(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】直流パルス電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220202BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2019010638
(22)【出願日】2019-01-24
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】讓原 逸男
(72)【発明者】
【氏名】安達 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】米山 知宏
(72)【発明者】
【氏名】宮嵜 洸一
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-079470(JP,A)
【文献】特開2012-196080(JP,A)
【文献】特開平5-327089(JP,A)
【文献】特開2004-080880(JP,A)
【文献】特開平4-161064(JP,A)
【文献】米国特許第7023186(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源部と、前記直流電源部に接続された昇圧チョッパ回路によりパルス出力を発生するパルス部とを備えた直流パルス電源装置であって、
前記昇圧チョッパ回路は、直流リアクトルとスイッチング素子の直列回路とを備え、
前記直流リアクトル
の両端に並列に接続されたクランプ電圧部を備え、
前記クランプ電圧部の出力端は、
前記直流リアクトルと前記スイッチング素子の接続点に接続され、
前記スイッチング素子のオフ期間の両端電圧をクランプすることを特徴とする直流パルス電源装置。
【請求項2】
前記クランプ電圧部は、
前記直流リアクトルのリアクトル電圧の内、設定電圧を超える電圧分を前記直流電源部に回生する回生部により構成され、
回生部は前記昇圧チョッパ回路の直流リアクトルの両端間に接続され、
前記クランプ電圧部のクランプ電圧は、前記回生部の設定電圧であることを特徴とする、請求項1に記載の直流パルス電源装置。
【請求項3】
前記回生部は、
前記パルス部のリアクトル電圧に対して並列接続されたキャパシタと、
前記キャパシタのキャパシタ電圧を直交変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路の交流電圧を変圧する変圧器と、
前記変圧器の交流電圧を整流する整流器とを備え
前記設定電圧を前記キャパシタの両端電圧とし、当該両端電圧を超える電圧分を前記直流電源部へ回生し、
前記変圧器の変圧比により前記クランプ電圧を可変とすることを特徴とする、請求項2に記載の直流パルス電源装置。
【請求項4】
前記直流リアクトルは、磁気結合された第2の直流リアクトルを備え、
前記クランプ電圧部の出力端は、前記直流リアクトルと前記第2の直流リアクトルとの接続点に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の直流パルス電源装置。
【請求項5】
前記直流リアクトルの一端は前記直流電源部の出力端に接続され、
前記第2の直流リアクトルの一端は前記パルス部の出力端に接続され、
直流リアクトルと第2の直流リアクトルの接続点は、前記昇圧チョッパ回路のスイッチング素子のソース側に接続されることを特徴とする、請求項4に記載の直流パルス電源装置。
【請求項6】
前記回生部は、一端は前記パルス部の低電圧側の入力端に接続され、前記低電圧側の電圧を基準とする直流リアクトルのリアクトル電圧を回生入力電圧とすることを特徴とする、請求項2又は3に記載の直流パルス電源装置。
【請求項7】
前記直流リアクトル及び第2の直流リアクトルは、単巻きトランス、又は複巻きトランスで構成されることを特徴とする、請求項4又は5一つの何れか一つに記載の直流パルス電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷にパルス出力を供給する直流パルス電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流パルス電源装置が出力するパルス出力は、直流電圧のオン状態とオフ状態とを数Hz~数百kHzで繰り返す高周波(RF)出力である。
【0003】
直流パルス電源装置は、プラズマ発生用装置、パルスレーザ励起、放電加工機等の負荷へパルス出力を供給する電源装置として用いられる。直流電源装置をプラズマ発生用装置に用いる場合には、パルス出力をプラズマ発生チャンバ内の電極間に供給し、電極間の放電によるプラズマを着火させ、発生したプラズマを維持する。
【0004】
図11(a)は直流パルス電源装置の一構成例を示している。直流パルス電源装置ではパルス波形を発生する回路として昇圧チョッパ回路を備える構成が知られている。直流パルス電源装置100は直流電源110と昇圧チョッパ回路120とで構成され、直流電源110の直流電圧を昇圧チョッパ回路120により昇圧したパルス出力を負荷130に供給する(特許文献1,2)。
【0005】
図11(b)は昇圧チョッパ回路の構成例を示している(特許文献3)。昇圧チョッパ回路120は、直流電源側と負荷側との間にインダクタ121を直列接続し、負荷側に対してスイッチング素子122を並列接続して構成され、スイッチング素子122のオン期間とオフ期間の時間幅のデューティー比に応じて昇圧されたパルス出力が形成される。このオン/オフ動作において、インダクタ121の直流リアクトルにはオン期間の時間幅に応じたエネルギーが蓄積され、蓄積エネルギーに応じて昇圧された振幅のパルス出力が形成される。パルス出力は、スイッチング素子のオン/オフ期間の時間幅のデューティー比により昇圧される振幅が定まるが、スイッチング素子122のオフ時に、直流リアクトルの漏れインダクタンスで発生する振動等により、設定された振幅を超えるサージ電圧が発生する。
【0006】
図11(b)に示す昇圧チョッパ回路では、電源と同極性のダイオード123と抵抗124の直列回路をインダクタ121に並列接続し、インダクタ121に蓄積されたエネルギーによる逆電圧を抵抗124で消費させて、過剰な電圧上昇によるサージ電圧を抑制している。
【0007】
サージ電圧を抵抗により抑制する他、スイッチング素子にスナバ回路を並列接続し、サージ電圧をスナバ回路のスナバコンデンサに吸収させることによりサージ電圧を抑制する手法も知られている(特許文献4)。
図11(c)は、直流電源125に接続され、スイッチング素子127をオンすることにより直流リアクトル126にエネルギーを蓄積させ、スイッチング素子127のオフ期間に蓄積エネルギーを出力側コンデンサ128に充電することにより負荷に直流電源125より高い電圧を供給し、スイッチング素子127のオフ時に発生するサージ電圧をスナバコンデンサにより吸収してスイッチング素子127の過剰電圧による破壊を防止するスイッチング素子127を備えた昇圧チョッパ装置の構成例を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平8-222258号公報(
図1、段落0012)
【文献】特開2004-254401号公報(段落0005、段落0010、
図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
サージ電圧が発生すると、スイッチング素子のドレイン・ソース間の電圧がサージ電圧により過剰電圧となり、スイッチング素子が損傷するおそれがある。サージ電圧を抑制する方法として(i)サージ電圧を抵抗により抑制する方法や、(ii)スナバ回路を用いる方法が知られているが、出力電圧の変動や電力損失の課題がある。
【0010】
(i)インダクタンスの蓄積エネルギーの放出を抵抗で消費させることによりサージ電圧を抑制する手法では、インダクタンスLの蓄積エネルギーによってリアクトル電圧VDCLが発生するため、インダクタンスに並列接続された抵抗Rにはリアクトル電圧VDCLとほぼ同電圧の抵抗電圧VRが発生する。この抵抗Rは、インダクタンスの蓄積エネルギーの放出により急激に電圧上昇するサージ電圧およびスイッチング素子のオン/オフにより発生するサージ電圧を抑制する。
【0011】
図11(d)はパルス周期における出力電圧Voを示している。スイッチング素子がオン状態のオン期間Tonでは、出力電圧Voはスイッチング素子の導通電圧となり、スイッチング素子がオフ状態のオフ期間Toffでは、出力電圧Voは直流電源の直流電圧VABに抵抗電圧VRが加算されたVo=VAB+VRとなる。なお、
図11(b)に示す回路では、スイッチング素子122のソース端Sの電圧Vsは出力電圧Voと同電圧となる。抵抗Rは、低抵抗にすることでサージ電圧を抑制することができるが、リアクトル電圧VDCLと同様の電圧が印加されるため、抵抗Rが小さくなるほど抵抗での損失が大きくなる。したがって、抵抗損失とサージ電圧との間には、抵抗Rに対して互いに相反する関係があり、抵抗Rが大きいほど、抵抗による損失は小さくなるがサージ電圧は大きくなり、他方、抵抗Rが小さいほど、サージ電圧は小さくなるが抵抗損失は大きくなる。
【0012】
リアクトル電圧VDCLはリアクトル電流iL(負荷電流Io)に応じて変動する。負荷電流がIoであるとき抵抗Rに発生する電圧をVR1とすると、負荷電流がK倍のK×Ioに変動したときには抵抗Rに発生する電圧VR2はVR2=K×VR1となる。なお、ここでKはスイッチング素子のデューティー比や負荷電流Ioの条件に依存して変化する。したがって、インダクタンスLのサージにより抵抗電圧VR及び出力電圧Voはデューティー比や負荷電流Ioの変動の影響を受けて変動することになる。
