(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】滑らかな若しくはエンボス加工されたフィルムを変形するためのエンボス工具
(51)【国際特許分類】
B29C 59/02 20060101AFI20220202BHJP
B29C 33/38 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
B29C59/02 B
B29C33/38
(21)【出願番号】P 2019513001
(86)(22)【出願日】2017-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2017071594
(87)【国際公開番号】W WO2018046340
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-07-28
(32)【優先日】2016-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】310023830
【氏名又は名称】ベアハルター・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】シューマン・ダリボル
(72)【発明者】
【氏名】シュタイナー・マルクス
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-131540(JP,A)
【文献】特表平11-508198(JP,A)
【文献】特開昭57-024930(JP,A)
【文献】特開平04-292935(JP,A)
【文献】特開平04-059347(JP,A)
【文献】特開平09-193290(JP,A)
【文献】米国特許第06349639(US,B1)
【文献】特開2013-010207(JP,A)
【文献】特公昭38-018329(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00-59/18
B29C 33/00-33/76
B31B 50/00-70/99
B31C 1/00-99/00
B31D 1/00-99/00
B65D 35/44-55/16
B21D 1/00- 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
滑らか
な若しくはエンボス加工された金属から成るフィルム(1)又は金属と合成樹脂とから成る積層から成るフィルムを変形するためのエンボス工具であって、このエンボス工具は、打抜き加工機及びエンボス加工機に取り付け可能に形成されていて、雌型(5)と雄型(7)との間を貫通可能又は挿入可能な一枚のフィルム(1)をエンボス加工するため、エンボス領域を有する雌型(5)と雄型(7)とを備え、
雌型(5)の下面の隆起部(21)によってエンボス構造が形成されている、当該エンボス工具において、
雌型(5)の上方には、第一の補償要素(13)があり、この第一の補償要素のさらに上に収容板(17)があり、
収容板(17)において、その収容板(17)の下面に溝部(23)が形成されていて、この溝部(23)には補償要素(13)が嵌入され、補償要素(13)は溝部(23)から数十分の一ミリメートルだけ突き出し、及びエンボス用の隆起部(21)の真後ろの雌型(5)に当接し、
雄型(7)では、エンボスパターンの隆起部(21)が雄型(7)の表面上に、雌型(5)に対して鏡面対称のように、形成されていて、第二の補償要素(13)が、一つの溝部(23)の中に、下方の一枚の収容板(17)の中にあり、及び下方の収容板(17)から突出し、
雌型(5)のエンボス領域に対向している雄型(7)の表面が、弾性的にフレキシブルに変形可能に形成されていることを特徴とするエンボス工具。
【請求項2】
二つの補償要素(13)は
、互いに対向して配置されていることを特徴とする請求項
1に記載のエンボス工具。
【請求項3】
補償要素(13)は、合成樹脂から構成されていることを特徴とする請求項
1又は2に記載のエンボス工具。
【請求項4】
補償要素(13)は、ポリウレタンから成ることを特徴とする請求項1
から3のいずれか1項に記載のエンボス工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の前提部による滑らかな若しくはエンボス加工されたフィルムを変形するためのエンボス工具に関する。
【背景技術】
【0002】
金属からなるフィルム、又は金属及び合成樹脂若しくは紙の積層からなるフィルム、大抵はアルミニウムからなるフィルムは、ヨーグルトカップのような半保存食品の容器を閉じるために包装産業において使用されるが、別の用途の為に及び業務用のコーヒーカプセル又はコーヒーパックにも使用される。容器の蓋をすべき開口部に対応して成形されている切り取り部は、このようなフィルムから打ち抜かれ、及びさらなる処理のために積み重ねられる、即ち蓋をする。滑らかなフィルムからなる打ち抜き加工体は、さらなる処理の際、特に蓋をする際に、フィルムが互いに貼り付き、従って、別々にすることができない又は間違って別々にするだけ、という問題がある。これは、瓶詰機又は蓋付け機へ欠陥商品を案内することである。したがって、蓋として利用されるこのような打ち抜き加工体のための原料に、エンボス加工を施すことが、以前から通例であった。このエンボス加工は、通常エンボスローラーで適応される。このように粗く、滑らかではない表面を施される打ち抜き加工体は、それらが何千も積み重ねられた時に、互いに貼り付く傾向がほとんどない。
