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特許7018051連続ミキサー、および強化繊維とセメント材料とを混合する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】連続ミキサー、および強化繊維とセメント材料とを混合する方法
(51)【国際特許分類】
   B28C 5/40 20060101AFI20220202BHJP
   B28C 5/14 20060101ALI20220202BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20220202BHJP
   B01F 35/75 20220101ALI20220202BHJP
   B01F 23/50 20220101ALI20220202BHJP
   B01F 23/57 20220101ALI20220202BHJP
   B01F 27/70 20220101ALI20220202BHJP
【FI】
B28C5/40
B28C5/14
B01F15/02 A
B01F15/02 C
B01F3/12
B01F3/14
B01F7/04 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019502190
(86)(22)【出願日】2017-08-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 US2017045420
(87)【国際公開番号】W WO2018027090
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】62/371,578
(32)【優先日】2016-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/662,932
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596172325
【氏名又は名称】ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アシシュ・デューベイ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ビー・グローザ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・アール・ネルソン
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-043805(JP,A)
【文献】特表2003-516880(JP,A)
【文献】特開2008-207140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 1/00-9/40
B01F 7/00-7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維スラリー混合物を調製するための方法であって、
水を含む液体ストリームを、液体ストリーム入口を通してスラリーミキサーの中へ送給し、乾燥セメント質粉体のストリームを前記スラリーミキサーの中へ送給して、セメント質スラリーを形成することであって、前記スラリーミキサーが、横方向または縦方向に載置されたインペラを有する、形成することと、
前記スラリーミキサーからセメント質スラリー入口ポートを通して繊維スラリーミキサーの細長い混合チャンバの中へ前記セメント質スラリーを渡し、前記繊維スラリーミキサーの中へ繊維入口ポートを通して強化繊維のストリームを渡し、前記セメント質スラリーおよび前記強化繊維を混合して、繊維スラリー混合物を生産することであって、
記繊維スラリーミキサーが、
前記細長い混合チャンバが前記繊維スラリーミキサーの送給区間の第1の端部壁と、前記繊維スラリーミキサーの排出区間の第2の端部壁と、前記第1の端部壁から前記第2の端部壁に延在する内部円筒側壁とを有する横型筐体によって画定され
前記横型筐体の第1の送給区間において前記繊維入口ポートは、強化繊維を内部円筒側壁を通して直接前記細長い混合チャンバの中へ導入し、ここで前記強化繊維はガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、その他等のポリマー材料、炭素、黒鉛、アラミド、セラミック、鋼、または、これらの組み合わせを含んでおり、
前記横型筐体の第2の送給区間において前記セメント質スラリー入口ポートセメント質スラリーを前記内部円筒側壁を通して直接前記細長い混合チャンバの中へ導入し、
繊維スラリー混合物出口前記横型筐体の第2の排出端部区間に存在し前記横型筐体の前記第2の排出端部区間にある前記繊維スラリー混合物出口ポートを通して前記繊維スラリーミキサーによって生産された前記繊維スラリー混合物を排出し
通気ポートを通して、原材料供給物から前記細長い混合チャンバの中へ導入された任意の空気を除去し、
前記繊維スラリーミキサーの一方の端部から前記繊維スラリーミキサーのもう一方の端部まで横断する、前記細長い混合チャンバ内に載置された水平配向シャフトと、
一定間隔および異なる円周方向の場所において前記繊維スラリーミキサーの前記水平配向シャフト上に載置された複数の混合および運搬用のパドルであって、前記パドルが、前記横型筐体内で前記水平配向シャフトを中心に回転し、前記パドルが、前記水平配向シャフト上のある場所から半径方向に延在し、前記パドルが、パドルヘッドに係合するピンを備え、前記水平配向シャフト上の前記それぞれの場所に対する前記パドルヘッドの枢動回転を可能にするように、前記ピンが、前記水平配向シャフトおよび/または前記パドルヘッドに枢動可能に係合し、複数の前記パドルが、前記強化繊維およびセメント質スラリーを混合し、混合されている前記強化繊維およびセメント質スラリーを前記繊維スラリー混合物出口ポートまで移動させる、複数の混合および運搬用のパドルと、を備え、
駆動機構および駆動モーターが前記水平配向シャフトを回転し、前記繊維スラリーミキサーが運転中であるときに前記水平配向シャフトが前記駆動機構および前記駆動モーターに外部接続され、
前記セメント質スラリーおよび強化繊維が、5~240秒の平均混合滞留時間にわたって前記繊維スラリーミキサーの前記細長い混合チャンバに加えられ、一方で、回転する前記パドルが剪断力を印加し、均一な繊維スラリー混合物を生産するように、混合中に、前記水平配向シャフトが、30~450rpmで回転し、前記繊維スラリー混合物前記繊維スラリーミキサーから前記横型筐体に対して横方向に前記横型筐体を通して前記繊維スラリー混合物出口ポートの中へ、かつ前記繊維スラリー混合物出口ポートを通して排出され、前記乾燥セメント質粉体は、ポートランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント(CAC)、スルホアルミン酸カルシウムセメント(CSA)、ジオポリマー、マグネシウムオキシクロライドセメント(ソーレルセメント)、およびリン酸マグネシウムセメントのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記細長い混合チャンバが、10秒~120秒の平均スラリー滞留時間を提供し、前記パドルのRPM範囲が、50rpm~250rpmであり、本発明の繊維スラリーミキサーから排出された前記繊維スラリー混合物が、高さ4インチ(101.6mm)および直径2インチ(50.8mm)のパイプを使用したスランプ試験に従って測定したときに、4~11インチ(101.6~279.4mm)のスランプを有し、前記排出された繊維スラリー混合物が、45000センチポアズ未満の粘度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
記繊維スラリーミキサーが、単一の前記水平配向シャフトを備え、前記パドルが、前記水平配向シャフトに枢動可能に取り付けられ、すべての前記パドルは同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記強化繊維はガラス繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記セメント質粉体が、ポートランドセメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記強化繊維と前記セメント質スラリーとを混合し、混合された前記セメント質スラリーと前記強化繊維とを前記繊維スラリー混合物出口ポートまで移動させる間、記水平配向シャフトの縦断面に対する、幅広表面を有する前記パドルヘッドの前記配向が、10°~80°であり、前記細長い混合チャンバを画定する前記横型筐体が、円筒であり、前記パドルの全体的な寸法が、前記繊維スラリーミキサーの前記細長い混合チャンバの内周と前記水平配向シャフトからの前記パドルの最も遠い点との間の離間距離(空間)が1/4インチ(6.35mm)未満となる寸法である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
繊維スラリー混合物を調製するための装置であって、
水を含む液体ストリームと乾燥セメント質粉体のストリームとを混合するための、液体ストリーム入口および乾燥セメント質粉体ストリーム入口を有するスラリーミキサーであって、横方向または縦方向に載置されたインペラを有するスラリーミキサーと、ここで前記乾燥セメント質粉体は、ポートランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント(CAC)、スルホアルミン酸カルシウムセメント(CSA)、ジオポリマー、マグネシウムオキシクロライドセメント(ソーレルセメント)、およびリン酸マグネシウムセメントのうち少なくとも1つを含んでおり、
前記スラリーミキサーから繊維スラリーミキサーの中へ前記セメント質スラリーを通すための導管と、
記繊維スラリーミキサーの中へ強化繊維のストリームを通すための導管と、
前記セメント質スラリーおよび前記強化繊維を混合して繊維スラリー混合物を生産するための前記繊維スラリーミキサーであって、前記強化繊維はガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、その他等のポリマー材料、炭素、黒鉛、アラミド、セラミック、鋼、または、これらの組み合わせを含んでおり、
記繊維スラリーミキサーが、
前記繊維スラリーミキサーの送給区間の第1の端部壁と、前記繊維スラリーミキサーの排出区間の第2の端部壁と、前記第1の端部壁から前記第2の端部壁に延在する内部側壁を有する横型筐体によって画定された細長い混合チャンバと、
前記横型筐体の第1の送給区間において強化繊維を前記内部円筒側壁を通して直接前記細長い混合チャンバの中へ導入するための繊維入口ポートと、
前記横型筐体の第2の送給区間においてセメント質スラリーを前記内部円筒側壁を通して直接前記細長い混合チャンバの中へ導入するためのセメント質スラリー入口ポートと、
前記繊維スラリーミキサーによって生産された前記繊維スラリー混合物を排出するための前記横型筐体の第2の排出端部区間の繊維スラリー混合物出口ポートと、
原材料供給物から前記細長い混合チャンバの中へ導入された任意の空気を除去するための通気ポートと、
前記細長い混合チャンバ内で回転するように載置された水平配向シャフトであって、前記繊維スラリーミキサーの一方の端部からもう一方の端部まで横断する、前記水平配向シャフトと