【0013】
したがって、直流パルス電源装置の出力電圧Vo、及びスイッチング素子の端子電圧は負荷電流Ioの変動の影響を受けて変動することになる。また、抵抗Rでは電力損失が発生するため、直流パルス電源装置の効率が低下する。
【0014】
(ii)サージ電圧をスナバ回路のスナバコンデンサに吸収させることによりサージ電圧を抑制する手法では、スナバコンデンサに吸収させたエネルギーをスナバ放電抵抗に流すことで消費させるため、スナバ放電抵抗に放電電流が流れることにより電流損失が発生し、直流パルス電源装置の効率が低下する。
【0015】
したがって、従来知られるサージ電圧によるスイッチング素子の損傷を防ぐ手法では、出力電圧が変動するという課題、抵抗に電流が流れることで生じる電力損失の課題がある。
【0016】
本発明は前記した従来の問題点を解決し、直流パルス電源装置において、サージ電圧の過剰電圧によるスイッチング素子の損傷を防ぐことを目的とする。
更に、スイッチング素子の損傷を防ぐと共に、負荷電流変動に伴う出力電圧の変動の課題、及び負荷電流や放電電流が抵抗を流れることによる電力損失の課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の直流パルス電源装置は、昇圧チョッパ回路のオフ期間においてリアクトルの両端電圧をクランプすることにより、リアクトルに発生するサージ電圧を抑制し、スイッチング素子の損傷を防ぐと共に、負荷電流変動に伴う出力電圧の変動、及び負荷電流や放電電流が抵抗を流れることによる電力損失を抑制する。
【0018】
本発明の直流パルス電源装置は、直流電源部と、直流電源部に接続された昇圧チョッパ回路によりパルス出力を発生するパルス部とを備える。パルス部の昇圧チョッパ回路は、直流リアクトルとスイッチング素子の直列回路とを備え、直流リアクトルにはクランプ電圧部が接続される。クランプ電圧部は、その出力端を直流リアクトルとスイッチング素子の接続点に接続される。これにより、スイッチング素子の一端にクランプ電圧が印加される。
【0019】
昇圧チョッパ回路のスイッチング素子がオンからオフに切り替わる際に、スイッチング素子がオン状態にあるときに直流リアクトルに蓄積された蓄積エネルギーにより過剰電圧であるサージ電圧が発生する。スイッチング素子のオフ期間において、クランプ電圧部はスイッチング素子の素子間電圧を所定電圧にクランプする。クランプする所定電圧をスイッチング素子の許容電圧内とすることにより、サージ電圧による素子破壊を抑制する。
【0020】
クランプ電圧部は負荷電流の変動の影響を受けないため、出力電圧は負荷電流変動に伴う変動は発生しない。また、クランプ電圧部は負荷電流や放電電流がスナバ回路の抵抗を流れることによる電力損失は発生しない。
【0021】
(クランプ電圧部)
クランプ電圧部の一構成例は回生部により構成される。回生部は昇圧チョッパ回路の直流リアクトルの両端間に接続され、直流リアクトルのリアクトル電圧の内、設定電圧を超える電圧分を直流電源部に回生する。回生部は設定電圧を越える電圧分を直流電源部に回生することから、この設定電圧はクランプ電圧部のクランプ電圧となり、スイッチング素子がオフ状態において、クランプ電圧部の出力端が接続される直流リアクトルの端部及びスイッチング素子の一端の電圧をクランプ電圧にクランプする。
【0022】
回生部の一構成例は、パルス部のリアクトル電圧に対して並列接続されたキャパシタと、キャパシタのキャパシタ電圧を直交変換するインバータ回路と、インバータ回路の交流電圧を変圧する変圧器と、変圧器の交流電圧を整流する整流器とを備える。回生部は設定電圧をキャパシタの両端電圧とし、両端電圧を超える電圧分を直流電源部へ回生する。クランプ電圧は変圧器の変圧比により可変とすることができる。
【0023】
回生部の一端をパルス部の低電圧側入力端に接続する回路構成においては、低電圧側の電圧を基準とする直流リアクトルのリアクトル電圧を回生入力電圧とする。
【0024】
(直流リアクトル)
直流リアクトルは、タップ無し単巻きトランスの形態、又は磁気結合する2つの直流リアクトルをタップ付き単巻きトランス又は複巻きトランスで構成することができる。
【0025】
直流リアクトルが磁気結合された第2の直流リアクトルを備える構成では、直流リアクトルの一端は直流電源部の出力端に接続され、第2の直流リアクトルの一端はパルス部の出力端に接続され、直流リアクトルと第2の直流リアクトルの接続点は、昇圧チョッパ回路のスイッチング素子のソース側に接続される。直流リアクトルと第2の直流リアクトルとの接続点にはクランプ電圧部の出力端が接続される。
【0026】
クランプ電圧部は、スイッチング素子がオフ状態において、クランプ電圧部の出力端が接続される直流リアクトルの端部と第2の直流リアクトルとの接続点、及びスイッチング素子の一端の電圧をクランプ電圧にクランプする。
【0027】
直流リアクトルは、直流リアクトルをパルス部の低電圧側に設ける第1の形態及びパルス部の高電圧側に設ける第2の形態とすることができる。第1の形態及び第2の形態は、何れも、直流リアクトルの高電圧側をクランプ電圧部(回生部)の高電圧側に接続し、直流リアクトルの低電圧側をクランプ電圧部(回生部)の低電圧側に接続する。直流リアクトルのリアクトル電圧は、直流電源部の低電圧側の電圧を基準とする回生入力電圧として回生部に入力される。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、昇圧チョッパ回路のオフ期間においてスイッチング素子の両端電圧をクランプすることにより、スイッチング素子の損傷を防ぐと共に、負荷電流変動に伴う出力電圧の変動、及び負荷電流や放電電流が抵抗を流れることによる電力損失を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の直流パルス電源装置の概略構成を説明するための図である。
【
図2】本発明の直流パルス電源装置の概略構成を説明するための図である。
【
図3】本発明の直流パルス電源装置の第1の構成例を説明するための図である。
【
図4】本発明の直流パルス電源装置の第1の構成例の電圧状態を説明するための図である。
【
図5】本発明の直流パルス電源装置の出力電圧Voを説明するための図である。
【
図6】本発明の直流パルス電源装置の回生部の構成例を説明するための図である。
【
図7】本発明の直流パルス電源装置の第2の構成例を説明するための図である。
【
図8】本発明の直流パルス電源装置の第3の構成例を説明するための図である。
【
図9】本発明の直流パルス電源装置の第4の構成例を説明するための図である。
【
図10】本発明の直流パルス電源装置の第5の構成例を説明するための図である。
【
図11】従来の直流パルス電源装置、昇圧チョッパ回路の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の直流パルス電源装置は、昇圧チョッパ回路のオフ期間においてスイッチング素子の両端電圧をクランプすることにより、スイッチング素子の損傷を防ぐと共に、負荷電流変動に伴う出力電圧の変動、及び負荷電流や放電電流が抵抗を流れることによる電力損失を抑制する。
【0031】
以下、本発明の直流パルス電源装置の2つの形態について説明する。第1の形態は、昇圧チョッパ回路の直流リアクトルを1つの直流リアクトルとする形態であり、タップ無し単巻きトランスで構成することができる。第2の形態は、磁気結合する2つの直流リアクトルとする形態であり、タップ付き単巻きトランスによる構成、あるいは磁気結合する2つの直流リアクトル又は複巻きトランスで構成することができる。
【0032】
図1(a)~(e)は本発明の直流パルス電源装置が備えるパルス部及びクランプ電圧部の概略構成、及び電圧を説明するための図であり、第1の形態を
図1(a),(b)を用いて説明し、第2の形態を
図1(c)~(e)を用いて説明する。なお、
図1(a)~(e)は直流リアクトルをパルス部の低電圧側に設ける構成を示している。
【0033】
直流パルス電源装置は、直流電源部10と、直流電源部10に接続された昇圧チョッパ回路によりパルス出力を発生するパルス部20と、クランプ電圧部30を備える。なお、
図1では直流電源部側の端子をA,Bで表記し、低電圧側を端子Aとし高電圧側を端子Bとする例を示している。
【0034】
(パルス部)
パルス部20は、直流リアクトル21とスイッチング素子22の直列接続からなる昇圧チョッパ回路を備え、直流リアクトル21は直流電源部10と負荷との間に直列接続され、スイッチング素子22は負荷に対して並列接続される。
図1では負荷をパルス部20の出力端の接続されたコンデンサで表している。
【0035】
パルス部20において、昇圧チョッパ回路のオン動作時には直流リアクトル21に蓄積エネルギーが蓄積され、オフ動作時においてこの蓄積エネルギーにより直流リアクトル21にリアクトル電圧が発生する。リアクトル電圧は昇圧チョッパ回路のオン動作とオフ動作を繰り返すことにより昇圧する。
【0036】
図1(a),(b)はタップ無し単巻きトランスの負荷側の端部にスイッチング素子22のソースS側を接続する構成を示し、
図1(c)~(e)はタップ付き単巻きトランスのタップにスイッチング素子22のソースS側を接続する構成を示している。
【0037】
(クランプ電圧部)
