(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】成形用金型
(51)【国際特許分類】
B29C 45/73 20060101AFI20220202BHJP
B29C 33/02 20060101ALI20220202BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
B29C45/73
B29C33/02
B29C49/06
(21)【出願番号】P 2019503102
(86)(22)【出願日】2018-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2018007720
(87)【国際公開番号】W WO2018159745
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2017039769
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クマール ウペンドラ
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02520403(EP,A1)
【文献】特表2002-537143(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0174792(US,A1)
【文献】特開昭50-003169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォームを射出成形するための成形用金型であって、
前記プリフォームの胴部及び底部の外面を形成する射出キャビティ型を備え、
前記射出キャビティ型は、樹脂材料が充填される空間であるキャビティが形成される第1のキャビティ型と、中央部に挿入孔を備える円筒状の第2のキャビティ型と、を備え、
前記第1のキャビティ型が前記挿入孔に挿入された状態で当該第1のキャビティ型と前記第2のキャビティ型とが一体化されると共に、前記第1のキャビティ型と前記第2のキャビティ型との間には冷却媒体が供給される冷却流路が形成されて
おり、
前記第1のキャビティ型の外周面には、外側に向かって突出する環状の外フランジ部が所定間隔で複数設けられる一方、
前記第2のキャビティ型の内周面には、内側に向かって突出する環状の内フランジ部が所定間隔で複数設けられ、
前記内フランジ部と前記外フランジ部とが当接した状態で前記第1のキャビティ型と前記第2のキャビティ型とが一体化され、
前記第1のキャビティ型と前記第2のキャビティ型との間に、前記外フランジ部及び前記内フランジ部で区画されて前記冷却流路を構成する複数の環状流路が形成されている
ことを特徴とする成形用金型。
【請求項2】
請求項1に記載の成形用金型において、
前記プリフォームのネック部の外面を形成するネック型をさらに有し、
前記射出キャビティ型は、型締めの際、前記ネック型が前記第2のキャビティ型に当接することで、型締め方向において前記ネック型に対して位置決めされるように構成されている
ことを特徴とする成形用金型。
【請求項3】
請求項2に記載の成形用金型において、
型締めの際、前記ネック型が前記第2のキャビティ型に当接した状態で、前記ネック型と前記第1のキャビティ型との間に隙間が形成されている
ことを特徴とする成形用金型。
【請求項4】
請求項
1から請求項3のいずれか一項に記載の成形用金型において、
前記第
2のキャビティ型は、型締め方向で積層される複数の部材で構成されており、少なくとも最上部の前記環状流路に対応する位置で分割されている
ことを特徴とする成形用金型。
【請求項5】
請求項
4に記載の成形用金型において、
前記第1のキャビティ型は、複数の各環状流路に対応する位置で分割されている
ことを特徴とする成形用金型。
【請求項6】
プリフォームを射出成形するための成形用金型であって、
前記プリフォームの胴部及び底部の外面を形成する射出キャビティ型と、前記プリフォームのネック部の外面を形成するネック型と、を備え、
前記射出キャビティ型は、樹脂材料が充填される空間であるキャビティが形成される第1のキャビティ型と、中央部に挿入孔を備える円筒状の第2のキャビティ型と、を備え、