定間隔および異なる円周方向の場所において前記繊維スラリーミキサーの前記水平配向シャフト上に載置された複数の混合および運搬用のパドルであって、前記パドルが、前記水平配向シャフト上のある場所から半径方向に延在し、前記パドルが、パドルヘッドに係合するピンを備え、前記水平配向シャフト上の前記それぞれの場所に対する前記パドルヘッドの枢動回転を可能にするように、前記ピンが、前記水平配向シャフトおよび/または前記パドルヘッドに枢軸的に係合し、複数の前記パドルが、前記強化繊維およびセメント質スラリーを混合し、混合されている前記強化繊維およびセメント質スラリーを前記繊維スラリー混合物出口ポートまで移動させるように配設される、混合および運搬用のパドルと、を備える、繊維スラリーミキサーと、
駆動機構および駆動モーターであって、前記水平配向シャフトが、前記繊維スラリーミキサーが運転中であるときに前記水平配向シャフトの回転を達成するために、前記駆動機構および前記駆動モーターに外部接続される、駆動機構および駆動モーターと、を備える、装置。
【請求項8】
記繊維スラリーミキサーの前記細長い混合チャンバが、5~240秒の平均混合滞留時間にわたって、前記繊維スラリーミキサーの前記細長い混合チャンバにおいて前記セメント質スラリーおよび繊維を混合し、一方で、回転する前記パドルが剪断力を印加するように適合および構成され、前記繊維スラリーミキサーから前記繊維スラリー混合物を排出することを可能にする粘稠性を有する均一な繊維スラリー混合物を生産するように、前記水平配向シャフトが、前記繊維スラリー混合物の混合中に、30~450rpmで回転可能である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
記横型筐体が、円筒である、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記パドルおよび前記横型筐体の内部側壁への前記セメント質スラリーの蓄積を最小にするために、前記横型筐体の前記パドルおよび前記横型筐体の内部側壁が、離型材料で被覆さ前記繊維スラリーミキサー内で、前記水平配向シャフトと前記水平配向シャフトとともに回転する前記パドルのみが、前記繊維スラリー混合物が前記細長い混合チャンバを通過するにつれて、前記横型筐体内で回転する、請求項7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、同時係属中の、
【0002】
2016年8月5日に出願された米国仮特許出願第62/371,554号、名称「CONTINUOUS METHODS OF MAKING FIBER REINFORCED CONCRETE PANELS」、
【0003】
2016年8月5日に出願された米国仮特許出願第62/371,569号、名称「HEADBOX AND FORMING STATION FOR FIBER REINFORCED CEMENTITIOUS PANEL PRODUCTION」、
【0004】
2016年8月5日に出願された米国仮特許出願第62/371,590号、名称「A METHOD FOR PRODUCING FIBER REINFORCED CEMENTITIOUS SLURRY USING A MULTI-STAGE CONTINUOUS MIXER」、に関するものであり、
これらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0005】
本発明は、連続プロセスで繊維強化セメント質材料を生産するための連続ミキサー、およびセメント質材料と強化繊維とを混合する方法を開示する。
【背景技術】
【0006】
Dubey他への米国特許第6,986,812号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、構造用セメントパネル(SCP)生産ライン、または硬化性スラリーが建築パネルまたはボードの生産に使用される同類の用途で使用するためのスラリー送給装置を特徴とする。この装置は、スラリーの供給が保持されるニップを形成するために互いに近接して略並列の関係で配置された主計量ロールおよび随伴ロールを含む。どちらのロールも、好ましくは同じ方向に回転し、よって、スラリーは、ニップから計量ロールの上に引き出され、SCPパネル生産ラインの移動ウェブ上に堆積される。スラリーの所望の厚さを維持するために、厚さ制御ロールが、主計量ロールに近接して動作可能に設けられる。
【0007】
George他への米国特許第7,524,386B2号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、セメント質粉体および液体の湿式スラリーを形成するための、縦型混合チャンバを有する湿式ミキサーを用いたプロセスを開示している。縦型混合チャンバは、必要とされる混合量を提供して、混合滞留時間内で、完全に混合された均一の薄いスラリーを提供するように設計され、十分なスラリーの供給が、関連するセメントパネル生産ラインの連続運転を可能にする。また、セメント質粉体および水をチャンバのスラリー混合領域に供給するための重力送給手段も開示されている。SCPパネルの調製において、重要な工程は、セメント質粉体を混合して、スラリーを形成することである。次いで、スラリーをチャンバの底部から引き出し、キャビティポンプを通してスラリー送給装置に圧送する。典型的な従来の連続セメントミキサーは、建設業界においてコンクリートスラリーを混合し、圧送するために使用される、M-TEC、GmbH、Neuenburg、GermanyによるDuo MIX2000連続セメントミキサーである。
【0008】
George他への米国特許第7,513,963B2号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、湿式ミキサー装置およびその使用方法を開示しており、該ミキサーは、セメント質スラリーおよび水の湿式スラリーを形成するための縦型混合チャンバを有する。縦型混合チャンバは、必要とされる混合量を提供して、混合滞留時間内で、完全に混合された均一の薄いスラリーを提供するように設計され、十分なスラリーの供給が、関連するセメントパネル生産ラインの連続運転を可能にする。また、セメント質粉体および粉体を予め混合することなく、該粉体および水を別々にチャンバのスラリー混合領域に供給するための重力送給も開示されている。
【0009】
Dubey他への米国特許第8,038,790号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、耐震壁、フローリング、およびルーフィングシステムで使用するための骨組みに締結するときに、合板および配向性ストランドボードによって提供される横方向および剪断負荷に等しい横方向および剪断負荷に抵抗するための構造用セメントパネルを開示している。このパネルは、他の構造用セメントパネルと比較して低減された熱伝達を提供する。このパネルは、硫酸カルシウムアルファ半水化物、水硬性セメント、被覆膨張パーライト粒子充填材、任意選択の追加的な充填材、活性ポゾラン、および石灰の水様混合物が硬化することによって生じる連続相のうちの1つまたは2つ以上の層を用いる。この被覆パーライトは、1~500ミクロンの粒子サイズ、20~150ミクロンの中位径、および0.50g/cc未満の有効粒子密度(比重)を有する。このパネルは、繊維、例えば耐アルカリ性ガラス繊維によって強化される。
【0010】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Dubey他への米国特許出願公開第2005/0064164号は、構造用セメント質パネルを生産するための多層プロセスを開示しており、該プロセスは、(a)移動ウェブを提供することと、(b)(i)個々の遊離繊維の第1の層をウェブ上に堆積させ、続いて、硬化性スラリーの層をウェブ上に堆積させること、および(ii)硬化性スラリーの層をウェブ上に堆積させること、のうちの1つを行うことと、(c)個々の遊離繊維の第2の層をウェブ上に堆積させることと、(d)該個々の遊離繊維の第2の層をスラリーの中へ能動的に埋設して、スラリー全体に分散させることと、(e)所望の数の硬化性繊維強化スラリーの層が得られ、よって、繊維がパネルの全体に分散されるまで、(ii)~(d)を繰り返すことと、を含む。また、このプロセスによって生産される構造用パネル、このプロセスに従って構造用セメント質パネルを生産するのに適している装置、および硬化性スラリーの層を移動ウェブ上に堆積させ、繊維をスラリー上に堆積させ、そして、スラリーに繊維を埋設することによって各層が作成され、よって、各層が隣接する層と一体的に形成される、多数の層を有する構造用セメント質パネルも提供される。
【0011】
Chen他への米国特許出願公開第2006/0061007号は、セメント質物品を押し出すための方法および装置を開示している。この押し出し機は、ケースを含み、その中には、回転可能に載置された一対の相互嵌合自己ワイピングスクリューを有する。このスクリューは、様々な送給手段を通して提供される繊維セメントの成分を混合し、練り、実質的に均一なペーストを形成し、ダイを通してペーストに力を加えて、鋳造に適した未硬化のセメント質押し出し物を形成する。押し出しのためのセメント質混合物は、非常に粘性があり、また、セメント質パネル生産ライン上の形成アセンブリを通したショットクリートまたは堆積に適していない。
【0012】
繊維強化セメント質スラリーを生産するための現在の最先端の混合技術は、典型的に、業界標準バッチミキサーの使用を含み、該バッチミキサーでは、最初に、強化繊維を含む全ての原材料が加えられ、次いで、数分間混合されて、繊維がランダムに分散したスラリー混合物が得られる。回転ドラムおよび回転パンミキサーは、繊維強化セメント質スラリー混合物を調製するために一般的に使用される、コンクリートミキサーの例である。現在の最先端のコンクリートミキサーおよび繊維強化セメント質スラリー混合物を生産するための混合技術におけるいくつかの主要な制限および欠点には、以下が挙げられる。
【0013】
バッチミキサーにおける混合運転が連続的ではなく、したがって、連続パネル生産ラインの事例にあるようなスラリーの連続供給が必要である場合における適用をさらに困難にしている。
【0014】
十分にブレンドされた均一なスラリー混合物を得るためのバッチミキサーの混合時間が、典型的に、数分程度と非常に長い。
【0015】
バッチミキサーには大量の繊維が一度に加えられるので、混合運転中に繊維が塊状および球状になり、非常に高い粘度を有するスラリーの生産につながる。
【0016】
バッチ混合プロセスに関係する混合時間がより長いため、強化繊維に損傷を与え、破壊する傾向がある。
【0017】
バッチミキサーは、急速硬化性セメント質材料の取り扱いに関してはあまり有用でなく、実用的でない。
【0018】
高い強化繊維濃度を有するセメント質パネル用のスラリーを生産するための単層プロセスに対する必要性が存在する。したがって、ガラス繊維またはポリマー繊維等の強化繊維を含有する十分な混合流体セメント質スラリーの連続パネル生産ラインへの供給を確実にする、改善された湿式混合装置に対する必要性が存在する。連続セメント質パネル製造ラインで使用するためのスラリーを提供するために、適切な流動学のスラリーおよび十分な流動性をもたらすように、ミキサーにおけるセメント質反応性粉体、強化繊維、および水の混合の程度を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0019】
