により単独で又は組み合わせて利用される)。
【0071】
換言すると、照射済核燃料の溶解プロセスは、この順序で行われる以下の連続工程を含む:
(a)照射済核燃料を硝酸溶液に浸漬して溶解した後、溶解微粒子を含む硝酸溶解溶液を得る工程;
(b)硝酸溶解溶液から溶解微粒子を分離する工程;及び、
(c)工程(b)で分離した溶解微粒子を、硝酸溶液中での当該溶解微粒子の浸漬及び機械的粉砕により溶解する工程(該機械的粉砕は前記浸漬の間に硝酸溶液中で行われる)。
【0072】
上記プロセスの工程(a)及び(b)は現行の溶解プロセスの工程に対応し、これらの工程は上記「背景技術」の項に記載されている。当該項に示すように、これらの工程(a)、(b)の実施は、溶解微粒子に含まれる再生可能な化合物、特にプルトニウム、ウラン及び/又は可溶性核分裂生成物を十分に溶解することができない。
【0073】
しかしながら、工程(b)の後に工程(c)を実施することにより、そのリサイクルの観点から、現行の溶解プロセスで生じる溶解微粒子に含まれる再生可能な化合物の当該溶解を最適化することができる。それによって溶融可能な固体材料の流れでは、プルトニウム、ウラン及び/又は可溶性核分裂生成物が事実上激減する。
【0074】
本発明のプロセスの一形態では、照射済核燃料をクラッドに閉じ込める場合、照射済核燃料のクラッド除去を行うことができる。当該クラッド除去工程は工程(a)の前に実施できる。
【0075】
溶解する照射済核燃料は、少なくとも1つの酸化プルトニウム及び/又はプルトニウムと少なくとも1つのプルトニウム以外の第二の金属との混合酸化物を少なくとも1つ含むことができる。当該第二の金属は、特に、ウラン、トリウム、ネプツニウム、アメリシウム及びキュリウムの中から選択することができる。
【0076】
プルトニウムと少なくとも1つの第二の金属との混合酸化物を少なくとも1つ含有する照射済核燃料は、より具体的にはMOX燃料の場合がある。
【0077】
本発明の別の特徴及び利点は、添付の図1を参照し、溶解プロセスの形態の実施例と関連付けて、残りの明細書を読み取ることにより明らかになるであろう。2つのプロセス(P及びP)は、同時に浸漬工程と粉砕工程を含む本発明に従う。別の2つの参照用のプロセスは、ひとつは浸漬工程のみを含むものであり(P)、もうひとつは浸漬工程の前に粉砕工程を含むものである(P)。
【0078】
硝酸溶液中の溶解に関して、セリアとも呼ばれる二酸化セリウムCeO(プルトニウムをシミュレートする非放射性金属酸化物)を用いて下記実施例を実施したことを明示する。
【0079】
間違いなくこれらの実施例は本発明の対象を説明するために与えられているものであり、いかなる状況下でも当該対象を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1図1は、2つの溶解プロセスの実施時に得られた硝酸溶解溶液中のセリウムの重量濃度([Ce]で示し、g/Lで表わす)の変化を、時間(tで示し、分で表わす)の関数として置き換えたグラフである。ひとつは本発明に従った溶解プロセス(P)であり、もうひとつは当該技術水準に準じた参照用のプロセス(P)である。
【実施例
【0081】
実施例1:硝酸溶液(5M)中の2つのセリア溶解プロセスの比較。
【0082】
この実施例では、Dispermat(商標)SL5の商品名でWma-Getzmannが販売する50mLの粉砕チャンバー容積を有するビーズミルと、二酸化ジルコニウムビーズを使用した。
【0083】
得られた硝酸溶解溶液中のセリウムの濃度[Ce]をモニターすることによって硝酸溶液中のセリアの溶解の進行状態を測定するためのサンプリングの目的のために、三方バルブをこのミルの出口管に接続した。該濃度は、誘導結合プラズマ、原子発光分析法(ICP-AES)を用いて測定した。
【0084】
第1の試験では、Piと示した参照用の溶解プロセスを実施する際に、セリアの溶解の進行をモニターするために、ビーズミルの粉砕チャンバー中で、ビーズの存在下で、20gのセリアを5mol/L(5M)のモル濃度の100mLの硝酸溶液に浸漬した。
【0085】
第2の試験では、Prと示した参照用の溶解プロセスを実施する際に、セリアの溶解の進行をモニターするために、ビーズミルの粉砕チャンバー中で、しかし前記ビーズの不存在下で、20gのセリアを5mol/L(又は5M)のモル濃度の100mLの硝酸溶液に浸漬した。
【0086】
溶解プロセスPi及びPrの実施時に得られた硝酸溶解溶液中の各々のセリウムの重量濃度の変化を、時間の関数として示す図1を参照し、以下が確認された:
-400分(すなわち、6時間強)後の硝酸溶解溶液中のセリウムの重量濃度は、プロセスPrでは0.09g/Lであるのに対し、プロセスPiでは4.22g/Lである。これはプロセスPrでは0.1%のセリア溶解に相当するのに対し、プロセスPiでは5%に相当する:そして、
-1350分(約22時間)後の硝酸溶解溶液中のセリウムの重量濃度は、プロセスPrでは0.31g/Lであるのに対し、プロセスPiでは17.75g/Lである。これはプロセスPrでは僅か0.2%のセリア溶解に相当するのに対し、プロセスPiでは11%に相当する。
【0087】
換言すると、5M硝酸溶液中のセリアの溶解反応速度において50倍の増加が観察される。これはセリアの浸漬と粉砕を同時に行うことの優位性が正当であることを示す。
【0088】
実施例2:硝酸溶液(5M)中の2つのセリア溶解プロセスの比較
【0089】
この実施例では、C及びCと示される2つの区画を備えた振動粉砕機を使用した。
【0090】
二酸化ジルコニウム製の粉砕用ビーズを含む区画Cにおいて、本発明に従った溶解プロセス(Pと示す)を実施した。2gのセリアを10mLの5Mのモル濃度の硝酸溶液に浸漬した。セリアを硝酸溶液中に7.5時間浸漬して同時に粉砕した後、得られたSと示される硝酸溶解溶液をICP-AESを用いて分析した。
【0091】
二酸化ジルコニウム製の粉砕用ビーズを含む区画Cにおいて、参照用の溶解プロセス(Pと示す)を実施した。2gのセリアを10mLの脱イオン水に浸漬した。セリアを脱イオン水中に7.5時間浸漬して同時に粉砕した後、粉砕したセリアを含む溶液を濾過し、乾燥した。次いで、粉砕して乾燥したセリアをビーカーに入れ、磁気撹拌子を用いた撹拌下で、10mLの5Mのモル濃度の硝酸溶液に浸漬した。硝酸溶液中で粉砕セリアを攪拌しながら7.5時間浸漬した後、得られたSと示される硝酸溶解溶液もICP-AESを用いて分析した。
【0092】
溶液SとS中で測定したセリウムのそれぞれの重量濃度は、4g/Lと0.75g/Lであった。
【0093】
従って、この実施例では、5Mの硝酸溶液中のセリアの溶解反応速度の5倍の増加が観察される。
【0094】
この結果は、粉砕を行った後に浸漬を行う溶解プロセスとの比較において、浸漬と粉砕を同時に行う本発明に従った溶解プロセスの相乗効果を明確に証明している。
【0095】
参考文献:EP 2345041 A1(欧州特許出願公開第2345041号明細書)
図1