前記第1のキャビティ型が前記挿入孔に挿入された状態で当該第1のキャビティ型と前記第2のキャビティ型とが一体化されると共に、前記第1のキャビティ型と前記第2のキャビティ型との間には冷却媒体が供給される冷却流路が形成されており、
前記射出キャビティ型は、型締めの際、前記ネック型が前記第2のキャビティ型に当接することで、型締め方向において前記ネック型に対して位置決めされるように構成されており、
型締めの際、前記ネック型が前記第2のキャビティ型に当接した状態で、前記ネック型と前記第1のキャビティ型との間に隙間が形成されている
ことを特徴とする成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形により樹脂材料を成形する際に用いられる成形用金型に関し、特に、プリフォームを成形するために用いられる成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料を成形する射出成形装置やブロー成形装置に高い市場競争力を持たせるには、生産能力を高める必要性がある。射出成形とブロー成形とを機械一台で実施可能としたホットパリソン式と呼ばれる射出ブロー成形装置または射出延伸ブロー成形装置では、全体の成形サイクル時間が、プリフォームの射出成形にかかる時間で実質的に決まってしまう。よって、生産能力を高めるには、射出成形にかかる時間を如何にして短縮させるかが重要になる。
【0003】
プリフォームの射出成形にかかる時間には、射出装置から溶融樹脂をキャビティ型内に充填させる時間(充填時間)、キャビティ型内で溶融樹脂を冷却して固化させる時間(冷却時間)、プリフォームの取出・搬送にかかる時間(取出搬送時間)、が含まれる。したがって、これら充填時間、冷却時間、取出搬送時間のうち、少なくとも何れか一つを短縮することで、プリフォームの射出成形にかかる時間を短縮することができる。
【0004】
充填時間や取出搬送時間の短縮は、装置の大幅な改造・変更を伴う場合が多いのに対し、冷却時間の短縮は、金型のみの改造・変更で済むため、比較的容易に実施することができる。
【0005】
ここで、射出成形装置等における成形用金型では、キャビティ型に設けられた冷却流路(冷却回路)に冷却水等の冷却媒体を循環させてキャビティ型を冷却することで、キャビティ型内に充填された樹脂材料(溶融樹脂)の冷却を行っている。
【0006】
冷却流路を備えるキャビティ型の構造は様々あるが、例えば、キャビティ型を二つの金型で構成し、これら二つの金型の間に冷却流路を形成するようにしたものがある。具体的には、一方の金型であるキャビティ本体の外周面に周回する複数の溝を設け、この溝の開口面を、キャビティ本体の外側に配される他方の金型で塞ぐことで冷却流路(水管回路)を形成するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0007】
このように二つの金型の間に冷却流路を形成する構成では、樹脂材料が充填される空間であるキャビティと冷却流路(溝)と間のキャビティ型の肉厚を比較的薄くし、冷却流路をキャビティに近づけることで、樹脂材料の冷却効率を高めることができる。その結果、プリフォームの射出成形にかかるトータルの時間を短縮することはできる。
【0008】
また、冷却流路を備えるキャビティ型として、例えば、拡散接合法により製造したものがある(特許文献2参照)。
【0009】
拡散接合は複数の金属板に冷却流路用の溝を形成し、熱圧着などによりそれらの金属板を一体化させる工法である。金型を切削して冷却流路を形成する一般的な工法と比べて複雑な形状の冷却流路を形成できる。例えば、プリフォームの断面形状にならったリング状の冷却流路を、金型の内壁面(製品面、キャビティ面)から近傍かつ均一な位置に形成させることができ冷却効率は高い。また、一体物であるため、溶融樹脂の充填圧力や射出型締め力にも強い構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第6014874号公報
【文献】特開平01-027919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の成形用金型では、型締めの際、ネック型(ネックリング)が、キャビティ型(キャビティ本体)に当接するため、キャビティ型を含む成形用金型を良好に型締めするには、キャビティ型に非常に大きな射出型締力がかかるため、キャビティ型は高い剛性を確保しておく必要がある。つまりキャビティ型の肉厚を薄くして、冷却効率を高めることができないという問題がある。