クランプ電圧部30はスイッチング素子22の素子間電圧を所定電圧にクランプする回路部であり、回生部により構成することができる。回生部は、直流リアクトル21のリアクトル電圧VDCLを入力し、設定電圧である回生入力電圧Vinを超える過剰電圧分(VDCL-Vin)を直流電源部に回生する。
【0038】
回生部は、リアクトル電圧VDCLが設定電圧を超えない場合には回生を行わず、設定電圧を超えた場合には設定電圧を超えた電圧分を直流電源部に回生する。これにより、昇圧チョッパ回路の昇圧は設定電圧にクランプされ、過剰電圧の発生が抑止される。
【0039】
設定電圧は回生部の回生入力電圧Vinで定められ、直流リアクトル21のリアクトル電圧VDCLが回生部の回生入力電圧Vinを超えない場合には回生部による回生は行われず、回生部の回生入力電圧Vinを超えた場合には、超えた電圧分(VDCL-Vin)について回生部により直流電源部側へ回生される。回生動作を規定する設定電圧である回生部の回生入力電圧Vinは、直流電源部の直流電圧VAB、及び回生部に基づいて設定することができる。
【0040】
回生部の一構成例は、パルス部20のリアクトル電圧に対して並列接続されるキャパシタと、キャパシタ両端のキャパシタ電圧を直交変換するインバータ回路と、インバータ回路の交流電圧を変圧する変圧器と、変圧器の交流電圧を整流する整流器とを備え、整流器の出力端は直流電源部に接続される。
【0041】
変圧器の変圧比は、キャパシタの両端電圧と直流電源部の電圧との電圧比を定める。回生部のキャパシタ電圧は直流電源部の電圧と変圧器の変圧比によって定まるため、回生部はこのキャパシタ電圧を回生入力電圧Vinの設定電圧として回生動作の開始及び停止の動作を行う。設定電圧は直流電源部の電圧及び変圧器の変圧比に依存するため、変圧器の変圧比を変えることにより設定電圧を変更することができる。設定電圧を変更することにより、昇圧チョッパ回路におけるクランプ電圧を変更すると共に、回生動作の動作電圧を変更することができる。
【0042】
昇圧チョッパ回路において、直流リアクトル21は、直流電源部と昇圧チョッパ回路のスイッチング素子22のソースS側との間に接続される。昇圧チョッパ回路のスイッチング素子22のソースS側は、直流リアクトル21の負荷側の端部、又は直流リアクトル21のタップに接続する。
【0043】
(クランプ電圧部(回生部)と直流リアクトルとの接続形態)
クランプ電圧部30とパルス部20の直流リアクトルとの接続は複数の形態とすることができる。第1の形態は直流リアクトルとしてタップ無し単巻きトランスを備え、クランプ電圧部30の出力端を直流リアクトル21の負荷側に接続し、他端を直流電源部側に接続する形態である(
図1(a)に示す構成例)。
【0044】
第2の形態は直流リアクトルとしてタップ付き単巻きトランスを備え、クランプ電圧部30の出力端を第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bの接続点sに接続し、他端を直流電源部側の端子Aに接続する形態(
図1(c)に示す構成例)である。
【0045】
(第1の形態)
第1の形態では、
図1(a)に示すように、昇圧チョッパ回路のスイッチング素子22のソースS側を直流リアクトル21の負荷側の端部に接続すると共に、この接続点sにクランプ電圧部30の出力端を接続する。直流リアクトル21とスイッチング素子22のソースS側とのsはクランプ電圧部30のクランプ電圧VCによりクランプされ、接続点sの電圧Vsは直流電源部の直流電圧VABにクランプ電圧VCが重畳された(VAB+VC)となる。
【0046】
図1(b)は第1の形態の構成の電圧状態を示し、接続点sの電圧Vs及び出力電圧Voを示している。なお、第1の形態の構成では、接続点sの電圧Vsと出力電圧Voは同一電圧となる。直流リアクトル21に蓄積されたエネルギーの放出によって電圧が上昇した場合であっても、接続点sの電圧はクランプ電圧部30のクランプ電圧VCによりクランプされる。これにより、電圧Vs及び出力電圧Voの電圧は(VAB+VC)に保持され、過剰な電圧上昇が抑制される。これに対して、
図11(b)に示したインダクタンスに抵抗Rを並列接続した構成では、
図1(b)の一点鎖線の電圧変化で示すように、スイッチング素子のオフ時に急激に増加してサージ電圧が発生する。抵抗Rは、低抵抗にすることでサージ電圧を抑制することができるが、リアクトル電圧VDCLと同様の電圧が印加されるため、損失が大きくなる。
【0047】
第1の形態において、クランプ電圧部30を回生部で構成する場合には、回生部には直流リアクトル21の全リアクトル電圧が入力され、回生部の設定電圧との比較に基づいて回生動作が行われる。回生先は例えば直流電源部とすることができる。
【0048】
(第2の形態)
第2の形態では、
図1(c)に示すように、直流リアクトル21は磁気結合された第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bの直列回路で構成され、昇圧チョッパ回路のスイッチング素子22のソースS側を第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bのタップに接続すると共に、このタップを接続点sとしてクランプ電圧部30の出力端を接続する。したがって、接続点sには、直流リアクトル21のタップ、及びクランプ電圧源の出力端及び昇圧チョッパ回路のスイッチング素子22のソースS側が接続される。
【0049】
直流リアクトル21のタップとスイッチング素子22のソースS側との接続点sはクランプ電圧部30のクランプ電圧VCによりクランプされ、接続点sの電圧Vsは直流電源部直流電圧VABにクランプ電圧VCが重畳された(VAB+VC)となる。
【0050】
図1(d),(e)は第2の形態の構成の電圧状態を示し、
図1(d)は接続点sの電圧Vsを示し、
図1(e)は出力電圧Voを示している。直流リアクトル21に蓄積されたエネルギーの放出によって電圧が上昇した場合であっても、接続点sの電圧はクランプ電圧部30のクランプ電圧VCによりクランプされる。これにより、電圧Vsは(VAB+VC)に保持され、出力電圧Voの電圧は(VAB+VC+VDCL2)に保持され、過剰な電圧上昇が抑制される。これに対して、
図11(b)に示したインダクタンスに抵抗Rを並列接続した構成では、
図1(d),(e)の一点鎖線の電圧変化で示すように、スイッチング素子のオフ時に急激に増加してサージ電圧が発生する。抵抗Rは、低抵抗にすることでサージ電圧を抑制することができるが、リアクトル電圧VDCLと同様の電圧が印加されるため、損失が大きくなる。
【0051】
第2の形態において、クランプ電圧部30を回生部で構成する場合には、回生部には直流リアクトル21の第1の直流リアクトル21aの両端電圧がリアクトル電圧として入力され、回生部の設定電圧との比較に基づいて回生動作が行われる。回生先は例えば直流電源部とすることができる。
【0052】
第2の形態において、スイッチング素子へのサージ電圧を抑制するには、クランプ電圧部30を直流リアクトル21とスイッチング素子22の接続点である中点に接続する構成が望ましい。
【0053】
直流リアクトル21とスイッチング素子22の接続点にクランプ電圧部30の出力端を接続する構成において、直流リアクトル21が第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bより構成される場合において、第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bとの接続点にクランプ電圧部30の出力端を接続する。
【0054】
磁気結合された第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bにおいて、理想的な場合の結合係数は1であるが、実際の結合係数は1よりも小さくなる。これは漏れ磁束の影響によるものであり、この漏れ磁束が第1の直流リアクトル21a及び第2の直流リアクトル21bに直列接続された漏れインダクタンス21cとなる。この構成において、クランプ電圧部30を接続することにより漏れインダクタンス21cによるサージ電圧の発生は、抑制される。
【0055】
図2を用いて、クランプ電圧部30の出力端と直流リアクトル21との接続位置とサージ電圧との関係を説明する。
【0056】
図2(a)~(c)は、クランプ電圧部30の出力端の一方を直流電源部側に接続し、他方を第2の直流リアクトル21bの負荷側に接続した場合を示している。
【0057】
この構成例でおいて、スイッチング素子22のソース端Sにおける電圧Vs、クランプ電圧部30のクランプ電圧VCにクランプされなくなる。第1の直流リアクトル21aに発生する電圧はVDCL1となる。また、漏れインダクタンス21cによるサージ電圧は、VLとなる。つまり、電圧VsにはVDCL1+VLの電圧が発生する。
図2(b)に示すように、電圧VsはVs=VAB+VDCL1+VLとなり、サージ電圧VLが含まれるため、電圧Vsはサージ電圧の影響を受ける。
【0058】
また、出力電圧VoはVo=VAB+VDCL1+VDCL2+VLとなる。出力電圧Voに含まれる電圧分(VDCL1+VDCL2+VL)は、第1の直流リアクトル21aのインダクタンスによる電圧分(VDCL1)と第2の直流リアクトル21bのインダクタンスによる電圧分(VDCL2)と漏れインダクタンス21cの漏れインダクタンスによるサージ電圧分(VL)とが加算されたものであるため、出力電圧Voはサージ電圧の影響を受ける。