本発明は、繊維スラリー混合物を調製するための繊維スラリー湿式ミキサー装置を特徴とする。現在の最先端のコンクリートミキサーの制限および欠点を考慮すると、本発明のいくつかの目的は、以下のようになる。
【0020】
均一に混合された繊維強化セメント質スラリー混合物を生産するために、繊維と残りのセメント質成分とを連続ブレンドすることを可能にするミキサーを提供する。
【0021】
均一にブレンドされた繊維強化セメント質スラリー混合物を生産するために必要とされる混合時間を数分から60秒未満、好ましくは30秒未満に短縮するミキサーを提供する。
【0022】
混合運転中に繊維を球状および塊状にさせないミキサーを提供する。
【0023】
混合動作の結果として、強化繊維に損傷を与えないミキサーを提供する。
【0024】
比較的低い粘度を有する、均一にブレンドされた繊維スラリー混合物を生産するミキサーを提供する。
【0025】
製造および構築用途において有用な急速硬化性セメント質材料の使用を可能にするミキサーを提供する。
【0026】
本発明は、複合繊維スラリー混合物を調製するための方法を提供し、該方法は、
水を含む液体ストリームを、液体ストリーム入口を通して連続スラリーミキサーの中へ送給し、乾燥セメント質粉体のストリームを連続スラリーミキサーの中へ送給して、セメント質スラリーを形成することであって、該連続スラリーミキサーが、横方向または縦方向に載置されたインペラを有する、形成することと、
連続スラリーミキサーからシングルパス横型繊維スラリー連続ミキサーの中へセメント質スラリーを渡し、横型繊維スラリー連続ミキサーの中へ強化繊維のストリームを渡し、セメント質スラリーおよび強化繊維を混合して、繊維スラリー混合物を生産することであって、
横型繊維スラリー連続ミキサーが、
内部側壁を有する水平(典型的に円筒の)筐体によって画定された細長い混合チャンバと、
横型筐体の第1の送給区間において強化繊維を混合チャンバの中へ導入するための少なくとも1つの繊維入口ポートと、
横型筐体の第2の送給区間においてセメント質スラリー混合物をチャンバの中へ導入するための少なくとも1つのセメント質スラリー入口ポートと、
ミキサーによって生産された繊維強化セメント質スラリー混合物を排出するための横型筐体の第2の排出端部区間の繊維スラリー混合物出口ポートと、
原材料供給物から混合チャンバの中へ導入された任意の空気を除去するための通気ポートと、
繊維スラリーミキサーの一方の端部から繊維スラリーミキサーのもう一方の端部まで横断する、細長い混合チャンバ内に載置された水平配向回転シャフトと、
一定間隔および異なる円周方向の場所においてミキサーの水平配向シャフト上に載置された複数の混合および運搬パドルであって、該パドルが、横型筐体内で水平配向シャフトを中心に回転し、パドルアセンブリが、シャフト上のある場所から半径方向に延在し、パドルアセンブリが、パドルヘッドに係合するピンを備え、水平配向シャフト上のそれぞれの場所に対するパドルヘッドの枢動回転を可能にするように、該ピンが、水平配向シャフトおよび/またはパドルヘッドに枢動可能に係合し、複数のパドルが、強化繊維およびセメント質スラリーを混合し、混合されているセメント質スラリーおよび強化繊維を繊維スラリー混合物出口まで移動させるように配設される、複数の混合および運搬パドルと、を備え、
水平配向シャフトが、ミキサーが運転中であるときにシャフトの回転を達成するために、例えば電気、燃料ガス、ガソリン、または他の炭化水素によって給電される駆動機構および駆動モーターに外部接続され、
セメント質スラリーおよび繊維が、約5秒~約240秒、好ましくは10秒~180秒、より好ましくは10秒~120秒、最も好ましくは10秒~60秒の平均混合滞留時間にわたって横型繊維スラリーミキサーの混合チャンバに加えられ、一方で、回転パドルが剪断力を印加し、繊維スラリーミキサーから繊維スラリー混合物を排出することを可能にする粘稠性を有する均一な繊維スラリー混合物を生産するように、混合中に、中央回転シャフトが、30~450rpm、より好ましくは40~300rpm、最も好ましくは50~250rpmで回転する、繊維スラリー混合物を生産することと、
繊維スラリーミキサーから繊維スラリー混合物を排出することと、を含む。
【0027】
本発明の繊維スラリーミキサーから排出された繊維スラリー混合物は、高さ4インチおよび直径2インチのパイプを使用したスランプ試験に従って測定したときに、4~11インチのスランプを有する。横型ミキサーから排出された繊維スラリー混合物はまた、20rpmの速度で動作するSpindle HA4アタッチメント付きのブルックフィールド粘度計モデルDV-II+ Proを使用して測定したときに、45000センチポアズ未満、好ましくは30000センチポアズ未満、より好ましくは15000センチポアズ未満、および最も好ましくは10000センチポアズ未満の粘度も有する。典型的に、結果として生じる繊維スラリー混合物は、少なくとも1500センチポアズの粘度を有する。
【0028】
繊維スラリー混合物はまた、典型的に、可塑剤および超可塑剤も含む。可塑剤は、一般に、製紙業界による副生成物であるリグノスルホン酸塩から製造される。超可塑剤は、一般に、スルホン化ナフタレン縮合物もしくはスルホン化メラミンホルムアルデヒド、カゼインから、またはポリカルボキシルエーテルに基づいて製造されている。本繊維スラリー混合物は、好ましくは、増粘剤、または材料の粘度を大幅に増加させる他の添加剤を含まない。
【0029】
結果として生じる繊維スラリー混合物は、繊維スラリー混合物を横型繊維スラリーミキサーから排出することを可能にし、また、パネル生産ラインの移動表面上で厚さ0.25~2.00インチ、好ましくは厚さ0.25~1インチ、より好ましくは厚さ0.4~0.8インチ、典型的には厚さ0.5~0.75インチの層として均一にパネル生産ラインの移動表面上に連続層として堆積させて、繊維強化コンクリート(FRC)パネルを生産するのに適した粘稠性を有する、均一な繊維スラリー混合物である。
【0030】
繊維スラリーミキサーから排出された繊維スラリー混合物は、様々な用途、例えば、彫像、ショットクリート、斜面の浮石の固定、土壌の安定化、トンネルおよび鉱山のライニング、プレキャストコンクリート製品、舗道および橋床、土間コンクリート、修理用途、またはFRCパネルもしくはボードの作製に適している。
【0031】
FRCパネルを生産するために硬化性繊維スラリー混合物を使用するときに、繊維スラリー混合物は、スラリー送給装置(「ヘッドボックス」として知られる)に送給され、該装置は、厚さ0.125~2インチ、好ましくは厚さ0.25~1インチ、典型的には厚さ0.40~0.75インチの層として均一にパネル生産ラインの移動表面上に繊維スラリー混合物を堆積させて、FRCパネルを生産する。本発明の繊維スラリー混合物からセメント質パネルを生産するためのプロセスは、最大で単一層の繊維強化セメント質スラリーを有するパネルを生産する。好ましくは、移動表面は、1~100フィート/分、より好ましくは5~50フィート/分の速度で移動する。これは、押し出しプロセスよりもかなり高速である。
【0032】
結果として生じる本発明の繊維スラリー混合物は、押し出しプロセスで使用されるセメント質混合物よりも優れている。そのような押し出し混合物は、高さ4インチおよび直径2インチのパイプを使用したスランプ試験に従って測定したときに、0~2インチのスランプを有し、また、50000センチポアズを超える、より典型的には100000センチポアズを超える、最も典型的には200000センチポアズを超える粘度を有する。押し出し混合物は、一般に、本発明の繊維スラリー混合物中には存在する減水剤、可塑剤、および流動化剤を含まない。上で述べたように、可塑剤は、一般に、製紙業界による副生成物であるリグノスルホン酸塩から製造される。超可塑剤は、一般に、スルホン化ナフタレン縮合物もしくはスルホン化メラミンホルムアルデヒドから、またはポリカルボキシルエーテルに基づいて製造されている。
【0033】
本明細書で開示される本発明のミキサーおよび混合方法の示差的特徴は、添加繊維に過度の損傷を与えることなく、連続運転において強化繊維と残りのセメント質成分とをブレンドする、このミキサーの能力である。さらに、本発明のミキサーおよび混合方法は、望ましい加工粘稠性を有する繊維強化セメント質スラリー混合物の生産を可能にする。このミキサーによって生産される好ましい流動学的性質を有するスラリーは、様々な製造プロセスを使用して製品を生産するために有益に利用することができる。例えば、加工可能なスラリー粘稠性は、高いライン速度で動作している連続形成ライン上のパネル製品のさらなる処理および形成を容易にする。
【0034】
本発明はまた、上で説明した複合繊維スラリー混合物を調製するための装置も提供し、該装置は、
水を含む液体ストリームとセメント、石膏、および骨材を含む乾燥セメント質粉体のストリームとを混合するための、液体ストリーム入口および乾燥セメント質粉体ストリーム入口を有するスラリーミキサーであって、横方向または縦方向に載置されたインペラを有する、スラリーミキサーと、
シングルパス横型繊維スラリー連続練りミキサーと、
スラリーミキサーからシングルパス横型繊維スラリー連続ミキサーの中へセメント質スラリーを渡すための導管と、
横型繊維スラリー連続ミキサーの中へ強化繊維のストリームを通すための導管と、
セメント質スラリーおよび強化繊維を混合して繊維スラリー混合物を生産するためのシングルパス横型繊維スラリー連続ミキサーであって、横型繊維スラリー連続ミキサーが、
内部側壁を有する水平(典型的に円筒の)筐体によって画定された細長い混合チャンバと、
横型筐体の第1の送給区間において強化繊維を混合チャンバの中へ導入するための少なくとも1つの繊維入口ポートと、
横型筐体の第2の送給区間においてセメント質スラリー混合物をチャンバの中へ導入するための少なくとも1つのセメント質スラリー入口ポートと、
ミキサーによって生産される繊維強化セメント質スラリー混合物を排出するための横型円筒筐体の第2の排出端部区間の繊維スラリー混合物出口ポートと、
原材料供給物から混合チャンバの中へ導入された任意の空気を除去するための通気ポートと、
細長い混合チャンバ内で回転するように載置された水平配向シャフトであって、ミキサーの一方の端部からもう一方の端部まで横断する、水平配向シャフトと、
一定間隔および異なる円周方向の場所においてミキサーの水平配向シャフト上に載置された複数の混合および運搬パドルであって、該パドルが、シャフト上のある場所から半径方向に延在し、該パドルが、パドルヘッドに係合するピンを備え、水平配向シャフト上のそれぞれの場所に対するパドルヘッドの枢動回転を可能にするように、該ピンが、水平配向シャフトおよび/またはパドルヘッドに枢軸的に係合し、複数のパドルが、強化繊維およびセメント質スラリーを混合し、混合されているセメント質スラリーおよび強化繊維を繊維スラリーミキサー出口まで移動させるように調整される、複数の混合および運搬パドルと、を備える。
【0035】
横型繊維スラリー連続ミキサーは、横型繊維スラリー連続ミキサーが運転中であるときにシャフトの回転を達成するために、駆動機構および駆動モーターに接続され、水平配向シャフトは、駆動機構および駆動モーターに外部接続される。
【0036】