【0012】
また、特許文献2に記載の成形用金型では、特殊な加工装置を必要とするうえ製造するのにも時間がかかるため、製造コストが高いという欠点がある。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、良好に型締めすることができ、且つ冷却効率も高めることができる成形用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する本発明の一つの態様は、プリフォームを射出成形するための成形用金型であって、前記プリフォームの胴部及び底部の外面を形成する射出キャビティ型を備え、前記射出キャビティ型は、樹脂材料が充填される空間であるキャビティが形成される第1のキャビティ型と、中央部に挿入孔を備える円筒状の第2のキャビティ型と、を備え、前記第1のキャビティ型が前記挿入孔に挿入された状態で当該第1のキャビティ型と前記第2のキャビティ型とが一体化されると共に、前記第1のキャビティ型と前記第2のキャビティ型との間には冷却媒体が供給される冷却流路が形成されていることを特徴とする成形用金型にある。
【0015】
かかる本発明に係る成形用金型では、キャビティ型が第1のキャビティ型と第2のキャビティ型とで構成されていることで、これら第1のキャビティ型と第2のキャビティ型とを機能的に切り分けることができる。そして第1のキャビティ型に射出型締力が伝達されないようにすることで、第1のキャビティ型の肉厚を薄くして、樹脂材料の冷却効率を高めることができる。
【0016】
また第1のキャビティ型と第2のキャビティ型との間に冷却流路が形成されていることで、第1のキャビティ型と第2のキャビティ型とを分離して冷却流路の洗浄等を行うこともでき、メンテナンス性が向上する。
【0017】
ここで、前記プリフォームのネック部の外面を形成するネック型をさらに有し、前記射出キャビティ型は、型締めの際、前記ネック型が前記第2のキャビティ型に当接することで、型締め方向において前記ネック型に対して位置決めされるように構成されていることが好ましい。これにより型締めの際、ネック型は、第2のキャビティ型に当接して位置決めされ、第1のキャビティ型には実質的に当接しない。つまり射出型締力は、第2のキャビティ型に対して伝達され、第1のキャビティ型には実質的に伝達されなくなる。
【0018】
また型締めの際、前記ネック型が前記第2のキャビティ型に当接した状態で、前記ネック型と前記第1のキャビティ型との間に隙間が形成されていることが好ましい。これにより射出型締力の第1のキャビティ型への入力をより確実に抑制される。なおここでいう隙間とは、樹脂材料が流出しない程度、例えば、数μm~数十μm程度の微小な隙間である。
【0019】
また前記第1のキャビティ型の外周面には、外側に向かって突出する環状の外フランジ部が所定間隔で複数設けられる一方、前記第2のキャビティ型の内周面には、内側に向かって突出する環状の内フランジ部が所定間隔で複数設けられ、前記内フランジ部と前記外フランジ部とが当接した状態で前記第1のキャビティ型と前記第2のキャビティ型とが一体化され、前記第1のキャビティ型と前記第2のキャビティ型との間に、前記外フランジ部及び前記内フランジ部で区画されて前記冷却流路を構成する複数の環状流路が形成されていることが好ましい。これにより、第1のキャビティ型及び第2のキャビティ型に形成する冷却流路(溝)の深さが浅くなる。このため、金型の加工が容易となると共に、メンテナンス性のさらなる向上を図ることができる。
【0020】
また前記第1のキャビティ型は、型締め方向で積層される複数の部材で構成されており、少なくとも最上部の前記環状流路に対応する位置で分割されていることが好ましい。さらには、前記第1のキャビティ型は、複数の各環状流路に対応する位置で分割されていることが好ましい。
【0021】
このような構成とすることで、第1のキャビティ型を比較的容易に形成することができ、メンテナンス性の向上を図ることができると共に、製造コストの削減を図ることもできる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の成形用金型によれば、樹脂材料の冷却効率を高めることができ、射出成形にかかる時間の短縮を図ることができる。ひいては、射出ブロー成形装置等における全体の成形サイクル時間の短縮でき、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る成形用金型を備える射出ブロー成形装置を示す平面図である。