【0059】
上記の説明からサージ電圧VLの発生を抑制するために、第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bとの接続点にクランプ電圧部30の出力端を接続する。
【0060】
本発明の直流パルス電源装置について、第1の構成例~第5の構成例を
図3~
図10を用いて説明する。第1の構成例~第5の構成例の各構成例では、クランプ電圧部30を回生部30Aにより構成する例を示している。
【0061】
第1の構成例は昇圧チョッパ回路の直流リアクトルの両端のリアクトル電圧を回生する構成であり、第2~第5の構成例は昇圧チョッパ回路の磁気結合する二つの直流リアクトルの一方の直流リアクトルのリアクトル電圧を回生する構成であり、第2,5の構成例は磁気結合する二つの直流リアクトルをタップ付き単巻きトランスとする構成であり、第3,4の構成例は磁気結合する二つの直流リアクトルを複巻きトランスとする構成である。また、回生するリアクトル電圧について、第1~第5の構成例は直流電源部の低電圧側の電圧を基準電圧としている。
【0062】
[直流パルス電源装置の第1の構成例]
本発明の直流パルス電源装置の第1の構成例、及び電圧状態を
図3、及び
図4,5を用いて説明する。
【0063】
本発明の直流パルス電源装置は、直流電源部(DC部)10と、直流電源部10に接続された昇圧チョッパ回路により発生したパルス出力を負荷4に供給するパルス部20Aと、パルス部20Aで発生する過剰な電圧上昇分を直流電源部10側に回生して、スイッチング素子22のソース端及び直流パルス電源装置の出力端の上限電圧をクランプ電圧にクランプするクランプ電圧部として回生部30Aを備え、出力ケーブル3を介して負荷4にパルス出力を供給する。制御回路部40は直流電源部10、パルス部20A、及び回生部30Aを制御する。
図3では、負荷4としてプラズマ発生装置の例を示しているが、負荷4はプラズマ発生装置に限らず、パルスレーザ励起、放電加工機等に適用してもよい。
【0064】
(直流電源部)
直流電源部(DC部)10は、交流電源2の交流電圧を直流電圧に整流する整流器11と、整流時に発生する過渡的に発生するスパイク状の高電圧を吸収して抑制するスナバ回路12と、直流電圧を交流電圧に変換する単相インバータ回路13と、単相インバータ回路13の交流電圧を所定の電圧値に電圧変換する単相変圧器14と、単相変圧器14で電圧変換された交流電圧を直流電圧に整流する整流器15と、両端電圧を直流電源部の直流電圧とするキャパシタ16(CF)を備える。キャパシタ16の一端は接地され、他端に負電圧の低電圧が形成される。なお、
図3に示す構成では、負荷4としてプラズマ発生装置の容量負荷の例を示している。ここでは、プラズマ発生装置の一端を接地して負電圧を供給しているため、直流電源部10は負電圧のパルス出力を発生する構成を示している。
【0065】
単相インバータ回路13は、制御回路部40からの制御信号によりスイッチング動作を行って、直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換する。直流電源部10を構成する、整流器11,15、スナバ回路12、単相インバータ回路13、単相変圧器14の各回路要素は通常に知られる任意の回路構成とすることができる。
【0066】
(パルス部)
パルス部20Aは昇圧チョッパ回路により直流電圧からパルス波形を生成する。昇圧チョッパ回路は、直流電源部側と負荷側との間に直列接続された直流リアクトル21Aと、負荷側に対して並列接続されたスイッチング素子(Q1)22と、スイッチング素子22のオン/オフ動作を駆動する駆動回路23を備える。パルス部20Aの直流電源部側は、接地された端子Bと低電圧側として負電圧の端子Aを備える。図示するスイッチング素子22はFETの例を示し、ソースS側を低電圧側にドレインD側を接地電圧側に接続し、ゲートG側には駆動回路23からの駆動信号が入力される。
【0067】
制御回路部40は、昇圧チョッパ回路を動作させるのに、目標のパルス出力に対応してスイッチング素子22のオン期間とオフ期間の時間幅ないしデューティー比を定める信号を生成すると共に、直流電源部10の出力端の電圧、及び電流に基づいて制御信号を生成する。
【0068】
駆動回路23は、制御回路部40の制御信号に基づいてスイッチング素子22のゲートGに駆動信号を出力し、スイッチング素子22のオン/オフ動作を行わせる。
【0069】
スイッチング素子22のソースS側は直流リアクトル21Aの負荷側に接続され、スイッチング素子22のドレインD側は接地される。スイッチング素子22がオン状態のときは、直流リアクトル21Aの負荷側は接地され、端子Bからオン状態にあるスイッチング素子22、及び直流リアクトル21Aを介して端子Aに電流が流れる。この際、直流リアクトル21Aには電磁エネルギーが蓄積される。次に、スイッチング素子22がオン状態からオフ状態に切り替わると、直流リアクトル21Aに蓄積された蓄積エネルギーにより直流リアクトル21Aにはリアクトル電圧VDCLが発生する。昇圧チョッパ回路は、スイッチング素子22のオン動作とオフ動作を繰り返すことによりオン/オフ時間のデューティー比に応じて出力電圧Voを上昇させる。
【0070】
(クランプ電圧部:回生部)
回生部30Aは昇圧チョッパ回路の直流リアクトルのリアクトル電圧の内、設定電圧を超える電圧分を直流電源部に回生する。回生部30Aは、ダイオード31、キャパシタ32(C1)、インバータ回路33,変圧器34,整流器35を備える。回生部30Aは、リアクトル電圧が設定電圧を超える際には、設定電圧を超える電圧分を直流電源部に回生することにより、リアクトル電圧をキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1にクランプするクランプ電圧部として機能する。このとき、クランプ電圧部のクランプ電圧はキャパシタ電圧VC1で定まる。回生部30A(クランプ電圧部30)は、スイッチング素子22のソース端及び直流パルス電源装置の出力端の上限電圧をキャパシタ電圧VC1にクランプし、スイッチング素子22のドレイン・ソース電圧VDSに過剰電圧が印加されること抑制し、負荷電流変動に伴う出力電圧が変動することを抑制する。
【0071】
キャパシタ32(C1)の一端は直流リアクトル21Aの負荷側端部に接続され、他端はダイオード31を介して直流リアクトル21Aの直流電源部側の端部に接続され、第1の直流リアクトル21aに発生するリアクトル電圧が印加される。キャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1は、直流電源部の直流電圧VABに基づいて定まり、変圧器34の変圧比が(n2:n1)である場合にはVC1=(n2/n1)×VABの設定電圧となる。ダイオード31はパルス部20Aから回生部30Aのキャパシタ32(C1)に向かう方向を順方向として接続され、直流リアクトル21Aのリアクトル電圧VDCLがキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた場合に、リアクトル電圧VDCLがキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた電圧分について回生部30Aによる回生が行われる。したがって、回生部30Aはキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1をしきい値として回生動作を行う。なお、キャパシタ電圧VC1は
図1の回生入力電圧Vinに対応する電圧である。
【0072】
キャパシタ電圧VC1を定める方法としては、変圧器34の変圧比を変更する他に、インバータ回路33の出力を制御する方式がある。たとえば、PWM制御や位相シフト制御などがあるが、インバータ回路の出力を制御する方式であれば、この限りではない。
【0073】
また、
図3に示す回路構成では、回生部30Aは、一端がパルス部20Aの低電圧側入力端に接続された構成であり、低電圧側の電圧(負電圧)を基準として直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCLを回生入力電圧Vinとして回生を行う。
【0074】
インバータ回路33はキャパシタ32側の直流電圧と変圧器34側の交流電圧との間で直交変換を行い、キャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を直流電源部の直流電圧VABに基づいて一定電圧に保持すると共に、リアクトル電圧VDCLがキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた場合にはその越えた電圧分を交流に変換して直流電源部側に回生する。キャパシタ電圧VC1は一定電圧に保持されることから、直流リアクトル21Aのリアクトル電圧VDCLはキャパシタ電圧VC1にクランプされる。インバータ回路33は、例えば、スイッチング素子のブリッジ回路で構成することができる。スイッチング素子の開閉動作は制御回路部40からの制御信号αにより制御される。
【0075】
変圧器34は、直流電源部10の直流電圧VABとキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1との電圧比率を変圧比に基づいて変調する。変圧器34の変圧比が(n2:n1)である場合には、直流電圧VABとキャパシタ電圧VC1との間の電圧関係は、VC1=(n2/n1)×VABで表される。
【0076】