好ましくは、横型繊維スラリーミキサーの混合チャンバは、約5秒~約240秒、好ましくは10秒~180秒、より好ましくは10秒~120秒、最も好ましくは10秒~60秒の平均混合滞留時間にわたって、横型繊維スラリーミキサーの混合チャンバにおいてセメント質スラリーおよび繊維を混合し、一方で、回転パドルが剪断力を印加するように適合および構成され、繊維スラリーミキサーから繊維スラリー混合物を排出することを可能にする粘稠性を有する、上で説明したような、均一な繊維スラリー混合物を生産するように、繊維スラリー混合物の混合中に、中央回転シャフトが、30~450rpm、より好ましくは40~300rpm、最も好ましくは50~250rpmで回転する。
【0037】
本発明のミキサーは、移動ウェブを支持するコンベア型フレームを含む、繊維強化セメント質組成物の最大で単一の層を有するセメント質パネルを生産するための装置、フレームと動作的に関係し、セメント質スラリーを繊維スラリーミキサーの中へ送給するように構成された第1の水およびセメント質材料ミキサー、フレームと動作的に関係し、セット可能な繊維含有セメント質スラリーの層を移動ウェブ上に堆積させるように構成された第1のスラリー送給ステーション(ヘッドボックス)、の一部として用いることができる。下流には、硬化したスラリーをセメントボードに切断するための装置がある。
【0038】
本明細書で開示される方法は、バッチ方式とは対照的に、連続方式である。連続方式では、最終製品を作成するために必要とされる原材料を計量して、最終製品が生産されている速度(マスバランス)に等しい速度で連続的に送給する。すなわち、プロセスへの原材料の送給の流れおよびプロセスからの最終製品の流れが同時に起こる。バッチ方式では、最終製品を作製するために必要とされる原材料を、最初に、大量に組み合わせて、適切な容器(複数可)に貯蔵するための混合物の大きいバッチを調製し、続いて、この混合物のバッチを、貯蔵容器(複数可)から引き出して、最終製品の複数の部分を生産する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の方法のブロックフロー図である。
図2】セメント質スラリーミキサーの図である。
図3】本繊維スラリー混合デバイスの横型シングルシャフト連続繊維スラリーミキサーの実施形態の略正面図である。
図4図3の本繊維スラリー混合デバイスの横型シングルシャフト連続繊維スラリーミキサーの実施形態のパドルの斜視図である。
図5図3の本繊維スラリー混合デバイスの横型シングルシャフト連続繊維スラリーミキサーの実施形態のパドルおよびシャフトの一部分の上面図である。
図6】開位置における図3の本繊維スラリー混合デバイスの横型シングルシャフト連続繊維スラリーミキサーの実施形態の一部分の図である。
図7】開位置における図3の本繊維スラリー混合デバイスの横型シングルシャフト連続繊維スラリーミキサーの実施形態の一部分の図である。
図8】開位置における図3の本繊維スラリー混合デバイスの横型シングルシャフト連続繊維スラリーミキサーの実施形態の一部分の図である。
図9】本繊維スラリー混合デバイス、例えば図3の繊維スラリー混合デバイスと共に使用するのに適したセメント質パネル(FRCパネル)生産ラインの略正面図である。
図10】形成アセンブリ(ヘッドボックス)の上流のセメント質パネル生産ラインの一部分のプロセスフローチャート、および形成アセンブリ(ヘッドボックス)の下流のセメント質パネル生産ラインの上面図の複合図として、図9のセメント質パネル生産ラインを示す図である。
図11】ヘッドボックスの上流の本繊維スラリー混合デバイスと共に使用するのに適したセメント質パネル生産ラインの一部分のためのプロセスフローチャート、およびヘッドボックスの下流のセメント質パネル生産ラインの上面図の複合図として、図9のセメント質パネル生産ラインの第1の変形例を示す図である。
図12】ヘッドボックスの上流の本繊維スラリー混合デバイスと共に使用するのに適したセメント質パネル生産ラインの一部分のためのプロセスフローチャート、およびヘッドボックスの下流のセメント質パネル生産ラインの上面図の複合図として、図9のセメント質パネル生産ラインの第2の変形例を示す図である。
図13】ヘッドボックスの上流の本繊維スラリー混合デバイスと共に使用するのに適したセメント質パネル生産ラインの一部分のためのプロセスフローチャート、およびヘッドボックスの下流のセメント質パネル生産ラインの上面図の複合図として、図9のセメント質パネル生産ラインの第3の変形例を示す図である。
図14】本発明の繊維スラリーミキサーを使用して作製した繊維強化スラリーセメント質混合物のスランプパテの写真である。
図15】本発明の形成ヘッドボックスを使用して、FRCパイロットライン上で単一の層として生産された厚さ3/4インチの厚さプロファイルの図である。円柱パネルの上面において、いかなるスムージングデバイスまたは振動スクリードプレートも使用しなかった。
【0040】
図において、別途指示されない限り、同様の参照番号は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、別個のスラリーミキサーおよび繊維スラリーミキサーを用いた本発明の方法の混合部分のブロックフロー図を示す。本方法では、乾燥セメント質粉体のストリーム5が、第1の導管を通過し、水性媒体ストリーム7が、第2の導管を通過して、スラリーミキサー2に供給されて、セメント質スラリー31を作製する。セメント質スラリー31が、第3の導管を通過し、強化繊維ストリーム34が、第4の導管を通過して、繊維スラリーミキサー32に供給されて、繊維スラリー混合物36のストリームを作製する。
【0042】
結果として生じる繊維スラリー混合物は、様々な用途に適している。例えば、結果として生じるスラリーは、彫像、ショットクリート、浮石の固定、土壌の安定化、プレキャストコンクリート製品、舗道、修理用途として、または、繊維強化コンクリート(FRC)パネルを生産するための、パネル生産ラインの移動表面上で厚さ0.125~2インチ、好ましくは厚さ0.25~1インチ、典型的には厚さ0.40~0.75インチの層としての均一なパネル生産ラインの移動表面上の層として堆積させ、使用するのに適している。結果として生じる繊維スラリー混合物は、45000センチポアズ未満、より好ましくは30000センチポアズ未満、および最も好ましくは15000センチポアズ未満の粘度を有する。典型的に、結果として生じる繊維スラリー混合物は、少なくとも1500センチポアズの粘度を有する。結果として生じる繊維スラリー混合物はまた、高さ4インチおよび直径2インチのパイプを使用したスランプ試験に従って、4~11インチのスランプも有する。結果として生じる繊維スラリー混合物は、典型的にスラリー混合物の組成物が極めて高い粘度を有することに依存する押し出し製造プロセスには適していない。
【0043】
スランプ試験は、本発明の方法および装置によって生産されるセメント質組成物のスランプおよび流動挙動を特徴付ける。本明細書において使用されるスランプ試験は、垂直に保持して、一方の開口端部を滑らかなプラスチック表面に静置した、直径約5.08cm(2インチ)および長さ約10.16cm(4インチ)の中空円筒を利用する。円筒は、セメント質混合物を頂部まで充填し、続いて、上面を叩いて、余分なスラリー混合物を除去する。次いで、円筒を緩やかに縦方向に持ち上げて、スラリーが底部から出て、プラスチック表面に広がり、円形のパテを形成させる。次いで、パテの直径を測定し、材料のスランプとして記録する。本明細書で使用される場合、良好な流動挙動を有する組成物は、より大きいスランプ値をもたらす。
【0044】
スラリーミキサー
様々な連続またはバッチミキサーのいずれかを、スラリーミキサー2として使用することができる。例えば、セメント質スラリー31を調製するために、本発明においては、参照により組み込まれる、ICRI Guideline No.320.5R-2014,Technical Guidelines,Pictorial Atlas of Concrete Repair Equipment,International Concrete Repair Institute,2014年5月で説明されるモルタルミキサーを使用することができる。ミキサーとしては、水平シャフトミキサー、タンブルモルタルミキサー、回転ドラム固定ミキサー、パン型ミキサー、回転タブ回転パドルミキサー、遊星パドルミキサー、横型シャフトミキサーとポンプとの組み合わせ、および縦型シャフトミキサーとポンプとの組み合わせが挙げられる。横型シャフトミキサーとポンプとの組み合わせおよび縦型シャフトミキサーとポンプとの組み合わせは、連続ミキサーである。加えて、George他への米国特許第7,513,963B2号で開示されている連続スラリーミキサーもまた、参照により組み込まれ、本発明で使用することができる。Dubey他への米国特許第7,347,89号(第6段落、36~56行)で開示される連続スラリーミキサーもまた、参照により組み込まれ、連続様態でスラリーを調製するために使用することができる。
【0045】
スラリーミキサー2は、好ましくは連続スラリーミキサーである。例えば、連続スラリーミキサー2は、シングルシャフトまたはデュアルシャフトの横型ミキサーとすることができる。図2は、例示的な連続スラリーミキサー2、具体的には、シングルシャフト横型ミキサー2を概略的に示す。
【0046】
横型という用語は、ミキサーと共に使用されるときには、一般に水平である。したがって、水平から±20度の変動を伴って配向されたミキサーは、それでも横型ミキサーとみなされる。
【0047】
図2は、ポートランドセメント、凝集体、充填材、その他等のセメント質材料の粉体混合物が、乾燥粉体送給装置(図示せず)からスラリーミキサー2に、典型的にはオーバーヘッドホッパービン60に送給され、次いで、ベローズ61を通過して、シャフト63を含む横型チャンバ62の中へ入ることを示す。シャフト63の少なくとも一部は、オーガスクリューである。図2は、オーガを備えたシャフト63の全体を示す。しかしながら、好ましくは、セメント質粉体を移動させるために、シャフト63の一部だけがオーガである。シャフト63の残部は、好ましくは、乾燥粉体を水および他の添加剤と混合し、セメント質スラリーを調製するために、機械的構成要素(パドル(図示せず)等)を備える。好ましくは、シャフト63の上流部分(例えば、シャフト長さのうちの上流の20~60%)がオーガを有し、シャフトの残部の下流部分がパドルを有する。シャフト63は、速度制御器65によって制御される、側部に載置されたモーター64によって駆動される。固体は、ホッパービン60からシャフト63のオーガスクリューまで容積計量送給装置または重量計量送給装置(図示せず)によって送給することができる。スラリーミキサー2に送給される乾燥粉体の量は、容積計量的または重量計量的に動作させることができる別個の乾燥粉体送給装置によって提供される。
【0048】
容積計量送給システムは、一定の割合(単位時間あたりの容積、例えば、立方フィート/分)で、貯蔵ホッパービン60から粉体を排出する。重量計量供給システムは、一般に、秤量システムと関連付けられた容積計量送給装置を使用して、単位時間あたり一定の重量、例えば、ポンド/分で、貯蔵ホッパービン60からの粉体の放出を制御する。常に実際の送給速度を監視し、かさ密度、多孔率、その他の変動を補償するために、フィードバック制御システムを介して重量信号が使用される。