【
図2】本発明に係る成形用金型を備える射出ブロー成形装置を示す側面図である。
【
図3】本発明に係る成形用金型を備える射出成形型ユニットを示す図である。
【
図4】本発明に係る成形用金型を示す断面図である。
【
図5】本発明に係る射出キャビティ型を示す断面図である。
【
図6】本発明に係る第2のキャビティ型を示す断面図である。
【
図8】本発明に係る第2のキャビティ型の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
まずは
図1を参照して、本発明に係る成形用金型を備える射出ブロー成形装置1の全体構成について簡単に説明する。
【0026】
射出ブロー成形装置1は、樹脂容器を製造するための装置であり、プリフォームを形成するための射出成形部10と、形成されたプリフォームの温度を調整するための温調部30と、プリフォームをブロー成形して容器とするブロー成形部40と、形成された容器を取り出すための取出部50と、を備えている。このように射出ブロー成形装置1は、全体としては、ホットパリソン式や1ステージ式と称される構成になっている。
【0027】
射出成形部10、温調部30、ブロー成形部40及び取出部50は、搬送機構60を中心として水平方向に所定角度(本実施形態では、90度)毎に回転した位置に設けられている。なお搬送機構60は、射出成形部10、温調部30、ブロー成形部40及び取出部50からなる処理ユニットと同数の移送板を備えている。例えば、本実施形態では、移送板が、平面視にて90度間隔で4枚配置されている(図示は省略)。搬送機構60は、これらの移送板を間欠的に回転させて各処理ユニットに配置させる。
【0028】
そして、本実施形態では、このような射出ブロー成形装置1を構成する射出成形部10が、樹脂材料を射出する射出装置15と共に、本発明に係る射出成形型(成形用金型)20を備えている。
【0029】
次に、
図2を参照して射出成形部10の概略構成について説明する。
【0030】
図2に示すように、射出装置15及び射出成形型20は、機台2に設けられている。射出成形型20は、プリフォーム(図示なし)の口部(ネック部)を形成するための一対のネック型21と、プリフォームの胴部外形状を形成するための射出キャビティ型22と、プリフォームの内形状を形成するためのコア型23と、を備える。射出キャビティ型22には、射出装置15から供給される樹脂材料が充填される空間であるキャビティ25が形成されている。また射出キャビティ型22は、ホットランナーブロック24を介して機台2上に固定されている。
【0031】
ネック型(一対のネック割型)21は、搬送機構60を構成する移送板61の固定板部62に保持されている。射出成形部10で形成されたプリフォームは、その口部がネック型(一対のネック割型)21に支持されて搬送機構60の移送板61によって温調部30に搬送される。
【0032】
コア型23は、移送板61よりも上方に昇降可能に設けられている。コア型23は、射出成形によりプリフォームを形成する際に下降させ、移送板61に形成された孔部(図示は省略)を介して射出キャビティ型22のキャビティ25内に配置される。
【0033】
ホットランナーブロック24は、キャビティ25内へ溶融樹脂を導く流路26を有している。流路26の一端側には、射出装置15の樹脂を吐出するノズル16が接続される。流路26の他端側は、射出キャビティ型22のキャビティ25に連通されている。射出装置15のノズル16から供給される溶融樹脂は、この流路26を介して、型締めされた射出成形型20のキャビティ25内へ導かれる。
【0034】
次に、
図3~
図5を参照して、射出成形型20の構造、特に、キャビティ型の構造についてより詳細に説明する。
【0035】
図3は、本発明に係る射出成形型ユニットの全体構成(型締めされた状態)を示す概略図であり、
図4は、射出成形型の断面図であり、
図5は、第1のキャビティ型及び第2のキャビティ型を示す断面図である。
【0036】