【0003】
しかしながらフィルムのこの変形によって、製品特有のマークが、正確に企図された領域に適応することができない。例えば、その製造後に個々のパッケージを識別できるようにするために、バーコードを適応する必要がある。例えば、コーヒー/紅茶を準備する機械は、適切な抽出プロセスを実施できるようにする為に、フィルムによって閉じられていて挿入された包装に、紅茶又はコーヒーが充填されているかどうか、及びどのような種類の製品であるかを、識別できる必要がある。更に、処理されるパッケージはどの会社から来ているのか、及びこれらが機械上で処理可能である又は処理不可能であるかを、機械のバーコード又は同等のマークを介して識別することができる。バーコードによって、製品のために別の情報を無数に記憶することができる。
【0004】
ところが、このようなバーコードが、エンボス加工を施す粗いフィルム上に適応されると、このバーコードが一様な面上に適応されていないので、バーコードは加工機械のバーコードを判読する読み取り装置で取り扱いにくくなる。
【0005】
バーコードを適応する必要がある領域が、後に平滑化される装置はすでに知られている。それに加えて、このような装置は、前のエンボス加工プロセスでエンボス部分を平滑にすることができ、且つ押圧領域を平らにすることができるプレス加工を使用する。この手法は、ある程度許容できる結果を得るため、即ち滑らかな領域を得るために、エンボス加工装置及び打ち抜き加工装置に過度に負担をかける、大きな力が必要である。それゆえ、非常に大きな力にもかかわらず満足のいく結果が達成されない、即ち前者のエンボス加工されている粗い領域の完全に滑らかな表面が達成されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、滑らかな若しくはエンボス加工されたフィルムを変形するための装置を提供することである。これによって、フィルム上のエンボス部分を取り消すことができ、フィルムの滑らかな表面を、所定の領域内で達成することができる。
【0007】
本発明の別の課題は、従来通りのエンボス加工の場合よりも小さいエンボス加工力で、滑らかなフィルム上に、エンボス部分、すなわち変形を適用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載の特徴部によるエンボス工具によって解決される。エンボス工具の有利な実施の形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
エンボス領域(隆起又は溝)の裏側に雌型及び/又は雄型を弾性に支持することによって、わずかな押圧力でエンボス加工された領域を、部分的に取り消すことができるだけではなくて、完全に取り消すことができ、フィルムの表面を滑らかにすることができる。したがって、エンボス加工されている領域を再び滑らかにすることが可能になるだけではなく、さらにこのプロセスは、著しく小さい力で達成することができる。
【0010】
エンボス部分を除去すること又は取り消すことが、雌型及び/又は雄型を下に設置することによって達成されるだけではなくて、滑らかなフィルム領域のエンボス加工を、著しく小さい力で、すなわちプレス機/装置のストレスを小さくすることができる。
【0011】
本発明を二つの実施の形態に基づいて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】エンボス部分を除去するための装置の概略展開図である。
【
図2】エンボス加工されたフィルム上のエンボス部分を除去又は取り消すための
図1の装置の断面図である。
【
図4】補償要素を有する雄型又は収容板の平面図である。
【
図5】雄型に嵌入するための補償要素の平面図である。
【
図6】滑らかなフィルムをエンボス加工するための装置を(上から見た)概略展開図である。
【
図7】滑らかなフィルムをエンボス加工するための装置を(下から見た)概略展開図である。
【
図8】
図6及び
図7によるフィルムをエンボス加工するための
図6の装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
エンボス加工されているフィルム1上のエンボス部分の選択された領域を除去するための又は取り消すための工具、すなわち装置が、
図1に概略的に示されている。コイル3から雌型又は圧印板5と雄型又は収容板7との間に挿入可能であるフィルム1の上側の雌型5の下面には、隆起部、ここでは滑らかな表面を有する隆起部9が形成されている。隆起部9の断面は、既にエンボス加工されているフィルム上のエンボス部分を取り消さなければならない、すなわちフィルム1の表面を再び完全に滑らかに変形しなければならない面に相当する(
図2)。補償要素13が、雄型7の凹部11に嵌入されている。補償要素13は、雄型7の表面から数10分の1ミリメートルだけ突出している。補償要素13の断面は、少なくとも雌型5における隆起部9の断面に基本的には一致する。