【0049】
液体ポンプ6からの水等の水性媒体は、ノズル68を通して横型チャンバ62に送給される。次いで、横型チャンバ62からセメント質粉体および水スラリー混合物31が排出され、次いで、図1の繊維スラリーミキサー32に送給される。
【0050】
横型繊維スラリー連続ミキサー
本発明の繊維スラリー連続ミキサーは、好ましくは以下の結果を達成する。
【0051】
均一に混合された繊維強化セメント質スラリー混合物を生産するために、繊維と残りのセメント質成分とを連続ブレンドすることを可能にする。
【0052】
均一にブレンドされた繊維強化セメント質スラリー混合物を生産するために必要とされる混合時間を数分から60秒未満、好ましくは30秒未満に短縮する。一般に、チャンバは、約5秒~約240秒、好ましくは10秒~180秒、より好ましくは10秒~120秒、最も好ましくは10秒~60秒、典型的には20秒~60秒の平均スラリー滞留時間を提供する。
【0053】
混合運転中に繊維を塊状および球状にさせない。
【0054】
混合動作の結果として、強化繊維への損傷を生じさせない。
【0055】
製造および構築用途において有用な急速硬化性セメント質材料の使用を可能にする。
【0056】
本発明の一部として開示される横型繊維スラリー連続ミキサーは、
【0057】
内部側壁を有する水平(典型的に円筒の)筐体によって画定された細長い混合チャンバと、
【0058】
ミキサーの一方の端部からもう一方の端部まで横断する、細長い混合チャンバに載置された中央回転シャフトであって、中央シャフトが、ミキサーが運転中であるときにシャフトの回転を達成するために、例えば電気、燃料ガス、ガソリン、または他の炭化水素によって給電される駆動機構および駆動モーターに外部接続される、中央回転シャフトと、
【0059】
一定間隔および異なる円周方向の場所においてミキサーの中央シャフト上に載置された複数の混合および運搬パドルであって、該パドルが、中央シャフト上のある場所から半径方向に延在し、該パドルが、パドルヘッドを有するピンを備え、シャフト上のそれぞれの場所に対するパドルの枢動回転を可能にするように、該ピンが、シャフトに枢動可能に係合し、および/またはパドルヘッドがピンに枢動可能に係合し、複数のパドルが、セメント質スラリーを混合し、混合されているセメント質スラリーおよび強化繊維を繊維スラリー混合物出口まで移動させるように配設される、混合および運搬パドルと、
【0060】
横型筐体の第1の送給区間において強化繊維を混合チャンバの中へ導入するための少なくとも1つの繊維入口ポートと、
【0061】
横型筐体の送給区間においてセメント質スラリー混合物をチャンバの中へ導入するための少なくとも1つのセメント質スラリー入口ポートと、
【0062】
ミキサーによって生産される繊維強化セメント質スラリー混合物を排出するための横型円筒筐体の第2の排出端部区間の繊維スラリー混合物出口ポートと、
【0063】
原材料供給物から混合チャンバの中へ導入された任意の空気を除去するための通気ポートと、を備える。
【0064】
繊維スラリーミキサーは、他の原材料または他の性能向上添加剤を混合チャンバの中へ導入するための、追加的な入口ポートを有することができる。
【0065】
セメント質スラリーおよび繊維は、約5秒~約240秒、好ましくは10秒~180秒、より好ましくは10秒~120秒、最も好ましくは10秒~60秒の平均混合滞留時間にわたって横型繊維スラリーミキサーの混合チャンバに加えられ、一方で、回転パドルが剪断力を印加し、中央回転シャフトは、繊維スラリー混合物に対して、混合中に、30~450rpm、より好ましくは、40~300rpm、および最も好ましくは50~250rpmで回転し、ミキサーから排出された繊維スラリー混合物は、高さ4インチおよび直径2インチのパイプを使用したスランプ試験に従って測定したときに、4~11インチ、好ましくは6~10インチのスランプを有し、また、45000センチポアズ未満、好ましくは30000センチポアズ未満、およびより好ましくは15000センチポアズ未満の粘度を有する。結果として生じる繊維スラリー混合物はまた、高さ4インチおよび直径2インチのパイプを使用したスランプ試験に従って、4~11インチのスランプも有する。結果として生じる繊維スラリー混合物は、典型的にスラリー混合物の組成物が極めて高い粘度を有することに依存する押し出し製造プロセスには適していない。結果として生じる繊維スラリー混合物は、繊維スラリー混合物を横型繊維スラリーミキサーから排出することを可能にし、また、パネル生産ラインの移動表面上で厚さ0.25~2.00インチ、好ましくは厚さ0.25~1インチ、より好ましくは厚さ0.4~0.8インチ、典型的には厚さ0.5~0.75インチの層として均一にパネル生産ラインの移動表面上に連続層として堆積させて、FRCパネルを生産するのに適した粘稠性を有する、均一な繊維スラリー混合物である。典型的に、繊維スラリー混合物は、幅4~8フィートのパネルについて、約0.10~25立方フィート/分の割合で堆積する。これは、粘性のあるスラリーがダイを通して製品の形状に押し出されるときの製品の形成を容易にするために非常に粘性のあるスラリーを利用する、従来の押し出し製造プロセスよりも高速である。押し出し製造プロセスは、典型的に、三次元の中空形状の薄肉物品を形成するために使用され、材料の押し出し中、およびその後に製品の形状を保持する際には、高いスラリー粘度が有用である。
【0066】
中央シャフトは、ミキサーが運転中であるときにシャフトの回転を達成するために、例えば電気、燃料ガス、ガソリン、または他の炭化水素によって給電される駆動機構および駆動モーターに外部接続される。典型的に、電気モーターおよび駆動機構は、混合チャンバ内の中央シャフトを駆動する。
【0067】
本明細書で開示されるミキサーおよび混合方法の示差的特徴は、添加繊維に過度の損傷を与えることなく、連続運転において強化繊維と残りのセメント質成分とをブレンドする、このミキサーの能力である。さらに、本発明のミキサーおよび混合方法は、望ましい加工粘稠性を有する繊維強化セメント質スラリー混合物の生産を可能にする。このミキサーによって生産される好ましい流動学的性質を有するスラリーは、様々な製造プロセスを使用して製品を生産するために有益に利用することができる。例えば、加工可能なスラリー粘稠性は、高いライン速度で動作している連続形成ライン上のパネル製品のさらなる処理および形成を容易にする。
【0068】
図3は、繊維スラリーミキサー32の一実施形態の概略図を示す。シャフト88およびパドル100。各パドル100は、ピン114と、ピン114に対して横方向に延在する幅広パドルヘッド116とを有する。好ましくは、繊維スラリーミキサー2は、シングルシャフトミキサーである。
【0069】
図3に表されるように、横型繊維セメント質スラリーミキサー32の実施形態は、円筒横型側壁82と、ミキサー32の送給区間の第1の端部壁84と、ミキサー32の排出区間の第2の端部壁86とを備える、細長い混合チャンバを備える。横型繊維セメント質スラリーミキサー32はまた、中央回転可能シャフト88、セメント質スラリー入口73、強化繊維入口75、および繊維スラリー混合物排出出口79も備える。混合および運搬パドル100は、中央回転可能シャフト88から延在する。横型繊維セメント質スラリーミキサー32はまた、ミキサーの中へ他の原材料および性能向上添加剤を送給するための他の入口ポート77も備え、1つだけ図示する。横型繊維セメント質スラリーミキサー32はまた、原材料供給から混合チャンバの中へ導入された任意の空気を除去するための通気ポート71も備える。横型繊維セメント質スラリーミキサー32はまた、混合チャンバ内の中央シャフトを駆動するための電気モーターおよび駆動機構92も備える。
【0070】
回転可能シャフト88は、その長手方向軸「A」を中心に回転して、送給された成分を混合し、それらを繊維スラリー混合物として排出出口79に運搬する。
【0071】
強化繊維およびセメント質スラリーおよび他の成分は、ミキサーにおいて結果として生じる混合物の上に空間を残して、混合および運搬を容易にするように、それぞれの割合でミキサー32に送給される。所望であれば、ミキサーの横型チャンバ内のスラリーのレベルを測定するために、液面制御センサを使用する。
【0072】
回転可能シャフト88は、第1の端部アセンブリ70と、第2の端部アセンブリ72とを含むことができる。第1の端部アセンブリ70および第2の端部アセンブリ72は、当業者にとって既知の多様な形態のうちのいずれかをとることができる。例えば、第1の端部アセンブリ70は、回転可能シャフト88の第1の端部を動作的に係合する第1の端部係合部分と、第1の端部係合部分から延在する第1の円筒部分74と、第1の円筒部分74から延在する中間円筒部分76と、中間円筒部分76から延在し、スロット90を含む端部円筒部分78とを含むことができる。第2の端部アセンブリ72は、回転可能シャフト88の第2の端部を動作的に係合する第2の端部係合部分と、第2の端部係合部分から延在する第1の円筒部分66と、第1の円筒部分66から延在するノズル68とを含むことができる。少なくとも1つの実施形態において、第1の端部アセンブリ70の第1の端部係合部分は、第1の円筒部分74に近接して、回転可能シャフト88に係合することができる。1つまたは2つ以上の実施形態において、端部円筒部分78は、電気モーターおよび駆動機構92に動作的に係合することができ、該電気モーターおよび駆動機構は、これらに係合された回転可能シャフト88および1つまたは2つ以上のパドルアセンブリ100に回転(例えば、高速回転)を与えて、強化繊維およびセメント質スラリーを混合する。第2の端部アセンブリ72の第2の端部係合部分は、第1の円筒部分66に近接して、回転可能シャフト88の第2の端部(例えば、第1の端部の反対側の端部)に係合することができる。第2の端部アセンブリ72のノズル68は、好ましくは、支持アセンブリに係合することができ、該支持アセンブリは、回転可能シャフト88の回転を可能にするように、横型繊維セメント質スラリーミキサー32の外壁と一体にすることができる。
【0073】
図3に示すように、複数のパドルアセンブリ100は、永続的および/または取り外し可能に回転可能シャフト88に係合(例えば、固定、接着、接続、その他)させ、例えば、整列した行および/または列(例えば、回転可能シャフト88の長さに沿った行、回転可能シャフト88の外周周辺の列)に構成することができる。パドルアセンブリ100は、所望に応じてオフセットされた行または列で、回転可能シャフト88に永続的または取り外し可能に係合することができる。加えて、回転シャフト88は、所望であれば、パドルアセンブリ100の任意の配設または構成、好ましくは、限定されないが、渦巻および/または螺旋構成に適合することができる。
【0074】
回転可能シャフト88は、混合中に、30~450rpm、より好ましくは40~300rpm、および最も好ましくは50~150rpmの所定の割合で回転するように構築することができる。
【0075】
パドルピン114は、パドルヘッド116の幅W2未満である、幅W1を有する(図4を参照されたい)。混合および運搬パドル100のピン114は、回転可能シャフト88のねじ付き開口部に係合するように適応したねじ付き端部分115(図4を参照されたい)を含むことができ、よって、混合および運搬パドル100は、回転可能シャフト88に対して所望の、または選択したピッチ(例えば、角度)を達成するように回転することができる。所望であれば、各混合および運搬パドル100は、回転可能シャフト88の中へ所望の距離だけ回転させることができ、該距離は、回転可能シャフト88に係合したときに、1つまたは2つ以上の他のパドルアセンブリまたはパドルアセンブリの区間と同じまたは異なるものとすることができる。