図3に示すように、射出成形型20は、複数個が一体化されて射出成形型ユニット200を構成している。すなわち射出成形型ユニット200は、各射出成形型20を構成する複数のネック型21を備えるネック型ユニット210と、複数の射出キャビティ型22を備える射出キャビティ型ユニット220と、複数のコア型23を備えるコア型ユニット230と、を備えている。
【0037】
コア型ユニット230は、複数(例えば、6個)のコア型23と、これら複数のコア型23が固定されるコア型固定板231とを備えている。すなわち、各射出成形型20を構成する複数のコア型23が、一枚のコア型固定板231に固定されて一体化されている。
【0038】
なおコア型23は、
図3及び
図4に示すように、略円柱状に形成されており、プリフォームの内周面を規定する棒状部23aと、ネック型21の上面と接触する段差部23bと、固定板に支持されるフランジ部23cと、を有する。またコア型23の中心内側には円柱状の空間23dが設けられ、この空間23dには、図示は省略するが冷却媒体循環用のジャケットが挿入されている。ジャケットの外周には螺旋状のフィンが鉛直方向に延在して設けられており、コア型23の円柱状空間と合わさることで冷却水等の冷却媒体が循環される冷却流路(冷却回路)が形成されている。
【0039】
ネック型ユニット210は、複数のネック型(一対の割型)21と、これら複数のネック型21を支持するネック型固定板211とから構成される。すなわち、各射出成形型20を構成する複数のネック型21が、ネック型固定板211に固定されて一体化されている。
【0040】
なお上述のようにネック型21は、一対の割型からなる。このため、ネック型固定板211も、図示は省略するが、各割型がそれぞれ固定される一対のネック型固定板(第1のネック型固定板及び第2のネック型固定板)を備えている。これら第1のネック型固定板と第2のネック固定板とは、ひっぱりバネを介し連結されており、常態では両者が接触して型閉じ状態を維持している。また第1のネック型固定板と第2のネック固定板とは、ネック型固定板の両側部に設けられたカム溝にくさび状のカム部材を挿入することで型開きされるようになっている。
【0041】
また
図3において図示は省略するが、コア型固定板231とネック型固定板211との間には移送板61(
図2参照)が存在しており、ネック型固定板211は、この移送板61に、水平方向へスライド可能に支持されている。
【0042】
射出キャビティ型ユニット220は、上方固定板221、下方固定板222及びキャビティ型固定ブロック223を備え、各射出成形型20を構成する複数の射出キャビティ型22が、これら上方固定板221、下方固定板222及びキャビティ型固定ブロック223によって一体化されている。
【0043】
なおキャビティ型固定ブロック223には、鉛直方向に延びる複数の縦孔が設けられており、これらの縦孔のそれぞれに射出キャビティ型22が収容されている。またキャビティ型固定ブロック223には、縦孔の上下二か所に、例えば、水平方向に延びる第1の横穴が設けられている。これらの第1の横穴はキャビティ型固定ブロック223の外面まで貫通している。そして、これらの第1の横穴から、後述する冷却流路(冷却回路)に冷却水等の冷却媒体が供給されるようになっている。
【0044】
また下方固定板222には、ホットランナーブロック24のノズル(図示は省略)が挿入されて各射出キャビティ型22に接続される接続凹部222aが設けられている。そして、この接続凹部222aに接続されたホットランナーブロック24のノズルを介して供給される溶融樹脂を射出キャビティ型22内に導入することができるようになっている。
【0045】
また本実施形態に係る射出キャビティ型22は、
図4及び
図5に示すように、樹脂材料が充填される空間であるキャビティ25が形成される第1のキャビティ型251と、第1のキャビティ型251を包囲する形で配置される筒状の第2のキャビティ型252と、を備えている。
【0046】
第1のキャビティ型251は、キャビティ部253と、キャビティ部253の下方に設けられキャビティ部253よりも大径のフランジ部254とからなる。そしてキャビティ部253に、樹脂材料が充填される空間であるキャビティ25が形成されている。フランジ部254には、ホットランナーブロック24のノズルが接続されるゲート部255が形成されている。
【0047】