整流器35は変圧器34側の交流電圧を直流電源部10側の直流電圧に整流する。整流器35の直流側端子は直流電源部10の端子A、Bに接続され、キャパシタ電圧VC1が直流電圧VABに基づいた電圧を超える場合のみに、直流電源部10に電力を回生する。
【0077】
なお、回生部30Aの構成は直流リアクトル21Aの両端電圧を所定電圧のクランプする機能、及び所定電圧を越える電力分を直流電源部側に回生する機能を備える構成であれば、上記した構成に限られるものではない。
【0078】
(直流パルス電源装置の電圧状態)
直流パルス電源装置の電圧状態について
図4及び
図5を用いて説明する。
図4において、
図4(a)はスイッチング素子22(Q1)のオン状態(on)とオフ状態(off)を示し、
図4(b)は直流リアクトル21Aのリアクトル電圧VDCLを示し、
図4(c)はスイッチング素子22のドレイン・ソース電圧VDSを示し、
図4(d)は出力電圧Voを示している。
【0079】
以下、図中のS1~S14は、各段階のオン状態及びオフ状態を示している。S1、S3、・・・S13の奇数番号を付した状態はスイッチング素子22がオン状態(on)を示し、S2、S4、・・・S14の偶数番号を付した状態はスイッチング素子22がオフ状態(off)を示している。
【0080】
(i)オン状態(S1、S3、・・・、S13):
スイッチング素子22はオン状態にあり(
図4(a))、直流リアクトル21Aの負側の端子は接地されるため、スイッチング素子22のドレイン・ソース電圧VDSの電圧は0となり(
図4(c))、直流リアクトル21Aのリアクトル電圧VDCLは直流電源部の直流電圧VABとなる(
図4(b))。出力電圧Voは0Vとなる(
図4(d))。
【0081】
(ii)オフ状態(S2、S4、・・・、S14):
オフ状態については、リアクトル電圧VDCLが回生動作のしきい値であるキャパシタ電圧VC1に達する前の状態(S2、S4、S6)と、キャパシタ電圧VC1に達した後の状態(S8、S10、S12、S14)について説明する。
【0082】
(ii-1)S2、S4、S6の状態:
スイッチング素子22はオフ状態にあり(
図4(a))、直流リアクトル21Aには蓄積された蓄積エネルギーの放出によるリアクトル電圧VDCLが発生する。リアクトル電圧VDCLの電圧値は、オン状態からオフ状態に切り替わる度に上昇する。この電圧上昇において、リアクトル電圧VDCLは回生部のキャパシタ電圧VC1に達していないため、回生は行われない。なお、
図4では負側の電圧値が増加する状態を示している(
図4(b))。
【0083】
スイッチング素子22のドレイン・ソース電圧VDSの電圧は、リアクトル電圧VDCLに応じた電圧となり徐々に増加するが、回生部のキャパシタ電圧VC1に達していない。なお、
図4では負側の電圧値が増加する状態を示している(
図4(c))。出力電圧Voには、直流電源部の直流電圧VABにリアクトル電圧VDCLが加わった電圧分が出力される(
図4(d))。
【0084】
(ii-2) S8、S10、S12、S14の状態:
S2、S4、S6の状態と同様に、スイッチング素子22はオフ状態にあり(
図4(a))、直流リアクトル21Aには蓄積された蓄積エネルギーの放出によるリアクトル電圧VDCLが発生する。S8、S10、S12、S14の状態では、リアクトル電圧VDCLの電圧値がキャパシタ電圧VC1に達するため、リアクトル電圧VDCLの電圧値はキャパシタ電圧VC1にクランプされ、これ以上の電圧上昇は抑えられる。
図4(b)において、実線で示すリアクトル電圧VDCLはキャパシタ電圧VC1にクランプされた状態を示し、破線で示すリアクトル電圧VDCLはキャパシタ電圧VC1にクランプされていない場合を比較例として示している。
【0085】
スイッチング素子22のドレイン・ソース電圧VDSの電圧はリアクトル電圧VDCLに応じた電圧となり、回生部のキャパシタ電圧VC1の電圧に保持される。
図4(c)において、実線で示すドレイン・ソース電圧VDSはキャパシタ電圧VC1にクランプされた状態を示し、破線で示すドレイン・ソース電圧VDSはキャパシタ電圧VC1にクランプされていない場合を比較例として示している。なお、
図4では負側の電圧値が増加する状態を示している(
図4(c))。
【0086】
出力電圧Voには、直流電源部の直流電圧VABにリアクトル電圧VDCLが加わった電圧分が出力される。リアクトル電圧VDCLがクランプされるため、出力電圧Voは一定電圧に保持される(
図4(d))。
【0087】
図5(a)は、第1の構成例において回生状態での出力電圧Voを示している。直流パルス電源装置は、昇圧チョッパ回路の切り替え周期をパルス周期Tとして出力電圧Voのパルス出力を出力する。パルス出力は、パルス周期T内にスイッチング素子がオン状態となるオン期間Tonと、スイッチング素子がオフ状態となるオフ期間Toffを有する。オン期間Tonの出力電圧Voはドレイン・ソース電圧VDSに対応する電圧値である。
【0088】
一方、オフ期間Toffの出力電圧Voは、直流電源部の直流電圧VABにリアクトル電圧VDCLが重畳された(VAB+VDCL)となるが、リアクトル電圧VDCLはキャパシタ電圧VC1にクランプされるため(VAB+VC1)となる。直流電圧VAB及びキャパシタ電圧VC1は一定電圧であるため、パルス出力の出力電圧Voは一定電圧に保持される。
図5(a)中の破線部分はリアクトル電圧VDCLからクランプされたキャパシタ電圧VC1を差し引いた抑制電圧分(VDCL-VC1)を表している。これに対して、
図11(b)に示したインダクタンスに抵抗Rを並列接続した構成では、
図5(a)の一点鎖線の電圧変化で示すように、スイッチング素子のオフ時に急激に増加してサージ電圧が発生する。
【0089】
(回生部の構成例)
図6を用いて本発明の直流パルス電源装置の回生部が備えるインバータ回路の回路構成例を説明する。
【0090】
回生部30Aは、キャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1の直流電圧を直交変換して得られた交流電圧を変圧器34に出力するインバータ回路33を含んでいる。インバータ回路33は、スイッチング素子QR1~QR4からなるブリッジ回路33aと、制御信号αに基づいてスイッチング素子QR1~QR4を駆動する駆動信号を生成する駆動回路33bとを備える。なお、ここでは、ブリッジ回路33aとしてフルブリッジ回路の例を示しているが、ハーフブリッジ回路や多相インバータ回路を用いても良い。
【0091】
[直流パルス電源装置の第2の構成]
本発明の直流パルス電源装置の第2の構成は、第1の構成と同様に、直流電源部(DC部)10と、直流電源部10に接続された昇圧チョッパ回路により発生したパルス出力を負荷4に供給するパルス部20Bと、パルス部20Bの過剰な電圧上昇分を直流電源部10側に回生する回生部30Aと、直流電源部10、パルス部20b、及び回生部30Aを制御する制御回路部40を備え、出力ケーブル3を介して負荷4にパルス出力を供給する。
【0092】
図7を用いて本発明の直流パルス電源装置の第2の構成例について説明する。第2の構成例は、パルス部20の昇圧チョッパ回路の構成において第1の構成例と相違し、その他の構成は第1の構成例と同様である。以下、第1の構成例と相違する構成について説明し、その他の共通する構成の説明は省略する。
【0093】
第1の構成例の昇圧チョッパ回路が備える直流リアクトル21Aは単一のコイルで構成される。これに対して、第2の構成例の直流リアクトル21Bは、第1の構成例の昇圧チョッパ回路の単一コイルに代えてタップ付き単巻きトランスで構成される。タップ付き単巻きトランスによる直流リアクトル21Bは、磁気結合された第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bとを直列接続して構成することができ、第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bの接続点をタップ点としている。第1の直流リアクトル21aの一端は直流電源部の低電圧側の端子Aに接続され、第2の直流リアクトル21bの一端は負荷側に接続され、第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bの接続点のタップ点はスイッチング素子22のソースS端に接続される。
【0094】
スイッチング素子22がオン状態のときは、直流リアクトル21Bの接続点のタップ点は接地され、端子Bからオン状態にあるスイッチング素子22、及び直流リアクトル21Bの第1の直流リアクトル21aを介して端子Aに電流が流れる。この際、第1の直流リアクトル21aに電磁エネルギーが蓄積される。
【0095】
次に、スイッチング素子22がオン状態からオフ状態に切り替わると、直流リアクトル21Bの第1の直流リアクトル21aに蓄積された蓄積エネルギーにより流れるリアクトル電流iLによって第1の直流リアクトル21aにはリアクトル電圧VDCL1が発生し、第2の直流リアクトル21bにはリアクトル電圧VDCL2が発生する。昇圧チョッパ回路は、スイッチング素子22のオン動作とオフ動作を繰り返すことにより、第1の構成例と同様に出力電圧Voを上昇させる。
【0096】