【0076】
本発明の繊維スラリー連続ミキサーの上で述べた特徴およびパラメータは、以下のようにさらに説明される。
【0077】
細長い混合チャンバ
細長い混合チャンバは、典型的に、円筒形状である。
【0078】
混合チャンバの長さは、典型的に、約2~8フィートのいずれかの範囲である。混合チャンバの好ましい長さは、約3~5フィートである。
【0079】
混合チャンバの直径は、典型的に、約4~24インチのいずれかの範囲である。混合チャンバの好ましい直径は、約6~12インチの範囲である。
【0080】
中央回転シャフト
中央回転シャフトの直径は、典型的に、約1~8インチである。好ましい中央シャフト直径は、約2~6インチの範囲である。
【0081】
中央回転シャフトは、好ましくは約30~450rpmの範囲、より好ましくは約40~300rpmの範囲、さらにより好ましくは約50~250rpmの範囲、最も好ましくは約50~150rpmの範囲の速度で回転する。本発明の目的を満たすには、比較的低いミキサー速度が好ましいことを発見した。驚くべきことに、セメント質スラリー混合物における優れたファイバ分散が、比較的低いミキサー速度であっても得ることができることを見出した。さらに、より低い混合速度を使用する別の重要な利点は、繊維の破損の低減および、繊維強化セメント質スラリー混合物のさらなる処理において有用な優れた材料の作業特性および流動特性をもたらすことである。
【0082】
ミキサーが動作モードであるときに、中央回転シャフトを回転させるために、好ましくは、可変周波数駆動がミキサーと共に使用される。可変周波数駆動は、生産プロセスに関係する原材料の所与の組み合わせのために、ミキサーの速度を調整および微調整するのに有用である。
【0083】
本発明の連続ミキサーは、シングルシャフトミキサー、デュアルシャフトミキサー、または多重シャフトミキサーのいずれかとすることができる。本開示は、本発明のシングルシャフトミキサーをさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明に従うデュアルシャフトまたはマルチシャフトミキサーもまた、連続生産プロセスを含む様々な用途に有用である所要の特性を有する繊維強化セメント質スラリー混合物を生産することに有益に使用できることが想定される。
【0084】
混合および運搬パドル
中央シャフトに載置された混合および運搬パドル100は、ミキサーにおける付加的な成分の混合および運搬を容易にするために、異なる形状および寸法を有することができる。混合および運搬パドルは、材料を前方へ移動させるのを補助するために、ピンおよび比較的幅の広いヘッドを有するパドルを含む。1つのタイプのピンおよびヘッドを有するパドルに加えて、繊維スラリーミキサーは、材料のさらなる処理に対して所望される特性を達成するために、ピンおよび比較的幅の広いヘッド、またはピンだけを有する2つ以上のタイプのパドルを含むことができる。しかしながら、図3で分かるように、本発明は、シングルスタイルのパドルを使用することができる。パドルの全体的な寸法は、ミキサーチャンバの内周と中央シャフトからのパドルの最も遠い点との間の離間距離(空間)が、好ましくは1/4インチ未満、より好ましくは1/8インチ未満、および最も好ましくは1/16インチ未満となる寸法である。パドル先端部とチャンバの内壁との間の距離が長過ぎると、スラリーの堆積をもたらす。パドルは、ねじ取り付け(図示のもの)および/または溶接取り付け(図示せず)を含む異なる手段を使用して、中央シャフトに取り付けることができる。
【0085】
ミキサーにおける成分の混合および運搬の質はまた、ミキサーのパドルの配向によっても左右される。中央シャフトの断面に対して平行または垂直なパドルの配向は、パドルの運搬動作を少なくし、したがって、ミキサーにおける材料の滞留時間を増加させる。ミキサーにおける材料の滞留時間の増加は、繊維にかなりの損傷を与え、望ましくない特性を有する繊維強化セメント質スラリー混合物の生産につながり得る。中央シャフト88の長手方向軸「A」に対するパドルヘッド116の長手方向軸「LH」の配向は、好ましくは、約10°~80°、より好ましくは約15°~70°、最も好ましくは約20°~60°の角度「B」(図5)である。好ましいパドル配向の使用は、より効果的なスラリー混合物の混合および運搬動作につながり、さらには、ミキサーにおいて生じる強化繊維への損傷を最小にする。
【0086】
ミキサー内の一組のパドルは、典型的に、ミキサーの一方の端部からもう一方まで中央シャフト上に渦巻状の形態で構成される。このパドルの配設は、ミキサー内部の材料の運搬動作をさらに容易にする。ミキサー内のパドル配設の他の構成が可能であり、本発明の一部として想定される。
【0087】
パドルは、金属、セラミック、プラスチック、ゴム、またはこれらの組み合わせを含む、様々な材料で作製することができる。材料および繊維の損傷を最小にする傾向があるので、より軟質のライニング材を伴うパドルも想定される。
【0088】
細長い混合チャンバのパドルおよび/または内壁は、パドル上の、および/またはシェル(細長い混合チャンバのバレル)の内壁へのセメント質スラリーの蓄積を最小にするために、離型材料で被覆することができる。
【0089】
図6図8は、シャフト88にねじ込むことによってシャフト88上に載置されたパドル100の光景を示すために、その混合チャンバのドア37が開位置にある繊維スラリーミキサー32の一部分を示す。
【0090】
図7は、このミキサー構成の特定の実施形態におけるミキサーのパドルの4つの直線状の並びを表す。
【0091】
図8は、中央シャフト88に対するパドル100の配向を示すミキサーの拡大図を提供する。また、中央シャフト88上の渦巻状の形態のパドル100の配置に従うこともできる。
【0092】
入口ポート
繊維スラリーミキサーの原材料注入口ポート(入口導管)のサイズ、場所、および配向は、原材料の繊維スラリーミキサーの中への導入を容易にし、ミキサーにおいてスラリー混合物がポートを封鎖する可能性を最小にするように構成される。
【0093】
スラリーミキサーからのセメント質スラリーは、好ましくは、スラリーホースを使用して繊維スラリーミキサーに運搬され、スラリーホースを受け入れるように設定した入口ポートを通して繊維スラリーミキサーの中へ導入される。代替的に、スラリーミキサーからのセメント質スラリーは、繊維スラリーミキサーに重力送給することができる。
【0094】
繊維は、スクリュー送給装置または振動送給装置等の様々な計量装置を使用して、重量計量的または容積計量的に繊維スラリーミキサーの中へ導入することができる。繊維は、様々な運搬デバイスによって繊維送給装置から繊維スラリーミキサーまで運搬することができる。例えば、繊維は、スクリュー(オーガ)、空気運搬、単純な重力堆積を使用して移送することができる。離散または裁断した繊維は、ガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、その他等のポリマー材料、炭素、黒鉛、アラミド、セラミック、鋼、セルロース誘導体、紙、またはジュートもしくはサイザル等の天然繊維、または、これらの組み合わせを含む、異なる強化繊維材料で作製することができる。繊維の長さは、約2インチ以下、より好ましくは1.5インチ以下、最も好ましくは0.75インチ以下である。
【0095】
スラリーミキサーおよび繊維スラリーミキサーシステムからの繊維スラリー混合物を使用したパネル生産
図9および図10は、パネル生産における繊維スラリー混合物を示す。セメント質パネル生産ラインは、概略的に示され、一般に、10で表される。生産ライン10は、複数の脚部13または他の支持体を有する支持フレームまたは形成テーブル12を含む。支持フレーム12上には、滑らかで水を通さない表面を有するエンドレスのゴム様コンベアベルト等であるが、多孔質表面も想定される、移動キャリア14を含む。当技術分野でよく知られているように、支持フレーム12は、指定された脚部13または他の支持構造を含むことができる、少なくとも1つのテーブル様のセグメントから作製することができる。支持フレーム12はまた、フレーム12の遠位端部18の主駆動ロール16、およびフレーム12の近位端部22のアイドラーロール20も含む。また、ロール16、20に対するキャリア14の所望の張力および位置決めを維持するために、典型的に、少なくとも1つのベルト追従および/または張力調整デバイス24が提供される。この実施形態において、セメント質パネルは、移動キャリアが近位端部22から遠位端部18まで方向「T」に進行するときに、連続的に生産される。
【0096】
この実施形態では、硬化前のスラリーを支持するための離型紙、ポリマー薄膜、プラスチックキャリア、スリップシート、または形成金型のウェブ26を提供し、キャリア14の上に置いて該スラリーを保護すること、および/または清潔に保つことができる。しかしながら、連続ウェブ26ではなく、ポリマープラスチックのシート等の比較的剛性がある材料の個々のシート(図示せず)をキャリア14の上に配置することができることも想定される。これらのキャリアフィルムまたはシートは、ラインの端部において、生成されたパネルから取り除くことができ、または全体的な複合設計の一部としてのパネル内の永続的な特徴として組み込むことができる。これらのフィルムまたはシートが永続的な特徴としてパネルに組み込まれたときには、向上した美しさ、強化された引張強度および曲げ強度、強化された耐衝撃性および耐爆風性、水および水蒸気の透過に対する耐性等の強化された環境耐久性、耐凍結融解性、耐ソルトスケーリング性、ならびに耐化学性を含む、強化した属性を提供することができる。
【0097】
硬化する前に繊維スラリー混合物内に埋め込み、結果として生じるセメント質パネル強化するために、ガラス繊維スクリム等の強化スクリムのロービングまたはウェブ等の連続強化材44を提供することができる。連続ロービングおよび/または強化スクリムロール42は、キャリア14上の混合物の上に置かれるヘッドボックス40を通して送給される。しかしながら、連続強化材44を使用しないことも想定される。連続スクリムまたはロービングは、ガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール等のポリマー材料、炭素、黒鉛、アラミド、セラミック、鋼、セルロース、またはジュートもしくはサイザル等の天然繊維、またはこれらの組み合わせを含む、異なる強化繊維材料で作製することができる。ロービングは、連続強化モノフィラメントのアセンブリッジである。スクリムは、機械方向および横断方向に延びる連続繊維のウェブである。強化材はまた、離散した強化繊維で作製された不織繊維ウェブとして提供することもできる。不織繊維ウェブは、ポリオレフィン繊維等の有機繊維、またはガラス繊維等の無機線維、またはこれらの組み合わせで作製することができる。金属繊維で作製された繊維ウェブもまた、本発明の一部として想定される。
【0098】