ここで、キャビティ部253の肉厚、つまりキャビティ25の周壁の厚さは、上下方向(型締め方向)で略同一となるように形成されている。さらに、キャビティ部253の外周面には上下方向(型締め方向)に沿って複数の環状の外フランジ部256が略等間隔で形成され、結果として、各外フランジ部256の間には、それぞれ、環状の溝部257が形成されている。つまりキャビティ部253の外周面には、上下方向に沿って環状の溝部257が略等間隔で複数形成されている。
【0048】
一方、第2のキャビティ型252は、その中央部に第1のキャビティ型251が下側から挿入される挿入孔258が形成され、全体として略円筒状に形成されている。第1のキャビティ型251は、この挿入孔258に挿入された状態で第2のキャビティ型252と一体化されている。詳しくは後述するが、これら第1のキャビティ型251と第2のキャビティ型252との間には、冷却媒体が供給される冷却流路259が形成されている。
【0049】
また第2のキャビティ型252の内周面には、上下方向(型締め方向)に沿って複数の環状の内フランジ部260が略等間隔で形成され、結果として、各内フランジ部260の間には、それぞれ、環状の溝部261が形成されている。つまり第2のキャビティ型252の内周面には、上下方向に沿って環状の溝部261が略等間隔で複数形成されている。
【0050】
そして、第1のキャビティ型251が第2のキャビティ型252の挿入孔258に挿入されると、第1のキャビティ型251の外フランジ部256と、第2のキャビティ型252の内フランジ部260とが当接し、この状態で第1のキャビティ型251と第2のキャビティ型252とが一体化される。その結果、第1のキャビティ型251と第2のキャビティ型252との間には、外フランジ部256と内フランジ部260とで区画されて冷却流路259を構成する複数の環状流路262が形成されている(
図4参照)。すなわち、この環状流路262は、第1のキャビティ型251の溝部257と、第2のキャビティ型252の溝部261とで形成されている。なお本実施形態では、最下部に形成される環状流路262は、第1のキャビティ型251の外フランジ部256のみで、隣接する環状流路262と区画されている。
【0051】
また外フランジ部256及び内フランジ部260には、隣接する環状流路262を連通する縦穴が形成されている。各環状流路262は、バッフル板が挿入されて流路が遮られており、縦穴はこのバッフル板に近接して設けられていることが好ましい。
【0052】
また、第2のキャビティ型252の上下二か所には、キャビティ型固定ブロック223に形成されている冷却媒体供給用の第1の横穴と連通する第2の横穴が形成されている。冷却媒体は、例えば、第2のキャビティ型252の下側に設けられた第2の横穴を介して最下部の環状流路262に導入され、第1のキャビティ型251の周りを通過した後、最上部の環状流路262から、第2のキャビティ型252の上部に設けられた第2の横穴を介して外部に排出される。
【0053】
また第2のキャビティ型252は、本実施形態では、複数のリング状部材263を上下方向(型締め方向)に積層して一体化することで形成されている。例えば、
図6に示すように、第2のキャビティ型252は、2つのリング状部材263a、263bを一体化することによって形成されている。言い換えれば、第2のキャビティ型252は、2つのリング状部材263a,263bに分割されている。
【0054】
これらの2つのリング状部材263a,263bは、本実施形態ではピン264によって一体化されている。第2のキャビティ型252の挿入孔258の周囲には、リング状部材263bからリング状部材263aに達する深さのネジ孔265が、複数(例えば、2つ)設けられている。各ネジ孔265のリング状部材263aに対応する部分(ネジ孔265の底部)には、雌ねじ部266が形成されている。
【0055】
一方、ピン264は、その先端部に雄ねじ部267が形成されると共に、ネジ孔265に挿入した際にリング状部材263a,263bの境界部に対応する位置に位置決め部268が形成されている。すなわち位置決め部268は、2つのリング状部材263a,263bに亘って連続して形成されている。
【0056】
そして、このピン264をネジ孔265に挿入して締結することで、リング状部材263a,263bが一体化されている。なお、ピン264の位置決め部268とは、リング状部材263a,263bを位置決めするために、外径がネジ孔265の内径に合わせて高精度に形成されている部位である。