第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21bのリアクトル電圧VDCL2との電圧比は、第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bのインダクタンス比の比率に対応した値となる。直流リアクトル21Bの第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bのタップ付き単巻きコイルの巻き数比をn1p:n2pとした場合には、第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21bのリアクトル電圧VDCL2との電圧比(VDCL1/VDCL2)は巻き数比(n1p/n2p)となる。
【0097】
第2の構成例の回生部30Aは、第1の構成例の直流リアクトル21Aのリアクトル電圧VDCLに代えて直流リアクトル21Bの第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1を適用することで同様に動作する。回生部30Aは、リアクトル電圧が設定電圧を超える際には、設定電圧を超える電圧分を直流電源部に回生することにより、リアクトル電圧をキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1にクランプするクランプ電圧部として機能する。このとき、クランプ電圧部のクランプ電圧はキャパシタ電圧VC1で定まる。回生部30A(クランプ電圧部30)は、スイッチング素子22のソース端及び直流パルス電源装置の出力端の上限電圧をキャパシタ電圧VC1にクランプし、スイッチング素子22のドレイン・ソース電圧VDSに過剰電圧が印加されること抑制し、負荷電流変動に伴う出力電圧が変動することを抑制する。
【0098】
回生部30Aにおいて、キャパシタ32(C1)の一端は直流リアクトル21Bの第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bの接続点に接続され、他端はダイオード31を介して第1の直流リアクトル21aの直流電源部側の端部に接続され、第1の直流リアクトル21aに発生するリアクトル電圧VDCL1が印加される。キャパシタ32(C1)の電圧キャパシタVC1は、直流電源部の直流電圧VAB及び変圧器34の変圧比に基づいて定まり、変圧器34の変圧比が(n2:n1)である場合にはVC1=(n2/n1)×VABの設定電圧となる。ダイオード31はパルス部20Bから回生部30Aのキャパシタ32(C1)に向かう方向を順方向として接続され、第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1がキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた場合に、リアクトル電圧VDCL1がキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた電圧分について回生部30Aによる回生が行われる。したがって、回生部30Aは第1の構成例と同様にキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1をしきい値として回生動作を行う。
【0099】
出力電圧Voには、直流電源部の直流電圧VABに第1の直流リアクトルBのリアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21bのリアクトル電圧VDCL2が重畳された電圧(Vo=VAB+VDCL1+VDCL2)が出力される。第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1はキャパシタ電圧VC1にクランプされるため、出力電圧VoはVo=VAB+VC1+VDCL2となる。
【0100】
図5(b)は、第2の構成例において回生状態での出力電圧Voを示している。直流パルス電源装置は、昇圧チョッパ回路の切り替え周期をパルス周期Tとして出力電圧Voのパルス出力を出力する。パルス出力は、パルス周期T内にスイッチング素子がオン状態となるオン期間Tonと、スイッチング素子がオフ状態となるオフ期間Toffを有する。オン期間Tonの出力電圧Voはリアクトル電圧VDCL2に対応する電圧値である。
【0101】
一方、オフ期間Toffの出力電圧Voは、直流電源部の直流電圧VABに第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21bのリアクトル電圧VDCL2とが重畳された(VAB+VDCL1+VDCL2)となるが、リアクトル電圧VDCL1はキャパシタ電圧VC1にクランプされるため、出力電圧Voは(VAB+VC1+VDCL2)となる。直流電圧VAB及びキャパシタ電圧VC1は一定電圧であるため、パルス出力の出力電圧Voはほぼ一定電圧に保持される。
【0102】
図5(b)中の破線部分は、抑制電圧分を表している。回生によるキャパシタ電圧VC1のクランプにより、スイッチング素子のソース端に印加される電圧はVDCL1からVC1となり、これにより(VDCL1-VC1)の電圧が抑制される。また、リアクトル電圧VDCL1が抑制されたことで第2の直流リアクトル21b発生するリアクトル電圧VDCL2も同様に巻線比に応じて(VDCL1-VC1)×(n2p/n1p)に抑制される。そのため、出力電圧のクランプ分は(VDCL1-VC1)×(1+n2p/n1p)になる。これに対して、
図11(b)に示したインダクタンスに抵抗Rを並列接続した構成では、
図5(b)の一点鎖線の電圧変化で示すように、スイッチング素子のオフ時に急激に増加してサージ電圧が発生する。
【0103】
[直流パルス電源装置の第3の構成]
本発明の直流パルス電源装置の第3の構成は、第1,2の構成と同様に、直流電源部(DC部)10と、直流電源部10に接続された昇圧チョッパ回路によりパルス出力を発生し、負荷4に供給するパルス部20Cと、パルス部20Cの過剰な電圧上昇分を直流電源部10側に回生する回生部30Aと、直流電源部10、パルス部20C、及び回生部30Aを制御する制御回路部40を備え、出力ケーブル3を介して負荷4にパルス出力を供給する。
【0104】
図8を用いて本発明の直流パルス電源装置の第3の構成例について説明する。第3の構成例は、パルス部20Cの昇圧チョッパ回路の構成において第1,2の構成例と相違し、その他の構成は第1,2の構成例と同様である。以下、第1,2の構成例と相違する構成について説明し、その他の共通する構成の説明は省略する。
【0105】
第2の構成例の昇圧チョッパ回路が備える直流リアクトル21Bはタップ付き単巻きトランスで構成される。これに対して、第3の構成例の直流リアクトル21Cは、第2の構成例の昇圧チョッパ回路のタップ付き単巻きトランスに代えて複巻きトランスで構成される。直流リアクトル21Cの複巻きトランスは加極性の変圧器の例を示している。
【0106】
複巻きトランスによる直流リアクトル21Cは、磁気結合された第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bとが並列接続された構成である。第1の直流リアクトル21aの一端は直流電源部の低電圧側の端子Aに接続され、他端はスイッチング素子22のソースS端に接続される。第2の直流リアクトル21bの一端はスイッチング素子22のソースS端に接続され、他端は負荷側に接続される。
【0107】
スイッチング素子22がオン状態のときは、直流リアクトル21Cの第1の直流リアクトル21aのスイッチング素子22側の端部は接地され、端子Bからオン状態にあるスイッチング素子22、及び第1の直流リアクトル21aを介して端子Aに電流が流れる。この際、第1の直流リアクトル21aに電磁エネルギーが蓄積される。
【0108】
次に、スイッチング素子22がオン状態からオフ状態に切り替わると、直流リアクトル21Cの第1の直流リアクトル21aに蓄積された蓄積エネルギーにより流れるリアクトル電流iLによって第1の直流リアクトル21aにはリアクトル電圧VDCL1が発生し、第2の直流リアクトル21bには第1の直流リアクトル21aとの磁気結合によりリアクトル電圧VDCL2が発生する。昇圧チョッパ回路は、スイッチング素子22のオン動作とオフ動作を繰り返すことにより、第1,2の構成例と同様に出力電圧Voを上昇させる。
【0109】
第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21bのリアクトル電圧VDCL2との電圧比は、第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bのインダクタンス比の比率に対応した値となる。直流リアクトル21Cの第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bの複巻きコイルの巻き数比が(n1p:n2p)とした場合には、第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21bのリアクトル電圧VDCL2との電圧比(VDCL1/VDCL2)は巻き数比(n1p/n2p)となる。
【0110】
第3の構成例の回生部30Aは、第2の構成例の直流リアクトル21Bの第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1と同様に動作する。回生部30Aは、リアクトル電圧が設定電圧を超える際には、設定電圧を超える電圧分を直流電源部に回生することにより、リアクトル電圧をキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1にクランプするクランプ電圧部として機能する。このとき、クランプ電圧部のクランプ電圧はキャパシタ電圧VC1で定まる。回生部30A(クランプ電圧部30)は、スイッチング素子22のソース端及び直流パルス電源装置の出力端の上限電圧をキャパシタ電圧VC1にクランプし、スイッチング素子22のドレイン・ソース電圧VDSに過剰電圧が印加されること抑制し、負荷電流変動に伴う出力電圧が変動することを抑制する。