また、本ライン10によって生産されるセメント質パネルを直接キャリア14上で形成することも想定される。この状態においては、少なくとも1つのベルト洗浄ユニット28が提供される。キャリア14は、当技術分野で知られているように主駆動ロール16を駆動するモーター、プーリー、ベルト、またはチェーンの組み合わせによって、支持フレーム12に沿って移動する。形成ラインのキャリア14(形成ベルト)の速度を、作製する製品に合うように変動させることが想定される。繊維スラリー混合物は、方向「T」に進行する。
【0099】
本生産ライン10は、連続スラリーミキサー2を含む。スラリーミキサーは、シングルシャフトまたはデュアルシャフトミキサーとすることができる。乾燥粉体送給装置4(1つまたは2つ以上用いることができる)は、強化繊維を除くセメント質組成物の乾燥成分をスラリーミキサー2に送給する。液体ポンプ6(1つまたは2つ以上用いることができる)は、液体または水溶性添加剤を有する、水等の水性媒体をスラリーミキサー2に送給する。スラリーミキサー2は、乾燥成分および水性媒体を混合して、セメント質スラリー31を形成する。セメント質スラリー31は、第1のスラリーアキュムレータ、および繊維スラリーミキサー32にスラリーを圧送する容積式ポンプ30に送給される。繊維送給装置34(1つまたは2つ以上用いることができる)は、繊維を繊維スラリーミキサー32に送給する。したがって、繊維スラリーミキサー32において繊維およびスラリーが混合されて、繊維スラリー混合物36を形成する。繊維スラリー混合物36は、第2のスラリーアキュムレータ、および繊維スラリー混合物36をヘッドボックス40に圧送する容積式ポンプ38に送給される。
【0100】
ヘッドボックス40は、移動キャリア14上を進行する、離型紙(存在する場合)の、および/または、存在する場合は、ロービングおよび/またはスクリムによって提供される連続強化材のウェブ26上に繊維スラリー混合物を堆積させる。ロービングまたはスクリムまたは不織繊維マットの形態の連続強化材は、パネルの一方または両方の表面に堆積させることができる。所望であれば、繊維ロービングまたはスプールおよび/またはスクリムロールおよび/または不織繊維マット42によって提供される連続強化材44もまた、図9に示されるようにヘッドボックス40を通過させて、堆積させた繊維スラリー混合物46の上に堆積させる。所望であれば、底部連続強化材をヘッドボックス40の後に送給し、それを直接運搬/形成ベルトの上に置く。底部連続強化材は、ヘッドボックス40の下を通り、ヘッドボックス40内の繊維スラリー混合物は、連続強化材が前方に移動するにときに、その頂部に直接注入される。例えば、連続強化材は、ウェブ26を提供するロールに加えて、ウェブ26またはロール(図示せず)によってヘッドボックス40の上流に提供して、ウェブ26の上に連続強化材を置くことができる。繊維スラリー混合物46を平らにするのを支援するために、形成振動プレート50を、ヘッドボックス40が繊維スラリー混合物46を堆積させる場所の下に、または僅かに下流に提供することができる。
【0101】
スラリー46は、移動キャリア14に沿って進行するときに硬化する。スラリー46が硬化しているときに繊維スラリー混合物46を平らにするのを支援するために、スラリー46に、1つまたは2つ以上の振動スクリードプレート52の下を通させる。支持フレーム12の遠位端部18において、カッター54(パネル切断デバイス)が硬化したスラリーをボード55に切断する。次いで、ボード(FRCパネル)55を、搬出および硬化ラック57(図10を参照されたい)上に置いて、硬化させる。したがって、パネル55は、形成ベルト14または任意選択の離型紙/スリップシート/形成金型/不織繊維ウェブ26上で直接形成される。
【0102】
図10は、縁部形成および漏出防止デバイス80をさらに示す。これらは、単独で、または組み合わせて使用される、本明細書の別の場所で説明されている、縁部ベルト、縁部レール、または他の適切な縁部形成および漏出防止デバイス、例えばベルト接着スリット形成器である。
【0103】
本発明の方法および装置によって生産される繊維-セメント混合物は、セメント、水、および他のセメント添加剤を含有する。しかしながら、所望の粘度を達成するために、セメント質組成物は、好ましくは、従来の繊維セメント押し出しプロセスによって通常使用されているような、高い注入割合の増粘剤または他の高粘度加工助剤を避ける。例えば、本スラリーは、高い注入割合での高粘度セルロースエーテルの添加を避ける。本スラリーが避ける高粘度セルロースエーテルの例は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシエチルメチルセルロースである。
【0104】
本発明の方法および装置によって生産される繊維-セメント混合物は、様々な硬化性セメント質スラリーによるものであり得る、水性スラリーである。例えば、組成物は、水硬性セメントに基づくものである。ASTMは、「水硬性セメント」を、水との化学的相互作用によって硬化し、硬くなり、また、水中でそうなり得るセメントである、と定義している。適切な水硬性セメントの例は、ポートランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント(CAC)、スルホアルミン酸カルシウムセメント(CSA)、ジオポリマー、マグネシウムオキシクロライドセメント(ソーレルセメント)、およびリン酸マグネシウムセメントである。好ましいジオポリマーは、クラスCフライアッシュの化学活性化に基づく。
【0105】
硫酸カルシウム半水和物は、水との化学的相互作用によって硬化し、硬くなるが、本発明の文脈において、水硬性セメントの広範な定義に含まれない。しかしながら、硫酸カルシウム半水和物は、本発明の方法および装置によって生産される繊維-セメント混合物に含むことができる。したがって、そのような水性スラリーはまた、石膏セメントまたは焼き石膏等の硫酸カルシウムセメントにも基づくことができる。石膏セメントは、主に、か焼石膏(硫酸カルシウム半水和物)である。この業界では、か焼石膏を石膏セメントと称することが慣例である。
【0106】
繊維-セメント混合物は、繊維-セメント混合物の他の成分との組み合わせで、所望のスランプ試験値および粘度を達成するのに十分な水を含有する。所望であれば、組成物は、0.20/1~0.90/1、好ましくは0.20/1~0.70/1の、水と反応性粉体との重量比を有することができる。
【0107】
繊維-セメント混合物は、シリカフューム等のポゾラン材料、シリコン金属の産生物である微粉化した非晶質シリカ、およびフェロシリコン合金製造品を含有することができる。これは、特徴的に、非常に高いシリカ含有量および低いアルミナ含有量を有する。軽石、パーライト、珪藻土、凝灰岩、火山土、メタカオリン、マイクロシリカ、および研削された粒状の高炉スラグを含む、様々な他の天然材料および人工材料が、ポゾラン特性を有すると言われている。フライアッシュもまた、ポゾラン特性を有する。繊維-セメント混合物は、セラミック微小球体および/またはポリマー微小球体を含有し得る。
【0108】
しかしながら、本方法によって行われる繊維-セメントスラリーの1つの使用は、ガラス繊維、特に耐アルカリ性ガラス繊維等の強化繊維を有する構造用セメントパネル(SCPパネル)を生産することである。このように、セメント質スラリー31は、好ましくは、ポートランドセメント、石膏、凝集体、水、促進剤、可塑剤、超可塑剤、発泡剤、充填材、および/または当技術分野でよく知られている、または参照により組み込まれた、本発明で説明され、下に列記される他の成分の量を変動させることで構成される。これらの成分の相対的な量は、上記の一部の除去または他の追加を含む、最終製品の意図される使用に適するように変動させることができる。
【0109】
液圧スラリーの流動性を向上させるために、任意選択で、例えば超可塑剤等の減水添加剤を繊維-セメント混合物に含むことができる。そのような添加剤は、分子が互いに対してより移動し易くなり、それによって、スラリー全体の流動性を向上させる、該分子を溶液中に分散させる。スルホン化メラミンおよびスルホン化ナフタレン、ならびにポリカルボキシレート系超可塑剤を、超可塑剤として使用することができる。減水添加剤は、湿潤最終繊維スラリー混合物の重量によって、0%~5%、好ましくは0.5~5%)の量で存在させることができる。
【0110】
Tonyan他への米国特許第6,620,487号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、硫酸カルシウムアルファ半水化物、水硬性セメント、活性ポゾラン、および石灰の水性混合物の硬化によって生じる連続相のコアを用いる、強化された軽量の寸法安定性構造用セメントパネル(SCP)を開示している。連続相は、耐アルカリ性ガラス繊維によって強化され、セラミック微小球体またはセラミックおよびポリマー微小球体のブレンド物を含有しているか、または0.6/1~0.7/1の水と反応性粉体との重量比を有する水性混合物から形成されているか、またはこれらの組み合わせである。SCPパネルの少なくとも1つの外面は、釘打ち性を向上させるためにガラス繊維によって強化し、十分なポリマー球体を含有するか、またはポリマー球体に類似する効果を提供する水と反応性粉体との比率によって作製される、またはこれらの組み合わせである、硬化した連続相を含むことができる。
【0111】
所望であれば、組成物は、0.20/1~0.90/1、好ましくは0.20/1~0.70/1の、水と反応性粉体との重量比を有することができる。
【0112】
本プロセスで使用される複合スラリー(繊維-セメント混合物)のための様々な配合物は、米国特許出願公開第US2006/0185267号、同第US2006/0174572号、同第US2006/016890号、および同第US2006/0144005号にも示され、これらは全て参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。典型的な配合物は、反応性粉体として、乾燥基準で、35~75重量%(典型的に45~65または55~65重量%)の硫酸カルシウムアルファ半水化物、20~55重量%(典型的に25~40重量%)のポートランドセメント等の水硬性セメント、0.2~3.5重量%の石灰、および5~25重量%(典型的に10~15重量%)の活性ポゾランを含む。パネルの連続相は、耐アルカリ性ガラス繊維によって均一に強化され、また、セラミック微小球体、ガラス微小球体、プラスチック(ポリマー)微小球体、フライアッシュセノスフェア、およびパーライトからなる群から選択される20~50重量%の均一に分散された軽量充填材粒子を含有する。複合スラリーのための配合物の一例は、全乾燥成分に基づいて、42~68重量%の反応性粉体、23~43重量%のセラミック微小球体、0.2~1.0重量%のポリマー微小球体、および5~15重量%の耐アルカリ性ガラス繊維を含む。
【0113】
Dubey他への米国特許第8,038,790号は、複合スラリーの好ましい配合物の別の例を提供しており、該配合物は、セメント系組成物の水性混合物であって、乾燥基準で、50~95重量%の反応性粉体と、軽量充填材としてその中で均一に分散される1~20重量%の被覆された疎水性膨張パーライト粒子と、約1~500ミクロン(マイクロメートル)の範囲の直径、20~150ミクロン(マイクロメートル)の中位径、および約0.50g/cc未満の有効粒子密度(比重)を有する被覆された疎水性パーライト粒子と、0~25重量%の中空セラミック微小球体と、強化のために均一に分散させるための3~16重量%の耐アルカリ性ガラス繊維とを含み、反応性粉体は、25~75重量%の硫酸カルシウムアルファ半水化物と、ポートランドセメントを含む10~75重量%の水硬性セメントと、0~3.5重量%の石灰と、5~30重量%の活性ポゾランとを含み、パネルは、50~100ポンド/立方フィートの密度を有する。