【0057】
また第2のキャビティ型252を分割する位置は特に限定されないが、溝部261に対応する位置、つまり各内フランジ部260の間であることが好ましく、特に、最上部に位置する溝部261に対応する位置であることが望ましい。
【0058】
例えば、本実施形態では、第2のキャビティ型252の上端(リング状部材263a)の第1のキャビティ型251との間に、冷却流路259を流れる冷却媒体の漏洩を防止するためにOリング等のシール部材269が装着されている。このため、第1のキャビティ型251を第2のキャビティ型252の挿入孔258に挿入する際、第1のキャビティ型251が接触してシール部材269が破損する虞がある。しかしながら、第2のキャビティ型252が、本実施形態のように最上部の溝部261に対応する位置で分割され、上部のリング状部材263aにシール部材269が装着されていることで、上述のようなシール部材269の破損を抑制することができる。
【0059】
さらに射出キャビティ型22は、第2のキャビティ型252の上部に設けられるネック型接触キャビティ型270を備えている。このネック型接触キャビティ型270は、第2のキャビティ型252の上部に設けられる筒状の部材であり、射出キャビティ型22の上部に、型締めの際に下降するネック型21が係合する係合凹部271を形成する。すなわち型締めの際に、ネック型21がこの係合凹部271に係合することで、ネック型21と射出キャビティ型22とが型締めされることになる。
【0060】
ここで、射出キャビティ型22は、型締めの際、ネック型21が第2のキャビティ型252に当接することで、型締め方向においてネック型21に対して位置決めされるように構成されている。具体的には、
図7の拡大図に示すように、第2のキャビティ型252のネック型21側の端面は、第1のキャビティ型251よりも外側(ネック型21側)に位置している。言い換えれば、射出キャビティ型22の上面の中央部には、第1のキャビティ型251の端面を底部とする凹部272が形成されている。
【0061】
一方、ネック型21の射出キャビティ型22側の端面には、凹部272に対向する位置に、射出キャビティ型22側に突出する凸状部273が形成されていると共に、凸状部273の周囲には平坦部274が形成されている。つまりネック型21を下降させた際に、平坦部274が第2のキャビティ型252に当接すると共に、凸状部273が凹部272に係合するようになっている。ただし、凸状部273の高さは、凹部272の深さよりも若干低く形成されている。
【0062】
したがって、型締めした際には、凸状部273の周囲の平坦部274が第2のキャビティ型252に当接するが、ネック型21と第1のキャビティ型251とは実質的に接触することなく両者の間には微小な隙間が形成されるようになっている。すなわち型締めする際の大きな射出型締力は第2のキャビティ型252に伝達され、第1のキャビティ型251には実質的に伝達されないようになっている。
【0063】
より詳しくは、ネック型21は、平坦部274が第2のキャビティ型252の上面と接触することで位置決めされるため、コア型ユニット230からの射出型締力は、ほとんどがネック型21を介して第2のキャビティ型252に伝達される。つまり、機械的強度が高い第2のキャビティ型252で射出型締力を受けることで、第1のキャビティ型251への射出型締力の伝達を抑制している。このため、第1のキャビティ型251にかかる負荷が著しく軽減されている。また第1のキャビティ型251の強度は、射出型締力よりも弱い樹脂充填圧力に耐えられる程度のものでよくなる。言い換えれば、プリフォームを冷却する機能は第1のキャビティ型251に専属させ、射出型締力を受ける機能は第2のキャビティ型252に専属させる構造としており、射出キャビティ型22で要求される二つの機能を分離して別々の部材で担うようにしている。よって、第1のキャビティ型251(特にキャビティ部253)の薄肉化が可能になる。
【0064】
その結果、冷却流路259を第1のキャビティ型251の内面のより近傍に配置させることができるようになり、溶融樹脂に対する冷却強度(熱交換効率、温度追従性)の向上を図ることができ、冷却時間を短縮することができる。
【0065】