【0111】
回生部30Aにおいて、キャパシタ32(C1)の一端は直流リアクトル21Cの第1の直流リアクトル21aのスイッチング素子側の端部に接続され、他端はダイオード31を介して第1の直流リアクトル21aの直流電源部側の端部に接続され、第1の直流リアクトル21aに発生するリアクトル電圧VDCL1が印加される。キャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1は、直流電源部の直流電圧VAB及び変圧器の変圧比に基づいて定まり、変圧器34の変圧比が(n2:n1)である場合にはVC1=(n2/n1)×VABの設定電圧となる。ダイオード31はパルス部から回生部30Aのキャパシタ32(C1)に向かう方向を順方向として接続され、第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1がキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた場合に、リアクトル電圧VDCL1がキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた電圧分について回生部30Aによる回生が行われる。したがって、回生部30Aは第1,2の構成例と同様にキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1をしきい値として回生動作を行う。
【0112】
出力電圧Voには、直流電源部の直流電圧VABに第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21bのリアクトル電圧VDCL2が重畳された電圧(Vo=VAB+VDCL1+VDCL2)が出力される。第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1はキャパシタ電圧VC1にクランプされるため、出力電圧VoはVo=VAB+VC1+VDCL2となる。なお、第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bとの巻き数比が(n1p/n2p)であるときには、リアクトル電圧VDCL1及びVDCL2は(VDCL1/VDCL2=n1p/n2p)で表される。
【0113】
[直流パルス電源装置の第4の構成]
本発明の直流パルス電源装置の第4の構成は、第1,2,3の構成と同様に、直流電源部(DC部)10と、直流電源部10に接続された昇圧チョッパ回路によりパルス出力を発生し、負荷4に供給するパルス部20Dと、パルス部20Dの過剰な電圧上昇分を直流電源部10側に回生する回生部30Aと、直流電源部10、パルス部20D、及び回生部30Aを制御する制御回路部40を備え、出力ケーブル3を介して負荷4にパルス出力を供給する。
【0114】
図9を用いて本発明の直流パルス電源装置の第4の構成例について説明する。第4の構成例は、パルス部20Dの昇圧チョッパ回路の直流リアクトルを構成するトランスの構成において第3の構成例と相違し、その他の構成は第3の構成例と同様である。
【0115】
第3の構成例の昇圧チョッパ回路が備える直流リアクトル21Cは加極性の複巻きトランスで構成される。これに対して、第4の構成例の直流リアクトル21Dは、第3の構成例の昇圧チョッパ回路の加極性の複巻きトランスに代えて減極性の複巻きトランスで構成される。
【0116】
複巻きトランスによる直流リアクトル21Dは、磁気結合された第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bとを並列接続する構成である。第1の直流リアクトル21aの一端は直流電源部の低電圧側の端子Aに接続され、他端はスイッチング素子22のソースS端に接続される。第2の直流リアクトル21b一端は直流電源部の低電圧側の端子Aに接続され、他端は負荷側に接続される。
【0117】
スイッチング素子22がオン状態のときは、直流リアクトル21Dの第1の直流リアクトル21aのスイッチング素子22側の端部は接地され、端子Bからオン状態にあるスイッチング素子22、及び第1の直流リアクトル21aを介して端子Aに電流が流れる。この際、第1の直流リアクトル21aに電磁エネルギーが蓄積される。
【0118】
次に、スイッチング素子22がオン状態からオフ状態に切り替わると、直流リアクトル21Dの第1の直流リアクトル21aに蓄積された蓄積エネルギーにより流れるリアクトル電流iLによって第1の直流リアクトル21aにはリアクトル電圧VDCL1が発生し、第2の直流リアクトル21bには第1の直流リアクトル21aとの磁気結合によりリアクトル電圧VDCL2が発生する。昇圧チョッパ回路は、スイッチング素子22のオン動作とオフ動作を繰り返すことにより、第1,2,3の構成例と同様に出力電圧Voを上昇させる。
【0119】
第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21bのリアクトル電圧VDCL2との電圧比は、第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bのインダクタンス比の比率に対応した値となる。直流リアクトル21Dの第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bの複巻きコイルの巻き数比が(n1p:n2p)とした場合には、第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21bのリアクトル電圧VDCL2との電圧比(VDCL1/VDCL2)は巻き数比(n1p/n2p)となる。
【0120】
第4の構成例の回生部の直流リアクトル21Dは、第3の構成例の直流リアクトル21Cの第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1と同様に動作する。回生部30Aは、リアクトル電圧が設定電圧を超える際には、設定電圧を超える電圧分を直流電源部に回生することにより、リアクトル電圧をキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1にクランプするクランプ電圧部として機能する。このとき、クランプ電圧部のクランプ電圧はキャパシタ電圧VC1で定まる。回生部30A(クランプ電圧部30)は、スイッチング素子22のソース端及び直流パルス電源装置の出力端の上限電圧をキャパシタ電圧VC1にクランプし、スイッチング素子22のドレイン・ソース電圧VDSに過剰電圧が印加されること抑制し、負荷電流変動に伴う出力電圧が変動することを抑制する。
【0121】
回生部30Aにおいて、キャパシタ32(C1)の一端は直流リアクトル21Dの第1の直流リアクトル21aのスイッチング素子側の端部に接続され、他端はダイオード31を介して第1の直流リアクトル21aの直流電源部側の端部に接続され、第1の直流リアクトル21aに発生するリアクトル電圧VDCL1が印加される。キャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1は、直流電源部の直流電圧VAB及び変圧器の変圧比に基づいて定まり、変圧器34の変圧比が(n2:n1)である場合にはVC1=(n2/n1)×VABの設定電圧となる。ダイオード31はパルス部から回生部30Aのキャパシタ32(C1)に向かう方向を順方向として接続され、第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1がキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた場合に、リアクトル電圧VDCL1がキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた電圧分について回生部30Aによる回生が行われる。したがって、回生部30Aは第1,2,3の構成例と同様にキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1をしきい値として回生動作を行う。
【0122】
出力電圧Voには、直流電源部の直流電圧VABに第2の直流リアクトル21bのリアクトル電圧VDCL2が重畳された電圧(Vo=VAB+VDCL2)が出力される。なお、第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bとの巻き数比が(n1p/n2p)であるときには、リアクトル電圧VDCL1及びリアクトル電圧VDCL2は(VDCL1/VDCL2=n1p/n2p)で表される。そのため、リアクトル電圧VDCL1がVC1によってクランプされる場合、出力電圧VoはVo=VAB+VC1×(n1p/n2p)で表される。
【0123】
[直流パルス電源装置の第5の構成]
本発明の直流パルス電源装置の第5の構成は、第1の構成と同様に、直流電源部(DC部)10と、直流電源部10に接続された昇圧チョッパ回路により発生したパルス出力を負荷4に供給するパルス部20Eと、パルス部20Eの過剰な電圧上昇分を直流電源部10側に回生する回生部30Aと、直流電源部10、パルス部20E、及び回生部30Aを制御する制御回路部40を備え、出力ケーブル3を介して負荷4にパルス出力を供給する。