【0114】
複合繊維スラリー混合物には上記の組成物が好ましいが、これらの成分の相対的な量は、上記の一部の除去または他の追加を含む、最終製品の意図される使用に適するように変動させることができる。
【0115】
繊維スラリー送給装置(ヘッドボックス)
以下、図9を参照すると、繊維スラリー送給装置(形成アセンブリとも称される)は、繊維スラリーミキサー32から繊維スラリー混合物36の供給を受容する。図9において、スラリー供給装置は、繊維スラリーヘッドボックス40である。
【0116】
最終製品を生産するには、異なるタイプの形成アセンブリ(スラリー送給装置)が形成ラインに適切である。ヘッドボックスが、好ましいタイプの形成アセンブリである。円筒スクリードロール、ローラーコーター、底部に間隙を有する振動プレート、中央に隙間を有する振動プレート(頂部および底部)。図9図15は、形成アセンブリ(スラリー送給装置)をヘッドボックス40の形態で示す。また、製品を生産するために、異なるタイプの形成アセンブリを、組み合わせること、および/または直列的に使用することもできる。例えば、ヘッドボックスは、スクリードロールまたは振動プレートと組み合わせて使用することができる。
【0117】
進行方向を有する繊維強化コンクリート構築(FRC)パネルまたはボードを生産するために硬化性スラリーが使用される、構造用セメント質パネル(SCPパネル)生産ラインまたは同類のものの移動形成ウェブ上にスラリーを堆積させるための1つの好ましい形成アセンブリ(スラリー送給装置)は、
スラリーを形成ウェブの上へ方向付けるための横方向後壁、側壁、凹状の横方向前壁、開口頂部、および開口底部を有する、移動ウェブの進行方向に対して横方向に載置されたヘッドボックスと、
後壁に取り外し可能に取り付けたれた可動ダムと、ダムの底部壁に取り付けられたシールと、
対向する該側壁から延在するヘッドボックス高さ調整および支持システムとを備える。
【0118】
好ましいヘッドボックス40は、キャリア14の進行方向「T」に対して横方向に配置される。繊維スラリー混合物は、ヘッドボックス40の空洞において堆積され、ヘッドボックスの排出開口部を通して移動キャリアウェブ14(コンベアベルト)上に排出される。
【0119】
好ましいヘッドボックス40は、耐腐食性材料(例えば、ステンレス鋼)から成り、また、スラリーの貯蔵部、スラリー間隙開口部を調整するための高さ調整および支持マウント、およびスラリーの流れをスムースかつ均一に分散させるための直線リップへの湾曲移行部の流れを提供する特定の幾何学的形状を有する。湾曲移行部はまた、ヘッドボックスの上側から(必要に応じて)強化ガラス繊維スクリムを導入するための手段も提供する。任意の漏出を防止するために、調整可能なシールがヘッドボックスの後部に提供される。強化ガラス繊維スクリムはまた、ヘッドボックスの下から加えることもできる。どちらのスクリムシステムも、追跡目的の調整部を有する。振動ユニットは、テーブル、ばね、およびマットの中へ直接力を方向付け、かつ他の方向では相殺する2つのモーターから成る、単一質点系である。このユニットは、ヘッドボックスの下に配置され、また、ヘッドボックスを超えて約2~24インチ、約3~12インチ、または約3~6インチ延在する。ヘッドボックス高さ調整および支持システムは、手動で調整すること、機械的に動作させること、または電気的に駆動することができる。形成アセンブリ全体は、次のような複数の利点がある。
【0120】
繊維強化セメント質スラリーは、ホースおよびホース振動システムを通してヘッドボックス40の中へ圧送することができ、または繊維スラリーミキサー32から直接ヘッドボックス40の中へ落とすことができる。振動子システムは、いずれの場合においても、スラリーを攪拌するために使用される。ヘッドボックス40を使用して形成される製品の厚さは、ヘッドボックス40内のスラリーの流量、ヘッドボックス40内のスラリーヘッドの上昇量、および所与のライン速度に対するヘッドボックス排出開口部の間隙によって制御される。ヘッドボックス40の排出開口部の間隙は、繊維スラリー混合物をヘッドボックス40から移動キャリアウェブ14上に排出する、横方向開口部である。ヘッドボックス堆積物からの繊維スラリー混合物は、最終パネル55の所望の厚さおよび仕上げの近くの1つの工程において移動キャリア14の上へ堆積される。形成を向上させるために、振動を加えることができ、また、成形製品の曲げ強度を向上させるために、スクリム、不織繊維マット、およびロービング等の異なる形態の連続強化材を加えることができる。例えば、振動ユニット50は、コンベアベルト14の下のヘッドボックス40の下側に位置付けることができる。
【0121】
振動ユニット50は、典型的に、テーブル、ばね、および繊維-セメントスラリーの堆積させたマットの中へ直接力を方向付け、かつ他方向では相殺する2つのモーターの、単一質点系である。このユニット50は、ヘッドボックス40に配置され、また、ヘッドボックスを超えて3~6インチ延在する。
【0122】
ヘッドボックス40は、相対的に制御された厚さの繊維スラリー混合物の均一な層を移動キャリアウェブ14上に堆積させる。適切な層の厚さは、厚さ約0.125~2インチ、好ましくは厚さ0.25~1インチ、典型的には厚さ0.40~0.75インチの範囲である。
【0123】
繊維スラリー混合物は、キャリアウェブ14の約1.0~約1.5インチ(2.54~3.81cm)の距離の範囲内で下へ均一に方向付けられるスラリーの連続カーテンまたはシートとして完全に堆積される。
【0124】
繊維スラリー混合物46が移動キャリアウェブ14に向かって進むときに、全てのスラリーをウェブに堆積させることが重要である。
【0125】
形成および平滑化および切断
上で説明したように繊維を埋設した硬化性スラリー46の層の配置に応じて、フレーム12は、ベルト14上を進行する硬化性スラリー-繊維混合物46の上面を成形するために提供される形成デバイスを備えることができる。
【0126】
ヘッドボックス40によって堆積されているスラリーを平滑化するのを支援する、上で述べた振動テーブル(形成および振動プレート)50に加えて、生産ライン10は、パネルの上面を緩やかに平滑化するための、振動スクリードプレート52とも称される、平滑化デバイスを含むことができる(図9および図10を参照されたい)。
【0127】
振動をスラリー46に印加することによって、スムージングデバイス52は、FRCパネル55になる堆積されたスラリー46の全体にわたる繊維の分散を容易にし、また、より均一な上面を提供する。平滑化デバイス52は、形成ラインフレームアセンブリに対して枢動させること、または強固に取り付けることができる。
【0128】
平滑化の後に、スラリーの層が硬化し始めており、それぞれのパネル55は、典型的な実施形態においてウォータージェットカッターである切断デバイス54によって互いに分離される。切断デバイス54は、所望の長さを有するパネルが生産されるように、ライン10およびフレーム12に対して配置される。キャリアウェブ(ベルト)14の速度が比較的遅いときには、ウェブ14の進行方向に対して垂直に切断するように切断デバイス54を取り付けることができる。より速い生産速度の場合、そのような切断デバイスは、ウェブの進行方向に対してある角度で生産ライン10に取り付けられることが知られている。切断に応じて、分離されたFRCパネル55は、当技術分野でよく知られているようなさらなる取り扱い、包装、貯蔵、および/または出荷のために積み重ねられる。
【0129】
本発明の他の特徴は、繊維30がパネルの全体にわたって分散されるように、結果として生じるFRCパネル55が構築されることである。これは、繊維の使用が比較的少なく、より効率的である、比較的強いパネルの生産を可能にすることが分かっている。各層におけるスラリーの容積に対する繊維の容積比率は、好ましくは、近似的に、繊維スラリー混合物46の1~5体積%、好ましくは1.5~3体積%の範囲で構成される。
【0130】
図10は、ヘッドボックスの上流の本繊維スラリー混合デバイスと共に使用するのに適したセメント質パネル生産ラインの一部分のプロセスフローチャート、およびヘッドボックスの下流の生産ラインの上面図の複合図として、図9のセメント質パネル生産ラインを示す。
【0131】
生産ラインの変形例
図11は、ヘッドボックスの上流の本繊維スラリー混合デバイスと共に使用するのに適したセメント質パネル生産ラインの一部分のためのプロセスフローチャート、およびヘッドボックス40の下流のセメント質パネル生産ラインの上面図の複合図として、図9のセメント質パネル生産ラインの第1の変形例である生産ライン10Aを示す。本図は、スラリーアキュムレータおよび容積式ポンプ30を省略している。
【0132】
図12は、ヘッドボックスの上流の本繊維スラリー混合デバイスと共に使用するのに適したセメント質パネル生産ラインの一部分のためのプロセスフローチャート、およびヘッドボックス40の下流のセメント質パネル生産ラインの上面図の複合図として、図9のセメント質パネル生産ラインの第2の変形例である生産ライン10Bを示す。本図は、スラリーアキュムレータおよび容積式ポンプ38を省略している。
【0133】
図13は、ヘッドボックスの上流の本繊維スラリー混合デバイスと共に使用するのに適したセメント質パネル生産ラインの一部分のためのプロセスフローチャート、およびヘッドボックス40の下流のセメント質パネル生産ラインの上面図の複合図として、図9のセメント質パネル生産ラインの第3の変形例である生産ライン10Cを示す。本図は、スラリーアキュムレータおよび容積式ポンプ30、ならびにスラリーアキュムレータおよび容積式ポンプ38を省略している。
【0134】
これらの生産ラインの変形例における繊維スラリーミキサー32および繊維スラリー混合物36、ならびに示される他の同様の番号が付された要素は、図9および図10の生産ライン10において使用されるものと同じであることが想定される。
【0135】
図9図13は、FRCパネルを生産するために本発明の繊維スラリーミキサーを利用する製造プロセスのためのプロセスフロー図を示す。しかしながら、本発明の繊維スラリーミキサーの他の使用および応用が可能であり、本開示の一部として想定される。
【実施例
【0136】
実施例1
図14は、本発明の繊維スラリーミキサーを使用して作製した繊維強化セメント質スラリー混合物のスランプパテ101の写真を示す。
【0137】
実施例2
図15は、本発明の方法によって生産される繊維スラリー混合物を使用して生産した厚さ3/4インチのパネルFRCパネルの厚さプロファイルである。本図は、単一の層を堆積させたときに、一貫した厚さが達成されることを示す。繊維スラリー混合物は、ポートランドセメント、石膏、およびガラス繊維を含有した。
【0138】
繊維強化構造用セメント質パネルを生産するための本スラリー送給装置の特定の実施形態を示し、説明してきたが、当業者は、より幅広い態様において、また、以下の特許請求の範囲に記載される、本発明を逸脱することなく、変更および修正が行われ得ることを認識するであろう。
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