また射出キャビティ型22が、分離可能な第1のキャビティ型251と第2のキャビティ型252とで構成されていることで、メンテナンス性も良好である。例えば、射出キャビティ型(成形用金型)が拡散接合法で製造されている場合、冷却流路に堆積した水垢等を清掃するのは困難であるが、本願発明では、第1のキャビティ型251と第2のキャビティ型252とを分離して冷却流路259を比較的簡単に清掃できる。
【0066】
さらには、射出キャビティ型22が分離可能な第1のキャビティ型251と第2のキャビティ型252とで構成されていることで、例えば、拡散接合法のように特殊な加工装置を必要とすることなく製造でき、製造時間が長くなることもないため、製造コストを抑制できるという効果もある。
【0067】
なお第1のキャビティ型251は、従来よりも肉厚が薄くなるため、強度が高い材質で形成するのが望ましい。そのため、一般的な金型で用いられるプリハードン鋼よりも熱伝導性が若干劣るものの耐久性(硬度)がより高いステンレス鋼を用いても良い。ステンレス鋼はプリハードン鋼より耐腐食性能も優れているため、メンテナンス作業の頻度も減少させることができる。また、冷却強度が逆に高くなりすぎると、プリフォームに白化等の成形不良が生じる可能性もある。ステンレス鋼を利用すれば、強度を向上させつつ成形不良を抑止させることが可能になる。
【0068】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能なものである。
【0069】
例えば、上述の実施形態では、第2のキャビティ型252が、2つのリング状部材263a,263bからなる構成を例示したが、リング状部材の数は特に限定されない。例えば、
図8に示すように、第2のキャビティ型252は、各溝部261に対応する部分で分割されていてもよい。すなわち第2のキャビティ型252は、それぞれ凸状部273を備える多数(例えば、7つ)のリング状部材263(263a~263g)を積層して一体化することで形成されていてもよい。
【0070】
このように第2のキャビティ型252を構成する各リング状部材263がそれぞれ一つの凸状部273を備えるようにすることで、アンダーカット形状も存在せず加工自体が容易となる。また第2のキャビティ型252の組立も、第1のキャビティ型251の外側にリング状部材263を積層状に置いてピン264で固定するという簡単な作業で済み、接合処理用の特殊な加工装置が不要である。よって、製造コストを抑えることができる。なお、この構成の場合、ピン264の位置決め部268は、7つのリング状部材263に対応する長さで形成されていることが好ましい。
【0071】
また、例えば、上述の実施形態では、射出成形用金型を一例として本発明を説明したが、本発明に係る成形用金型は、温調工程の予備ブロー成形用の金型として用いることもできる。この場合、上述した冷却流路(温調流路)には、温調媒体が導入されることになる。
【0072】
このように本発明に係る成形用金型を予備ブロー成形用の金型として用いることで、プリフォームの接触樹脂と温調媒体との熱交換効率を高めることができ、生産性や成形品質、エネルギー効率を高めることができるという作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0073】
1 射出ブロー成形装置、 2 機台、 10 射出成形部、 15 射出装置、 16 ノズル、 20 射出成形型、 21 ネック型、 22 射出キャビティ型、 23 コア型、 24 ホットランナーブロック、 25 キャビティ、 26 流路、 30 温調部、 40 ブロー成形部、 50 取出部、 60 搬送機構、 61 移送板、 62 固定板部、 200 射出成形型ユニット、 210 ネック型ユニット、 211 ネック型固定板、 220 射出キャビティ型ユニット、 221 上方固定板、 222 下方固定板、 223 キャビティ型固定ブロック、 230 コア型ユニット、 231 コア型固定板、 251 第1のキャビティ型、 252 第2のキャビティ型、 253 キャビティ部、 254 フランジ部、 255 ゲート部、 256 外フランジ部、 257,261 溝部、 258 挿入孔、 259 冷却流路、 260 内フランジ部、 262 環状流路、 263 リング状部材、 264 ピン、 265 ネジ孔、 268 位置決め部、 269 シール部材、 270 ネック型接触キャビティ型、 271 係合凹部、 272 凹部、 273 凸状部、 274 平坦部