【0014】
補償要素13は、80~90のショア硬度を有するポリウレタンから成る基体で構成してもよい、又は同様に弾性のある合成樹脂で構成してもよい。
【0015】
オプションとして、数10分の1ミリメートルの厚さの薄い保護板15が、補償要素13の上に存在する。この保護板15では、雌型5と雄型7の間を矢印Aの方向に貫通搬送されたフィルム1が補償要素13の表面で擦れることを、又は摩擦によって遅延し且つ損傷するかもしれないことを、防ぐことができる。
【0016】
雌型5は、プレス機の中で、上側(大抵は可動部分)に固定されている。雄型7は、大抵はプレス機の安定した部分上に固定して取り付けられている。プレス機の構造は十分に知られているので、プレス機は、図中に示されていない。プレス機は、油圧式に又は機械式に駆動されることが可能であり、フィルム1が、エンボス加工プロセスのために短期間停止されている間に、雌型5は、速いサイクルで雄型7に向かって移動する。
【0017】
以下では、大面積のエンボス部分の一つの領域又は複数の領域の取り消しの過程を同時に説明する。雌型5が、プレス機によって一回のストロークで雄型7へ移動し、及びフィルム1の表面へ、隆起部9によるプレス圧力若しくは力を加えることができるように、例えばオレンジ果皮のような細かいエンボス部分を有するフィルム1が、コイル3から雌型5と雄型7との間を通って移動し、且つそのつど短期間停止する。この場合、フィルム1は、補償要素13と、(存在する場合は)フィルム1と雄型7との間に配置されている保護要素15(例えば、補償要素13の上に存在する非常に薄い変形可能な金属の薄板)との表面のみで支持される。隆起部9の領域内で対向して配置されるこの弾性支持部分によって、隆起部9と補償要素13の間の領域内のフィルム1上に存在するエンボス部分を完全に取り消すことが、問題なく達成される。
【0018】
保護要素15は、フィルム1上のエンボス部分の取り消しに直接に影響しない。これは、フィルム1と、フィルムの下面にもあるフィルム1のエンボス部分を保護し、その結果、フィルム1が矢印Aの方向に、前方に搬送されるときに、プロセスを妨げる摩擦が発生し得ない。最小限のエンボス深さと非常になめらかでわずかに滑る程度の表面とを有するエンボス加工されたフィルム1の場合、保護薄板15も省略することができる。
【0019】
意外にも、この方法では、滑らかな、即ちエンボス加工されていないフィルム1上にも、任意の形状のエンボス加工を適用することができ、これは、フィルムの表面の一部の領域だけ又はフィルム全体を含む。
【0020】
例えば、
図6及び
図7には、円環形状のエンボス領域が作製される。取り囲まれている領域且つ中央の領域は、そのままである、すなわち滑らかなままである。このような部分エンボス領域は、上下に積み重ねた打ち抜き加工体の張り付きも防ぐと同時に、例えば多色技術でフィルムに施される高品質なコーティング/画像の保存を生じる。以下では、このような部分的なエンボス部分の製造が、
図6及び
図7に基づいて説明される。
【0021】
図6及び7による展開図には、エンボス工具の個々の要素が示されている。フィルム1の上方には、雌型が記載されていて、この雌型の下面には、隆起部21によってエンボス構造が施されている。雌型の上方には補償要素13があり、この例では、円環要素があり、その上には上部の収容板17がある。収容板17には、円環形状の溝部23が、収容板17の下面に形成されている。この溝部23には、円環形状の補償要素13又はこれとは別の形状をした補償要素がはめ込まれていて、この場合、補償要素13は、溝部23から数10分の1ミリメートルだけ突出していて、エンボス加工用の隆起部のすぐ後ろの雌型5の裏側で当接する。
【0022】
雄型7は、それに対して鏡面対称のような関係にあり、この雄型7では、エンボスパターンを有する円環形状の隆起部が、表面上に形成されている。その下では、下の収容板17の円環形状の溝部23で形成されている円環形状の補償要素13がある。これら個々の要素の組み立て後に、下の収容板17から数10分の1ミリメートルだけ突出している保護要素13が、雄型の下面で当接する。
【0023】
エンボス加工されていないフィルム1のエンボス加工は、従来の方法で行われるが、雌型5と雄型7が打ち抜き加工機及びエンボス加工機と強固に接続されていないのではなく、この両要素(雌型と雄型)は、エンボス加工を引き起こす隆起部21の領域内で、裏側で弾性的に支持されている、という違いがある。
【0024】
雌型5及び雄型7の局所的な弾性を達成するため、両要素は、例えば真鍮から製造されている。真鍮板の厚さは4ミリメートルの範囲内にある、すなわち局所的な弾性を保証する厚さ(つまり隆起部21の領域内)である。
【0025】
この弾性的に支持されたエンボス加工では、打ち抜き加工装置及びエンボス加工装置によって、かなり小さいプレス力で、最適なエンボス加工の結果を達成することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 フィルム
3 コイル
5 雌型
7 雄型
9 隆起部
11 凹部
13 補償要素
15 保護要素
17 収容板
19 ノッチ
21 隆起部
23 溝部