【0124】
図10を用いて本発明の直流パルス電源装置の第5の構成例について説明する。第5の構成例は、昇圧チョッパ回路の直流リアクトルの設置態様において第2の構成例と相違し、その他の構成は第2の構成例と同様である。以下、第2の構成例と相違する構成について説明し、その他の共通する構成の説明は省略する。
【0125】
第5の構成例の昇圧チョッパ回路が備える直流リアクトル21Eは第2の構成例の昇圧チョッパ回路の直流リアクトル21Bと同様にトラップ付き単巻きトランスで構成されるが、電源ラインに対する設置態様において相違する。第2の構成例の直流リアクトル21Bは直流電源部の低電圧側の電源ラインに接続されるのに対して、第5の構成例の直流リアクトル21Eは直流電源部の高電圧側の電源ラインに接続される。
【0126】
タップ付き単巻きトランスによる直流リアクトル21Eは、磁気結合された第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bとを直列接続して構成され、第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bの接続点をタップ点としている。第1の直流リアクトル21aの一端は直流電源部の高電圧側の端子Bに接続され、第2の直流リアクトル21bの一端は負荷側に接続されて接地され、第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bの接続点のタップ点はスイッチング素子22のドレインD端に接続される。
【0127】
スイッチング素子22がオン状態のときは、直流リアクトル21Eの接続点のタップ点は第2の直流リアクトル21bを介して接地され、端子Bから第1の直流リアクトル21a、及びオン状態にあるスイッチング素子22を介して端子Aに電流が流れる。この際、第1の直流リアクトル21aに電磁エネルギーが蓄積される。
【0128】
次に、スイッチング素子22がオン状態からオフ状態に切り替わると、直流リアクトル21Eの第1の直流リアクトル21aに蓄積された蓄積エネルギーにより流れるリアクトル電流iLによって第1の直流リアクトル21aにはリアクトル電圧VDCL1が発生し、第2の直流リアクトル21bにはリアクトル電圧VDCL2が発生する。昇圧チョッパ回路は、スイッチング素子22のオン動作とオフ動作を繰り返すことにより、第1の構成例と同様に出力電圧Voを上昇させる。
【0129】
第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21bのリアクトル電圧VDCL2との電圧比は、第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bのインダクタンス比の比率に対応した値となる。直流リアクトル21Eの第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bのタップ付き単巻きコイルの巻き数比をn1p:n2pとした場合には、第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21bのリアクトル電圧VDCL2との電圧比(VDCL1/VDCL2)は巻き数比(n1p/n2p)となる。
【0130】
第5の構成例の回生部30Aは、第1の構成例の直流リアクトル21Aのリアクトル電圧VDCLに代えて直流リアクトル21Eの第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1を適用することで同様に動作する。回生部30Aは、リアクトル電圧が設定電圧を超える際には、設定電圧を超える電圧分を直流電源部に回生することにより、リアクトル電圧をキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1にクランプするクランプ電圧部として機能する。このとき、クランプ電圧部のクランプ電圧はキャパシタ電圧VC1で定まる。回生部30A(クランプ電圧部30)は、スイッチング素子22のソース端及び直流パルス電源装置の出力端の上限電圧をキャパシタ電圧VC1にクランプし、スイッチング素子22のドレイン・ソース電圧VDSに過剰電圧が印加されること抑制し、負荷電流変動に伴う出力電圧が変動することを抑制する。
【0131】
回生部30Aにおいて、キャパシタ32(C1)の一端は直流リアクトル21Eの第1の直流リアクトル21aと第2の直流リアクトル21bの接続点に接続され、他端はダイオード31を介して第1の直流リアクトル21aの直流電源部側の端部に接続され、第1の直流リアクトル21aに発生するリアクトル電圧VDCL1が印加される。キャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1は、直流電源部の電圧VAB及び変圧器の変圧比に基づいて定まり、変圧器34の変圧比が(n2:n1)である場合にはVC1=(n2/n1)×VABの設定電圧となる。ダイオード31はパルス部20Eから回生部30Aのキャパシタ32(C1)に向かう方向を逆方向として接続され、第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1がキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた場合に、リアクトル電圧VDCL1がキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた電圧分について回生部30Aによる回生が行われる。したがって、回生部30Aは第1の構成例と同様にキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1をしきい値として回生動作を行う。
【0132】
出力電圧Voには、直流電源部の直流電圧VABに第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21bのリアクトル電圧VDCL2が重畳された電圧(Vo=VAB+VDCL1+VDCL2)が出力される。第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1はキャパシタ電圧VC1にクランプされるため、出力電圧VoはVo=VAB+VC1+VDCL2となる。
【0133】
図5(b)は、第2の構成例と同様に、第5の構成例において回生状態での出力電圧Voを示している。直流パルス電源装置は、昇圧チョッパ回路の切り替え周期をパルス周期Tとして出力電圧Voのパルス出力を出力する。パルス出力は、パルス周期T内にスイッチング素子がオン状態となるオン期間Tonと、スイッチング素子がオフ状態となるオフ期間Toffを有する。オン期間Tonの出力電圧Voはリアクトル電圧VDCL2に対応する電圧値である。
【0134】
一方、オフ期間Toffの出力電圧Voは、直流電源部の直流電圧VABに第1の直流リアクトル21aのリアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21bのリアクトル電圧VDCL2とが重畳された(VAB+VDCL1+VDCL2)となるが、リアクトル電圧VDCL1はキャパシタ電圧VC1にクランプされるため、出力電圧Voは(VAB+VC1+VDCL2)となる。直流電圧VAB及びキャパシタ電圧VC1は一定電圧であるため、パルス出力の出力電圧Voはほぼ一定電圧に保持される。
【0135】
図5(b)中の破線部分は、抑制電圧分を表している。回生によるキャパシタ電圧VC1のクランプにより、スイッチング素子のソース端に印加される電圧はVDCL1からVC1となり、これにより(VDCL1-VC1)の電圧が抑制される。また、リアクトル電圧VDCL1が抑制されたことで第2の直流リアクトル21b発生するリアクトル電圧VDCL2も同様に巻線比に応じて(VDCL1-VC1)×(n2p/n1p)に抑制される。そのため、出力電圧のクランプ分は(VDCL1-VC1)×(1+n2p/n1p)になる。
【0136】
なお、上記実施の形態及び変形例における記述は、本発明に係る直流パルス電源装置の一例であり、本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の直流パルス電源装置は、プラズマ発生装置に電力を供給する電力源として適用する他、パルスレーザ励起、放電加工機等の負荷へパルス出力を供給する電源装置として用いることができる。
【符号の説明】
【0138】
1 直流パルス電源装置
2 交流電源
3 出力ケーブル
4 負荷
10 直流電源部
11 整流器
12 スナバ回路
13 単相インバータ回路
14 単相変圧器
15 整流器
16 キャパシタ
20,20A,20B,20C,20D,20E パルス部
21,21A,21B,21C,21D,21E 直流リアクトル
21a 第1の直流リアクトル
21b 第2の直流リアクトル
21c 漏れインダクタンス
22 スイッチング素子
30 クランプ電圧部
30A 回生部
31 ダイオード
32 キャパシタ
33 インバータ回路
33a ブリッジ回路
33b 駆動回路
34 変圧器
35 整流器
100 直流パルス電源装置
110 直流電源
120 昇圧チョッパ回路
121 インダクタ
122 スイッチング素子
123 ダイオード
124 抵抗
125 直流電源
QR1~QR4 スイッチング素子